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特開2022-11340積層材、積層材の製造方法および積層材の薬剤処理方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022011340
(43)【公開日】2022-01-17
(54)【発明の名称】積層材、積層材の製造方法および積層材の薬剤処理方法
(51)【国際特許分類】
   B27M 3/00 20060101AFI20220107BHJP
   B32B 21/13 20060101ALI20220107BHJP
   B27K 3/02 20060101ALI20220107BHJP
【FI】
B27M3/00 E
B32B21/13
B27K3/02 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】16
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020112407
(22)【出願日】2020-06-30
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成29年度~令和元年度、国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構生物系特定産業技術研究支援センター、革新的技術開発・緊急展開事業(うち経営体強化プロジェクト)「国産材CLTの製造コストを1/2にするための技術開発」委託研究、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(71)【出願人】
【識別番号】500460690
【氏名又は名称】銘建工業株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000180081
【氏名又は名称】株式会社ザイエンス
(74)【代理人】
【識別番号】100134832
【弁理士】
【氏名又は名称】瀧野 文雄
(74)【代理人】
【識別番号】100165308
【弁理士】
【氏名又は名称】津田 俊明
(74)【代理人】
【識別番号】100115048
【弁理士】
【氏名又は名称】福田 康弘
(74)【代理人】
【識別番号】100161001
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 篤司
(72)【発明者】
【氏名】宮内 輝久
(72)【発明者】
【氏名】大橋 義徳
(72)【発明者】
【氏名】山本 哲
(72)【発明者】
【氏名】孕石 剛志
(72)【発明者】
【氏名】茂山 知己
【テーマコード(参考)】
2B230
2B250
4F100
【Fターム(参考)】
2B230AA01
2B230AA04
2B230AA07
2B230BA04
2B230BA18
2B230DA02
2B230EB02
2B230EB26
2B230EB28
2B250AA02
2B250AA09
2B250BA06
2B250BA07
2B250BA08
2B250CA02
2B250CA11
2B250DA04
2B250EA02
2B250EA17
2B250FA02
2B250FA15
2B250FA31
2B250FA47
2B250GA03
2B250GA05
4F100AP01
4F100AP01A
4F100AP01B
4F100BA03
4F100BA05
4F100BA08
4F100CA08
4F100CA08A
4F100CA08B
4F100CC00
4F100CC00C
4F100JC00
4F100JC00A
4F100JC00B
4F100JL11
4F100JL11C
(57)【要約】
【課題】製品サイズの制約を受けず、接着性能やプレス装置への影響がなく、切削屑の再利用が可能であり、新たな設備投資を要せずに既存の設備で製造可能な積層材、積層材の製造方法および積層材の薬剤処理方法を提供する。
【解決手段】積層材の表面を構成する挽き板の表面のみにおいて、少なくとも前記積層材の端部および当該端部から所定位置までの表面にインサイジング加工がされており、前記挽き板の柾目面、板目面および木端面のいずれかがインサイジング加工されており、前記挽き板の木口面はインサイジング加工されていない、積層材。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
積層材の表面を構成する挽き板の表面のみにおいて、少なくとも前記積層材の端部および当該端部から所定位置までの表面にインサイジング加工がされており、
前記挽き板の柾目面、板目面および木端面のいずれかがインサイジング加工されており、前記挽き板の木口面はインサイジング加工されていない、積層材。
【請求項2】
前記積層材の前記表面のうち、前記挽き板の木口面以外の全面がインサイジング加工されている、請求項1に記載の積層材。
【請求項3】
前記積層材が直交集成板である、請求項1または2に記載の積層材。
【請求項4】
前記積層材が釘接合集成板である、請求項1または2に記載の積層材。
【請求項5】
深浸潤処理、加圧注入処理、および表面処理のいずれかによる薬剤処理がされている、請求項1~4のいずれかに記載の積層材。
【請求項6】
防腐処理薬剤、防蟻処理薬剤、および難燃処理薬剤のいずれかを用いた薬剤処理がされている、請求項5に記載の積層材。
【請求項7】
挽き板の柾目面、板目面および木端面のいずれかをインサイジング加工し、木口面はインサイジング加工しない挽き板加工工程と、
前記挽き板加工工程後の挽き板を、繊維方向が層ごとに直交するように積層する積層工程と、
積層した前記挽き板を接着する接着工程と、
を含む、請求項3に記載の直交集成板の製造方法。
【請求項8】
前記接着工程後、前記木口面をインサイジング加工するインサイジング加工工程を含む、請求項7に記載の直交集成板の製造方法。
【請求項9】
前記インサイジング加工は、製材後の未乾燥挽き板、前記未乾燥挽き板を人工乾燥した後の挽き板、前記人工乾燥後に強度選別した後の挽き板、前記強度選別後に一次切削した後の挽き板、フィンガージョイント後の挽き板、および仕上げ切削後の挽き板のいずれかに対して行う、請求項7または8に記載の直交集成板の製造方法。
【請求項10】
前記インサイジング加工は、挽き板の仕上げ切削を行うモルダーが備える回転軸に取り付けたインサイジング用刃物を用いて行い、同一加工ライン上で前記仕上げ切削後に前記インサイジング加工を行う、請求項7~9のいずれかに記載の直交集成板の製造方法。
【請求項11】
挽き板の柾目面、板目面および木端面のいずれかをインサイジング加工し、木口面はインサイジング加工しない挽き板加工工程と、
前記挽き板加工工程後の挽き板を、釘で相互に接合する接合工程と、
を含む、請求項4に記載の釘接合集成板の製造方法。
【請求項12】
前記接合工程後、前記木口面をインサイジング加工するインサイジング加工工程を含む、請求項11に記載の直交集成板の製造方法。
【請求項13】
前記インサイジング加工は、製材後の未乾燥挽き板、前記未乾燥挽き板を人工乾燥した後の挽き板、前記人工乾燥後に強度選別した後の挽き板、前記強度選別後に一次切削した後の挽き板、フィンガージョイント後の挽き板、および仕上げ切削後の挽き板のいずれかに対して行う、請求項11または12に記載の釘接合集成板の製造方法。
【請求項14】
前記インサイジング加工は、挽き板の仕上げ切削を行うモルダーが備える回転軸に取り付けたインサイジング用刃物を用いて行い、同一加工ライン上で前記仕上げ切削後に前記インサイジング加工を行う、請求項11~13のいずれかに記載の釘接合集成板の製造方法。
【請求項15】
深浸潤処理、加圧注入処理、および表面処理のいずれかによる薬剤処理を行う薬剤処理工程を含む、請求項1~4のいずれかに記載の積層材の薬剤処理方法。
【請求項16】
前記薬剤処理工程では、防腐処理薬剤、防蟻処理薬剤、および難燃処理薬剤のいずれかを用いた薬剤処理を行う、請求項15に記載の積層材の薬剤処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、積層材、積層材の製造方法および積層材の薬剤処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
木造建築物に用いられる木材として、無垢材と積層材が挙げられる。無垢材は、伐採した木を乾燥させて作った天然の木材であり、構造用木材や造作用木材として用いられる。
【0003】
また、積層材の主なものとして、集成材(GLT:Glue Laminated Timber)と直交集成板(CLT:Cross Laminated Timber)を挙げることができる。また、GLT、CLTは通常接着剤を用いて積層接着されるが、積層接着に釘を用いる釘接合集成板(NLT:Nail Laminated Timber)と釘接合直交集成板がある。これらは、構造用木材や造作用木材として用いられる。GLTおよびNTLは、挽き板(ラミナ)等の断面寸法の小さい板材を木材の繊維が平行になる様に積層接着した木質材料であり、スギ、ヒノキ、カラマツ、トドマツ、ベイマツ、パイン、SPF等の汎用的に加工される木材より製造される。一方、CLTおよび釘接合直交集成板は、重なり合うラミナの繊維方向が直交するように積層接着された板である。
【0004】
木造建築物の寿命を長くするために、木材を腐れやシロアリ等の被害から守る必要があり、そのために、防腐処理や防蟻処理等の薬剤処理が行われる。また、薬剤処理の前に、薬剤を木材の表面から均一に浸透させるために、木材の表面に細かい切り込みやや圧縮痕などを適切な間隔で入れるインサイジング加工が行われる(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2013-184423号公報
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】木材保存 Vol.44-3(2018)、p.140-141
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
例えば、薬剤処理したCLTを製造する場合、(A)CLTをインサイジング加工せずに注薬缶内で薬剤を加圧注入する方法や、(B)CLTをインサイジング加工し、その後薬剤処理する方法、(C)比較的薄い材料であることから薬剤の高い浸透が得られると考えられるラミナに、あらかじめ加圧注入による薬剤処理を行い、薬剤処理後のラミナを繊維方向が直交するように積層接着してCLTに加工する方法が挙げられる。
【0008】
しかしながら、方法(A)の場合には、注薬缶内に収容可能なサイズのCLTでなければ薬剤処理ができない。現状では、注薬缶内に収容可能なサイズとしては、断面サイズが縦100cm以下、横100cm以下のサイズに制限されてしまい、長さは最大で26m程度であり、実際には薬剤の注入処理以外のCLTの取りまわしの関係で、最長6mが一般的である。そのため、注薬缶の大きさによって処理可能なCLTの大きさが決まってしまうことから、CLTとしての製品サイズに制約があり、注薬缶内に収容できない大きいサイズのCLTを薬剤処理することはできなかった。また、方法(A)は、インサイジング加工をしないために、浸潤量を確保するために加圧条件が厳しくなる場合があり、浸潤ムラが起きやすく、さらに処理対象の樹種が加圧注入により浸潤可能な浸透性の高い樹種に限定される場合があった。
【0009】
そして、方法(B)の場合には、インサイジング処理装置によってインサイジング加工が出来る寸法となるように、CLTを製造または切断する必要があった。現状では、インサイジング処理装置によってインサイジング加工が出来るサイズとしては、断面サイズが縦18cm以下、横50cm以下、長さが8m以下のサイズに制限されてしまい(国内に1台しかない特別な装置)、常用する装置では縦15cm、横24cm程度となる。すなわち、CLTとしての製品サイズに制約があり、インサイジング処理装置で加工できない大きいサイズのCLTを薬剤処理することはできなかった。
【0010】
また、方法(C)の場合には、薬剤処理後のラミナの表面性状が変化することや、ラミナ表面の汚れや毛羽立ちの発生等により、接着が困難となる場合があった。そのため、無処理のラミナを用いた場合の通常の製造条件でのCLTの製造が困難となる場合や、CLTを製造するためのプレス装置への負担や悪影響が生じるおそれがあった。
【0011】
さらに、方法(C)の場合には、薬剤処理によってラミナに反りや寸法変化等の形状変化が生じるため、切削してラミナの寸法を調整してからCLTを製造する必要があった。そのため、薬剤の混入した切削屑が多量に生じてしまい、この切削屑は再利用できず廃棄することとなるため、廃棄費用がかかる場合があった。また、切削屑に混入した薬剤は無駄となってしまうため、混入する薬剤の分だけコスト増となる場合があった。
【0012】
上記問題点に鑑み、本発明は、製品サイズの制約を受けず、接着性能やプレス装置への影響がなく、切削屑の再利用が可能であり、新たな設備投資を要せずに既存の設備で製造可能な積層材、積層材の製造方法および積層材の薬剤処理方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記課題を解決するために、本発明の積層材は、積層材の表面を構成する挽き板の表面のみにおいて、少なくとも前記積層材の端部および当該端部から所定位置までの表面にインサイジング加工がされており、前記挽き板の柾目面、板目面および木端面のいずれかがインサイジング加工されており、木口面はインサイジング加工されていない、積層材である。
【0014】
前記積層材の前記表面のうち、前記挽き板の木口面以外の全面がインサイジング加工されていてもよい。
【0015】
前記積層材がGLTやCLTであってもよい。
【0016】
前記積層材が釘接合集成板であってもよい。
【0017】
前記積層材は、深浸潤処理、加圧注入処理、および表面処理のいずれかによる薬剤処理がされていてもよい。
【0018】
前記積層材は、防腐処理薬剤、防蟻処理薬剤、および難燃処理薬剤のいずれかを用いた薬剤処理がされていてもよい。
【0019】
また、上記課題を解決するために、本発明の直交集成板の製造方法は、挽き板の柾目面、板目面および木端面のすべてあるいはいずれかにインサイジング加工のみを施し、木口面はインサイジング加工しない挽き板加工工程と、前記挽き板加工工程後の挽き板を、繊維方向が層ごとに直交するように積層する積層工程と、積層した前記挽き板を接着する接着工程と、を含む。
【0020】
前記接着工程後、前記木口面をインサイジング加工するインサイジング加工工程を含んでもよい。
【0021】
前記インサイジング加工は、製材後の未乾燥挽き板、前記未乾燥挽き板を人工乾燥した後の挽き板、前記人工乾燥後に強度選別した後の挽き板、前記強度選別後に一次切削した後の挽き板、フィンガージョイント後の挽き板、および仕上げ切削後の挽き板のいずれかに対して行ってもよい。
【0022】
前記インサイジング加工は、挽き板の仕上げ切削を行うモルダーが備える回転軸に取り付けたインサイジング用刃物を用いて行い、同一加工ライン上で前記仕上げ切削後に前記インサイジング加工を行ってもよい。
【0023】
また、上記課題を解決するために、本発明の釘接合集成板の製造方法は、挽き板の柾目面、板目面および木端面のいずれかをインサイジング加工し、木口面はインサイジング加工しない挽き板加工工程と、前記挽き板加工工程後の挽き板を、釘で相互に接合する接合工程と、を含む。
【0024】
前記接合工程後、前記木口面をインサイジング加工するインサイジング加工工程を含んでもよい。
【0025】
前記インサイジング加工は、製材後の未乾燥挽き板、前記未乾燥挽き板を人工乾燥した後の挽き板、前記人工乾燥後に強度選別した後の挽き板、前記強度選別後に一次切削した後の挽き板、フィンガージョイント後の挽き板、および仕上げ切削後の挽き板のいずれかに対して行ってもよい。
【0026】
前記インサイジング加工は、挽き板の仕上げ切削を行うモルダーが備える回転軸に取り付けたインサイジング用刃物を用いて行い、同一加工ライン上で前記仕上げ切削後に前記インサイジング加工を行ってもよい。
【0027】
また、上記課題を解決するために、本発明の薬剤処理方法は、本発明の積層材の薬剤処理方法であり、深浸潤処理、加圧注入処理、および表面処理のいずれかによる薬剤処理を行う薬剤処理工程を含む。
【0028】
前記薬剤処理工程では、防腐処理薬剤、防蟻処理薬剤、および難燃処理薬剤のいずれかを用いた薬剤処理を行ってもよい。
【発明の効果】
【0029】
本発明によれば、製品サイズの制約を受けず、接着性能やプレス装置への影響がなく、切削屑の再利用が可能であり、新たな設備投資を要せずに既存の設備で製造可能な積層材、積層材の製造方法および積層材の薬剤処理方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
図1】挽き板の一例の斜視図である。
図2】CLT100、150の斜視図である。
図3】CLT200、250の斜視図である。
図4】本発明による薬剤処理したCLT250の製造方法について説明する斜視図である。
図5】従来の方法(A)、(B)による薬剤処理したCLTの製造方法について説明する斜視図である。
図6】従来の方法(C)による薬剤処理したCLTの製造方法について説明する斜視図である。
図7】ラミナのインサイジング処理を実施中のインサイジング処理装置を示す写真である。
図8】積層工程および接着工程を行って得たCLTの写真である。
図9】浸漬処理中のインサイジング処理されたCLTの写真である。
図10】塗布処理中のインサイジング処理されたCLTの写真である。
図11】CLTを用いる建物の建設中の施工現場の写真である。
図12】NLTを製造中の写真およびNLTを用いる建物の建設中の施工現場の写真である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、本発明に係る積層材、積層材の製造方法および積層材の薬剤処理方法について、図面を参照しつつ説明する。なお、本発明は以下の例に限定されるものではない。
【0032】
[積層材]
本発明の積層材は、以下に説明するように表面にインサイジング加工がされたものであり、挽き板を接着して構成される木質材料である。例えば、集成材、CLTおよびNLTが挙げられる。
【0033】
〈挽き板〉
挽き板は、木材の製材後の残り部分や、小径木から大径木の丸太等を製材して得られる。樹種は特に制限されず、これまで使用されてきた針葉樹や広葉樹の国産材や外国産の木材より挽き板を得ることができる。挽き板の一例の斜視図について、図1に示す。図1(a)に示すラミナ10は、木口面11と直交する方向を長手方向とする直方体形状であり、木口面11と直角な面である柾目面(または、板目面)12と、木口面11および柾目面(または、板目面)12と直角な面である木端面13を備える。
【0034】
また、図1(b)に示すラミナ20は、2枚の板をフィンガージョイント21によりたて継ぎしたものである。なお、3枚以上の板をフィンガージョイントによりたて継ぎしてラミナを形成する場合もある。
【0035】
図2に、積層材の一例としてCLT100の斜視図を示す。図2(a)のCLT100は、インサイジング加工がされたラミナ30が積層接着して形成されている。CLT100の表面を構成するラミナ30の表面のみにおいて、CLT100の端部110および端部110から所定位置120までの表面にインサイジング加工がされている。すなわち、CLT100の表面とはならず、CLT100としては露出せずに内部に位置するラミナ30の表面には、薬剤処理は不要となるためインサイジング加工がされていない。なお、CLTの木口は、ラミナの木口とは一致せず、例えばラミナ100の場合、図2(a)で示す正面101と未図示のその反対の面、および右側面102と未図示のその反対の面となる左側面の、合計4面の側面がCLTの木口となり、上面103および未図示のその反対の面となる下面は木口に該当しない。本件明細書では、CLTの木口とラミナの木口とが混同しないよう、CLTの木口には符号を付さず、ラミナの木口に符号を付して説明する。
【0036】
そして、積層材において、特に防腐処理や防蟻処理が必要となるコンクリート等の基礎部分に近い方や、地面と接触または近い方のみに、インサイジング加工がされていれば足りる場合がある。その場合の一例として、CLT100では、CLT100の端部110および端部110から所定位置120までの表面にインサイジング加工がされている。端部110から所定位置120までの長さLは任意であり、一般的には長さLは5cm~100cmが目安となる。
【0037】
また、CLT100では、ラミナ30の柾目面(または、板目面)31および木端面32のいずれかがインサイジング加工されており、木口面33はインサイジング加工されていない。すなわち、CLT100の表面を構成するラミナ30の表面において、木口面33を除く表面にインサイジング加工がされている。木口面33は、他の面と比べて液体の浸透や蒸発が多く起こる面であり、薬剤の浸透性が高いため、樹種と処理方法によってはインサイジング加工を必須としない。むしろ、木口面33をインサイジング加工することでラミナ30の割れをもたらすおそれがあるという問題がある点でも、インサイジング加工を必須としない。ただし、CLTの積層面からの浸透性の改善をはかるため、積層接着後に積層面にインサイジング処理を行う可能性があり、その際に、木口面のインサイジングを行うことが好ましい場合も想定される。
【0038】
図2(b)に示すCLT150は、CLT100を薬剤処理したものである。内部断面の薬剤の浸透状態を説明するため、薬剤処理した後に一部を切断して内部断面151を露出させている。内部断面151に示すように、薬剤は、CLT150の表面から所定深さまで浸透していればよく、内部中心まで完全に浸透していてもよいが、これが必須ではない。また、CLT100を切断してCLT160とし(図2(c))、その後に薬剤処理してCLT170を得ることもできる(図2(d))。この場合、切断面161、171にはインサイジング加工がされていない。なお、切断面161にインサイジング加工し、その後薬剤処理してもよい。すなわち、CLT100をトリミングやプレカットすることで新たに露出した面に対し、薬剤処理前にインサイジング加工してもよい。
【0039】
ここで、CLT100の薬剤処理としては、例えば深浸潤処理、加圧注入処理、および浸漬、塗布、吹付け等の表面処理、のいずれかによる薬剤処理が挙げられる。
【0040】
なお、深浸潤処理は、浸漬、塗布、噴霧処理でも加圧注入処理と同レベルの薬剤浸潤が得られるとともに、処理による寸法変化が起らず処理後の再乾燥も不要で、小規模な処理装置で済む方法として開発された処理である。深浸潤処理は高浸透性薬剤(非極性)を用いて、適切なインサイジング、適切な薬剤付着量、および養生を組み合わせることによって行うことができる(例えば、非特許文献1)。
【0041】
CLT100の薬剤処理により、CLT150は防腐処理薬剤、防蟻処理薬剤、および難燃処理薬剤のいずれかを用いた薬剤処理がされている。
【0042】
次に、CLT100とは異なる積層材の一例として、図3にCLT200、250の斜視図を示す。図3(a)に示すCLT200は、その表面のうち、ラミナ40の木口面41以外の全面がインサイジング加工されている点で、CLT100とは異なるが、他の点はCLT100と同様である。積層材の全面に薬剤処理が必要な場合には、CLT200のように木口面を除く表面全面がインサイジング加工されていることで、薬剤の浸透や処理量が偏ることを防止できる。
【0043】
図3(b)に示すCLT250は、CLT200を薬剤処理したものである。内部断面の薬剤の浸透状態を説明するため、薬剤処理した後に一部を切断して内部断面251を露出させている。内部断面251に示すように、薬剤は、CLT250の表面から所定深さまで浸透していればよく、内部中心まで完全に浸透していてもよいが、これが必須ではない。また、CLT200を切断してCLT260とし(図3(c))、その後に薬剤処理してCLT270を得ることもできる(図3(d))。この場合、切断面261、271にはインサイジング加工がされていない。なお、切断面261にインサイジング加工し、その後薬剤処理してもよい。すなわち、CLT200をトリミングやプレカットすることで新たに露出した面に対し、薬剤処理前にインサイジング加工してもよい。
【0044】
ここで、CLT200の薬剤処理としては、例えば深浸潤処理、加圧注入処理、および浸漬、塗布、吹付け等の表面処理、のいずれかによる薬剤処理が挙げられる。
【0045】
CLT200の薬剤処理により、CLT250は防腐処理薬剤、防蟻処理薬剤、および難燃処理薬剤のいずれかを用いた薬剤処理がされている。
【0046】
[直交集成板の製造方法]
次に、本発明の直交集成板の製造方法について、薬剤処理したCLT250の製造方法について説明する図4の斜視図を参照しつつ、説明する。本発明の直交集成板の製造方法は、以下に説明する挽き板加工工程と、積層工程と、接着工程と、を含む。
【0047】
〈挽き板加工工程〉
本工程は、挽き板の柾目面、板目面および木端面のいずれかをインサイジング加工し、木口面はインサイジング加工しない工程である。例えば、図4(a)に示すラミナ10の柾目面(または、板目面)12と木端面13をインサイジング加工し、木口面11は加工しないことで、図4(b)に示すラミナ40を得る。なお、ラミナ40としては、積層材の積層態様に応じて1面から最大4面までインサイジング加工されているものを想定できる。例えば、図4(a)、(e)~(g)のように、ラミナ10の柾目面(または、板目面)12のみがインサイジング加工されたラミナ45を得て、後述する積層工程および薬剤処理工程を行い、CLT205やCLT255を得てもよい。
【0048】
具体的には、インサイジング処理装置を用いて、ラミナ10の柾目面(または、板目面)12と木端面13のいずれかのうち、所定面のみをインサイジング処理することができる。このインサイジング処理は、所定面の全面にわたって行うことができるし、一部分のみを処理することもできる。
【0049】
また、インサイジング加工は、挽き板の仕上げ切削を行うモルダーが備える回転軸に取り付けたインサイジング用刃物を用いて行うことができ、同一加工ライン上で前記仕上げ切削後に前記インサイジング加工を行うことができる。この時、インサイジング用刃物を制御することで、諸底面の一部分のみを処理することもできる。すなわち、モルダーで仕上げ切削とインサイジング加工を一気に行うことで、直交集成板の製造および前処理作業の効率を上げることができる。例えば、図7に、ラミナのインサイジング処理を実施中のインサイジング処理装置を示す。ラミナは厚さ30mm、幅122mmで、長さ8mである。
【0050】
ラミナ10は、例えば丸太を製材して得られる。具体的には、丸太を製材して製材後の未乾燥挽き板(グリンラミナ)を得て、この未乾燥挽き板を人工乾燥して人工乾燥後の挽き板を得る。次に、人工乾燥後に各挽き板の強度を選別して強度選別した後の挽き板を得て、強度選別後にラミナの形状を整えるべく一次切削して、一次切削した後の挽き板を得る。そして、必要に応じてフィンガージョイントを行ってフィンガージョイント後の挽き板を得て、最後にラミナ形状とするためにプレナー等の仕上げ切削をして仕上げ切削後の挽き板(例えばラミナ10)を得る。これらの過程を得て、ラミナ10が得られる。
【0051】
本発明では、インサイジング加工は、上記の製材後の未乾燥挽き板、未乾燥挽き板を人工乾燥した後の挽き板、人工乾燥後に強度選別した後の挽き板、強度選別後に一次切削した後の挽き板、フィンガージョイント後の挽き板、および仕上げ切削後の挽き板のいずれかに対して行うことができる。特に、ラミナとしての寸法が安定した状態である、仕上げ切削後の挽き板に対してインサイジング加工することが、インサイジング深さを最大限に確保し浸潤を高めやすいことから好ましい。
【0052】
〈積層工程〉
積層工程は、挽き板加工工程後の挽き板を、繊維方向が層ごとに直交するように積層する工程である。
【0053】
〈接着工程〉
そして、接着工程は、積層した挽き板を接着する工程である。
【0054】
これらの積層工程と接着工程を行うことで、CLT200を得ることができる(図3(a))。積層工程と接着工程を交互に行い、積層された挽き板全体に1層ごとに接着剤を塗布していくほか、積層工程と接着工程は別々に行ってもよく、ラミナ40に接着剤を塗布して積層することによって同時に行ってもよい。なお、積層工程と接着工程の条件は、既存のCLTの製造条件に基づいて設定することができる。例えば、接着剤としてはメラミン樹脂、ポリウレタン樹脂、水性高分子イソシアネート系樹脂、レゾルシノール樹脂等を用いることができる。参考として、図8に積層工程および接着工程を行って得たCLTの写真を示す。図8(a)がCLT全体の写真、図8(b)がCLTの表面の写真であり、インサイジング処理後の表面を撮った写真である。
【0055】
(その他の構成)
本発明の直交集成板の製造方法は、上記の工程に加え、更なる工程を含んでもよい。例えば、積層工程と接着工程に加えて直交集成板を加圧して締め付ける圧締工程を行うことにより、ラミナ40をより強固に接着してCLT200の接着強度を高めることができる。また、接着工程後に接着剤が硬化したら、最終の仕上げ切削工程を行うことにより、CLT200の形状を整えることができる。また、積層面からの浸透をより向上させるため、仕上げ切削後の積層面にインサイジング加工を施すことができる。
【0056】
[釘接合集成板の製造方法]
次に、本発明の釘接合集成板の製造方法について説明する。本発明の釘接合集成板の製造方法は、以下に説明する挽き板加工工程と、接合工程と、を含む。
【0057】
〈挽き板加工工程〉
本工程は、挽き板の柾目面、板目面および木端面のいずれかをインサイジング加工し、木口面はインサイジング加工しない工程である。
【0058】
具体的には、インサイジング処理装置を用いて、図1(a)に示すラミナ10の柾目面(または、板目面)12と木端面13のいずれかのうち、所定面のみをインサイジング処理することができる。このインサイジング処理は、所定面の全面にわたって行うことができるし、一部分のみを処理することもできる。
【0059】
また、インサイジング加工は、挽き板の仕上げ切削を行うモルダーが備える回転軸に取り付けたインサイジング用刃物を用いて行うことができ、同一加工ライン上で前記仕上げ切削後に前記インサイジング加工を行うことができる。すなわち、モルダーで仕上げ切削とインサイジング加工を一気に行うことで、直交集成板の製造および前処理作業の効率を上げることができる。
【0060】
ラミナ10は、例えば丸太を製材して得られる。具体的には、丸太を製材して製材後の未乾燥挽き板(グリンラミナ)を得て、この未乾燥挽き板を人工乾燥して人工乾燥後の挽き板を得る。次に、人工乾燥後に各挽き板の強度を選別して強度選別した後の挽き板を得て、強度選別後にラミナの形状を整えるべく一次切削して、一次切削した後の挽き板を得る。そして、必要に応じてフィンガージョイントを行ってフィンガージョイント後の挽き板を得て、最後にラミナ形状とするためにプレナー等の仕上げ切削をして仕上げ切削後の挽き板(例えばラミナ10)を得る。これらの過程を得て、ラミナ10が得られる。
【0061】
本発明では、インサイジング加工は、上記の製材後の未乾燥挽き板、未乾燥挽き板を人工乾燥した後の挽き板、人工乾燥後に強度選別した後の挽き板、強度選別後に一次切削した後の挽き板、フィンガージョイント後の挽き板、および仕上げ切削後の挽き板のいずれかに対して行うことができる。特に、ラミナとしての寸法が安定した状態である、仕上げ切削後の挽き板に対して、インサイジング加工することが、インサイジング深さを最大限に確保することができ浸潤量を高めやすいことから好ましい。
【0062】
〈接合工程〉
接合工程は、挽き板加工工程後の挽き板を、釘で相互に接合する工程である。例えば、2枚の挽き板を密着させたものに釘を打ち付けて接合することで、NLTを得ることができる。接合に用いる釘は、NLTの製造に用いる一般的なものを使用することができ、例えば、仕上げ切削加工やプレカット加工の際に刃物を傷めないようなアルミ釘、プラスチック釘などを用いることができる。
【0063】
(その他の構成)
本発明の釘接合集成板の製造方法は、上記の工程に加え、更なる工程を含んでもよい。例えば、接合工程後に、最終の仕上げ切削工程を行うことにより、NLTの形状を整えることができる。また、釘接合集成板の表面からの浸透をより向上させるため、仕上げ切削後の表面にインサイジング加工を施すことができる。
【0064】
[積層材の薬剤処理方法]
次に、本発明の積層材の薬剤処理方法について説明する。本発明の積層材の薬剤処理方法は、深浸潤処理、加圧注入処理、および浸漬、塗布、吹付け等の表面処理のいずれかによる薬剤処理を行う薬剤処理工程を含む。
【0065】
(深浸潤処理)
上述のように、深浸潤処理は、浸漬、塗布、噴霧(射)処理でも加圧注入処理と同レベルの薬剤浸潤が得られるとともに、処理による寸法変化が起らず処理後の再乾燥も不要で、小規模な処理装置で済む処理である。また、必要な部位に選択的に無駄なく薬剤を注入できる。深浸潤処理は高浸透性薬剤(非極性)を用いて、適切なインサイジング、適切な薬剤付着量、および養生を組み合わせることによって行うことができる。参考として、図9に浸漬処理中のインサイジング処理されたCLTの写真を示す。CLTの大きさは、厚さ30mm、幅900mm、長さ3.4mである。
【0066】
(加圧注入処理)
加圧注入処理とは、積層材を注薬缶と呼ばれる釜に入れ、高い圧力をかけながら薬剤を積層材の内部に深く浸透させる処理である。積層材の深部まで浸透するため、腐りやすい辺材部分(木材の外側の白っぽい部分)全体を保護することができ、長期間の耐久性を期待することができる。
【0067】
加圧注入処理における積層材の製品サイズは、注薬缶に入れることのできる大きさに制限されてしまうものの、インサイジング加工されていることにより、使用薬剤の浸透性や加圧条件等について、従来のインサイジング加工されていない場合よりも穏和な条件設定をして処理をすることができる。
【0068】
(表面処理)
表面処理としては、薬剤への積層材の浸漬、刷毛やローラー等による薬剤の積層材への塗布、スプレーや噴霧器等による薬剤の積層材への吹付け等が挙げられる。インサイジング加工を行い、適切な薬剤を選択すれば、加圧注入処理によらなくても、表面処理(すなわち深浸潤処理)によって薬剤の効果を十分に発揮することができる。また、表面処理によって、必要な部位に選択的に無駄なく薬剤を注入できる。参考として、図10に塗布処理中のインサイジング処理されたCLTの写真を示す。CLTの大きさは、厚さ30mm、幅900mm、長さ3.4mである。
【0069】
また、薬剤処理工程では、防腐処理薬剤、防蟻処理薬剤、および難燃処理薬剤のいずれかを用いた薬剤処理を行うことができる。これらの処理薬剤としては、深浸潤処理、加圧注入処理、および表面処理の各処理に好適なものを使用することができる。
【0070】
(その他の構成)
本発明の積層材の薬剤処理方法は、薬剤処理工程に加え、更なる工程を含んでもよい。例えば、薬剤処理前に積層材の処理対象面を清浄な状態にする前処理工程や、薬剤処理前の積層材の形状を整える仕上げ工程やプレカット・穴あけ加工工程等が挙げられる。
【0071】
以上のように、本発明であれば、積層材として製品サイズの制約を受けず、インサイジング加工がされた大型の積層材とすることができる。例えば日本国内では、道路交通法により道路を通行して運搬可能な積層材としては、断面が幅2.5m、高さ3.8mで長さ12mが目安となり、陸上輸送を前提とする積層材の場合の積層材の製品サイズは最大でもこのサイズとなるが、このサイズであっても従来の積層材の製品サイズよりもはるかに大きい積層材である。また、日本の道路交通法のような制約のない外国や、日本国内であっても運搬不要な場合には、更に大きいサイズの積層材とすることができる。
【0072】
特に、CLTの場合、構造材としての役割と壁材としての役割を果たすことのできる大型のパネル状のCLTが有用である。CLTを現場搬入前にプレカットすることと組み合わせることで、建築物の建設の工期を大幅に短縮でき、かつ、施工性に優れる。例えば、CLTを用いて木造のコンビニエンスストア等の店舗、ホテル、アパート等の建築物を建設する場合、CLTを現場搬入前にプレカットし、現場ではプレカット後のCLTのパネルを張り合わせていくことで施工できる。そのため、柱や梁等の構造部材を組み立てた後に、床材や壁材を施工する使用の木造建築物と比べて、施工の工期が大幅に短縮される。参考として、図11に、CLTを用いる建物の建設中の施工現場の写真を示す。所定寸法にプレカットされ、窓となる開口部分もプレカットされたパネル状のCLTが、適宜張り合わせられることで、建物が出来上がる。また、図12に、NLTを製造中の写真およびNLTを用いる建物の建設中の施工現場の写真を示す。CLTの場合と同様に、プレカットされたNLTを適宜組み合わせて、建物が出来上がる。
【0073】
ただし、CLTは木材を原料とする材料であることから、CLTで施工した建築物の長期にわたる安全性を確保するためには、雨水等に接触する可能性の高い部位や蒸暑地域およびシロアリ等の虫害リスクの高い地域での使用等の使用環境によっては、防腐処理や防蟻処理が必要となる場合がある。また、建築物の資産価値の維持には、防腐や防蟻等の保存処理が重要な役割を果たすことがある。
【0074】
このような保存処理されたCLTを得るためには、上記のような施工の容易性や工期の短縮というメリットを損なわないことが好ましく、大面積で大断面の積層材に処理が可能な本発明があれば、それが可能となる。
【0075】
すなわち、本発明であれば、日本国内において道路交通法の制約があることを除けば、CLTとしての製品サイズの制約を受けることがない。そして、図4に示すように、既に接着やプレス処理し、必要に応じてプレカットや穴あけ等の前加工したCLT200に対して薬剤処理を行ってCLT250を得ることから(図4(d))、薬剤処理による接着性能やプレス装置等への影響がなく、プレカットや穴あけにより生じる切削屑等は薬剤が混入していないため再利用可能である。さらに、前加工後のCLT200に対して薬剤処理をすれば、薬剤の無駄が少なく、経済的であり、表面処理による薬剤処理であれば、建設現場において薬剤処理することも可能である。また、ラミナ10に対してインサイジング加工するため、既存のインサイジング処理装置で対応可能であり、深浸潤処理や表面処理により薬剤処理を行えば、注薬缶のサイズを大きくしなくても、製品サイズの大きいCLTに薬剤処理することが可能であるため、インサイジング処理や薬剤処理を行うにあたり、新たな設備投資が必要なく、大断面のCLT等に薬剤処理が可能となる。
【0076】
以下、本発明の対比として、[発明が解決しようとする課題]の項目で紹介した従来法である方法(A)~(C)の各方法について、その具体例を説明する。
【0077】
[従来例1(方法(A))]
図5に、従来の方法(A)、(B)による薬剤処理したCLTの製造方法について説明する斜視図を示す。方法(A)は、図5(a)~(c)に示す製造フローにより、CLTをインサイジング加工せずに注薬缶内で薬剤を加圧注入する方法により、薬剤処理したCLTを製造する方法である。具体的には、ラミナ10(図5(a))をCLT300に積層加工し(図5(b))、注薬缶のサイズに合わせてCLT300を切断後、注薬缶内で加圧注入による薬剤処理を行い、薬剤処理したCLT400を得る(図5(c))。
【0078】
このため、方法(A)では、CLTの製品サイズは注薬缶のサイズの制限を受けることとなる。また、インサイジング処理せずに薬剤を加圧注入するため、注入量や浸潤度のムラが出やすく、必要量の確保のために過度な加圧条件と薬剤量が必要となる。また、CLT300を構成するラミナ10が個々に膨らんだり、反ったりする場合がある。これらの場合には、CLT300の形状を整えるため、プレナー等の仕上げ切削を再度行うこととなる。更に、場合によっては接着剤が剥がれてラミナ10が剥がれてしまうことがあり、薬剤処理後にラミナ10を再接着しても接着強度が不十分な場合があるため、製品としては用いることができない場合が生じる。なお、本発明であれば、CLT200はインサイジング加工されていることで、加圧注入処理は必須ではなく、深浸潤処理や表面処理で足りるため、CLT250の製品サイズは注薬缶のサイズの制限を受けることはない(図4)。
【0079】
[従来例2(方法(B))]
方法(B)は、図5(a)、(b)、(d)、(e)に示す製造フローにより、CLTをインサイジング加工し、その後薬剤処理する方法により、薬剤処理したCLTを製造する方法である。具体的には、ラミナ10(図5(a))をCLT300に積層加工し(図5(b))、インサイジング処理装置で加工処理可能なサイズとなるようにCLT300を切断後、インサイジング加工を行ってCLT450を製造し(図5(d))、更に注薬缶内で加圧注入による薬剤処理を行うことで、薬剤処理したCLT500を得る(図5(e))。
【0080】
このため、方法(B)では、CLTの製品サイズは、インサイジング処理装置で加工処理可能なサイズに制限されることとなる。また、インサイジング処理装置の特性として、インサイジング加工はCLT300の長手方向側面451に対して行われ、短手方向側面452を加工することができない。そして、短手方向側面452はラミナ10の木口面11と木端面13で構成されており、木口面11と木端面13では薬剤の浸透性が異なるため、短手方向側面452において薬剤の浸透ムラが生じるおそれがあり、そのため薬剤の効能にもムラが生じるおそれがある。さらに、長手方向側面453のように、ラミナ10の木口面11と木端面13で構成されている面にインサイジング加工がされると、樹種と処理方法によっては木口面11において割れが発生するおそれがあり、これにより不良品が発生するおそれがある。なお、本発明であれば、木口面はインサイジング加工しないため、このような不良品が発生するおそれはない(図4)。なお、CLTの積層面からの浸透性の改善をはかるため、積層接着後に積層面にインサイジング処理を行う可能性があり、その際に、木口面のインサイジングを行うことが好ましい場合も想定される。
【0081】
[従来例3(方法(C))]
図6に、従来の方法(C)による薬剤処理したCLTの製造方法について説明する斜視図を示す。方法(C)は、図6(a)~(c)に示す製造フローにより、挽き板(ラミナ)をインサイジング加工してから薬剤処理し、薬剤処理後のラミナを繊維方向が直交するように積層接着してCLTに加工する方法により、薬剤処理したCLTを製造する方法である。具体的には、ラミナ10(図6(a))をインサイジング加工してから、それを加圧注入処理により薬剤処理してラミナ50を得る(図6(b))。薬剤処理によって、ラミナ50は、反りや凹凸が発生したり、表面に汚れや毛羽立ちが発生したりすることで、そのままでは積層接着が難しいため、プレナー等の切削処理や研磨処理を行う。その後、ラミナ50を積層加工し、必要に応じて仕上げ切削を行って形状を整えて、CLT600を得る(図6(c))。
【0082】
このため、方法(C)では、薬剤処理後のラミナ50の表面性状が変化することや、ラミナ50の表面の汚れや毛羽立ちの発生等により、CLTとするための接着が困難となる場合があった。そのため、無処理のラミナを用いた場合に適用する通常の製造条件でのCLT600の製造が困難となる場合や、CLT600を製造するためのプレス装置への負担や悪影響が生じるおそれがある。また、薬剤処理によってラミナ50に反りや体積変化が生じるため、切削してラミナ50の寸法を調整してからCLT600を製造する必要がある。そのため、薬剤の混入した切削屑が多量に生じてしまい、この切削屑は再利用できず廃棄することとなるため、廃棄費用がかかる場合がある。また、切削屑に混入した薬剤は無駄となってしまうため、混入する薬剤の分だけコスト増となる場合がある。なお、本発明であれば、インサイジング加工後、必要に応じてプレカット等の前処理後に薬剤処理するため、切削屑に薬剤は混入しないので切削屑は再利用可能であり、また、切削屑に混入することで無駄となる薬剤を無くす、または大幅に削減することができるため、薬剤のコストを抑えることができる。さらに、薬剤処理前にCLT200を製造するため、無処理のラミナを用いた場合の通常の製造条件を適用してCLT200を製造することができるので、ラミナ40の接着が困難となることや、CLT200を製造するためのプレス装置への負担や悪影響が生じるおそれはない(図4)。
【0083】
(まとめ)
以上より、本発明は、製品サイズの制約を受けず、接着性能やプレス装置への影響がなく、切削屑の再利用が可能であり、新たな設備投資を要せずに既存の設備で製造可能な積層材、積層材の製造方法および積層材の薬剤処理方法を提供することができるため、産業用有用である。
【符号の説明】
【0084】
10 ラミナ
11 木口面
12 柾目面(または、板目面)
13 木端面
20 ラミナ
21 フィンガージョイント
30 ラミナ
31 柾目面(または、板目面)
32 木端面
33 木口面
40 ラミナ
41 木口面
45 ラミナ
50 ラミナ
100 CLT
101 正面
102 右側面
103 上面
110 端部
120 所定位置
150 CLT
151 内部断面
160 CLT
161 切断面
170 CLT
171 切断面
200 CLT
205 CLT
250 CLT
251 内部断面
255 CLT
260 CLT
261 切断面
270 CLT
271 切断面
300 CLT
400 CLT
450 CLT
451 長手方向側面
452 短手方向側面
453 長手方向側面
500 CLT
600 CLT
L 長さ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12