(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022113667
(43)【公開日】2022-08-04
(54)【発明の名称】エドキサバン含有医薬組成物
(51)【国際特許分類】
A61K 31/444 20060101AFI20220728BHJP
A61K 47/38 20060101ALI20220728BHJP
A61K 47/32 20060101ALI20220728BHJP
A61K 47/36 20060101ALI20220728BHJP
A61K 47/42 20170101ALI20220728BHJP
A61K 47/02 20060101ALI20220728BHJP
A61K 47/26 20060101ALI20220728BHJP
A61P 7/02 20060101ALI20220728BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20220728BHJP
【FI】
A61K31/444
A61K47/38
A61K47/32
A61K47/36
A61K47/42
A61K47/02
A61K47/26
A61P7/02
A61P43/00 111
【審査請求】未請求
【請求項の数】18
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022008743
(22)【出願日】2022-01-24
(31)【優先権主張番号】P 2021009491
(32)【優先日】2021-01-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】596166690
【氏名又は名称】全星薬品工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100124648
【弁理士】
【氏名又は名称】赤岡 和夫
(74)【代理人】
【識別番号】100060368
【弁理士】
【氏名又は名称】赤岡 迪夫
(74)【代理人】
【識別番号】100154450
【弁理士】
【氏名又は名称】吉岡 亜紀子
(72)【発明者】
【氏名】田中 章一郎
(72)【発明者】
【氏名】安田 真央
(72)【発明者】
【氏名】押田 千佳
(72)【発明者】
【氏名】山崎 淳治
【テーマコード(参考)】
4C076
4C086
【Fターム(参考)】
4C076AA36
4C076BB01
4C076CC14
4C076DD25
4C076DD26
4C076DD27
4C076DD28
4C076DD29
4C076DD30
4C076DD38
4C076DD67
4C076EE06
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4C076EE13
4C076EE16
4C076EE30
4C076EE31
4C076EE32
4C076EE33
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4C076GG12
4C076GG13
4C076GG14
4C086AA01
4C086AA02
4C086CB27
4C086GA14
4C086GA16
4C086MA05
4C086MA35
4C086MA52
4C086NA02
4C086NA09
4C086ZA51
4C086ZA54
4C086ZC20
(57)【要約】
【課題】中性領域におけるエドキサバンの溶解性に優れるエドキサバン含有医薬組成物を提供する。
【解決手段】医薬組成物は、(A)エドキサバン、薬理的に許容しうる塩(例えばトシル酸塩)、またはその溶媒和物(例えば水和物)と、(B)水溶性結合剤とを含有する造粒物を含み、有機酸を含まない。造粒物は、(A)と(B)との分散液を用いて湿式造粒された造粒物である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)エドキサバン、その薬理的に許容しうる塩、またはそれらの溶媒和物と、
(B)水溶性結合剤
を含有する造粒物を含み、
前記造粒物は、前記(A)と前記(B)との分散液を用いて湿式造粒された造粒物であり、
有機酸を含まない、医薬組成物。
【請求項2】
前記(B)水溶性結合剤は、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール(部分けん化物)、プルラン、デンプン、デキストリン、及びゼラチンから選ばれる1以上の結合剤である、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項3】
前記(B)水溶性結合剤は、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリビニルピロリドン、及びポリビニルアルコール(部分けん化物)から選ばれる1以上の結合剤である、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項4】
前記(B)水溶性結合剤は、ヒドロキシプロピルセルロースである、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項5】
前記造粒物は、(C)粉体添加剤をさらに含有する、請求項1から請求項4までのいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項6】
前記造粒物は、前記分散液と粉体添加剤とを用いて湿式造粒された造粒物である、請求項5に記載の医薬組成物。
【請求項7】
前記粉体添加剤は賦形剤である、請求項5または請求項6に記載の医薬組成物。
【請求項8】
前記粉体添加剤は、賦形剤と、水不溶性高分子及び/又は無機物との混合物である、請求項5または請求項6に記載の医薬組成物。
【請求項9】
前記水不溶性高分子及び/又は無機物は、酢酸セルロース、エチルセルロース、アミノアルキルメタクリレートコポリマーE、アミノアルキルメタクリレートコポリマーRS、酢酸ビニル樹脂、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム、ケイ酸アルミン酸マグネシウム、ケイ酸カルシウム、ケイ酸マグネシウム、タルク、酸化マグネシウム、水酸化マグネシウム、リン酸水素カルシウム水和物、及び無水リン酸水素カルシウムからなる群から選ばれる少なくとも1つの化合物である、請求項8に記載の医薬組成物。
【請求項10】
前記水不溶性高分子及び/又は無機物はエチルセルロースである、請求項8に記載の医薬組成物。
【請求項11】
前記賦形剤は、結晶セルロース、デンプン類、糖類、糖アルコール類、軽質無水ケイ酸、タルク、酸化マグネシウム、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、リン酸水素カルシウム、及び第三リン酸カルシウムからなる群から選ばれる少なくとも1つである、請求項7から請求項10までのいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項12】
前記賦形剤は糖アルコールである、請求項7から請求項10までのいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項13】
前記(A)エドキサバン、その薬理的に許容しうる塩、またはそれらの溶媒和物を医薬組成物全体100重量部に対して10重量部~40重量部含有し、
前記(B)水溶性結合剤を医薬組成物100重量部に対して0.1重量部~10重量部含有する、請求項1から請求項12までのいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項14】
前記(A)エドキサバン、その薬理的に許容しうる塩、またはそれらの溶媒和物を医薬組成物全体100重量部に対して10重量部~40重量部含有し、
前記(B)水溶性結合剤を医薬組成物100重量部に対して0.1重量部~10重量部含有し、
前記賦形剤を医薬組成物100重量部に対して0.1重量部~30重量部含有する、請求項7に記載の医薬組成物。
【請求項15】
前記(A)エドキサバン、その薬理的に許容しうる塩、またはそれらの溶媒和物を医薬組成物100重量部に対して10重量部~40重量部含有し、
水溶性結合剤が、医薬組成物100重量部に対して0.1重量部~10重量部含有し、
前記賦形剤を医薬組成物100重量部に対して0.1重量部~30重量部含有し、
前記水不溶性高分子及び/又は無機物を医薬組成物100重量部に対して0.1重量部~20重量部含有する、請求項8に記載の医薬組成物。
【請求項16】
前記(A)エドキサバン、その薬理的に許容しうる塩、またはそれらの溶媒和物がエドキサバントシル酸塩水和物である、請求項1から請求項15までのいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項17】
口腔内崩壊錠の剤型である、請求項1から請求項16までのいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項18】
(A)エドキサバン、その薬理的に許容しうる塩、またはそれらの溶媒和物と(B)水溶性結合剤との分散液を調製する工程と、
前記分散液を用いて湿式造粒によって造粒物を形成する工程とを含む、請求項1から請求項17までのいずれか1項に記載の医薬組成物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エドキサバン、その薬理的に許容しうる塩、またはそれらの溶媒和物(以下「エドキサバン等」と称することがある)を含有する医薬組成物に関する。本発明はとりわけエドキサバントシル酸塩水和物を含有する固形の医薬組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
エドキサバンは、化学名をN1-(5-クロロピリジン-2-イル)-N2-((1S,2R,4S)-4-[(ジメチルアミノ)カルボニル]-2-{[(5-メチル-4,5,6,7-テトラヒドロチアゾロ[5,4-c]ピリジン-2-イル)カルボニル]アミノ}シクロヘキシル)エタンジアミドとする化合物である。エドキサバン、その薬理的に許容しうる塩、またはそれらの溶媒和物は、活性化血液凝固第X因子に対して阻害効果を示し、特に血栓症または塞栓症の予防および/または治療に有用であることが知られている。
【0003】
錠剤やカプセル剤等の経口投与用医薬組成物においては、薬効成分の溶出性が有効性および安全性に大きな影響を及ぼすことから、各国において溶出性に関する基準が定められている。例えば、日本では、日本薬局方に溶出試験の方法が記載され、該溶出試験において、種々の溶出試験液(以下、試験液または溶出液ともいう)が定められている。これらの溶出試験液としては、強酸性の溶出試験液(例えば、日本薬局方記載の第1液や、0.1N塩酸水溶液等)、pH3~5の溶出試験液(例えば、酢酸-酢酸ナトリウム緩衝液、等)およびpH6.8の溶出試験液(例えば、日本薬局方記載の第2液や、pH6.8のリン酸塩緩衝液等)および水等が示されている。経口投与用製剤は、これらの溶出試験液を用いた溶出試験において、溶出性が良好であることが求められている。
【0004】
エドキサバンは塩基性化合物であり、強酸性水溶液では良好な溶解性を示すものの、中性の水溶液(例えば、中性の緩衝液)では溶解性が低下するため、エドキサバン等を含む固形製剤では中性の水溶液における溶解性の改善が必要である。以下の文献には、エドキサバン等の溶出性や吸収性の改善を意図した製剤が記載されている。
【0005】
国際公開第WO2008/129846号(特許文献1)には(a)エドキサバンと(b)糖アルコール類及び水膨潤性添加剤から選ばれる1種又は2種以上とを含有する医薬組成物と、上記(a)、(b)に加えてさらに(c)コーティング剤でコートしたコーティング錠剤が記載されている。
【0006】
国際公開第WO2010/147169号(特許文献2)には、さらに、医薬組成物中のエドキサバンの割合を0.5~15重量部に減らすことでエドキサバンの溶出性を改善した医薬組成物が記載されている。
【0007】
国際公開第WO2011/115067号(特許文献3)には(a)エドキサバン,(b)糖アルコール及び/又は水膨潤性添加剤である賦形剤、(c)崩壊剤および(d)結合剤からなる造粒物を、造粒中の最大水分量を10%以下に保つことによって、製剤の中性領域の溶解性を改善した医薬組成物が記載されている。
【0008】
国際公開第WO2013/022059号(特許文献4)には、では、中性領域の溶出特性を改善することを目的として、エドキサバン、その薬理上許容される塩、又はそれらの溶媒和物と、カルボン酸又はエノールまたはその塩を含有する、錠剤またはカプセル剤といった固形製剤が提案されている。
【0009】
国際公開第WO2016/020080号(特許文献5)には、エドキサバン、またはその薬学的に許容可能な塩、ポビドンおよびコポビドンから成る群から選択される水溶性ビニルピロリドンポリマー、ならびにセルロースエーテルを含む医薬組成物が記載されている。
【0010】
国際公開第WO2018/101373号(特許文献6)には、エドキサバン、その薬理上許容される塩、又はそれらの溶媒和物、有機酸、錠剤の総重量に対して0.1~2.0重量%の水溶性高分子、及び崩壊剤を含有する口腔内崩壊錠が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】国際公開第WO2008/129846号
【特許文献2】国際公開第WO2010/147169号
【特許文献3】国際公開第WO2011/115067号
【特許文献4】国際公開第WO2013/022059号
【特許文献5】国際公開第WO2016/020080号
【特許文献6】国際公開第WO2018/101373号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかしながら、特許文献1~6に記載の組成物では、中性領域の溶出性が十分ではなかった。
【0013】
本発明は、中性領域の溶出性が改善された、エドキサバン等を含有する医薬組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明者らは鋭意検討の結果、有機酸、すなわち、医薬品添加物として使用可能な有機物であって酸性を示す化合物を用いずに、(A)エドキサバン等と(B)水溶性結合剤の分散液を湿式造粒することにより、中性水溶液中においてエドキサバン等の分散性が向上し、中性領域のエドキサバン等の溶出性が改善されることを見出した。これは、水溶性結合剤とエドキサバン等とがより接触した状態となり、エドキサバン等の濡れ性が改善されるためであると考えられる。この知見に基づいて、本発明は以下の通り構成される。
【0015】
本発明に従った医薬組成物は、(A)エドキサバン、その薬理的に許容しうる塩、またはそれらの溶媒和物と、(B)水溶性結合剤を含有する造粒物を含み、有機酸を含まない。造粒物は、(A)と(B)の分散液を用いて湿式造粒された造粒物である。
【0016】
このようにすることにより、中性水溶液中においてエドキサバン等の分散性が向上し、中性領域のエドキサバン等の溶出性が改善された、エドキサバン等を含有する医薬組成物を提供することができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明により、エドキサバン等の中性水溶液における分散性が向上し、エドキサバン等の溶出性が改善された医薬組成物が得られる。
【0018】
また本発明の医薬組成物は苦味が抑制されており、患者の服薬コンプライアンスの向上に寄与することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明の実施例1と比較例のエドキサバンの溶出性を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明に従った医薬組成物は、(A)エドキサバン、その薬理的に許容しうる塩、またはそれらの溶媒和物と、(B)水溶性結合剤を含有する造粒物を含み、有機酸を含まない。造粒物は、(A)と(B)の分散液を用いて湿式造粒された造粒物である。
【0021】
本発明において、エドキサバンは溶媒和物であってもよく、またエドキサバンの薬理的に許容しうる塩(例えば、トシル酸塩)の溶媒和物(例えば、水和物)であってもよい。
【0022】
エドキサバンの薬理的に許容しうる塩としては、塩酸塩、硫酸塩、臭化水素酸塩、クエン酸、ヨウ化水素酸塩、燐酸塩、硝酸塩、安息香酸塩、メタンスルホン酸塩、ベンゼンスルホン酸、2-ヒドロキシエタンスルホン酸塩、p-トルエンスルホン酸塩、酢酸塩、プロパン酸塩、シュウ酸塩、マロン酸塩、コハク酸塩、グルタル酸塩、アジピン酸塩、酒石酸塩、マレイン酸塩、フマル酸塩、リンゴ酸塩、マンデル酸塩等が挙げられる。塩酸塩、酒石酸塩又はトシル酸塩(すなわち、p-トルエンスルホン酸塩)が好ましく、トシル酸塩がとりわけ好ましい。
【0023】
エドキサバン、その薬理的に許容しうる塩、またはその溶媒和物を分散させる溶剤としては、薬理学的に許容可能な溶剤であれば特に制限はない。そのような溶剤としては水が好ましく、とりわけ精製水を用いることができる。
【0024】
水溶性結合剤としては、薬理学的に許容可能な慣用の水溶性の結合剤が好ましく、例えば、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール(部分けん化物)、プルラン、デンプン、デキストリン、ゼラチン等が挙げられる。ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール(部分けん化物)がより好ましい。またヒドロキシプロピルセルロースやヒドロキシプロピルメチルセルロースなどの水溶性セルロース誘導体がより好ましい。本発明においては、上記の水溶性結合剤から選ばれる1種以上の化合物を溶剤に溶かしエドキサバン等の分散液に用いることができる。好ましくは、上記から選ばれる一の化合物を使用する。とりわけ、ヒドロキシプロピルセルロースが好ましい。水溶性結合剤は、エドキサバン含有医薬組成物100重量部に対して、0.1重量部以上10重量部以下の範囲であることが好ましく、0.5重量部以上3重量部以下の範囲であることがより好ましい。
【0025】
本発明の医薬組成物が含む造粒物は、(A)と(B)の分散液を、粉体添加剤に噴霧して湿式造粒された造粒物であることが好ましい。このようにして造粒することで、有機酸を含まなくても中性領域におけるエドキサバン等の溶出が改善される。
【0026】
粉体添加剤は、賦形剤、崩壊剤、及び安定化剤の少なくとも1種の薬理学的に許容可能な添加剤を用いることができる。好ましくは、薬理学的に許容される慣用の賦形剤を用いることができる。そのような賦形剤としては、例えば、結晶セルロース、トウモロコシデンプンなどのデンプン類、ショ糖、乳糖、ブドウ糖などの糖類、マンニトール、エリスリトール、キシリトール、ソルビトールなどの糖アルコール、軽質無水ケイ酸、タルク、酸化マグネシウム、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、リン酸水素カルシウム、第三リン酸カルシウムなどが挙げられる。これらの賦形剤は、単独で又は二種以上組み合わせて用いてもよいが、糖アルコール(例えば、マンニトール、エリスリトール、キシリトール、ソルビトール等)が好ましく、とりわけマンニトールが好ましい。
【0027】
粉体添加剤は、エドキサバン含有医薬組成物100重量部に対して、0.1重量部以上30重量部以下の範囲であることが好ましく、10重量部以上20重量部以下の範囲であることがより好ましい。
【0028】
また本発明においては、粉体添加剤として水不溶性高分子及び/又は無機物を用いてもよい。造粒物が賦形剤と、水不溶性高分子及び/又は無機物を含むことにより、顆粒の分散性が向上し崩壊性を改善させるとともにエドキサバン等のゲル化を妨げ、医薬組成物を錠剤に用いた場合に錠剤の崩壊性やエドキサバン等の溶出性を改善することができる。
【0029】
粉体添加剤としては、水不溶性高分子や無機物を単独で用いることができ、または、上記の賦形剤、崩壊剤、及び安定化剤の少なくとも1種の薬理学的に許容可能な添加剤と、水不溶性高分子や無機物の混合物を用いることができる。この場合、上記の賦形剤と無機物とが同一の化合物になることも差し支えない。好ましくは、賦形剤と無機物とは異なり、無機物を用いる際には、賦形剤には結晶セルロース、デンプン類、糖類、糖アルコール類を使用することがより好ましい。
【0030】
また、上記の賦形剤と水不溶性高分子及び/又は無機物との混合物に、エドキサバン等と水溶性結合剤の分散液を噴霧して湿式造粒するのが好ましい。これにより、エドキサバン等の分散性をさらに向上させることができる。
【0031】
水不溶性高分子としては、例えば、エチルセルロース、酢酸セルロース、アミノアルキルメタクリレートコポリマーE、アミノアルキルメタクリレートコポリマーRS、酢酸ビニル樹脂及びそれらの一種又は二種以上の混合物があげられ、無機物としては炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム、ケイ酸アルミン酸マグネシウム、ケイ酸カルシウム、ケイ酸マグネシウム、タルク、酸化マグネシウム、水酸化マグネシウム、リン酸水素カルシウム水和物、無水リン酸水素カルシウム及びそれらの一種又は二種以上の混合物があげられる。水溶性高分子及び/又は無機物としては、特にエチルセルロースが好適に用いられる。
【0032】
水不溶性高分子や無機物は、本発明の含有医薬組成物100重量部に対して、0.1重量部以上20重量部以下の範囲であることが好ましく、5重量部以上10重量部以下がより好ましい。
【0033】
本発明に係る医薬組成物は、このようにして得られた造粒物をさらに賦形剤、崩壊剤、結合剤、滑沢剤から選ばれる1種以上の薬理学的に許容可能な添加剤と組み合わせて医薬組成物とすることができる。また本発明の医薬組成物には、さらに、薬理学的に許容可能な慣用の他の添加剤、例えば、防腐剤、矯味剤、甘味剤、着色剤、着香剤、香料などを加えてもよい。
【0034】
賦形剤としては、例えば、結晶セルロース、トウモロコシデンプンなどのデンプン類、ショ糖、乳糖、ブドウ糖などの糖類、マンニトール、エリスリトール、キシリトール、ソルビトールなどの糖アルコール、軽質無水ケイ酸、タルク、酸化マグネシウム、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、無水リン酸水素カルシウム、第三リン酸カルシウムなどが挙げられる。これらの賦形剤は、単独で又は二種以上組み合わせて用いてもよい。
【0035】
崩壊剤としては、例えば、結晶セルロース、カルボキシメチルスターチナトリウム、カルメロース、カルメロースカルシウム、カルメロースナトリウム、クロスカルメロースナトリウム、架橋化ポリビニルピロリドン、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、クロスポビドン、デンプン類などが挙げられる。これらの崩壊剤は、単独で又は二種以上組み合わせて用いてもよい。
【0036】
結合剤としては、薬理学的に許容可能な結合剤、例えば、ショ糖、ゼラチン、アラビアゴム末、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロース(カルメロース)、結晶セルロース・カルボキシメチルセルロースナトリウム、ポリビニルピロリドン、プルラン、デキストリン、トラガント、アルギン酸ナトリウム、α化デンプン、ポリビニルアルコールなどが挙げられる。これらの結合剤は、単独で又は二種以上組み合わせて用いてもよい。
【0037】
滑沢剤としては、例えば、ステアリン酸マグネシウム、軽質無水ケイ酸、タルク、ステアリン酸カルシウム、フマル酸ステアリルナトリウム、ショ糖脂肪酸エステル、L-ロイシンなどを挙げることができる。甘味剤としては、例えば、ショ糖、乳糖、ブドウ糖などの糖類、マンニトール、エリスリトール、キシリトール、ソルビトールなどの糖アルコール、アスパルテーム、スクラロース、アセスルファムカリウム、タウマチンなどを挙げることができる。これら慣用の他の添加剤は、単独で又は二種以上組み合わせて用いてもよい。
【0038】
次に、本発明に従った医薬組成物の製造方法を説明する。
【0039】
まず、水溶性結合剤を溶剤に添加して攪拌機で溶解させた後、この溶剤にエドキサバン、その薬理的に許容しうる塩、またはそれらの溶媒和物を添加し、分散機で分散させて分散液を調製する。
【0040】
次いで、エドキサバン等と水溶性結合剤の分散液を、粉体添加剤とともに、若しくは粉体添加剤を用いずに、湿式造粒し、造粒物を得る。造粒操作は、例えば、流動層造粒機、撹拌造粒機、双軸造粒機等の装置を使用して行うことができる。また、粉体添加剤を用いずに造粒する場合には、国際公開パンフレットWO2014/181390に記載の工程に従って行うことができる。本実施形態においては、エドキサバン、その薬理的に許容しうる塩、またはそれらの溶媒和物の分散液を用いる湿式造粒及び乾燥を連続で行うことができる流動層造粒法を用いることが好ましい。
【0041】
得られた造粒物を常法により乾燥、整粒することで医薬組成物が得られる。
【0042】
粉体添加剤は、上記のとおり、賦形剤、崩壊剤、結合剤、滑沢剤から選ばれる1種以上の薬理学的に許容可能な添加剤および要すれば水不溶性高分子や無機物を用いることができる。従って、例えば、(B)水溶性結合剤に水溶性セルロース誘導体を用い、粉体添加剤に水不溶性高分子のエチルセルロースを、さらに所望により賦形剤(糖アルコールなど)を用いて造粒すれば、エドキサバンと、セルロース誘導体(すなわち、エチルセルロースと水溶性セルロース誘導体)と、所望により賦形剤(糖アルコールなど)と、のみを含む造粒物が得られる。
【0043】
整粒後に、さらに後末部として賦形剤、崩壊剤、結合剤、滑沢剤等を混合して打錠することができる。または、整粒後に、別途に賦形剤、崩壊剤、結合剤等を用いて造粒した粒子を後末部として滑沢剤とともに添加して打錠することもできる。好ましくは、後末部として、上記した賦形剤、崩壊剤、結合剤、甘味料から選ばれる1以上の添加剤を混合・造粒して得られた粉末を加え、それを滑沢剤とともに打錠して医薬組成物を得る。打錠は、市販の打錠機を使用して、行うことができる。このようにして打錠して製造される医薬組成物は、公知の剤型を取り得るが、口腔内崩壊錠であることが好ましい。
【0044】
また、素錠又は造粒後の素顆粒等に、コーティングを施してもよい。コーティングをする場合は、フィルムコーティング機、流動層造粒機等の手段により実施するのが好ましい。コーティングには、例えば、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、メチルセルロース、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリエチレングリコール、ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートサクシネート、ヒプロメロースフタル酸エステル、酢酸フタル酸セルロース、アミノアルキルメタクリレートコポリマーE、アミノアルキルメタクリレートコポリマーRS、メタクリル酸コポリマーL、メタクリル酸コポリマーLD、メタクリル酸コポリマーS、乾燥メタクリル酸コポリマーLD、アクリル酸エチル・メタクリル酸メチルコポリマー分散液、白糖等の当該分野で周知のコーティング剤を用いることができる。
【実施例0045】
本発明に係る医薬組成物の具体的な製造例及び試験結果を示して、より詳細に説明する。
【0046】
[実施例1]
造粒時の原薬添加方法が異なる造粒物を調製し、当該造粒物を含有する錠剤を製造した。
【0047】
[実施例1A]
精製水621gにヒドロキシプロピルセルロース12gを溶解した水溶液に、エドキサバントシル酸塩水和物80.8gを分散させた。流動層造粒機((株)パウレック製)に得られた溶液を噴霧して流動層造粒、乾燥、整粒を行った。得られた造粒物4.64g、D-マンニトール13.08g、結晶セルロース1.68g、クロスポビドン0.25g、カルメロース0.25g、ステアリン酸マグネシウム0.10gを混合し、単発式打錠機(市橋精機(株)製)で、1錠当たりの重量400mgとなるよう打錠し、錠剤を得た。
【0048】
[比較例]
精製水552gに、ヒドロキシプロピルセルロース18gを溶解した。エドキサバントシル酸塩水和物80.8gを流動層造粒機((株)パウレック製)に投入し、得られた溶液を添加して流動層造粒、乾燥、整粒を行った。得られた造粒物4.64g、D-マンニトール13.08g、結晶セルロース1.68g、クロスポビドン0.25g、カルメロース0.25g、ステアリン酸マグネシウム0.10gを混合し、単発式打錠機(市橋精機(株)製)で、1錠当たりの重量400mgとなるよう打錠し、錠剤を得た。
【0049】
[溶出性]
第十八改正日本薬局方に記載の溶出試験法(パドル法)、50rpmにより溶出性を検討した。溶出試験液として900mLのpH6.8 リン酸塩緩衝液を用い、実施例1A及び比較例の製剤を120分間撹拌し、溶出率を経時的に測定した。溶出率の測定結果を表1及び
図1に示す。
【0050】
【0051】
水溶性結合剤を分散液に混合させた本発明の医薬組成物は、比較例に比して優れた溶出性が認められた。
【0052】
[実施例2]
実施例1Aにおいて、造粒物中に含まれる添加剤が異なる造粒物を調製し、当該造粒物を用いてエドキサバンを含有する錠剤を製造した。
【0053】
[実施例2A]
精製水621gに、ヒドロキシプロピルセルロース12gを溶解した水溶液にエドキサバントシル酸塩水和物80.8gを分散させた。D-マンニトール52.6gを流動層造粒機((株)パウレック製)に投入し、得られた溶液を添加して流動層造粒、乾燥、整粒を行った。得られた造粒物7.27g、D-マンニトール10.46g、結晶セルロース1.68g、クロスポビドン0.25g、カルメロース0.25g、ステアリン酸マグネシウム0.10gを混合し、単発式打錠機(市橋精機(株)製)で、1錠当たりの重量400mgとなるよう打錠し、錠剤を得た。
【0054】
[実施例2B]
精製水621gに、ヒドロキシプロピルセルロース12gを溶解した水溶液にエドキサバントシル酸塩水和物80.8gを分散させた。D-マンニトール26.3g、エチルセルロース26.3gを流動層造粒機((株)パウレック製)に投入し、得られた溶液を添加して流動層造粒、乾燥、整粒を行った。得られた造粒物7.27g、D-マンニトール10.46g、結晶セルロース1.68g、クロスポビドン0.25g、カルメロース0.25g、ステアリン酸マグネシウム0.10gを混合し、単発式打錠機(市橋精機(株)製)で、1錠当たりの重量400mgとなるよう打錠し、錠剤を得た。
【0055】
[崩壊試験]
第十八改正日本薬局方に記載の崩壊試験法により崩壊性を検討した。試験液として水を用い、実施例1A、実施例2A及び実施例2Bの製剤を評価した。崩壊試験結果を表2に示す。
【0056】
【0057】
実施例1A及び実施例2Aに比して、水不溶性高分子を含有する実施例2Bの製剤は優れた崩壊性を示した。
【0058】
本発明を要約すれば以下のとおりである。
【0059】
1.本発明に従った医薬組成物は、(A)エドキサバン、その薬理的に許容しうる塩、またはそれらの溶媒和物と、(B)水溶性結合剤とを含有する造粒物を含み、有機酸を含まず、造粒物は、(A)と(B)との分散液を用いて湿式造粒された造粒物である。
【0060】
2.(B)水溶性結合剤は、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール(部分けん化物)、プルラン、デンプン、デキストリン、及びゼラチンから選ばれる1以上の結合剤である、1に記載の医薬組成物。
【0061】
3.(B)水溶性結合剤は、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリビニルピロリドン、及びポリビニルアルコール(部分けん化物)から選ばれる1以上の結合剤である、1に記載の医薬組成物。
【0062】
4.(B)水溶性結合剤は、ヒドロキシプロピルセルロースである、1に記載の医薬組成物。
【0063】
5.造粒物は、(C)粉体添加剤をさらに含有する、1から4までのいずれか1つに記載の医薬組成物。
【0064】
6.造粒物は、分散液と粉体添加剤とを用いて湿式造粒された造粒物である、1から5までのいずれか1つに記載の医薬組成物。
【0065】
7.粉体添加剤は賦形剤である、5または6に記載の医薬組成物。
【0066】
8.粉体添加剤は、賦形剤と、水不溶性高分子及び/又は無機物との混合物である、5または6に記載の医薬組成物。
【0067】
9.水不溶性高分子及び/又は無機物は、酢酸セルロース、エチルセルロース、アミノアルキルメタクリレートコポリマーE、アミノアルキルメタクリレートコポリマーRS、酢酸ビニル樹脂、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム、ケイ酸アルミン酸マグネシウム、ケイ酸カルシウム、ケイ酸マグネシウム、タルク、酸化マグネシウム、水酸化マグネシウム、リン酸水素カルシウム水和物、及び無水リン酸水素カルシウムからなる群から選ばれる少なくとも1つの化合物である、8に記載の医薬組成物。
【0068】
10.水不溶性高分子及び/又は無機物はエチルセルロースである、8に記載の医薬組成物。
【0069】
11.賦形剤は、結晶セルロース、デンプン類、糖類、糖アルコール類、軽質無水ケイ酸、タルク、酸化マグネシウム、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、リン酸水素カルシウム、及び第三リン酸カルシウムからなる群から選ばれる少なくとも1つである、7から10までのいずれか1つに記載の医薬組成物。
【0070】
12.賦形剤は糖アルコールである、7から10までのいずれか1つに記載の医薬組成物。
【0071】
13.(A)エドキサバン、その薬理的に許容しうる塩、またはそれらの溶媒和物を医薬組成物全体100重量部に対して10重量部~40重量部含有し、(B)水溶性結合剤を医薬組成物100重量部に対して0.1重量部~10重量部含有する、1から12までのいずれかに1つに記載の医薬組成物。
【0072】
14.(A)エドキサバン、その薬理的に許容しうる塩、またはそれらの溶媒和物を医薬組成物全体100重量部に対して10重量部~40重量部含有し、(B)水溶性結合剤を医薬組成物100重量部に対して0.1重量部~10重量部含有し、賦形剤を医薬組成物100重量部に対して0.1重量部~30重量部含有する、7に記載の医薬組成物。
【0073】
15.(A)エドキサバン、その薬理的に許容しうる塩、またはそれらの溶媒和物を医薬組成物100重量部に対して10重量部~40重量部含有し、水溶性結合剤が、医薬組成物100重量部に対して0.1重量部~10重量部含有し、賦形剤を医薬組成物100重量部に対して0.1重量部~30重量部含有し、水不溶性高分子及び/又は無機物を医薬組成物100重量部に対して0.1重量部~20重量部含有する、8に記載の医薬組成物。
【0074】
16.(A)エドキサバン、その薬理的に許容しうる塩、またはそれらの溶媒和物がエドキサバントシル酸塩水和物である、1から15までのいずれか1つに記載の医薬組成物。
【0075】
17.口腔内崩壊錠の剤型である、1から16までのいずれか1つに記載の医薬組成物。
【0076】
18.(A)エドキサバン、その薬理的に許容しうる塩、またはそれらの溶媒和物と(B)水溶性結合剤との分散液を調製する工程と、分散液を用いて湿式造粒によって造粒物を形成する工程とを含む、1から17までのいずれか1つに記載の医薬組成物の製造方法。
【0077】
以上に開示された実施の形態と実施例はすべての点で例示であって制限的なものではないと考慮されるべきである。本発明の範囲は、以上の実施の形態と実施例ではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての修正や変形を含むものである。