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特開2022-113474活性エネルギー線硬化型樹脂組成物および硬化被膜付き基材
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022113474
(43)【公開日】2022-08-04
(54)【発明の名称】活性エネルギー線硬化型樹脂組成物および硬化被膜付き基材
(51)【国際特許分類】
   C08F 290/06 20060101AFI20220728BHJP
   E04F 15/10 20060101ALI20220728BHJP
   C09D 4/02 20060101ALI20220728BHJP
   C09D 7/61 20180101ALI20220728BHJP
   C09D 7/63 20180101ALI20220728BHJP
   C09D 7/65 20180101ALI20220728BHJP
【FI】
C08F290/06
E04F15/10 104A
C09D4/02
C09D7/61
C09D7/63
C09D7/65
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021009755
(22)【出願日】2021-01-25
(71)【出願人】
【識別番号】390033628
【氏名又は名称】中国塗料株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100091487
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 行孝
(74)【代理人】
【識別番号】100120031
【弁理士】
【氏名又は名称】宮嶋 学
(74)【代理人】
【識別番号】100120617
【弁理士】
【氏名又は名称】浅野 真理
(74)【代理人】
【識別番号】100126099
【弁理士】
【氏名又は名称】反町 洋
(74)【代理人】
【識別番号】100152423
【弁理士】
【氏名又は名称】小島 一真
(72)【発明者】
【氏名】津門 貢司
(72)【発明者】
【氏名】加藤 真也
(72)【発明者】
【氏名】本田 清二
【テーマコード(参考)】
2E220
4J038
4J127
【Fターム(参考)】
2E220AA33
2E220AC05
2E220BB04
2E220GB11X
2E220GB32X
4J038FA111
4J038HA446
4J038MA02
4J038PB05
4J127AA03
4J127AA04
4J127BB041
4J127BB042
4J127BB091
4J127BB221
4J127BC051
4J127BC151
4J127BD412
4J127BD421
4J127BD471
4J127BD481
4J127BE211
4J127BE21Y
4J127BE251
4J127BE25Y
4J127BF641
4J127BF64Y
4J127BG141
4J127BG14Y
4J127BG181
4J127BG18Y
4J127BG221
4J127BG22Y
4J127BG271
4J127BG272
4J127BG27Y
4J127CB281
4J127CB282
4J127CC131
4J127CC132
4J127DA12
4J127DA55
4J127FA07
4J127FA48
(57)【要約】
【課題】美観を損なわずに平滑性に優れながら、防滑性および耐キャスター性に優れた硬化被膜を形成可能な活性エネルギー線硬化型樹脂組成物の提供。
【解決手段】本発明の活性エネルギー線硬化型樹脂組成物は、(A)カプロラクトンに由来する構造を有するウレタン(メタ)アクリレートと、(B)(メタ)アクリレートモノマーと、(C)シリカ粒子とを含む活性エネルギー線硬化型樹脂組成物であって、
(C)シリカ粒子の見掛容積が、前記活性エネルギー線硬化型樹脂組成物全体の容積に対して15%以上であることを特徴とする。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)カプロラクトンに由来する構造を有するウレタン(メタ)アクリレートと、(B)(メタ)アクリレートモノマーと、(C)シリカ粒子とを含む活性エネルギー線硬化型樹脂組成物であって、
(C)シリカ粒子の見掛容積が、前記活性エネルギー線硬化型樹脂組成物全体の容積に対して15%以上である、活性エネルギー線硬化型樹脂組成物。
【請求項2】
(D)光重合開始剤をさらに含む、請求項1に記載の活性エネルギー線硬化型樹脂組成物。
【請求項3】
前記(C)シリカ粒子の平均粒子径が、前記活性エネルギー線硬化型樹脂組成から形成された硬化被膜の膜厚に対して90%以下である、請求項1または2に記載の活性エネルギー線硬化型樹脂組成物。
【請求項4】
(E)樹脂粒子をさらに含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の活性エネルギー線硬化型樹脂組成物。
【請求項5】
前記(E)樹脂粒子の平均粒子径が、前記活性エネルギー線硬化型樹脂組成から形成された硬化被膜の膜厚に対して90%以下である、請求項4に記載の活性エネルギー線硬化型樹脂組成物。
【請求項6】
内装材用、または屋外もしくは半屋外の床材用である、請求項1~5のいずれか一項に記載の活性エネルギー線硬化型樹脂組成物。
【請求項7】
基材の少なくとも片面が、請求項1~6のいずれか一項に記載の活性エネルギー線硬化型樹脂組成物から形成された硬化被膜で被覆されてなる、硬化被膜付き基材。
【請求項8】
前記基材が、内装材用、または屋外もしくは半屋外の床材用である、請求項7に記載の硬化被膜付き基材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、活性エネルギー線硬化型樹脂組成物に関する。また、本発明は、基材の少なくとも片面が活性エネルギー線硬化型樹脂組成物から形成された硬化被膜で被覆されてなる、硬化被膜付き基材に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、家屋及び店舗等の床材や内装壁等の基材表面には硬化被膜が設けられている。この硬化被膜には、目的に応じて、意匠性、耐汚染性、および耐擦傷性等の様々な性能が求められている。例えば、床材には、防滑性が求められており、床材に防滑性を付与する方法としては、硬化被膜の表面に微粒子を埋設し、表面を凹凸形状にすること等により行われていた。特許文献1では、シリカ微粒子(A)、ポリエチレン微粒子(B)、1分子中に2個以上の(メタ)アクリロイル基を有する光重合性オリゴマー(C)、反応性モノマー(D)、および光重合開始剤(E)を含有し、シリカ微粒子(A)およびポリエチレン粒子(B)の少なくとも一方が球状粒子である光硬化性樹脂組成物により形成された塗膜を有する木質建材が提案されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010-143153号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の方法は、床材の表面に硬化被膜の厚みを超える大きさの微粒子を含有した場合、防滑性をより高める一方で、その床材の表面の美観や触感が大きく損なわれることが課題となっていた。そこで、これら床材の表面における平滑性の改善が求められている。
【0005】
さらに、近年では、居住環境は変化しており、居住用家具の改善が進んでいる。例えば、椅子等の家具には多くのキャスターが具備され、重量化が進んでいる。これらキャスターは、床材の表面を傷つけることが多く、床材に対する耐キャスター性も併せて満たすことが求められている。
【0006】
したがって、本発明は、美観を損なわずに平滑性に優れながら、防滑性および耐キャスター性に優れた硬化被膜を形成可能な活性エネルギー線硬化型樹脂組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、鋭意検討した結果、活性エネルギー線硬化型樹脂組成物に(A)カプロラクトンに由来する構造を有するウレタン(メタ)アクリレートと、(B)(メタ)アクリレートモノマーと、(C)シリカ粒子とを含有させ、(C)シリカ粒子の見掛容積を特定の範囲内に調節することにより、美観を損なわずに平滑性に優れながら、防滑性および耐キャスター性に優れた硬化被膜を形成可能な活性エネルギー線硬化型樹脂組成物を得られることを知見した。本発明は、かかる知見に基づいて完成されたものである。
【0008】
すなわち、本発明によれば、以下の発明が提供される。
[1] (A)カプロラクトンに由来する構造を有するウレタン(メタ)アクリレートと、(B)(メタ)アクリレートモノマーと、(C)シリカ粒子とを含む活性エネルギー線硬化型樹脂組成物であって、
(C)シリカ粒子の見掛容積が、前記活性エネルギー線硬化型樹脂組成物全体の容積に対して15%以上である、活性エネルギー線硬化型樹脂組成物。
[2] (D)光重合開始剤をさらに含む、[1]に記載の活性エネルギー線硬化型樹脂組成物。
[3] 前記(C)シリカ粒子の平均粒子径が、前記活性エネルギー線硬化型樹脂組成から形成された硬化被膜の膜厚に対して90%以下である、[1]または[2]に記載の活性エネルギー線硬化型樹脂組成物。
[4] (E)樹脂粒子をさらに含む、[1]~[3]のいずれかに記載の活性エネルギー線硬化型樹脂組成物。
[5] 前記(E)樹脂粒子の平均粒子径が、前記活性エネルギー線硬化型樹脂組成から形成された硬化被膜の膜厚に対して90%以下である、[4]に記載の活性エネルギー線硬化型樹脂組成物。
[6] 内装材用、または屋外もしくは半屋外の床材用である、[1]~[5]のいずれかに記載の活性エネルギー線硬化型樹脂組成物。
[7] 基材の少なくとも片面が、[1]~[6]のいずれかに記載の活性エネルギー線硬化型樹脂組成物から形成された硬化被膜で被覆されてなる、硬化被膜付き基材。
[8] 前記基材が、内装材用、または屋外もしくは半屋外の床材用である、[7]に記載の硬化被膜付き基材。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、美観を損なわずに平滑性に優れながら、防滑性および耐キャスター性に優れた硬化被膜を形成可能な活性エネルギー線硬化型樹脂組成物を提供することができる。さらに、本発明の活性エネルギー線硬化型樹脂組成物は、低光沢な硬化被膜を形成することもできる。また、本発明によれば、低光沢であり、かつ、平滑性、防滑性、および耐キャスター性に優れた硬化被膜を提供することもできる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明をより詳細に説明する。
なお、本明細書において、「(メタ)アクリレート」はアクリレートおよびメタクリレートを表し、「(メタ)アクリロイル」は、アクリロイルおよびメタクリロイルを表す。
「活性エネルギー線」とは、紫外線の他、可視光線、赤外線、電子線、X線、γ線、プロトン線、中性子線等を含むものを意味する。
「固形分」とは、活性エネルギー線硬化型樹脂組成物から有機溶剤等の揮発成分を除いたものであり、硬化させたときに硬化被膜を構成する成分を示す。
【0011】
<活性エネルギー線硬化型樹脂組成物>
本発明による活性エネルギー線硬化型樹脂組成物は、少なくとも、(A)カプロラクトンに由来する構造を有するウレタン(メタ)アクリレートと、(B)(メタ)アクリレートモノマーと、(C)シリカ粒子とを含むものである。本発明による活性エネルギー線硬化型樹脂組成物は、(D)光重合開始剤、(E)樹脂粒子、および他の成分をさらに含んでもよい。
【0012】
本発明による活性エネルギー線硬化型樹脂組成物は、木質フローリング床材上に塗布して形成した、例えば、厚さ約15μmの硬化被膜の場合、60度鏡面光沢度(%)が20以下であることが好ましく、15以下であることがより好ましく、10以下であることがさらに好ましい。木質フローリング床材上に形成した硬化被膜の60度鏡面光沢度が20未満であれば、低光沢化が望まれている床材用の塗料として好適である。なお、60度鏡面光沢度は、市販の光沢度計を用いて測定することができる。
【0013】
本発明による活性エネルギー線硬化型樹脂組成物から形成された硬化被膜は、低光沢であり、かつ、平滑性、防滑性および耐キャスター性に優れるものである。したがって、本発明による活性エネルギー線硬化型樹脂組成物は、低光沢、平滑性、防滑性および耐キャスター性が要求される基材用として、特に床材等の内装材、または屋外もしくは半屋外の床材に好適に使用できる。以下、本発明による活性エネルギー線硬化型樹脂組成物の各成分について詳細に説明する。
【0014】
((A)カプロラクトンに由来する構造を有するウレタン(メタ)アクリレート)
本発明による活性エネルギー線硬化型樹脂組成物に含まれる(A)カプロラクトンに由来する構造を有するウレタン(メタ)アクリレート(以下、(A)成分とも言う)は、カプロラクトンに由来する構造と、1分子中に2個以上のアクリロイル基(CH=CHCO-)および/またはメタクリロイル基(CH=C(CH)-CO-)と、ウレタン結合(-NH・COO-)とを有するものである。カプロラクトンに由来する構造を有するウレタン(メタ)アクリレートは、エネルギー照射された時に(メタ)アクリロイル基が重合することで、硬化被膜(硬化物)を形成する。カプロラクトンに由来する構造を有するウレタン(メタ)アクリレートを用いることで、硬化被膜に弾性を付与することができ、活性エネルギー線硬化型樹脂組成から形成された硬化被膜の防滑性および耐キャスター性を向上させることができる。
【0015】
カプロラクトンに由来する構造を有するウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーは、例えば、ポリイソシアネートと、水酸基含有(メタ)アクリレートと、ポリカプロラクトンポリオールと、必要に応じて他のポリオールとを反応させることによって得ても良いし、例えば、ポリイソシアネートと、ポリカプロラクトン変性水酸基含有(メタ)アクリレートと、必要に応じて水酸基含有(メタ)アクリレート等、他のモノマーとを反応させることによって得ても良い。
【0016】
上記ポリイソシアネートとしては、本発明の効果を損なわない限り炭素数を限定するものではないが、例えば、全炭素数が4~20、好ましくは6~15の直鎖状または分岐状のイソシアネート基含有炭化水素、イソシアネート基含有環状炭化水素、イソシアネート基含有芳香族炭化水素を用いることができる。
【0017】
具体的には、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート等のイソシアネート基含有直鎖状炭化水素、2,2,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート等のイソシアネート基含有分岐鎖状炭化水素、イソホロンジイソシアネート、水添ジフェニルメタンジイソシアネート、水添キシレンジイソシアネート、水添トルエンジイソシアネート等のイソシアネート基含有環状炭化水素、p-フェニレンジイソシアネート、3,3’-ジメチルジフェニル-4,4’-ジイソシアネート、1,3-キシレンジイソシアネート、ジアニシジンジイソシアネート、テトラメチルキシレンジイソシアネート、1,5-ナフタレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、4、4-ジフェニルメタンジイソシアネート等のジイソシアネート基含有芳香族炭化水素等が挙げられるが、かかる例示のみに限定されるものではない。
【0018】
上記ポリイソシアネートは、アダクト、アロファネート、イソシアヌレート等に変性されていてもよく、アダクト変性されたものとしては、例えば、トリメチロールプロパンで変性されたヘキサメチレンジイソシアネート等が挙げられる。アロファネート変性されたものとしては、例えば、アロファネート変性ヘキサメチレンジイソシアネート等が挙げられる。イソシアヌレート変性されたものとしては、例えば、イソシアヌレート変性トルエンジイソシアネート等が挙げられる。また、上記以外のポリイソシアネートとして、ジメチルトリフェニルメタンテトライソシアネート、トリフェニルメタントリイソシアネート、イソシアネート基含有アクリレート等の多官能イソシアネートを用いてもよい。このようなポリイソシアネートは、1種単独でも、また2種以上組み合わせて用いてもよい。
【0019】
上記水酸基含有(メタ)アクリレートとしては、水酸基を少なくとも1個以上、好ましくは1~5個有する(メタ)アクリレートを用いることができる。また、このような水酸基含有(メタ)アクリレートは、本発明の効果を損なわない限りその炭素数を限定するものではないが、好ましくは炭素数が2~20の炭化水素部位を有することが望ましい。ここで、炭化水素部位とは、直鎖状または分岐状の脂肪族炭化水素基、脂環式炭化水素基、あるいは芳香族炭化水素基を有する有機基をいい、脂肪族炭化水素基、脂環式炭化水素基は、飽和でも不飽和でもよい。なお、当該炭化水素部位の一部には、エーテル結合(C-O-C結合)が含まれていてもよい。
【0020】
具体的には、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシ-3-フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシ-3-クロロプロピル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、グリシドールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート等が挙げられるが、かかる例示のみに限定されるものではない。また、上記以外にも、ポリカプロラクトン変性2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート等の変性体を用いてもよい。このような水酸基含有(メタ)アクリレートは、1種単独でも、2種以上組み合わせて用いてもよい。
【0021】
上記ポリカプロラクトンポリオールとしては、水酸基含有化合物とε-カプロラクトンの反応物を用いることができる。水酸基含有化合物としては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、ペンタンジオール、ヘキサンジオール、ヘプタンジオール、オクタンジオール、ノナンジオール、デカンジオール、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、グリセリン等が挙げられる。これらの水酸基含有化合物は1種単独でも、2種以上組み合わせて用いてもよい。
【0022】
必要に応じて用いられる他のポリオールとしては、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリオレフィンポリオール等の公知のポリオールを用いることができ、具体的には、ポリオキシエチレングリコール、ポリオキシプロピレングリコール、ポリオキシテトラメチレングリコール、ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物、ビスフェノールAのプロピレンオキサイド付加物、アルキレンジオール等が挙げられるが、かかる例示のみに限定されるものではない。このようなポリオールは、1種単独でも、2種以上組み合わせて用いてもよい。
【0023】
上記ポリカプロラクトン変性水酸基含有(メタ)アクリレートとしては、ポリカプロラクトン変性ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ポリカプロラクトン変性ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ポリカプロラクトン変性ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートなどが挙げられ、特に好ましくは、ポリカプロラクトン変性ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートである。このようなポリカプロラクトン変性水酸基含有(メタ)アクリレートは、1種単独でも、また2種以上組み合わせて用いてもよい。
【0024】
上記他のモノマーとしては、少なくとも1つ以上の(メタ)アクリロイル基を有するモノマーやオリゴマー、ポリオール等、公知のモノマーを用いることができ、特に、水酸基含有(メタ)アクリレートが好ましい。
【0025】
(A)カプロラクトンに由来する構造を有するウレタン(メタ)アクリレートの含有量は、活性エネルギー線硬化型樹脂組成物の固形分換算100質量%を基準として、通常5質量%以上40質量%以下、好ましくは10質量%以上40質量%以下、より好ましくは10質量%以上35質量%以下、さらに好ましくは15質量%以上35質量%以下、さらにより好ましくは15質量%以上30質量%以下である。カプロラクトンに由来する構造を有するウレタン(メタ)アクリレートの含有量が上記範囲内であれば、活性エネルギー線硬化型樹脂組成物から形成された硬化被膜は、防滑性および耐キャスター性に優れたものとなる。
【0026】
(他のオリゴマー)
本発明による活性エネルギー線硬化型樹脂組成物は、(A)カプロラクトンに由来する構造を有するウレタン(メタ)アクリレート以外の他のオリゴマーを含んでもよい。他のオリゴマーは特に限定されないが、例えば、カプロラクトンに由来する構造を有さないウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー、エポキシ(メタ)アクリレートオリゴマー、ポリエステル(メタ)アクリレートオリゴマー、ポリエーテル(メタ)アクリレートオリゴマー、アクリル(メタ)アクリレートオリゴマー等が挙げられる。
【0027】
他のオリゴマーの含有量は、活性エネルギー線硬化型樹脂組成物の固形分換算100質量%を基準として、通常1質量%以上30質量%以下、好ましくは3質量%以上20質量%以下、より好ましくは5質量%以上15質量%以下である。他のオリゴマーの含有量が上記範囲内であれば、活性エネルギー線硬化型樹脂組成物から形成された硬化被膜は、防滑性および耐キャスター性に優れたものとなる。
【0028】
((B)(メタ)アクリレートモノマー)
本発明による活性エネルギー線硬化型樹脂組成物に含まれる(B)(メタ)アクリレートモノマー(以下、(B)成分とも言う)は、少なくとも1つ以上の(メタ)アクリロイル基を有するモノマーであり、活性エネルギー線硬化型樹脂組成物の粘度を調整する反応性希釈剤としての役割を有し、樹脂組成物に対して活性エネルギー線照射した際、(A)カプロラクトンに由来する構造を有するウレタン(メタ)アクリレートとともに硬化被膜を形成する。
【0029】
(B)(メタ)アクリレートモノマーとしては、例えば、フェノキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、メトキシトリエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシテトラエチレングリコール(メタ)アクリレート、1,6-へキサンジオールエトキシレートジ(メタ)アクリレート、1,4-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6-へキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9-ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、2-(2-エトキシエトキシ)エチル(メタ)アクリレート、ビスフェノールAエトキシレートジ(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、2-フェノキシエチル(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,3-ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等を挙げることができるが、これに限定されるものではない。また、このような(メタ)アクリレート系モノマーは、例えば、ε-カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールの(メタ)アクリレート等のラクトン変性体であってもよい。
【0030】
上記のうちでも、活性エネルギー線硬化型樹脂組成物の粘度調整および硬化被膜の硬度調整の観点から、フェノキシポリエチレングリコールアクリレート、メトキシトリエチレングリコールアクリレート、トリプロピレングリコールジアクリレート、および1,6-へキサンジオールエトキシレートジアクリレートが好ましい。トリプロピレングリコールジアクリレートおよび1,6-へキサンジオールエトキシレートジアクリレートを併用すると、耐摩耗性に優れる。このような(メタ)アクリレートモノマーは、1種単独で、または2種以上組み合わせて用いることができる。
【0031】
(B)(メタ)アクリレートモノマーの含有量は、活性エネルギー線硬化型樹脂組成物の固形分換算100質量%を基準として、通常30質量%以上、好ましくは30質量%以上70質量%以下であり、より好ましくは35質量%以上65質量%以下であり、さらに好ましくは40質量%以上60質量%以下である。
【0032】
((C)シリカ粒子)
本発明による活性エネルギー線硬化型樹脂組成物に含まれるシリカ粒子(以下、(C)成分とも言う)は、特に限定されず、従来公知のシリカ粒子を用いることができる。シリカ粒子の形状は特に限定されず、球状、板状、棒状、繊維状、および薄片状等のいずれであってもよい。シリカ粒子としては、非晶質シリカおよび結晶質シリカのいずれであってもよく、非晶質シリカが好ましく、これらの混合物でもよい。シリカ粒子としては、市販品を用いることもできる。
【0033】
シリカ粒子の体積平均粒子径(単に「平均粒子径」とも記す)は、特に限定されないが、好ましくは0.01μm以上50μm以下であり、より好ましくは0.1μm以上30μm以下であり、さらに好ましくは0.5μm以上20μm以下であり、さらにより好ましくは1μm以上15μm以下である。また、シリカ粒子の平均粒子径は、活性エネルギー線硬化型樹脂組成から形成された硬化被膜の膜厚に対して、好ましくは90%以下であり、より好ましくは70%以下であり、さらに好ましくは50%以下であり、また、好ましくは0.01%以上であり、より好ましくは0.1%以上であり、さらに好ましくは1%以上であり、さらにより好ましくは5%以上であり、特に好ましくは10%以上である。シリカ粒子の平均粒子径が、上記の数値範囲を満たすものであれば、活性エネルギー線硬化型樹脂組成物から形成された硬化被膜の表面を凹凸形状にすることなく、防滑性および耐キャスター性を向上させることができる。なお、シリカ粒子の平均粒子径は、市販の粒度分布測定機を用いて測定することができる。すなわち、含有するシリカ粒子の大きさは、床材の表面に形成された硬化被膜の厚みを超えない大きさである。
【0034】
(C)シリカ粒子の見掛容積は、活性エネルギー線硬化型樹脂組成物全体の容積に対して15%以上であり、好ましくは20%以上であり、より好ましくは25%以上であり、また、好ましくは60%以下であり、より好ましくは50%以下である。シリカ粒子の見掛容積が上記の数値範囲内であれば、活性エネルギー線硬化型樹脂組成物から形成された硬化被膜の防滑性および耐キャスター性を向上させることができる。なお、シリカ粒子の見掛容積は、JIS K 6220-1 7.8.2の定質量法により計測したかさ密度(g/cm)の値より算出することができる。
【0035】
(C)シリカ粒子の含有量は、上記の見掛容積の数値範囲内に調節できるものであればよく、シリカ粒子の種類に応じて、適宜調節することができる。シリカ粒子の含有量は、特に限定されないが、活性エネルギー線硬化型樹脂組成物の固形分換算100質量%を基準として、通常1~30質量%、好ましくは2~20質量%の割合で用いることが望ましい。
【0036】
((D)光重合開始剤)
本発明による活性エネルギー線硬化型樹脂組成物を紫外線等の光により重合硬化させる場合には、光重合開始剤(以下、(D)成分とも言う)を使用する。電子線により重合硬化させる場合は、通常用いない。
【0037】
(D)光重合開始剤としては、具体的には、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル等のベンゾイン系光重合開始剤;ベンジルジメチルケタール(別名、2,2-ジメトキシ-2-フェニルアセトフェノン)、ジエトキシアセトフェノン、4-フェノキシジクロロアセトフェノン、4-t-ブチル-ジクロロアセトフェノン、4-t-ブチル-トリクロロアセトフェノン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパン-1-オン、1-(4-イソプロピルフェニル)-2-ヒドロキシ-2-メチルプロパン-1-オン、1-(4-ドデシルフェニル)-2-ヒドロキシ-2-メチルプロパン-1-オン、4-(2-ヒドロキシエトキシ)-フェニル(2-ヒドロキシ-2-プロピル)ケトン、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2-メチル-1-[4-(メチルチオ)フェニル]-2-モルホリノプロパン-1、メチルベンゾイルホルメート等のアセトフェノン系光重合開始剤;ベンゾフェノン、ベンゾイル安息香酸、ベンゾイル安息香酸メチル、4-フェニルベンゾフェノン、ヒドロキシベンゾフェノン、アクリル化ベンゾフェノン、4-ベンゾイル-4’-メチルジフェニルサルファイド、3,3’-ジメチル-4-メトキシベンゾフェノン等のベンゾフェノン系光重合開始剤;チオキサントン、2-クロルチオキサントン、2-メチルチオキサントン、2,4-ジメチルチオキサントン、イソプロピルチオキサントン、2,4-ジクロロチオキサントン、2,4-ジエチルチオキサントン、2,4-ジイソプロピルチオキサントン等のチオキサントン系光重合開始剤;2,4,6-トリメチルベンゾイル-ジフェニル-フォスフィンオキサイド、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニルフォスフィンオキサイド等のアシルフォスフィンオキサイド系光重合開始剤等が挙げられる。中でも、ベンゾフェノン系光重合開始剤が好ましく、ベンゾフェノンがより好ましい。このような(D)光重合開始剤は、1種単独でも、2種以上組み合わせて用いてもよい。
【0038】
(D)光重合開始剤を用いる場合は、活性エネルギー線硬化型樹脂組成物の固形分換算100質量%を基準として、通常1~10質量%、好ましくは3~7質量%の割合で用いることが望ましい。
【0039】
(E)樹脂粒子
本発明による活性エネルギー線硬化型樹脂組成物は、樹脂粒子(以下、(E)成分とも言う)を含んでもよい。樹脂粒子としては、従来公知の樹脂粒子を用いることができる。樹脂粒子としては、例えば、ポリウレタン粒子、ポリエチレン粒子、ナイロン粒子、ポリ(メタ)アクリル粒子、ポリスチレン粒子等が挙げられる。これらの樹脂粒子は、1種単独でも、2種以上組み合わせて用いてもよい。
【0040】
樹脂粒子の体積平均粒子径(単に「平均粒子径」とも記す)は、特に限定されないが、好ましくは0.1μm以上50μm以下であり、より好ましくは0.2μm以上30μm以下であり、さらに好ましくは0.5μm以上20μm以下であり、さらにより好ましくは1μm以上15μm以下である。また、樹脂粒子の平均粒子径は、活性エネルギー線硬化型樹脂組成から形成された硬化被膜の膜厚に対して、好ましくは90%以下であり、より好ましくは80%以下であり、さらに好ましくは70%以下であり、また好ましくは0.1%以上であり、より好ましくは1%以上であり、さらに好ましくは10%以上であり、さらにより好ましくは20%以上である。樹脂粒子の平均粒子径が、上記の数値範囲を満たすものであれば、活性エネルギー線硬化型樹脂組成物から形成された硬化被膜の表面を凹凸形状にすることなく、低光沢、および美観に優れた硬化被膜を得ることができる。なお、樹脂粒子の平均粒子径は、市販の粒度分布測定機を用いて測定することができる。すなわち、含有する樹脂粒子の大きさは、床材の表面に形成された硬化被膜の厚みを超えない大きさである。
【0041】
(E)樹脂粒子の含有量は、活性エネルギー線硬化型樹脂組成物の固形分換算100質量%を基準として、通常1質量%以上、好ましくは5質量%以上40質量%以下であり、より好ましくは10質量%以上30質量%以下である。
【0042】
(その他の成分)
本発明による活性エネルギー線硬化型樹脂組成物中には、上記成分の他に、更に必要に応じて、重合禁止剤、非反応性希釈剤、消泡剤、沈降防止剤、レベリング剤、分散剤、熱安定剤、紫外線吸収剤、光安定剤、防汚性向上剤、基材密着性向上剤、光増感剤、帯電防止剤、耐傷剤、防カビ剤、艶消し剤、シランカップリング剤、可塑剤等を、本発明の目的を損なわない範囲で用いることができる。
【0043】
なお、本実施形態に係る活性エネルギー線硬化型樹脂組成物は、シンナーやアルコール等の有機溶剤(非反応性希釈剤)で希釈する溶剤型樹脂組成物、また、有機溶剤で希釈する必要が無い無溶剤型樹脂組成物のどちらとしても構わない。ただし、揮発性有機化合物(VOC)の残留がないため、人体への影響がなく環境対応性に優れる等の理由から、無溶剤型樹脂組成物であることが好ましい。
【0044】
(活性エネルギー線硬化型樹脂組成物の調製方法)
本発明による活性エネルギー線硬化型樹脂組成物は、上記の諸成分を従来より公知の混合機、分散機、撹拌機等の装置を用い、混合・撹拌することにより得られる。このような装置としては、例えば、ディスパー、混合・分散ミル、モルタルミキサー、ロール、ペイントシェーカー、ホモジナイザー等が挙げられる。
【0045】
[硬化被膜付き基材]
本発明による硬化被膜付き基材は、少なくとも片面が、上記の活性エネルギー線硬化型樹脂組成物から形成された硬化被膜で被覆されてなる。硬化被膜は、基材の片面全面に設けられていてもよく、片面の一部にのみ設けられていてもよく、また基材の両面に設けられていてもよい。一部に設ける場合の硬化被膜の態様は特に制限されず、例えば、海島状の海部または島部、格子状、モザイク状など任意の態様を特に制限することなく採用できる。
【0046】
(基材)
本発明において、基材は、内装材として用いることができる。内装材とは、建築物や車両等の内部で使用される部材をいう。例えば、窓、壁、天井、床、屋根、建具、壁紙などが挙げられる。また、基材は、屋外や半屋外の床材としても用いることもできる。特に、床材や壁材等が好ましく、床材がより好ましい。基材としては、例えば、木質基材や合成樹脂からなる基材が挙げられる。合成樹脂としては、熱可塑性樹脂および熱硬化型樹脂が挙げられる。熱可塑性樹脂としては、具体的にはポリ塩化ビニル系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリエステル系樹脂、アクリル系樹脂等が挙げられる。また熱硬化型樹脂としては、具体的にはフェノール系樹脂、エポキシ系樹脂、ウレタン系樹脂、尿素系樹脂、メラミン系樹脂等が挙げられる。それらのうち、合成樹脂製床材用とする場合は、加工性や床材としての施工容易性の面から、熱可塑性樹脂が好ましく、中でも塩化ビニル系樹脂がより好ましい。基材の厚さは特に制限されないが、0.2~50mmが好ましく、1~20mmがより好ましい。
【0047】
(硬化被膜)
硬化被膜は、上記の活性エネルギー線硬化型樹脂組成物から形成される。硬化被膜の膜厚は特に限定されないが、通常1~100μm、好ましくは3~70μm、さらに好ましくは5~50μmが望ましい。乾燥性、硬化性の観点から上限は100μmが好ましく、耐摩耗性、耐汚染性の観点から下限は1μmが好ましい 。本発明における膜厚とは、硬化被膜の断面を光学顕微鏡や走査型電子顕微鏡(SEM)等にて観察した際の、硬化被膜の厚さを指す。このような膜厚の被膜を形成する際は、1回の塗装で、所望の厚みの被膜を形成してもよいし、複数回の塗装で、所望の厚みの被膜を形成してもよい。
【0048】
<硬化被膜付き基材の製造方法>
本発明による硬化被膜付き基材は、基材の少なくとも片面に、上記の活性エネルギー線硬化型樹脂組成物を塗布する工程(塗布工程)と、該塗布面に活性エネルギー線を照射して、該組成物を硬化させる工程(硬化工程)とを含むものである。
【0049】
(塗布工程)
塗布工程は、基材の少なくとも片面に、従来公知の方法により、上記の活性エネルギー線硬化型樹脂組成物を塗布する工程である。塗布には、例えば、バーコーター、グラビアコーター、ロールコーター(ナチュラルロールコーターおよびリバースロールコーター等)、カーテンフローコーター、エアナイフコーター、スピンコーターおよびブレードコーター等の塗布機が使用できる。これらの中でも、作業性および生産性の観点からロールコーターを用いた塗布方法が好ましい。
【0050】
塗布膜厚は、硬化乾燥後の膜厚が、上記硬化被膜の膜厚の範囲にあることが好ましい。
【0051】
活性エネルギー線硬化型樹脂組成物を溶剤で希釈して使用する場合は、塗布後に乾燥することが好ましい。乾燥方法としては、例えば熱風乾燥(ドライヤー等)が挙げられる。乾燥温度は、好ましくは10~200℃、塗膜の平滑性および外観の観点から更に好ましい上限は150℃、乾燥速度の観点から更に好ましい下限は30℃である。
【0052】
(硬化工程)
硬化工程は、基材の塗布面に活性エネルギー線を照射して、塗布された活性エネルギー線硬化型樹脂組成物を硬化させて、硬化被膜を形成する工程である。活性エネルギー線としては、紫外線(遠紫外線、近紫外線等)、赤外線等の光線に加えて、電子線等が挙げられ、中でも、硬化速度、照射装置の入手のし易さ、価格等の面から、紫外線が好ましい。
【0053】
本発明による活性エネルギー線硬化型樹脂組成物を、上記紫外線等の光線により硬化させる場合は、光重合開始剤を使用する。一方、上記電子線等により硬化させる場合は、通常、光重合開始剤を使用しなくてもよい。
【0054】
紫外線で硬化させる方法としては、200~500nm波長域の光を発する高圧水銀ランプ、メタルハライドランプ、キセノンランプ、ケミカルランプ、UV-LED等を用いて、紫外線を照射する方法等が挙げられる。紫外線の照射量は、活性エネルギー線硬化型樹脂組成物の硬化性および硬化物の可撓性の観点から、好ましくは100~3,000mJ/cmであり、より好ましくは200~2,000mJ/cmである。
【実施例0055】
以下、実施例により本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0056】
まず、活性エネルギー線硬化型樹脂組成物の調製のために、以下の原材料を準備した。
・ポリカプロラクトン変性ウレタンアクリレート1(根上工業製、商品名:ARTRESIN CWD-48N)
・多官能ウレタンアクリレート(Miwon Specialty Chemical製、商品名:Miramer PU-5000)
・ポリエーテル変性ウレタンアクリレート(Miwon Specialty Chemical製、商品名:MIRAMER SC-2565)
・アクリレートモノマー1(TPGDA、Miwon Specialty Chemical製、商品名:MIRAMER M220)
・アクリレートモノマー2(1,6-HD(EO)DA、Miwon Specialty Chemical製、商品名:MIRAMER M202)
・シリカ粒子1(有機処理非晶質シリカ粒子、平均粒子径3.0μm、水澤化学工業製、商品名:ミズカシルP-802YS)
・シリカ粒子2(有機処理非晶質シリカ粒子、平均粒子径6.5μm、水澤化学工業製、商品名:ミズカシルC-957)
・光重合開始剤(Chemfine International製、商品名:HYCURE184-2)
・ポリウレタン粒子1(球状ポリウレタン粒子、平均粒子径:6.5μm、根上工業製、商品名:ART PEARL AK-800TR)
・ポリウレタン粒子2(球状ポリウレタン粒子、平均粒子径:10μm、根上工業製、商品名:ART PEARL C-600T)
【0057】
(ポリカプロラクトン変成ウレタンアクリレート2の合成)
ポリカプロラクトン変性ヒドロキシエチルアクリレート(ダイセル化学工業製、商品名:プラクセルFA-5)270.3部、ポリエチレングリコールモノアクリレート(日油製商品名:ブレンマーAE-400)39.4部、4-メトキシフェノール0.04部、ジブチルヒドロキシトルエン0.04部、及びジブチル錫ラウレート0.12部を混合しながら、70℃まで昇温した。同温度でヘキサメチレンジイソシアネートのアロファネート変性タイプ(BASF製、商品名:Basonat HA300、イソシアネート含有量:19.5%)99.2部を1時間かけながら滴下した。滴下終了後、80℃に昇温し1.5時間保持することにより、ウレタンアクリレートオリゴマーを得た。
【0058】
[実施例1~6、比較例1~3]
<活性エネルギー線硬化型樹脂組成物の調製>
表1に記載の配合に従って、(A)成分~(E)成分を、ディスパーを用いて均一に混合・攪拌して、活性エネルギー線硬化型樹脂組成物を得た。
【0059】
<硬化被膜付き基材の製造>
まず、基材として木質フローリング板を用意した。次に、基材上に、下塗塗料として紫外線硬化型無溶剤塗料(オーレックスNo.821F LV、中国塗料(株)製)を、ロールコーターにて硬化後の被膜の厚さが20μmとなるように塗布した。続いて、被膜面に、高圧水銀ランプ(アイグラフィックス社製)を用いて紫外線を積算照度:100mJ/cm、照射強度:100mW/cmの条件で照射して硬化させ、下塗硬化被膜を形成した。
【0060】
次いで、得られた下塗硬化被膜上に、中塗塗料として、紫外線硬化型無溶剤塗料(オーレックスNo.663B-3、中国塗料(株)製)を、ロールコーターにて硬化後の被膜の厚さが20μmとなるように塗布した。続いて、被膜面に、高圧水銀ランプ(アイグラフィックス社製)を用いて紫外線を積算照度:100mJ/cm、照射強度:100mW/cmの条件で照射して硬化させ、中塗硬化被膜を形成した。
【0061】
さらに、得られた中塗硬化被膜上に、上塗塗料として、実施例1~6および比較例1~3で得られた光硬化性樹脂組成物を、ロールコーターにて硬化後の被膜の厚さが15μmとなるように塗布した。続いて、被膜面に、高圧水銀ランプ(アイグラフィックス社製)を用いて紫外線を積算照度:350mJ/cm、照射強度:250mW/cmの条件で照射して硬化させ、硬化被膜付き基材を得た。得られた硬化被膜付き基材は、硬化被膜の上から、基材の木目を視認できた。
【0062】
<評価>
(活性エネルギー線硬化型樹脂組成物の容積)
上記で調整した組成物について、JIS K 5600-2-4に準拠し、密度(g/cm)を計測した。得られた密度(g/cm)の値より、組成物全体の容積を算出した。
【0063】
(見掛容積の算出)
上記で用いたシリカ粒子について、JIS K 6220-1 7.8.2の定質量法により、かさ密度(g/cm)を計測した。得られたかさ密度(g/cm)の値より、シリカ粒子の見掛容積(cm/g)を算出した。
【0064】
(鏡面光沢度)
上記で得られた硬化被膜付き基材について、光沢度計(株式会社堀場製作所製、型番:IG-320)を用いて、60度鏡面光沢度を測定した。測定結果を表2に示した。60度鏡面光沢度が20以下であれば、低光沢であると言える。
【0065】
(防滑性)
上記で得られた硬化被膜付き基材を用いて、JIS A1454に定める床材の滑り性試験を行い、滑り抵抗係数(C.S.R)を測定した。滑り抵抗係数の値を下記の基準で評価した。測定結果および評価結果を表2に示した。
[評価基準]
〇:滑り抵抗係数が0.35以上であった。
×:滑り抵抗係数が0.35未満であった。
【0066】
(耐キャスター性)
上記で得られた硬化被膜付き基材を床上に水平に置いた。硬化被膜付き基材上で、ナイロン一体車輪420A(ハンマーキャスター製)に25kgの荷重を加えて40000回の往復運動を行い、硬化被膜の状態を目視にて観察した。耐キャスター性を下記の基準で評価した。評価結果を表2に示した。
[評価基準]
〇:硬化被膜の摩耗および剥離が認められなかった。
×:硬化被膜の摩耗および剥離が起こり、基材の木質部の一部が露出していた。
【0067】
(平滑性)
上記で得られた硬化被膜付き基材の硬化被膜の状態を目視にて観察した。平滑性を下記の基準で評価した。評価結果を表2に示した。
[評価基準]
〇:硬化被膜の表面は平滑であった。
×:硬化被膜の表面の一部に凹凸があった。
【0068】
【表1】
【0069】
【表2】