(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022113449
(43)【公開日】2022-08-04
(54)【発明の名称】空気入りタイヤの製造方法
(51)【国際特許分類】
B29D 30/36 20060101AFI20220728BHJP
【FI】
B29D30/36
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021009710
(22)【出願日】2021-01-25
(71)【出願人】
【識別番号】000183233
【氏名又は名称】住友ゴム工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000556
【氏名又は名称】特許業務法人 有古特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】広原 和門
【テーマコード(参考)】
4F215
【Fターム(参考)】
4F215AH20
4F215VC13
4F215VK17
4F215VK23
4F215VL11
4F215VP03
4F215VP11
4F215VP12
(57)【要約】
【課題】タイヤの成形精度の向上に寄与しうるタイヤの製造方法の提供
【解決手段】このタイヤの製造方法は、
(A)カーカスプライ46と他のゴム部材とを含む筒状の第一成形体36を得る工程、
(B)第一成形体36の軸方向中央を拡径させ、拡径部36Aと拡径部36Aの軸方向外側の端部36Bとを形成する工程、
(C)端部36Bでカーカスプライ46とゴム部材とを圧着する工程
及び
(D)端部36Bを半径方向外向きに折り返し拡径部に接合する工程
を含む。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)カーカスプライと他のゴム部材とを含む筒状の第一成形体を得る工程、
(B)前記第一成形体の軸方向中央を拡径し、拡径部と前記拡径部の軸方向外側の端部とを形成する工程、
(C)前記端部で前記カーカスプライと前記他のゴム部材とを圧着する工程
及び
(D)前記端部を半径方向外向きに折り返し前記拡径部に接合する工程
を含む、タイヤの製造方法。
【請求項2】
(E)前記工程(B)に先立ち、トレッド部材を含む筒状の第二成形体をその半径方向内側に前記第一成形体が位置する様に配置する工程
を更に含み、
前記工程(B)において、前記拡径部を前記第二成形体に接合する、請求項1に記載のタイヤの製造方法。
【請求項3】
前記工程(C)において、前記拡径部に前記第二成形体を圧着しつつ、前記端部で前記カーカスプライと前記他のゴム部材とを圧着する、請求項2に記載のタイヤの製造方法。
【請求項4】
前記工程(B)において、圧力流体で前記第一成形体の中央を拡径し、
前記工程(C)において、
前記拡径部の流体圧が1.3MPa以上1.5MPa以下にされ、
前記拡径部に前記第二成形体を圧着するセンター押付具の押し付け圧力が0.5Mpa以上0.7MPa以下にされ、
前記カーカスプライと前記他のゴム部材とを圧着するサイド押付具の押し付け圧力が0.2Mpa以上0.7MPa以下にされる、請求項3に記載のタイヤの製造方法。
【請求項5】
前記他のゴム部材が、ゴムシートが巻回されて形成されており、
前記ゴムシートの厚さが0.5mm以上3.0mm以下である、請求項1から4のいずれかに記載のタイヤの製造方法。
【請求項6】
カーカスプライと他のゴム部材とを含む筒状の第一成形体の軸方向中央を拡径し、拡径部と前記拡径部の軸方向外側の端部とを形成する、シェーピングフォーマと、
前記端部で前記カーカスプライと前記他のゴム部材とを圧着するサイド押付具と
を備え、
前記シェーピングフォーマが、前記拡径部に前記端部を半径方向外向きに折り返して接合するブラダーを備える、タイヤ用ローカバーの成形装置。
【請求項7】
前記拡径部にトレッド部材を含む筒状の第二成形体を圧着するセンター押付具を備え、
前記センター押付具が前記拡径部に前記第二成形体を圧着する位置に配置される状態で前記サイド押付具が前記端部で前記カーカスプライと前記他のゴム部材とを圧着する位置に配置される様に、前記センター押付具と前記サイド押付具とが連結されている、請求項6に記載のタイヤ用ローカバーの成形装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空気入りタイヤの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
空気入りタイヤの製造方法では、カーカスプライを含む複数のゴム部材から筒状の第一成形体が形成され、トレッド部材を含む他の複数のゴム部材から筒状の第二成形体が形成される。この第一成形体の中央が拡径され、拡径部と一対の端部とが形成される。この拡径部に第二成形体が接合される。それぞれの端部が半径方向外向きに折り返され、拡径部に接合される。この様にして、第一成形体と第二成形体とが組み合わされてローカバーが形成される。このローカバーが加圧及び加熱され、ローカバーからタイヤが得られる。この様なローカバーの一例が、特許文献1に記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
この様なローカバーでは、第一成形体の端部から形成される部位で部材間の位置ずれや剥離が生じることがある。この位置ずれや剥離は、ローカバーの成形精度を損なう。この位置ずれや剥離は、ローカバーから得られるタイヤの成形精度を損なう。
【0005】
本発明の目的は、タイヤの成形精度の向上に寄与しうるタイヤの製造方法の提供にある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る空気入りタイヤの製造方法は、
(A)カーカスプライと他のゴム部材とを含む筒状の第一成形体を得る工程、
(B)前記第一成形体の軸方向中央を拡径し、拡径部と前記拡径部の軸方向外側の端部とを形成する工程、
(C)前記端部で前記カーカスプライと前記他のゴム部材とを圧着する工程
及び
(D)前記端部を半径方向外向きに折り返し前記拡径部に接合する工程
を含む。
【0007】
この空気入りタイヤの製造方法は、好ましくは、
(E)前記工程(B)に先立ち、トレッド部材を含む筒状の第二成形体を、その半径方向内側に前記第一成形体が位置する様に配置する工程
を更に含む。
前記工程(B)において、前記拡径部を前記第二成形体に接合する。
【0008】
好ましくは、前記工程(C)において、前記拡径部に前記第二成形体を圧着しつつ、前記端部で前記カーカスプライと前記他のゴム部材とを圧着する。
【0009】
この空気入りタイヤの製造方法では、前記工程(B)において、圧力流体で前記第一成形体の前記中央を拡径する。
好ましくは、前記工程(C)において、前記拡径部の流体圧が1.3MPa以上1.5MPa以下にされ、前記拡径部に前記第二成形体を圧着するセンター押付具の押し付け圧力が0.5Mpa以上0.7MPa以下にされ、前記カーカスプライと前記他のゴム部材とを圧着するサイド押付具の押し付け圧力が0.2Mpa以上0.7MPa以下にされる。
【0010】
好ましくは、前記他のゴム部材は、ゴムシートが巻回されて形成されている。前記ゴムシートの厚さは、0.5mm以上3.0mm以下である。
【0011】
本発明に係るタイヤ用ローカバーの成形装置は、
カーカスプライと他のゴム部材とを含む筒状の第一成形体の軸方向中央を拡径し、拡径部と前記拡径部の軸方向外側の端部とを形成する、シェーピングフォーマと、
前記端部で前記カーカスプライと前記他のゴム部材とを圧着するサイド押付具と
を備える。
前記シェーピングフォーマは、前記拡径部に前記端部を半径方向外向きに折り返して接合するブラダーを備える。
【0012】
このタイヤ用ローカバーの成形装置は、前記拡径部にトレッド部材を含む筒状の第二成形体を圧着するセンター押付具を備える。好ましくは、前記センター押付具が前記拡径部に前記第二成形体を圧着する位置に配置される状態で、前記サイド押付具が前記端部で前記カーカスプライと前記他のゴム部材とを圧着する位置に配置される様に、前記センター押付具と前記サイド押付具とが連結されている。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係る空気入りタイヤの製造方法は、拡径部の軸方向外側の端部でカーカスプライと他のゴム部材とを圧着する工程を含む。この製造方法では、端部を半径方向外向きに折り返して接合する際に、端部において部材間の位置ずれや剥離の発生が抑制される。この製造方法は、ローカバーの成形精度の向上に寄与する。この製造方法は、このローカバーから得られるタイヤの成形精度の向上に寄与する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】
図1は、本発明の一実施形態に係る空気入りタイヤの成形装置が示された概念図である。
【
図2】
図2は、
図1の成形装置のシェーピングフォーマが示された説明図である。
【
図3】
図3は、
図1の成形装置の押付装置が示された説明図である。
【
図4】
図4は、
図1の成形装置の使用状態が示された説明図である。
【
図5】
図5は、
図1の成形装置の他の使用状態が示された説明図である。
【
図6】
図6は、
図1の成形装置の更に他の使用状態が示された説明図である。
【
図7】
図7は、
図1の成形装置の更に他の使用状態が示された説明図である。
【
図8】
図8は、
図1の成形装置を用いて製造されたタイヤが示された説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、適宜図面が参照されつつ、好ましい実施形態に基づいて本発明が詳細に説明される。
【0016】
図1には、本発明の空気入りタイヤの製造方法に用いられる成形装置2が示されている。この成形装置2は、成形ドラム4、搬送装置6、シェーピングフォーマ8及び押圧装置10を備える。
【0017】
成形ドラム4は、本体12を備えている。本体12の形状は筒状である。本体12は、その軸線を回転軸にして回転可能である。この本体12は、複数のセグメント12Aが周方向に並べられて形成されている。これらのセグメント12Aが半径方向に移動可能である。これにより、本体12は拡径可能であり縮径可能である。
【0018】
搬送装置6は、移動装置14及び保持装置16を備えている。保持装置16は、移動装置14によって、成形ドラム4とシェーピングフォーマ8との間で移動可能である。
【0019】
保持装置16は、環状フレーム16Aと、複数の保持爪16Bとを備えている。環状フレーム16Aは、リング形状を備えている。それぞれの保持爪16Bは、環状フレーム16Aの周方向に、互いに間隔を空けて配置されている。保持爪16Bは、環状フレーム16Aと共に環状フレーム16Aの軸線を回転軸に回転可能である。これらの保持爪16Bは、同一円周上に位置した状態で、環状フレーム16Aの半径方向に移動可能である。
【0020】
シェーピングフォーマ8は、センタードラム18と、センタードラム18の軸方向外側に位置する一対のサイドドラム20と、支持軸22とを備えている。センタードラム18と一対のサイドドラム20とは、支持軸22に支持され、支持軸22を回転軸にして、回転可能である。
【0021】
押圧装置10は、一対のセンター押付具としての一対のセンターローラ24と、一対のサイド押付具としての一対のサイドローラ26とを備える。押圧装置10は、更に、一対の移動アーム10Aと、一対のセンターホルダーとしての一対の軸10Bと、一対の伸縮装置10Cと、一対の回動軸10Dと、一対のサイドホルダー10E(以下、ホルダー10Eとも称する)とを備える。
【0022】
図2に示される様に、シェーピングフォーマ8のセンタードラム18は、周方向及び軸方向に並べられた複数のセグメント18Aを備える。これらのセグメント18Aは、半径方向及び軸方向に移動可能である。これにより、センタードラム18は、拡径可能であり縮径可能である。更に、隣り合うセグメント18Aが半径方向に位置を変えた状態で軸方向に移動することで、センタードラム18の軸方向幅が変更可能である。
【0023】
それぞれのサイドドラム20は、本体28、複数のビード受け30、ピストン32及びブラダー34を備える。本体28は、支持軸22に支持され、軸方向に移動可能である。それぞれのビード受け30は、本体28に支持され、半径方向に移動可能である。ピストン32は、本体28に収容され、軸方向に移動可能である。
【0024】
サイドドラム20では、ピストン32は、圧力流体によって軸方向に移動する様に構成されている。このピストン32が軸方向に移動することによって、複数のビード受け30は半径方向に移動する様に構成されている。サイドドラム20では、ピストン32が軸方向内向きに移動することでそれぞれのビード受け30が半径方向外向きに移動し、ピストン32が軸方向外向きに移動することでそれぞれのビード受け30が半径方向内向きに移動するように構成されている。ブラダー34は、圧力流体によって、膨張可能であり収縮可能である。
図2では、圧力流体が排出されて収縮したブラダー34が示されている。
【0025】
図3に示される様に、押圧装置10のセンターローラ24は、軸10Bに回転可能に支持されている。この軸10Bが移動アーム10Aに支持されている。軸10Bに、伸縮装置10Cが取付けられている。伸縮装置10Cには、軸10Bとその軸線が交差する回動軸10Dが取付けられている。この押圧装置10では、軸10Bと回動軸10Dとが直交している。回動軸10Dには、ホルダー10Eが回動可能に支持されている。このホルダー10Eに、サイドローラ26が回転可能に支持されている。
【0026】
この押圧装置10では、センターローラ24とサイドローラ26とは、軸10B、伸縮装置10C、回動軸10D及びホルダー10Eを介して、連結されている。移動アーム10Aは、センターローラ24及びサイドローラ26を、シェーピングフォーマ8の軸方向及び半径方向に移動させる機能を備える。伸縮装置10Cによって、センターローラ24とサイドローラ26と間隔は変更可能である。伸縮装置10Cによって、移動アーム10Aでサイドローラ26がシェーピングフォーマ8に向かって押し付けられると、押し付け力が生じる様に構成されている。
【0027】
図4には、シェーピングフォーマ8の使用状態が示されている。シェーピングフォーマ8の外周に、筒状の第一成形体36が配置されている。この第一成形体36は、一対のサイドウォール部材38、インナーライナープライ40、一対の補強プライ42、一対の補強ゴム部材44及びカーカスプライ46を含む。このカーカスプライ46は、並列された多数のコードとトッピングゴムとからなる。第一成形体36は、半径方向内側から外側に向かって、サイドウォール部材38、インナーライナープライ40、補強プライ42、補強ゴム部材44、カーカスプライ46の順に積層され形成されている。
【0028】
図5には、シェーピングフォーマ8の他の使用状態が示されている。一対のリング状のビード部材48のそれぞれが、半径方向内側に第一成形体36が位置する様に配置されている。一対のクッション部材50が、第一成形体36の外周に位置している。トレッド部材52Aとベルト部材52Bとを含む筒状の第二成形体52が、半径方向内側に第一成形体36が位置する様に配置されている。第二成形体52に搬送装置6の保持爪16Bが押し当てられている。第二成形体52は、搬送装置6のよって、保持されている。
【0029】
図6には、シェーピングフォーマ8の更に他の使用状態が示されている。
図6の状態では、センタードラム18の軸方向幅は、
図5の状態のそれより小さい。一対のサイドドラム20の間隔は、
図5の状態のそれより小さい。図示されないが、シェーピングフォーマ8のビード受け30は、第一成形体36をビード部材48に押し付けている。このビード受け30は、ビード部材48を第一成形体36に対して位置決めしている。
【0030】
図6では、第一成形体36の中央に圧力流体が充填されている。第一成形体36の中央がトロイド状に拡径し、拡径部36Aと、拡径部36Aの軸方向外側で軸方向に延びる一対の端部36Bとが形成されている。この拡径部36A及び一対のクッション部材50と第二成形体52が接合されている。センターローラ24は、第二成形体52の外側に配置され、第二成形体52を拡径部36Aに押し付けている。サイドローラ26は、端部36Bの外側に配置され、端部36Bをシェーピングフォーマ8に向かって押し付けている。
【0031】
図7には、シェーピングフォーマ8の更に他の使用状態が示されている。
図7では、第一成形体36及び第二成形体52は簡略され、クッション部材50が省略されて記載されている。
図7では、第一成形体36に、第二成形体52が圧着されている。ブラダー34に圧力流体が充填され、ブラダー34が膨張している。このブラダー34によって、半径方向外向き折り返された端部36Bが、拡径部36Aに接合されている。
【0032】
センタードラム18の軸方向幅と、一対のサイドドラム20の間隔とは、
図6の状態のそれらと同様である。このシェーピングフォーマ8では、ピストン32が圧力流体によって軸方向内側に位置しており、ビード受け30が半径方向外側に位置している。拡径したビード受け30が、第一成形体36をビード部材48に押し付けている。この様にして、
図6と同様に、ビード受け30は、ビード部材48を第一成形体36に対して位置決めしている。
【0033】
図8には、この成形装置2を用いて製造された空気入りタイヤ54の一例が示されている。
図8の左右方向がタイヤ54の軸方向であり、上下方向がタイヤ54の半径方向であり、紙面に垂直な方向がタイヤ54の周方向である。一点鎖線CLは、タイヤ54の赤道面を表わす。このタイヤ54の形状は、トレッドパターンを除き、赤道面に対して対称である。
【0034】
このタイヤ54は、トレッド56、一対のサイドウォール58、一対のチェーファー60、一対のビード62、カーカス64、ベルト66、インナーライナー68、一対のクッション層70、一対の補強フィラー72及び一対の補強ゴム層74を備えている。このタイヤ54は、トラック、バス等に装着される。このタイヤ54は、重荷重用である。
【0035】
トレッド56は、第二成形体52が含むトレッド部材52Aから形成される。トレッド56は、路面と接地するトレッド面56Aを形成する。それぞれのサイドウォール58は、トレッド56の端から半径方向略内向きに延びている。それぞれのチェーファー60は、サイドウォール58の半径方向略内側に位置している。チェーファー60は、タイヤ54が装着されるリムのフランジと当接する。このタイヤ54では、サイドウォール58及びチェーファー60は、サイドウォール部材38から形成される。
【0036】
それぞれのビード62は、チェーファー60の軸方向内側に位置している。ビード62は、コア62Aと、このコア62Aから半径方向外向きに延びるエイペックス62Bとを備えている。ビード62はビード部材48から形成される。カーカス64は、カーカスプライ46から形成される。カーカス64は、トレッド部材52A及びサイドウォール部材38に沿って延びるカーカスプライ46がビード部材48の周りで軸方向内側から外側に向かって折り返されて形成されている。
【0037】
ベルト66は、第二成形体52が含むベルト部材52Bから形成される。ベルト66は、トレッド56の半径方向内側に位置している。ベルト66は、カーカス64と積層されている。ベルト66は、複数の層からなる。これらの層のそれぞれは、並列された多数のコードとトッピングゴムとからなる。
【0038】
インナーライナー68は、カーカス64の内側に位置している。インナーライナー68は、インナーライナープライ40から形成される。ぞれぞれのクッション層70は、ベルト66の端の近傍において、カーカス64と積層されている。クッション層70は、クッション部材50から形成される。
【0039】
それぞれの補強フィラー72はビード62に沿って延在する。この補強フィラー72はコードとトッピングゴムとからなる。このコードの材質は特に限定されないが例えばスチールである。この補強フィラー72は補強プライ42から形成される。それぞれの補強ゴム層74はカーカスプライ46が折り返されて形成されるカーカス64の端を覆っている。この補強ゴム層74は補強ゴム部材44から形成される。
【0040】
ここで、
図1の成形装置2を用いて、本発明に係る空気入りタイヤの製造方法が説明される。ここでは、
図8のタイヤ54の製造方法を例に説明がされる。
【0041】
図1に示されるシェーピングフォーマ8の外周に、複数の帯状部材やシート状部材が順に巻回され、第一成形体36が形成される(STEP1)。この工程(STEP1)では、
図4に示される様に、一対のサイドウォール部材38、インナーライナープライ40、一対の補強プライ42、一対の補強ゴム部材44、カーカスプライ46を含む第一成形体36が形成される。
【0042】
なお、成形装置2は、第一成形体36を形成する他の成形ドラムと他の搬送装置とを備えてもよい。この場合、この他の成形ドラムの外周に、複数の帯状部材やシート状部材が順に巻回され、第一成形体36が形成される。この第一成形体36が、他の搬送装置によって、他の成形ドラムからシェーピングフォーマ8に搬送され、シェーピングフォーマ8の外周に配置される。
【0043】
一方で、
図1に示される成形ドラム4の外周に、他の複数の帯状部材やシート状部材が順に巻回され、トレッド部材52A及びベルト部材52Bを含む第二成形体52が形成される(STEP2)。
【0044】
図示されないビード搬送装置によって、一対のビード部材48が、その半径方向内側に第一成形体36が位置する様に、配置される(STEP3)。一対の帯状部材が巻回され、クッション部材50が形成される(STEP4)。搬送装置6は、第二成形体52を、保持爪16Bで保持した状態で、成形ドラム4からシェーピングフォーマ8に搬送する(STEP5)。このSTEP5では、搬送装置6によって、第二成形体52は、その半径方向内側に第一成形体36が位置する様に配置される。この様にして、成形装置2は、
図5に示される状態にされる。
【0045】
シェーピングフォーマ8のビード受け30(
図2参照)によって、ビード部材48が第一成形体36に対して位置決めされる(STEP6)。第一成形体36の内側に圧力流体が充填され、一対のビード部材48の間で、第一成形体36の中央が拡径される(STEP7)。この圧力流体は、特に限定されないが、例えば圧縮空気である。このSTEP7では、拡径部36Aと一対の端部36Bとが形成される。拡径部36Aと一対のクッション部材50とが、第二成形体52に接合される。
【0046】
シェーピングフォーマ8の軸線を回転軸にして、第一成形体36と第二成形体52とが回転させられた状態で、センターローラ24が第二成形体52を拡径部36Aに押し付ける。このセンターローラ24は、第二成形体52を拡径部36Aに押し付けつつ、軸方向中央から外側に向かって移動する。更に、センターローラ24は、拡径部36Aの形状に沿って半径方向内側に向かって移動する。この押圧装置10では、
図6に示される様に、センターローラ24が第二成形体52の軸方向端部を拡径部36Aに押し付けつつ、サイドローラ26が第一成形体36の端部36Bをシェーピングフォーマ8に押し付ける(STEP8)。この工程(STEP8)では、拡径部36Aに第二成形体52が圧着されつつ、端部36Bでサイドウォール部材38、インナーライナープライ40、補強プライ42、補強ゴム部材44及びカーカスプライ46が圧着される。
【0047】
ブラダー34に圧力流体が充填されて、ブラダー34が膨張する。このブラダー34によって、第一成形体36の端部36Bがビード部材48の周りで半径方向外向きに折り返される。折り返された端部36Bは、拡径部36A及びビード部材48に接合される(STEP9)。図示されない圧着ローラで、端部36Bが拡径部36A及びビード部材48に圧着される(STEP10)。この様にして、ローカバーが形成される。
【0048】
このローカバーがモールドに投入される。モールド内で、ローカバーが加圧及び加熱され、ローカバーからタイヤ54が形成される(STEP11)。
【0049】
このタイヤの製造方法では、工程(STEP9)において、第一成形体36の端部36Bは半径方向外向きに折り返される。この折り返しによる端部36Bの半径方向外側での周方向の延びは、端部36Bの半径方向内側でのそれより大きい。この折り返しによって、端部36Bでは、ゴム部材間で位置ずれや剥離が生じ易い。
【0050】
この工程(STEP8)では、拡径部36Aが形成された状態で、軸方向の延びる端部36Bでカーカスプライ46と他のゴム部材とが圧着される。拡径部36Aの形成によって、カーカスプライ46は変形させられている。この変形した状態のカーカスプライ46と他のゴム部材とが端部36Bにおいて圧着されることで、カーカスプライ46と他のゴム部材との剥離が更に抑制される。工程(STEP9)では、この圧着された端部36Bが、半径方向外向きに折り返される。これにより、端部36Bにおいてゴム部材間の位置ずれや剥離の発生が抑制される。この製造方法は、ローカバーの成形精度の向上に寄与する。この製造方法は、このローカバーから得られるタイヤ54の成形精度の向上に寄与する。
【0051】
この製造方法は、第一成形体36の中央を拡径する工程(STEP7)に先立ち、第二成形体52をその半径方向内側に第一成形体36が位置する様に配置する工程(STEP5)を含む。これにより、このタイヤの製造方法では、拡径部36Aのシェーピングと、拡径部36Aと第二成形体52との接合とが一つの工程(STEP7)で実行されている。
【0052】
この製造方法の工程(STEP8)では、拡径部36Aに第二成形体52が圧着されつつ、端部36Bでカーカスプライ46と他のゴム部材とが圧着される。拡径部36Aに第二成形体52が圧着される間に、端部36Bでカーカスプライ46と他のゴム部材とが圧着される。端部36Bでカーカスプライ46と他のゴム部材とが圧着されるために別に圧着時間を設ける必要としない。この製造方法は、従来の拡径部36Aと第二成形体52との圧着時間内で、カーカスプライ46と他のゴム部材とが圧着される。この観点から、この製造方法では、好ましくは、拡径部36Aに第二成形体52が圧着されつつ、端部36Bでカーカスプライ46と他のゴム部材とが圧着される。
【0053】
この工程(STEP8)では、拡径部36Aを十分に拡径させる観点から、拡径部36Aの流体圧は、好ましくは、1.30MPa以上であり、更に好ましくは1.35MPa以上であり、特に好ましくは、1.39MPa以上である。一方で、拡径部36Aの流体圧が高過ぎる場合には、拡径部36Aの変形を生じる恐れがあり、また、ビード部材48と第一成形体36との位置ずれを生じる恐れがある。この変形や位置ずれを抑制する観点から、拡径部36Aの流体圧は、好ましくは、1.50MPa以下であり、更に好ましくは1.45MPa以下であり、特に好ましくは1.49MPa以下である。なお、本発明の流体圧は、大気圧を0MPaとするゲージ圧で表される。
【0054】
拡径部36Aに第二成形体52を十分に圧着する観点から、センターローラ24の押し付け圧力は、好ましくは0.50Mpa以上であり、更に好ましくは0.55MPa以上であり、特に好ましくは0.59MPa以上である。一方で、この押し付け圧力が大き過ぎるセンターローラ24は、拡径部36A及び第二成形体52を変形させる。この変形を抑制する観点から、この押し付け圧力は、好ましくは、0.70MPa以下であり、更に好ましくは0.65MPa以下であり、更に好ましくは0.61MPa以下である。なお、この押し付け圧力は、センターローラ24の押し付け力をセンターローラ24の当接面積で割って算出される。
【0055】
端部36Bで複数のゴム部材を十分に圧着する観点から、サイドローラ26の押し付け圧力は、好ましくは0.20Mpa以上であり、更に好ましくは0.30MPa以上であり、特に好ましくは0.35MPa以上である。一方で、この押し付け圧力が大き過ぎるサイドローラ26は、端部36Bを変形させる。この変形を抑制する観点から、この押し付け圧力は、好ましくは、0.70MPa以下であり、更に好ましくは0.60MPa以下であり、特に好ましくは0.55MPa以下である。なお、この押し付け圧力は、サイドローラ26の押し付け力をサイドローラ26の当接面積で割って算出される。
【0056】
工程(STEP8)において、この拡径部36Aの流体圧と、センターローラ24の押し付け圧力と、サイドローラ26の押し付け圧力とを組み合わせることで、拡径部36A、端部36B及び第二成形体52の変形が抑制されつつ、これらが適切に圧着されうる。半径方向外向きに折り返される端部36Bにおいて、位置ずれや剥離の発生が抑制される。この拡径部36Aの流体圧と、センターローラ24の押し付け圧力と、サイドローラ26の押し付け圧力との組み合わせは、得られるローカバーの成形精度の向上に寄与しうる。
【0057】
この工程(STEP9)では、端部36Bが半径方向外向きに折り返される。特に、薄いゴムシートが巻回されて形成されるゴム部材では、剥離や位置ずれが生じ易い。この様な薄いゴムシートでは、皺やエアー溜りが発生し易い。この製造方法では、拡径部36Aと端部36Bとが形成された状態で、折り返される前に端部36Bが圧着される。これにより、この様な皺やエアー溜りの発生が抑制されている。この製造方法は、端部36Bに薄いゴムシートが巻回されて形成されたゴム部材を含む第一成形体36の製造に特に適している。この観点から、巻回されるゴムシートの厚さは好ましくは、3.0mm以下である。このゴムシートの厚さは、特に下限はないが、例えば0.5mm以上である。このゴムシートの厚さは、巻回される前の状態で測定される。ここでいうゴムシートは、シート状のゴム部材を表し、コードとトッピングゴムとからなるものを含む。
【0058】
この成形装置2は、シェーピングフォーマ8と、端部36Bでカーカスプライ46と他のゴム部材とを圧着するサイドローラ26とを備える。このサイドローラ26を備えることで、端部36Bを半径方向外向きに折り返しても、端部36Bで剥離や位置ずれが生じることが抑制される。この成形装置2は、サイドローラ26を備えることで、ローカバーの成形精度の向上に寄与しうる。
【0059】
この成形装置2では、センターローラ24を拡径部36Aに第二成形体52を圧着する位置に配置されることで、サイドローラ26が端部36Bでカーカスプライ46と他のゴム部材とを圧着する位置に配置される。この様な位置関係になる様に、センターローラ24とサイドローラ26とが連結されている。これにより、センターローラ24を移動させる移動アーム10Aによって、サイドローラ26が移動される。この成形装置2では、この様にセンターローラ24とサイドローラ26とが連結されていることが好ましい。
【0060】
この成形装置2は、センター押付具としてセンターローラ24を備えるが、これに限定されない。センター押圧具は、拡径部36Aに第二成形体52を圧着可能であればよい。同様に、サイド押付具は、サイドローラ26に限定されず、端部36Bでカーカスプライ46と他のゴム部材とを圧着可能であればよい。
【産業上の利用可能性】
【0061】
以上説明された方法は、シェーピングフォーマを用いて製造される空気入りタイヤに広く適用されうる。
【符号の説明】
【0062】
2・・・成形装置
8・・・シェーピングフォーマ
24・・・センターローラ
26・・・サイドローラ
34・・・ブラダー
36・・・第一成形体
36A・・・拡径部
36B・・・端部
38・・・サイドウォール部材
40・・・インナーライナープライ
42・・・補強プライ
44・・・補強ゴム部材
46・・・カーカスプライ
52・・・第二成形体
52A・・・トレッド部材
54・・・タイヤ