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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022113419
(43)【公開日】2022-08-04
(54)【発明の名称】積層構造体及び積層構造体製造方法
(51)【国際特許分類】
   B32B 15/08 20060101AFI20220728BHJP
   B32B 15/09 20060101ALI20220728BHJP
【FI】
B32B15/08 A
B32B15/08 U
B32B15/09
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021009656
(22)【出願日】2021-01-25
(71)【出願人】
【識別番号】591145335
【氏名又は名称】パナック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002620
【氏名又は名称】特許業務法人大谷特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】阪本 英之
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 隆志
【テーマコード(参考)】
4F100
【Fターム(参考)】
4F100AB01D
4F100AB04D
4F100AB10D
4F100AB12D
4F100AB16D
4F100AB17D
4F100AB24D
4F100AB33D
4F100AJ06A
4F100AK01A
4F100AK03A
4F100AK04A
4F100AK07A
4F100AK17A
4F100AK25A
4F100AK41C
4F100AK45A
4F100AK51C
4F100AK57A
4F100BA04
4F100BA07
4F100CA02C
4F100CB05B
4F100GB41
4F100JA02D
4F100JB01C
4F100JL04
4F100JL13B
4F100JN01B
4F100YY00B
4F100YY00C
(57)【要約】
【課題】カールが抑制され、透明性又は耐久性に優れる積層構造体及び積層構造体製造方法を提供する。
【解決手段】樹脂層10と、樹脂層10上に設けられた粘着剤層20と、粘着剤層20上に設けられ、エッチング液に対する耐性を有する耐エッチング層30と、耐エッチング層30上に設けられた金属箔層40とを備える、積層構造体。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂層と、
前記樹脂層上に設けられた粘着剤層と、
前記粘着剤層上に設けられ、エッチング液に対する耐性を有する耐エッチング層と、
前記耐エッチング層上に設けられた金属箔層とを備える、積層構造体。
【請求項2】
前記樹脂層は、ポリカーボネート、ポリメチルメタクリレート、シクロオレフィンポリマー、トリアセテートセルロース、フッ素系樹脂、ポリフェニルサルファイド、ポリエチレン及びポリプロピレンからなる群から選ばれる少なくとも1種である、請求項1に記載の積層構造体。
【請求項3】
前記粘着剤層を形成する粘着剤は、光学透明粘着剤である、請求項1又は2に記載の積層構造体。
【請求項4】
前記粘着剤層の厚さは、5μm以上50μm以下である、請求項1~3のいずれか1項に記載の積層構造体。
【請求項5】
前記耐エッチング層を形成する耐エッチング層組成物は、熱硬化性樹脂を含む、請求項1~4のいずれか1項に記載の積層構造体。
【請求項6】
前記耐エッチング層を形成する耐エッチング層組成物は、ポリエステル構造を有する熱硬化性樹脂を含む、請求項1~5のいずれか1項に記載の積層構造体。
【請求項7】
前記耐エッチング層の厚さは、1μm以上10μm以下である、請求項1~6のいずれか1項に記載の積層構造体。
【請求項8】
前記金属箔層は、銅、ステンレス、黄銅、銀、アルミニウム、ニッケル及びチタンからなる群から選ばれる少なくとも1種である、請求項1~7のいずれか1項に記載の積層構造体。
【請求項9】
樹脂層上に粘着剤を配置し、前記粘着剤からなる粘着剤層を積層させた第1積層体を形成する工程と、
金属箔層上に耐エッチング層組成物を配置し、前記耐エッチング層組成物を乾燥させて耐エッチング層を積層させた第2積層体を形成する工程と、
前記第1積層体の前記粘着剤層と前記第2積層体の前記耐エッチング層とを対向するように配置し、前記粘着剤層と前記耐エッチング層とを常温で貼合する工程とを含む、積層構造体製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、積層構造体及び積層構造体製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
金属箔層及び樹脂層を積層する積層構造体は、金属張積層体、絶縁電線及び透明導電性フィルム等の様々な用途に適用されている。積層構造体において、金属箔層と樹脂層とを積層させる方法として、樹脂層上に溶剤系接着剤を塗布し、乾燥後、金属箔層を熱圧着(ドライラミネート)する方法が挙げられる(例えば、特許文献1参照)。なお、この方法で積層させるためには、樹脂層は耐溶剤性を有することを要するため、樹脂層として用いる材料が限定されてしまう問題がある。
【0003】
積層構造体において、熱圧着(ドライラミネート)を実施し、金属箔層と樹脂層とを積層させると、金属箔層と樹脂層との線膨張係数の違いによりカールが発生してしまう問題がある。
そこで、このカール発生問題に対して、常温貼合が可能な粘着剤を採用し、金属箔層と樹脂層との間に粘着剤層を介して積層させることで、熱加工の工程を避けることができ、加熱貼合によるカールの発生を避けている。また、粘着剤を採用することで、耐溶剤性を有していないポリカーボネート(PC)等の材料を樹脂層として採用することも可能となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2017-226223号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
積層構造体は、用途に応じて金属箔層を所望のパターンである金属パターンに加工して使用される。積層構造体において、金属箔層に加工を施して金属パターンとする方法としては、金属箔層上にレジスト層を設け、いわゆるフォトリソグラフィー法によりレジストパターンを形成し、その後、エッチングにより金属箔層を金属パターンに加工するサブトラクティブ法が挙げられる。
ここで、常温貼合が可能な粘着剤を採用した積層構造体においては、粘着剤は、一般的にガラス転移温度が低く、エッチング工程でエッチング液が粘着剤に浸透しやすいため、積層構造体の透明性又は耐久性が損なわれてしまう問題がある。
また一方で、ガラス転移温度の低い樹脂層で熱圧着された積層構造体は金属箔層のパターン加工後に露出する樹脂層表面にタック性を有するため、ブロッキングや重送の問題がある。
【0006】
そこで、本発明は、上記問題に鑑み、カールが抑制され、透明性又は耐久性に優れる積層構造体及び積層構造体製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明者らは鋭意研究した結果、樹脂層と金属箔層とを積層するにあたって、常温貼合が可能な粘着剤を採用し、かつ、金属箔層と粘着剤層の間に耐エッチング層を設けることによって、上記課題を解決することを見出した。すなわち、本発明は、以下の[1]~[10]を提供する。
【0008】
[1]樹脂層と、前記樹脂層上に設けられた粘着剤層と、前記粘着剤層上に設けられ、エッチング液に対する耐性を有する耐エッチング層と、前記耐エッチング層上に設けられた金属箔層とを備える、積層構造体。
[2]前記樹脂層は、ポリカーボネート、ポリメチルメタクリレート、シクロオレフィンポリマー、トリアセテートセルロース、フッ素系樹脂、ポリフェニルサルファイド、ポリエチレン及びポリプロピレンからなる群から選ばれる少なくとも1種である、[1]に記載の積層構造体。
[3]前記粘着剤層を形成する粘着剤は、光学透明粘着剤である、[1]又は[2]に記載の積層構造体。
[4]前記粘着剤層の厚さは、5μm以上50μm以下である、[1]~[3]のいずれかに記載の積層構造体。
[5]前記耐エッチング層を形成する耐エッチング層組成物は、熱硬化性樹脂を含む、[1]~[4]のいずれかに記載の積層構造体。
[6]前記耐エッチング層を形成する耐エッチング層組成物は、ポリエステル構造を有する熱硬化性樹脂を含む、[1]~[5]のいずれかに記載の積層構造体。
[7]前記耐エッチング層の厚さは、1μm以上10μm以下である、[1]~[6]のいずれかに記載の積層構造体。
[8]前記金属箔層は、銅、ステンレス、黄銅、銀、アルミニウム、ニッケル及びチタンからなる群から選ばれる少なくとも1種である、[1]~[7]のいずれかに記載の積層構造体。
[9]樹脂層上に粘着剤を配置し、前記粘着剤からなる粘着剤層を積層させた第1積層体を形成する工程と、金属箔層上に耐エッチング層組成物を配置し、前記耐エッチング層組成物を乾燥させて耐エッチング層を積層させた第2積層体を形成する工程と、前記第1積層体の前記粘着剤層と前記第2積層体の前記耐エッチング層とを対向するように配置し、前記粘着剤層と前記耐エッチング層とを常温で貼合する工程とを含む、積層構造体製造方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、カールが抑制され、透明性又は耐久性に優れる積層構造体及び積層構造体製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の積層構造体の一実施形態を示す断面図を示す断面図である。
図2】本発明の積層構造体の製造工程の一実施形態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
(実施の形態)
[積層構造体]
本発明の実施の形態に係る積層構造体1は、図1に示すように、樹脂層10と、樹脂層10上に設けられた粘着剤層20と、粘着剤層20上に設けられ、エッチング液に対する耐性を有する耐エッチング層30と、耐エッチング層30上に設けられた金属箔層40とを備えることを特徴とする。
【0012】
<樹脂層>
樹脂層10は、透明性及び耐久性を有し、光学的性能及び機械的性能に優れるものであることが好ましい。樹脂層10は、全光線透過率が80%以上であることが好ましく、85%以上であることがより好ましく、90%以上であることがさらに好ましい。ここで、光線透過率は、JIS K7361-1:1997(プラスチック-透明材料の全光線透過率の試験方法)に準拠して測定した値である。
本発明の実施の形態に係る積層構造体1は、樹脂層10と耐エッチング層30とを粘着剤層20により積層することができるため、樹脂層10の線膨張係数によらず、積層構造体1を製造する過程でのカールを抑制することができる。ただし、積層構造体1の製造後の保管及び輸送時に熱がかかった場合のカールを抑制する観点から、積層構造体を構成する金属箔層40との線膨張係数の差が小さいことが好ましい。樹脂層10は、積層構造体を構成する金属箔層40との線膨張係数の差が65ppm/K以下であることが好ましく、60ppm/K以下であることがより好ましく、55ppm/K以下であることがさらに好ましい。
【0013】
樹脂層10としては、透明性及び機械的強度を有するものであれば特に制限はなく、ポリカーボネート(PC)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、シクロオレフィンポリマー(COP)、トリアセテートセルロース(TAC)、フッ素系樹脂(PTFE、PFA、FEP、ETFE、PCTFE、PVDF、PVF)、ポリフェニルサルファイド(PPS)、ポリエチレン及びポリプロピレン(PP)からなる群から選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。これらの中でも、透明性及び機械的強度の観点から、樹脂層10としては、ポリカーボネート(PC)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)及びシクロオレフィンポリマー(COP)からなる群から選ばれる少なくとも1種であることがより好ましい。これらの中でも、熱膨張の大きいものという観点から、樹脂層10としては、ポリカーボネート、ポリメチルメタクリレート、シクロオレフィンポリマー、フッ素系樹脂、ポリフェニルサルファイド、ポリエチレン及びポリプロピレンからなる群から選ばれる少なくとも1種であることがより好ましい。
【0014】
樹脂層10の厚さは、4μm以上300μm以下であることが好ましく、12μm以上300μm以下であることがより好ましく、25μm以上300μm以下であることがさらに好ましい。樹脂層10の厚さが上記範囲であることで、透明性及び機械的強度を確保することができる。
【0015】
<粘着剤層>
粘着剤層20は、加熱処理を要さず、常温貼合によって樹脂層10及び耐エッチング層30を接合することができる。ここで、常温とは、25℃をいう。
粘着剤層20は、樹脂層10及び耐エッチング層30のそれぞれに対して優れた密着性を有する。粘着剤層20は、具体的には、樹脂層10及び耐エッチング層30と貼合した後に、樹脂層10及び耐エッチング層30のそれぞれと密着することができる程度の密着性を有する。
【0016】
粘着剤層20を形成する粘着剤としては、常温貼合が可能なものであれば特に制限はなく、例えば、アクリル系粘着剤、ゴム系粘着剤、ウレタン系粘着剤、シリコーン系粘着剤、ポリビニルエーテル系粘着剤及びオレフィン系粘着剤等が挙げられる。これらの粘着剤は、1種又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。
粘着剤層を形成する粘着剤としては、透明性を有するものであることが好ましいという観点から、光学透明粘着剤(OCA)であることが好ましい。光学透明粘着剤(OCA)で形成した粘着剤層20は、全光線透過率が80%以上であることが好ましく、85%以上であることがより好ましく、90%以上であることがさらに好ましい。ここで、光線透過率は、JIS K7361-1:1997(プラスチック-透明材料の全光線透過率の試験方法)に準拠して測定した値である。光学透明粘着剤(OCA)としては、例えば、パナック株式会社製の商品名「パナクリーン PDS1」が入手可能である。
【0017】
粘着剤層20の厚さは、5μm以上50μm以下であることが好ましく、5μm以上25μm以下であることがより好ましく、5μm以上15μm以下であることがさらに好ましい。粘着剤層20の厚さが上記範囲であることで、透明性を維持しつつ、十分な粘着力を得ることができる。
【0018】
<耐エッチング層>
耐エッチング層30は、耐エッチング性の高い、つまり、エッチング速度が低い層である。耐エッチング層30を備えることによって、金属箔層40をエッチングする工程において、エッチング液が粘着剤層20に浸透することを防ぐことができる。加えて、耐エッチング層はエッチングした後の工程における作業性の観点からタックフリーであることが好ましい。
【0019】
耐エッチング層30は、高い耐エッチング性を有する観点から、熱硬化性樹脂組成物の硬化物からなることが好ましい。
耐エッチング層30を形成する耐エッチング層組成物は熱硬化性樹を含むことが好ましい。前記熱硬化性樹脂としては、例えば、ポリエステル樹脂、フェノール樹脂、尿素樹脂、ジアリルフタレート樹脂、メラミン樹脂、グアナミン樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂、アミノアルキッド樹脂、メラミン-尿素共縮合樹脂、珪素樹脂及びポリシロキサン樹脂等が挙げられる。
耐エッチング層30は、高い透明性、塗布汎用性、耐エッチング性及び密着性を有する観点から、耐エッチング層組成物として、ポリエステル構造を有する熱硬化性樹脂を用いることが好ましい。
【0020】
耐エッチング層30は、高い耐エッチング性及び密着性を有する観点から、主剤と硬化剤とを含む2液硬化性の熱硬化性樹脂組成物の硬化物からなることが好ましい。
耐エッチング層組成物としての2液硬化性樹脂組成物に含まれる2液硬化性樹脂としては、主剤に硬化剤を添加して硬化する樹脂であれば特に制限はなく、主剤がポリオール(多価アルコール)であり、硬化剤がイソシアネート硬化剤である、2液硬化性ウレタン樹脂が好ましい。
【0021】
ポリオールとしては、例えば、ポリカーボネートポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリアクリルポリオール、ポリウレタンポリオール又はポリエステルポリオール等が挙げられる。これらは単独で又は2種以上を組み合わせて使用できる。
イソシアネート硬化剤としては、従来公知の化合物を適宜使用すればよく、例えば、2,4-トリレンジイソシアネート(TDI)、キシレンジイソシアネート(XDI)、ナフタレンジイソシアネート、4,4′-ジフェニルメタンジイソシアネート等の芳香族イソシアネート、あるいは1,6-ヘキサメチレンジイソシアネート(HMDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、メチレンジイソシアネート(MDI)、水素添加トリレンジイソシアネート、水素添加ジフェニルメタンジイソシアネート等の脂肪族(ないしは脂環式)イソシアネート等のポリイソシアネートが用いられる。また、これら各種イソシアネートの付加体又は多量体、例えば、トリレンジイソシアネートの付加体、トリレンジイソシアネート3量体等も用いられる。
【0022】
硬化剤の使用量(モル比)は、主剤1モルに対して、0.2~5.0モルであることが好ましく、0.5~3.0モルであることがより好ましく、0.8~2.0モルであることがさらに好ましい。硬化剤の使用量が上記範囲内であると、良好な硬化状態が得られるので優れた密着性が得られ、かつタックフリーであり、また折り曲げ加工時に割れ等が発生しないという優れた加工性が得られる。
【0023】
耐エッチング層30の厚さは、1μm以上10μm以下であることが好ましい。
また、耐エッチング層30の厚さは、JIS B0601:2001に準拠して測定した金属箔層40の表面粗さRz(μm)と同等以上であることが好ましく、金属箔層40の表面粗さRzの2倍以上であることが好ましく、金属箔層40の表面粗さRzの3倍以上であることがさらに好ましい。また、耐エッチング層30の厚さから金属箔層40の表面粗さRzを減算した差は、0.5μm以上であることが好ましく、1.5μm以上であることがより好ましく、2.5μm以上であることがさらに好ましい。
耐エッチング層30の厚さが上記下限値以上を満たすものであることで、エッチング液が粘着剤層20に浸透することを防ぐことができる。耐エッチング層30の厚さに上限値は無いが、厚さを薄くすることによって、積層構造体1の薄型化に寄与することができ、使用する材料を低減することができる。
【0024】
<金属箔層>
金属箔層40は、エッチング処理を施すことによって、所望のパターンである金属パターンに加工して使用される。金属箔層40のエッチング処理で使用するエッチング液としては、酸性及びアルカリ性のいずれであってもよく、金属箔層40のエッチングに適したものを適宜選択することができる。エッチング液は、生産性及び汎用性の観点から、塩化第二鉄や塩化第二銅であることが好ましい。
【0025】
金属箔層40としては、銅、ステンレス、黄銅、銀、アルミニウム、ニッケル及びチタンからなる群から選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。これらの中でも、金属箔層40としては、各用途における汎用性の観点から、銅、ステンレス及び黄銅からなる群から選ばれる少なくとも1種であることがより好ましい。
【0026】
金属箔層40の厚さは、3μm以上50μm以下であることが好ましく、3μm以上35μm以下であることがさらに好ましい。金属箔層40の厚さが上記範囲であることで、形成する金属パターンの強度を確保することができる。
【0027】
《透明性》
積層構造体1は、金属箔層40をエッチングする工程を経た後において、金属箔層40が除去されて露出した箇所の透明性が高いことが好ましい。積層構造体1における金属箔層40が除去されて露出した箇所は、全光線透過率が80%以上であることが好ましく、85%以上であることがより好ましく、90%以上であることがさらに好ましい。ここで、全光線透過率は、JISK7361-1:1997(プラスチック-透明材料の全光線透過率の試験方法)に準拠して測定した値である。
【0028】
《耐久性》
積層構造体1は、金属箔層40をエッチングする工程を経た後においても粘着剤層20が粘着力の耐久性を有していることが好ましい。積層構造体1における粘着力の耐久性は、金属箔層40をエッチングする工程を経た後において、金属箔層40が除去されて露出した箇所を目視した際に、浮きや剥がれが発生していないことが好ましい。
【0029】
[積層構造体製造方法]
本発明の積層構造体製造方法は、
樹脂層上に粘着剤を配置し、前記粘着剤からなる粘着剤層を積層させた第1積層体を形成する工程と、
金属箔層上に耐エッチング層組成物を配置し、前記耐エッチング層組成物を乾燥させて耐エッチング層を積層させた第2積層体を形成する工程と、
前記第1積層体の前記粘着剤層と前記第2積層体の前記耐エッチング層とを対向するように配置し、前記粘着剤層と前記耐エッチング層とを常温で貼合する工程とを含む。
【0030】
本発明の実施の形態に係る積層構造体製造方法について、さらに、図2を参照して説明する。
【0031】
本発明の実施の形態に係る積層構造体製造方法は、まず、図2(a)に示すように、樹脂層10上に粘着剤を配置し、粘着剤からなる粘着剤層20を積層させた第1積層体100を形成する。
樹脂層10上に粘着剤を配置する方法として、基材レス粘着シートのラミネートにより被転写物である樹脂層10に転写する転写法を採用することができる。
【0032】
次いで、図2(b)に示すように、金属箔層40上に耐エッチング層組成物を配置し、耐エッチング層組成物を乾燥させて耐エッチング層30を積層させた第2積層体110を形成する。
金属箔層40上に耐エッチング層組成物を配置する方法は、耐エッチング層組成物が液状である場合には特に制限なく、グラビアコート法、ダイコート法及びバーコート法等の公知の塗布法を採用することができる。
【0033】
次いで、図2(c)に示すように、第1積層体100の粘着剤層20と第2積層体110の耐エッチング層30とを対向するように配置し、粘着剤層20と耐エッチング層30とを常温で貼合する。
以上の工程により、本発明の実施の形態に係る積層構造体1を得ることができる。
【0034】
本発明の実施の形態に係る積層構造体によれば、樹脂層と金属箔層とを積層するにあたって、常温貼合が可能な粘着剤を採用することで、加熱処理を省くことができ、加熱処理に起因するカールを抑制することができる。
また、本発明の実施の形態に係る積層構造体によれば、金属箔層と粘着剤層の間に耐エッチング層を設けることで、常温貼合が可能な粘着剤を採用した場合であっても、エッチング液が粘着剤層に浸透することを防ぐことができ、透明性又は耐久性の低下を防ぐことができる。
【実施例0035】
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明は以下の例に限定されるものではない。
【0036】
[測定及び評価]
実施例及び比較例で得られた積層構造体について、以下の測定及び評価を行った。結果を表1に示す。
【0037】
<耐エッチング層の厚さ測定>
実施例及び比較例で作製した積層構造体の耐エッチング層の厚さは、該当箇所についてマイクロメーターを用いて測定し、10箇所の値の平均値から算出した。
【0038】
<カール判定>
実施例及び比較例で作製した積層構造体の試験片(100mm×100mm)のカール判定を行った。試験片のカール判定を以下の基準に基づいて行った。
○:試験片の端部の反りが5mm以下
×:試験片の端部の反りが5mm超
【0039】
<透明性>
実施例及び比較例で作製した積層構造体の金属箔層のエッチングを実施した。エッチング条件として、エッチング液として37質量%の塩化第二鉄(株式会社ネップ製)の水溶液を使用し、液温50℃とし、5分間浸漬させた。その後、イオン交換水で積層構造体を洗い流し、30分以上乾燥し、表面の水分が十分に蒸発した状態で、金属箔層をエッチングすることによって露出した箇所について、JIS K7361-1:1997に準じて、全光線透過率を測定した。ランダムに10箇所測定し、測定した10箇所の平均値を積層構造体の全光線透過率とした。光入射面は金属箔層側とした。
なお、全光線透過率は、スガ試験機株式会社製、製品名「HZ-2」で測定した。
【0040】
<粘着剤層の耐久性>
エッチング条件は、エッチング液として37質量%の塩化第二鉄(株式会社ネップ製)の水溶液を使用し、液温50℃とし、5分間浸漬させた。
そして、エッチングを実施する前と、エッチングを実施した後の外観観察を行ない、浮きや剥がれの発生有無より耐久性の指標とした。
○:浮き・剥がれ無し
×:浮き・剥がれ有り
【0041】
[実施例1]
樹脂層として、厚さ300μm、線膨張係数70ppm/Kのポリカーボネートシート(製品名「パンライト2151」、帝人株式会社製)を用意した。樹脂層上に光学透明粘着剤(OCA)(製品名「パナクリーン PDS1-10」、パナック株式会社製)を転写法にて配置し、光学透明粘着剤(OCA)からなる粘着剤層を積層させた第1積層体を形成した。
次いで、金属箔層として、厚さ12μm、線膨張係数17ppm/Kの銅箔(製品名「CF-T4X-SV」、福田金属箔紛株式会社製、表面粗さRzの実測値1.5μm)を用意した。金属箔層上に主剤としてエリーテルUE9900(製品名、ユニチカ社製)とし、硬化剤としてコロネートHL(製品名、東ソー株式会社製)とする耐エッチング層組成物(主剤100質量部に対して、硬化剤が1.8質量部)を塗布して配置し、耐エッチング層組成物を乾燥させて耐エッチング層を積層させた第2積層体を形成した。
次いで、得られた第1積層体の粘着剤層と第2積層体の耐エッチング層とを対向するように配置し、粘着剤層と耐エッチング層とを常温(25℃)で貼合して実施例1における積層構造体を得た。
得られた積層構造体について、測定及び評価を行った。その結果を表1に示す。
【0042】
[実施例2]
耐エッチング層組成物の主剤としてエリーテルUE9900(製品名、ユニチカ社製)とし、硬化剤としてデュラネートMFA-75B(製品名、旭化成社製)とする耐エッチング層組成物(主剤100質量部に対して、硬化剤が1.7質量部)を使用した以外は、実施例1と同様にして、実施例2の積層構造体を得た。得られた積層構造体について、測定及び評価を行った。その結果を表1に示す。
【0043】
[実施例3~6]
耐エッチング層の厚さを変更した以外は、実施例1と同様にして、実施例3~6の積層構造体を得た。得られた積層構造体について、測定及び評価を行った。その結果を表1に示す。
【0044】
[比較例1]
樹脂層として、厚さ300μmのポリカーボネートシート(製品名「パンライト2151」、帝人株式会社製)を用意した。樹脂層上に光学透明粘着剤(OCA)(製品名「パナクリーン PDS1-10」、パナック株式会社製)を転写法にて配置し、光学透明粘着剤(OCA)からなる粘着剤層を積層させた。得られた第1積層体の粘着剤層と、金属箔層として、厚さ12μmの銅箔(製品名「CF-T4X-SV」、福田金属箔紛株式会社製、表面粗さRzの実測値1.5μm)を常温(25℃)で貼合して比較例1における積層構造体を得た。
【0045】
[比較例2]
金属箔層として、厚さ12μmの銅箔(製品名「CF-T4X-SV」、福田金属箔紛株式会社製、表面粗さRzの実測値1.5μm)を用意した。金属箔層上に溶剤系接着剤を乾燥させて溶剤系接着剤層を積層させた。次いで、樹脂層として、厚さ300μmのポリカーボネートシート(製品名「パンライト2151」、帝人株式会社製)を溶剤系接着剤層上に加熱(60℃)貼合して比較例2における積層体構造を得た。
【0046】
【表1】
【0047】
表1の結果より、実施例1~6における積層構造体は、常温貼合が可能な粘着剤を採用し、かつ、金属箔層と粘着剤層の間に耐エッチング層を設けることによって、カールが抑制され、透明性及び耐久性に優れるものであった。
【符号の説明】
【0048】
1:積層構造体
10:樹脂層
20:粘着剤層
30:耐エッチング層
40:金属箔層
100:第1積層体
110:第2積層体
図1
図2