(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022113647
(43)【公開日】2022-08-04
(54)【発明の名称】三次元印刷物体の外周における量子化誤差を防止するように材料滴排出三次元(3D)物体プリンタを動作させるためのシステム及び方法
(51)【国際特許分類】
B23K 26/34 20140101AFI20220728BHJP
B29C 64/112 20170101ALI20220728BHJP
B29C 64/209 20170101ALI20220728BHJP
B29C 64/393 20170101ALI20220728BHJP
B33Y 10/00 20150101ALI20220728BHJP
B33Y 30/00 20150101ALI20220728BHJP
B33Y 50/02 20150101ALI20220728BHJP
B22F 12/33 20210101ALI20220728BHJP
B22F 12/53 20210101ALI20220728BHJP
B22F 10/85 20210101ALI20220728BHJP
B23K 26/21 20140101ALI20220728BHJP
【FI】
B23K26/34
B29C64/112
B29C64/209
B29C64/393
B33Y10/00
B33Y30/00
B33Y50/02
B22F12/33
B22F12/53
B22F10/85
B23K26/21 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】18
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021215404
(22)【出願日】2021-12-29
(31)【優先権主張番号】17/157,448
(32)【優先日】2021-01-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】504407000
【氏名又は名称】パロ アルト リサーチ センター インコーポレイテッド
(71)【出願人】
【識別番号】596170170
【氏名又は名称】ゼロックス コーポレイション
【氏名又は名称原語表記】XEROX CORPORATION
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100067013
【弁理士】
【氏名又は名称】大塚 文昭
(74)【代理人】
【識別番号】100086771
【弁理士】
【氏名又は名称】西島 孝喜
(74)【代理人】
【識別番号】100109335
【弁理士】
【氏名又は名称】上杉 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100120525
【弁理士】
【氏名又は名称】近藤 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100139712
【弁理士】
【氏名又は名称】那須 威夫
(72)【発明者】
【氏名】スチュワート・エー・シュヴァイド
(72)【発明者】
【氏名】デイヴィッド・エー.・マンテル
(72)【発明者】
【氏名】クリストファー・ティー.・チョンビン
(72)【発明者】
【氏名】デイヴィッド・ジー.・ティリー
(72)【発明者】
【氏名】ウォルター・シャオ
(72)【発明者】
【氏名】プリヤンカー・デヴィ・グジラプ
(72)【発明者】
【氏名】ダニエル・コーミエ
(72)【発明者】
【氏名】ディネシュ・クリシュナ・クマール・ジャヤバル
【テーマコード(参考)】
4E168
4F213
4K018
【Fターム(参考)】
4E168BA35
4E168BA81
4F213AR12
4F213AR13
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4F213WL92
4K018CA44
4K018EA51
4K018EA60
(57)【要約】 (修正有)
【課題】外周の各層における部品完全性を維持するために別個の材料滴を適切な液滴間隔で排出することが可能な、材料滴排出三次元(3D)物体プリンタを動作させる方法を提供する。
【解決手段】方法は、第1の物体層に形成される外周を特定することと、前記外周を形成するために排出する材料滴の数、及び前記第1の物体層に対する第1の量子化誤差を特定することであって、前記特定された材料滴の数は第1の整数であることと、第1の材料滴に対して場所を特定することと、前記特定された材料滴の数及び前記特定された場所を使用して、前記物体層データモデルから生成された前記マシン対応命令を修正することと、前記修正されたマシン対応命令を実行して、前記材料滴排出3D物体プリンタによって形成される前記第1の物体層において前記外周を形成するように前記材料滴排出3D物体プリンタを動作させることと、を含む。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
材料滴排出三次元(3D)物体プリンタを動作させる方法であって、
物体層データモデルから生成されたマシン対応命令の実行によって第1の物体層に形成される外周を特定することと、
前記第1の物体層において前記外周を形成するために排出する材料滴の数、及び前記第1の物体層に対する第1の量子化誤差を特定することであって、前記第1の物体層において前記外周を形成するための前記特定された材料滴の数は第1の整数である、ことと、
前記第1の物体層において前記外周を形成するために排出される第1の材料滴に対して場所を特定することと、
前記特定された材料滴の数及び前記第1の材料滴に対する前記特定された場所を使用して、前記物体層データモデルから生成された前記マシン対応命令を修正することと、
前記修正されたマシン対応命令を実行して、前記材料滴排出3D物体プリンタによって形成される前記第1の物体層において前記外周を形成するように前記材料滴排出3D物体プリンタを動作させることと、を含む、方法。
【請求項2】
前記第1の物体層において形成される前記外周に対応する、物体層データモデルの第2の物体層において形成される外周を特定することと、
前記第1の物体層の前記量子化誤差を前記物体層データモデル内の第2の物体層に分配することと、
前記第2の物体層において前記外周を形成するために排出する材料滴の数、及び前記第2の物体層に対する第2の量子化誤差を特定することであって、前記第2の物体層において前記外周を形成するための前記特定された材料滴の数は、前記第1の整数の数とは異なる第2の整数の数である、ことと、
前記第2の物体層において前記外周を形成するために排出される第1の材料滴に対して場所を特定することと、
前記物体の前記第2の物体層において前記外周を形成するように前記材料滴排出3D物体プリンタを動作させるために、前記特定された材料滴の数及び前記特定された場所を使用して、前記物体データモデルから生成された前記マシン対応命令を修正することと、
前記修正されたマシン対応命令を実行して、前記第2の物体層において前記外周を形成するように前記材料滴排出3D物体プリンタを動作させることと、を更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記第1の量子化誤差の前記分配、前記第2の物体層において前記外周を形成するために排出される前記材料滴の数の前記特定、及び前記第2の量子化誤差の前記特定が、前記第2の物体層において前記外周を形成するために使用される材料の量又は液滴の数に非整数の数を使用して決定される、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記第1の量子化誤差の前記分配、前記第2の物体層において前記外周を形成するために排出される前記材料滴の数の前記特定、及び前記第2の量子化誤差の前記特定が、
drops_accum=drops_float+drop_error、
drops_layer=floor(drops_accum+0.5)、
drop_error=drops_accum-drops_layerによって表されるプロセスを使用して決定され、式中、drops_floatは、前記外周を形成するために排出される前記材料滴の数又は液滴質量の量を表す非整数の数であり、drops_accumは、前記第1の量子化誤差によって調整されたdrops_floatであり、drops_layerは、前記第2の物体層を形成するために排出される前記材料滴の数であり、前記drop_errorは、前記第2の量子化誤差であり、前記floor関数は、当該関数の引数の値に最も近い低い方の整数の数を特定する、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記第2の物体層において前記外周を形成するために排出される前記第1の材料滴に対する前記場所の前記特定が、
前記第2の物体層において前記外周を形成するために排出される前記第1の材料滴に対する前記場所を、前記第1の物体層において前記外周を形成するために排出される前記第1の材料滴に対する前記場所から、前記第1の物体層において前記外周を形成するために排出される前記第1の材料滴に対する前記場所と、前記第1の物体層において前記外周を形成するために排出される次の材料滴の場所との間の液滴間隔の半分だけシフトさせることを更に含む、請求項2に記載の方法。
【請求項6】
前記第2の物体層において前記外周を形成するために排出される前記第1の材料滴に対する前記場所の前記特定が、
前記第2の物体層において前記外周を形成するために排出される前記第1の材料滴の前記場所を特定するためにブルーノイズ生成器を使用することを更に含む、請求項2に記載の方法。
【請求項7】
前記ブルーノイズ生成器の前記使用が、
前記第2の物体層において前記外周を形成するために排出される前記第1の材料滴の前記場所を、前記第1の物体層において前記外周を形成するために排出される前記第1の材料滴と、前記第1の物体層において前記外周を形成するために排出される次の材料滴の場所との間の液滴間隔距離の半分だけ移動させることと、
前記移動させた場所を、三角確率分布を有するホワイトノイズ生成器を使用して、負の半分の前記液滴間隔距離~正の半分の前記液滴間隔距離の追加の距離によって変更することと、を更に含む、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記マシン対応命令の前記生成は、
前記外周を形成するための浮動小数点の数の液滴に対する複数の累積液滴値を、前記第1の層において前記外周を形成するための前記特定された第1の整数の数の液滴に対する複数の累積液滴値にスケーリングすることを更に含む、請求項2に記載の方法。
【請求項9】
前記マシン対応命令の前記生成は、
前記外周を形成するために排出される浮動小数点の数の液滴又は液滴質量の量に対する複数の累積液滴値を、前記第1の層において前記外周を形成するための前記特定された第2の整数の数の液滴に対する複数の累積液滴値にスケーリングすることを更に含み、前記第2の特定された整数の数に対する前記複数の累積液滴値が、前記第1の特定された整数の数に対する前記複数の累積液滴値とは異なる、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
金属滴排出装置であって、
バルク金属を受容及び溶解するように構成された溶解装置と、
溶解したバルク金属を前記溶解装置から受容するように前記溶解装置に流動的に接続されているノズルを有する排出ヘッドと、
前記排出ヘッドの反対側に位置付けられたプラットフォームと、
前記プラットフォーム及び前記少なくとも1つの排出ヘッドのうちの少なくとも1つに動作可能に接続された少なくとも1つのアクチュエータであって、前記少なくとも1つのアクチュエータが、前記プラットフォーム及び前記少なくとも1つの排出ヘッドのうちの前記少なくとも1つを互いに対して移動させるように構成されている、アクチュエータと、
前記溶解装置、前記少なくとも1つの排出ヘッド、及び前記少なくとも1つのアクチュエータに動作可能に接続されたコントローラであって、前記コントローラが、
物体層データモデルから生成されたマシン対応命令の実行によって第1の物体層に形成される外周を特定することと、
前記第1の物体層において前記外周を形成するために排出する材料滴の数、及び前記第1の物体層に対する第1の量子化誤差を特定することであって、前記第1の物体層において前記外周を形成するための材料滴の前記特定された数は第1の整数である、ことと、
前記第1の物体層において前記外周を形成するために排出される第1の材料滴に対して場所を特定することと、
前記特定された材料滴の数及び前記第1の材料滴に対する前記特定された場所を使用して、前記物体層データモデルから生成された前記マシン対応命令を修正することと、
前記修正されたマシン対応命令を実行して、前記材料滴排出3D物体プリンタによって形成される前記第1の物体層において前記外周を形成するように前記材料滴排出3D物体プリンタを動作させることと、を行うように構成されている、コントローラと、を含む、金属滴排出装置。
【請求項11】
前記コントローラが、
前記第1の物体層において形成される前記外周に対応する、物体層データモデルの第2の物体層において形成される外周を特定することと、
前記第1の物体層の前記量子化誤差を前記物体層データモデル内の第2の物体層に分配することと、
前記第2の物体層において前記外周を形成するために排出する材料滴の数、及び前記第2の物体層に対する第2の量子化誤差を特定することであって、前記第2の物体層において前記外周を形成するための前記特定された材料滴の数は、前記第1の整数の数とは異なる第2の整数の数である、ことと、
前記第2の物体層において前記外周を形成するために排出される第1の材料滴に対して場所を特定することと、
前記物体の前記第2の物体層において前記外周を形成するように前記材料滴排出3D物体プリンタを動作させるために、前記特定された材料滴の数及び前記特定された場所を使用して、前記物体データモデルから生成された前記マシン対応命令を修正することと、
前記修正されたマシン対応命令を実行して、前記第2の物体層において前記外周を形成するように前記材料滴排出3D物体プリンタを動作させることと、を行うように更に構成されている、請求項10に記載の装置。
【請求項12】
前記コントローラが、
前記第1の量子化誤差の前記分配を特定することと、前記第2の物体層において前記外周を形成するために排出される前記材料滴の数を特定することと、前記第2の物体層において前記外周を形成するために使用される材料の量又は液滴の数に非整数の数を使用して、前記第2の量子化誤差を特定することと、を行うように更に構成されている、請求項11に記載の装置。
【請求項13】
前記コントローラが、
前記第1の量子化誤差の前記分配を特定することと、前記第2の物体層において前記外周を形成するために排出される前記材料滴の数を特定することと、前記第2の量子化誤差を、
drops_accum=drops_float+drop_error、
drops_layer=floor(drops_accum+0.5)、
drop_error=drops_accum-drops_layerによって表されるプロセスを使用して特定することと、を行うように更に構成されており、式中、drops_floatは、前記外周を形成するために排出される前記材料滴の数又は液滴質量の量を表す非整数の数であり、drops_accumは、前記第1の量子化誤差によって調整されたdrops_floatであり、drops_layerは、前記第2の物体層を形成するために排出される前記材料滴の数であり、前記drop_errorは、前記第2の量子化誤差であり、前記floor関数は、当該関数の引数の値に最も近い低い方の整数の数を特定する、請求項12に記載の装置。
【請求項14】
前記コントローラが、
前記第2の物体層において前記外周を形成するために排出される前記第1の材料滴に対する前記場所の特定を、
前記第2の物体層において前記外周を形成するために排出される前記第1の材料滴に対する前記場所を、前記第1の物体層において前記外周を形成するために排出される前記第1の材料滴に対する前記場所から、前記第1の物体層において前記外周を形成するために排出される前記第1の材料滴に対する前記場所と、前記第1の物体層において前記外周を形成するために排出される次の材料滴の場所との間の液滴間隔の半分だけシフトさせることによって行うように更に構成されている、請求項11に記載の装置。
【請求項15】
前記コントローラが、
前記第2の物体層において前記外周を形成するために排出される前記第1の材料滴に対する前記場所の特定を、
ブルーノイズ生成器を使用して、前記第2の物体層において前記外周を形成するために排出される前記第1の材料滴の前記場所を特定することによって行うように更に構成されている、請求項11に記載の装置。
【請求項16】
前記コントローラが、前記ブルーノイズ生成器を、
前記第2の物体層において前記外周を形成するために排出される前記第1の材料滴の前記場所を、前記第1の物体層において前記外周を形成するために排出される前記第1の材料滴と、前記第1の物体層において前記外周を形成するために排出される次の材料滴の場所との間の液滴間隔距離の半分だけ移動させることと、
前記移動させた場所を、三角確率分布を有するホワイトノイズ生成器を使用して、負の半分の前記液滴間隔距離~正の半分の前記液滴間隔距離の追加の距離によって変更することと、によって使用するように更に構成されている、請求項15に記載の装置。
【請求項17】
前記コントローラが、前記マシン対応命令を、
前記外周を形成するための浮動小数点の数の液滴に対する複数の累積液滴値を、前記第1の層において前記外周を形成するための前記特定された第1の整数の数の液滴に対する複数の累積液滴値にスケーリングすることによって修正するように更に構成されている、請求項11に記載の装置。
【請求項18】
前記コントローラが、前記マシン対応命令を、
前記外周を形成するために排出される浮動小数点の数の液滴又は液滴質量の量に対する複数の累積液滴値を、前記第1の層において前記外周を形成するための前記特定された第2の整数の数の液滴に対する複数の累積液滴値にスケーリングすることによって修正するように更に構成されており、前記第2の特定された整数の数に対する前記複数の累積液滴値は、前記第1の特定された整数の数に対する前記複数の累積液滴値とは異なる、請求項17に記載の装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、材料の液滴を排出して三次元(3D)物体を形成する三次元(3D)物体プリンタを対象とし、より具体的には、それらのプリンタで製造される3D物体の外周の形成を対象とする。
【背景技術】
【0002】
付加製造としても知られる三次元印刷は、事実上あらゆる形状のデジタルモデルから三次元の固体物体を作製するプロセスである。多くの三次元印刷技術は、付加製造デバイスが、前に堆積された層の上に部品の連続層を形成する付加プロセスを使用する。これらの技術のいくつかは、フォトポリマー又はエラストマーなどの溶解した材料の液滴を排出する排出装置を使用する。プリンタは、典型的には、1つ以上の排出装置を操作して、様々な形状及び構造を有する三次元印刷された物体を形成する熱可塑性材料の連続層を形成する。三次元印刷物体の各層が形成された後、可塑性材料は硬化させられ、その結果、固まって、その層を三次元印刷物体の下地層に接着する。この付加製造方法は、ほとんどが切断又はドリル加工などの減法プロセスによる加工物からの材料の除去に依存する従来の物体形成技術と区別可能である。
【0003】
最近、1つ以上の排出装置から、溶解した金属の液滴を排出して3D物体を形成するいくつかの3D物体プリンタが開発されている。これらのプリンタは、ワイヤのロール、又はペレットなどの中実金属源を有し、その中実金属は、それらが溶解される加熱チャンバの中に送り込まれ、その溶解した金属は、排出装置のチャンバの中に流入する。チャンバの周りには、絶縁されていない導電性ワイヤが巻き付けられている。電流が導体を通過することにより、電磁場を生成し、その電磁場により、チャンバのノズルにおいて溶解した金属の三日月形状がチャンバ内の溶解した金属から分離し、ノズルから推進する。排出装置のノズルの反対側にあるプラットフォームは、コントローラ動作するアクチュエータによって、プラットフォームの平面に平行なX-Y平面内で移動されて、排出された金属滴がプラットフォーム上に物体の金属層を形成し、別のアクチュエータは、コントローラによって動作されて、排出装置又はプラットフォームの位置を垂直方向又はZ方向に変化させる、排出装置と、形成される金属物体の最上層との間の距離を一定に維持する。このタイプの金属滴排出プリンタは、磁気流体力学的プリンタとしても知られている。
【0004】
熱可塑性材料を連続的に押し出して印刷物体の外周及びインフィルを形成する既知の3D物体プリンタでは、閉じた外周の単位長さ当たりに押し出される材料の量は、外周長さとは無関係である。一方、熱可塑性材料又は溶解した金属の液滴を排出する3D物体プリンタでは、プロセスは連続的ではない。代わりに、閉じた外周は、別個の複数の液滴を使用して印刷される。印刷された最後の液滴から印刷された最初の液滴までの距離が、外周の残りの部分を形成するために使用される液滴間隔に等しくない場合、特にこの誤差が連続層で繰り返される場合、局所的な部品の変形をもたらす局所的な異常が生じる。この間隔が変更された場合でも、それらの層における外周の材料の量は、不正確な部品の高さをもたらす。
【0005】
ドロップオンデマンド方式の3D物体プリンタは、典型的には、所定の距離単位当たりの速度で液滴を印刷して、一定の密度をもたらす。これらのプリンタは、典型的には、ラスター方式のプリンタである。ドロップオンデマンド印刷を印刷中のツールパスの動きと組み合わせることは、その印刷のために新しい制約を必要とする。押出プリンタでは、押し出される材料の量は、アナログ値である。一方、ドロップオンデマンド印刷では、個々の液滴の排出は、部品の外周及び境界の形成、並びに部品のインフィルに影響を及ぼす。一例として、円筒が形成される場合、円筒の各層は、同じ半径を有する円として印刷される。例えば、外周に沿った液滴間の距離が公称的に1mmである場合、2mmの半径の円は、1層当たり4πの液滴を必要とし、これは約12.57の液滴である。各層について、液滴は標準的な間隔で離間され得、次いで最後(すなわち、13番目)の液滴は、含められるか、又は除外されるかのいずれかになり得る。結果として、円筒層外周を印刷するために12個又は13個のいずれの液滴を用いるかの選択が存在する。13番目 の液滴を除外した場合、外周に印刷された最初の液滴と最後又は12番目の液滴との間の距離は、連続的に排出された液滴間の距離の1.57倍であり、この例では、1.57mmである。したがって、局所的な空隙がもたらされる。逆に、外周の最後の液滴として13番目の液滴が排出される場合、この例における最初の液滴と最後の液滴との間の距離は、0.57mmだけであり、局所的な突出部をもたらす可能性がある。
【0006】
いくつかの既知の方法は、全ての可能な外周に対してこの問題を低減し得るが、排除することはできない。1つのアプローチは、閉じた外周を形成する様々な層の開始液滴を周囲にランダムに移動させる。このアプローチは問題を完全に取り除くわけではないが、局所的な異常が各層の異なる場所にあることを確実にし、その結果、誤差が単一の位置に蓄積することはない。液滴間隔誤差が液滴間隔距離の半分に近いシナリオでは、欠陥は、場所においてランダム化されてはいるが、非常に顕著なものとなり得る。別の可能な補正は、排出された液滴の間隔を整数値に変更することである。上記の例に記載されているような円筒に対する円形層では、各層における液滴の数を13に丸めて、最後の液滴を最初の液滴間隙まで薄く伸ばす。しかし、とりわけ外周当たりの液滴の数が小さい場合には、誤差の高さが急速に増進し得る。これら2つの可能な解決策の問題は、層外周における材料の量が、局所的に又は全体的にのいずれかで、不正確であることである。両アプローチは、様々な状況において、外周の高さ及び形状に誤差を生じさせる可能性があり、特に薄い断面部分において、完成部品の構造的安定性に問題を引き起こす可能性がある。外周の各層における部品完全性を維持するために別個の材料滴を適切な液滴間隔で排出するプリンタで製造される部品の外周を形成することができることは、有益であろう。
【発明の概要】
【0007】
材料滴排出3D物体プリンタを動作させる新しい方法は、外周の各層における部品完全性のための適切な液滴間隔の別個の材料滴で部品の外周を形成することができる。この方法は、物体層データモデルから生成されたマシン対応命令の実行によって第1の物体層に形成される外周を特定することと、第1の物体層において外周を形成するために排出する材料滴の数、及び第1の物体層に対する第1の量子化誤差を特定することであって、第1の物体層において外周を形成するための特定された材料滴の数は第1の整数である、ことと、第1の物体層において外周を形成するために排出される第1の材料滴に対して場所を特定することと、特定された材料滴の数及び第1の材料滴に対する特定された場所を使用して、物体層データモデルから生成されたマシン対応命令を修正することと、修正されたマシン対応命令を実行して、材料滴排出3D物体プリンタによって形成される第1の物体層において外周を形成するように材料滴排出3D物体プリンタを動作させることと、を含む。
【0008】
新しい材料滴排出3D物体プリンタは、外周の各層における部品完全性のための適切な液滴間隔の別個の材料滴で部品の外周を形成することができる。この材料滴排出3D物体プリンタは、バルク金属を受容及び溶解するように構成された溶解装置と、溶解したバルク金属を溶解装置から受容するように溶解装置に流動的に接続されているノズルを有する排出ヘッドと、排出ヘッドの反対側に位置付けられたプラットフォームと、プラットフォーム及び少なくとも1つの排出ヘッドのうちの少なくとも1つに動作可能に接続された少なくとも1つのアクチュエータであって、少なくとも1つのアクチュエータが、プラットフォーム及び少なくとも1つの排出ヘッドのうちの少なくとも1つを互いに対して移動させるように構成されている、アクチュエータと、溶解装置、少なくとも1つの排出ヘッド、及び少なくとも1つのアクチュエータに動作可能に接続されたコントローラと、を含む。コントローラは、物体層データモデルから生成されたマシン対応命令の実行によって第1の物体層に形成される外周を特定することと、第1の物体層において外周を形成するために排出する材料滴の数、及び第1の物体層に対する第1の量子化誤差を特定することであって、第1の物体層において外周を形成するための特定された材料滴の数は第1の整数である、ことと、第1の物体層において外周を形成するために排出される第1の材料滴に対して場所を特定することと、特定された材料滴の数及び第1の材料滴に対する特定された場所を使用して、物体層データモデルから生成されたマシン対応命令を修正することと、修正されたマシン対応命令を実行して、材料滴排出3D物体プリンタによって形成される第1の物体層において外周を形成するように材料滴排出3D物体プリンタを動作させることと、を行うように構成されている。
【図面の簡単な説明】
【0009】
材料滴排出3D物体プリンタ、及び外周の各層における部品完全性のための適切な液滴間隔の別個の材料滴で部品の外周を形成する新しい材料滴排出3D物体プリンタを動作させる方法の前述の態様及び他の特徴は、添付の図面に関連して、以下の記載で説明される。以下に記載される方法及びプリンタは、外周を形成する各層に発生する材料密度層誤差を、人間の眼に知覚できなくなるようにそれらの層にわたって分配する。この分配は、各量子化工程によって生成された誤差を取得し、それを後続の空間的又は時間的量子化工程に分配する。
【0010】
【
図1】外周を形成する層にわたって量子化誤差を分配し、各層において外周を形成する第1の排出金属滴の場所を決定する、金属滴排出3D金属物体プリンタを示す。
【0011】
【
図2】以前に形成された層において外周を形成している液滴の位置に対して、後続の層において外周を形成している液滴の位置の図である。
【0012】
【
図3】隣接する層、介在層によって分離された層、及び2つの介在層によって分離された層にそれぞれ対する3つの確率密度関数を示す。
【0013】
【
図4】外周を形成する層にわたって量子化誤差を分配し、かつ各層において外周を形成する第1の液滴の開始場所を決定するように、
図1のプリンタ内でスライサープログラムを実行するコントローラによって実装されるプロセスのフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
付加製造部品において外周の異なる層にわたって量子化誤差を分配する3D物体プリンタ及びその動作の一般的な理解のために、並びにこのプリンタ及びその動作の詳細について、図面への参照が行われる。図面では、同様の参照番号は同様の要素を表す。
【0015】
図1は、付加製造部品において外周の異なる層にわたって量子化誤差を分配するために、コントローラで実装された修正されたスライサープログラムを備えることができる溶解金属3D物体プリンタ100の実施形態を示す。以下の説明は、
図1の金属滴排出3D物体プリンタを参照して行われるが、スライサープログラムは、単一ノズル又はマルチノズルの材料滴排出3D物体プリンタと共に使用することができる。
【0016】
図1のプリンタでは、溶解したバルク金属の液滴が、単一ノズルを有する排出ヘッド104から排出され、ノズルからの液滴は、プラットフォーム112上に物体108の外周の層のための線を形成する。本文書で使用されるとき、「バルク金属」という用語は、一般に利用可能な標準規格のワイヤ、又はマクロサイズの比率のペレットなどの、集合形態で入手可能な導電性金属を意味する。金属ワイヤ130などのバルク金属160の供給源が、排出ヘッドの中に送り込まれ、溶解されて、排出ヘッド内のチャンバに溶解した金属を提供する。不活性ガス供給部164は、排出ヘッド内の金属酸化物の形成を防止するために、アルゴンなど、不活性ガス168の圧力調節された供給源を、ガス供給管144を通して排出ヘッド104内の溶解した金属のチャンバに提供する。
【0017】
排出ヘッド104は、垂直に配向された一対の部材120A及び120Bに、それぞれ、z軸トラック116A及び116B内で移動可能に取り付けられる。部材120A及び120Bは、フレーム124の一方側に一端で接続され、別の端で水平部材128によって互いに接続される。アクチュエータ132は、水平部材128に取り付けられ、排出ヘッド104に動作可能に接続されて、排出ヘッドをz軸トラック116A及び166Bに沿って移動させる。アクチュエータ132は、排出ヘッド104の単一ノズルとプラットフォーム112上の物体108の最上面との間の距離を維持するように、コントローラ136によって動作させられる。
【0018】
平面部材140がフレーム124に取り付けられており、これは、プラットフォーム112の移動のための堅固な支持を確実に提供するために、花崗岩又は他の丈夫な材料で形成され得る。プラットフォーム112は、X軸トラック144A及び144Bに固定されているため、プラットフォーム112は、図に示されるようにX軸に沿って双方向に移動することができる。X軸トラック144A及び144Bがステージ148に固定され、ステージ148がY軸トラック152A及び152Bに固定されているため、ステージ148は、図に示されるようにY軸に沿って双方向に移動することができる。アクチュエータ122Aは、プラットフォーム112に動作可能に接続され、アクチュエータ122Bは、ステージ148に動作可能に接続されている。コントローラ136は、プラットフォームを排出ヘッド104の反対側のX-Y平面内で移動させるために、アクチュエータ122A及び122Bを動作させて、それぞれ、プラットフォームをX軸に沿って移動させ、及びステージ148をY軸に沿って移動させる。溶融金属156の液滴がプラットフォーム112に向かって排出されたときに、プラットフォーム112のこのX-Y平面の移動を実行することにより、物体108上に溶解した金属滴の線が形成される。コントローラ136はまた、アクチュエータ132を動作させ、排出ヘッド104と、基材上に最も近時に形成された層との間の垂直距離を調整して、物体上の他の構造体の形成も容易にする。溶融金属3D物体プリンタ100は、垂直方向に動作されるものとして
図1に図示してあるが、他の代替的な配向を使用してもよい。また、
図1に示す実施形態はX-Y平面内で移動するプラットフォームを有し、排出ヘッドはZ軸に沿って移動するが、他の配置も可能である。例えば、排出ヘッド104は、X-Y平面内での、及びZ軸に沿った移動のために構成されてもよい。
【0019】
コントローラ136は、プログラムされた命令を実行する1つ以上の汎用又は専用のプログラマブルプロセッサを用いて実装され得る。プログラムされた機能を実施するために必要とされる命令及びデータは、プロセッサ又はコントローラに関連付けられたメモリ内に記憶され得る。プロセッサ、それらのメモリ、及びインターフェース回路は、先に説明し、並びに以下に説明される操作を実施するようにコントローラを構成する。これらの構成要素は、プリント回路カード上に提供されてもよいか、又は特定用途向け集積回路(application specific integrated circuit、ASIC)内の回路として提供されてもよい。回路の各々は、別個のプロセッサで実装され得るか、又は複数の回路は、同じプロセッサ上に実装され得る。代替的に、回路は、超大規模集積回路(very large scale integrated、VLSI)内で提供される個別の構成要素又は回路で実装することができる。また、本明細書に記載される回路は、プロセッサ、ASIC、個別の構成要素、又はVLSI回路の組み合わせで実装することができる。金属物体形成中、製造されている構造体の画像データが、走査システムか、又は排出ヘッド制御信号出力の処理及び生成のためのオンライン若しくはワークステーション接続かのいずれかから排出ヘッド104に、コントローラ136のためのプロセッサ又は複数のプロセッサに送信される。
【0020】
溶解金属3D物体プリンタ100のコントローラ136は、外部供給源からのデータを要求して、金属物体製造のためにプリンタを制御する。一般に、形成される物体の三次元モデル又は他のデジタルデータモデルは、コントローラ136に動作可能に接続されたメモリ内に格納され、コントローラは、サーバ等を介して、デジタルデータモデルが格納されているリモートデータベースにアクセスすることができるか、又はデジタルデータモデルが格納されているコンピュータ可読媒体が、アクセスのためにコントローラ136に選択的に結合され得る。この三次元モデル又は他のデジタルデータモデルは、コントローラで実装されたスライサーによって処理されて、物体の各層を特定するデータを生成し、次いで既知の方法でコントローラ136が実行するマシン対応命令を生成して、プリンタ100の構成要素を動作させ、そのモデルに対応する金属物体を形成する。マシン対応命令の生成としては、物体のCADデジタルデータモデルがSTL物体層データモデル、又は他の多角形メッシュ若しくは他の中間表現に変換されるときなどの中間モデルの生成が挙げられ、これらの中間モデルは、順番に処理されて、プリンタによってデバイスを製造するためのgコードなどのマシン命令を生成することができる。本文書で使用されるとき、「マシン対応命令」という用語は、3D金属物体付加製造システムの構成要素を動作させて、プラットフォーム112上に金属物体を形成するために、コンピュータ、マイクロプロセッサ、又はコントローラによって実行されるコンピュータ言語コマンドを意味する。コントローラ136は、マシン対応命令を実行して、排出ヘッド104からの溶解した金属滴の排出、ステージ148及びプラットフォーム112の位置決め、並びに排出ヘッド102と、プラットフォーム112上の物体108の最上層との間の距離を制御する。
【0021】
コントローラ136によって実装されるスライサーは、システム100によって作製される部品において形成される外周の異なる層で発生する量子化誤差を分配し、層において外周を形成する排出された材料の第1の液滴の位置を決定するが、スライサーは、システム100内の別のプロセッサで実装され得る。スライサーは、デジタルデータモデルに対応する物体を形成するようにプリンタの構成要素を動作させるマシン対応命令を生成するために使用される3D物体層データを生成する。デジタルデータモデルに対して一般的に使用されるフォーマットは、STLフォーマットであるが、3MF、AMF、及びPLYなどの他のフォーマットも使用され得る。STLフォーマットでは、物体表面は、三角形の面の縁部及び角部によって画定される。スライサーは、これらのSTLデータを物体の二次元(2D)水平スライスに変換し、次いで、排出ヘッドをツールパスに沿って移動させるようにアクチュエータを動作させるマシン対応命令、及び金属滴を排出して物体を形成するように排出ヘッドを動作させるマシン対応命令を生成する。この変換は、一実施形態では、gコードをもたらし、これは、印刷システムを初期化し、排出ヘッドが移動させられる経路であって、溶解した金属滴を排出して部品の層を形成するように排出ヘッドを動作させる経路を画定する。
【0022】
図1のコントローラ136によって実装されるスライサーによって実行される、外周の層にわたる量子化誤差の分配は、長期の累積誤差が、1量子化単位を超えないことを確実にする。この特性は、ランダムな丸めでは達成することができない。更に、量子化誤差分配は、誤差が長い時間又は距離にわたって集積されないように、量子化状態間の遷移が最も高い可能な頻度で起こることを確実にする。外周層の量子化誤差に対処するスライサーでは、誤差分配はZ又は垂直方向のみであり、そのため、各外周層における材料の量子化から生じる誤差の全てが、次の層に分配される。
【0023】
アルゴリズム的には、量子化誤差は、以下のように分配される。プロセス用の液滴誤差がゼロに初期化され(drop_error=0)、各層について、
【0024】
drops_accum=drops_float+drop_error、
【0025】
drops_layer=floor(drops_accum+0.5)、
【0026】
drop_error=drops_accum-drops_layerが計算され、式中、drops_floatは、浮動小数点又は非整数として表現された、外周を印刷するための所望の液滴の数又は液滴質量の量であり、これは、前述の例では12.57であり、層に対して特定されたdrop_errorは、次の層においてdrops_accumを特定するために使用される。
【0027】
層における外周に対する液滴の数の特定後、移動中の液滴の仮想軸に対する値が決定される。gコードなどのマシン対応命令では、各液滴は、3つの座標(x、y、e)によって特定される。x及びy座標は、プラットフォームのX-Y平面内での排出装置の移動のための経路を画定する点を特定し、e座標は、排出された液滴の累積数を特定する。液滴は、液滴間隔パラメータの範囲内の間隔で排出される。本文書で使用されるとき、「液滴間隔」という用語は、排出装置が層内の経路に沿って移動するときに排出される隣接した液滴の中心間の所定の距離を意味する。経路に沿った排出装置の移動に対して閾値が定義される。この閾値は、液滴間隔の特定の部分である。例えば、0.5は、経路に対して定義された液滴間隔と共に使用する閾値として選択することができ、これは、液滴が液滴間隔に沿った中間位置で排出されることを意味する。閾値を変化させることにより、排出される液滴の位置を液滴間隔の範囲内で変更することができる。
【0028】
一例として、層において閉じた排出装置経路を画定する点のための3つの座標(x,y,e)を以下の表に示す。
【表1】
【0029】
これらの値は、第1及び第11の点が同じx、yの場所にあるので、層において円となる閉じた外周を画定する10個の点を表す。e座標は、経路の開始から原点への復帰までにおける累積液滴数を表す。この表は、排出装置が円形経路をトラバースする間、0.5の閾値の液滴間隔に対して、排出装置が12.57個の液滴を排出することを示す。上記のように、コントローラは、12.57個の液滴を排出するように排出装置を動作させることはできないが、代わりに、いくつかの層において12個の液滴を排出するように排出装置を動作させ、他の層において13個の液滴を排出するように排出装置を動作さることができる。したがって、表に示されているe座標の浮遊点数は、12個の液滴又は13個の液滴のスキームにスケーリングされる必要がある。このスケーリングの結果を以下の2つの表に示す。最初に示すのは、12個の液滴の場合の表である。
【表2】
最初のe座標と最後のe座標との間の差は13であるため、排出装置が(x,y)経路に沿って移動すると、円形の外周を形成するために13個の液滴が排出される。
【0030】
次に、12個の液滴の経路の場合の表を示す。
【表3】
最初のe座標と最後のe座標との間の差は12であるため、排出装置が(x,y)経路に沿って移動すると、円形の外周を形成するために12個の液滴が排出される。これらの座標を使用して、12個の液滴及び13個の液滴の外周のためのgコードが別々の層において生成される。
【0031】
この誤差分配計算は、各外周層において使用する液滴の数を決定するが、層間での液滴の位置の関係は決定しない。各層における液滴の数が同じである場合、1つの層における液滴が前の層における液滴からサイクルの半分だけオフセットされると、上記の誤差分配は、より大きな構造的完全性をもたらす。この位置シフティングは、連続するれんがの層をれんがの長さの半分だけずらすことと類似している。同様に、この液滴位置シフティングは、前述の単純な円筒形物体の例において、外周を形成するために使用される最初の液滴の場所で液滴間隔距離の半分のシフトを使用することによって、達成することができる。
【0032】
しかしながら、外周における液滴の数が変化するとき、液滴間隔距離の半分を単純にシフトさせることに1つの問題が発生する。例えば、液滴の数が1つだけ増加すると、隣接する層の間にビート周波数が生じ、排出ヘッドが外周をたどるにつれて液滴間隔距離が0.5mmから-5mmに変化する。位相関係は外周の開始で常に180度位相がずれているので、連続する層の間の液滴が常に並び、かつ近くの液滴がごく近くに位置合わせされる場所が、外周に沿って存在する。この同期は、外周が構築されるときに、誤差の蓄積を可能にする。1層当たりの液滴の数の所望の端数が0.5である場合、1層当たりの液滴の数は、2つの値の間でトグルする。このトグリングは、液滴の位置合わせ、すなわち、後続の液滴が、全ての層において外周に沿った同じ場所で以前に排出された液滴の上に着地することをもたらし、その場所の近くにある他の液滴は、以前に排出された液滴に接近して着地する。この状況が
図2に示されており、図中、Xは、現在の層の直前に形成される層において外周を形成する液滴を表し、Oは、現在の層において外周を形成する液滴を表す。
【0033】
開始場所の位相シフティングと外周の層にわたる液滴の量子化誤差分配との相互作用から生じる問題を排除するために、ブルーノイズ生成器を使用して、層間の液滴間隔距離の半分の固定シフトの代わりに開始場所を選択する。ブルーノイズ生成器は、次の層の第1の液滴を、以前に形成された層の第1の液滴から液滴間隔距離の半分だけ移動させ、次いで、確率生成器が均一ではないことを意味する、三角確率分布を有するホワイトノイズ生成器を使用して、負の半分の液滴間隔距離~正の半分の液滴間隔距離の追加の距離で更に摂動させる。三角確率密度関数(PDF)は、2つのホワイトノイズPDFを平均化することによって容易に生成される。最終シフト量は、負の半分の液滴間隔距離~正の半分の液滴間隔距離(-π~+π)に再マッピングされる。
【0034】
オーバーハングを有する領域など、層における外周の密度が、以前に形成された層において形成された外周と比較して均一でない場合、位相シフトは、公称外周密度を使用して定義することができ、公称外周密度とは、1層における単位長さ当たりの液滴の平均数である。この位相シフトは、フルスケールではなく、公称密度付近に対して分布したブルーノイズである、すなわち、公称密度よりも低い密度を有する外周に対しては+/-の半分の液滴間隔より小さく、公称密度よりもはるかに大きい密度を有する外周に対しては分布したホワイトノイズに近づく、層間の位相差をもたらす。
【0035】
層における外周を形成するための液滴を位置決めするためにスライサーで実装されたブルーノイズ生成器は、量子化誤差変動が、液滴開始場所位相変動との相関を失うことを確実にする。隣接する層間の位相差の確率密度関数並びに2層及び3層離れている層間の確率密度関数を
図3に示す。図に示されるように、隣接していない平面間の位相関係は、層における外周に対して第1の液滴の開始位置をシフトさせるためのブルーノイズ生成器の使用との相関をすぐに失う。ブルーノイズ生成器の使用は、累積したビート周波数が量子化誤差分配プロセスの使用と共に生じることがないことを確実にして、層における外周に対して排出される液滴の数を決定するのを助ける。
【0036】
層における外周を形成するために量子化誤差を減衰させ、開始液滴場所を決定するように材料滴排出3D物体プリンタを動作させるためのプロセスを
図4に示す。プロセスの説明において、プロセスがいくつかのタスク又は機能を実施しているという記述は、コントローラ又は汎用プロセッサが、データを動作させるために、又はプリンタ内の1つ以上の構成要素を操作してタスク若しくは機能を実施するために、コントローラ又はプロセッサに動作可能に接続された非一時的コンピュータ可読記憶媒体に記憶されたプログラム命令を実行することを指す。上述したコントローラ136は、そのようなコントローラ又はプロセッサとすることができる。代替的に、コントローラは、2つ以上のプロセッサ並びに関連する回路及び構成要素と共に実装され得、これらは各々、本明細書に記載される1つ以上のタスク又は機能を形成するように構成される。追加的に、方法の工程は、図に示される順序又は処理が記載される順序にかかわらず、任意の実行可能な時系列順序で実施され得る。
【0037】
図4は、量子化誤差を減衰させ、3D物体の層において形成される外周に対して開始液滴場所を決定するように、プリンタ10などの材料滴排出3D物体プリンタを動作させるプロセスのフロー図である。プロセス400は、スライサーが、作製される物体のためのデジタルデータモデルを受信することから始まる(ブロック204)。次いで、スライサーは、物体の各層を形成するための物体層データ及びマシン対応命令を生成する(ブロック208)。第1の層について、スライサーは、1つ以上の外周が層に形成されるかどうかを判定する(ブロック212)。前述のアルゴリズムなどの誤差分配プロセスを使用して、外周を形成するために排出する液滴の数が決定される(ブロック216)。スライサーはまた、上記のように、1つ以上の液滴位置シフティング技術を使用して、外周を形成する第1の液滴の場所を決定する(ブロック220)。層における外周及び層における任意のインフィルラインを形成するようにプリンタを動作させるための以前に生成されたマシン対応命令が、修正され、格納される(ブロック224)。この修正は、前述のようにgコード命令用に、X、Y座標のみをそのまま残し、e値を変更することによって行われる。この変更は、実質的に、距離に基づいた供給速度、例えば、液滴数/mmを変化させる。代替的に、gコード命令が、e値ではなく、X、Y座標、及び供給速度のセットによって記述される場合、時間の関数である供給速度、例えば、液滴数/ミリ秒が変更される。別の層が処理される場合(ブロック228)、マシン対応命令は同様にして生成される(ブロック212~224)。全ての層が処理され、対応するマシン対応命令が生成されると、プリンタのコントローラは、マシン対応命令を実行して、物体を形成する(ブロック232)。
【0038】
上記に開示された及び他の特徴及び機能の変形、又はそれらの代替が、望ましくは、多くの他の異なるシステム、アプリケーション、又は方法に組み合わされ得ることが理解されるであろう。以下の特許請求の範囲によって包含されることも意図される、様々な現在予見又は予期されていない代替、修正、変形、又は改善が、その後、当業者によって行われ得る。