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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022113659
(43)【公開日】2022-08-04
(54)【発明の名称】クロニジン含有経皮吸収型貼付製剤
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/4168 20060101AFI20220728BHJP
   A61K 9/70 20060101ALI20220728BHJP
   A61K 47/30 20060101ALI20220728BHJP
   A61K 47/32 20060101ALI20220728BHJP
   A61P 9/12 20060101ALI20220728BHJP
【FI】
A61K31/4168
A61K9/70 401
A61K47/30
A61K47/32
A61P9/12
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022007755
(22)【出願日】2022-01-21
(31)【優先権主張番号】P 2021009487
(32)【優先日】2021-01-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】390000929
【氏名又は名称】祐徳薬品工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000590
【氏名又は名称】特許業務法人 小野国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】吉武 誠
(72)【発明者】
【氏名】池田 勝志
(72)【発明者】
【氏名】西村 健太
(72)【発明者】
【氏名】堤 信介
【テーマコード(参考)】
4C076
4C086
【Fターム(参考)】
4C076AA72
4C076AA94
4C076BB31
4C076CC11
4C076EE03
4C076EE06
4C076EE09
4C076EE11
4C076EE27
4C076EE48
4C076FF31
4C086AA01
4C086AA02
4C086BC38
4C086MA03
4C086MA05
4C086MA32
4C086MA63
4C086NA05
4C086NA06
4C086NA12
4C086ZA42
(57)【要約】
【課題】
安全性に優れ、製造が容易であり、クロニジンの皮膚透過速度の変動が小さいクロニジン含有経皮吸収型貼付製剤を提供すること。
【解決手段】
支持体、薬物含有層および剥離ライナーからなる経皮吸収型貼付製剤において、該薬物含有層中にクロニジンおよび窒素含有高分子化合物を含有する経皮吸収型貼付製剤。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持体、薬物含有層および剥離ライナーを含む経皮吸収型貼付製剤であって、薬物含有層にクロニジンおよび窒素含有高分子化合物を含有する経皮吸収型貼付製剤。
【請求項2】
薬物含有層中のクロニジンに対する窒素含有高分子化合物の含有質量比が0.2以上、10以下である請求項1に記載の経皮吸収型貼付製剤。
【請求項3】
窒素含有高分子化合物が、窒素含有(メタ)アクリル系モノマーを含む共重合体である請求項1または2に記載の経皮吸収型貼付製剤。
【請求項4】
窒素含有(メタ)アクリル系モノマーの共重合体が、(メタ)アクリル酸アルキルアミノアルキルを含む共重合体である請求項3に記載の経皮吸収型貼付製剤。
【請求項5】
(メタ)アクリル酸アルキルアミノアルキルを含む共重合体が、アミノアルキルメタクリレートコポリマーEである請求項4に記載の経皮吸収型貼付製剤。
【請求項6】
適用から24時間における皮膚透過速度の最大値(Jmax)と適用から24時間後の皮膚透過速度(J24)との比(Jmax/J24)が2.6以下である請求項1~5のいずれかに記載の経皮吸収型貼付製剤。
【請求項7】
適用から24時間における皮膚透過速度の最大値(Jmax)と適用から24時間後の皮膚透過速度(J24)との比(Jmax/J24)が1.5以下である請求項6に記載の経皮吸収型貼付製剤。
【請求項8】
薬物含有層が、基剤成分としてゴム系粘着成分、アクリル系粘着成分およびシリコーン系粘着成分から選択される1種または2種以上の粘着成分を含有する請求項1~7のいずれかの項に記載の経皮吸収型貼付製剤。
【請求項9】
薬物含有層が、基剤成分としてゴム系粘着成分および/またはアクリル系粘着成分を含有する請求項8に記載の経皮吸収型貼付製剤。
【請求項10】
ゴム系粘着成分が、ポリイソブチレンおよび/またはスチレン・イソプレン・スチレンブロック共重合体を含有するものである請求項9に記載の経皮吸収型貼付製剤。
【請求項11】
アクリル系粘着成分が、ヒドロキシル基含有型または無極性型である請求項9に記載の経皮吸収型貼付製剤。
【請求項12】
薬物含有層の厚さが20~200μmである請求項1~11のいずれかに記載の経皮吸収型貼付製剤。
【請求項13】
薬物含有層の厚さが30~150μmである請求項12に記載の経皮吸収型貼付製剤。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、支持体、薬物含有層および剥離ライナーからなる経皮吸収型貼付製剤であり、該薬物含有層中に有効成分であるクロニジンに加え、窒素含有高分子化合物を含有する経皮吸収型貼付製剤に関する。
【背景技術】
【0002】
クロニジンは高血圧症治療薬として、主に経口剤の形で使用されている。しかし、クロニジンを経口剤として投与した場合、消化管障害を引き起こすおそれがあり、また、1日3回の服用が必要であることから患者に煩わしさを与える欠点がある。また、急激な血中濃度の立ち上がりにより起立性低血圧や徐脈等の全身性副作用が生じることも懸念される。
【0003】
クロニジン製剤については、経口剤以外にも、消化管障害を引き起こしにくい経皮吸収型貼付製剤として、「Catapres TTS(登録商標)」が製造販売されている。この貼付製剤は放出制御層を設けることにより、製剤からのクロニジンの放出をコントロールしているが、このようなリザーバー型の貼付製剤は構造が複雑で、特殊な工程、設備が必要になるため、製造コストが高くなる。
【0004】
これに対し、マトリックス型の貼付製剤は、比較的シンプルな構造で簡易な製法により製造できるため製造コストを抑えられる。しかし、単にクロニジンを一般的な粘着基剤に溶解させたマトリックス型貼付製剤では、皮膚透過速度の立ち上がりが速くなり、全身性の副作用が生じる可能性があること、経時的に薬物含有層中のクロニジンが枯渇し、安定した治療効果が得られない可能性があることが確認された。
【0005】
そこで、マトリックス型貼付製剤において、クロニジンの皮膚透過速度の変動を抑制する方法が提案されており、例えば、単層の粘着層中にクロニジンとともに酸化チタンやシリカ等の微粉体を添加する方法が開示されている(特許文献1)。しかし、微粉体は粘着剤の物性に影響を及ぼし、皮膚への粘着性低下を引き起こすおそれがある。これを解決するため粘着層を二層構造にする方法も提案されているが、製造工程が煩雑となり製造コストが上昇する。
【0006】
さらに、このように放出制御層を設けたり、粘着層に微粉体を添加したりする方法では、適用後の皮膚透過速度の立ち上がりが遅く、治療効果を得るまでに時間を要する可能性がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特許第3178891号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は上記実情に鑑みてなされたものであり、構造がシンプルで簡易な方法により製造することができ、適用時にクロニジンの皮膚透過速度の変動が小さい経皮吸収型貼付製剤を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために本発明者らが検討を重ねた結果、薬物含有層中にクロニジンとともに、窒素含有高分子化合物を配合することにより、粘着性を損なうことなく、簡易な構造でありながら、適用時のクロニジンの皮膚透過速度の変動が抑制された経皮吸収型貼付製剤が得られることを見出し、本発明を完成した。
【発明の効果】
【0010】
本発明の経皮吸収型貼付製剤は、放出制御層などを設けることなく、簡易な構造でありながら、クロニジンの皮膚透過速度の変動を抑制できるものであり、安定してその効果が持続的に発揮されるとともに、経口剤で生じ得る起立性低血圧や徐脈等の全身性副作用の発生を防止ないし軽減できる。もし仮に望ましくない作用が発現した場合でも、貼付製剤を除去することにより直ちに投与を中止できるため、経口剤と比較して安全性の点からも優れた製剤である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の経皮吸収型貼付製剤は、支持体上に薬物含有層を設けた製剤であり、使用時まで薬物含有層を保護する目的で薬物含有層上に剥離ライナーが設けられている。なお本明細書において、経皮吸収型貼付製剤とは医療用粘着貼付製剤であり、皮膚上に貼付され、治療有効量の有効成分が皮膚を通して血流に到達されるものを意味する。
【0012】
本発明の経皮吸収型貼付製剤の有効成分はクロニジンであり、本明細書において、クロニジンにはその製薬上許容できる塩も包含される。クロニジンの製薬上許容できる塩としては、例えば、無機酸または有機酸との酸付加塩が挙げられ、塩酸塩、臭化水素酸塩、硝酸塩、リン酸塩、硫酸塩、酢酸塩、アスコルビン酸塩、安息香酸塩、桂皮酸塩、クエン酸塩、ギ酸塩、フマル酸塩、グルタミン酸塩、乳酸塩、マレイン酸塩、リンゴ酸塩、マロン酸塩、マンデル酸塩、メタンスルホン酸塩(メシレート)、フタル酸塩、サリチル酸塩、ステアリン酸塩、コハク酸塩、酒石酸塩、プロピオン酸塩、酪酸塩、パモ酸塩、p-トルエンスルホン酸塩(トシレート)等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。本発明では、クロニジン塩酸塩を用いることが好ましい。
【0013】
本発明の経皮吸収型貼付製剤の薬物含有層は、治療有効量のクロニジンを含有する。薬物含有層中のクロニジンの含有量(薬学上許容できる塩の場合はフリー体換算)は、好ましくは0.1~5質量%、より好ましくは0.2~5質量%の範囲である。0.1質量%未満では、十分な皮膚透過量を得るのに製剤面積が大きくなる。一方、5質量%を超える量では経済的に不利になることがある。
【0014】
本発明の経皮吸収型貼付製剤の薬物含有層には、クロニジンの皮膚透過速度の変動を小さくするために窒素含有高分子化合物を含有せしめる。
【0015】
窒素含有高分子化合物として、窒素含有(メタ)アクリル系モノマー若しくは窒素含有ビニル系モノマーの重合体またはこれらの共重合体、上記モノマーの少なくとも1種と窒素を含有しない(メタ)アクリル系モノマーとの共重合体が挙げられる。
【0016】
窒素含有(メタ)アクリル系モノマーとしては、(メタ)アクリル酸アルキルアミノアルキルが挙げられ、(メタ)アクリル酸アルキルアミノアルキルとして、例えば、(メタ)アクリル酸モノアルキルアミノアルキル、(メタ)アクリル酸ジアルキルアミノアルキル、メタ)アクリル酸トリアルキルアミノアルキル等が例示され、これらの1種または2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0017】
窒素含有ビニル系モノマーとしては、ビニルアミンモノマーが挙げられ、ビニルアミンモノマーとしては、例えば、N-ビニルピロリドン、N-ビニルピラジン、N-ビニルイミダゾール、N-ビニルオキサゾール、N-ビニルモルホリン、N-ビニルピラゾール、N-ビニルイソオキサゾール、N-ビニルチアゾール、N-ビニルイソチアゾール、N-ビニルピリダジン、N-ビニルピリジン、N-ビニルピリミジン、N-ビニルピペラジン、N-ビニルピロール等が例示され、これらの1種または2種以上を組み合わせて使用できる。
【0018】
窒素を含有しない(メタ)アクリル系モノマーとして、例えばアクリル酸メチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸ヘキシル、アクリル酸オクチル、アクリル酸2-エチルヘキシル、アクリル酸デシル、アクリル酸イソデシル、アクリル酸ラウリル、アクリル酸ステアリル、アクリル酸2-ヒドロキシエチル、アクリル酸ヒドロキシプロピル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸デシル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸2-エチルヘキシル、メタクリル酸イソデシル、メタクリル酸ラウリル、メタクリル酸ステアリル、メタクリル酸2-ヒドロキシエチル、メタクリル酸ヒドロキシプロピル等が挙げられ、これらの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。中でもメタクリル酸メチル、メタクリル酸ブチルが好ましい。
【0019】
本発明の窒素含有高分子化合物として、窒素含有(メタ)アクリル系モノマーと、窒素を含有しない(メタ)アクリル系モノマーとの共重合体が、クロニジンの皮膚透過速度変動抑制効果に優れることから好ましい。特にメタクリル酸メチル、メタクリル酸ブチルおよびメタクリル酸ジメチルアミノエチルの共重合体であるアミノアルキルメタクリレートコポリマーEが好ましい。
【0020】
薬物含有層中の窒素含有高分子化合物の含有量は、クロニジンの皮膚透過速度変動抑制等の観点から、好ましくは0.2~10質量%、より好ましくは0.3~5質量%である。
【0021】
薬物含有層中のクロニジン(薬学上許容できる塩の場合はフリー体換算)に対する窒素含有高分子化合物の含有質量比(窒素含有高分子化合物/クロニジン)は、0.2以上、10以下の範囲とすることが好ましい。0.2未満ではクロニジンの皮膚透過速度の変動が大きくなる場合がある。一方、10を超える量では化学的安定性を良好に保つのが困難な場合がある。より好ましくは0.3以上、3以下の範囲である。
【0022】
本発明の経皮吸収型貼付製剤は、薬物含有層に窒素含有高分子化合物を含有させることにより、クロニジンの放出量を制御し、皮膚透過量の急激な上昇および下降を抑制することができ、安定した治療効果および副作用軽減効果が得られる。本発明において安定した治療効果および副作用軽減効果を得るために、実施例に記載のヘアレスマウスの皮膚を用いたインビトロ皮膚透過試験において、適用から24時間における皮膚透過速度の最大値(Jmax)と適用から24時間後の皮膚透過速度(J24)との比(Jmax/J24)が2.6以下であることが好ましく、1.5以下とすることがより好ましい。また十分な治療効果を得るための皮膚透過性の点から、Jmaxが0.5(μg/cm/h)以上であることが好ましく、1.0(μg/cm/h)以上であることがより好ましい。
【0023】
本発明の経皮吸収型貼付製剤の薬物含有層に含有させることのできる粘着基剤としては、貼付製剤において一般的に使用されているゴム系粘着成分、アクリル系粘着成分およびシリコーン系粘着成分が挙げられる。これらのうち、ゴム系粘着成分およびアクリル系粘着成分が好ましい。
【0024】
ゴム系粘着成分としては、スチレン・イソプレン・スチレンブロック共重合体、スチレン・ブタジエン・スチレンブロック共重合体、スチレン・ブタジエンゴム、ポリイソブチレン、ポリブテン、ポリイソプレン、ブチルゴム、天然ゴム、イソプレンゴム等が例示でき、これらの1種または2種以上を用いることができる。これらの中でも、クロニジンの皮膚透過速度変動抑制効果に優れることからポリイソブチレンおよび/またはスチレン・イソプレン・スチレンブロック共重合体を含むものが好ましい。
【0025】
薬物含有層中のゴム系粘着成分の含有量は、投錨性、粘着性等の貼付剤としての物理的特性、クロニジンの皮膚透過速度の変動抑制および製剤設計等の観点から、25~40質量%が好ましく、より好ましくは29~39質量%である。
【0026】
アクリル系粘着成分としては、(メタ)アクリル酸エステルを少なくとも一種含有する重合体または共重合体であれば特に限定されるものではなく、例えば、(メタ)アクリル酸アルキルエステル・酢酸ビニル共重合体、アクリル酸2-エチルヘキシル・メタクリル酸2-エチルヘキシル・メタクリル酸ドデシル共重合体、メタクリル酸メチル・メタクリル酸ブチル・メタクリル酸ジメチルアミノエチル共重合体等の極性官能基を有さない無極性型のアクリル系粘着剤;アクリル酸-2-エチルヘキシル・アクリル酸ヒドロキシルエチル・酢酸ビニル共重合体、アクリル酸-2-エチルヘキシル・ビニルピロリドン・アクリル酸ヒドロキシルエチル・酢酸ビニル共重合体、アクリル酸-2-エチルヘキシル・アクリル酸ヒドロキシルエチル・酢酸ビニル共重合体、アクリル酸-2-エチルヘキシル・アクリル酸ヒドロキシルエチル・アクリル酸グリシジル・酢酸ビニル共重合体、アクリル酸-2-エチルヘキシル・酢酸ビニル・アクリル酸-2-ヒドロキシエチル共重合体、アクリル酸-2-エチルヘキシル・酢酸ビニル・アクリル酸-2-ヒドロキシエチル・メタクリル酸グリシジル共重合体等のヒドロキシ基含有型アクリル系粘着剤;(メタ)アクリル酸・(メタ)アクリル酸アルキル共重合体、(メタ)アクリル酸・(メタ)アクリル酸アルキル・酢酸ビニル共重合体等のカルボキシル基含有型アクリル系粘着剤が挙げられる。
【0027】
これらの中でも、クロニジンの皮膚透過速度変動抑制等の観点から、無極性型のアクリル系粘着成分およびヒドロキシ基含有型のアクリル系粘着成分が好ましい。無極性型のアクリル系粘着成分の市販品としては、Diafit(登録商標)4801(大同化成工業製)、DURO-TAK(登録商標)87-9301、87-608A、87-4098(ヘンケルジャパン製)、MAS683および811(コスメディ製薬製)等が挙げられる。ヒドロキシ基含有型のアクリル系粘着成分の市販品としては、DURO-TAK(登録商標)アクリル粘着剤シリーズ(ヘンケルジャパン製)のヒドロキシル基含有タイプ(DURO-TAK(登録商標)87-2516、87-2525、87-2979、87-4287、87-2510、87-202A、87-502A、87-503A等が挙げられる。
【0028】
薬物含有層中のアクリル系粘着成分の含有量は、投錨性、粘着性等の貼付剤としての物理的特性およびクロニジンの皮膚透過速度の変動抑制等の観点から、好ましくは84~99.7質量%であり、より好ましくは90~97質量%である。
【0029】
本発明の経皮吸収型貼付製剤の薬物含有層中には、さらに必要に応じて、可塑剤、架橋剤、着色剤、紫外線吸収剤、粘着付与剤、抗酸化剤、香料などの追加の成分を配合してもよい。
【0030】
可塑剤としては、パラフィン系プロセスオイル、ナフテン系プロセスオイル、芳香族系プロセスオイルなどの石油系オイル、ミリスチン酸イソプロピル、ラウリン酸ヘキシル、セバシン酸ジエチル、セバシン酸ジイソプロピル、リノール酸イソプロピルなどの液状脂肪酸エステル類、液状ポリイソブチレン、液状ポリブテン、液状ポリイソプレンなどの液状ゴム、グリセリン、クロロブタノール、酢酸ビニル樹脂、ジメチルポリシロキサン・二酸化ケイ素混合物、D-ソルビトール、中鎖脂肪酸トリグリセリド、トリアセチン、2-ピロリドン、フィトステロール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリソルベート80(登録商標)、モノステアリン酸グリセリン、流動パラフィン等が挙げられる。薬物含有層中の可塑剤の含有量は特に制限されるものではないが、例えば、粘着基剤としてゴム系粘着成分を用いる場合、投錨性、粘着性等の貼付剤としての物理的特性の観点から20~65質量%が好ましく、25~50質量%がより好ましい。
【0031】
架橋剤としては、アミノ樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、アルキド樹脂、不飽和ポリエステル等の熱硬化性樹脂、イソシアネート化合物、有機系架橋剤、金属または金属化合物等の無機系架橋剤等が挙げられる。
【0032】
着色剤としては、インジゴカルミン、黄酸化鉄、黄色三二酸化鉄、カーボンブラック、カラメル、感光素201号、クマザサエキス、黒酸化鉄、ケッケツ、酸化亜鉛、酸化チタン、三二酸化鉄、アマランス、水酸化ナトリウム、タルク、銅クロロフィリンナトリウム、ハダカムギ緑葉エキス末、d-ボルネオール、ミリスチン酸オクチルドデシル、メチルロザニリン塩化物、メチレンブルー、リン酸マンガンアンモニウム、ローズ油等が挙げられる。
【0033】
紫外線吸収剤としては、ウロカニン酸などのアミノ酸系化合物、2,4-ジヒドロキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-n-オクトキシベンゾフェノンなどのベンゾフェノン系化合物、シノキサート、p-メトキシ桂皮酸ジエタノールアミンなどの桂皮酸誘導体、2-エチルヘキシル-2-シアノ-3,3’-ジフェニルアクリレートなどのシアノアクリレート誘導体、p-アミノ安息香酸エチル、p-アミノ安息香酸プロピルなどのp-アミノ安息香酸誘導体、アントラニル酸メンチルエステルなどのアントラニル酸誘導体、フェニルサリシレート、p-オクチルフェニルサリシレートなどのサリチル酸誘導体、7-エチルアミノ-4-メチルクマリン、7,8-ジヒドロキシクマリンなどのクマリン誘導体等が挙げられる。
【0034】
粘着付与剤としては、ロジン、ロジンのグリセリンエステル、水添ロジン、水添ロジンのグリセリンエステルなどのロジン誘導体、脂環族飽和炭化水素樹脂、脂肪族炭化水素樹脂、テルペン樹脂、マレイン酸レジン、カルナウバロウ、カルメロースナトリウム、キサンタンガム、キトサン、グリセリン、ケイ酸マグネシウムアルミニウム、軽質無水ケイ酸、酢酸ベンジル、タルク、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒプロメロース、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸ナトリウム、ポリアクリル酸部分中和物、ポリビニルアルコール等が挙げられる。薬物含有層中の粘着付与剤の含有量は特に制限されるものではないが、例えば、粘着基剤としてゴム系粘着成分を用いる場合、投錨性、粘着性等の貼付剤としての物理的特性の観点から5~45質量%が好ましく、10~40質量%がより好ましい。
【0035】
抗酸化剤としては、フェノール系抗酸化剤、アスコルビン酸、そのエステル誘導体、亜硫酸水素ナトリウム、ピロ亜硫酸ナトリウム、エデト酸ナトリウム、クエン酸、ジクロイソシアヌール酸カリウム、大豆レシチン、チモール、トコフェロールおよびそのエステル誘導体、1,3-ブチレングリコール、ベンゾトリアゾール、モノチオグリセリン等が挙げられる。
【0036】
香料としては、例えば、dl-メントール、オレンジ油、ハッカ油、レモン油、ローズ油等が挙げられる。
【0037】
本発明の経皮吸収型貼付製剤の薬物含有層は、好ましくは20~200μm、より好ましくは30~150μmの厚さである。20μm未満の厚さでは24時間後の皮膚透過速度が低下し、クロニジンの皮膚透過速度の変動が大きくなる場合や貼付性を良好に保つのが困難な場合がある。一方、200μmを超える厚さでは「コールドフロー(cold flow)」が発生し、粘着成分が包装材料に付着する場合がある。
【0038】
本発明の経皮吸収型貼付製剤は上記に示した薬物含有層の他、支持体および剥離ライナーからなるマトリックス型の貼付製剤である。マトリックス型の貼付製剤は製剤設計容易であり、またリザーバー型の貼付製剤のような複雑な構成ではないため、貼付製剤製造時のコストを低減することができる。
【0039】
本発明の経皮吸収型貼付製剤において、上記薬物含有層を担持する支持体としては、薬物不透過性で伸縮性または非伸縮性の支持体を使用することができる。このような支持体としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブタジエン、エチレン酢酸ビニル共重合体、ポリ塩化ビニル、ポリエステル(ポリエチレンテレフタレートなど)、ナイロン、ポリウレタン等の合成樹脂フィルムまたはシートあるいはこれらの積層体、多孔質体、発泡体、紙、織布および不織布などが挙げられる。
【0040】
本発明の経皮吸収型貼付製剤の支持体は1~1000μm、好ましくは10~700μmの厚さである。
【0041】
本発明の経皮吸収型貼付製剤において、上記薬物含有層に貼り合わされる剥離ライナーとしては、薬物不透過性の剥離ライナーを使用することができる。該剥離ライナーとしては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル等の高分子材料で作られたフィルムや、フィルムにアルミニウムを蒸着させたもの、紙の上にシリコーンオイル等を塗付したものなどが挙げられる。なかでも、有効成分の透過がなく、加工性や低コストなどの点でポリエステルフィルムが好ましく、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムが特に好ましい。さらに、該剥離ライナーは、複数の材料を貼り合わせたラミネートフィルム等を使用しても良い。
【0042】
本発明の経皮吸収型貼付製剤の剥離ライナーは、使用時の取り扱い性を考慮して、1~500μm、好ましくは10~200μmの厚さである。
【0043】
本発明の経皮吸収型貼付製剤は、使用するまで包装材料中に保存されることが好ましい。本発明組成物に用いられる包装材料は、特に限定されないが、プラスチックフィルム、金属(アルミニウム等)積層プラスチックフィルム、金属蒸着プラスチックフィルム、セラミックス(酸化ケイ素等)蒸着プラスチックフィルム、アルミニウム箔等の金属箔、ステンレス等の金属、ガラス等が挙げられる。中でも、製造コスト等の点で、金属積層プラスチックフィルム、金属蒸着プラスチックフィルム等を使用することが好ましい。
【0044】
本発明の経皮吸収型貼付製剤の製造方法は、特に制限はなく、公知の方法に従って製造することができる。例えば、有効成分、窒素含有高分子化合物および粘着成分、さらに必要に応じて可塑剤、架橋剤等を酢酸エチル、ヘキサン、トルエンまたはその混合溶媒等の有機溶媒に溶解させ、この溶解物を剥離ライナーまたは支持体上に展延し、該溶解物中の溶媒を蒸発させ、薬物含有層を形成した後、支持体または剥離ライナーを貼り合わせることによって経皮吸収型貼付製剤を得る方法や、有効成分、窒素含有高分子化合物および粘着成分、さらに必要に応じて可塑剤、架橋剤等を加熱溶融させ、この溶融物を剥離ライナーまたは支持体上に展延し、薬物含有層を形成した後、支持体または剥離ライナーを貼り合わせることによって経皮吸収型貼付製剤を得る方法などが挙げられる。
【実施例0045】
以下、実施例を示し、本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではなく、本発明の技術的思想を逸脱しない範囲での種々の変更が可能である。
【0046】
実施例1
表1に記載の配合比に従って、クロニジン(フリー体)およびアミノアルキルメタクリレートコポリマーE(商品名:EudragitEPO、エボニック製)をメタノール中で攪拌した後、これにトルエンを加えクロニジン溶液を得た。別に、スチレン・イソプレン・スチレンブロック共重合体、脂環族飽和炭化水素樹脂および流動パラフィンをトルエン中で攪拌混合した後、これにクロニジン溶液を加え、さらに攪拌混合し、均一な溶解物を得た。次にこの溶解物を、ドクターナイフ塗工機を用いて、溶媒留去後の厚さが50μmになるように剥離フィルム(シリコーン処理を施したPETフィルム、藤森工業製)に展延し、溶媒留去して薬物含有層を形成した後、支持体を貼り合わせた。それから、所望の大きさに裁断して経皮吸収型貼付製剤を得た。
【0047】
実施例2
スチレン・イソプレン・スチレンブロック共重合体の代わりにポリイソブチレンを用いたことを除き、実施例1と同様に、表1に記載の配合比に従って経皮吸収型貼付製剤を得た。
【0048】
実施例3
クロニジン(フリー体)の代わりにクロニジン塩酸塩を用いたことを除き、実施例1と同様に、表1に記載の配合比に従って経皮吸収型貼付製剤を得た。
【0049】
実施例4
クロニジン(フリー体)の代わりにクロニジン塩酸塩を用いたことを除き、実施例2と同様に、表1に記載の配合比に従って経皮吸収型貼付製剤を得た。
【0050】
実施例5
脂環族飽和炭化水素樹脂の代わりに水素添加ロジングリセリンエステルを用いたことを除き、実施例4と同様に、表1に記載の配合比に従って経皮吸収型貼付製剤を得た。
【0051】
実施例6
表1に記載の配合比に従って、クロニジン塩酸塩およびアミノアルキルメタクリレートコポリマーEをメタノール中で攪拌した後、これに酢酸エチルを加えクロニジン溶液を得た。これに無極性型のアクリル系粘着成分であるDiafit(登録商標)4801(大同化成工業製)および酢酸エチルを加え、攪拌混合し、均一な溶解物を得た。次にこの溶解物を、ドクターナイフ塗工機を用いて、溶媒留去後の厚さが50μmになるように剥離フィルム(シリコーン処理を施したPETフィルム、藤森工業製)に展延し、溶媒留去して薬物含有層を形成した後、支持体を貼り合わせた。それから、所望の大きさに裁断して経皮吸収型貼付製剤を得た。
【0052】
実施例7
Diafit(登録商標)4801(大同化成工業製)の代わりにヒドロキシ基含有型のアクリル系粘着成分であるDURO-TAK(登録商標)87-202A(ヘンケル製)を用いたことを除き、実施例6と同様に、表1に記載の配合比に従って経皮吸収型貼付製剤を得た。
【0053】
実施例8
アミノアルキルメタクリレートコポリマーEを減量したことを除き、実施例4と同様に、表1に記載の配合比に従って経皮吸収型貼付製剤を得た。
【0054】
実施例9
アミノアルキルメタクリレートコポリマーEを増量したことを除き、実施例4と同様に、表1に記載の配合比に従って経皮吸収型貼付製剤を得た。
【0055】
実施例10
1に記載の配合比に従って、クロニジン塩酸塩およびアミノアルキルメタクリレートコポリマーE(商品名:EudragitEPO、エボニック製)をメタノール中で攪拌した後、これにトルエンを加えクロニジン溶液を得た。別に、ポリイソブチレン、スチレン・イソプレン・スチレンブロック共重合体、脂環族飽和炭化水素樹脂および流動パラフィンをトルエンとヘキサンの混合溶媒中で攪拌混合した後、これにクロニジン溶液を加え、さらに攪拌混合し、均一な溶解物を得た。次にこの溶解物を、ドクターナイフ塗工機を用いて、溶媒留去後の厚さが50μmになるように剥離フィルム(シリコーン処理を施したPETフィルム、藤森工業製)に展延し、溶媒留去して薬物含有層を形成した後、支持体を貼り合わせた。それから、所望の大きさに裁断して経皮吸収型貼付製剤を得た。
【0056】
実施例11
クロニジン(フリー体)およびアミノアルキルメタクリレートコポリマーEを減量したことを除き、実施例1と同様に、表2に記載の配合比に従って経皮吸収型貼付製剤を得た。
【0057】
実施例12
クロニジン(フリー体)およびアミノアルキルメタクリレートコポリマーEを減量したことを除き、実施例2と同様に、表2に記載の配合比に従って経皮吸収型貼付製剤を得た。
【0058】
実施例13
クロニジン(フリー体)およびアミノアルキルメタクリレートコポリマーEを増量したことを除き、実施例1と同様に、表2に記載の配合比に従って経皮吸収型貼付製剤を得た。
【0059】
実施例14
クロニジン塩酸塩の代わりにクロニジン(フリー体)を用いたこと、クロニジン(フリー体)およびアミノアルキルメタクリレートコポリマーEを減量したことを除き、実施例6と同様に、表2に記載の配合比に従って経皮吸収型貼付製剤を得た。
【0060】
実施例15
クロニジン塩酸塩の代わりにクロニジン(フリー体)を用いたこと、クロニジン(フリー体)およびアミノアルキルメタクリレートコポリマーEを増量したことを除き、実施例6と同様に、表2に記載の配合比に従って経皮吸収型貼付製剤を得た。
【0061】
比較例1
アミノアルキルメタクリレートコポリマーEを除いたことを除き、実施例1と同様に、表1に記載の配合比に従って経皮吸収型貼付製剤を得た。
【0062】
比較例2
アミノアルキルメタクリレートコポリマーEを除いたことを除き、実施例2と同様に、表1に記載の配合比に従って経皮吸収型貼付製剤を得た。
【0063】
比較例3
アミノアルキルメタクリレートコポリマーEの代わりに水酸化ナトリウムを用いたことを除き、実施例3と同様に、表1に記載の配合比に従って経皮吸収型貼付製剤を得た。
【0064】
【表1】
【0065】
【表2】
【0066】
試験例1:皮膚透過性試験
膜透過セルを用い、上記処方および製法で得られた実施例1~10および比較例1~3の経皮吸収型貼付製剤からのクロニジン皮膚透過性を検討した。膜透過セル(有効透過面積:1.77cm、拡散セル容積:5.7mL)にヘアレスマウス(n = 3~4、Hos:HR-1、(株)星野試験動物飼育所)から摘出した皮膚を取り付け、この皮膚の角層側に各実施例および比較例の貼付製剤を貼付した後、インビトロ膜透過試験器に装着した。レセプター液にリン酸塩緩衝液(pH7.4)を使用し、レセプター液中へ移行したクロニジンの量を測定した。なお、クロニジンの定量はHPLC法により行った。2時間毎の皮膚片を透過した薬物の量(薬物透過量)から、薬物の皮膚透過速度(Flux:μg/cm/h)を、以下の式:Flux(μg/cm/h)=[薬物濃度(μg/mL)×拡散セル容積(mL)]/有効透過面積(cm)/時間(h)により算出した。さらに、適用から24時間の測定時間内における最大皮膚透過速度(Jmax)と適用から24時間後の皮膚透過速度(J24)との比(Jmax/J24)を求めた。結果を表1に併せて記載する。Jmax/J24が2.6以下の貼付製剤は皮膚透過速度の変動が小さいと判定した。
【0067】
アミノアルキルメタクリレートコポリマーEを配合した実施例1~10では、Jmax/J24が2.6以下であり、クロニジンの皮膚透過速度の変動が小さかった。一方、アミノアルキルメタクリレートコポリマーEを配合していない比較例1~3では、Jmax/J24が2.6を超え、クロニジンの皮膚透過速度の変動が大きかった。
【産業上の利用可能性】
【0068】
本発明の経皮吸収型貼付製剤は、クロニジンの皮膚透過速度の変動を抑制でき、安定した治療効果および副作用軽減効果を有し、治療上有効な医薬製剤である。