(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022113707
(43)【公開日】2022-08-04
(54)【発明の名称】硬化性樹脂組成物、硬化膜、被覆樹脂成型体及び多層フィルム
(51)【国際特許分類】
C08F 290/00 20060101AFI20220728BHJP
C08F 299/00 20060101ALI20220728BHJP
C08G 81/00 20060101ALI20220728BHJP
C08J 5/18 20060101ALI20220728BHJP
B32B 27/30 20060101ALI20220728BHJP
【FI】
C08F290/00
C08F299/00
C08G81/00
C08J5/18 CEY
B32B27/30 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022083020
(22)【出願日】2022-05-20
(62)【分割の表示】P 2021530713の分割
【原出願日】2020-07-08
(31)【優先権主張番号】P 2019129158
(32)【優先日】2019-07-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000162076
【氏名又は名称】共栄社化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001531
【氏名又は名称】特許業務法人タス・マイスター
(72)【発明者】
【氏名】森脇 佑也
(72)【発明者】
【氏名】松田 知也
(72)【発明者】
【氏名】浅田 耕資
(72)【発明者】
【氏名】呑海 克
(72)【発明者】
【氏名】竹中 直巳
(72)【発明者】
【氏名】中川 浩気
(57)【要約】
【課題】熱硬化性と活性エネルギー硬化性の両方の性質を備え、かつ、良好な性能を得ることができ、かつ、従来のような熱架橋剤配合後の短いポットライフを気にする必要がなく、安価であるという点でハンドリング性も含めた優れた性能を有する樹脂組成物を得る。
【解決手段】(メタ)アクリロイル基(a)、水酸基(b)、及び、アルキルエステル基(c)を含む樹脂成分(A)、並びに、開始剤(B)を含有することを特徴とする硬化性樹脂組成物。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(メタ)アクリロイル基(a)、水酸基(b)、及び、アルキルエステル基(c)を含む樹脂成分(A)、並びに、開始剤(B)を含有することを特徴とする硬化性樹脂組成物。
【請求項2】
樹脂成分(A)は、一分子中に2以上の官能基を有する化合物を含有するものである請求項1記載の硬化性樹脂組成物。
【請求項3】
樹脂成分(A)は、
一分子中に(メタ)アクリロイル基(a)、水酸基(b)、及び、アルキルエステル基(c)のすべてを含む化合物(A-1)を必須とするものである請求項1又は2記載の硬化性樹脂組成物。
【請求項4】
樹脂成分(A)は、
上記(メタ)アクリロイル基(a)、水酸基(b)、及び、アルキルエステル基(c)のうち、2つを有する化合物(A-2)並びに
上記(a)~(c)の官能基のうち化合物(A-2)中に存在しない官能基を有する化合物(A-3)を必須とするものである請求項1又は2記載の樹脂組成物。
【請求項5】
樹脂成分(A)は、
上記(メタ)アクリロイル基(a)を有する化合物(A-4)、水酸基(b)を有する化合物(A-5)、及び、アルキルエステル基(c)を有する化合物(A-6)
を必須とするものである請求項1又は2記載の樹脂組成物。
【請求項6】
開始剤(B)は、エステル交換触媒を少なくとも一部とするものである請求項1~5のいずれかに記載の樹脂組成物。
【請求項7】
開始剤(B)は、更に、活性エネルギー線硬化触媒を含有する請求項6記載の樹脂組成物。
【請求項8】
樹脂成分(A)は、ラジカル共重合型ポリマー、付加・縮合型オリゴマー及び低分子化合物からなる群より選択される少なくとも1の化合物である請求項1~7のいずれかに記載の樹脂組成物。
【請求項9】
請求項1~8のいずれかに記載の樹脂組成物を、熱および活性エネルギー線によって硬化したものであることを特徴とする硬化膜。
【請求項10】
硬化性樹脂層(2)を有する被覆樹脂成型体であって、
硬化性樹脂層(2)は、(メタ)アクリロイル基(a)、水酸基(b)、及び、アルキルエステル基(c)を含む樹脂成分(A)、並びに、開始剤(B)を含有することを特徴とする被覆樹脂成型体。
【請求項11】
基材フィルム層(1)及び当該基材フィルム層(1)上に形成された硬化性樹脂層(2)を有する多層フィルムであって、
硬化性樹脂層(2)は、(メタ)アクリロイル基(a)、水酸基(b)、及び、アルキルエステル基(c)を含む樹脂成分(A)、並びに、開始剤(B)を含有することを特徴とする多層フィルム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エステル交換触媒を利用したエステル交換反応及び活性エネルギー線による硬化を硬化反応とする硬化性樹脂組成物、硬化膜、被覆樹脂成型体並びに多層フィルムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
本発明者らは、エステル交換反応を硬化反応とする熱硬化性樹脂組成物についての検討を行っている(特許文献1、2)。最近の検討によって、エステル交換反応を硬化反応とすることで、一般的に知られているメラミン樹脂やポリイソシアネート化合物を使用した硬化と同等の硬化性能を確保することができることが明らかになりつつある。
【0003】
一方、デュアルキュアと呼ばれる硬化反応を行う硬化組成物についても多くの検討がなされている。デュアルキュアとは、同一の組成物に対して熱による硬化と活性エネルギー線による硬化の両方の硬化を行う方法である。このような方法は、インモールド成形やその他多くの成形やコーティングにおいて使用が検討されている。
【0004】
これらのデュアルキュアにおいて一般的には、エネルギー線硬化は不飽和結合の光重合反応を利用し、熱硬化はメラミン硬化やイソシアネート硬化、アルコキシシランやチタネート等の一般的な熱硬化反応が利用される。メラミン樹脂やポリイソシアネート化合物は、熱反応性が良好で、得られた硬化樹脂の性質が優れているため、広く一般的に使用されている。しかし、メラミン樹脂は、ホルムアルデヒドを発生しシックハウス症候群の原因とされる。このため、近年は用途が制限される場合もある。更に、イソシアネート化合物やアルコキシシランやチタネート化合物は、硬化反応性能が高いものの高価であることや調合後のポットライフが短く扱いにくい等の理由から、更に安価で扱いやすく低温硬化可能な硬化剤が見いだされれば、好ましいと考えられる。従って、エステル交換反応を硬化反応とすることで、これらの問題を改善できる可能性がある。
【0005】
上記特許文献1、2においては、アルキルエステル基と水酸基とのエステル交換反応によって、熱硬化させる熱硬化性樹脂組成物が開示されている。しかし、エネルギー線硬化性の機能を付与することで、デュアルキュアとすることについては検討がされていない。
【0006】
特許文献3には、デュアルキュアに使用することができる樹脂組成物が記載されている。当該文献においては、エステル交換反応を熱硬化反応とする樹脂は記載も示唆もなされていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特許第6398026号公報
【特許文献2】国際公開2019/069783
【特許文献3】国際公開2004/039856
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は上記に鑑み、熱硬化性と活性エネルギー硬化性の両方の性質を備え、かつ、良好な性能を得ることができ、かつ、従来のような熱架橋剤配合後の短いポットライフを気にする必要がなく、安価であるという点でハンドリング性も含めた優れた性能を有する樹脂組成物を得ることを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の硬化性樹脂組成物は、
(メタ)アクリロイル基(a)、水酸基(b)、及び、アルキルエステル基(c)を含む樹脂成分(A)、並びに、開始剤(B)を含有することを特徴とする硬化性樹脂組成物である。
【0010】
上記樹脂成分(A)は、一分子中に2以上の官能基を有する化合物を含有するものであることが好ましい。
上記樹脂成分(A)は、
一分子中に(メタ)アクリロイル基(a)、水酸基(b)、及び、アルキルエステル基(c)のすべてを含む化合物(A-1)を必須とするものであってもよい。
【0011】
上記樹脂成分(A)は、
上記(メタ)アクリロイル基(a)、水酸基(b)、及び、アルキルエステル基(c)のうち、2つを有する化合物(A-2)並びに
上記(a)~(c)の官能基のうち化合物(A-2)中に存在しない官能基を有する化合物(A-3)を必須とするものであってもよい。
【0012】
樹脂成分(A)は、
上記(メタ)アクリロイル基(a)を有する化合物(A-4)、水酸基(b)を有する化合物(A-5)、及び、アルキルエステル基(c)を有する化合物(A-6)
を必須とするものであってもよい。
【0013】
上記開始剤(B)は、エステル交換触媒を少なくとも一部とするものであることが好ましい。
上記開始剤(B)は、更に、活性エネルギー線硬化触媒を含有するものであることが好ましい。
【0014】
樹脂成分(A)は、ラジカル共重合型ポリマー、付加・縮合型オリゴマー及び低分子化合物からなる群より選択される少なくとも1の化合物であることが好ましい。
本発明は、上述した樹脂組成物を、熱および活性エネルギー線によって硬化したものであることを特徴とする硬化膜でもある。
【発明の効果】
【0015】
本発明によって、熱硬化性能と活性エネルギー線硬化性能の両方を好適に発揮することができ、インモールド成型等の分野において好適に使用することができる。すなわち、熱または活性エネルギー線で仮硬化したのち、最終成型時に熱硬化を行って所望の硬化膜をあたえるものである(硬化順序は目的に応じて逆でも良い)。仮硬化時にロールに巻き取ったりシートとして取り出し、柔軟なフィルムとして最終成型時に硬化して使用することができる。あるいは、活性エネルギー線で硬化する際に、光が当たらない部分が発生しても、その部分は熱により硬化することができる。更には、仮硬化時と最終硬化時の膜物性を大きく変化させることにより、接着や再剥離等に活用することも可能となる。更に、熱硬化又は活性エネルギー線硬化のいずれかのみを行った段階で、硬化前に比べて弾性率が高くなるが、完全に硬化が完了したときほどの高弾性率とはならない。よって、この段階で加工を行い、その後、完全に硬化させることで高弾性率の硬化物とすることができる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明を詳細に説明する。
なお、本明細書において「(メタ)アクリロイル基」とは、「メタクリロイル基」又は「アクリロイル基」を意味するものである。
本発明の硬化性樹脂組成物は、(メタ)アクリロイル基(a)、水酸基(b)、及び、アルキルエステル基(c)を有する樹脂成分(A)を必須とするものである。
これらのうち、(メタ)アクリロイル基(a)は、不飽和結合が活性エネルギー線による架橋反応を生じ、水酸基(b)とアルキルエステル基(c)がエステル交換反応による架橋反応を生じる。これらの2種類の硬化反応を生じる樹脂組成物とすることができるため、インモールド成形のように、一定の硬化させた後に変形を生じさせる必要があり、かつ、最終的には、充分な硬度を有する硬化物を得る必要がある用途において好適に使用することができる。
【0017】
従来は、このようなデュアルキュアタイプの硬化性樹脂組成物においては、イソシアネート化合物、メラミン樹脂、エポキシ化合物、アルコキシシラン、アルコキシチタン等の熱硬化性の硬化剤によって熱硬化反応を生じさせることが行われていた。
【0018】
本発明は、デュアルキュアタイプの硬化性樹脂組成物において、エステル交換反応を硬化反応とすることに特徴を有するものである。これによって、優れた安定性を有する硬化性樹脂組成物を得ることができる。すなわち、エステル交換を硬化反応とする樹脂組成物は、安定性が高いため、硬化を生じさせることなく保管することができる点で好ましい。
【0019】
更に、本発明においては、熱硬化開始温度が130℃であるような、低温硬化性の樹脂組成物とすることができる点でも特に好ましいものである。このような低温硬化性の硬化性樹脂組成物を使用することで、樹脂と組み合わせて使用することが容易となる。
すなわち、樹脂フィルム、射出成型体等のような熱可塑性樹脂組成物の成型体に対して、デュアルキュアタイプの硬化性樹脂組成物を塗布して皮膜形成し、これを硬化することで皮膜を有する成型体を得ることが頻繁に行われている。
【0020】
この場合、樹脂の耐熱温度以下で充分に熱硬化させることが必要とされる。このため、比較的耐熱性が低い樹脂成型体に対しては、上述した処理を行うことが難しい。本発明のエステル交換反応を交換反応とする硬化性組成物は、低温硬化性の組成物とすることができるため、これによって上述した問題を改善できるという点でも特に好ましいものである。
【0021】
本発明において、樹脂成分は上述した(a)~(c)の各官能基を有することが必要である。これらは、組成物中にすべての官能基が含まれるように、各官能基を有する化合物を混合した組成物であってもよいし、必要に応じて(a)~(c)の官能基のうち2以上を有する化合物を使用するものであってもよい。
【0022】
本発明の樹脂成分は、樹脂を必須の構成成分とする組成物であってもよいし、熱硬化及びエネルギー線硬化によって樹脂となるような低分子量化合物の組成物であってもよい。本発明の樹脂成分は、一分子中に2つ以上の官能基を有する化合物を含有するものであることが好ましい。ここでいう「2つ以上の官能基を有する化合物」とは、(a)~(c)からなる官能基群のうち2以上を有するものを意味する。ここでは、同一の官能基を2以上有していても、2種以上の官能基を2以上有していても差し支えない。特に、(b)(c)を1のみ有する化合物は、末端封止剤として作用するものとなるため、使用しないことが好ましく、使用する場合でも、20重量%以下であることが好ましい。(a)を1のみ有する化合物は、末端封鎖剤としては作用していないため、一部に使用するものであってもよい。但し、高架橋密度の硬化樹脂を得るという観点から、その配合量は少ないことが好ましい。具体的には、(a)を1のみ有する化合物は、樹脂成分(A)中、40重量%以下であることが好ましい。
【0023】
すなわち、樹脂成分(A)は、
(I) 一分子中に(メタ)アクリロイル基(a)、水酸基(b)、及び、アルキルエステル基(c)のすべてを含む化合物(A-1)を必須とするもの
(II) (メタ)アクリロイル基(a)、水酸基(b)、及び、アルキルエステル基(c)のうち、2つを有する化合物(A-2)並びに
上記(a)~(c)の官能基のうち化合物(A-2)中に存在しない官能基を有する化合物(A-3)を必須とするもの
(III) 上記(メタ)アクリロイル基(a)を有する化合物(A-4)、水酸基(b)を有する化合物(A-5)、及び、アルキルエステル基(c)を有する化合物(A-6)
を必須とするもの
のいずれの態様であってもよい。
【0024】
更に、上記(A-1)に対して、(A-2)~(A-6)の任意の成分を併用したものであってもよいし、(A-2)に対して、任意の(A-4)~(A-6)を併用したものであってもよい。
【0025】
アクリレート化合物として、(メタ)アクリロイル基と水酸基の両方を有する化合物は公知である。このような化合物は、(a)(b)の両方の官能基を有する化合物として本発明において好適に使用することができる。
(メタ)アクリロイル基と、アルキルエステル基の両方を有する化合物も公知である。このような化合物を使用した場合は、(a)(c)の両方の官能基を有する化合物として本発明において好適に使用することができる。
更に、水酸基とアルキルエステル基の両方を有する化合物も公知である。このような化合物は、(b)(c)の両方の化合物を有する化合物として本発明において好適に使用することができる。
同様に、(メタ)アクリロイル基、水酸基及びアルキルエステル基のすべてを有する化合物も本発明において好適に使用することができる。
【0026】
要するに、本発明の樹脂組成物全体として、上述した(a)~(c)の官能基を有するものであることが必要であり、これらが樹脂組成物に導入される形態については、特に限定されない。
【0027】
樹脂成分(A)は、ラジカル共重合型ポリマー、付加・縮合型オリゴマー及び低分子化合物からなる群より選択される少なくとも1の化合物であることが好ましい。すなわち、アクリル樹脂等のラジカル共重合型ポリマー、ポリエステル樹脂等の付加・縮合型オリゴマー及び分子量6000以下(より好ましくは4000以下、更に好ましくは2000以下)の低分子量化合物を使用することが好ましい。これらのうち、2種以上を組み合わせて使用するものであってもよい。また、本発明の硬化性樹脂組成物は、硬化後に樹脂の状態となるものであればよく、低分子量化合物の混合物であっても、硬化により樹脂とすることができるものも包含する。
【0028】
なお、水酸基及びアルキルエステル基については、これらの官能基を1のみ有する化合物は使用しないことが好ましい。水酸基及びアルキルエステル基の合計で2以上の官能基を有するか、(メタ)アクリロイル基と水酸基及び/又はアルキルエステル基を有する化合物を使用することが好ましい。
官能基として水酸基又はアルキルエステル基を1のみ有する化合物は、鎖状構造を形成することができないため、硬化反応を妨げるおそれがある。
以下、それぞれの官能基を有する化合物について詳述する。なお、以下の記載は例示であって、本発明において使用する化合物は、以下に記載するものに限定されるわけではない。
【0029】
(メタ)アクリロイル基(a)を有する化合物
(メタ)アクリロイル基(a)を有する化合物としては、エネルギー線硬化性の化合物として公知の多くの化合物を使用することができる。
【0030】
官能基数1の(メタ)アクリレートの例は、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、iso-ブチル(メタ)アクリレート、sec-ブチル(メタ)アクリレート、t-ブチル(メタ)アクリレート等を挙げることができる。
【0031】
官能基数2の(メタ)アクリレートの例は、1,4-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,3-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9-ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、1,10-デカンジオールジ(メタ)アクリレート、グリセリンジ(メタ)アクリレート、ジメチロールートリシクロデカンジ(メタ)アクリレート(DCP-A)、ビスフェノールAのEO付加物ジアクリレート(共栄社化学社製;ライトアクリレートBP-4EA、BP-10EA)ビスフェノールAのPO付加物ジアクリレート(共栄社化学社製;BP-4PA、BP-10PA等)を含む。なかでも、ビスフェノールAのPO付加物ジアクリレート(共栄社化学社製;BP-4PA)、ジメチロールートリシクロデカンジ(メタ)アクリレート(DCP-A)等を好ましく用いることができる。
【0032】
官能基数3の(メタ)アクリレートの例は、トリメチロールメタントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンエチレンオキサイド変性トリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンプロピレンオキサイド変性トリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、グリセリンプロポキシトリ(メタ)アクリレート、トリス(2-(メタ)アクリロイルオキシエチル)イソシアヌレート等を含む。なかでも、トリメチロールプロパントリメタクリレート、ペンタエリスリトールトリメタクリレート等を好ましく用いることができる。
【0033】
官能基数4の(メタ)アクリレートの例は、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールエチレンオキサイド変性テトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールプロピレンオキサイド変性テトラ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート等を含む。なかでも、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート等を好ましく用いることができる。
【0034】
官能基数4以上の(メタ)アクリレートの例は、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールエチレンオキサイド変性テトラ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンペンタ(メタ)アクリレート、プロピオン酸変性ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンヘキサ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールのカプロラクトン変性物のヘキサ(メタ)アクリレートなど多官能性(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0035】
更に、下記一般式で表される化合物も、(メタ)アクリロイル基(a)を有する化合物として使用することができる。
【0036】
【0037】
n1:1~10
(式中、R1、R2,R3は、同一又は異なって、水素、アルキル基、カルボキシル基、アルキルエステル基又は上記R4-[COOR5]n1で表される構造。
R4は、主鎖の原子数が50以下であり、主鎖中にエステル基、エーテル基、アミド基、ウレタンからなる群より選択される1又は2以上の官能基を有していてもよく、側鎖を有していてもよい脂肪族、脂環族又は芳香族アルキレン基。
R5は、炭素数50以下のアルキル基。
上記一般式(1)で表される化合物は、R4-[COOR5]n1基が下記一般式(1-1)のラクトン構造であってもよい。)
【0038】
【0039】
(Rxは、分岐鎖を有していてもよい炭素数2~10の炭化水素基)
【0040】
上記化合物は、不飽和基及びアルキルエステル基の両方を有する化合物であり、以下のアルキルエステル基を有する重合体の原料としても使用することができる。よって、以下の項にて詳述する。
【0041】
更に、下記一般式(2)で表される化合物も、(メタ)アクリロイル基(a)を有する化合物として使用することができる。
【0042】
【化3】
m
1:1~10、
(式中、R
21、R
22,R
23は、同一又は異なって、水素、アルキル基、カルボキシル基、アルキルエステル基又は下記R
24-[OH]
m1で表される構造を表す
R
24は、主鎖の原子数が3以上50以下であり、主鎖中にエステル基、エーテル基、アミド基、ウレタンからなる群より選択される1又は2以上の官能基を有していてもよく、側鎖を有していてもよい脂肪族、脂環族又は芳香族アルキレン基)
【0043】
上記化合物は、不飽和基及び水酸基の両方を有する化合物であり、以下の水酸基を有する重合体の原料としても使用することができる。よって、以下の項にて詳述する。
【0044】
更に、(メタ)アクリロイル基を分子中に有し、粘度が100Pa・s(25℃)以上であるようなものも使用することができる。このような化合物は、分子量としては、数平均分子量が800を超えるものであることが好ましい。
【0045】
このような化合物としては極めて多くの種類のものが知られているが、なかでも、分子中に水酸基を有する芳香族エポキシドの(メタ)アクリルエステルや、分子中にウレタン基を有するウレタンアクリル樹脂(ウレタンプレポリマー)であることが好ましい。より具体的には、例えば、ビスフェノールAジグリシジルエーテルの(メタ)アクリル酸付加物(例えば、共栄社化学社製 エポキシエステル3000A)や、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレートヘキサメチレンジイソシアネートウレタンプレポリマー(例えば、共栄社化学社製 UA-306H、ビスフェノールA PO2mol付加物ジグリシジルエーテルのアクリル酸付加物(例えば、共栄社化学社製 エポキシエステル3002A)、ペンタエリスリトールトリアクリレートトルエンジイソシアネートウレタンプレポリマー(例えば、共栄社化学社製 UA-306T)、ペンタエリスリトールトリアクリレートイソホロンジイソシアネート ウレタンプレポリマー(例えば、共栄社化学社製 UA-306I)、UF-8001G、BPZA-66等を挙げることができる。
【0046】
更に、水酸基を有するビニル系重合体等の各種ポリオール化合物に対して、イソシアネート基と不飽和結合を有する化合物を反応させることで不飽和結合を導入した化合物を使用することができる。
具体的には、
【0047】
【0048】
の反応によって得られる不飽和基含有化合物も使用することができる。
【0049】
上記反応において使用することができるイソシアネート基と重合性不飽和基を有する化合物としては、特に限定されず、例えば、下記一般式(4)で表される化合物等を挙げることができる。
【0050】
【化5】
(式中、R
32は、炭素数1~20の炭化水素基。
R
31は、H又はメチル基)
【0051】
より具体的には、昭和電工株式会社カレンズAOI(登録商標)との商品名で販売されている2-イソシアナトエチルアクリラート等を挙げることができる。
【0052】
上記ポリオール化合物としては特に限定されず、公知のアクリルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリウレタンポリオール、ポリビニルアルコール単位を有する重合体等、各種の水酸基含有の化合物を使用することができる。
【0053】
更に、エポキシ基含有重合体に対して、(メタ)アクリル酸を反応させることによって、不飽和基を導入した化合物も使用することができる。具体的には、
【0054】
【0055】
の反応によって得られる不飽和基含有化合物も使用することができる。
上記反応に使用することができるエポキシ含有化合物としては特に限定されず、ビスフェノール系エポキシエポキシ樹脂、ノボラック系エポキシ樹脂等の各種エポキシ樹脂に加えて、グリシジル(メタ)アクリレートを単量体の一部として含有するアクリル重合体等を挙げることができる。
【0056】
上記一般式(4)(5)で表される重合体は、更に、水酸基及び/又はアルキルエステル基を有するものであってもよい。
【0057】
水酸基(b)、及び/又は、アルキルエステル基(c)を有する化合物
本発明は、加熱によってエステル交換を生じさせることで架橋反応を生じさせるものである。よって、水酸基(b)、及び/又は、アルキルエステル基(c)が必須となる。ここで、本発明の硬化性樹脂組成物において使用することができる(メタ)アクリロイル基並びに水酸基(b)及び/又はアルキルエステル基(c)を有する化合物については上述したとおりである。
従って、以下においては、(メタ)アクリロイル基を有さず、水酸基(b)及び/又はアルキルエステル基(c)を有する化合物について詳述する。
【0058】
本発明におけるアルキルエステル基(c)は、‐COORで表される構造である。式中、Rは炭素数50以下のアルキル基とすることができる。より好ましくは、炭素数20以下であり、更に好ましくは炭素数10以下であり、最も好ましいのは炭素数5以下である。
【0059】
上記アルキルエステル基(c)は、1級、2級、3級のいずれであってもよい。ただし、高反応性(低温硬化性)、水系化、モノマー合成の容易さという観点から、1級又は2級であることが特に好ましい。3級アルキルエステルは、硬化反応性は良好であるものの、発泡による外観不良・物性低下等の問題を生じやすいという欠点がある。
【0060】
以下、本発明において使用できる樹脂、低分子量化合物の例を例示する。本発明は、以下の樹脂、低分子量化合物を使用するものに限定されるものではなく、以下に例示したもの及び上記官能基を有する化合物を適宜必要に応じて組み合わせて使用することができる。
【0061】
(1)不飽和結合の重合によって得られた重合体
アクリル樹脂のような、不飽和結合の重合によって得られた重合体は、塗料や接着剤等の熱硬化性樹脂の分野において汎用される樹脂であり、水酸基やアルキルエステル基を有する単量体を使用すれば、使用した単量体の割合で樹脂中にこれらの官能基が存在するものとなる。このため、樹脂中の官能基量のコントロールや樹脂物性の調整も容易であり、本発明の目的に容易に使用することができる。
特に、水酸基・アルキルエステル基を導入する場合、以下のような単量体(1-1)、(1-2)によって導入することができる。
【0062】
(1-1)水酸基含有単量体
水酸基含有単量体としては、特に限定されず、以下のものを挙げることができる。
2-ヒドロキシエチルビニルエーテル、3-ヒドロキシプロピルビニルエーテル、2-ヒドロキシプロピルビニルエーテル、4-ヒドロキシブチルビニルエーテル、3-ヒドロキシブチルビニルエーテル、2-ヒドロキシ-2-メチルプロピルビニルエーテル、5-ヒドロキシペンチルビニルエーテルもしくは6-ヒドロキシヘキシルビニルエーテルのような、種々の水酸基含有ビニルエーテル類;またはこれら上掲の各種のビニルエーテルと、ε-カプロラクトンとの付加反応生成物;
2-ヒドロキシエチル(メタ)アリルエーテル、3-ヒドロキシプロピル(メタ)アリルエーテル、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アリルエーテル、4-ヒドロキシブチル(メタ)アリルエーテル、3-ヒドロキシブチル(メタ)アリルエーテル、2-ヒドロキシ-2-メチルプロピル(メタ)アリルエーテル、5-ヒドロキシペンチル(メタ)アリルエーテルもしくは6-ヒドロキシヘキシル(メタ)アリルエーテルのような、種々の水酸基含有アリルエーテル;またはこれら上掲の各種のアリルエーテルと、ε-カプロラクトンとの付加反応生成物;
あるいは2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレートもしくはポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレートのような、種々の水酸基含有(メタ)アクリレート類;またはこれら上掲の各種の(メタ)アクリレートと、ε-カプロラクトンの付加反応主成分などである。
【0063】
また、単量体としての水酸基含有単量体は、直接水酸基を有するものではなく、分子数5以上の連結鎖を介して水酸基を有するものとした場合には、水酸基が樹脂中で動きやすくなるため、反応を生じやすいという点で好ましい。
【0064】
(1-2)アルキルエステル基含有単量体
上記アルキルエステル基含有単量体としては、非常に多くの種類のアルキルエステル基及び重合性不飽和結合を有する単量体が知られているが、典型的には、下記一般式で表される化合物を挙げることができる。
【0065】
(1-2-a)
【0066】
【化7】
(式中、R
51,R
52,R
53は、水素、アルキル基、カルボキシル基、アルキルエステル基を表す
R
54は、炭素数50以下の炭化水素基を表す)
【0067】
このような一般式(6)で表される化合物は、(メタ)アクリル酸、クロトン酸、イタコン酸、マレイン酸又はフマル酸等の公知の不飽和カルボン酸のエステル誘導体を挙げることができる。
【0068】
上記一般式(6)で表されるアルキルエステル基及び重合性不飽和結合を有する単量体として最も代表的なものは、(メタ)アクリル酸とアルコールとのエステルであり、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n-プロピル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、sec-ブチル(メタ)アクリレート、t-ブチル(メタ)アクリレートを挙げることができる。
これらのなかでも、架橋の反応性という観点において、t-ブチル(メタ)アクリレート等の3級アルキルエステルが最も好ましい。上述した一般式(6)で表されるような化合物に由来する構成単位においては、1級又は2級アルキルエステルは、エステル交換反応速度が遅いため3級アルキルエステルが最も好ましい。
【0069】
t-ブチル(メタ)アクリレートは、3級アルキルのエステルであることから、エステル交換反応速度が速く、このため硬化反応が効率よく進行する。このため、1級アルキルエステルや2級アルキルエステルよりも架橋反応性に優れ、本発明の目的を達成するエステル基を供与する上で非常に好ましい原料である。
【0070】
また、t-ブチル(メタ)アクリレートを以下で詳述するその他の単量体と共重合させて、Tgを調整してもよい。この場合、Tgを80℃以下とすることが好ましい。
【0071】
但し、このようなt-ブチル(メタ)アクリレートに由来する構造を有する重合体は、硬化性能としては優れた性能を有するものの、硬化時に発泡を生じやすく、これによって、外観の悪化を生じやすい。このため、外観性能が要求される用途においては、上記一般式(6)で表される単量体よりも、以下で詳述する単量体を使用したものがより好ましい。
【0072】
(1-2-b)
1-2-bは、下記一般式(1)で表される単量体を一部又は全部の構成単位とする重合体である。
【0073】
【0074】
n1:1~10
(式中、R1、R2,R3は、同一又は異なって、水素、アルキル基、カルボキシル基、アルキルエステル基又は上記R4-[COOR5]n1で表される構造。
R4は、主鎖の原子数が50以下であり、主鎖中にエステル基、エーテル基、アミド基、ウレタンからなる群より選択される1又は2以上の官能基を有していてもよく、側鎖を有していてもよい脂肪族、脂環族又は芳香族アルキレン基。
R5は、炭素数50以下のアルキル基。
上記一般式(4)で表される化合物は、R4-[COOR5]n1基が下記一般式(1-1)のラクトン構造であってもよい。)
【0075】
【0076】
(Rxは、分岐鎖を有していてもよい炭素数2~10の炭化水素基)
【0077】
上記一般式(1)で表される単量体は、1級又は2級アルキルエステルを有するものであることが好ましい。このような単量体に由来する1級又は2級アルキルエステル基は、水酸基との反応を生じやすく、良好にエステル交換反応を生じさせることができる。
【0078】
このような化合物は、不飽和結合による重合反応によって重合体を得ることができる。このようにして得られた重合体は、エステル交換反応を硬化反応とする硬化性樹脂組成物に使用した場合、不飽和結合の重合に基づいて形成された主鎖と、アルキルエステル基とが連結基を介して離れて存在している。このため、アルキルエステル基が比較的自由に動くことができる。このため、アルキルエステル基と水酸基とが近づきやすくなり、エステル交換の反応性が向上することが本発明者らによって見いだされた。このようにエステル交換反応の反応性が向上することで、短時間硬化や硬化温度の低下を実現することができ、エステル交換反応による硬化性樹脂組成物の有用性を高めることができる。
【0079】
また、上記一般式(1)で表される化合物において、アルキルエステル基がt-ブチルエステル基である場合、加熱硬化時に脱離したt-ブチル基がイソブテンが主成分と推測される気体成分が発生する。これによって、硬化樹脂中に気泡が生じて、外観悪化、強度低下等の種々の問題を生じる場合があることが知られていた。したがって、上記一般式(1)で表される化合物を使用する場合、1級または2級のアルキルエステルを有するものとすることで、このような問題を改善することが好ましい。なお、このような観点から、本発明における組成物は、t-ブチル基を有さないことが好ましいものであるが、上述した問題を生じない範囲でt‐ブチル基を有することは差し支えない。
【0080】
上述した本発明の不飽和基含有エステル化合物を使用すると、硬化中の塗膜粘度が低下することで発泡が抑制され、上述した問題が大幅に改善されると推測される。この点でも本発明は好適な効果を有するものである。
【0081】
上記アルキルエステル基としては特に限定されず、メチルエステル基、エチルエステル基、ベンジルエステル基、n-プロピルエステル基、イソプロピルエステル基、n-ブチルエステル基、イソブチルエステル基、sec-ブチルエステル基等の、公知のエステル基を有するものを使用することができる。なお、アルキル基は炭素数50以下のものとすることが好ましい。上記アルキル基は、エステル交換反応中にアルコールとして生成され、揮散することが好ましいため、アルキル基としては炭素数が20以下のものであることがより好ましく、10以下であることが更に好ましい。また、硬化反応において揮発するアルコールの沸点が300℃以下であることが好ましく、200℃以下であることが更に好ましい。
【0082】
上記アルキルエステル基におけるアルキル基(すなわち、上記一般式におけるR5)は、炭素数が50以下のアルキル基であるが、より好ましくは炭素数1~20の範囲内であり、更に好ましくは、1~10の範囲内であり、更に好ましくは、1~6の範囲内である。最も好ましくは、1~4の範囲内である。このような範囲内とすることで、硬化反応を好適に進行させることができる点で好ましいものである。また、低温硬化性能を得ることや、発泡を低下させるという観点では、1級又は2級のアルキル基であることがより好ましい。
【0083】
また、上記アルキルエステル基がラクトン基となる場合も本発明に包含される。このようなラクトン基のエステル基も本発明のエステル交換反応を生じることができ、硬化反応に利用することができる。このような化合物は上記(1-1)の化学構造を有するものである。
【0084】
上記一般式(1)で表される構造としてより具体的には、例えば、
【0085】
【化10】
n
2:1~10
(式中、R
60は、H又はメチル基。
R
61は、主鎖の原子数が48以下であり、主鎖中にエステル基、エーテル基及び/又はアミド基を有していてもよく、側鎖を有していてもよいアルキレン基。
R
62は、炭素数50以下のアルキル基。)
で表されるものが例示できる。このような化合物は(メタ)アクリル酸の誘導体であり、(メタ)アクリル酸又はその誘導体を原料として使用する公知の合成方法によって得ることができる。
【0086】
上記R61の主鎖の原子数は、40以下であることがより好ましく、30以下であることが更に好ましく、20以下であることが更に好ましい。R61の主鎖に含まれてもよい原子としては特に限定されず、炭素原子のほかに酸素原子、窒素原子、硫黄原子、ケイ素原子等を有するものであってもよい。更に具体的には、R61の主鎖中には、アルキル基のほかにエーテル基、エステル基、アミノ基、アミド基、チオエーテル基、スルホン酸エステル基、チオエステル基、シロキサン基等を有するものであってもよい。
【0087】
上記一般式(7)で表される構造として更に具体的には、例えば、下記一般式(8)で表される化合物等を挙げることができる。
【0088】
【化11】
(式中、R
70は、炭素数1~50のアルキル基。
R
71は、主鎖の原子数が44以下であり、主鎖中にエステル基、エーテル基及び/又はアミド基を有していてもよく、側鎖を有していてもよいアルキレン基。
R
72は、H又はメチル基。
R
73は、炭素数50以下のアルキル基。
R
74は、H又はメチル基。
n
7は、0又は1。
n
8は、1又は2。)
【0089】
上記一般式(8)で表される化合物は、分子中に不飽和結合を有するマロン酸エステルやアセト酢酸エステル等の活性アニオンを生じる化合物と、アルキルエステル基を有する不飽和化合物との反応によって合成された化合物である。
【0090】
すなわち、マロン酸エステルやアセト酢酸エステルは、カルボキシ炭素に挟まれたメチレン基を有しており、このメチレン基はアニオン化されやすく、アニオン反応を容易に生じるものとして広く知られている。このようなマロン酸エステルやアセト酢酸エステルのアルキル基中に不飽和結合を有する化合物(例えば、マロン酸やアセト酢酸と、以下で「水酸基含有単量体」として詳述する水酸基を有する不飽和単量体とのエステル化合物)を、不飽和基を有するアルキルエステル化合物と反応させることによって、不飽和基とアルキルエステル基の両方を有する化合物を合成することができる。
【0091】
このような構造を有する化合物は、広く汎用される原料を用いてアルキルエステル基のみを容易に変更でき、結果、硬化反応性を容易に調整できる。また、活性メチレン基への反応率を変えることでも硬化反応性を調整できるという点で特に好ましいものである。
【0092】
上記反応で使用する「不飽和基を有するアルキルエステル化合物」として使用できる化合物は特に限定されず、(メタ)アクリル酸アルキルエステル、メチレンマロン酸アルキルエステル、不飽和基を有するラクトン化合物(例えば、γ-クロトノラクトン、5,6-ジヒドロ-2H-ピラン-2-オン)等を使用することができる。
【0093】
当該反応は、塩基性条件下で行うことができ、例えば、アルカリ金属塩のクラウンテーテル存在下での有機溶媒中での反応等によって行うことができる。
このような合成反応の一例を以下に示す。
【0094】
【0095】
また、上記一般式(1)で表されるアルキルエステル化合物は、この化合物に対応したカルボン酸のエステル化によって得ることもできる。
すなわち、下記一般式(9)で表されるような化合物は、上記一般式(1)で表されるアルキルエステル化合物に対応したカルボン酸である。
【0096】
【0097】
n1:1~10
(式中、R1、R2,R3は、同一又は異なって、水素、アルキル基、カルボキシル基、アルキルエステル基又は上記R4-[COOR5]n1で表される構造。
R4は、主鎖の原子数が50以下であり、主鎖中にエステル基、エーテル基、アミド基、ウレタンからなる群より選択される1又は2以上の官能基を有していてもよく、側鎖を有していてもよい脂肪族、脂環族又は芳香族アルキレン基。
【0098】
上記一般式(9)で表される化合物として、公知の化合物が存在している。このような公知の化合物を通常のエステル化反応(例えば、目的とするアルキルエステルのアルキル基に対応したアルコールとの反応)を行うことによって、本発明の不飽和基含有エステル化合物とすることもできる。
【0099】
以上に例示した方法で合成することができる化合物の具体的な化学構造の例を以下に示す。なお、本発明は以下で例示する化合物に限定されるものではない。
【0100】
【化14】
(上記一般式中、Rは、炭素数50以下のアルキル基を表す)
【0101】
上記一般式で表される化合物においても、一般式におけるRは、炭素数が50以下のアルキル基であるが、より好ましくは炭素数1~20の範囲内であり、更に好ましくは、1~10の範囲内であり、更に好ましくは、1~6の範囲内である。最も好ましくは、1~4の範囲内である。このような範囲内とすることで、硬化反応を好適に進行させることができる点で好ましいものである。
【0102】
(1-2-b-X)
上記一般式(7)で表される化合物は、下記一般式(31)で表される官能基及び不飽和基を有する化合物であってもよい。
【0103】
【0104】
n=0~20
R1は、炭素数50以下のアルキル基。
R3は、水素又は炭素数10以下のアルキル基。
【0105】
すなわち、一般式(4)で表される化合物において、COOR12基が上記一般式(31)で表されるような構造を有するものであってもよい。
【0106】
上記一般式(31)で表されるエステル基は、理由は不明であるが、エステル交換反応の反応性が高い。このため、当該官能基を有するエステル化合物を樹脂成分の一部又は全部として使用することで、従来以上に優れた硬化性能を有する硬化性樹脂組成物とすることができる。
【0107】
(一般式(31)の構造について)
上記一般式(31)の構造は、α置換カルボン酸エステル骨格を基本とするものである。
一般式(31)において、nは0~20である。
nの下限は、1であることがより好ましい。nの上限は5であることがより好ましい。
更に、上記一般式(31)においてnの値が異なる複数の成分の混合物であってもよい。この場合nの平均値navは、0~5であることが好ましい。navの下限は、1であることがより好ましい。navの上限は3であることがより好ましい。navの測定は、NMR分析によって行うことができる。さらに、nの値についてもNMR分析によって測定することができる。
【0108】
nは、0であってもよいが、0を超える値であるほうが、より反応性が高い水性硬化性樹脂組成物を得ることができる点で好ましい。
すなわち、nが1以上であるほうが、より低い温度での硬化を図ることができ、これによって本発明の効果をより好適に発揮することができる。
【0109】
上記一般式(31)において、R1としては炭素数50以下の任意のアルキル基を使用することができ、1級、2級、3級のいずれであってもよい。
【0110】
上記官能基(31)を有する化合物は、目的とする化合物の構造に対応したカルボン酸又はカルボン酸塩化合物に下記一般式(32)の構造を有するカルボニル基のα位に活性基Xが導入されたエステル化合物を、反応させることで得ることができる。
【0111】
【化16】
(式中、Xは、ハロゲン、水酸基を表す)
【0112】
これを一般式で表すと以下のようになる。
【0113】
【0114】
上記一般式において、一般式(33)で表される原料として使用することができる化合物は、上述した反応を生じることができるカルボン酸又はカルボン酸誘導体であれば任意のカルボン酸に対して行うことができる。カルボン酸誘導体としては、YがOM(カルボン酸塩)、OC=OR(酸無水物)、Cl(酸塩化物)等を挙げることができる。上記Y=OMのカルボン酸塩である場合、カルボン酸塩としてはナトリウム塩、カリウム塩、アミン塩、亜鉛塩等を挙げることができる。なお、重合体の単量体として使用する場合は、不飽和基を有する化合物を一般式(33)で表される化合物として使用することができる。
【0115】
上記一般式(32)で表される化合物としては、目的とする一般式(31)で表される構造に対応した骨格を有する化合物とすることができる。
【0116】
また、上記一般式(32)で表される化合物は、その製造方法を特に限定されるものではない。上記一般式(32)で表される化合物のうち、n=0の化合物は、α位にXで表される活性基を有する化合物であり、各種αヒドロキシ酸、αハロゲン化カルボン酸を挙げることができる。具体的には、クロロ酢酸メチル、クロロ酢酸エチル、ブロモ酢酸メチル、ブロモ酢酸エチル、ブロモ酢酸t-ブチル、2-クロロプロピオン酸メチル、グリコール酸メチル、乳酸メチル、乳酸エチル、乳酸ブチル等を挙げることができる。
【0117】
上記一般式(32)で表される化合物のうち、n=1以上の化合物については、以下にその製造方法の一例を示す。
なお、以下に示す内容は製造方法の一例であり、本発明においては以下の製造方法によって得られた化合物に限定されるものではない。
【0118】
例えば、α位にハロゲンを有するカルボン酸、その塩又はその誘導体と、α位にハロゲン又は水酸基を有するカルボン酸アルキルエステルとの反応によって得ることができる。これを一般式で表すと、下記のようなものとなる。
【0119】
【0120】
α位にハロゲンを有するカルボン酸、その塩又はその誘導体としては、カルボン酸のアルカリ金属塩(カリウム塩、ナトリウム塩等)、酸無水物、酸クロライド等を挙げることができる。上記一般式(34)であらわされる化合物として具体的には、クロロ酢酸ナトリウム等を使用することができる。
【0121】
α位にハロゲン又は水酸基を有するカルボン酸アルキルエステルとしては、クロロ酢酸、ブロモ酢酸、乳酸、等のα置換カルボン酸化合物のアルキルエステルを挙げることができる。上記アルキルエステルのアルキル基は特に限定されず、炭素数1~50のアルキル基であればよい。
このようなアルキル基は、1~3級のいずれであってもよく、具体的にはメチル基、エチル基、ベンジル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、t-ブチル基等を挙げることができる。
【0122】
上記反応においては、X1とX2とを別種のものとすることが好ましい。これらを別種の官能基として反応性が相違するものとし、X1が未反応で残存するよう官能基の組み合わせを選択することが好ましい。具体的には、X1がブロモ基、X2がクロロ基の組み合わせが特に好ましい。
【0123】
また、上記反応において2種の原料の混合比を調整することで,nの値を調整することができる。上記反応においては、一般に相違するnを有する複数種の化合物の混合物として得られる。上記一般式(32)で表される化合物は精製することで、nが特定の値を有するもののみを使用してもよいし、nの値が相違する複数種の化合物の混合物であってもよい。
【0124】
上記一般式(31)で表される化学構造は、上記一般式(32)で表される化合物を、各種カルボン酸化合物と反応させることで形成させることができる。したがって、「カルボン酸基を有する化合物」として、不飽和基を有するカルボン酸を使用すれば、上記一般式(31)で表される官能基及び重合性不飽和基を有する化合物を得ることができる。
【0125】
具体的には例えば、上記一般式(32)で表される化合物を(メタ)アクリル酸と反応させると、下記一般式(36)で表される化合物が得られる。
【0126】
【化19】
(式中、R
1は、炭素数50以下のアルキル基。
R
2は、水素又はメチル基。
R
3は、水素又は炭素数10以下のアルキル基。
nは、1~20)
【0127】
上記一般式(36)で表される化合物におけるR1は、炭素数50以下であれば、1級、2級、3級のいずれであってもよい。但し、1級又は2級であることがより好ましく、1級であることが最も好ましい。
【0128】
(1-2-b-Y)
上記一般式(7)で表される化合物は、下記一般式(41)で表される官能基及び/又は下記一般式(42)で表される官能基、並びに、不飽和基を有する化合物であってもよい。
【0129】
【0130】
【化21】
(上記一般式(41)、一般式(42)のいずれにおいても、R
1は炭素数50以下のアルキル基。
R
2は、一部に、酸素原子、窒素原子を含んでいてもよい炭素数50以下のアルキレン基)
【0131】
すなわち、一般式(4)で表される化合物において、COOR12基が上記一般式(41)で表されるような構造及び/又は一般式(42)で表されるような構造を有するものであってもよい。
【0132】
上記一般式(41)におけるR2基は、一部に、酸素原子、窒素原子を含んでいてもよい炭素数50以下のアルキレン基であり、具体的には、メチレン基、エチレン基、n-プロピレン基、i-プロピレン基、n-ブチレン基、またはベンゼン環、シクロへキシル環のような環状構造を含んでいてもよい(炭素鎖1~50)。なかでも、原料が安価であり、反応性において優れる点でエチレン基であることが特に好ましい。
【0133】
上記一般式(41)で表される構造を有する化合物としては、例えば、下記一般式(43)で表される化合物を挙げることができる。
【0134】
【化22】
(式中、R
1は炭素数50以下のアルキル基。
R
2は、一部に、酸素原子、窒素原子を含んでいてもよい炭素数50以下のアルキレン基。
R
3は、水素又はメチル基。)
【0135】
上記一般式(43)で表されるエステル化合物のうち、下記一般式(45)で表されるエステル化合物がより好ましい。
【0136】
【0137】
上記一般式(41)で表される官能基を有するエステル化合物の製造方法としては特に限定されないが、アルキルエステル基とカルボキシル基とを有する化合物に対して、エポキシ化合物を反応させる方法を挙げることができる。これを一般式で表すと下記のような反応となる。
【0138】
【0139】
上記反応において、使用するアルキルエステル基とカルボキシル基とを有する化合物は、例えば、下記反応のような、酸無水物とアルコールとの反応で製造することができる。
【0140】
【0141】
上記一般式(52)で表される反応における原料である酸無水物としては特に限定されず、例えば、環状構造を持つコハク酸無水物、マレイン酸無水物、フタル酸無水物、ヘキサヒドロフタル酸無水物、メチルヘキサヒドロフタル酸無水物、安息香酸無水物、イタコン酸無水物等の各種二塩基酸の無水物を使用することができる。上記一般式(52)で表される反応は周知の一般的な反応であり、その反応条件などは一般的な条件によって行うことができる。
【0142】
なお、上記一般式(51)で表される合成方法において使用されるアルキルエステル基とカルボキシル基とを有する化合物は、上記一般式(52)の方法で得られたものに限定されず、その他の方法で得られたものであっても差し支えない。
【0143】
上記一般式(51)で表される合成方法においては、エポキシ化合物を必須成分として使用する。上記エポキシ化合物は、不飽和二重結合及びエポキシ基を有するものであれば、特に限定されず、任意のものを使用することができる。
【0144】
上述した反応で使用することができるエポキシ化合物としては、公知の任意のものを挙げることができ、例えば、グリシジルメタクリレート、4-ヒドロキシブチルアクリレートグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル等を挙げることができる。
【0145】
例えば、エピクロルヒドリンを使用すれば、これをフェノール化合物、カルボン酸化合物、水酸基含有化合物等と反応させることで、種々の骨格を有する化合物に対してエポキシ基を導入することができる。このような任意のエポキシ化合物に対して、上述した反応を行うことで、上述した一般式(41)で表される官能基を有する化合物を得ることができる。このような反応の一般式を以下に示す。
【0146】
【0147】
上記カルボキシル基及び不飽和基を有するヒドロキシカルボン酸としては、(メタ)アクリル酸等を挙げることができる。
【0148】
更に、上述したエポキシ化合物は、環状エポキシ化合物であってもよい。
すなわち、環状エポキシ化合物をエポキシ化合物として使用した場合、下記反応によって、一般式(52)で表される構造を有する化合物を得ることができる。
【0149】
【0150】
上述した一般式に使用することができる脂環式エポキシ化合物としては、3,4-エポキシシクロヘキシルメチルメタクリレート、3´,4´-エポキシシクロヘキシルメチル 3,4-エポキシシクロヘキサンカルボキシレート等を挙げることができる。
【0151】
上述した下記一般式(41)で表される官能基及び/又は下記一般式(42)で表される化合物、並びに、不飽和基を有する化合物の具体的なものとしては、以下の一般式で表される化合物などを挙げることができる。
【0152】
【0153】
以上に例示した方法で合成することができる一般式(4)で表される化合物の具体的な化学構造の例を以下に示す。なお、本発明は以下で例示する化合物に限定されるものではない。
【0154】
【化29】
(上記一般式中、Rは、炭素数50以下のアルキル基を表す)
【0155】
上記一般式で表される化合物においても、一般式におけるRは、炭素数が50以下のアルキル基であるが、より好ましくは炭素数1~20の範囲内であり、更に好ましくは、1~10の範囲内であり、更に好ましくは、1~6の範囲内である。最も好ましくは、1~4の範囲内である。このような範囲内とすることで、硬化反応を好適に進行させることができる点で好ましいものである。また、1級又は2級のアルキル基であることが最も好ましい。
【0156】
(1-3)その他の単量体
本発明において使用される重合体は、上記(1-1)、(1-2)に示した単量体のみからなるホモポリマー、共重合体とすることもできるし、その他の単量体を使用した共重合体とすることもできる。
上記重合体において使用可能なその他のモノマーとしては特に限定されず、重合可能な不飽和基を有する単量体であれば任意のものを使用することができる。使用できる単量体を以下に例示する。
【0157】
エチレン、プロピレンもしくはブテン-1のような、種々のα-オレフィン類;
塩化ビニルもしくは塩化ビニリデンのような、フルオロオレフィンを除く、種々のハロゲン化オレフィン類;
スチレン、α-メチルスチレンもしくはビニルトルエンのような、種々の芳香族ビニル化合物;N-ジメチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、N-ジエチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、N-ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミドもしくはN-ジエチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミドのような、種々のアミノ基含有アミド系不飽和単量体;
ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレートもしくはジエチルアミノエチル(メタ)アクリレートのような、種々のジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリレート類;tert-ブチルアミノエチル(メタ)アクリレート、tert-ブチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、アジリジニルエチル(メタ)アクリレート、ピロリジニルエチル(メタ)アクリレートもしくはピペリジニルエチル(メタ)アクリレートのような、種々のアミノ基含有単量体;
(メタ)アクリル酸、クロトン酸、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、メタクリロイルオキシエチルコハク酸のような、種々のカルボキシル基含有単量体類;グリシジル(メタ)アクリレート、β-メチルグリシジル(メタ)アクリレートもしくは(メタ)アリルグリシジルエーテルのような、種々のエポキシ基含有単量体;マレイン酸、フマル酸もしくはイタコン酸のような、各種のα、β-不飽和ジカルボン酸と、炭素数が1~18である一価アルコールとのモノ-ないしはジエステル類;
ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリプロポキシシラン、ビニルメチルジエトキシシラン、ビニルトリス(β-メトキシエトキシ)シラン、アリルトリメトキシシラン、トリメトキシシリルエチルビニルエーテル、トリエトキシシリルエチルビニルエーテル、メチルジメトキシシリルエチルビニルエーテル、トリメトキシシリルプロピルビニルエーテル、トリエトキシシリルプロピルビニルエーテル、メチルジエトキシシリルプロピルビニルエーテル、γ-(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、γ-(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリエトキシシランもしくはγ-(メタ)アクリロイルオキシプロピルメチルジメトキシシランのような、種々の加水分解性シリル基を含有する単量体;
ふっ化ビニル、ふっ化ビニリデン、トリフルオロエチレン、テトラフルオロエチレン、クロロトリフルオロエチレン、ブロモトリフルオロエチレン、ペンタフルオロプロピレンもしくは、ヘキサフルオロプロピレンのような、種々のふっ素含有α-オレフィン類;またはトリフルオロメチルトリフルオロビニルエーテル、ペンタフルオロエチルトリフルオロビニルエーテルもしくはヘプタフルオロプロピルトリフルオロビニルエーテルのような、各種のパーフルオロアルキル・パーフルオロビニルエーテルないしは(パー)フルオロアルキルビニルエーテル(ただし、アルキル基の炭素数は1~18の範囲内であるものとする。)などのような種々のフッ素原子含有単量体;
メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、n-プロピルビニルエーテル、イソプロピルビニルエーテル、n-ブチルビニルエーテル、イソブチルビニルエーテル、tert-ブチルビニルエーテル、n-ペンチルビニルエーテル、n-ヘキシルビニルエーテル、n-オクチルビニルエーテル、2-エチルヘキシルビニルエーテル、クロロメチルビニルエーテル、クロロエチルビニルエーテル、ベンジルビニルエーテルもしくはフェニルエチルビニルエーテルのような、種々のアルキルビニルエーテルないしは置換アルキルビニルエーテル類;
シクロペンチルビニルエーテル、シクロヘキシルビニルエーテルもしくはメチルシクロヘキシルビニルエーテルのような、種々のシクロアルキルビニルエーテル類;ビニル-2,2-ジメチルプロパノエート、ビニル-2,2-ジメチルブタノエート、ビニル-2,2-ジメチルペンタノエート、ビニル-2,2-ジメチルヘキサノエート、ビニル-2-エチル-2-メチルブタノエート、ビニル-2-エチル-2-メチルペンタノエート、ビニル-3-クロロ-2,2-ジメチルプロパノエートなどをはじめ、さらには、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル、イソ酪酸ビニル、カプロン酸ビニル、カプリル酸ビニル、カプリン酸ビニルもしくはラウリン酸ビニル、C9 である分岐脂肪族カルボン酸ビニル、C10である分岐脂肪族カルボン酸ビニル、C11である分岐脂肪族カルボン酸ビニルまたはステアリン酸ビニルのような、種々の脂肪族カルボン酸ビニル;あるいはシクロヘキサンカルボン酸ビニル、メチルシクロヘキサンカルボン酸ビニル、安息香酸ビニルもしくはp-tert-ブチル安息香酸ビニルのような、環状構造を有するカルボン酸のビニルエステル類などを挙げることができる。
【0158】
本発明においては、上述した(1-1)~(1-3)の各種単量体を必要に応じて組み合わせ、重合させることによって、アルキルエステル基と水酸基の両方を有する化合物、アルキルエステル基を有する化合物、水酸基を有する化合物とすることができる。更に、水溶化するために必要とされる上述した官能基も、目的に応じて必要な割合で組み合わせて樹脂中に導入することができる。
【0159】
上記重合体は、その製造方法を特に限定されるものではなく、公知の方法により重合することによって製造することができる。より具体的には、有機溶媒中での溶液重合法、水中での乳化重合法、水中でのミニエマルション重合法、水溶液重合法、懸濁重合法、UV硬化法、等の重合方法を挙げることができる。
【0160】
また有機溶媒中での溶液重合を行った場合、その後、公知の操作を行って水性化することによって、本発明の硬化性樹脂組成物に使用できる形態としたものであってもよい。
【0161】
カルボキシル基含有単量体に由来する構成単位を有する重合体を使用すると、これを中和することで、水に溶解可能な重合体とすることができる。このため、プリント配線基板、
ディスプレイ用の光学フィルム、各種電池等における画像層の形成工程において使用すると、樹脂の一部をマスクした状態でエネルギー線照射を行った後、未硬化部の樹脂を水による洗浄で除去することができる点で好ましいものである。
【0162】
このような処理に際しては、カルボキシル基含有単量体に由来する構成単位を、4~35モル%の割合で含有する重合体を使用することができる。更に、樹脂を塩基性化合物で中和した状態で使用するものであってもよいし、樹脂の硬化を行った後、塩基性化合物の水溶液中に浸漬し、その後、純水による洗浄を行ってもよい。塩基性化合物としては特に限定されず、水酸化テトラエチルアンモニウム、水酸化テトラプロピルアンモニウム、水酸化テトラブチルアンモニウム、水酸化ベンジルトリメチルアンモニウム、ジメチルエタノールアミン、エチルアミン、ジエチルアミン、アンモニア水、コリン、ピロール、ピペリジン、1 , 8 - ジアザビシクロ- [ 5 , 4 , 0 ] - 7 - ウンデセン、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、硅酸ナトリウム、メタ硅酸ナトリウム等を挙げることができる。塩基性化合物の水溶液中に浸漬する場合の塩基性化合物濃度は、0.001~10質量%、好ましくは0.01~1質量%である。塩基性水溶液には、例えばメタノール、及びエタノール等の水溶性有機溶剤や界面活性剤等を併用し、適量添加することもできる。
【0163】
上記酸基を有する単量体としては、下記一般式で表される化合物を使用することがより好ましい。
【0164】
【0165】
(式中、R101、R102,R103は、同一又は異なって、水素、アルキル基、カルボキシル基、アルキルエステル基又は下記R104-COOHで表される構造。
R104は、主鎖の原子数が50以下であり、主鎖中にエステル基、エーテル基、アミド基、ウレタンからなる群より選択される1又は2以上の官能基を有していてもよく、側鎖を有していてもよい脂肪族、脂環族又は芳香族アルキレン基。)
【0166】
上記化合物を使用すると、酸基が存在することによるエステル交換反応への悪影響を生じることがなく、良好な硬化性を維持できる点で特に好ましい。
【0167】
上記化合物としては、
【0168】
【化31】
(式中、R
105は、H又はメチル基。
R
106は、主鎖の原子数が48以下であり、主鎖中にエステル基、エーテル基及び/又はアミド基を有していてもよく、側鎖を有していてもよいアルキレン基。)
で表される(メタ)アクリル酸誘導体であることが更に好ましい。このような化合物としてより具体的には、2-メタクリロイルオキシエチルコハク酸や2-アクリロイルオキシブチルコハク酸等を挙げることができる。
【0169】
上記重合体においてこのような酸基は、樹脂酸価が5~200の範囲となるように導入することが好ましい。上記酸価の下限は10であることが好ましく、15であることが更に好ましい。上記酸価の上限は120であることが好ましく、80であることが更に好ましい。酸価が低い場合、中和を行っても水への溶解が難しくなる場合がある。酸価が高すぎる場合は高粘度となりハンドリング性などに問題を生じる場合がある。
【0170】
上記アミン化合物としては、例えば、トリエチルアミン、トリブチルアミン、ジメチルエタノールアミン、トリエタノールアミン等の3級アミン;ジエチルアミン、ジブチルアミン、ジエタノールアミン、モルホリン等の2級アミン;プロピルアミン、エタノールアミン、ジメチルエタノールアミン等の1級アミン;アンモニアなどの4級アンモニウム等を挙げることができる。
【0171】
上記アミン化合物は特に限定されないが、3級アミンが望ましい。アンモニアの場合、焼き付け後の黄変性や、1級、2級アミンの場合、カルボン酸との反応が並行しておこる点で好ましくない。
【0172】
上記アミン化合物を使用する場合の使用量は、上記不飽和カルボン酸又は酸無水物変性ポリオレフィン中のカルボキシル基に対して通常0.1~1.5モル当量の範囲内であることが好ましい。
【0173】
上述した方法で水性化する場合、通常の溶液重合等の方法で樹脂を得た後、水及びアミン化合物を添加して撹拌することによって、行うことができる。
【0174】
また、上述した単量体を含む組成物を重合させることによって得られた重合体の側鎖官能基を反応させることによって、側鎖に水酸基及び/又はアルキルエステル基を導入したものであってもよい。側鎖への反応としては特に限定されず、エステル交換、イシアネートとの反応、エポキシとの反応、付加反応、加水分解、脱水縮合、置換反応等を挙げることができる。
【0175】
上記重合体の分子量は特に限定されるものではなく、例えば、重量平均分子量が3,000~300,000とすることができる。上記重量平均分子量の上限は、100,000であることがより好ましく、50,000であることが更に好ましく、30,000であることが更に好ましい。上記重量平均分子量の下限は、4,000であることがより好ましく、5,000であることが更に好ましい。
【0176】
(2)ポリエステルポリオール
ポリエステルポリオールは、通常、酸成分とアルコール成分とのエステル化反応又はエステル交換反応によって製造することができる。
上記酸成分としては、ポリエステル樹脂の製造に際して、酸成分として通常使用される化合物が挙げられる。上記酸成分としては、例えば、脂肪族多塩基酸、脂環族多塩基酸、芳香族多塩基酸等、並びにそれらの無水物及びエステル化物を挙げることができる。
【0177】
また、ポリエステル樹脂としては、プロピレンオキサイド及びブチレンオキサイド等のα-オレフィンエポキシド、カージュラE10(ジャパンエポキシレジン社製、商品名、合成高分岐飽和脂肪酸のグリシジルエステル)等のモノエポキシ化合物等をポリエステル樹脂の酸基と反応させたものであってもよい。
【0178】
また、ポリエステル樹脂は、ウレタン変性されたものであってもよい。
【0179】
該ポリエステル樹脂は、3000~100000、好ましくは5000~30000の範囲内の重量平均分子量を有することができる。かかるポリエステル樹脂の重量平均分子量は、上記アクリル樹脂の重量平均分子量と同様の方法にて測定することができる。
【0180】
上記脂肪族多塩基酸並びにそれらの無水物及びエステル化物としては、一般に、1分子中に2個以上のカルボキシル基を有する脂肪族化合物、上記脂肪族化合物の酸無水物及び上記脂肪族化合物のエステル化物、例えば、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ウンデカン二酸、ドデカン二酸、ブラシル酸、オクタデカン二酸、クエン酸、ブタンテトラカルボン酸等の脂肪族多価カルボン酸;上記脂肪族多価カルボン酸の無水物;上記脂肪族多価カルボン酸の炭素数約1~約4の低級アルキルのエステル化物等、並びにそれらの任意の組み合わせが挙げられる。
上記脂肪族多塩基酸としては、得られる塗膜の平滑性の観点から、アジピン酸及び/又はアジピン酸無水物であることが好ましい。
【0181】
上記脂環族多塩基酸、並びにそれらの無水物及びエステル化物は、一般に、1分子中に1個以上の脂環式構造と2個以上のカルボキシル基とを有する化合物、上記化合物の酸無水物及び上記化合物のエステル化物が挙げられる。脂環式構造は、主として4~6員環構造である。上記脂環族多塩基酸、並びにそれらの無水物及びエステル化物としては、例えば、1,2-シクロヘキサンジカルボン酸、1,3-シクロヘキサンジカルボン酸、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸、4-シクロヘキセン-1,2-ジカルボン酸、3-メチル-1,2-シクロヘキサンジカルボン酸、4-メチル-1,2-シクロヘキサンジカルボン酸、1,2,4-シクロヘキサントリカルボン酸、1,3,5-シクロヘキサントリカルボン酸等の脂環族多価カルボン酸;上記脂環族多価カルボン酸の無水物;上記脂環族多価カルボン酸の炭素数約1~約4の低級アルキルのエステル化物等、並びにそれらの任意の組み合わせが挙げられる。
【0182】
上記脂環族多塩基酸、並びにそれらの無水物及びエステル化物としては、得られる塗膜の平滑性の観点から、1,2-シクロヘキサンジカルボン酸、1,2-シクロヘキサンジカルボン酸無水物、1,3-シクロヘキサンジカルボン酸、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸、4-シクロヘキセン-1,2-ジカルボン酸、4-シクロヘキセン-1,2-ジカルボン酸無水物が好ましく、そして1,2-シクロヘキサンジカルボン酸及び/又は1,2-シクロヘキサンジカルボン酸無水物がより好ましい。
【0183】
上記芳香族多塩基酸、並びにそれらの無水物及びエステル化物は、一般に、1分子中に2個以上のカルボキシル基を有する芳香族化合物、上記芳香族化合物の酸無水物及び上記芳香族化合物のエステル化物であり、例えば、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、4,4'-ビフェニルジカルボン酸、トリメリット酸、ピロメリット酸等の芳香族多価カルボン酸;上記芳香族多価カルボン酸の無水物;上記芳香族多価カルボン酸の炭素数約1~約4の低級アルキルのエステル化物等、並びにそれらの任意の組み合わせが挙げられる。
上記芳香族多塩基酸、並びにそれらの無水物及びエステル化物としては、フタル酸、無水フタル酸、イソフタル酸、トリメリット酸、及び無水トリメリット酸が好ましい。
【0184】
また、上記酸成分として、上記脂肪族多塩基酸、脂環族多塩基酸及び芳香族多塩基酸以外の酸成分、例えば、ヤシ油脂肪酸、綿実油脂肪酸、麻実油脂肪酸、米ぬか油脂肪酸、魚油脂肪酸、トール油脂肪酸、大豆油脂肪酸、アマニ油脂肪酸、桐油脂肪酸、ナタネ油脂肪酸、ヒマシ油脂肪酸、脱水ヒマシ油脂肪酸、サフラワー油脂肪酸等の脂肪酸;ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、安息香酸、p-tert-ブチル安息香酸、シクロヘキサン酸、10-フェニルオクタデカン酸等のモノカルボン酸;乳酸、3-ヒドロキシブタン酸、3-ヒドロキシ-4-エトキシ安息香酸等のヒドロキシカルボン酸等、並びにそれらの任意の組み合わせが挙げられる。
【0185】
上記アルコール成分としては、1分子中に2個以上の水酸基を有する多価アルコール、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、トリメチレングリコール、テトラエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、1,4-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、2,3-ブタンジオール、1,2-ブタンジオール、2-メチル-1,3-プロパンジオール、3-メチル-1,2-ブタンジオール、1,1,1-トリメチロールプロパン、2-ブチル-2-エチル-1,3-プロパンジオール、1,2-ペンタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,4-ペンタンジオール、2,4-ペンタンジオール、2,3-ジメチルトリメチレングリコール、テトラメチレングリコール、3-メチル-4,3-ペンタンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、2,2,4-トリメチル-1,3-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,5-ヘキサンジオール、1,4-ヘキサンジオール、2,5-ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、トリシクロデカンジメタノール、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールエステル、水添ビスフェノールA、水添ビスフェノールF、ジメチロールプロピオン酸等の2価アルコール;上記2価アルコールにε-カプロラクトン等のラクトン化合物を付加したポリラクトンジオール;ビス(ヒドロキシエチル)テレフタレート等のエステルジオール化合物;ビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリブチレングリコール等のポリエーテルジオール化合物;グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ジグリセリン、トリグリセリン、1,2,6-ヘキサントリオール、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、トリス(2-ヒドロキシエチル)イソシアヌル酸、ソルビトール、マンニット等の3価以上のアルコール;上記3価以上のアルコールにε-カプロラクトン等のラクトン化合物を付加させたポリラクトンポリオール化合物;グリセリンの脂肪酸エステル化物等が挙げられる。
【0186】
また、上記アルコール成分として、上記多価アルコール以外のアルコール成分、例えば、メタノール、エタノール、プロピルアルコール、ブチルアルコール、ステアリルアルコール、2-フェノキシエタノール等のモノアルコール;プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイド、「カージュラE10」(商品名、HEXIONSpecialtyChemicals社製、合成高分岐飽和脂肪酸のグリシジルエステル)等のモノエポキシ化合物と酸とを反応させて得られたアルコール化合物等が挙げられる。
【0187】
ポリエステルポリオールは、特に限定されず、通常の方法に従って製造されうる。例えば、上記酸成分とアルコール成分とを、窒素気流中、約150~約250℃で、約5~約10時間加熱し、上記酸成分とアルコール成分とのエステル化反応又はエステル交換反応を実施することにより、ポリエステルポリオールを製造することができる。
【0188】
(3)活性メチレン基を有する化合物と、ビニル基との付加反応によって得られる化合物
下記一般式(10)で表される活性メチレン基を有する化合物は、ビニル基との付加反応を生じる。
【0189】
【0190】
(式中、R81はアルキル基を表す。
Xは、OR81基又は炭素数5以下の炭化水素基を表す。なお1分子中に2のR81が存在する場合、これらのR81は同一であっても相違するものであってもよい。)
【0191】
上記R81はその構造を特に限定されるものではないが、メチルエステル基、エチルエステル基、ベンジルエステル基、n-プロピルエステル基、イソプロピルエステル基、n-ブチルエステル基、イソブチルエステル基、sec-ブチルエステル基等の、公知のエステル基を有するものを使用することができる。
【0192】
このような活性メチレン基を有する化合物として具体的には、マロン酸エステル及びアセト酢酸エステル等を挙げることができる。これらの化合物をビニル化合物に付加させて得られた化合物を使用することができる。
【0193】
活性メチレン基を有する化合物は、マイケル付加反応によって二重結合に付加することができる。このような活性メチレン基を有する化合物による一般的なマイケル付加反応を下記式で示す。
【0194】
【0195】
上記反応においては、活性メチレン基の2つの水素の両方がマイケル反応を生じることによって、下記一般式(12)で表される化合物を得ることもできる。
【0196】
【0197】
このような反応によって得られた化合物は、一般式(11)で表される構造及び/又は一般式(12)で表される構造を有するものであり、これは2以上のアルキルエステル基を有する化合物であることから、本発明の目的において特に好適に使用することができる。
【0198】
特に、上記一般式のビニル化合物として、(メタ)アクリル酸又はその誘導体を使用した場合は、
【0199】
【0200】
との反応を生じることとなる。
上記一般式中、R81は、炭素数50以下のアルキル基を示す。
R2は、水素又はメチル基を示す。
R86は、特に限定されず、目的に応じて任意の官能基とすることができる。
【0201】
上記反応においては、活性メチレン基の2つの水素の両方がマイケル反応を生じることによって、下記一般式(9)で表される化合物を得ることもできる。
【0202】
【0203】
上記一般式(13)(14)で表される化合物は、原料の配合において(メタ)アクリル酸エステルと活性メチレン化合物とのモル比を調製することによって得ることができる。更に、これらのモル比を調製することで、上記一般式(13)で表される化合物と上記一般式(14)で表される化合物との混合物として得ることもできる。
このような反応によって得られたエステル化合物は、
【0204】
【0205】
の構造で表される構成単位を分子中に有することとなる。
【0206】
上述した反応において、原料として、2以上の不飽和結合を有するアクリル酸誘導体を使用することで、上述した一般式で表される構造(15)及び/又は(16)で表される構造を分子中に2以上有するエステル化合物とすることもできる。
すなわち、当該官能基を有する、
【0207】
【0208】
の一般式で表される構造を有する化合物を本発明において好適に使用することができる。このような化合物は、エステル交換反応性が高く、多くのCOOR基を分子中に有するために良好な硬化性を得ることができる点で好ましいものである。
上記一般式におけるn3,n4は、2~12であることが最も好ましい。また、L,Mは、当該化合物の分子量が3000以下となるような構造であれば特に限定されえず、水酸基、エステル基、エーテル基、等の任意の官能基を有していてもよい炭化水素基を表す。
【0209】
また、上記「活性メチレン基を有する化合物と、ビニル基との付加反応によって得られる化合物」は、一分子中に2以上の不飽和結合を有する化合物を原料とするものを使用し、上記一般式(17)で表される構造及び/又は一般式(18)で表される構造を一分子中に2以上有するものであってもよい。
【0210】
活性メチレン基を有する化合物エステルに由来する構造を有する化合物は、多く知られているが、上記構造を有する化合物は、マロン酸エステルまたはアセト酢酸エステルとビニル基の付加反応が進行し易く、合成が容易であり、出発原料を選ぶことでエステル基の数を調整できるため、硬化性能や硬化後の樹脂の性能を容易に調整できるという点で特に好ましい。
具体的には、マロン酸ジメチル、マロン酸ジエチル、マロン酸ジn-ブチル、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル等を好適に使用することができる。
【0211】
このような化合物は、各種の2以上の不飽和結合を有する(メタ)アクリル酸誘導体を原料として、活性メチレン基を有する化合物とのマイケル付加反応を行うことで得られるものである。上記「1以上の不飽和結合を有する(メタ)アクリル酸誘導体」としては特に限定されるものではないが、例えば、以下のようなものを挙げることができる。
【0212】
官能基数1の(メタ)アクリレートの例は、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、iso-ブチル(メタ)アクリレート、sec-ブチル(メタ)アクリレート、t-ブチル(メタ)アクリレート等を挙げることができる。
【0213】
官能基数2の(メタ)アクリレートの例は、1,4-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,3-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9-ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、1,10-デカンジオールジ(メタ)アクリレート、グリセリンジ(メタ)アクリレート、ジメチロールートリシクロデカンジ(メタ)アクリレート(DCP-A)、ビスフェノールAのEO付加物ジアクリレート(共栄社化学社製;ライトアクリレートBP-4EA、BP-10EA)ビスフェノールAのPO付加物ジアクリレート(共栄社化学社製;BP-4PA、BP-10PA等)を含む。なかでも、ビスフェノールAのPO付加物ジアクリレート(共栄社化学社製;BP-4PA)、ジメチロールートリシクロデカンジ(メタ)アクリレート(DCP-A)等を好ましく用いることができる。
【0214】
官能基数3の(メタ)アクリレートの例は、トリメチロールメタントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンエチレンオキサイド変性トリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンプロピレンオキサイド変性トリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、グリセリンプロポキシトリ(メタ)アクリレート、トリス(2-(メタ)アクリロイルオキシエチル)イソシアヌレート等を含む。なかでも、トリメチロールプロパントリメタクリレート、ペンタエリスリトールトリメタクリレート等を好ましく用いることができる。
【0215】
官能基数4の(メタ)アクリレートの例は、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールエチレンオキサイド変性テトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールプロピレンオキサイド変性テトラ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート等を含む。なかでも、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート等を好ましく用いることができる。
【0216】
官能基数4以上の(メタ)アクリレートの例は、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールエチレンオキサイド変性テトラ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンペンタ(メタ)アクリレート、プロピオン酸変性ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンヘキサ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールのカプロラクトン変性物のヘキサ(メタ)アクリレートなど多官能性(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0217】
上述したような化合物に該当する化合物の具体例を以下に示す。
【0218】
【0219】
【0220】
式中Rは同一または異なるアルキル基を表す。n5は1から10を表す。
【0221】
上記化合物は、架橋点となるアルキルエステルが分子中に3以上存在するものであることが好ましい。すなわち、分子中のアルキルエステル基の数が多いほど、硬化後の樹脂の架橋密度が高いものとなるため、硬化物の硬度が良好となり、優れた物性の硬化物が得られる点で好ましい。
アルキルエステルは、分子中に5以上あることがより好ましい。
【0222】
(4)活性メチレン基を有する化合物とハロゲン含有化合物との反応によって得られた化合物
これによって得られた化合物もまた、本発明において好適に使用することができる。特に、エステル基のカルボニル炭素が直接ハロゲン化された化合物を挙げることができる。ハロゲンとしては特に限定されず、塩素、臭素、ヨウ素等を挙げることができる。
このような化合物としては、以下の一般式(15)で表される反応式によって得られる化合物を挙げることができる。
【0223】
【化41】
R
1、R
2は炭素数50以下の1級又は2級アルキル基(R
1とR
2は同一でも良い)、Xは炭素数5以下の炭化水素基又は-OR
1基、Yはハロゲン、nは1又は2
【0224】
上述したような活性メチレン基を有する化合物の誘導体として得られる化合物に該当する化合物の具体例を以下に示す。
【0225】
【0226】
(5)一般式(31)で表される官能基を2以上有する化合物
上述した一般式(31)で表される官能基を2以上有する化合物も本発明において使用することができる。
【0227】
一般式(31)で表される官能基については、詳細に上述した。このような官能基は、一般式(32)で表される化合物を、カルボン酸と反応させることによって形成される。したがって、各種の公知のポリカルボン酸を上述した一般式(32)で表される化合物と反応させると、上記一般式(31)で表される官能基を2以上有する化合物を得ることができる。さらに、水酸基を有するヒドロキシカルボン酸と反応させると、水酸基及び一般式(32)を有する化合物となり、これもまた、エステル交換による硬化反応を行う水性硬化性樹脂組成物の成分として使用することができる。
【0228】
上記化合物は、本発明の水性硬化性樹脂組成物において使用するには、2以上の官能基を有する化合物であることが好ましく、2以上のカルボキシル基を有するポリカルボン酸、カルボキシル基及び水酸基を有するヒドロキシカルボン酸等を使用することができる。
【0229】
各種のポリカルボン酸は、ポリエステル原料、ポリアミド原料、中和剤、合成原料その他の多くの用途において幅広く安価に提供される汎用原料である。このようなポリカルボン酸を公知の方法によって上述した一般式(32)で表される官能基に変換した化合物も本発明において使用することができる。
【0230】
このような化合物を一般式(32)で表される官能基を有する化合物として使用すると、公知の方法で安価にエステル化することができ、比較的低分子量で多価エステル基を導入することができる。また、エステル化することで有機溶剤への相溶性が良くなり好適に使用することができるという点で好ましい。
【0231】
ここで使用するポリカルボン酸としては特に限定されず、例えば、炭素数が50以下のものを使用することができる。
より具体的には、上記「(4)多官能カルボン酸のアルキルエステル化物」の原料として例示した多官能カルボン酸を挙げることができる。
【0232】
上記ポリカルボン酸のカルボン酸基を上記一般式(31)で表される構造に置換した化合物は、分子量が10000以下であることが好ましい。このようなものとすることで、分子が動きやすく硬化が進行する点で好ましいものである。分子量は6000以下、4000以下、2000以下といった、より低分子量のものとすることもできる。
【0233】
なお、このような化合物の一例として、ポリカルボン酸としてクエン酸を使用して、上述した反応を行った場合の化合物の一般構造を以下に示す。
【0234】
【化43】
式中Rは、炭素数50以下のアルキル基を表す。
【0235】
(6)一般式(41)で表される官能基及び/又は一般式(42)で表される官能基を2以上有する化合物
一般式(41)で表される官能基及び/又は一般式(42)で表される官能基を有する化合物は、上述したような製造方法によって得ることができる。
このような官能基を2以上有する化合物や、このような官能基及び水酸基を有する化合物は、エステル交換反応を硬化反応とする樹脂組成物の成分として好適に使用することができる。
【0236】
一般式(41)で表される官能基及び/又は一般式(42)で表される官能基を有する化合物は、硬化性樹脂組成物における硬化性官能基として使用するものである。したがって、2以上の官能基を有する化合物であることが好ましい。より具体的には、上記一般式(41)で表される官能基及び/又は一般式(42)で表される官能基を2以上有するものであってもよいし、上述した一般式(41)で表される官能基及び/又は一般式(42)で表される官能基で表される官能基に加えて、更に、水酸基等を有するものであってもよい。
【0237】
上述したように、各種エポキシ化合物に対して、一般式(51)で表される反応又は一般式(54)で表される反応を行うことによって、上記一般式(41)で表される官能基及び/又は一般式(42)で表される官能基を導入することができる。
したがって、公知のエポキシ化合物に対して、上記一般式(54)で表される反応を行うことで得られた化合物も、本発明において使用することができる。
このような反応に使用することができるエポキシ化合物としては、特に限定されるものではないが、例えば、脂肪族系多官能液状エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールの誘導体エポキシ樹脂、ナフタレン骨格又は脂環式骨格含有ノボラック系エポキシ樹脂等が挙げられ、オキシラン環がグリシジルエーテルであるエポキシ樹脂などを挙げることができる。
上記エポキシ化合物は、1分子中に2以上のエポキシ基を有する化合物であることが好ましい。
【0238】
更に、上述したようにカルボン酸又はその誘導体に対して一般式(53)で表される反応を行うことによって、エポキシ化合物を得ることができる。
そして、当該エポキシ化合物に対して、上記一般式(51)で表される反応を行うことで、一般式(41)で表される官能基及び/又は一般式(42)で表される官能基を有する化合物を得ることができる。
したがって、各種のポリカルボン酸やヒドロキシカルボン酸に対して上述した反応を行うことによって、このような官能基を2以上有する化合物や、このような官能基及び水酸基を有する化合物を得ることができる。
【0239】
上記反応によって一般式(41)で表される官能基及び/又は一般式(42)で表される官能基を有する化合物とする際の原料とすることができるポリカルボン酸としては、特に限定されず例えば、炭素数が50以下のものを使用することができる。
より具体的には、上記「(4)多官能カルボン酸のアルキルエステル化物」の原料として例示した多官能カルボン酸を挙げることができる。
更に、上記一般式(41)で表される構造の場合は、水酸基及びアルキルエステル基の両方を有する化合物が得られるため、ヤシ油脂肪酸、綿実油脂肪酸、麻実油脂肪酸、米ぬか油脂肪酸、魚油脂肪酸、トール油脂肪酸、大豆油脂肪酸、アマニ油脂肪酸、桐油脂肪酸、ナタネ油脂肪酸、ヒマシ油脂肪酸、脱水ヒマシ油脂肪酸、サフラワー油脂肪酸等の脂肪酸;ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、安息香酸、p-tert-ブチル安息香酸、シクロヘキサン酸、10-フェニルオクタデカン酸等のモノカルボン酸も使用することができる。
【0240】
上記反応によって一般式(41)で表される官能基及び/又は一般式(42)で表される官能基を有する化合物とする際の原料とすることができるカルボキシル基及び水酸基を有するヒドロキシカルボン酸としては、グリコール酸、クエン酸、乳酸、3-ヒドロキシブタン酸、3-ヒドロキシ-4-エトキシ安息香酸等のヒドロキシカルボン酸;
等を挙げることができる。
【0241】
このような化合物の具定例として、例えば、以下に表すような構造を有する化合物を挙げることができる。
【0242】
【化44】
式中Rは、炭素数50以下のアルキル基を表す。
【0243】
(7)シアヌル酸系エステル化合物
本発明において使用されるアルキルエステル基を有するエステル化合物として、例えば、以下に例示したシアヌル酸系エステル化合物を挙げることができる。
【0244】
その1つは、下記一般式(61)で表されるイソシアヌル酸環を有するエステル化合物である。
【0245】
【化45】
(式中、R
1は、水素又はR
2-COOR
3で表される構造。
R
2は、主鎖の原子数が50以下であり、主鎖中にエステル基、エーテル基、アミド基、ウレタンからなる群より選択される1又は2以上の官能基を有していてもよく、側鎖を有していてもよい炭化水素基。
R
3は、炭素数50以下のアルキル基。)
【0246】
上記一般式(61)で表されるエステル化合物は、2又は3のアルキルエステル基を有するものであり、エステル交換反応性において特に優れるものとすることができる。このため、硬化開始温度が130℃以下であり、150℃30分焼付という条件で硬化させたときのゲル分率が80%以上という樹脂組成物を得る上では、特に好ましいものである。
【0247】
上記一般式(61)で表される単量体は、R3が1級又は2級アルキルエステル基を有するものであることがより好ましい。このような単量体に由来する1級又は2級アルキルエステル基は、水酸基との反応を生じやすく、このため本発明の目的を充分に達成することができる。
【0248】
上記アルキルエステル基としては特に限定されず、メチルエステル基、エチルエステル基、ベンジルエステル基、n-プロピルエステル基、イソプロピルエステル基、n-ブチルエステル基、イソブチルエステル基、sec-ブチルエステル基等の、公知のエステル基を有するものを使用することができる。なお、アルキル基は炭素数50以下のものとすることが好ましい。上記アルキル基は、エステル交換反応中にアルコールとして生成され、揮散することが好ましいため、アルキル基としては炭素数が20以下のものであることがより好ましく、10以下であることが更に好ましい。また、硬化反応において揮発するアルコールの沸点が300℃以下であることが好ましく、200℃以下であることが更に好ましい。
【0249】
上記一般式(61)で表されるエステル化合物の製造方法としては特に限定されないが、例えば、その1つとして、シアヌル酸に対して、ハロゲン化カルボン酸エステルを反応させる方法を挙げることができる。これを一般式で表すと下記のような反応となる。
【0250】
【化46】
(式中、R
3は、炭素数50以下のアルキル基。
R
4は、炭素数50以下のアルキレン基。
Xは、ハロゲン元素)
【0251】
上述した反応で使用するハロゲン化カルボン酸エステルとしては、公知の任意のものを挙げることができ、例えば、クロロ酢酸メチル、クロロ酢酸エチル、クロロ酢酸プロピル、クロロ酢酸イソプロピル、2-クロロプロピオン酸メチル、2-クロロプロピオン酸エチル、2-クロロプロピオン酸プロピル、2-クロロプロピオン酸イソプロピル、2-クロロ酪酸メチル、2-クロロ酪酸エチル、2-クロロ酪酸プロピル、2-クロロ酪酸イソプロピル、ブロモ酢酸メチル、ブロモ酢酸エチル、ブロモ酢酸プロピル、ブロモ酢酸イソプロピル、2-ブロモプロピオン酸メチル、2-ブロモプロピオン酸エチル、2-ブロモプロピオン酸プロピル、2-ブロモプロピオン酸イソプロピル、2-ブロモ酪酸メチル、2-ブロモ酪酸エチル、2-ブロモ酪酸プロピル、2-ブロモ酪酸イソプロピル、ヨード酢酸エチル、ヨード酢酸プロピル、ヨード酢酸イソプロピル、2-ヨードプロピオン酸メチル、2-ヨードプロピオン酸エチル、2-ヨードプロピオン酸プロピル、2-ヨードプロピオン酸イソプロピル、2-ヨードブタン酸メチル、2-ヨードブタン酸エチル、2-ヨードブタン酸プロピル、2-ヨードブタン酸イソプロピル等が挙げられる。
上記反応は周知の一般的な反応であり、その反応条件などは一般的な条件によって行うことができる。
【0252】
また、上記一般式(61)で表されるエステル化合物の他の製造方法としては、イソシアヌル酸環を有するカルボン酸に対して、オルトギ酸エステルを反応させる方法を挙げることができる。これを一般式で表すと下記のような反応となる。
【0253】
【化47】
(式中、R
5は、水素又はR
4-COOHで表される構造。
R
3は、炭素数50以下のアルキレン基。
R
6は、水素又はR
4-COOR
3で表される構造。)
【0254】
上述した反応で使用するイソシアヌル酸環を有するカルボン酸としては、イソシアヌル酸トリス(2-カルボキシエチル)、イソシアヌル酸ビス(2-カルボキシエチル)等が挙げられる。
また、上述した反応で使用するオルトギ酸エステルとしては、オルトギ酸メチル、オルトギ酸エチル等が挙げられる。
上記反応は周知の一般的な反応であり、その反応条件などは一般的な条件によって行うことができる。
【0255】
上述した一般式(61)で表されるイソシアヌル酸環を有するエステル化合物の具体的な化学構造の例を以下に示す。なお、本発明は以下で例示する化合物に限定されるものではない。
【0256】
【0257】
本発明において使用されるシアヌル酸系エステル化合物として、上記の他に、例えば、以下に例示したシアヌル酸系エステル化合物を挙げることができる。
【0258】
【化49】
(式中、R
11は、炭素数50以下のアルキレン基。
R
12は、炭素数50以下のアルキル基。)
【0259】
上記一般式(62)で表されるエステル化合物も、エステル交換反応性において特に優れるものとすることができる。このため、硬化開始温度が130℃以下であり、150℃30分焼付という条件で硬化させたときのゲル分率が80%以上という樹脂組成物を得る上では、特に好ましいものである。
【0260】
上記一般式(62)で表されるエステル化合物の製造方法としては特に限定されないが、例えば、シアヌル酸クロリドに対して、ヒドロキシカルボン酸エステルを反応させる方法を挙げることができる。これを一般式で表すと下記のような反応となる。
【0261】
【0262】
また、上述した反応で使用するヒドロキシカルボン酸エステルとしては、グリコール酸メチル、グリコール酸エチル、グリコール酸ブチル、ヒドロキシプロピオン酸メチル、ヒドロキシプロピオン酸エチル、ヒドロキシプロピオン酸ブチル、ヒドロキシ酪酸メチル、ヒドロキシ酪酸エチル、ヒドロキシ酪酸ブチル、乳酸メチル、乳酸エチル、乳酸ブチル等が挙げられる。
【0263】
各種のシアヌル酸系化合物は、本発明において使用した場合、低温硬化においても高架橋密度の優れた膜物性を示す塗膜が得られるという利点を有する。
このような化合物を、アルキルエステル基を有する化合物として使用すると、公知の方法で安価にエステル化することができ、比較的低分子量で多価エステル基を導入することができる。
【0264】
(8)多官能カルボン酸のアルキルエステル化物
多官能カルボン酸と、アルコールとの反応によって得られる化合物も本発明のアルキルエステル基を有する化合物として使用することができる。このような反応は、下記一般式で表すことができる。
【0265】
【0266】
なお、同様の反応をカルボン酸誘導体に対して行うことで得られたアルキルエステル基を有する化合物も同様に本発明の目的に使用することができる。
【0267】
各種の多官能カルボン酸は、ポリエステル原料、ポリアミド原料、中和剤、合成原料その他の多くの用途において幅広く安価に提供される汎用原料である。このような多官能カルボン酸を公知の方法によってアルキルエステル化した化合物も本発明において使用することができる。
【0268】
このような化合物をアルキルエステル基を有する化合物として使用すると、公知の方法で安価にエステル化することができ、比較的低分子量で多価エステル基を導入することができる。また、エステル化することで有機溶剤への相溶性が良くなり好適に使用することができるという点で好ましい。
【0269】
ここで使用する多官能カルボン酸としては特に限定されず、例えば、炭素数が50以下のものを使用することができる。
より具体的には、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ウンデカン二酸、ドデカン二酸、ブラシル酸、オクタデカン二酸、クエン酸、ブタンテトラカルボン酸等の脂肪族多価カルボン酸;
1,2-シクロヘキサンジカルボン酸、1,3-シクロヘキサンジカルボン酸、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸、4-シクロヘキセン-1,2-ジカルボン酸、3-メチル-1,2-シクロヘキサンジカルボン酸、4-メチル-1,2-シクロヘキサンジカルボン酸、1,2,4-シクロヘキサントリカルボン酸、1,3,5-シクロヘキサントリカルボン酸等の脂環族多価カルボン酸;
フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、4,4'-ビフェニルジカルボン酸、トリメリット酸、ピロメリット酸等の芳香族多価カルボン酸;
ヤシ油脂肪酸、綿実油脂肪酸、麻実油脂肪酸、米ぬか油脂肪酸、魚油脂肪酸、トール油脂肪酸、大豆油脂肪酸、アマニ油脂肪酸、桐油脂肪酸、ナタネ油脂肪酸、ヒマシ油脂肪酸、脱水ヒマシ油脂肪酸、サフラワー油脂肪酸等の脂肪酸;ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、安息香酸、p-tert-ブチル安息香酸、シクロヘキサン酸、10-フェニルオクタデカン酸等のモノカルボン酸;乳酸、3-ヒドロキシブタン酸、3-ヒドロキシ-4-エトキシ安息香酸等のヒドロキシカルボン酸;
等を挙げることができる。
【0270】
本発明においては、上述した多官能カルボン酸のアルキルエステル化の方法は特に限定されるものではなく、アルコールとの脱水縮合等の公知の方法を適用することができる。また、多官能カルボン酸の誘導体をアルキルエステル化する方法も挙げることができる。
【0271】
上記多官能カルボン酸のアルキルエステル化物は、分子量が10,000以下であることが好ましい。このようなものとすることで、分子が動きやすく硬化が進行する点で好ましいものである。分子量は6,000以下、4000以下、2000以下といった、より低分子量のものとすることもできる。
【0272】
(8)低分子量ポリオール
また、分子中に少なくとも2個の水酸基を有する化合物として低分子量ポリオール(具体的には分子量2,000以下)を使用してもよい。
低分子量ポリオールとしては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、トリメチレングリコール、テトラエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、1,4-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、2,3-ブタンジオール、1,2-ブタンジオール、2-メチル-1,3-プロパンジオール、3-メチル-1,2-ブタンジオール、1,1,1-トリメチロールプロパン、2-ブチル-2-エチル-1,3-プロパンジオール、1,2-ペンタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,4-ペンタンジオール、2,4-ペンタンジオール、2,3-ジメチルトリメチレングリコール、テトラメチレングリコール、3-メチル-4,3-ペンタンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、2,2,4-トリメチル-1,3-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,5-ヘキサンジオール、1,4-ヘキサンジオール、2,5-ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、トリシクロデカンジメタノール、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールエステル、水添ビスフェノールA、水添ビスフェノールF、ジメチロールプロピオン酸等の2価アルコール;上記2価アルコールにε-カプロラクトン等のラクトン化合物を付加したポリラクトンジオール;ビス(ヒドロキシエチル)テレフタレート等のエステルジオール化合物;ビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリブチレングリコール等のポリエーテルジオール化合物;グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ジグリセリン、トリグリセリン、1,2,6-ヘキサントリオール、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、トリス(2-ヒドロキシエチル)イソシアヌル酸、ソルビトール、マンニット等の3価以上のアルコール等を挙げることができる。
【0273】
このような低分子量ポリオールは、汎用品として知られているものであり、安価で入手することができる。
【0274】
(低温硬化可能となる樹脂組成について)
本発明においては、熱硬化開始温度が130℃であるような、低温硬化性の樹脂組成物とすることができる点でも特に好ましいものである。上述した各種の樹脂原料のうち、このような低温硬化性を得るためには、樹脂構造及び触媒組成を適宜組み合わせることが好ましい。
より具体には、例えば、一般式(31)のような構造を有するエステル化合物を使用することで、より低温で熱硬化を実施できる。更に、このような樹脂組成に、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートや6-ヒドロキシへキシル(メタ)アクリレート、シクロヘキサンジメタノールモノ(メタ)アクリレート等に代表される長鎖ジオールのモノ(メタ)アクリレートを併用することが好ましい。
また、触媒としては、亜鉛アセチルアセトナートやオクチル酸亜鉛等の亜鉛触媒を用いることが低温硬化性能を得るうえでは好ましい。
【0275】
(開始剤(B))
本発明の硬化性樹脂組成物は、硬化反応を生じさせるための開始剤Bを必須とするものである。本発明の硬化性樹脂組成物は、エステル交換反応及び不飽和結合の重合反応の2種類の反応を生じるものである。したがって、開始剤(B)としては、エステル交換反応の開始剤となるエステル交換触媒(B-1)及び光反応開始剤(B-2)の両方を含有することが好ましい。
【0276】
(エステル交換触媒(B-1))
本発明の硬化性樹脂組成物は、エステル交換触媒(B-1)を含有するものである。すなわち、エステル基と水酸基との間のエステル交換反応を効率よく生じさせ、充分な熱硬化性を得るために、エステル交換触媒(B)を配合する。
【0277】
上記エステル交換触媒(B-1)としては、エステル交換反応を活性化させることができるものとして公知の任意の化合物を使用することができる。
具体的には、例えば、塩酸、硫酸、硝酸、酢酸、燐酸又はスルホン酸、ヘテロポリ酸などのような種々の酸性化合物;LiOH、KOH又はNaOH、アミン類、ホスフィン類などのような種々の塩基性化合物;PbO、酸化マグネシウム、酢酸亜鉛、酢酸鉛、酢酸マンガン、酢酸銅、酢酸ニッケル、酢酸パラジウム、アルミニウムイソプロピレート、ジルコニウムアセチルアセトナート、塩化鉄、塩化コバルト、塩化パラジウム、ジチオカルバミン酸亜鉛、三酸化アンチモン、テトライソプロピルチタネート、ジブチル錫ジラウレート、ジブチル錫ジオクテートまたはモノブチル錫酸などのような種々の金属化合物;テトラメチルアンモニウムクロリド、ドデシルトリメチルアンモニウムブロミド、トリエチルベンジルアンモニウムクロリド、水酸化テトラメチルアンモニウム、トリメチルベンジルアンモニウムメチルカルボナートなどの4級アンモニウム塩等、テトラブチルホスホニウムブロミド、水酸化テトラブチルホスホニウムなどのホスホニウム塩等を挙げることができる。また、光や熱によって酸を発生させる光応答性触媒、熱潜在性触媒も使用することができる。更に、亜鉛クラスター触媒(例えば、東京化成工業株式会社製のZnTAC24(商品名)等を使用することもできる。
更に、上述した化合物のうち、2種以上を併用して使用するものであってもよい。
【0278】
本発明においては、エステル交換触媒として金属化合物触媒を使用することが最も好ましい。当該金属化合物触媒は、金属種の選定や、その他の化合物との併用等によって、エステル交換反応性を得ることができる。更に、樹脂組成との組み合わせによって、適宜、必要な性能を得ることができる点で好ましい。
【0279】
上記金属化合物触媒は、亜鉛、スズ、チタン、アルミ、ジルコニウム及び鉄からなる群より選択される少なくとも1の金属元素を含む化合物(B-1a)であることが好ましい。このような化合物は、好適なエステル交換反応性を有する点で好ましい。これらの中でも、亜鉛、ジルコニウムが特に優れたエステル交換反応性を有する点で好ましいものである。
【0280】
上述した化合物のなかでも、ジルコニウム化合物は、極めて優れたエステル交換能を有しており、これを使用することで、上述した低温硬化性を有する硬化性樹脂組成物を容易に得ることができる点で特に好ましいものである。
なお、ジルコニウム化合物をエステル交換触媒として使用した場合、以下に詳述する化合物(B-1b)を併用しない場合でも、非常に高いエステル交換能が得られる点でも好ましい。
【0281】
エステル交換反応を硬化反応とする、硬化性樹脂組成物においてジルコニウム化合物をエステル交換触媒として使用することは、新規な発明である。よって、-COOR(Rは、炭素数50以下のアルキル基)、及び、水酸基を有する樹脂成分(A)及びエステル交換触媒としてのジルコニウム化合物を含有する硬化性樹脂組成物も本発明の一つである。
【0282】
上記金属化合物触媒としては、金属塩化合物が特に好ましく、例えば、酢酸亜鉛、アクリル酸亜鉛、亜鉛アセチルアセトネート、トリフルオロメタンスルホン酸亜鉛、アルミニウムイソプロピレート、塩化鉄、ジチオカルバミン酸亜鉛、テトライソプロピルチタネート、ジブチル錫ジラウレート、ジブチル錫ジオクテート、モノブチル錫酸、ジルコニウムブトキシド、ジルコニウムアセチルアセトネート、ジルコニアなどのような種々の金属化合物等を挙げることができる。更に、亜鉛クラスター触媒(例えば、東京化成工業株式会社製のZnTAC24(商品名)等を使用することもできる。
更に、上述した化合物のうち、2種以上を併用して使用するものであってもよい。
【0283】
上記金属化合物としては、アニオン成分として、金属アセチルアセトネートを使用すると、同種金属化合物よりも優れたエステル交換能が得られる傾向があり、低温硬化性能を実現することができる点で好ましい。例えば、亜鉛アセチルアセトネートやジルコニウムアセチルアセトネートは、特に好適に使用することができる。特に、ジルコニウムアセチルアセトネートは、極めて良好な触媒性能を発揮するものである。
【0284】
上記金属化合物を触媒として使用する場合、更に、有機リン化合物、尿素、アルキル化尿素、スルホキシド化合物、ピリジン及びピリジン誘導体からなる群より選択される少なくとも1の化合物(B-1b)を併用すると、触媒性能が向上する点でより好ましい。
これらの化合物を併用することで活性化された金属化合物を使用すると、上述した硬化開始温度及びゲル分率を得ることができる点で特に好ましいものである。
【0285】
このような効果が得られる作用は明らかではないが、金属化合物に化合物(B-1b)が配位することで、触媒活性を向上させているものと推測される。したがって、化合物(B-1b)としては、金属化合物に配位することができるような化合物を選択することが好ましい。
【0286】
エステル交換反応の触媒作用が向上することで、エステル交換反応をより低温で行うことができるようになる。よって、反応温度を低くすることができ、エネルギー効率を改善することができる。更に、耐熱性の低い化合物のエステル交換反応を行う場合にも使用することができる。
【0287】
本発明者らの検討によると、従来のエステル交換反応は、系中にカルボキシル基が存在する状態では反応性が低下することが明らかとなっている。このため、カルボキシル基が存在する水性硬化性樹脂組成物においてエステル交換反応を利用しようとすると、高温での硬化が必要とされていた。
【0288】
本発明者らの検討により、このような問題は、上記金属化合物に加えて化合物(B-1b)を併用することで大幅な改善にされることが明らかになった。こすなわち、これによって、触媒活性がより向上し、80~150℃の範囲で反応を生じさせることができる。また、種々の要因で反応が進行しにくい系であっても反応を進行させることが好ましい。例えば、カルボキシル基が存在する系においても、反応を進行させられる点で好ましい。よって、水系硬化性樹脂組成物におけるエステル交換反応の触媒としても好適に使用することができる。
【0289】
エステル交換反応を熱硬化反応とする従来の硬化性樹脂組成物は、酸触媒によってエステル交換反応を行うものが知られていた。しかし、このような硬化性樹脂組成物は、酸が存在することによる各種の問題も存在した。
【0290】
例えば、顔料分散剤等の添加剤としてアミン化合物が使用される場合がある。更に、塗料を水性化する場合は、樹脂中にカルボン酸基、スルホン酸基等の酸基を導入し、これをアミン化合物等で中和して水溶化することが広く行われている。この場合、酸性触媒と併用することは困難であった。このことは、エステル交換触媒を硬化反応とする硬化性樹脂組成物の水性化の妨げとなる問題であった。本発明の硬化性樹脂組成物においては、酸触媒を使用しなくても良好な硬化反応を生じさせることができることから、塩基性化合物を添加した硬化性樹脂組成物とすることができる点でも好ましい。
【0291】
また、本発明の硬化性樹脂組成物を溶剤系塗料組成物として使用する場合であっても、多層塗膜のうちの一部の層として水性塗料を組み合わせて使用する場合がある。この場合、多層塗膜を同時に加熱硬化する場合、多層塗膜を形成するその他の層からアミンやアンモニア等が発生する場合がある。このような場合であっても、良好な硬化を行うことができるという点で、上記触媒は好ましいものである。
【0292】
なお、本発明にかかるエステル交換触媒は、常圧下でのエステル交換反応における触媒として当該組成を使用するものであることが好ましい。さらに、エステル交換反応を硬化反応とする硬化性樹脂組成物において、エステル交換触媒として使用することが好ましい。
【0293】
上述したエステル交換触媒は、有機リン化合物、尿素、アルキル化尿素、スルホキシド化合物、ピリジン及びピリジン誘導体からなる群より選択される少なくとも1の化合物(B-2)を含有する。以下、これらの化合物について、詳述する。
【0294】
上記有機リン化合物としては特に限定されず、例えば、リン酸、亜リン酸、ホスホン酸、ホスフィン酸、亜ホスホン酸、有機ホスフィンオキシド、有機ホスフィン化合物並びにこれらの種々のエステル、アミド及び塩を挙げることができる。エステルは、アルキル、分岐アルキル、置換アルキル、二官能性アルキル、アルキルエーテル、アリール、及び置換アリールのエステルであってよい。アミドは、アルキル、分岐アルキル、置換アルキル、二官能性アルキル、アルキルエーテル、アリール、及び置換アリールのアミドであってよい。
【0295】
これらのなかでも、ホスホン酸エステル、リン酸アミド及び有機ホスフィンオキシド化合物からなる群より選択される少なくとも1の化合物であることが特に好ましい。これらの有機リン化合物を使用すると、エステル交換触媒機能が最も良好なものとなる。さらに具体的には、トリフェニルホスフィンオキシド、トリオクチルホスフィンオキシド、トリシクロヘキシルホスフィンオキシド、などの、有機ホスフィンオキシド化合物;ヘキサメチルリン酸トリアミド、トリス(N,N-テトラメチレン)リン酸トリアミド等のリン酸アミド化合物、トリフェニルホスフィンスルフィド、トリブチルホスフィンスルフィド、トリオクチルホスフィンスルフィド等の有機ホスフィンスルフィド化合物、等を好適に使用することができる。
【0296】
上記アルキル化尿素としては、特に限定されず、尿素、ジメチル尿素、ジメチルプロピレン尿素等を挙げることができる。なお、ジメチルプロピレン尿素等のように、環状構造を有するものであってもよい。
【0297】
上記アルキル化チオ尿素としては、特に限定されず、ジメチルチオ尿素等を挙げることができる。
上記スルホキシド化合物としては、ジメチルスルホキシド、ジフェニルスルホキシド等を挙げることができる。
【0298】
上記ピリジン誘導体としては、キノリン、イソキノリン、ニコチン酸エステル等を挙げることができる。
【0299】
本発明のエステル交換触媒は、化合物(B-1a)と化合物(B-1b)とを(B-1a):(B-1b)=100:1~1:100(重量比)の割合で含有することが好ましい。このような割合で配合することで、特に好適な結果を得ることができる。上記下限は、50:1であることがより好ましく、10:1であることがさらに好ましい。上記上限は、1:50であることがより好ましく、1:10であることがさらに好ましい
【0300】
上記化合物(B-1a)は、反応を生じさせる際の反応系中の反応に関与する化合物の量に対して、0.01~50重量%の割合で含有させることが好ましい。
上記化合物(B-1b)は、反応を生じさせる際の反応系中の反応に関与する化合物の量に対して、0.01~50重量%の割合で含有させることが好ましい。
【0301】
本発明のエステル交換触媒は、その用途を特に限定されるものではなく、エステル交換を硬化反応とする硬化性樹脂組成物、有機合成におけるエステル交換反応等の任意の目的において使用することができる。例えば、(メタ)アクリル酸エステル等のカルボン酸エステル化合物において、アルキル基を置換する反応(例(メタ)アクリル酸メチルを(メタ)アクリル酸ブチルに変換する反応)においても使用することができる。
【0302】
本発明の樹脂組成物においては、エステル交換触媒として、(1)ジルコニウム化合物を使用する、(2)上記化合物(B-1a)及び化合物(B-1b)を使用する、という方法によって、上述した物性を特に好適に得ることができる点で好ましいものである。
上記(1)(2)のエステル交換触媒を使用し、樹脂組成として特にエステル交換反応性が高いものを選択して使用すると、硬化開始温度が100℃以下であり、100℃以下30分焼付という条件で硬化させたときのゲル分率が80%以上であるという性質を有する樹脂組成物を得ることができる。
【0303】
更に、亜鉛アセチルアセトネートをエステル交換触媒として使用し、樹脂組成として特にエステル交換反応性が高いものを選択して使用すると、硬化開始温度が100℃以下であり、100℃以下30分焼付という条件で硬化させたときのゲル分率が80%以上であるという性質を有する樹脂組成物を得ることができる。
【0304】
本発明の硬化性樹脂組成物においては、金属化合物を触媒として使用することがより好ましい。本発明の硬化性樹脂組成物においては、金属化合物が触媒活性という観点において特に優れるものとなる。特に、1級、2級のアルキルエステル基を有する硬化性樹脂組成物において、この傾向が顕著である。
【0305】
更に、本発明の硬化性樹脂組成物においては、酸触媒を使用しなくても良好な硬化反応を生じさせることができることから、塩基性化合物を添加した硬化性樹脂組成物とすることができる点でも好ましい。
【0306】
上記エステル交換触媒(B-1)の使用量は、樹脂成分(A)の全重量に対して、0.01~50重量%であることが好ましい。このような範囲内のものとすることで、良好な硬化反応を低温で行うことができる点で好ましい。
【0307】
(光重合開始剤(B-2))
本発明の硬化性樹脂組成物は、開始剤(B)として光重合開始剤(B-2)を含有するものであることが好ましい。
光重合開始剤としては特に限定されず、例えば、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパン-1-オン、2-メチル-1-[4-(メチルチオ)フェニル]-2-モルホリノプロパン-1-オン、1-[4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル]-2-ヒドロキシ-2-メチル-1-プロパン-1-オン等のアセトフェノン系開始剤;ベンゾイン、2,2-ジメトキシ-1,2-ジフェニルエタン-1-オン等のベンゾイン系開始剤;ベンゾフェノン、[4-(メチルフェニルチオ)フェニル]フェニルメタノン、4-ヒドロキシベンゾフェノン、4-フェニルベンゾフェノン、3,3’,4,4’-テトラ(t-ブチルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン等のベンゾフェノン系開始剤;2-クロロチオキサントン、2,4-ジエチルチオキサントン等のチオキサントン系開始剤等が挙げられる。
促進剤としては、例えば、p-ジメチルアミノ安息香酸エチルエステル、p-ジメチルアミノ安息香酸イソアミルエステルのような3級アミン等が挙げられる。
【0308】
上記光重合開始剤(B-2)の含有量は特に限定されるものではないが、樹脂成分(A)の固形分重量に対して、0.01~50重量%の割合で配合することが好ましい。
塗膜の着色や物性、貯蔵安定性等を考慮すると、0.5~10重量%がより好ましい。
【0309】
本発明の硬化性組成物は、上記(A)(B)の成分に加えて、更に、塗料や接着剤の分野において一般的に使用されるその他の架橋剤を併用して使用するものであってもよい。使用できる架橋剤としては特に限定されず、イソシアネート化合物、ブロックイソシアネート化合物、メラミン樹脂、エポキシ樹脂、シラン化合物等を挙げることができる。また、ビニルエーテル、アニオン重合性単量体、カチオン重合性単量体、ラジカル重合性単量体等を併用するものであってもよい。これらの併用した架橋剤の反応を促進させるための硬化剤を併用するものであってもよい。
【0310】
なお、上述したその他架橋剤は必須ではなく、本発明の硬化性樹脂組成物はこれを含有しないものであっても、良好な硬化性を得ることができる点で好ましいものである。
【0311】
上記架橋剤がポリイソシアネート化合物及び/又はメラミン樹脂である場合、樹脂成分(A)と架橋剤との合計量に対する配合量(すなわち、(架橋剤量)/(架橋剤量+樹脂成分量)が0.01~50重量%であることが好ましい。このような配合量の範囲であることで、エステル交換反応による硬化反応と他の硬化剤による硬化反応とを同時に生じさせるという点で好ましい。
上記下限は、0.01重量%であることがより好ましく、1重量%であることが更に好ましい。上記上限は、30重量%であることがより好ましく、20重量%であることが更に好ましい。
【0312】
また、後述するように、樹脂組成物を転写材の保護層として用いる場合には、必要に応じて滑剤を含有させることが好ましい。これにより、保護層の表面が粗面化され、シートとして巻きやすくなり、ブロッキングが生じにくくなるのみならず、擦れや引っ掻きに対する抵抗性を増大させることができる。
【0313】
本発明の硬化性樹脂組成物は、熱硬化時の硬化開始温度が130℃以下であり、150℃30分焼付という条件で硬化させたときのゲル分率が80%以上であることがより好ましい。このような条件を満たす低温硬化性の硬化性樹脂組成物を使用すると、耐熱性が低い素材に対しても適用することができるため、多くの用途に適用可能となる点で好ましいものである。
【0314】
上述した低温硬化性を満たす硬化性樹脂組成物を得るためには、触媒や樹脂組成の選定が重要となる。すなわち、本発明における硬化反応であるエステル交換反応は、樹脂の構造や使用するエステル交換触媒の種類によって、硬化温度は変化する。このため、適宜、これらを選択することで、低温硬化性を得ることが好ましい。
【0315】
本発明の硬化性樹脂組成物は、その用途を特に限定されるものではないが、例えば、インモールド成形に使用するフィルムに使用することもできる。この場合、基材上に塗布して、熱硬化を行うことで、フィルムを硬化し、その後、成形を行った後にエネルギー線を照射することで、硬化させるものであってもよい。
【0316】
硬化性塗料として使用する場合は、上述した各成分以外に、塗料分野において一般的に使用される添加剤を併用するものであってもよい。例えば、着色顔料、体質顔料、光輝性顔料等、並びにそれらの任意の組み合わせを併用してもよい。
【0317】
顔料を使用する場合、樹脂成分の合計固形分100重量%を基準として、好ましくは合計で1~500重量%の範囲で含むことが好ましい。上記下限はより好ましくは3重量%であり、更に好ましくは5重量部である。上記上限はより好ましくは400重量%であり、更に好ましくは300重量%である。
【0318】
上記着色顔料としては、例えば、酸化チタン、亜鉛華、カーボンブラック、モリブデンレッド、プルシアンブルー、コバルトブルー、アゾ系顔料、フタロシアニン系顔料、キナクリドン系顔料、イソインドリン系顔料、スレン系顔料、ペリレン系顔料、ジオキサジン系顔料、ジケトピロロピロール系顔料等、並びにそれらの任意の組み合わせが挙げられる。
【0319】
上記体質顔料としては、例えば、クレー、カオリン、硫酸バリウム、炭酸バリウム、炭酸カルシウム、タルク、シリカ、アルミナホワイト等が挙げられ、硫酸バリウム及び/又はタルクが好ましく、そして硫酸バリウムがより好ましい。
【0320】
上記光輝性顔料としては、例えば、アルミニウム(蒸着アルミニウムを含む)、銅、亜鉛、真ちゅう、ニッケル、酸化アルミニウム、雲母、酸化チタン又は酸化鉄で被覆された酸化アルミニウム、酸化チタン又は酸化鉄で被覆された雲母、ガラスフレーク、ホログラム顔料等、並びにそれらの任意の組み合わせが挙げられる。上記アルミニウム顔料には、ノンリーフィング型アルミニウム及びリーフィング型アルミニウムが含まれる。
【0321】
上記着色顔料は、顔料分散樹脂により分散された状態で、硬化性樹脂組成物に配合されることが好ましい。着色顔料の量は、顔料の種類等によって変化しうるが、一般には、顔料分散樹脂中に含まれる樹脂成分の固形分100質量部に対して、好ましくは約0.1~約300質量部、そしてより好ましくは約1~約150質量部の範囲内である。
【0322】
上記硬化性塗料は、所望により、有機溶剤、増粘剤、紫外線吸収剤、光安定剤、消泡剤、可塑剤、表面調整剤、沈降防止剤、分散剤、色分かれ防止剤、レオロジーコントロール剤、レベリング剤、基材湿潤剤、スリップ剤等の塗料用添加剤をさらに含有するものであってもよい。
【0323】
上記増粘剤としては、例えば、ケイ酸塩、金属ケイ酸塩、モンモリロナイト、コロイド状アルミナ等の無機系増粘剤;(メタ)アクリル酸と(メタ)アクリル酸エステルとの共重合体、ポリアクリル酸ソーダ等のポリアクリル酸系増粘剤;1分子中に親水性部分と疎水性部分を有し、水性媒体中において、上記疎水性部分が塗料中の顔料やエマルション粒子の表面に吸着する、上記疎水性部分同士が会合する等により増粘作用を示す会合型増粘剤;カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース等の繊維素誘導体系増粘剤;カゼイン、カゼイン酸ソーダ、カゼイン酸アンモニウム等のタンパク質系増粘剤;アルギン酸ソーダ等のアルギン酸系増粘剤;ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリビニルベンジルエーテル共重合体等のポリビニル系増粘剤;プルロニック(登録商標)ポリエーテル、ポリエーテルジアルキルエステル、ポリエーテルジアルキルエーテル、ポリエーテルエポキシ変性物等のポリエーテル系増粘剤;ビニルメチルエーテル-無水マレイン酸共重合体の部分エステル等の無水マレイン酸共重合体系増粘剤;ポリアマイドアミン塩等のポリアマイド系増粘剤等、並びにそれらの任意の組み合わせが挙げられる。
【0324】
上記ポリアクリル酸系増粘剤は市販されており、例えば、ロームアンドハース社製の「ACRYSOLASE-60」、「ACRYSOLTT-615」、「ACRYSOLRM-5」(以上、商品名)、サンノプコ社製の「SNシックナー613」、「SNシックナー618」、「SNシックナー630」、「SNシックナー634」、「SNシックナー636」(以上、商品名)等が挙げられる。
【0325】
また、上記会合型増粘剤は市販されており、例えば、ADEKA社製の「UH-420」、「UH-450」、「UH-462」、「UH-472」、「UH-540」、「UH-752」、「UH-756VF」、「UH-814N」(以上、商品名)、ロームアンドハース社製の「ACRYSOLRM-8W」、「ACRYSOLRM-825」、「ACRYSOLRM-2020NPR」、「ACRYSOLRM-12W」、「ACRYSOLSCT-275」(以上、商品名)、サンノプコ社製の「SNシックナー612」、「SNシックナー621N」、「SNシックナー625N」、「SNシックナー627N」、「SNシックナー660T」(以上、商品名)等が挙げられる。
【0326】
上記顔料分散樹脂としては、アクリル系顔料分散樹脂を使用することが好ましい。より具体的には、例えば、重合性不飽和モノマーを、親水性有機溶剤の存在下で、重合開始剤により重合することにより得られたアクリル樹脂を挙げることができる。
【0327】
上記重合性不飽和モノマーとしては、上述した樹脂の合成において例示した化合物を挙げることができ、適宜組み合わせて用いられうる。
上記顔料分散樹脂は、水に溶解するか、又は分散できる樹脂であることが好ましく、具体的には、好ましくは10~100mgKOH/g、そしてより好ましくは20~70mgKOH/gの水酸基価と、好ましくは10~80mgKOH/g、そしてより好ましくは20~60mgKOH/gの酸価とを有する。
【0328】
上記重合に用いられる上記親水性有機溶剤としては、例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノール、n-ブタノール、イソブタノール等のアルコール系有機溶剤;ジオキサン、テトラヒドロフラン等のエーテル系有機溶剤;エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノn-プロピルエーテル、エチレングリコールモノイソプロピルエーテル、エチレングリコールモノn-ブチルエーテル、エチレングリコールモノイソブチルエーテル、エチレングリコールモノtert-ブチルエーテル等のエチレングリコールエーテル系有機溶剤;ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノn-プロピルエーテル、ジエチレングリコールモノイソプロピルエーテル、ジエチレングリコールモノn-ブチルエーテル、ジエチレングリコールモノイソブチルエーテル、ジエチレングリコールモノtert-ブチルエーテル等のジエチレングリコールエーテル系有機溶剤;プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノn-プロピルエーテル、プロピレングリコールモノイソプロピルエーテル等のプロピレングリコールエーテル系有機溶剤;ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノn-プロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノイソプロピルエーテル等のジプロピレングリコールエーテル系有機溶剤;酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸イソブチル、3-メトキシブチルアセテート等のエステル系有機溶剤等、並びにこれらの組み合わせが挙げられる。
【0329】
本発明の硬化性樹脂組成物は、上記樹脂及び顔料分散樹脂の固形分質量の合計を基準として、顔料分散樹脂を、固形分で、好ましくは5~70質量%、そしてより好ましくは7~61質量%含むことが好ましい。上記範囲は、硬化性樹脂組成物の貯蔵安定性と、本発明の着色塗料組成物を用いて形成される着色塗膜の仕上がり性、耐水性、中研ぎ性等との観点から好ましい。
【0330】
本発明の硬化性樹脂組成物は、上記成分に加えて、更に、塗料や接着剤の分野において一般的に使用されるその他の架橋剤を併用して使用するものであってもよい。使用できる架橋剤としては特に限定されず、イソシアネート化合物、ブロックイソシアネート化合物、メラミン樹脂、エポキシ樹脂、シラン化合物等を挙げることができる。また、ビニルエーテル、アニオン重合性単量体、カチオン重合性単量体、ラジカル重合性単量体等を併用するものであってもよい。これらの併用した架橋剤の反応を促進させるための硬化剤を併用するものであってもよい。
【0331】
上記硬化性樹脂組成物を適用することができる被塗物としては、特に制限されず、例えば、乗用車、トラック、オートバイ、バス等の自動車車体の外板部;自動車部品;携帯電話、オーディオ機器、等の家庭電気製品、建築材料、家具、接着剤、フィルムやガラスのコーティング剤等、様々な例を挙げることができる。また、高温短時間硬化によって塗膜を形成するプレコートメタル、金属缶への塗装を挙げることもできる。更に、電着塗料、接着剤、パーティクルボード等への使用も挙げることができる。
【0332】
上記被塗物は、上記金属材料及びそれから成形された車体等の金属表面に、リン酸塩処理、クロメート処理、複合酸化物処理等の表面処理が施されたものであってもよく、また、塗膜を有する被塗物であってもよい。
上記塗膜を有する被塗物としては、基材に所望により表面処理を施し、その上に下塗り塗膜が形成されたもの等を挙げることができる。特に、電着塗料によって下塗り塗膜が形成された車体が好ましく、カチオン電着塗料によって下塗り塗膜が形成された車体がより好ましい。
【0333】
上記被塗物は、上記プラスチック材料、それから成形された自動車部品等のプラスチック表面に、所望により、表面処理、プライマー塗装等がなされたものであってもよい。また、上記プラスチック材料と上記金属材料とが組み合わさったものであってもよい。
【0334】
上記硬化性樹脂組成物の塗装方法としては、特に制限されず、例えば、エアスプレー塗装、エアレススプレー塗装、回転霧化塗装、カーテンコート塗装等が挙げられ、エアスプレー塗装、回転霧化塗装等が好ましい。塗装に際して、所望により、静電印加してもよい。上記塗装方法により、上記水性塗料組成物からウェット塗膜を形成することができる。
ここで使用する塗料組成物は、先に熱硬化反応を実施する場合には、成分が熱硬化時に分解や揮発を起こすおそれがあることを考慮して、適宜材料選定して設計することが好ましい。
【0335】
本発明は、上述した硬化性樹脂組成物を架橋することによって形成されたことを特徴とする硬化膜である。
このような硬化膜は、塗料・接着剤として使用することができるような充分な性能を有したものである。
上記硬化膜は、上述した複層塗膜の形成方法によって形成された硬化膜も包含するものである。
【0336】
本発明の硬化性樹脂組成物を硬化させる場合、熱硬化させたあとで、エネルギー線硬化を行うものであってもよいし、エネルギー線硬化を行った後で熱硬化させるものであってもよい。これらは、目的に応じて適宜工程を選定することができる。
【0337】
本発明は、基材フィルム等の樹脂基材上に、(メタ)アクリロイル基(a)、水酸基(b)、及び、アルキルエステル基(c)を含む樹脂成分(A)、並びに、開始剤(B)を含有することを特徴とする硬化性樹脂組成物からなる硬化性樹脂層が形成された被覆樹脂成型体でもある。このような被覆樹脂成型体の代表的な形状として複層フィルムを挙げることができる。このような樹脂成型体は、硬化性樹脂層が硬化される前の状態のもの、一部の未硬化された状態のもの、完全に硬化された状態のもののすべてを包含するものである。
このような複層フィルムとしては、電子材料等の機能性材料、加飾性フィルム等の意匠性を付与するための意匠性フィルム等の任意の目的で使用するものを挙げることができる。
【0338】
例えば、電子材料においては、基材フィルム上に機能性の層を積層させ、これを硬化させることで機能性材料を製造することは多くの材料において行われている。具体的には、ディスプレイ用の光学フィルム、プリント配線基板、各種電池等を挙げることができる。
【0339】
基材フィルム上に色や模様等を有し、硬化性を有する意匠層を形成し、これを被加飾素材に対して転写することで加飾することも汎用的な技術である。このような転写フィルムにおける意匠層として、本発明の硬化性樹脂組成物を使用することもできる。
このような意匠層は、硬化性樹脂組成物をベースとして含有するものであることがほとんどである。したがって、このような意匠層に含まれる硬化性樹脂組成物として、本発明の硬化性樹脂組成物を使用することができる。
【0340】
特に、2段階で硬化を行うような用途において好適に使用することができる。
上述したような複層フィルムや被覆シートにおいては、複層フィルム形状への加工や予備成型の段階で1段階目の硬化を行い、その後成型加工等を行った後で2段階目の硬化を行うような用途において好適に使用することができる。すなわち、1段階目で形態の維持ができ、ブロッキングの問題を生じず、かつ、変形させることができる程度の柔軟性を有する状態の層を形成させ、その後変形させた後に2度目の変形を生じさせるような方法で使用するものを挙げることができる。
【0341】
なお、このような場合に使用される樹脂基材としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリカーボネート、ABS(アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン共重合)などの比較的耐熱熱性の低いものから、ポリフェニレンエーテル、ポリフェニレンスルフィド、ポリエーテルエーテルケトンなどの耐熱性の高いエンジニアリングプラスチックなどが挙げられる。
【0342】
本発明の多層フィルムは、上記基材フィルム上に、公知の方法で上記硬化性樹脂組成物及び溶剤を含有する組成物を塗布・乾燥することによって得ることができる。上記多層フィルムにおいて、上記硬化性樹脂層(2)は、厚み1~100μmであることが好ましい。
【0343】
また、本発明の多層フィルムは、上記硬化性樹脂層(2)に対してエネルギー線照射又は加熱によって、部分的に硬化させたものであってもよい。
【0344】
本発明の硬化性樹脂組成物は、無機粒子を多量に含有する組成物におけるバインダーとして使用することもできる。
電子材料分野、電池などのエネルギー分野、光学材料等の多くの分野で、無機材料による膜形成を行い、この無機材料が有する性能を利用することが行われている。この場合、無機粒子を原料として使用し、無機粒子をフィルム、その他の所望の形状に成形することができる。この場合には、所望の形状に成形するために、無機粒子に樹脂バインダーが併用される場合が多い。このような樹脂バインダーとして本発明の硬化性樹脂組成物を使用することもできる。
【0345】
例えば、酸化亜鉛や酸化ジルコニウム、酸化チタンなどを用いることで、高屈折率膜が形成される。シリカ粒子、特に中空シリカなどを用いると低屈折率膜が形成される。これらは、100nmレベルの薄膜で積層使用することにより、光学的な反射防止膜として使用することができる。
また、他の無機粒子を用いることにより、導電性膜や絶縁性膜、熱伝導膜や電池の電極など、フィルムやシート以外の機能膜として使用することもできる。
このように、2段硬化が可能なため、紫外線によりパターニングすることも可能で、複雑な形状やプロセスに広く対応することができる。
上述したこれら複層膜以外に、基材に保護膜として単層コートして使用することもできる。
【0346】
無機粒子及び硬化性樹脂組成物を含有する硬化性樹脂組成物とする場合、固形分中1~90重量%の無機粒子を含有することが好ましく、20~70重量%であることがさらに好ましい。無機粒子としては特に限定されず、酸化アルミ、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化ジルコニウム、二酸化ケイ素等の無機酸化物粒子、金属粉等を使用することができる。これらの金属は有機材料等の分散性を向上させるために、適宜表面処理を行ってもよい。
【実施例0347】
以下、実施例に基づいて本発明を更に詳細に説明する。なお、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。なお文中の部は重量を表す。
合成例1
エチレングリコールモノアセトアセタートモノメタクリラート55部、t-ブチルアクリレート66部、炭酸カリウム71部、18-クラウン-6エーテル3部、テトラヒドロフラン121部を混合し、50℃で3時間撹拌した。反応終了後、シクロヘキサンと水を投入し、水洗した。有機層は飽和塩化アンモニウム水溶液で中和後、2度水洗し、得られた有機層を減圧下濃縮し、モノマーAを得た。
【0348】
合成例2
エチレングリコールモノアセトアセタートモノメタクリラート55部、メチルアクリレート45部、炭酸カリウム71部、18-クラウン-6エーテル3部、テトラヒドロフラン100部を混合し、50℃で3時間撹拌した。反応終了後、シクロヘキサンと水を投入し、水洗した。有機層は飽和塩化アンモニウム水溶液で中和後、2度水洗し、得られた有機層を減圧下濃縮し、モノマーBを得た。
【0349】
合成例3
メチルメタアクリレート(共栄社化学(株)品:ライトエステルM)35部、t-ブチルアクリレート(共栄社化学(株)品:ライトアクリレートTB) 25部、ヒドロキシエチルアクリレート(共栄社化学(株)品:ライトエステルHOA(N)) 30部、スチレン10部をモノマー混合液とし、開始剤としてAIBN 5部をキシレンに溶解し開始剤溶液とした。
撹拌可能なフラスコにキシレン 50部及び酢酸ブチル 50部を入れ、窒素封入しながら、モノマー溶液および開始剤溶液を滴下した。この時の重合温度を100℃とした。滴下には2時間で行い、更に100℃で熟成を4時間行った。得られたポリマー溶液を冷却後、カレンズAOI(昭和電工(株)品) 7.2部、ネオスタンU-820(日東化成(株)品)0.06部を加え65℃で5時間反応させることで、ポリマー溶液Aを得た。
【0350】
合成例4
メチルメタアクリレート(共栄社化学(株)品:ライトエステルM) 35部、モノマーA 25部、ヒドロキシエチルアクリレート(共栄社化学(株)品:ライトエステルHOA(N)) 30部、スチレン10部をモノマー混合液とし、開始剤としてAIBN 5部をキシレンに溶解し開始剤溶液とした。
撹拌可能なフラスコにキシレン 50部及び酢酸ブチル50部 を入れ、窒素封入しながら、モノマー溶液および開始剤溶液を滴下した。この時の重合温度を100℃とした。滴下には2時間で行い、更に100℃で熟成を4時間行った。得られたポリマー溶液を冷却後、カレンズAOI(昭和電工(株)品) 7.2部、ネオスタンU-820(日東化成(株)品)0.06部を加え65℃で5時間反応させることで、ポリマー溶液Bを得た。
【0351】
合成例5
メチルメタアクリレート(共栄社化学(株)品:ライトエステルM) 35部、モノマーB 25部、ヒドロキシエチルアクリレート(共栄社化学(株)品:ライトエステルHOA(N)) 30部、スチレン10部をモノマー混合液とし、開始剤としてAIBN 5部をキシレンに溶解し開始剤溶液とした。
撹拌可能なフラスコにキシレン 50部及び酢酸ブチル 50部 を入れ、窒素封入しながら、モノマー溶液および開始剤溶液を滴下した。この時の重合温度を100℃とした。滴下には2時間で行い、更に100℃で熟成を4時間行った。得られたポリマー溶液を冷却後、カレンズAOI(昭和電工(株)品) 7.2部、ネオスタンU-820(日東化成(株)品)0.06部を加え65℃で5時間反応させることで、ポリマー溶液Cを得た。
【0352】
合成例6
メチルメタアクリレート(共栄社化学(株)品:ライトエステルM) 55部、ヒドロキシエチルアクリレート(共栄社化学(株)品:ライトエステルHOA(N)) 30部、スチレン15部をモノマー混合液とし、開始剤としてAIBN 5部をキシレンに溶解し開始剤溶液とした。
撹拌可能なフラスコにキシレン 50部及び酢酸ブチル 50部 を入れ、窒素封入しながら、モノマー溶液および開始剤溶液を滴下した。この時の重合温度を100℃とした。滴下には2時間で行い、更に100℃で熟成を4時間行った。得られたポリマー溶液を冷却後、カレンズAOI(昭和電工(株)品) 7.2部、ネオスタンU-820(日東化成(株)品)0.06部を加え65℃で5時間反応させることで、比較ポリマー溶液Aを得た。
【0353】
実施例1
ポリマー溶液Aにフェノールスルホン酸(PHS)とLunacure200(DKSHジャパン(株)品)をポリマー溶液の固形分に対してそれぞれ2wt%、3wt%になるように混合し、アプリケーターを用いてWETで200μmの塗膜を作成し、80℃で5分間乾燥後、UV照射(1000mJ/cm2)により仮硬化をおこなった。その後、150℃で30分焼付を行い、硬化膜を得た。得られた硬化膜に対し、ラビング試験、DMA測定を実施した。
【0354】
実施例2
ポリマー溶液Bにフェノールスルホン酸(PHS)とLunacure200(DKSHジャパン(株)品)をポリマー溶液の固形分に対してそれぞれ2wt%、3wt%になるように混合し、アプリケーターを用いてWETで200μmの塗膜を作成し、80℃で5分間乾燥後、UV照射(1000mJ/cm2)により仮硬化をおこなった。その後、150℃で30分焼付を行い、硬化膜を得た。得られた硬化膜に対し、ラビング試験、DMA測定を実施した。
【0355】
実施例3
ポリマー溶液CにネオスタンU-820(日東化成(株)品)とLunacure200(DKSHジャパン(株)品)をポリマー溶液の固形分に対してそれぞれ3wt%になるように混合し、アプリケーターを用いてWETで200μmの塗膜を作成し、80℃で5分間乾燥後、UV照射(1000mJ/cm2)により仮硬化をおこなった。その後、150℃で30分焼付を行い、硬化膜を得た。得られた硬化膜に対し、ラビング試験、DMA測定を実施した。
【0356】
比較例1
比較ポリマー溶液Aにフェノールスルホン酸(PHS)とLunacure200(DKSHジャパン(株)品)をポリマー溶液の固形分に対してそれぞれ2wt%、3wt%になるように混合し、PETフィルム上にアプリケーターを用いてWETで200μmの塗膜を作成し、80℃で5分間乾燥後、UV照射(1000mJ/cm2)により仮硬化をおこなった。その後、150℃で30分焼付を行い、硬化膜を得た。得られた硬化膜に対し、ラビング試験、DMA測定を実施した。
【0357】
【0358】
仮硬化後のタックに関しては、UV照射後の塗膜を指でさわりべたつきの残っているものをタックあり、べたつきのないものをタックなしとした。
【0359】
キシレンラビングは、硬化膜をキシレンを染み込ませた薬方ガーゼで10回擦った。キシレンを乾燥後、皮膜が白化、溶解したものを×とし、僅かに溶解したものを△、変化が無かったものを○とした。
【0360】
架橋点間分子量は、硬化膜をPETフィルムから剥離し、DMAを測定した後、下式により算出した。評価結果は、架橋点間分子量が2000以下のものを良好な三次元架橋塗膜が得られているものとして○、2000から5000のものをやや架橋密度が低い塗膜として△、5000を超えるものを架橋が不十分として×とした。
架橋点間分子量=3×8.31×(貯蔵弾性率が極小値をとるときの絶対温度)/(貯蔵弾性率の極小値)
【0361】
塗膜外観は、硬化後の塗膜を目視にて評価し、外観不良のないものを◎、目的の膜厚では問題がみられないが塗膜のふちなどに気泡がみられるものを〇、実用に全く堪えないものを×とした。
【0362】
合成例7
メチルメタアクリレート(共栄社化学(株)品:ライトエステルM) 30部、t-ブチルアクリレート(共栄社化学(株)品:ライトアクリレートTB) 25部、ヒドロキシエチルアクリレート(共栄社化学(株)品:ライトエステルHOA(N)) 25部、スチレン10部、グリシジルメタクリレート(共栄社化学(株)品:ライトエステルG) 10部をモノマー混合液とし、開始剤としてAIBN 5部をキシレンに溶解し開始剤溶液とした。
撹拌可能なフラスコにキシレン 50部及び酢酸ブチル 50部 を入れ、窒素封入しながら、モノマー溶液および開始剤溶液を滴下した。この時の重合温度を100℃とした。滴下には2時間で行い、更に100℃で熟成を4時間行った。得られたポリマー溶液を冷却後、アクリル酸 5.3部、トリフェニルホスフィン 1.6部を加え90℃で16時間反応させることで、ポリマー溶液Dを得た。
【0363】
合成例8
メチルメタアクリレート(共栄社化学(株)品:ライトエステルM) 30部、モノマーA 25部、ヒドロキシエチルアクリレート(共栄社化学(株)品:ライトエステルHOA(N)) 25部、スチレン10部、グリシジルメタクリレート(共栄社化学(株)品:ライトエステルG) 10部をモノマー混合液とし、開始剤としてAIBN 5部をキシレンに溶解し開始剤溶液とした。
撹拌可能なフラスコにキシレン 50部及び酢酸ブチル 50部 を入れ、窒素封入しながら、モノマー溶液および開始剤溶液を滴下した。この時の重合温度を100℃とした。滴下には2時間で行い、更に100℃で熟成を4時間行った。得られたポリマー溶液を冷却後、アクリル酸 5.3部、トリフェニルホスフィン 1.6部を加え90℃で16時間反応させることで、ポリマー溶液Eを得た。
【0364】
実施例4
ポリマー溶液Dにフェノールスルホン酸(PHS)とLunacure200(DKSHジャパン(株)品)をポリマー溶液の固形分に対してそれぞれ2wt%、3wt%になるように混合し、アプリケーターを用いてWETで200μmの塗膜を作成し、80℃で5分間乾燥後、UV照射(1000mJ/cm2)により仮硬化をおこなった。その後、150℃で30分焼付を行い、硬化膜を得た。得られた硬化膜に対し、ラビング試験、DMA測定を実施した。
【0365】
実施例5
ポリマー溶液Eにフェノールスルホン酸(PHS)とLunacure200(DKSHジャパン(株)品)をポリマー溶液の固形分に対してそれぞれ2wt%、3wt%になるように混合し、アプリケーターを用いてWETで200μmの塗膜を作成し、80℃で5分間乾燥後、UV照射(1000mJ/cm2)により仮硬化をおこなった。その後、150℃で30分焼付を行い、硬化膜を得た。得られた硬化膜に対し、ラビング試験、DMA測定を実施した。
【0366】
【0367】
合成例9
メチルメタアクリレート(共栄社化学(株)品:ライトエステルM) 40部、モノマーA 30部、スチレン10部、グリシジルメタクリレート(共栄社化学(株)品:ライトエステルG) 20部をモノマー混合液とし、開始剤としてAIBN 5部をキシレンに溶解し開始剤溶液とした。
撹拌可能なフラスコにキシレン 50部及び酢酸ブチル 50部 を入れ、窒素封入しながら、モノマー溶液および開始剤溶液を滴下した。この時の重合温度を100℃とした。滴下には2時間で行い、更に100℃で熟成を4時間行った。得られたポリマー溶液を冷却後、アクリル酸 10.6部、トリフェニルホスフィン 1.6部を加え90℃で16時間反応させることで、ポリマー溶液Fを得た。
【0368】
合成例10
メチルメタアクリレート(共栄社化学(株)品:ライトエステルM) 60部、スチレン20部、グリシジルメタクリレート(共栄社化学(株)品:ライトエステルG) 20部をモノマー混合液とし、開始剤としてAIBN 5部をキシレンに溶解し開始剤溶液とした。
撹拌可能なフラスコにキシレン 50部及び酢酸ブチル 50部 を入れ、窒素封入しながら、モノマー溶液および開始剤溶液を滴下した。この時の重合温度を100℃とした。滴下には2時間で行い、更に100℃で熟成を4時間行った。得られたポリマー溶液を冷却後、アクリル酸 10.6部、トリフェニルホスフィン 1.6部を加え90℃で16時間反応させることで、比較ポリマー溶液Bを得た。
【0369】
合成例11
メチルメタアクリレート(共栄社化学(株)品:ライトエステルM) 30部、ヒドロキシエチルアクリレート(共栄社化学(株)品:ライトエステルHOA(N)) 25部、スチレン10部、グリシジルメタクリレート(共栄社化学(株)品:ライトエステルG) 10部をモノマー混合液とし、開始剤としてAIBN 1部をキシレンに溶解し開始剤溶液とした。
撹拌可能なフラスコにキシレン 50部及び酢酸ブチル 50部 を入れ、窒素封入しながら、モノマー溶液および開始剤溶液を滴下した。この時の重合温度を100℃とした。滴下には2時間で行い、更に100℃で熟成を4時間行うことで、ポリマー溶液Gを得た。
【0370】
実施例6~7、比較例2~3
モノマー並びに触媒を下表に示す配合で混合し、アプリケーターを用いてWETで200μmの塗膜を作成し、80℃で5分間乾燥後、UV照射(1000mJ/cm2)により仮硬化をおこなった。その後、150℃で30分焼付を行い、硬化膜を得た。得られた硬化膜に対し、ラビング試験、DMA測定を実施した。
【0371】
【表3】
*DIC(株)品 アクリディックA-405
【0372】
実施例9~11、比較例4
モノマー並びに触媒を下表に示す配合で混合し、アプリケーターを用いてWETで200μmの塗膜を作成し、UV照射(1000mJ/cm2)により仮硬化をおこなった。その後、150℃で30分焼付を行い、硬化膜を得た。得られた硬化膜に対し、ラビング試験、DMA測定を実施した。
【0373】
【0374】
合成例12
メチルメタアクリレート(共栄社化学(株)品:ライトエステルM) 35部、モノマーB 25部、ヒドロキシエチルアクリレート(共栄社化学(株)品:ライトエステルHOA(N)) 30部、スチレン10部を、メタクリロイルオキシエチルコハク酸(共栄社化学(株)品:ライトエステルHO-MS(N))15部をモノマー混合液とし、開始剤として1,1,3,3-テトラメチルブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート(日本油脂(株)パーオクタO)5部を酢酸ブチルに溶解し開始剤溶液とした。
撹拌可能なフラスコに酢酸ブチル115部を入れ、窒素封入しながら、モノマー溶液および開始剤溶液を滴下した。この時の重合温度を100℃とした。滴下には2時間で行い、更に100℃で熟成を4時間行った。得られたポリマー溶液を冷却後、カレンズAOI(昭和電工(株)品) 7.2部、ネオスタンU-820(日東化成(株)品)0.06部を加え65℃で5時間反応させることで、ポリマー溶液Hを得た。
【0375】
合成例13
メチルメタアクリレート(共栄社化学(株)品:ライトエステルM) 35部、2-メチレングルタル酸ジメチル 25部、ヒドロキシエチルアクリレート(共栄社化学(株)品:ライトエステルHOA(N)) 30部、スチレン10部、メタクリロイルオキシエチルコハク酸(共栄社化学(株)品:ライトエステルHO-MS(N))15部をモノマー混合液とし、開始剤として1,1,3,3-テトラメチルブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート(日本油脂(株)パーオクタO)5部を酢酸ブチルに溶解し開始剤溶液とした。
撹拌可能なフラスコに酢酸ブチル115部を入れ、窒素封入しながら、モノマー溶液および開始剤溶液を滴下した。この時の重合温度を100℃とした。滴下には2時間で行い、更に100℃で熟成を4時間行った。得られたポリマー溶液を冷却後、カレンズAOI(昭和電工(株)品) 7.2部、ネオスタンU-820(日東化成(株)品)0.06部を加え65℃で5時間反応させることで、ポリマー溶液Iを得た。
【0376】
実施例12
ポリマー溶液Hにモノブチルスズオキサイド(日東化成(株)品 MBTO)、Lunacure200(DKSHジャパン(株)品)をポリマー溶液の固形分に対してそれぞれ3wt%になるように混合し、アプリケーターを用いてWETで200μmの塗膜を作成し、80℃で5分間乾燥し塗膜を得た。得られた塗膜の一部をマスクし、UV照射(1000mJ/cm2)により仮硬化を行った。その後1%水酸化テトラメチルアンモニウム水に室温で5分浸漬し、純水により洗浄を行うことで、未硬化部分を除去した。その後、150℃で30分焼付を行い、得られた硬化膜に対し、ラビング試験、DMA測定を実施した。
【0377】
実施例13
ポリマー溶液Iにモノブチルスズオキサイド(日東化成(株)品 MBTO)、Lunacure200(DKSHジャパン(株)品)をポリマー溶液の固形分に対してそれぞれ3wt%になるように混合し、アプリケーターを用いてWETで200μmの塗膜を作成し、80℃で5分間乾燥し塗膜を得た。得られた塗膜の一部をマスクし、UV照射(1000mJ/cm2)により仮硬化を行った。その後1%水酸化テトラメチルアンモニウム水に室温で5分浸漬し、純水により洗浄を行うことで、未硬化部分を除去した。その後、150℃で30分焼付を行い、得られた硬化膜に対し、ラビング試験、DMA測定を実施した。
【0378】
実施例14
ジメチルエタノールアミンにより中和を行ったポリマー溶液HにMBTO(日東化成(株)品)、Lunacure200(DKSHジャパン(株)品)をポリマー溶液の固形分に対してそれぞれ3wt%になるように混合し、アプリケーターを用いてWETで200μmの塗膜を作成し、80℃で5分間乾燥し塗膜を得た。得られた塗膜の一部をマスクし、UV照射(1000mJ/cm2)により仮硬化を行った。その後、純水に室温で5分浸漬し、洗浄を行うことで、未硬化部分を除去した。その後、150℃で30分焼付を行い、得られた硬化膜に対し、ラビング試験、DMA測定を実施した。
【0379】
実施例15
ジメチルエタノールアミンにより中和を行ったポリマー溶液IにMBTO(日東化成(株)品)、Lunacure200(DKSHジャパン(株)品)をポリマー溶液の固形分に対してそれぞれ3wt%になるように混合し、アプリケーターを用いてWETで200μmの塗膜を作成し、80℃で5分間乾燥し塗膜を得た。得られた塗膜の一部をマスクし、UV照射(1000mJ/cm2)により仮硬化を行った。その後、純水に室温で5分浸漬し、洗浄を行うことで、未硬化部分を除去した。その後、150℃で30分焼付を行い、得られた硬化膜に対し、ラビング試験、DMA測定を実施した。
【0380】
【0381】
水現像性は水酸化テトラメチルアンモニウム水もしくは純水で洗浄後、洗浄残りがあるものを×、洗浄残りがないものを〇として評価した。
【0382】
合成例15
クロロ酢酸メチル90部、炭酸カリウム130部、ジメチルホルムアミド250部を混合し、混合液に対し、メタクリル酸78部を30~40℃で滴下した。滴下終了後、トリエチルアミン8部を投入し、50℃で4時間撹拌した。反応終了後、水500部で水洗した。有機層にトルエン300部を投入し、水300部で4度水洗した。得られた有機層を減圧下蒸留し、モノマーCを得た。
【0383】
合成例16
メチルメタアクリレート(共栄社化学(株)品:ライトエステルM) 35部、モノマーC 25部、4-ヒドロキシブチルアクリレート 30部、スチレン10部をモノマー混合液とし、開始剤としてAIBN 5部をキシレンに溶解し開始剤溶液とした。
撹拌可能なフラスコにキシレン 50部及び酢酸ブチル 50部 を入れ、窒素封入しながら、モノマー溶液および開始剤溶液を滴下した。この時の重合温度を100℃とした。滴下には2時間で行い、更に100℃で熟成を4時間行った。得られたポリマー溶液を冷却後、カレンズAOI(昭和電工(株)品) 7.2部、ネオスタンU-820(日東化成(株)品)0.06部を加え65℃で5時間反応させることで、ポリマー溶液Jを得た。
【0384】
実施例16
ポリマー溶液Jに亜鉛アセチルアセトナートとトリオクチルホスフィンオキシド、Lunacure200(DKSHジャパン(株)品)をポリマー溶液の固形分に対してそれぞれ3wt%になるように混合し、アプリケーターを用いてWETで200μmの塗膜を作成し、100℃で30分間仮硬化を実施した。このときタックのない塗膜が得られたことを確認した。その後UV照射(1000mJ/cm2)により硬化膜を得た。得られた硬化膜に対し、ラビング試験、DMA測定を実施した。キシレンラビング試験、架橋点間分子量ともに評価結果は〇であった。
【0385】
実施例17
ポリマー溶液G9部とモノマーC1部に亜鉛アセチルアセトナートとトリオクチルホスフィンオキシド、Lunacure200(DKSHジャパン(株)品)を固形分に対してそれぞれ3wt%になるように混合し、アプリケーターを用いてWETで200μmの塗膜を作成し、80℃で5分間乾燥後、UV照射(1000mJ/cm2)により仮硬化をおこなった。このときタックのない塗膜が得られたことを確認した。その後100℃30分の焼付により硬化膜を得た。得られた硬化膜に対し、ラビング試験、DMA測定を実施した。キシレンラビング試験、架橋点間分子量ともに評価結果は〇であった。
【0386】
なお、上述した各実施例の硬化性樹脂組成物は、いずれも室温で30日以上放置しても、樹脂が変質することがなく、保存安定性に優れるものであった。
【0387】
上述した各実施例の結果から、本発明の硬化性樹脂組成物を使用すると、2段階での硬化を行うことができることが明らかである。さらに、このような方法によって、インモールド成形などの、デュアルキュアによる硬化性樹脂組成物が使用される分野において使用できることが明らかである。
さらに、その使用工程において、反応副生成物として人体の健康に悪影響を与える物質を排出することもない。
本発明の硬化性樹脂組成物は、熱硬化性と活性エネルギー硬化性の両方の性質を必要とされる各種塗料組成物等において使用することができる。2段階硬化によるハードコート等のコーティング用途や、活性エネルギー線による仮接着後、熱により硬化を行う接着用途、熱による剥離用途などにも使用可能である。また、逆に熱による仮接着も可能である。さらには活性エネルギー線によるパターニング工程も活用できる。