(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022113496
(43)【公開日】2022-08-04
(54)【発明の名称】モータの設計支援装置およびモータの設計支援方法
(51)【国際特許分類】
G06F 30/10 20200101AFI20220728BHJP
【FI】
G06F17/50 680Z
G06F17/50 604H
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021009783
(22)【出願日】2021-01-25
(71)【出願人】
【識別番号】000144027
【氏名又は名称】株式会社ミツバ
(74)【代理人】
【識別番号】110002871
【氏名又は名称】弁理士法人坂本国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】田村 夏海
【テーマコード(参考)】
5B046
5B146
【Fターム(参考)】
5B046AA07
5B046HA05
5B046JA01
5B046JA03
5B146AA21
5B146DC05
5B146DG02
(57)【要約】
【課題】極数やスロット数などに基づいて、モータの設計に有用な情報を得ることができる、モータの設計支援装置およびモータの設計支援方法を提供する。
【解決手段】モータの設計を支援するモータの設計支援装置であって、モータの極数およびモータのスロット数の入力を受け付ける入力受付部と、入力受付部を介して入力された極数およびスロット数に基づいて隣接するティース間の電気角のピッチを算出するピッチ算出部と、ピッチ算出部により算出された電気角のピッチに基づいて、巻線タイプを判定する巻線タイプ判定部と、を備え、巻線タイプ判定部では、電気角のピッチが120°または240°である第1の場合と、電気角のピッチが他の角度である第2の場合とで、巻線タイプを区別して判定する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
モータの設計を支援するモータの設計支援装置であって、
モータの極数およびモータのスロット数の入力を受け付ける入力受付部と、
前記入力受付部を介して入力された前記極数および前記スロット数に基づいて隣接するティース間の電気角のピッチを算出するピッチ算出部と、
前記ピッチ算出部により算出された前記電気角のピッチに基づいて、巻線タイプを判定する巻線タイプ判定部と、
を備え、
前記巻線タイプ判定部では、前記電気角のピッチが120°または240°である第1の場合と、前記電気角のピッチが他の角度である第2の場合とで、前記巻線タイプを区別して判定する、モータの設計支援装置。
【請求項2】
前記巻線タイプ判定部では、前記第2の場合には、前記入力受付部を介して入力された前記極数を、前記入力受付部を介して入力された前記極数と前記スロット数の最大公約数で割った値が偶数である第3の場合と、前記値が奇数である第4の場合とで、前記巻線タイプを区別して判定する、請求項1に記載のモータの設計支援装置。
【請求項3】
前記巻線タイプ判定部により判定された前記巻線タイプに応じた演算により、各相に電流を与えるタイミングを算出するタイミング算出部を備える、請求項1または請求項2に記載のモータの設計支援装置。
【請求項4】
前記入力受付部は、さらにコイルの結線タイプの入力を受け付け、
前記タイミング算出部は、前記入力受付部を介して入力された前記コイルの結線タイプに応じた演算により、前記タイミングを算出する、請求項3に記載のモータの設計支援装置。
【請求項5】
前記入力受付部は、さらに各相に電流を与える電源の波形の入力を受け付け、
前記タイミング算出部は、前記入力受付部を介して入力された前記波形に応じた演算により、前記タイミングを算出する、請求項3または請求項4に記載のモータの設計支援装置。
【請求項6】
モータの設計を支援するモータの設計支援方法であって、
モータの極数およびモータのスロット数の入力を受け付ける入力受付ステップと、
前記入力受付ステップを介して入力された前記極数および前記スロット数に基づいて隣接するティース間の電気角のピッチを算出するピッチ算出ステップと、
前記ピッチ算出ステップにより算出された前記電気角のピッチに基づいて、巻線タイプを判定する巻線タイプ判定ステップと、
を備え、
前記巻線タイプ判定ステップでは、前記電気角のピッチが120°または240°である第1の場合と、前記電気角のピッチが他の角度である第2の場合とで、前記巻線タイプを区別して判定する、モータの設計支援方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モータの設計を支援するモータの設計支援装置およびモータの設計支援方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、モータの界磁と電機子の構造を選択するとともに、界磁および電機子の主要寸法を入力すると、これら入力値に基づいてモータの基本メッシュを作成するモータ解析装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
モータの極数やスロット数、あるいはコイル結線の結線タイプ、すなわち、デルタ結線、スター結線などに応じて、各相のコイルの位置や、コイルへの電流を供給するタイミングなどの組み合わせが変化する。このため、例えば、モータの設計工程において磁場解析を行う場合、各相のコイルの位置や、コイルへの電流を供給するタイミングなどの組み合わせのそれぞれに対応するテンプレートを作成し、このテンプレートに基づいて磁場解析を行っている。
【0005】
しかし、複数のテンプレートを用意する作業は煩雑であり、その中から特定のテンプレートを正しく選択する作業も必要となる。したがって、極数やスロット数などに基づいて、自動的に、各相のコイルの位置や、コイルへの電流を供給するタイミングなどが算出できれば、テンプレートが不要となり、モータの設計を効果的に支援することができる。
【0006】
なお、特許文献1に記載されたモータ解析装置においても、極数やスロット数に基づいて、各相のコイルの位置や、コイルへの電流を供給するタイミングを算出することはできない。
【0007】
本発明は、極数やスロット数などに基づいて、モータの設計に有用な情報を得ることができる、モータの設計支援装置およびモータの設計支援方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記問題を解決するために、本発明の一態様は、
モータの設計を支援するモータの設計支援装置であって、
モータの極数およびモータのスロット数の入力を受け付ける入力受付部と、
前記入力受付部を介して入力された前記極数および前記スロット数に基づいて隣接するティース間の電気角のピッチを算出するピッチ算出部と、
前記ピッチ算出部により算出された前記電気角のピッチに基づいて、巻線タイプを判定する巻線タイプ判定部と、
を備え、
前記巻線タイプ判定部では、前記電気角のピッチが120°または240°である第1の場合と、前記電気角のピッチが他の角度である第2の場合とで、前記巻線タイプを区別して判定する、モータの設計支援装置を提供する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、極数やスロット数などに基づいて、モータの設計に有用な情報を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本実施例のモータの設計支援装置の構成を示す図である。
【
図3A】巻線タイプ判定処理を示すフローチャートである。
【
図3B】タイミング算出処理を示すフローチャートである。
【
図4】各ティース(i=1~12)の電気角と、対応する相との関係を示す図である。
【
図4A】各ティース(i=1~12)の電気角と、対応する相との関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、添付図面を参照しながら実施例について詳細に説明する。
【0012】
図1は、本実施例のモータの設計支援装置の構成を示す図である。
【0013】
図1に示すように、モータの設計支援装置1は、コンピュータを用いて構成され、必要な情報の入力を受け付ける入力受付部11と、入力受付部11を介して入力された情報に基づいてコイルの相判定処理を実行する相判定部12と、相判定部12における相判定処理の結果に基づいてずれ角度算出処理を実行するずれ角度算出部13と、ずれ角度算出部13におけるずれ角度算出処理の結果に基づいて巻線タイプ判定処理を実行する巻線タイプ判定部14と、巻線タイプ判定部14による判定結果に応じて、コイルへ供給される電流のタイミングを算出するタイミング算出部15と、を備える。
【0014】
また、モータの設計支援装置1は、相判定部12、ずれ角度算出部13および巻線タイプ判定部14における各処理において得られた算出結果を出力する出力部16を備える。
【0015】
図2は、モータの構成例を示す図、
図2Aは、
図2の一部拡大図である。
図2および
図2Aは、回転軸方向からモータを視た状態を示している。
【0016】
図2に示すモータは、回転軸10Aの周りに回転可能に支持されたロータ10と、ロータ10の外周側に配置されたステータ20と、を備えるブラシレスモータである。
【0017】
ロータ10には、回転軸10Aの周りに周方向に均等の間隔で配置された10個の磁石Mが設けられる。
図2Aに示すように、この例では、磁石Mは、外周側にN極を、内周側にS極をそれぞれ有する方向に配置される。
【0018】
ステータ20には、回転軸10Aの周りに周方向に均等の間隔で配置された12個のティース22が設けられ、ティース22のそれぞれにコイル21が巻き回される。
図2において、ティース22にはティース番号i(i=1~12)が与えられ、
図2において12時の方向にティース番号i=1のティース22が配置されている。各ティース22には、
図2において反時計周り方向の順にカウントアップされるティース番号iが与えられている。
【0019】
なお、
図2では、10極、12スロットのモータを例示しているが、後述するように、本実施例のモータの設計支援装置は、他の極数、スロット数の組み合わせについても広く対応可能である。
【0020】
次に、本実施例のモータの設計支援装置の動作について説明する。
【0021】
図3は、メイン処理を示すフローチャート、
図3Aは、巻線タイプ判定処理を示すフローチャート、
図3Bは、タイミング算出処理を示すフローチャートである。
【0022】
図3に示すステップS1(入力受付処理)では、入力受付部11により、必要な情報の入力を受け付ける。
【0023】
ここでは、入力受付部11は、設計の対象となるモータの極数、スロット数、電源タイプおよびコイル21の結線タイプの入力を受け付ける。
【0024】
電源タイプは、コイル21に印加する電圧の波形に対応しており、入力受付部11は、正弦波または矩形波のうちの一の入力を受け付ける。また、結線タイプは、デルタ結線またはスター結線のうちの一の入力を受け付ける。なお、電源タイプおよび結線タイプは、それぞれあらかじめ設定され、入力を省略可能としてもよい。
【0025】
次に、ステップS2(相判定処理)では、相判定部12により、コイルの相判定処理を行う。
【0026】
相判定処理では、各コイル21がどの相に属しているかを確認する。各コイル21の位置、すなわち、対応するティース22の位置を、ティース番号i=1のティース22からの間隔に対応する電気角TeethPitchとして示すと、ティース番号iのティース22の位置は、(1)式で示される。ステップS2では、(1)式を用いて、ティース番号iのティース22の電気角TeethPitchを算出する。なお、(1)式~(20)式の両辺の値(単位)は度(°)である。
【0027】
【数1】
例えば、10極12スロットのモータの場合、ティース番号i=1のティース22の電気角TeethPitchは0°であり、ティース番号i=2のティース22の電気角TeethPitchは150°となる。
【0028】
図4および
図4Aは、各ティース22(i=1~12)の電気角TeethPitchと、対応する相との関係を示す図である。
図4は、10極12スロットのモータの場合を例示している。
図4に示すように、隣り合うティース22の電気角のピッチ(ティース番号i=2のティース22の電気角TeethPitch)が180°未満の場合、反時計周り方向に、60°ずつ順に、U相ゾーン、-W相ゾーン、V相ゾーン、-U相ゾーン、W相ゾーン、-V相ゾーンが配置される。
【0029】
一方、隣り合うティース22の電気角のピッチ(ティース番号i=2のティース22の電気角TeethPitch)が180°を越える場合、
図4Aに示すように、時計周り方向に、60°ずつ順に、U相ゾーン、-W相ゾーン、V相ゾーン、-U相ゾーン、W相ゾーン、-V相ゾーンが配置される。
【0030】
-U相、-V相および-W相は、U相、V相およびW相に対して電流が供給されるタイミングは同一であるが、コイル21の巻き回し方向が逆転していることを示している。
【0031】
10極12スロットのモータの場合、隣り合うティース22の電気角の間隔が150°となるので、
図4に示すように、ティース番号i=1のティース22(対応するコイル21)をU相に設定すると、
図4に示すように、U相にティース番号i=1、8が、V相にティース番号i=4、9が、W相にティース番号i=12、5が、-U相にティース番号i=2、7が、-V相にティース番号i=10、3が、-W相にティース番号i=6、11が、それぞれ割り当てられる。
【0032】
次に、ステップS3(ずれ角度算出処理)では、ずれ角度算出部13は、U相に割り当てられているコイル21(ティース22)全体の実質的な角度(電気角0°からのずれ角度)を計算する。ここでは、(1)式で得られた角度がU相ゾーンに属するティース22の電気角TeethPitchを(2)式にあてはめ、U相に割り当てられているコイル21(ティース22)のずれ角度DifAngleを求める。
【0033】
【数2】
例えば、10極12スロットのモータの場合、U相ゾーンに属するティース22の数(コイル21の数)である「N」は、2である。また、U相ゾーンに属するティース番号i=1のティース22の電気角TeethPitchが0°、ティース番号i=8のティース22の電気角TeethPitchが-30°である。したがって、ずれ角度DifAngleは、(2)式に従って、-15°となる。
【0034】
次に、ステップS4(巻線タイプ判定処理)では、モータの極数およびスロット数の組み合わせに基づいて、巻線タイプを3つ(第1~第3のタイプ)に分類する。
【0035】
図3Aに示す巻線タイプ判定処理のステップS401では、巻線タイプ判定部14は、隣り合うティース22の電気角のピッチ(ティース番号i=2のティース22の電気角TeethPitch)が120°であるか否か判断し、判断が肯定されればステップS405へ処理を進め、判断が否定されればステップS403へ処理を進める。
【0036】
ステップS403では、巻線タイプ判定部14は、隣り合うティース22の電気角のピッチ(ティース番号i=2のティース22の電気角TeethPitch)が240°であるか否か判断し、判断が肯定されればステップS405へ処理を進め、判断が否定されればステップS407へ処理を進める。ステップS405では、巻線タイプ判定部14は、巻線タイプを第1のタイプに分類してリターンする。
【0037】
このように、第1のタイプは、隣り合うティース22の電気角のピッチ(ティース番号i=2のティース22の電気角TeethPitch)が120°または240°の場合に相当する。巻線タイプが第1のタイプでない場合、巻線タイプは第2のタイプまたは第3のタイプに分類される。
【0038】
ステップS407では、巻線タイプ判定部14は、極数とスロット数の最大公約数を、ユークリッドの除去法を用いて算出する。
【0039】
次に、ステップS409では、巻線タイプ判定部14は、極数を最大公約数で割って得た値が偶数か否か判断し、当該値が偶数であれば(判断が肯定されれば)ステップS411へ処理を進め、当該値が奇数であれば(判断が否定されれば)ステップS413へ処理を進める。
【0040】
ステップS411では、巻線タイプ判定部14は、巻線タイプを第2のタイプに分類してリターンする。一方、ステップS413では、巻線タイプ判定部14は、巻線タイプを第3のタイプに分類してリターンする。
【0041】
このように、第2のタイプおよび第3のタイプは、極数とスロット数の最大公約数を用いて決定される。そして、極数を最大公約数で割って得た値が偶数の場合は、巻線タイプが第2のタイプに、この値が奇数の場合は、巻線タイプが第3のタイプに、それぞれ分類される。
【0042】
例えば、10極12スロットのモータの場合、最大公約数は2であり、極数10を2で割って得た値は5、すなわち奇数であるため、巻線タイプは第3のタイプとなる。
【0043】
次に、ステップS5(タイミング算出処理)では、タイミング算出部15は、各相のコイル21に与えるべき電流のタイミングを算出する。電流のタイミングは、電源タイプ、結線タイプおよび巻線タイプの組み合わせに応じて算出される。
【0044】
図3Bに示すタイミング算出処理のステップS501では、タイミング算出部15は、入力受付部11を介して入力された情報に基づき、モータの結線タイプがデルタ結線かスター結線かを判断する。すなわち、ステップS501では、タイミング算出部15は、モータの結線タイプがデルタ結線か否か判断し、判断が肯定されればステップS503へ処理を進め、判断が否定されれば、すなわち、結線タイプがスター結線であれば、ステップS505へ処理を進める。
【0045】
ステップS503では、タイミング算出部15は、(3)式を使用して、U相の電圧の立ち上がるタイミング(位相)Uphaseを算出する。
【0046】
【数3】
一方、ステップS505では、タイミング算出部15は、(4)式を使用して、U相の電圧の立ち上がるタイミング(位相)Uphaseを算出する。
【0047】
【数4】
ステップS507では、タイミング算出部15は、入力受付部11を介して入力された情報に基づき、電源タイプが正弦波か矩形波かを判断する。すなわち、ステップS507では、タイミング算出部15は、コイル21に与える電流の波形が正弦波か否か判断し、判断が肯定されればステップS511へ処理を進め、判断が否定されれば、すなわち、コイル21に与える電流の波形が矩形波であれば、ステップS509へ処理を進める。
【0048】
ステップS511では、タイミング算出部15は、巻線タイプ判定部14により判定された巻線タイプが第1のタイプか否か判断し、判断が肯定されればステップS513へ処理を進め、判断が否定されればステップS515へ処理を進める。
【0049】
ステップS513では、タイミング算出部15は、(5)式および(6)式を使用して、V相の電圧の立ち上がるタイミング(位相)Vphaseと、W相の電圧の立ち上がるタイミング(位相)Wphaseと、を算出し、リターンする。
【0050】
【数5】
ステップS515では、タイミング算出部15は、巻線タイプ判定部14により判定された巻線タイプが第2のタイプか否か判断し、判断が肯定されればステップS517へ処理を進め、判断が否定されれば、すなわち、巻線タイプ判定部14により判定された巻線タイプが第3のタイプであれば、ステップS519へ処理を進める。
【0051】
ステップS517では、タイミング算出部15は、(7)式および(8)式を使用して、V相の電圧の立ち上がるタイミング(位相)Vphaseと、W相の電圧の立ち上がるタイミング(位相)Wphaseと、を算出し、リターンする。
【0052】
【数6】
ステップS519では、タイミング算出部15は、(9)式および(10)式を使用して、V相の電圧の立ち上がるタイミング(位相)Vphaseと、W相の電圧の立ち上がるタイミング(位相)Wphaseと、を算出し、リターンする。
【0053】
【数7】
一方、ステップS509では、タイミング算出部15は、(11)式および(18)式を用いて、U相の電流のタイミングを算出する。
【0054】
以下、タイミング算出部15は、U相、V相、W相の電流のタイミングを、各相の駆動回路に設けられた上段および下段のスイッチのオン、オフのタイミングとして算出する。(11)~(20)式において、Uup_onは、U相の上段側のスイッチがオンするタイミング(位相)を、Uup_offは、U相の上段側のスイッチがオフするタイミング(位相)を、ULow_onは、U相の下段側のスイッチがオンするタイミング(位相)を、ULow_offは、U相の下段側のスイッチがオフするタイミング(位相)を、それぞれ示す。同様に、Vup_onは、V相の上段側のスイッチがオンするタイミング(位相)を、Vup_offは、U相の上段側のスイッチがオフするタイミング(位相)を、VLow_onは、V相の下段側のスイッチがオンするタイミング(位相)を、VLow_offは、V相の下段側のスイッチがオフするタイミング(位相)を、それぞれ示す。Wup_onは、W相の上段側のスイッチがオンするタイミング(位相)を、Wup_offは、W相の上段側のスイッチがオフするタイミング(位相)を、WLow_onは、W相の下段側のスイッチがオンするタイミング(位相)を、WLow_offは、W相の下段側のスイッチがオフするタイミング(位相)を、それぞれ示す。なお、(18)~(20)式は、U相についての記述であるが、V相、W相でも同様の式が成立する。
【0055】
図5は、各相のスイッチの配置を示す図である。
図5において、スイッチUupおよびスイッチUlowは、それぞれU相の上段側および下段側のスイッチを、スイッチVupおよびスイッチVlowは、それぞれV相の上段側および下段側のスイッチを、スイッチWupおよびスイッチWlowは、それぞれW相の上段側および下段側のスイッチを示している。
【0056】
【0057】
【数9】
ステップS521では、タイミング算出部15は、巻線タイプ判定部14により判定された巻線タイプが第1のタイプか否か判断し、判断が肯定されればステップS523へ処理を進め、判断が否定されればステップS525へ処理を進める。
【0058】
ステップS523では、タイミング算出部15は、(12)、(13)、(18)~(20)式を用いて、V相およびW相の電流のタイミングを算出し、リターンする。ここで、Vup_onは、V相の電圧の立ち上がりのタイミング(位相)を、Vup_offは、V相の電圧の立ち下がりのタイミング(位相)を、Wup_onは、W相の電圧の立ち上がりのタイミング(位相)を、Wup_offは、W相の電圧の立ち下がりのタイミング(位相)を、それぞれ示す。
【0059】
ステップS525では、タイミング算出部15は、巻線タイプ判定部14により判定された巻線タイプが第2のタイプか否か判断し、判断が肯定されればステップS527へ処理を進め、判断が否定されれば、すなわち、巻線タイプ判定部14により判定された巻線タイプが第3のタイプであれば、ステップS529へ処理を進める。
【0060】
ステップS527では、タイミング算出部15は、(14)、(15)、(18)~(20)式を使用して、V相およびW相の電流のタイミングを算出し、リターンする。
【0061】
ステップS529では、タイミング算出部15は、(16)~(20)式を使用して、V相およびW相の電流のタイミングを算出し、リターンする。
【0062】
以上のように、本実施例では、モータの極数およびモータのスロット数を入力するだけで、隣接するティース間の電気角のピッチ、巻線タイプおよび各相における電流のタイミングを算出することができる。例えば、極数とスロット数に基づいて、自動的に、各相のコイルの位置や、コイルへの電流を供給するタイミングなどが算出できる。このため、煩雑なテンプレートの作成作業や、適切なテンプレートを選択する作業が不要となり、モータの設計を効果的に支援することができる。また、算出された情報を、出力部16を介して出力し、任意の方法で利用することができる。例えば、モータの設計工程において磁場解析を行う場合、シミュレータに出力部16からの情報を入力することにより、これらの算出結果を磁場解析のシミュレーションに利用することができる。
【0063】
以上、実施例について詳述したが、特定の実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された範囲内において、種々の変形および変更が可能である。また、前述した実施例の構成要素を全部または複数を組み合わせることも可能である。
【0064】
なお、以上の実施例に関し、さらに以下の付記を開示する。
【0065】
[付記1]
モータの設計を支援するモータの設計支援装置であって、
モータの極数およびモータのスロット数の入力を受け付ける入力受付部と、
前記入力受付部を介して入力された前記極数および前記スロット数に基づいて隣接するティース間の電気角のピッチを算出するピッチ算出部と、
前記ピッチ算出部により算出された前記電気角のピッチに基づいて、巻線タイプを判定する巻線タイプ判定部と、
を備え、
前記巻線タイプ判定部では、前記電気角のピッチが120°または240°である第1の場合と、前記電気角のピッチが他の角度である第2の場合とで、前記巻線タイプを区別して判定する、モータの設計支援装置。
【0066】
付記1の構成によれば、モータの極数およびモータのスロット数を入力すると、モータの極数およびモータのスロット数に基づいて隣接するティース間の電気角のピッチが算出されるとともに、電気角のピッチに基づいて巻線タイプが判定される。
【0067】
[付記2]
前記巻線タイプ判定部では、前記第2の場合には、前記入力受付部を介して入力された前記極数を、前記入力受付部を介して入力された前記極数と前記スロット数の最大公約数で割った値が偶数である第3の場合と、前記値が奇数である第4の場合とで、前記巻線タイプを区別して判定する、付記1に記載のモータの設計支援装置。
【0068】
付記2の構成によれば、モータの極数およびモータのスロット数を入力すると、極数とスロット数の最大公約数を用いて、さらに巻線タイプが細かく判定される。
【0069】
[付記3]
前記巻線タイプ判定部により判定された前記巻線タイプに応じた演算により、各相に電流を与えるタイミングを算出するタイミング算出部を備える、付記1または付記2に記載のモータの設計支援装置。
【0070】
付記3の構成によれば、モータの極数およびモータのスロット数を入力すると、判定された巻線タイプに応じて、各相に電流を与えるタイミングが算出される。
【0071】
[付記4]
前記入力受付部は、さらにコイルの結線タイプの入力を受け付け、
前記タイミング算出部は、前記入力受付部を介して入力された前記コイルの結線タイプに応じた演算により、前記タイミングを算出する、付記3に記載のモータの設計支援装置。
【0072】
付記4の構成によれば、コイルの結線タイプを入力すると、コイルの結線タイプに応じたタイミングが算出される。
【0073】
[付記5]
前記入力受付部は、さらに各相に電流を与える電源の波形の入力を受け付け、
前記タイミング算出部は、前記入力受付部を介して入力された前記波形に応じた演算により、前記タイミングを算出する、付記3または付記4に記載のモータの設計支援装置。
【0074】
付記5の構成によれば、各相に電流を与える電源の波形を入力すると、波形に応じたタイミングが算出される。
【0075】
[付記6]
モータの設計を支援するモータの設計支援方法であって、
モータの極数およびモータのスロット数の入力を受け付ける入力受付ステップと、
前記入力受付ステップを介して入力された前記極数および前記スロット数に基づいて隣接するティース間の電気角のピッチを算出するピッチ算出ステップと、
前記ピッチ算出ステップにより算出された前記電気角のピッチに基づいて、巻線タイプを判定する巻線タイプ判定ステップと、
を備え、
前記巻線タイプ判定ステップでは、前記電気角のピッチが120°または240°である第1の場合と、前記電気角のピッチが他の角度である第2の場合とで、前記巻線タイプを区別して判定する、モータの設計支援方法。
【0076】
付記6の構成によれば、モータの極数およびモータのスロット数を入力すると、モータの極数およびモータのスロット数に基づいて隣接するティース間の電気角のピッチが算出されるとともに、電気角のピッチに基づいて巻線タイプが判定される。
【符号の説明】
【0077】
1 モータの設計支援装置
11 入力受付部
12 相判定部
13 ずれ角度算出部
14 巻線タイプ判定部
15 タイミング算出部
16 出力部