(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022113813
(43)【公開日】2022-08-04
(54)【発明の名称】取付具及びパネル取付構造
(51)【国際特許分類】
E04F 13/08 20060101AFI20220728BHJP
【FI】
E04F13/08 101B
E04F13/08 101P
【審査請求】有
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022095960
(22)【出願日】2022-06-14
(62)【分割の表示】P 2017200580の分割
【原出願日】2017-10-16
(71)【出願人】
【識別番号】000207436
【氏名又は名称】日鉄鋼板株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002527
【氏名又は名称】特許業務法人北斗特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】橘 秀俊
(72)【発明者】
【氏名】谷口 純
(57)【要約】
【課題】建物の柱等の下地材に対してのパネルの取付強度の低下を抑えることができる取付具及びパネル取付構造を提案する。
【解決手段】取付具2は、表側の面の一端部に凹条部16を有するパネル3を、建物の棒状の下地材1に取り付ける。取付具2は、第一取付部材21と、第二取付部材22と、固定部材23を備える。第一取付部材21は、凹条部16に収まるように構成された長板部210と、長板部210のパネル3側の面の一部から突出し、パネル3を貫通するように構成されたボルト211を含む。ボルト211は、長板部210よりもパネル3側に位置する軸部を有し、長板部210よりもパネル3側と反対側に位置する頭部を有さない。第二取付部材22は、下地材1に引っ掛けられる引っ掛け部220と、引っ掛け部220から延長され、ボルト211が挿通される挿通部221を含む。固定部材23は、ボルト211に取り付けられるナット230を含む。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
表側の面の一端部に凹条部を有するパネルを、建物の棒状の下地材に取り付けるための取付具であって、
前記パネルに貫通するように取り付けられる第一取付部材と、前記下地材に取り付けられる第二取付部材と、前記第一取付部材と前記第二取付部材を固定する固定部材と、を備え、
前記第一取付部材は、前記凹条部に収まるように構成された長板部と、前記長板部の前記パネル側の面の一部から突出し、前記パネルを貫通するように構成されたボルトとを含み、
前記ボルトは、前記長板部よりも前記パネル側に位置する軸部を有し、前記長板部よりも前記パネル側と反対側に位置する頭部を有さず、
前記第二取付部材は、前記下地材に引っ掛けられる引っ掛け部と、前記引っ掛け部から延長され、前記ボルトが挿通される挿通部とを含み、
前記固定部材は、前記挿通部に挿通された前記ボルトに取り付けられるナットを含むことを特徴とする取付具。
【請求項2】
前記ボルトは、前記軸部のみで構成され、
前記軸部が、前記長板部の前記パネル側の面の一部から突出していることを特徴とする請求項1に記載の取付具。
【請求項3】
前記長板部の前記パネルとは反対側を向く面は、平面であり、
前記長板部は、前記長板部を厚み方向に貫通する孔を有さないことを特徴とする請求項1または2に記載の取付具。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか一項に記載の取付具と、
前記取付具によって、前記下地材に、互いの端部が接続された状態で取り付けられる一対のパネルと、を備え、
前記一対のパネルのうちの一方のパネルは、その端部の表側の部分に前記凹条部を有する前記パネルであり、
前記一対のパネルのうちの他方のパネルは、その端部の表側の部分に覆い部を有する別のパネルであり、
前記凹条部に収められた前記長板部は、前記覆い部によって覆われることを特徴とするパネル取付構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、取付具及びパネル取付構造に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、一対のセルフドリリングビスと、断面ハット形の取付下地金物と、一対のナットを用いて、外装材を縦胴縁に取り付ける方法が記載されている。
【0003】
この方法では、外装材に一対のセルフドリリングビスを貫通させ、この一対のセルフドリリングビスが取付下地金具の一対の取付片に挿通されるように、縦胴縁に取付下地金物を抱持させ、一対のナットで一対のセルフドリリングビスを固定する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、特許文献1に記載の方法では、一対のセルフドリリングビスのそれぞれの頭部といった小さな部分によって、外装材が表側から支えられる。
【0006】
そのため、この方法では、風等の影響により外装材の表側に負圧が生じて外装材が表側へと引っ張られたときに、外装材のうちセルフドリリングビスの頭部が接触する部分に局所的に負荷がかかり、この部分が凹むおそれがある。
【0007】
この場合、表側へと引っ張られた外装材と取付下地金具の一対の取付片との間に隙間ができ、一対のセルフドリリングビスの頭部と一対の取付片とで外装材を挟み込んで支持する状態が解除されることになり、外装材の縦胴縁への取付強度が低下するおそれがある。
【0008】
上記事情に鑑みて、本発明は、建物の棒状の下地材に対してのパネルの取付強度の低下を抑えることができる取付具及びパネル取付構造を提案することを、目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る一態様の取付具は、表側の面の一端部に凹条部を有するパネルを、建物の棒状の下地材に取り付けるための取付具である。
【0010】
一態様の取付具は、前記パネルに貫通するように取り付けられる第一取付部材と、前記下地材に取り付けられる第二取付部材と、前記第一取付部材と前記第二取付部材を固定する固定部材と、を備える。
【0011】
前記第一取付部材は、前記凹条部に収まるように構成された長板部と、前記長板部の前記パネル側の面の一部から突出し、前記パネルを貫通するように構成されたボルトとを含む。前記ボルトは、前記長板部よりも前記パネル側に位置する軸部を有し、前記長板部よりも前記パネル側と反対側に位置する頭部を有さない。前記第二取付部材は、前記下地材に引っ掛けられる引っ掛け部と、前記引っ掛け部から延長され、前記ボルトが挿通される挿通部とを含む。前記固定部材は、前記挿通部に挿通された前記ボルトに取り付けられるナットを含む。
【0012】
本発明に係る一態様のパネル取付構造は、前記取付具と、前記取付具によって、前記下地材に、互いの端部が接続された状態で取り付けられる一対のパネルと、を備える。
【0013】
前記一対のパネルのうちの一方のパネルは、その端部の表側の部分に前記凹条部を有する前記パネルである。前記一対のパネルのうちの他方のパネルは、その端部の表側の部分に覆い部を有する別のパネルである。
【0014】
前記凹条部に収められた前記長板部は、前記覆い部によって覆われる。
【発明の効果】
【0015】
本発明に係る一態様の取付具は、建物の棒状の下地材に対してのパネルの取付強度の低下を抑えることができる。
【0016】
本発明に係る一態様のパネル取付構造は、建物の棒状の下地材に対してのパネルの取付強度の低下を抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】
図1は、本発明に係る一実施形態の取付具を用いたパネル取付構造を示す側断面図である。
【
図2】
図2A,Bは、同上のパネル取付構造の要部を示す図であり、
図2Aは、
図1のA部分の拡大側断面図であり、
図2Bは、
図1のB-B線における断面図である。
【
図3】
図3は、同上のパネル取付構造の取付具を示す分解斜視図である。
【
図4】
図4は、同上の取付具の変形例を示す分解斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下の実施形態は、取付具及びパネル取付構造に関し、詳しくは、建物の棒状の下地材にパネルを取り付ける取付具、及びこの取付具を備えたパネル取付構造に関する。
【0019】
(1)概要
図1~
図3には、一実施形態の取付具2が示されている。取付具2は、建物の棒状の下地材1に、パネル3を取り付けるためのものである。以下では、
図1に示す取付状態を基準として、下地材1に対してパネル3が位置する側を前方とし、その反対側を後方とし、この前後方向に対して直交する水平な方向を左右方向として、各構成について説明する。
【0020】
(2)各構成についての説明
(2-1)下地材
下地材1は、建物の躯体を構成する柱や、縦胴縁等の、上下方向を長手方向とする棒状の部材である。パネル3は、横方向(左右方向)に間隔をあけて一列に並んだ複数の下地材1のそれぞれに対して、取付具2を介して取り付けられる。複数の下地材1は、複数の柱、または複数の縦胴縁、または少なくとも1つの柱と少なくとも1つの縦胴縁の組み合わせのいずれかである。
【0021】
(2-2)パネル
パネル3は、外装材、内装材等として用いられる、サンドイッチパネルである。本実施形態では、パネル3は、左右方向を長手方向とし、上下方向を短手方向とし、前後方向を厚み方向とする略矩形板状のパネルである。パネル3の左右方向の長さは、例えば、3~7mである。
【0022】
パネル3は、その下端部の表側の部分(前端部)に、下方に突出した覆い部11を有する。パネル3は、その下端部の前後方向の中央部分に、下方に突出した凸部12を有する。覆い部11の下端は、凸部12の下端よりも下方に位置する。パネル3は、その下端部の裏側の部分(後端部)に、下方に突出した第二覆い部13を有する。
【0023】
パネル3は、その上端部の表側の部分(前端部)に、上方及び前方に向けて開放された凹段部14を有する。パネル3は、その上端部の前後方向の中央部分に、上方に開口した凹部15を有する。
【0024】
凹段部14は、凹部15の前側に位置し、凹部15よりも下方まで延びている。凹段部14のうち、凹部15よりも下方の部分に、下地材1に向けて(つまり後方に)凹んだ凹条部16が設けられている。つまり、パネル3は、その上端部の表側の部分(前端部)に、凹条部16を有する。
【0025】
パネル3は、2枚の金属外皮17,18の間に芯材19を挟んだサンドイッチパネルである。金属外皮17,18のそれぞれは、フラットな金属板にロール加工やプレス加工をすることによって、所望の形状に形成されている。フラットな金属板は、厚みが0.27~1.6mm程度であって、塗装鋼板、亜鉛めっき鋼板、アルミニウム-亜鉛合金めっき鋼板、ガルバリウム鋼板(登録商標)、エスジーエル(登録商標)鋼板等であるが、これに限定されない。
【0026】
芯材19は、樹脂発泡体または繊維状無機材またはその組み合わせであり、断熱性や耐火性を有する。樹脂発泡体は、例えば、ポリイソシアヌレートフォームやウレタンフォームやフェノールフォームなどである。繊維状無機材は、例えば、ロックウールやグラスウールなどをバインダー等で固めたブロック体を複数並べて1枚の板状に配置したものである。芯材19のうちパネル外周部に位置する芯材は、例えば、石膏や珪酸カルシウムなどの耐火性の高い無機材である。
【0027】
凹部15は、
図2Aに示すように、金属外皮17の上端部を所定形状に折り曲げて形成した第一側壁150と、金属外皮18の上端部を所定形状に折り曲げて形成した第二側壁151とを含む。側壁150,151のそれぞれの内部は、中空であり、芯材19が充填されていない。凹条部16の底面(前方を向く面)は、第一側壁150の前面よりも後方に位置する。
【0028】
凸部12は、金属外皮17の下側の先端部と、金属外皮18の下側の先端部と、この間に位置する芯材19とで構成される。覆い部11は、金属外皮17の一部をU字状に折り曲げて形成され、その内部が中空であり、芯材19が充填されていない。凹条部16は、金属外皮17の一部を折り曲げて形成され、第一側壁150と連続する。
【0029】
図2A、
図2Bに示すように、パネル3には、凹条部16から下地材1に向けて貫通する貫通孔20が設けられる。パネル3に形成される貫通孔20の数は、パネル3が取り付けられる下地材1の数に対応しており、本実施形態では、下地材1の数の2倍である。貫通孔20の形成は、例えば、施工現場で行われる。なお、貫通孔20の形成は、パネル3の製造工場で行われてもよい。
【0030】
図1に示すように、下地材1の前面には、複数のパネル3が、互いの端部が接続された状態で上下に並ぶように取り付けられる。複数のパネル3のうち、上下に隣接する2つのパネル3は、上側のパネル3の凸部12が下側のパネル3の凹部15に嵌合し、上側のパネル3の覆い部11が下側のパネル3の凹段部14に収まり、上側のパネル3の第二覆い部13が下側のパネル3の凹部15の後側のスペースに収まることで、互いに接続される。
【0031】
(2-3)取付具
図2A,
図2Bに示すように、取付具2は、パネル3に貫通するように取り付けられる
第一取付部材21と、下地材1に取り付けられる第二取付部材22と、第一取付部材21と第二取付部材22を固定する固定部材23を備える。取付具2はさらに、下地材1に第二取付部材22を固着するための固着具24を備える。
【0032】
図2A、
図2B、
図3に示すように、第一取付部材21は、凹条部16に収まるように構成された長板部210と、長板部210の一部から突出し、パネル3を貫通するように構成されたボルト211とを含む。本実施形態では、長板部210からは、一対のボルト211が突出している。長板部210は、その左右方向の長さが、下地材1の左右方向の長さよりも長い。長板部210は、例えば、1枚の鋼板で形成される。一対のボルト211は、左右方向に間隔をあけて位置する。一対のボルト211の間の間隔は、パネル3に設けられた隣接する一対の貫通孔20の間の間隔と同じである。長板部210の厚み(前後方向の長さ)は、凹部15の第一側壁150の前面から凹条部16の底面までの前後方向の長さよりと同じか、それよりも若干短い。一対のボルト211は、例えば、溶接により長板部210と一体に設けられる。
【0033】
第二取付部材22は、下地材1に引っ掛けられる引っ掛け部220と、引っ掛け部220から延長され、ボルト211が挿通される挿通部221とを含む。本実施形態では、引っ掛け部220は、下地材1を挟むように平面視コ字状に設けられている。コ字状の引っ掛け部220からは、一対の挿通部221が互いに逆方向(右方と左方)に突出している。
【0034】
引っ掛け部220は、下地材1の後面に沿う後板部222と、後板部222の左右両端部から前方に突出し、下地材1の左右の側面に沿う一対の側板部223とを有する。後板部222、及び一対の側板部223のそれぞれは、矩形板状である。右側の側板部223の前端部から右方に向けて挿通部221が突出し、左側の側板部223の前端部から左方に向けて挿通部221が突出している。右側の挿通部221の右端から左側の挿通部221の左端までの長さは、長板部210の左右方向の長さと略同じである。
【0035】
一対の挿通部221のそれぞれは、本実施形態では、矩形板状であり、ボルト211が挿通される挿通孔224が厚み方向(前後方向)に貫通している。挿通孔224は、左右方向に長い長孔である。挿通孔224の上下方向の長さは、ボルト211よりも少し大きい。
【0036】
後板部222の前面から一対の挿通部221の前面までの前後方向の長さは、下地材1の前後方向の長さと同じである。第二取付部材22は、1枚の鋼板を折り曲げ加工等することによって形成される。
【0037】
引っ掛け部220の後板部222には、固着具24が挿通される貫通孔225が設けられている。本実施形態では、後板部222には、左右一対の貫通孔225が設けられている。
【0038】
固定部材23は、挿通部221に挿通されたボルト211に取り付けられるナット230を含む。本実施形態では、第一取付部材21が一対のボルト211を有するため、固定部材23は、一対のナット230を含む。一対のナット230は、一対の挿通部221に挿通された一対のボルト211のそれぞれに取り付けられる。固定部材23はさらに、一対のワッシャー231と一対のスプリングワッシャー232を含む。
【0039】
固着具24は、タッピンねじ等である。本実施形態では、取付具2は、一対の固着具24を備える。
【0040】
(3)パネル取付方法
続いて、下地材1に対して複数のパネル3を取り付ける方法の一例について説明する。以下では、複数のパネル3のうち、一番上に位置するパネル3をパネルP1とし、上から二番目に位置するパネル3をパネルP2とし、上から三番目に位置するパネル3をパネルP3とする。
【0041】
まず、パネルP1を下地材1に固定する。パネルP1は、例えば、スクリュービス等の固定具(図示せず)を、パネルP1の上端部の凹条部16から下地材1へと打ち込むことによって、下地材1に固定される。なお、パネルP1は、取付具2を用いて下地材1に固定してもよい。
【0042】
次いで、パネルP2を、その上端部がパネルP1の下端部に接続される接続位置に配置し、取付具2を用いてパネルP2を下地材1に固定する。
【0043】
詳しくは、パネルP2を接続位置に配置する前に、パネルP2の上端部の凹条部16には、第一取付部材21を貫通するように取り付ける。第一取付部材21は、パネルP2に対して、凹条部16に長板部210が収められ、一対のボルト211が一対の貫通孔20にそれぞれ挿通され、一対のボルト211のそれぞれの先端部がパネルP2から後側に突出するように、取り付けられる。
【0044】
第一取付部材21が取り付けられたパネルP2を、パネルP1の下方から上方に移動させることで、パネルP2を接続位置に配置する。パネルP2の移動は、クレーン等の吊り装置を用いて行われる。パネルP2には、その上端部が露出するように下から支持するパネル支持具(図示せず)が取り付けられ、このパネル支持具が吊り装置によって吊り支持される。
【0045】
パネルP2を接続位置に配置した状態で、第二取付部材22を下地材1に取り付ける。第二取付部材22は、引っ掛け部220が下地材1を挟むように配されて、下地材1に引っ掛けられ、一対の挿通部221の挿通孔224に、第一取付部材21の一対のボルト211のうちパネルP2から後側に突出した部分がそれぞれ挿通される。
【0046】
引っ掛け部220の一対の貫通孔225には、一対の固着具24がそれぞれ挿通され、これにより、第二取付部材22は下地材1に固着される。第二取付部材22が下地材1に固着された状態で、第二取付部材22の一対の挿通部221の前面と下地材1の前面とは、略面一となる。
【0047】
第二取付部材22を下地材1に固着した後、固定部材23で第一取付部材21と第二取付部材22を固定する。固定部材23の一対のワッシャー231、一対のスプリングワッシャー232、及び一対のナット230はこの順に、一対の挿通部221に挿通された一対のボルト211にそれぞれ取り付けられる。一対のナット230を締結することで、長板部210と一対の挿通部221とがパネルP2を挟み込む状態で、第一取付部材21と第二取付部材22とが固定される。本実施形態では、パネルP2は、長板部210と下地材1によっても挟み込まれる。
【0048】
以上のようにして、パネルP2は、下地材1に取付具2を介して取り付けられる。パネルP2を下地材1に取り付けた後、パネルP2からパネル支持具を取り外し、吊り装置による吊り支持を解除する。
【0049】
パネルP2を下地材1に取り付けた後、同様の手順で、パネルP3を下地材1に取り付ける。
【0050】
(4)作用効果
以上説明した本実施形態の取付具2では、負圧等の影響によりパネル3が表側に引っ張られたときに、パネル3にはビスの頭部といった小さな部分ではなく長板部210が当たることになり、パネル3の接触部分に局所的な負荷がかかることを防ぐことができる。
【0051】
そのため、本実施形態の取付具2では、表側に引っ張られたパネル3と一対の挿通部221との間に隙間ができにくく、パネル3を長板部210と一対の挿通部221とで挟んで支持した状態を維持でき、下地材1に対するパネル3の取付強度の低下を抑えることができる。
【0052】
また、本実施形態の取付具2では、下地材1に固着された第二取付部材22に対して第一取付部材21を固定することができるため、下地材1に対するパネル3の相対位置の変化を抑えることができ、さらには、パネル3の下向き荷重を下地材1で支えることができる。そのため、本実施形態の取付具2は、複数のパネル3を上から順に取り付ける施工で用いられる取付具として有用である。
【0053】
また、本実施形態の取付具2では、一対のボルト211が長板部210を介して連結された構造であるため、一対のボルト211が別々に設けられる場合に比べて、下地材1に対するパネル3の取付強度の向上を図ることができる。
【0054】
また、本実施形態の取付具2では、一対のボルト211が長板部210と一体であるため、一対のボルト211に一対のナット230を締め付けるときに、ボルト211が回転せず、ナット230が締め付けやすい。
【0055】
また、本実施形態の取付具2では、長板部210を凹条部16に収まるように設けたことで、上側のパネル3の下端部と下側のパネル3の上端部とを接続するときに、長板部210が邪魔にならず、また、長板部210に押されて覆い部11が表側に浮き上がることも防ぐことができる。
【0056】
また、本実施形態のパネル取付構造では、パネルP2に取り付けられた第一取付部材21の長板部210は、パネルP1の覆い部11によって前側から覆い隠すことができる。そのため、本実施形態のパネル取付構造では、一方向に長尺に設けられた長板部210が、露出して目立つことを防ぐことができる。
【0057】
(5)変形例
続いて、上述した本実施形態の取付具2及びパネル取付構造の変形例について説明する。
【0058】
取付具2は、上述の構造に限らず、適宜変更可能である。取付具2は、
図4に示す変形例のように、第一取付部材21が、ボルト211を1つだけ有し、第二取付部材22が、平面視L字状の引っ掛け部220と、1つの挿通部221を有してもよい。
【0059】
複数のパネル3(パネルP1,P2,P3)は、形状、寸法、及び材質が、互いに同じでなくてもよい。例えば、パネルP1は、上端部に、接続のための構造(凹段部14、凹部15、及び凹条部16)を備えなくてもよい。また、複数のパネル3は、上下方向の長さが互いに異なってもよい。
【0060】
また、上述したパネル取付構造は、上下に並ぶ、横長姿勢の複数のパネル3を、取付具2を用いて、縦胴縁等の縦長の棒状の下地材1に取り付ける構造であったが、これに限定
されない。例えば、パネル取付構造は、左右に並ぶ、縦長姿勢の複数のパネル3を、取付具2を用いて、横胴縁等の横長の棒状の下地材1に取り付ける構造であってもよい。この場合、縦長姿勢のパネル3は、その左右の端部に、接続のための構造(覆い部11、凸部12、第二覆い部13、凹段部14、凹部15、凹条部16)を備え、取付具2は、長板部210の長手方向が上下方向に対して平行となる姿勢で用いられる。
【0061】
(6)まとめ
以上説明した実施形態及びその変形例の取付具2のように、第一の態様の取付具2は、下記の特徴を備える。
【0062】
すなわち、第一の態様の取付具2は、表側の面の一端部に凹条部16を有するパネル3を、建物の棒状の下地材1に取り付けるための取付具2である。
【0063】
第一の態様の取付具2は、パネル3に貫通するように取り付けられる第一取付部材21と、下地材1に取り付けられる第二取付部材22と、第一取付部材21と第二取付部材22を固定する固定部材23と、を備える。
【0064】
第一取付部材21は、凹条部16に収まるように構成された長板部210と、長板部210の一部から突出し、パネル3を貫通するように構成されたボルト211とを含む。第二取付部材22は、下地材1に引っ掛けられる引っ掛け部220と、引っ掛け部220から延長され、ボルト211が挿通される挿通部221とを含む。固定部材23は、挿通部221に挿通されたボルト211に取り付けられるナット230を含む。
【0065】
上記の特徴を備えることで、第一の態様の取付具2では、風等の影響によって生じる負圧によってパネル3が表側に引っ張られたときに、パネル3に長板部210が接触することにより接触部分にかかる負荷を分散できて、接触部分が凹むことを抑制することができる。これにより、第一の態様の取付具2では、下地材1に対してのパネル3の取付強度の低下を抑えることができる。
【0066】
また、上述した実施形態及びその変形例の取付具2のように、第二の態様の取付具2は、第一の態様の取付具2の特徴に加えて、さらに下記の特徴を備える。
【0067】
すなわち、第二の態様の取付具2は、引っ掛け部220を下地材1に固着するための固着具24をさらに備える。
【0068】
上記の特徴を備えることで、第二の態様の取付具2では、下地材1に対して第二取付部材22の位置が変化することを防ぐことができ、その結果、下地材1に対するパネル3の相対位置の変化を防ぐことができる。
【0069】
また、上述した実施形態の取付具2のように、第三の態様の取付具2は、第一または第二の態様の取付具2の特徴に加えて、下記の特徴を備える。
【0070】
すなわち、第三の態様の取付具2では、引っ掛け部220は、下地材1を挟むようにコ字状に設けられている。
【0071】
上記の特徴を備えることで、第三の態様の取付具2では、引っ掛け部220で下地材1を挟むことができ、下地材1に対する第二取付部材22の相対位置の変化を抑制することができる。
【0072】
また、上述した実施形態の取付具2のように、第四の態様の取付具2は、第一または第
二の態様の取付具2の特徴に加えて、下記の特徴を備える。
【0073】
すなわち、第四の態様の取付具2では、第一取付部材21は、長板部210の一部から突出した一対のボルト211を含む。第二取付部材22は、下地材1を挟むようにコ字状に設けられた引っ掛け部220と、引っ掛け部220から互いに逆方向に突出した一対の挿通部221を含む。固定部材23は、一対の挿通部221に挿通された一対のボルト211のそれぞれに取り付けられる一対のナット230を含む。
【0074】
上記の特徴を備えることで、第四の態様の取付具2では、長板部210を、一対のボルト211を介して第二取付部材22に強固に連結することができ、下地材1に対してのパネル3の取付強度を向上させることができる。また、第四の態様の取付具2では、一対のボルト211が長板部210を介して連結された構造であるため、第一取付部材21自体の強度の向上も図りやすい。
【0075】
また、上述した実施形態のパネル取付構造のように、第一の態様のパネル取付構造は、下記の特徴を備える。
【0076】
すなわち、第一の態様のパネル取付構造は、第一乃至第四のいずれかの態様の取付具2と、取付具2によって、下地材1に、互いの端部が接続された状態で取り付けられる一対のパネルと、を備える。
【0077】
一対のパネルのうちの一方のパネル(パネルP2)は、その端部の表側の部分に凹条部16を有するパネル3であり、一対のパネルのうちの他方のパネル(パネルP1)は、その端部の表側の部分に覆い部11を有する別のパネルである。凹条部16に収められた長板部210は、覆い部11によって覆われる。
【0078】
上記の特徴を備えることで、第一の態様のパネル取付構造では、一方のパネル3の凹条部16に位置する長板部210を、隣接する別のパネルの覆い部11で覆うことができ、一方向に長尺な長板部210がパネル3の表側に露出して、目立つことを防ぐことができる。
【0079】
以上、本発明を添付図面に示す形態に基づいて説明したが、本発明は上記の形態に限定されるものではなく、本発明の意図する範囲内であれば、適宜の設計変更が可能である。
【符号の説明】
【0080】
1 下地材
2 取付具
3 パネル
21 第一取付部材
22 第二取付部材
23 固定部材
24 固着具
210 長板部
211 ボルト
220 引っ掛け部
221 挿通部
230 ナット
11 覆い部
16 凹条部