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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022113396
(43)【公開日】2022-08-04
(54)【発明の名称】電力線接続部点検システム
(51)【国際特許分類】
   H02G 1/02 20060101AFI20220728BHJP
   H02G 15/18 20060101ALI20220728BHJP
   B64C 27/04 20060101ALI20220728BHJP
   B64C 39/02 20060101ALI20220728BHJP
   B64D 47/00 20060101ALI20220728BHJP
   G01J 5/48 20220101ALI20220728BHJP
【FI】
H02G1/02
H02G15/18
B64C27/04
B64C39/02
B64D47/00
G01J5/48 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021009621
(22)【出願日】2021-01-25
(71)【出願人】
【識別番号】000211307
【氏名又は名称】中国電力株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】特許業務法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】重松 孝一
【テーマコード(参考)】
2G066
5G352
5G375
【Fターム(参考)】
2G066AC20
2G066CA01
2G066CA02
2G066CA15
5G352AA01
5G352AM01
5G352AM05
5G375AA01
5G375CA02
5G375CA14
5G375DB35
5G375EA15
(57)【要約】
【課題】安全かつ適切に電力線接続部の点検を行うことができる電力線接続部点検システムを提供する。
【解決手段】架空送電線の電力線300に設けられた電力線接続部400を点検するための電力線接続部点検システム1であって、少なくとも電力線接続部400の温度を測定する温度センサを備える飛行体2と、飛行体2が測定した電力線接続部400の温度、及び電力線300に流れる電流に基づき、電力線接続部400の概算抵抗値を算出する処理装置3と、を備える。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
架空送電線の電力線に設けられた電力線接続部を点検するための電力線接続部点検システムであって、
少なくとも前記電力線接続部の温度を測定する温度センサを備える飛行体と、
前記飛行体が測定した前記電力線接続部の温度、及び前記電力線に流れる電流に基づき、前記電力線接続部の概算抵抗値を算出する処理装置と、
を備える、
電力線接続部点検システム。
【請求項2】
前記電力線接続部は、圧縮型接続管を含む、
請求項1に記載の電力線接続部点検システム。
【請求項3】
前記処理装置は、
前記電力線接続部の周囲温度に対する前記電力線接続部の温度上昇をΔTms、前記電力線に流れる電流をIreとしたとき、下記(1)式を用いて、前記電力線接続部の概算抵抗値Rcalを算出する、
請求項1又は2に記載の電力線接続部点検システム。
Rcal=ΔTms/Ire・・・(1)
【請求項4】
前記処理装置は、
前記電力線接続部において接続される電力線の線種に応じて予め定められた許容抵抗値と前記概算抵抗値とを比較し、前記概算抵抗値が前記許容抵抗値以上であるか否かを判定する、
請求項1から3の何れか一項に記載の電力線接続部点検システム。
【請求項5】
前記飛行体は、前記電力線接続部の複数の測定部位の温度を測定し、
前記処理装置は、複数の前記測定部位ごとに、前記概算抵抗値を算出する、
請求項1から4の何れか一項に記載の電力線接続部点検システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電力線接続部点検システムに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば特別高圧送電線等の長距離送電に用いられる架空送電線としては、鋼心の周辺にアルミ線を撚り合わせた2層構造の鋼心アルミ撚線(ACSR:Aluminum Conductors Steel Reinforced)や鋼心耐熱アルミ撚線(TACSR:Thermal-resistant Aluminum Conductors Steel Reinforced)等の電力線が用いられる。このような電力線の接続や引留めには、圧縮型の直線スリーブや引留クランプ等の圧縮型接続管が用いられる。圧縮型接続管は、露出させた鋼心を鋼スリーブにより圧縮接続し、該鋼スリーブとアルミ撚線をアルミスリーブにより圧縮接続する前に腐食を防止するための防食剤を注入して接続による一体化に合わせ、隙間を充填している。
【0003】
圧縮型接続管によって接続された電力線接続部において、施工時の偏心圧縮や古線圧縮時の表面処置不良、あるいは防食材の充填不足等による接触面積の不足や、雨水の侵入等による腐食劣化(アルミ接触界面の酸化)により電気抵抗が増大して異常発熱すると、アルミ撚線が軟化して強度不足が発生する場合がある。このため、例えば定期的に電力線を送電停止(作業停電)して電力線接続部の電気抵抗を測定している。また、例えば、ヘリコプターあるいは地上から放射温度計により電線接続部の温度を測定する技術が開示されている(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平11-196509号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
電力線接続部の電気抵抗を測定する場合、電力線の送電停止(作業停電)を伴う。さらに、電気抵抗を測定するために、作業員が電力線接続部に測定器を接続する等の高所作業を伴う。また、放射温度計を用いてヘリコプターあるいは地上から温度測定を行う場合、測定対象からの距離が遠く正確に測定対象を捉えることが難しい。さらに、電力潮流によって測定対象の電力線接続部の温度が変動し、適切な点検が行えない場合がある。
【0006】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであり、電力線を送電停止することなく、安全かつ適切に電力線接続部の点検を行うことができる電力線接続部点検システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するため、一態様に係る電力線接続部点検システムは、架空送電線の電力線に設けられた電力線接続部を点検するための電力線接続部点検システムであって、少なくとも前記電力線接続部の温度を測定する温度センサを備える飛行体と、前記飛行体が測定した前記電力線接続部の温度、及び前記電力線に流れる電流に基づき、前記電力線接続部の概算抵抗値を算出する処理装置と、を備える。
【0008】
望ましい態様として、前記電力線接続部は、圧縮型接続管を含む。
【0009】
望ましい態様として、前記処理装置は、前記電力線接続部の周囲温度に対する前記電力線接続部の温度上昇をΔTms、前記電力線に流れる電流をIreとしたとき、下記(1)式を用いて、前記電力線接続部の概算抵抗値Rcalを算出する。
【0010】
Rcal=ΔTms/Ire2・・・(1)
【0011】
望ましい態様として、前記処理装置は、前記電力線接続部において接続される電力線の線種に応じて予め定められた許容抵抗値と前記概算抵抗値とを比較し、前記概算抵抗値が前記許容抵抗値以上であるか否かを判定する。
【0012】
望ましい態様として、前記飛行体は、前記電力線接続部の複数の測定部位の温度を測定し、前記処理装置は、複数の前記測定部位ごとに、前記概算抵抗値を算出する。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、安全かつ適切に電力線接続部の点検を行うことができる電力線接続部点検システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1図1は、送電系統の一例を示す図である。
図2図2は、実施形態に係る電力線接続部点検システムの点検対象となる圧縮型の引留クランプの断面図である。
図3図3は、実施形態に係る電力線接続部点検システムの点検対象となる圧縮型の直線スリーブの断面図である。
図4図4は、図3に示す圧縮型の直線スリーブが偏心圧縮された例を示す断面図である。
図5図5は、実施形態1に係る電力線接続部点検システムの構成を示す概略図である。
図6図6は、実施形態1に係る飛行体の構成の一例を示すブロック図である。
図7図7は、実施形態1に係る処理装置の構成の一例を示すブロック図である。
図8図8は、処理装置の記憶部に記憶された送電系統の各電力線接続部における各種データの一例を示す図である。
図9図9は、圧縮型の直線スリーブにおける測定部位の一例を示す図である。
図10図10は、データセンターから送信される電流値情報の一例を示す図である。
図11図11は、記憶部に記憶される温度上昇情報の一例を示す図である。
図12図12は、記憶部に記憶される概算抵抗値情報の一例を示す図である。
図13図13は、実施形態2に係る飛行体の構成の一例を示すブロック図である。
図14図14は、実施形態2に係る飛行体の上面視概略図である。
図15図15は、実施形態2に係る飛行体の図14に示す矢視概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明につき図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、下記の発明を実施するための形態(以下、実施形態という)により本発明が限定されるものではない。また、下記実施形態における構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のもの、いわゆる均等の範囲のものが含まれる。さらに、下記実施形態で開示した構成要素は適宜組み合わせることが可能である。
【0016】
図1は、送電系統の一例を示す図である。送電系統100は、電気所200から電力線300に三相電力が送出されている。電力線300は、例えば開閉器500で区切られた複数の区間に分割されている。開閉器500は、複数の区間ごとに電力線300の電力潮流を計測する機能を有し、所定期間ごとに計測したデータを後述するデータセンターに送信する。
【0017】
電力線300は、鉄塔(不図示)に装柱される三相の架空送電線であり、例えば鋼心の周辺にアルミ線を撚り合わせた2層構造の鋼心アルミ撚線(ACSR:Aluminum Conductors Steel Reinforced)や、耐熱性を強化した鋼心耐熱アルミ撚線(TACSR:Thermal-resistant Aluminum Conductors Steel Reinforced)等の電力線である。
【0018】
電力線300は、例えば圧縮型の引留クランプにより鉄塔の碍子に引き留められる。また、電力線300は、例えば圧縮型の直線スリーブにより接続される。このような圧縮型の引留クランプや直線スリーブ等の圧縮型接続管によって接続された電力線接続部400において、施工時の偏心圧縮や古線圧縮時の表面処置不良、あるいは防食材の充填不足等による接触面積の不足や、雨水の侵入等による腐食やアルミ接触界面の酸化により電気抵抗が増大して異常発熱すると、アルミ撚線が軟化して強度不足が発生する場合がある。
【0019】
図2は、実施形態に係る電力線接続部点検システムの点検対象となる圧縮型の引留クランプの断面図である。引留クランプ400aは、電力線300aを把持するクランプ本体410と、ジャンパ線300bを把持するジャンパソケット420とを備える。
【0020】
電力線300aとジャンパ線300bとは、クランプ本体410の本体側接合部414とジャンパソケット420のソケット側接合部424とをボルト450によって締結して電気的かつ機械的に接続することで電気的に接続される。
【0021】
電力線300aは、鋼製の複数の素線が撚り合わされた心線部301aと、アルミニウム製の複数の素線が心線部301aの外周に撚り合わされた導電部302aとを備える。
【0022】
クランプ本体410は、電力線300aの心線部301aを圧縮接続するための鋼製の心線部圧縮部材411と、電力線300aの導電部302aを圧縮接続するためのアルミニウム又はアルミニウム合金製の導電部圧縮部材412とを備える。導電部圧縮部材412には、防食材注入口413が設けられている。また、クランプ本体410の引留め側(図2の右側端部)には、鉄塔の碍子に接続するための取付部430が設けられている。
【0023】
心線部圧縮部材411は、電力線300aの心線部301aと共に圧縮されて電力線300aの心線部301aを把持する。導電部圧縮部材412は、電力線300aの導電部302a及び心線部圧縮部材411と共に圧縮されて電力線300aの導電部302aを把持する。
【0024】
ジャンパ線300bは、鋼製の複数の素線が撚り合わされた心線部301bと、アルミニウム製の複数の素線が心線部301bの外周に撚り合わされた導電部302bとを備える。ジャンパ線300bの構成は、上述した電力線300aと実質的に同様である。
【0025】
ジャンパソケット420は、ジャンパ線300bの心線部301bを圧縮接続するための鋼製の心線部圧縮部材421と、ジャンパ線300bの導電部302bを圧縮接続するためのアルミニウム又はアルミニウム合金製の導電部圧縮部材422とを備える。導電部圧縮部材422には、防食材注入口423が設けられている。
【0026】
心線部圧縮部材421は、ジャンパ線300bの心線部301bと共に圧縮されてジャンパ線300bの心線部301bを把持する。導電部圧縮部材422は、ジャンパ線300bの導電部302b及び心線部圧縮部材421と共に圧縮されてジャンパ線300bの導電部302bを把持する。
【0027】
上述した引留クランプ400aでは、例えば、クランプ本体410の導電部圧縮部材412と電力線300aの導電部302aとの隙間から雨水等が侵入し、腐食やアルミ接触界面に絶縁体の酸化被膜が生じる可能性がある。また、ジャンパソケット420の導電部圧縮部材422とジャンパ線300bの導電部302bとの隙間から雨水等が侵入し、腐食やアルミ接触界面に絶縁体の酸化被膜が生じる可能性がある。
【0028】
また、クランプ本体410の本体側接合部414とジャンパソケット420のソケット側接合部424との隙間から雨水等が侵入し、本体側接合部414とソケット側接合部424とのアルミ接触界面に絶縁体の酸化被膜が生じる可能性がある。
【0029】
また、施工時の古線圧縮時の表面処置不良、あるいは防食材の充填不足等によって、電力線300a,300bとの接触面積が不足する場合がある。
【0030】
このように、アルミ接触界面の酸化や接触面積の不足により高抵抗状態となると、引留クランプ400aを含む電力線接続部400において異常発熱を生じ、電力線300aの導電部302aやジャンパ線300bの導電部302bが軟化して強度不足が発生する場合がある。
【0031】
図3は、実施形態に係る電力線接続部点検システムの点検対象となる圧縮型の直線スリーブの断面図である。図3において、電力線300c及び電力線300dの構成は、上述した電力線300aと実質的に同様である。
【0032】
直線スリーブ400bは、電力線300cの心線部301c及び電力線300dの心線部301dを圧縮接続するための鋼製の心線部圧縮部材401と、電力線300cの導電部302c及び電力線300dの導電部302dを圧縮接続するためのアルミニウム又はアルミニウム合金製の導電部圧縮部材402とを備える。導電部圧縮部材402には、防食材注入口403が設けられている。
【0033】
心線部圧縮部材401は、電力線300cの心線部301c及び電力線300dの心線部301dと共に圧縮固定される。導電部圧縮部材412は、電力線300cの導電部302c、電力線300dの導電部302d、及び心線部圧縮部材401と共に圧縮固定される。これにより、電力線300cと電力線300dとが電気的かつ機械的に接続される。
【0034】
上述した直線スリーブ400bでは、例えば、導電部圧縮部材402と電力線300cの導電部302c又は電力線300cの導電部302dとの隙間から雨水等が侵入し、腐食やアルミ接触界面に絶縁体の酸化被膜が生じる可能性がある。また、施工時の偏心圧縮や古線圧縮時の表面処置不良、あるいは防食材の充填不足等によって、電力線300c,300dとの接触面積が不足する場合がある。
【0035】
このように、アルミ接触界面の酸化や接触面積の不足により高抵抗状態となると、直線スリーブ400bを含む電力線接続部400において異常発熱を生じ、電力線300cの導電部302cや電力線300dの導電部302dが軟化して強度不足が発生する場合がある。
【0036】
以下、圧縮型の直線スリーブ400bにおける施工時の偏心圧縮について、図4を参照して説明する。図4は、図3に示す圧縮型の直線スリーブが偏心圧縮された例を示す断面図である。
【0037】
図4に示すように、圧縮型の直線スリーブ400bにおいて、心線部圧縮部材401の中心位置と導電部圧縮部材402の中心位置とがずれている場合(すなわち、圧縮固定後の心線部圧縮部材401及び導電部圧縮部材402の間に偏心が生じた場合)には、直線スリーブ400bの導電部圧縮部材412と電力線300cの導電部302cとの接触面積が不足する。図4に示す例では、導電部圧縮部材402の中心位置に対し、心線部圧縮部材401の中心位置が電力線300c側にずれている。この場合、直線スリーブ400bの電力線300c側において心線部301cへの分流が増加することとなる。鋼製の心線部301cは、アルミニウム製の導電部302cよりも高抵抗であるため、電力線300cの心線部301cが異常発熱する場合がある。
【0038】
上述したように、圧縮型の引留クランプや直線スリーブ等の圧縮型接続管によって接続された電力線接続部400において、施工時の偏心圧縮や古線圧縮時の表面処置不良、あるいは防食材の充填不足等による接触面積の不足や、雨水の侵入等による腐食やアルミ接触界面の酸化により電気抵抗が増大して異常発熱すると、電力線300の強度不足が発生する場合がある。このため、送電系統100の送電品質や信頼性確保の観点から、定期的な電力線接続部400の点検や改修が不可欠である。
【0039】
(実施形態1)
図5は、実施形態1に係る電力線接続部点検システムの構成を示す概略図である。図5に示すように、電力線接続部点検システム1は、飛行体2と、処理装置3とを有する。図5において、データセンター4は、電気所200における送電を管理する施設である。データセンター4には、図1に示す送電系統100の各開閉器500から、電力線300の複数の区間ごとの電力潮流データが所定期間ごとに送信される。なお、図5では、電力線接続部400に含まれる圧縮型接続管として、直線スリーブ400bを例示している。
【0040】
図6は、実施形態1に係る飛行体の構成の一例を示すブロック図である。図6に示すように、飛行体2は、制御部21と、駆動部22と、記憶部23と、撮像部24と、通信部25と、センサ26と、が搭載されている。
【0041】
飛行体2は、飛行及び空中静止(ホバリング)が可能に構成された無人航空機(UAV:Unmanned Air Vehicle)、ドローン、マルチコプタ等であり、制御部21の制御によって、所定の測定点を含む飛行経路にしたがって飛行する。なお、飛行体2が飛行する飛行経路は、例えば、飛行プログラムにより実現される。
【0042】
制御部21は、例えば、CPU(Central Processing Unit)等の演算装置である。駆動部22は、例えばモータであり、飛行体2のプロペラ27(図5参照)を駆動させる。
【0043】
記憶部23は、例えば、ハードディスクドライブ、ソリッドステートドライブ、フラッシュメモリあるいはその他の記憶装置のうち少なくとも1つであり、制御部21によって読み出される各種のデータを記憶する。記憶部23には、飛行体2の飛行プログラムが保存されている。
【0044】
飛行プログラムには、少なくとも、飛行体2の飛行経路である飛行ルートと、電力線接続部400を観測する箇所である測定点と、測定点において空中静止する時間情報などが含まれている。飛行ルートおよび測定点は、座標情報により構成されている。座標情報は、例えば、緯度と経度とにより構成されている。測定点は、飛行ルート上に複数個所指定されている。
【0045】
撮像部24は、例えばカメラであり、電力線接続部400を撮像する。制御部21は、測定点において撮像部24により撮像した画像を解析し、電力線接続部400における測定部位を特定する。
【0046】
通信部25は、処理装置3との間で無線通信を行う装置である。
【0047】
センサ26は、例えば、測位センサ26a、距離センサ26b、姿勢センサ26c、第1温度センサ26d、及び第2温度センサ26eを含む。
【0048】
測位センサ26aは、複数個の衛星から発射された時刻信号を受信し、飛行体2の地球上の位置を測位する機器である。測位センサ26aは、例えば、GPS(Global Positioning System)受信機により実現される。制御部21は、測位センサ26aにより測位した位置に基づいて、飛行ルートに沿って飛行体2を飛行させたり、測定点において飛行体2を空中静止させたりする。
【0049】
距離センサ26bは、電力線接続部400と飛行体2との距離を測定する。距離センサ26bは、対象物にレーザを照射し、対象物に当たって戻ってくるまでの時間を測定し、その測定結果から距離を算定する機器である。
【0050】
姿勢センサ26cは、飛行体2の角度(姿勢)、加速度、角速度または角加速度を検出する計測器である。姿勢センサ26cは、例えば、ジャイロセンサまたは加速度センサなどにより実現される。制御部21は、姿勢センサ26cにより検出されたデータに基づいて、飛行時や空中静止時などの飛行体2の姿勢制御を行う。
【0051】
第1温度センサ26dは、例えばサーモグラフィであり、対象物から放射される赤外線を検出することで、対象物の熱分布を画像として検出する機器である。第2温度センサ26eは、測定点における周囲温度を検出する。制御部21は、第1温度センサ26dにより検出した電力線接続部400における温度検出点の温度と、当該温度検出点における温度検出時の周囲温度とを含む温度情報を、通信部25を介して処理装置3に送信する。
【0052】
図7は、実施形態1に係る処理装置の構成の一例を示すブロック図である。処理装置3は、電気所200(図1参照)等に設けられたコンピュータである。処理装置3は、携帯端末等の端末装置であってもよい。
【0053】
処理装置3は、処理部31と、通信部32と、記憶部33と、表示部34と、を備える。処理部31は、例えば、CPU(Central Processing Unit)等の演算装置である。本開示における処理部31の具体的な処理については、後述する電力線接続部点検システム1の動作において詳細に説明する。
【0054】
通信部32は、飛行体2との間で無線通信を行う装置である。また、通信部32は、データセンター4(図5参照)との間で無線通信を行う。
【0055】
記憶部33は、例えば、ハードディスクドライブ、ソリッドステートドライブ、フラッシュメモリあるいはその他の記憶装置のうち少なくとも1つであり、処理部31によって読み出される各種のデータを記憶する。
【0056】
表示部34は、例えば、液晶ディスプレイであり、電力線接続部点検システム1における点検結果を表示する。
【0057】
次に、実施形態1に係る電力線接続部点検システム1の動作について説明する。
【0058】
処理装置3の記憶部33には、予め送電系統100の各電力線接続部400における各種データが記憶されている。図8は、処理装置の記憶部に記憶された送電系統の各電力線接続部における各種データの一例を示す図である。
【0059】
図8に示す例において、処理装置3の記憶部33には、送電系統100において電力線接続部400の存在する区間番号(図8では、区間番号m)、当該区間における電力線接続部400の存在する接続箇所番号(図8では、接続箇所番号n)、電力線300の線種(図8では、ACSR)、電力線300の線断面積CSA、許容電流Irim(図8では、区間番号mにおける許容電流Irim(m))、許容抵抗値Rth(図8では、区間番号mの電力線300の線種における許容抵抗値Rth(m))、電力線接続部400における温度検出点である測定部位A,B,C,・・・,Xに関する情報(図8では、各相(a相、b相、c相)における測定部位に関する情報)が記憶されている。
【0060】
図9は、圧縮型の直線スリーブにおける測定部位の一例を示す図である。上述したように、電力線接続部400に含まれる圧縮型接続管は、施工時の偏心圧縮や古線圧縮時の表面処置不良、あるいは雨水の侵入による腐食やアルミ接触界面の酸化箇所によって、発熱する部位が異なる。このため、電力線接続部400においては、圧縮型接続管(図9に示す例では、直線スリーブ400b)を主体とする複数個所の温度を測定して総合的に判断する必要がある。図9では、直線スリーブ400bの中央部C、中央部Cから所定距離離れた直線スリーブ400bの電力線300c側の端部B、電力線300cの接続端aから所定距離離れた電力線300c上の位置A、中央部Cから所定距離離れた直線スリーブ400bの電力線300d側の端部D、電力線300dの接続端bから所定距離離れた電力線300d上の位置E、の5つの測定部位を設けた例を示している。
【0061】
許容抵抗値Rthは、電力線300の最大許容温度をTplmax(例えば、90[℃]、最大周囲温度をTamax(例えば、40[℃])としたとき、下記の(1)で算出できる。
【0062】
Rth=(Tplmax-Tamax)/Irim・・・(1)
【0063】
処理装置3は、データセンター4から所定期間ごとに送信された電力線接続部400の存在する区間番号(図8では、区間番号m)の電流値Ireを電流値情報として受信し、記憶部33に記憶する。図10は、データセンターから送信される電流値情報の一例を示す図である。図10では、電力線接続部400の存在する区間(図10では、区間番号m)における各相(a相、b相、c相)の電流値Irea(m),Ireb(m),Irec(m)が含まれる例を示している。記憶部33に記憶された電流値情報は、データセンター4から送信された新たな電流値情報を受信することによって更新される。
【0064】
飛行体2の制御部21は、飛行体2が飛行ルート上の測定点に到達すると、撮像部24により撮像した画像を解析し、電力線接続部400における測定部位A,B,C,・・・,Xを特定する。具体的には、例えば、図9に示す直線スリーブ400bの各測定部位A,B,C,D,Eを特定する。
【0065】
飛行体2の制御部21は、距離センサ26bによって算定された電力線接続部400の各測定部位A,B,C,・・・,Xとの距離が所定距離(例えば、1[m])となった時点で、当該測定部位の温度Tmsを第1温度センサ26dによって検出する。また、該測定部位の温度を検出したときの周囲温度Taを第2温度センサ26eによって検出する。そして、飛行体2の制御部21は、測定部位の温度Tmsと周囲温度Taとを、温度情報として通信部25により処理装置3に送信する。
【0066】
処理装置3の処理部31は、通信部32によって飛行体2から送信された温度情報を受信すると、各測定部位の周囲温度Taに対する電力線接続部400の温度上昇ΔTmsを算出して、記憶部33に記憶する。図11は、記憶部に記憶される温度上昇情報の一例を示す図である。
【0067】
処理装置3の処理部31は、記憶部33に記憶された電流値情報(図10参照)と温度上昇情報(図11参照)とに基づき、各測定部位A,B,C,・・・,Xごとの概算抵抗値Rcalを算出して、記憶部33に記憶する。図12は、記憶部に記憶される概算抵抗値情報の一例を示す図である。各測定部位A,B,C,・・・,Xごとの概算抵抗値Rcalは、下記(2)式を用いて算出できる。
【0068】
Rcal=ΔTms/Ire・・・(2)
【0069】
処理装置3の処理部31は、各測定部位A,B,C,・・・,Xごとの概算抵抗値Rcalが許容抵抗値Rth以上であるか否かを判定する。図12に示す例では、許容抵抗値Rth以上となった概算抵抗値Rcalの枠内をハッチングして示している。具体的には、区間番号mにおける接続箇所番号nの電力線接続部400において、b相の圧縮型接続管における測定部位Cの概算抵抗値Rcal(mnCb)、及び、c相の圧縮型接続管における測定部位Bの概算抵抗値Rcal(mnBc)が許容抵抗値Rth以上となった例を示している。概算抵抗値Rcalが許容抵抗値Rth以上となった場合、当該概算抵抗値Rcalが許容抵抗値Rth以上となった圧縮型接続管では、電力線300に許容電流Irimを流したときに、最大周囲温度Tamaxにおいて電力線300の最大許容温度Tplmaxを超過する可能性がある。
【0070】
処理装置3の処理部31は、図12に示す概算抵抗値情報を、表示部34に表示する。このとき、例えば、許容抵抗値Rth以上となった概算抵抗値Rcalを強調表示(例えば、赤字で表示)することにより、改修が必要な圧縮型接続管を特定することができる。
【0071】
また、各測定部位A,B,C,・・・,Xごとの概算抵抗値Rcalを視認できるので、圧縮型接続管ごとの劣化傾向を把握することができる。例えば、直線スリーブ400bにおいて、測定部位Eで概算抵抗値Rcalが最大となった場合、導電部圧縮部材402の中心位置に対し、心線部圧縮部材401の中心位置が電力線300d側にずれ、直線スリーブ400bの電力線300d側において心線部301dへの分流が増加することとなり、電力線300dの心線部301dが異常発熱していることが考えられる。
【0072】
本開示では、上述したように、飛行体2に搭載した温度センサを用いて電力線接続部400の温度Tmsを検出し、周囲温度Taに対する電力線接続部400の温度上昇ΔTmsと、電力線接続部400の温度Tmsを検出した際に電力線接続部400に流れる電流値Ireとに基づき、電力線接続部400の概算抵抗値Rcalを算出している。
【0073】
上記(2)式は、下記(3)式に変形できる。
【0074】
ΔTms=Rcal×Ire・・・(3)
【0075】
すなわち、周囲温度Taに対する電力線接続部400の温度上昇ΔTmsは、電力線接続部400の概算抵抗値Rcalを係数とし、極値を0とする電流値Ireの二次関数と見做せる。このため、電力線接続部400の概算抵抗値Rcalは、送電系統100の稼働中に電力線接続部400に流れる電流値Ireを用いて、略一定の値として算出することができ、電力線接続部400の点検精度を高めることができる。
【0076】
また、電力線300を送電停止することなく、無人の飛行体2によって安全に電力線接続部400の点検を行うことができる。
【0077】
さらに、本開示では、上述したように、圧縮型接続管の複数個所を測定部位A,B,C,・・・,Xとして、測定部位A,B,C,・・・,Xごとの温度測定を行っているので、より高精度に電力線接続部400の概算抵抗値Rcalを算出することができる。
【0078】
また、各測定部位A,B,C,・・・,Xごとの概算抵抗値Rcalを求めることで、圧縮型接続管ごとの劣化傾向を把握することができる。
【0079】
(実施形態2)
図13は、実施形態2に係る飛行体の構成の一例を示すブロック図である。なお、以下の説明では、上述した実施形態1で説明したものと同じ構成要素には同一の符号を付して重複する説明は省略し、実施形態1とは異なる点について説明する。
【0080】
本実施形態では、図13に示すように、飛行体2aは、実施形態1の距離センサ26bに代えて、接触センサ26fが搭載されている。図14は、実施形態2に係る飛行体の上面視概略図である。図15は、実施形態2に係る飛行体の図14に示す矢視概略図である。
【0081】
図14及び図15に示すように、接触センサ26fには、絶縁体で構成された所定長(例えば、1[m])の指示棒26gが機械的に取り付けられている。図14に示すように、指示棒26gが圧縮型接続管(図14では、直線スリーブ400b)に触れたことを接触センサ26fが検知して、第1温度センサ26d及び第2温度センサ26eが温度検出を行う態様であっても良い。
【0082】
また、飛行体2aは、図15に示すように、回動軸28aを支点として破線矢示方向に可動するガイドレール28を備え、第1温度センサ26dの温度測定用レンズ29がガイドレール28に沿って実線矢示方向に可動する態様であっても良い。これにより、圧縮型接続管の場所や形状等に依らず、電力線接続部400の温度測定を行うことができる。
【0083】
なお、本開示では、電力線接続部400に含まれる圧縮型の引留クランプ400a及び直線スリーブ400b等の圧縮型接続管を温度測定対象として例示したが、電力線接続部点検システム1の温度測定対象は圧縮型接続管に限らず、例えば、送電経路上の圧縮端子や、電力線本体であっても良い。
【符号の説明】
【0084】
1 電力線接続部点検システム
2,2a 飛行体
3 処理装置
4 データセンター
21 制御部
22 駆動部
23 記憶部
24 撮像部
25 通信部
26 センサ
26a 測位センサ
26b 距離センサ
26c 姿勢センサ
26d 第1温度センサ
26e 第2温度センサ
26f 接触センサ
26g 指示棒
27 プロペラ
28 ガイドレール
29 温度測定用レンズ
31 処理部
32 通信部
33 記憶部
34 表示部
100 送電系統
200 電気所
300,300a,300c,300d 電力線
301a,301b,301c,301d 心線部
302a,302b,302c,302d 導電部
300b ジャンパ線
400 電力線接続部
400a 引留クランプ
400b 直線スリーブ
401,411,421 心線部圧縮部材
402,412,422 導電部圧縮部材
403,413,423 防食材注入口
410 クランプ本体
414 本体側接合部
420 ジャンパソケット
424 ソケット側接合部
430 取付部
450 ボルト
500 開閉器
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
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図10
図11
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