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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022113830
(43)【公開日】2022-08-04
(54)【発明の名称】造影剤注入システム
(51)【国際特許分類】
   A61M 5/172 20060101AFI20220728BHJP
   A61M 5/145 20060101ALI20220728BHJP
   A61M 5/168 20060101ALI20220728BHJP
   A61M 5/142 20060101ALI20220728BHJP
【FI】
A61M5/172 500
A61M5/145 508
A61M5/168 504
A61M5/142 530
【審査請求】有
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022096336
(22)【出願日】2022-06-15
(62)【分割の表示】P 2017195820の分割
【原出願日】2017-10-06
(31)【優先権主張番号】P 2016198954
(32)【優先日】2016-10-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】391039313
【氏名又は名称】株式会社根本杏林堂
(74)【代理人】
【識別番号】100106297
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 克博
(72)【発明者】
【氏名】根本 茂
(72)【発明者】
【氏名】蜂谷 隆司
(57)【要約】
【課題】薬液注入中の患者に生体情報を取得し、造影剤注入をより安全に行うことが可能な造影剤注入システムを提供することを目的とする。
【解決手段】この造影剤注入システムは、A:ピストン駆動機構(130)およびその動作を制御する制御回路(145)を有し、患者に造影剤を注入する薬液注入装置(100)と、B:患者の生体情報を取得する生体情報検出器(701)と、C:前記生体情報検出器からの情報を用いてデータ処理を行うデータ処理ユニット(155等)とを備える。データ処理ユニットは、(a)薬液の注入動作中に、心拍情報、血中酸素飽和度、血圧情報、心電図情報、脈波情報、体温、呼吸数、吸気状態、および呼気状態のうち少なくとも1つの値が、所定の範囲内にあるか否かを判定し、(b)所定の範囲内にない場合には、アラームを発する、または、ピストン駆動機構の動作を停止する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
A:シリンジのピストンを移動させるピストン駆動機構およびその動作を制御する制御回路を有し、患者に造影剤を注入する薬液注入装置と、
B:患者の心拍情報、血中酸素飽和度、血圧情報、心電図情報、脈波情報、体温、呼吸数、吸気状態、および呼気状態のうち少なくとも1つの情報を取得する生体情報検出器と、
C:前記生体情報検出器からの情報を用いてデータ処理を行うデータ処理ユニットと、
を備え、
前記データ処理ユニットは、
(a)薬液の注入動作中に、前記心拍情報、血中酸素飽和度、血圧情報、心電図情報、脈波情報、体温、呼吸数、吸気状態、および呼気状態のうち少なくとも1つの値が、所定の範囲内にあるか否かを判定し、
(b)所定の範囲内にない場合には、アラームを発する、または、前記ピストン駆動機構の動作を停止する
ように構成されている、造影剤注入システム。
【請求項2】
前記薬液注入装置は、注入ヘッドと、コンソールとを備え、
前記注入ヘッドは、MRI室内で使用可能なものである、請求項1に記載の造影剤注入システム。
【請求項3】
前記コンソールは、ディスプレイを有し、
前記心拍情報、血中酸素飽和度、血圧情報、心電図情報、脈波情報、体温、呼吸数、吸気状態、および呼気状態のうち少なくとも1つの情報が前記ディスプレイに表示されるように構成されている、
請求項1または2に記載の造影剤注入システム。
【請求項4】
A:シリンジのピストンを移動させるピストン駆動機構およびその動作を制御する制御回路を有し、患者に造影剤を注入する薬液注入装置と、
B:患者の心拍情報、血中酸素飽和度、血圧情報、心電図情報、脈波情報、体温、呼吸数、吸気状態、および呼気状態のうち少なくとも1つの情報を取得する生体情報検出器と、
D:データを外部に送信するデータ送信ユニットと、
を備え、
前記薬液注入装置は、
(c)前記生体情報検出器から、心拍情報、血中酸素飽和度、血圧情報、心電図情報、脈波情報、体温、呼吸数、吸気状態、および呼気状態のうち少なくとも1つの生体情報を取得し、
(d)取得した前記生体情報を、前記データ送信ユニット経由で、外部へ送信する
ように構成されている、造影剤注入システム。
【請求項5】
前記薬液注入装置は、
(e)前記生体情報を、薬液注入データとともに、外部に送信する、請求項4に記載の造影剤注入システム。
【請求項6】
前記薬液注入データは、使用した薬液に関する情報、注入量、注入時間に対して注入速度を表した注入プロファイル、および注入時間に対して注入圧力を表したプロファイルのうちの少なくとも1つである、請求項5に記載の造影剤注入システム。
【請求項7】
さらに、
患者の心拍数を変化させる薬剤を注入する自動注入器を備え、
前記薬液注入装置は、
(f)前記薬剤が注入される前における、心拍情報、血中酸素飽和度、血圧情報、心電図情報、脈波情報、体温、呼吸数、吸気状態、および呼気状態のうち少なくとも1つの情報と、
(g)前記薬剤が注入された後における、心拍情報、血中酸素飽和度、血圧情報、心電図情報、脈波情報、体温、呼吸数、吸気状態、および呼気状態のうち少なくとも1つの情報と、
を取得するように構成されている、請求項1~6のいずれか一項に記載の造影剤注入システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、患者に薬液として少なくとも造影剤を注入する造影剤注入システムに関する。特には、薬液注入中の患者に生体情報を取得し、造影剤注入をより安全に行うことが可能な造影剤注入システムを提供することにある。また、本発明は、薬液注入において患者に生じた生体的変化の情報を記録することができる造影剤注入システムを提供することにある。
【背景技術】
【0002】
現在、医療用の画像診断装置として、CT(Computed Tomography)装置、MRI(Magnetic Resonance Imaging)装置、PET(Positron Emission Tomography)装置、超音波診断装置、血管造影(アンギオグラフィ)撮像装置等が知られている。このような撮像装置を使用する際、患者に造影剤や生理食塩水など(以下、これらをまとめて単に「薬液」とも言う)を注入することがある。
【0003】
造影剤注入は、基本的には、次のようにして行われる。まず、検査室内の撮像装置の寝台に患者が横たわり、その患者に対して、同じく検査室内に配置された注入ヘッドから造影剤などの薬液を注入する。検査室に隣接する操作室には、注入プロトコルのデータを作成するのに用いられるコンソールが配置されている。造影剤の注入は、一例で、撮像室内の医師が注入ヘッドの所定のボタンを押すことにより、開始される。
【0004】
造影剤を用いる撮像検査に関し、例えば特許文献1では、造影剤の注入段階や撮像段階といった各段階で患者の心拍データを取得することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2011-183088号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、造影剤の注入においては、薬液注入中に患者に生じる生体的変化の情報を取得し、異常が発生した場合には必要に応じてアラームを発したり、機器の動作を自動停止したりする構成となっていることが望ましい。また、造影剤による造影効果は例えば心拍数等によっても変化するものであり、こうした、造影効果に影響を及ぼすような患者の生体情報を薬液注入装置が有することは、造影検査の再現性や次回の薬液注入条件設定の観点から有用である。また、薬液注入の際、患者にどのような生態的変化があったのかを記録しておくことも重要である。
【0007】
そこで本発明は、薬液注入中の患者に生体情報を取得し、造影剤注入をより安全に行うことが可能な造影剤注入システムを提供することを目的とする。また、本発明は、薬液注入において患者に生じた生体的変化の情報を記録することができる造影剤注入システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するための本発明の一形態の構成は下記のとおりである:
A:シリンジのピストンを移動させるピストン駆動機構およびその動作を制御する制御回路を有し、患者に造影剤を注入する薬液注入装置と、
B:患者の心拍情報、血中酸素飽和度、血圧情報、心電図情報、脈波情報、体温、呼吸数、吸気状態、および呼気状態のうち少なくとも1つの情報を取得する生体情報検出器と、
C:前記生体情報検出器からの情報を用いてデータ処理を行うデータ処理ユニットと、
を備え、
前記データ処理ユニットは、
(a)薬液の注入動作中に、前記心拍情報、血中酸素飽和度、血圧情報、心電図情報、脈波情報、体温、呼吸数、吸気状態、および呼気状態のうち少なくとも1つの値が、所定の範囲内にあるか否かを判定し、
(b)所定の範囲内にない場合には、アラームを発する、または、前記ピストン駆動機構の動作を停止する
ように構成されている、造影剤注入システム。
【0009】
「造影剤」の具体例としては、ヨード濃度240mg/mlの造影剤(例えば、37℃において粘度3.3mPa・s、比重1.268~1.296)、ヨード濃度300mg/mlの造影剤(例えば、37℃において粘度6.1mPa・s、比重1.335~1.371)、ヨード濃度350mg/mlの造影剤(例えば、37℃において粘度10.6mPa・s、比重1.392~1.433)等がある。MRI検査で用いられる造影剤では、ガドリニウム製剤が含まれる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、薬液注入中の患者に生体情報を取得し、造影剤注入をより安全に行うことが可能な造影剤注入システムを提供することができる。薬液注入において患者に生じた生体的変化の情報を記録することができる造影剤注入システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の一形態のシステムを模式的に示す図である。
図2A】注入ヘッドの一例を示す外観斜視図である。
図2B】病院システムの一例を示す図である。
図3】コンソールの画面に表示される画像の一例を示す図である。
図4】生体情報検出器のプローブユニットを模式的に示す図である。
図5】圧電素子を用いた検出ユニットを模式的に示す図である。
図6A】生体情報の検出と薬液注入条件の設定の手順を示す図である。
図6B】心筋負荷剤の注入と造影剤の注入の手順を示す図である。
図7】注入条件設定から薬液注入までのフェーズを示した模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の実施の形態を図面を参照して以下に説明する。なお、以下の説明では、基本的に、図面に表された1つの具体的な形態に基づいて説明を行うが、各構成の具体的形態は特定のものに限定されるものではない。
【0013】
[構成]
本実施形態の医用撮像システム1は、図1に例示するように、撮像装置1100と、薬液注入装置100と、生体情報検出器701とを備えている。
【0014】
薬液注入装置100は、注入ヘッド110と、コンソール150とを備えている。または、それに加えて所定の制御部を内蔵した電源ボックス(不図示)を備えていてもよい。注入ヘッド110については、その具体的な一例を、図2Aに示す(詳細後述)。薬液注入装置100は、従来、種々のタイプのものが知られている。本発明は、一形態ではMRI用の薬液注入装置に好適であるが、必ずしもこれに限定されない。
【0015】
以下、本実施形態のシステムの各構成について説明する。
1.薬液注入装置
(1)注入ヘッド
注入ヘッド110は、一例で、2本のシリンジを装着可能な二筒式のものである(図1図2A参照)。一方のシリンジ200Cに造影剤が充填され、もう一方のシリンジ200Sに生理食塩水が充填されていてもよい。他の態様では、2本とも造影剤(濃度が異なる)であってもよい。
【0016】
(シリンジ)
シリンジ200S、200C(単にシリンジ200ともいう)の構成は概略次の通りである。シリンジ200は、中空筒状のシリンダ部材221と、そのシリンダ部材221にスライド自在に挿入されたピストン部材222とを有している。なお、シリンジは予め薬液が充填されたプレフィルドタイプであってもよいし、空のシリンジに薬液を吸引して使用する吸引式のものであってもよい。「ピストン部材」は必ずしも図示のような長いロッドのものに限らず、いわゆるロッドレスタイプのもの(単に「プランジャ」などと称することもできる)であってもよい。
【0017】
(ICタグ)
シリンジの一部にICタグ225が付されていてもよい。このICタグ225には、シリンジに関する情報(シリンジの識別情報、シリンジの耐圧、シリンダ部材の内径、ピストン部材のストローク等)や、該シリンジに充填された薬液の情報(名称(例えば製品名)、ヨード量またはガドリニウム量などの成分情報、消費期限、薬液容量等)が記憶されている。ICタグは、そのタグに固有のユニークIDを有していてもよい。ICタグに限らず、バーコード等を利用してもよい。所定のデータを保持するものであれば、基本的には、どのようなデータキャリア手段であっても構わない。
【0018】
(注入ヘッド)
注入ヘッド110は図2Aに示すように筐体111を有しており、この筐体111の上面先端側には、それぞれシリンジ200C、200Sが載せられる2つの凹部120aが形成されている。凹部120aはシリンジ保持部として機能する部分である。注入ヘッド110の筐体の上面には、注入ヘッド110に各種動作を行わせるための複数の物理ボタンも設けられている。物理ボタンとしては、特に限定されないが、次のようなものであってもよい。ラム部材を前進させるための前進ボタン、ラム部材を後退させるための後退ボタン、前進ボタンまたは後退ボタンと同時に押すことでラム部材の移動速度を早くするアクセラレータボタン、および、ヘッドの動作を停止させる停止ボタン等。
【0019】
注入ヘッド110は、シリンジ200のピストン部材222を押し込むピストン駆動機構130を有している。ピストン駆動機構130は二系統設けられており、各機構130は独立して動作する。ピストン駆動機構130は、例えばシリンジ内への薬液吸引のために、ピストン部材222を後退させてもよい。2つのピストン駆動機構130は同時に駆動されてもよいし、別々のタイミングで駆動されてもよい。
【0020】
ピストン駆動機構130は、図1に示すように、具体的には、駆動源であるモータ131と、その駆動モータの回転出力を直線運動に変換する伝達機構132と、その機構に連結され、ピストン部材222を前進および/または後退させるラム部材133とを有するものであってもよい。なお、MRI用の機器の場合、超音波モータなど非磁性体の構造部品が使用される。
【0021】
注入ヘッド110には、ラム部材がピストン部材222を押圧する力を検出するためのロードセル138が設けられていてもよい。ロードセル138の検出結果を利用して、例えば、薬液を注入しているときの薬液の圧力の推定値を求めることができる。この推定値の算出は、針のサイズ、薬液の濃度、注入条件なども考慮して行われる。他にも、ロードセル138を用いるのではなく、駆動モータ131のモータ電流に基づいて圧力の算出を行うものであってもよい。
【0022】
シリンジにICタグ225が付されている場合には、注入ヘッド110は、同ICタグ225の情報を読み取るおよび/または同ICタグ225に情報を書き込むリーダ/ライタ(不図示)を有していてもよい。このリーダ/ライタは、シリンジ200が装着される凹部120aに設けられていてもよい。なお、リーダ/ライタは、ICタグ225の情報を読み取る機能のみを有するものであってもよい。
【0023】
注入ヘッド110は、ピストン駆動機構130等の動作を制御するための制御回路145を有していてもよい。制御回路145は、プロセッサおよびメモリ等を有する制御回路として構成することができる。
【0024】
(2)生体情報検出器
生体情報検出器701は、1つまたは複数のセンサを有し、心拍情報、血中酸素飽和度、血圧情報、心電図情報、脈波情報、体温、呼吸数、吸気状態、および呼気状態ののうち少なくとも1つの検出を行い、患者の生体情報を取得する。
【0025】
(パルスオキシメータ)
生体情報検出器701としては、一例として、パルスオキシメータを利用してもよい。この例のパルスオキシメータは、図1図4に模式的に示すように、患者の体の一部(例えば指先)を挟むプローブユニット710と、それに接続された制御回路705(図1参照)とを有している。検出結果表示するディスプレイは設けられていなくてもよいが、本発明は必ずしもそれに限定されない。
【0026】
プローブユニット710には、詳細な図示は省略するが、患者の体に向けて光を照射する発光素子と受光素子とが設けられている。発光素子から、赤色光と赤外光とを出射し、これらの光が指先等を透過したもの(または反射したもの)を受光素子で測定する。血液中のヘモグロビンは酸素との結合の有無によって赤色光と赤外光の吸光度が異なるので、透過光や反射光を測定して分析することにより血中酸素飽和度を測定することができる。パルスオキシメータは、また、脈拍数を測定できるものであってもよい。また、脈波形状を得ることができるものであってもよい。
【0027】
MRI検査で使用できるように、磁場に影響を与えない(またはその影響を無視できる)非磁性体を用いた検出デバイスも有用である。この場合、プローブユニット710からの信号を伝達するためのケーブル712(図4)には、メタルケーブルではなく、光ファイバー等が用いられる。
【0028】
生体情報検出器701としては、例えば、取得した生体情報を無線方式で外部に送信するための無線モジュールを有するものであってもよい。この場合、無線の方式としては、
無線LAN、Wi-Fi(登録商標)、Bluetooth(登録商標)、ZigBee(登録商標)等を用いるものであってもよい。無線モジュールは、特に限定されるものではないが、指先に取り付けられるユニットに設けられていてもよいし、または、制御回路705を収容する筐体内(もしくはその筐体に接続される態様で)に設けられていてもよい。
【0029】
(心電計)
さらに、患者の心電図情報を取得するための心電計(不図示)を利用してもよい。心電計は、コンソール150に接続して利用されるものであってもよい。
【0030】
(その他の検出デバイス)
パルスオキシメータは発光素子を用いた非接触型のものであったが、圧電素子(一例でピエゾ素子)を患者の体の一部に取り付けて生体情報を取得するものであってもよい。例えば、図5に模式的に示すように、圧電素子である接触部731が設けられた圧電素子ユニット730を使用してもよい。
【0031】
接触部731が直接患者の皮膚に触れるように、圧電素子ユニット730が配置され、圧電素子によって直接的に血管Aの血管壁の振動を計測し、その結果を利用して心拍情報、血圧情報、脈波情報うち少なくとも1つの情報を取得するものであってもよい。
【0032】
なお、検出結果は、有線で他の機器に出力されてもよいが、無線により他の機器に出力されてもよい。
【0033】
以上のような検出デバイスに関し、発光素子および受光素子を使用する構成にしろ、圧電素子を利用する構成にしろ、得られた信号を適宜処理して、より多様な情報を得るようにデータ処理を行うものであってもよい。
-例えば、血管年齢の推定値(年齢としての表示に限らず、数段階の区分等も含む)。
【0034】
呼吸に関する情報を取得するために、フローセンサ(不図示)を利用することが可能である。フローセンサは、患者に接続された呼吸回路の一部に介在させて使用され、流れる気体の流量を電気信号に変換して所定の測定機器や表示装置に送るセンサである。フローセンサを用いて呼気量、吸気量、呼吸数の少なくとも1つが検出され、その結果を薬液注入装置で利用されるものであってもよい。
【0035】
また、生体情報検出器としては、心拍情報のより具体的な項目として、拍出量、一回拍出量等を非侵襲的に検出できるものであってもよい。「拍出量」とは、1分間当たりに心臓から送出される血液の量のことをいい、「一回拍出量」とは、心室の1回の収縮で拍出する血液量のことをいう。こうした検出器としては、例えば、指先(一例)に取り付けられたプローブユニットからの検出情報に基づき、脈圧を利用した圧波形解析法で拍出量を測定する方式のものであってもよい。心拍情報だけではなく、血圧情報も併せて取得できる構成であってもよい。
【0036】
(3)コンソール
コンソール150は、所定の画像を表示するディスプレイ151と、タッチパネル153と、制御部155と、1つまたは複数の物理的ボタン157と、ハードディスクなど記憶媒体である記憶部159を1つの筐体内に有している。また、外部のネットワーク対してデータを送信するデータ送信ユニット161を有している。これらのうち1つまたは複数が筐体外に設けられていてもよい。コンソール150は、一例で検査室に隣接した操作室内に置かれて使用されるものであってもよい。
【0037】
コンソール150は、撮像装置1100および注入ヘッド110にそれぞれ接続されている。具体的には、コンソール150の制御部155は、撮像装置1000の制御回路1103aに対して、データの送信および/またはデータの受信ができるように接続されている。制御部155は、また、注入ヘッド110の制御回路145に対して、データの送信およびデータの受信ができるように接続されている。制御部155は、また、生体情報検出器701からデータを受信できるように接続されている。
【0038】
なお、コンソール150は、この例では、制御部、ディスプレイ、タッチパネル、物理的ボタン、注入ヘッドとの通信を行うモジュール等を、1つの筐体に一体的に構成したものである。ただし、このような一体的な構成は本質的な事項ではなく、上記のような制御部やディスプレイ等が別々の機器として構成されていてもよい。
【0039】
(コンソールの機能)
制御部155は、注入プロトコルの作成や注入の実行などを制御する機能を有し、一例として、「設定画面表示部」、「注入プロトコル作成部」、「注入制御部」、「履歴生成部」、および、「履歴出力部」(いずれも不図示)を含んでいてもよい。
【0040】
設定画面表示部は、注入プロトコルを設定するための画面、具体的には、注入プロトコル設定用のGUI(グラフィカルユーザインターフェース)をディスプレイ151に表示させる機能に相当する。注入プロトコル設定用のGUIデータは、薬液注入装置、撮像装置、病院システムまたはその他のコンピュータの任意の記憶デバイス内に格納されていてもよい。
【0041】
プロトコル作成部は、例えば、医師又は医療従事者によるディスプレイ151のタッチパネル等への入力操作を受け付け、その内容が反映された注入プロトコルを作成する機能に相当する。プロトコル作成部は、例えば、薬液の種類、薬液の注入速度、薬液の注入量、患者の身体情報(例えば体重)、撮像を行う患者の身体区分、撮像部位、患者の生体情報などから選ばれる少なくとも1つの入力に基づき、それに対応して、注入プロトコルの所定のパラメータを作成または変更する。
【0042】
注入制御部は、作成された注入プロトコルにしたがってピストン駆動機構130の動作を制御する機能に相当する。注入制御部は、ピストン駆動機構130の一方のみを動作させること、および、両方を同時に動作させることを行う。
【0043】
履歴生成部は、注入履歴データ(薬液注入データ)を生成する機能に相当する。「注入履歴データ」としては、例えば、
-注入作業ごとに固有の識別情報である注入作業ID、
-注入開始および終了の日時、
-薬液注入装置の識別情報、
-造影剤および/または生理食塩水の注入条件、
-造影剤および/または生理食塩水の注入結果、および、
-薬液や撮像部位の識別情報、
の少なくとも1つであってもよい。使用した薬液に関する情報、注入量、注入時間に対して注入速度を表した注入プロファイル(一例で、経時グラフの画像データ)、および注入時間に対して注入圧力を表したプロファイル(一例で、経時グラフの画像データ)のうちの少なくとも1つであってもよい。なお、上記において「注入条件」とは、薬液注入前に設定された条件のことをいい、「注入結果」とは、実際の薬液注入において計測された計測値のことをいう。
【0044】
注入履歴データとしては、シリンジのICタグから取得した、または医師又は医療従事者によって手動で入力された、または外部ネットワーク等から入力された薬液の情報やシリンジの情報であってもよい。
【0045】
履歴出力部は、注入履歴データを外部に送信する機能に相当する。具体的には、外部の所定の機器および/またはネットワーク上のデータベースにデータを送信するものであってもよい。
【0046】
なお、各部の各機能は、実装されたプログラムによってコンピュータが実行するものであってもよい。プログラムは、コンソール内の所定の記憶手段(例えば記憶部でもよい)に予め記憶されたものであってもよい。
【0047】
記憶部159(図1参照)には、例えば、ディスプレイ151に表示される画像やGUIのデータなどが記憶されていてもよい。また、注入条件を設定するための計算式などを含むアルゴリズムや、注入プロトコルのデータが記憶されていてもよい。注入速度は、一定であってもよいし、時間とともに変化するものであってもよい。造影剤と生理食塩水とを注入する場合、それらの薬液をどのような順序で注入するかといった情報も、注入プロトコルに含まれる。なお、このような注入プロトコルに関する情報は、不図示のインターフェースを介して接続された外部機器から入力されてもよい。
【0048】
2.撮像装置
撮像装置1100は、例えばX線CT装置、MRI装置、PET(Positron Emission Tomography)装置、超音波診断装置、血管造影(アンギオグラフィ)撮像装置等などである。撮像装置1100は、ガントリと、患者を載せるベッド1103と、それら(ガントリ内の撮像部1103bとベッド1103)の動作を制御する制御回路1103a(図1参照)とを備えている。
【0049】
3.病院システム
病院システムは、一例として、図2Bに示すように、撮像装置、薬液注入装置、カルテ管理装置であるHIS(Hospital Information Systems)、撮像管理装置であるRIS(Radiology Information Systems) の略称です。 主に放射線機器による検査と、治療の予約から検査結果までの管理を行うシステム)、データ保存装置であるPACS(Picture Archiving and Communication Systems)、画像閲覧装置である画像ビューア、プリンタ等を備える。必ずしもこれらの全てが揃っている必要はない。
【0050】
(HIS)
HISは、専用のコンピュータプログラムが実装されたコンピュータであり、カルテ管理システムを有する。カルテ管理システムで管理される電子カルテは、例えば、固有の識別情報であるカルテID、患者ごとの患者ID、患者の氏名などの個人データ、患者の疾病に関するカルテデータ、等のデータを含むものであってもよい。カルテデータには、治療全般に関連した個人条件データとして、患者の体重、性別、年齢、等が登録されていてもよい。HISは、また、自動受付システム、入退院管理システム、医事会計システム、薬局管理システム、診療予約システム等のうち1つまたは複数を有していてもよい。
【0051】
(RIS)
RISは、主に放射線機器による検査と、治療の予約から検査結果までの管理を行うシステムである。RISは、撮像オーダデータを固有の識別情報で管理する。この撮像オーダデータは、HISから取得する電子カルテに基づいて作成される。撮像オーダデータは、例えば、固有の識別情報である撮像作業ID、CT撮像やMR撮像などの作業種別、前述の電子カルテの患者IDとカルテデータ、CT装置の識別情報、撮像開始および終了の日時、身体区分または撮像部位、撮像作業に対応した造影剤などの薬液種別からなる適正種別、撮像作業に適合した薬液IDからなる適正ID、等のデータを含むものであってもよい。過去の造影検査歴や造影剤の副作用歴等のデータを含んでいてもよい。
【0052】
(PACS)
PACSは、各種撮像装置(モダリティ)から画像データを受信、データベースへ保存するシステムである。撮像装置から撮像オーダデータが付与された透視画像データを受信して保存する。
【0053】
(画像ビューア)
画像ビューアは、ワークステーションなどのコンピュータシステムであり、ネットワークに接続され、例えばPACS内に保存された画像データを参照して、医師等による閲覧を可能にするものであってもよい。
【0054】
(プリンタ)
プリンタは、従来公知の一般的な製品を利用可能であり、1機または複数機設けられる。
【0055】
[動作]
(1)薬液注入中または注入前の生体情報の利用
本実施形態の一形態の薬液注入装置では、薬液を注入している間および/または注入前に、生体情報検出器701で患者の生体情報を検出する。具体的には、心拍情報、血中酸素飽和度、血圧情報、心電図情報、脈波情報、体温、呼吸数、吸気状態、および呼気状態のうち少なくとも1つの検出を行う。
【0056】
以下では、一例で、生体情報検出器701で、血中酸素飽和度(SpO2)、心拍数(bpm)、および心電波形の情報が得られるものとして説明する。限定されるものではないが、この場合の生体情報検出器701としては、パルスオキシメータと心電計との組合せであってもよい。
【0057】
コンソール150の制御部155は、生体情報検出器701からの情報を受け取り、ディスプレイ151に、一例で図3に示すように、血中酸素飽和度621(SpO2)、心拍数623(bpm)および心電波形625の情報を表示する。
【0058】
なお、図3の画面は、注入を行う前の、注入条件を設定および調整するフェーズを想定している。このようなフェーズにおいて、血中酸素飽和度(SpO2)および心拍数(bpm)の情報等を表示する構成となっている場合、患者の実際の生体情報をも考慮して、より適切な注入条件設定を行うことができる。
【0059】
また、薬液の注入中に、患者の生体情報を検出し、リアルタイムにディスプレイ151に表示するようにしてもよい。図示は省略するが、注入中の画面には、一例として、注入圧力がテキスト表示またはグラフ表示でリアルタイムに描かれてもよい。注入動作中にこのようにリアルタイムで患者の生体情報が表示される構成によれば、仮に、生体情報の値が所定の基準範囲を超えたような場合に、医師または医療従事者がそれを確認して、早急に対応できることとなる(例えば心拍数が極端に上昇した場合など)。
【0060】
本発明の別の態様では、患者の生体情報を単に「表示」するのではなく、コンピュータが、心拍情報、血中酸素飽和度、血圧情報、心電図情報、脈波情報、体温、呼吸数、吸気状態、および呼気状態のうち少なくとも1つの値が、所定の範囲内にあるか否かを検出し、所定の範囲内にない場合には、アラームを発するようになっていてもよい。例えば、心拍数が所定の範囲を超えて上昇または下降している場合(上限値または下限値との比較)、装置がアラームを発するように構成されていることが好ましい。
【0061】
アラームは、他にも、血中酸素飽和度(SpO2)が所定の基準値を下回っている場合や、脈が所定の強度を下回っている場合に発せられてもよい。アラームは、特に限定されるものではないが、視覚的な報知、聴覚的な報知、またはそれらの組合せであってもよい。生体情報に関し、アラームを出すトリガとなる基準値は出荷時のデフォルト値が利用されてもよいが、使用者によって変更された変更後の値を利用してもよい。
【0062】
上記構成によれば、医師または医療従事者が患者の異変により気付き易いものとなる。脈拍、呼吸数、呼吸パターン、血圧といった生体情報の変化をみることで、造影剤の副作用が生じているか否かも判断することができる。
【0063】
加えて、医師または医療従事者による対処動作を待つのではなく、装置が自動的に動作を停止するような構成としてもよい。また、心拍情報、血中酸素飽和度、血圧情報、心電図情報、脈波情報、体温、呼吸数、吸気状態、および呼気状態のうち少なくとも1つの値が所定の範囲内にない場合には、薬液注入ができないように構成されていてもよい(注入開始を禁止する(後述のように、スタンバイ状態に移行しないことを含む))。具体的には、例えば、薬液注入が開始される前の状態で、患者生体情報の値が所定の範囲内にないと判断した場合、注入開始のための操作がなされたとしても、薬液注入装置100は薬液注入動作を開始しない。このような構成によれば、例えば心拍数が異常に高いといったように所望の生体状態ではない患者に対し造薬液注入が行われることを防止することができる。もっとも、医師の判断次第では、問題なく薬液注入を実施可能なケースも想定される。したがって、上記のような注入開始の禁止状態を解除する操作(例えばボタンやアイコンを押す、音声入力を行う等)受け付けるように構成されていてもよい。
【0064】
注入開始を禁止する態様の1つとして、例えば、(i)注入スタンバイ状態にはあるが、仮に操作者が注入開始のための操作(例:ボタンを押すまたはアイコンを選択する)をしたとしても注入動作が行われないという態様が想定される。本発明としては、それ以外にも、(ii)そもそも注入スタンバイ状態に移行しない構成としてもよい。図7を参照しながら説明する。まず、注入開始までのフェーズとして、ここでは、注入条件設定、スタンバイ状態の、注入開始のそれぞれのフェーズがあるとする。
【0065】
「注入条件設定」は、注入条件を設定するフェーズである。注入条件の設定が終了したら、例えば操作者が所定の入力(例:ボタンを押すまたはアイコンを選択する)をすることで、「スタンバイ状態」に移行する。「スタンバイ状態」とは、最終の所定の入力(例:ボタンを押すまたはアイコンを選択する)すれば注入が開始される状態のことをいう。限定されるものではないが、スタンバイ状態とするために、従来公知の所定の注入開始前動作(例えば、回路が正常に接続されているかのチェック動作、チューブを薬液で満たす動作など)が実施されるものであってもよい。また、スタンバイ状態であることを視覚的に認識できるような手段(例えば、グラフィカルユーザーインターフェース上での表示や、機器が発光部を有する場合にはその発光態様等)が利用されてもよい。
【0066】
(ii)の態様のように、そもそもスタンバイ状態に移行しない構成によれば、操作者は、注入開始できないことを前もって知ることができ、機器を不適切に動作させてしまう(一例で、操作者が、薬液注入装置のスタート操作と撮像装置のスタート操作とを同時に行ったが、注入開始が禁止されているため、撮像装置の動作のみが開始する)といったことを防止することができる。
【0067】
なお、薬液注入が完了した後も、心拍情報、血中酸素飽和度、血圧情報、心電図情報、脈波情報、体温、呼吸数、吸気状態、および呼気状態のうち少なくとも1つの検出を継続してもよい。
【0068】
本発明としては、スタンドアロンのパルスオキシメータ装置(プローブユニットの他にディスプレイ付きの制御ユニットを有するような構成のもの)を薬液注入装置に接続する構成、または、プローブユニットのみが接続されるような構成のいずれであってもよいが、後者の場合、パルスオキシメータ装置側の制御ユニットが不要となり、機器が統合され構成の簡素化を図ることができるという利点がある。また、コンソール150の画面を通じて、操作室で、薬液注入と生体監視の両方を行うことが可能となる。
【0069】
(2)薬液注入後の生体情報の利用
本実施形態の一形態の薬液注入装置では、上記のようにして取得(結果は表示されることが好ましいが必須ではない)した、心拍情報、血中酸素飽和度、血圧情報、心電図情報、脈波情報、体温、呼吸数、吸気状態、および呼気状態のうち少なくとも1つの情報をログとして所定の記憶領域(薬液注入装置の内部または外部のいずれでも構わない)に保存してもよい。
【0070】
例えば、薬液注入装置のデータ送信ユニット161から、ネットワーク上のデータサーバ(不図示、病院サーバ等)にデータ送信が行われる構成となっていてもよい。データサーバの種別等は特に限定されるものではなく、HISサーバ、RISサーバ、PACSサーバ等に記憶されてもよい。
【0071】
そのような、心拍情報、血中酸素飽和度、血圧情報、心電図情報、脈波情報、体温、呼吸数、吸気状態、および呼気状態のうち少なくとも1つの情報をそれ単体で外部に送信してもよいが、次のようなデータ送信がされてもよい。すなわち、「薬液注入データ」とともに、心拍情報、血中酸素飽和度、血圧情報、心電図情報、脈波情報、体温、呼吸数、吸気状態、および呼気状態のうち少なくとも1つの情報を外部に送信するようにしてもよい。
【0072】
このような構成によれば、実際にどのような薬液をどのような条件で注入したのかを事後的に確認でき、しかも、その注入の間の患者の生体情報も含まれているので、造影効果を検証するような場合にも有用である。
【0073】
なお、検査時に、薬液注入装置のデータ送信ユニット161から、患者の生体情報を例えば撮像装置1100にリアルタイムに送信する構成としてもよい。
【0074】
(3)より具体的なデータ処理の例
図6Aに示すように、薬液注入条件を設定する前の段階で生体情報の検出を行い、それにより得られた患者現在の生体情報(心拍情報、血中酸素飽和度、血圧情報、心電図情報、脈波情報、体温、呼吸数、吸気状態、および呼気状態のうち少なくとも1つ)が、薬液注入の条件設定のための少なくとも1つのパラメータとして、薬液注入装置のコンソールに自動入力される構成となっていてもよい。限定されるものではないが、患者の「心拍数」がパラメータの1つとして入力されてもよい。患者体重に応じて造影剤の注入量が計算され、それを、心拍数に応じて適宜補正する注入条件決定方式を採用してもよい。
【0075】
例えば、次のような注入条件決定を行ってもよい。
【0076】
まず、患者に注入すべき造影剤の量の決定を行う。造影剤の量の決定は、従来公知の種々の方式にしたがって実施可能である。例えば、撮像する部位や患者の体重等に応じて適切な量が決定される方式であってもよい。この際、患者現在の生体情報(心拍情報、血中酸素飽和度、血圧情報、心電図情報、脈波情報、体温、呼吸数、吸気状態、および呼気状態のうち少なくとも1つ)のパラメータを考慮して、量の決定が行われてもよい。
【0077】
次いで、例えば、撮像装置による撮像の直前のタイミングで、パルスオキシメータによりその時点の患者の心拍情報を計測する。「撮像の直前のタイミング」とは、具体的には、患者が撮像装置の寝台に横たわり、注入針が穿刺されて薬液注入装置から造影剤等を注入可能な状態となっているタイミングである。より具体的には、薬液注入装置に備わっている「エアチェック動作」(スタンバイ状態)が実施されるタイミングであってもよい。
【0078】
「エアチェック動作」とは、薬液注入条件の設定が完了した後のフェーズにおいて、患者までの注入回路にエアの混入や回路の閉塞等が無いことを操作者が確認して、所定のボタンを押下する動作のことをいう。薬液注入装置は、この段階では、特にピストン駆動機構等を動作させたりはしないが、所定のボタンが押下された場合には、例えば、ディスプレイの表示内容および/または装置の発光部の点灯状態を変更する。エアチェック動作が行われた状態(エアチェック状態)では、本発明の一形態に係る装置は、基本的に注入条件の変更はできないように構成されている。エアチェック状態は、注入開始の操作が操作者によって行われるのを待っている状態ということもでき、一例では、注入開始以外の操作が行われた場合にはエアチェック状態が解除され1つ前の状態に遷移する。
【0079】
次いで、コンソール150は、計測された心拍情報(一例で心拍数)を用い、必要に応じて、造影剤量の調整を行う。この調整は、心拍数をxとして、関数f(x)を使用し、造影剤量を増加または減少させるものであってもよいし、心拍数xとその値に対応する増減値yとの関係を表すテーブルを使用して実施されるものであってもよい。図8にテーブルの一例を示す。この例では、心拍数の範囲が幾つかの区分に分けられており、各区分に対応した調整量が設定されている。具体的には、例えば「区分2」の範囲では調整は行わず、それより低い心拍数である「区分1」では造影剤量を減少させるようにしている。また、「区分2」より高い心拍数の「区分3」~「区分6」(区分6ほど数値が高い)では、それぞれに対応して「y2」~「y5」(y5ほど数値が高い)の量が追加されるようになっている。
【0080】
【表1】
【0081】
なお、当然ながら、区分の数や具体的な調整量については、撮像を行う部位や使用する造影剤等にしたがって適宜設定可能である。例えば、心拍数が55以下の場合には、造影剤を10ml減少させ、55を越え65以下の場合には調整なしとし、65を越え75以下の場合には造影剤を10ml追加し、75を越え90以下の場合には造影剤を20ml追加し、90を越え105以下の場合には造影剤を25ml追加し、心拍数が105を超えるような場合には造影剤を30ml追加するような調整としてもよい。
【0082】
このように、撮像直前の生体情報に基づき、注入すべき造影剤量を再調整することによって、患者の状態に応じたより適切量の造影剤注入ができるものとなる。
【0083】
なお、造影剤量を調整する際、例えば、過度に造影剤量を増加させてしまうような場合(例えば表1の区分6)、コンソール150が、造影剤量を増加させる旨の表示を行なって操作者に知らせることができるようになっていることも好ましい。当然ながら、過度に造影剤量を減少させてしまうような場合に同様の動作を行うようにしてもよい。増加のみの場合、減少のみの場合、またはその両方の場合のいずれにおいても、このような表示を行ってもよい。
【0084】
以上の技術的思想は、次のように表現することが可能である:
データ処理ユニット(1つまたは複数のプロセッサと言い換えてもよい)が、
-薬液の注入動作前に、患者の心拍情報(一例で心拍数)を参照する処理と、
-その心拍情報に対応した造影剤の調整量を決定して造影剤量を調整する処理と、
を行ない、
薬液注入装置が、調整された当該造影剤量の薬液を注入する、
システム。また、方法のカテゴリー、プログラムのカテゴリーの発明として表現することも可能である。更なる変更態様としては、心拍情報(心拍数に限らず、拍出量などであってもよい)に加え、または心拍情報に代えて、他の生体情報(例えば、血中酸素飽和度、血圧情報、心電図情報、脈波情報、体温、呼吸数、吸気状態、および呼気状態のうち少なくとも1つ)に基づき、上記のような造影剤量調整を実施するものであってもよい。
【0085】
(心筋負荷)
図6Bは、例えば心筋解析検査において、造影剤を注入する自動注入器の他に、心筋負荷剤を注入する自動注入器が用意されるようなケースにおいて実施しうるデータ処理の例である。この検査では、まず、心筋負荷剤を注入するフェーズがあり、その後一定の時間をおく安静フェーズがあり、その後に造影剤を注入するフェーズがあるというものである。この一連のフェーズにおいて、患者の生体情報(特には、心拍数や血中酸素飽和度)の検出を行う。
【0086】
こうすることで、例えば、心筋負荷剤の効果が現れているかを確認することが可能となる。また、生体情報を薬液注入データなどと一緒に保存するようにすれば、事後的に、当該検査中の患者の状態を確認することも可能となる。
【0087】
以上、本発明の例について図面を参照しながら説明したが、上記に説明したそれぞれの技術的事項は本発明の趣旨を逸脱しない限り、適宜組合せ、また、変更することができる。
【0088】
(実施形態の構成に関する幾つかの変更)
(1)上記実施形態では、シリンジ内の薬液をピストン駆動機構で加圧して押し出す構成について説明した。しかしながら、薬液収容容器(例えば可撓性を有する薬液バッグや、ボトルのようなハードケース等)から薬液を送出する機構を備える薬液注入装置を利用してもよい。一例として、チューブポンプで造影剤などの薬液を送出する構成としてもよい。
(2)生体情報検出器からの情報を用いたデータ処理がコンソール150内の制御部155で行われることを一例として説明したが、データ処理を行う主体は、制御部155以外の他の制御部であってもよい。一部のデータ処理が制御部155で実施され、他のデータ処理が他の制御部で行われるような分散型の処理を行うようにしてもよい。
【0089】
(付記)
本出願は、以下の発明を開示する。なお、カッコ内の符号は参考のため付したもので、本発明を何ら限定するものではない。また、以下に記載の物の発明をカテゴリー表現を変えて記載したもの(方法の発明およびプログラムの発明)も、本出願において開示される。
【0090】
1-1.A:シリンジのピストンを移動させるピストン駆動機構(130)およびその動作を制御する制御回路(145)を有し、患者に造影剤を注入する薬液注入装置(100)と、
B:患者の心拍情報、血中酸素飽和度、血圧情報、心電図情報、脈波情報、体温、呼吸数、吸気状態、および呼気状態のうち少なくとも1つの情報を取得する生体情報検出器(701)と、
C:上記生体情報検出器からの情報を用いてデータ処理を行うデータ処理ユニット(155等)と、を備え、
上記データ処理ユニットは、
(a)薬液の注入動作中に、上記心拍情報、血中酸素飽和度、血圧情報、心電図情報、脈波情報、体温、呼吸数、吸気状態、および呼気状態のうち少なくとも1つの値が、所定の範囲内にあるか否かを判定し、
(b)所定の範囲内にない場合には、アラームを発する、または、上記ピストン駆動機構の動作を停止する
ように構成されている、造影剤注入システム(薬液注入装置)。
【0091】
1-2.A:シリンジのピストンを移動させるピストン駆動機構(130)およびその動作を制御する制御回路(145)を有し、患者に造影剤を注入する薬液注入装置(100)と、
B:患者の心拍情報、血中酸素飽和度、血圧情報、心電図情報、脈波情報、体温、呼吸数、吸気状態、および呼気状態のうち少なくとも1つの情報を取得する生体情報検出器(701)と、
C:上記生体情報検出器からの情報を用いてデータ処理を行うデータ処理ユニット(155等)と、を備えるシステムの制御方法であって、
データ処理ユニットが、
(a)薬液の注入動作中に、上記心拍情報、血中酸素飽和度、血圧情報、心電図情報、脈波情報、体温、呼吸数、吸気状態、および呼気状態のうち少なくとも1つの値が、所定の範囲内にあるか否かを判定するステップと、
(b)所定の範囲内にない場合には、アラームを発する、または、上記ピストン駆動機構の動作を停止させるステップと、
を有する、制御方法。
【0092】
1-3.上記制御方法を行うための制御プログラムであって、
コンピュータに、
(a)薬液の注入動作中に、上記心拍情報、血中酸素飽和度、血圧情報、心電図情報、脈波情報、体温、呼吸数、吸気状態、および呼気状態のうち少なくとも1つの値が、所定の範囲内にあるか否かを判定させるステップと、
(b)所定の範囲内にない場合には、アラームを発する、または、ピストン駆動機構の動作を停止させるステップと、
を行わせる、制御プログラム。
【0093】
2.上記薬液注入装置は、注入ヘッドと、コンソールとを備え、
上記注入ヘッドは、MRI室内で使用可能なものである、上記記載の造影剤注入システム。
【0094】
3.上記コンソールは、ディスプレイを有し、
上記心拍情報、血中酸素飽和度、血圧情報、心電図情報、脈波情報、体温、呼吸数、吸気状態、および呼気状態のうち少なくとも1つの情報が上記ディスプレイに表示されるように構成されている、
上記記載の造影剤注入システム。
【0095】
4-1.A:シリンジのピストンを移動させるピストン駆動機構(130)およびその動作を制御する制御回路(145)を有し、患者に造影剤を注入する薬液注入装置(100)と、
B:患者の心拍情報、血中酸素飽和度、血圧情報、心電図情報、脈波情報、体温、呼吸数、吸気状態、および呼気状態のうち少なくとも1つの情報を取得する生体情報検出器(701)と、
D:データを外部に送信するデータ送信ユニット(161)と、
を備え、
上記薬液注入装置は、
(c)上記生体情報検出器から、心拍情報、血中酸素飽和度、血圧情報、心電図情報、脈波情報、体温、呼吸数、吸気状態、および呼気状態のうち少なくとも1つ生体情報を取得し、
(d)取得した上記生体情報を、上記データ送信ユニット(161)経由で、外部へ送信する
ように構成されている、造影剤注入システム。
【0096】
4-2.A:シリンジのピストンを移動させるピストン駆動機構(130)およびその動作を制御する制御回路(145)を有し、患者に造影剤を注入する薬液注入装置(100)と、
B:患者の心拍情報、血中酸素飽和度、血圧情報、心電図情報、脈波情報、体温、呼吸数、吸気状態、および呼気状態のうち少なくとも1つの情報を取得する生体情報検出器(701)と、
D:データを外部に送信するデータ送信ユニット(161)と、
を備えるシステムの制御方法であって、
上記薬液注入装置が、
(c)上記生体情報検出器から、心拍情報、血中酸素飽和度、血圧情報、心電図情報、脈波情報、体温、呼吸数、吸気状態、および呼気状態のうち少なくとも1つの生体情報を取得するステップと、
(d)取得した上記生体情報を、上記データ送信ユニット(161)経由で、外部へ送信するステップと、
を有する制御方法。
【0097】
4-3.上記制御方法を行うための制御プログラムであって、
コンピュータに、
(c)上記生体情報検出器から、心拍情報、血中酸素飽和度、血圧情報、心電図情報、脈波情報、体温、呼吸数、吸気状態、および呼気状態のうち少なくとも1つの生体情報を取得するステップと、
(d)取得した上記生体情報を、上記データ送信ユニット(161)経由で、外部へ送信するステップと、
を行わせる制御プログラム。
【0098】
5.上記薬液注入装置は、
(e)上記生体情報を、薬液注入データとともに、外部に送信する、請求項4に記載の造影剤注入システム。
【0099】
6.上記薬液注入データは、使用した薬液に関する情報、注入量、注入時間に対して注入速度を表した注入プロファイル、および注入時間に対して注入圧力を表したプロファイルのうちの少なくとも1つである、上記記載の造影剤注入システム。
【0100】
7.さらに、
患者の心拍数を変化させる薬剤を注入する自動注入器を備え、
上記薬液注入装置は、
(f)上記薬剤が注入される前における、心拍情報、血中酸素飽和度、血圧情報、心電図情報、脈波情報、体温、呼吸数、吸気状態、および呼気状態のうち少なくとも1つの情報と、
(g)上記薬剤が注入された後における、心拍情報、血中酸素飽和度、血圧情報、心電図情報、脈波情報、体温、呼吸数、吸気状態、および呼気状態のうち少なくとも1つの情報と、
を取得するように構成されている、上記記載の造影剤注入システム。
【符号の説明】
【0101】
100 薬液注入装置
110 注入ヘッド
111 筐体
130 ピストン駆動機構
138 ロードセル
145 制御部
150 コンソール
161 データ送信ユニット
200 シリンジ
222 ピストン部材
225 ICタグ
701 生体情報検出器
705 制御回路
710 プローブユニット
730 圧電素子ユニット
731 接触部
1100 撮像装置
図1
図2A
図2B
図3
図4
図5
図6A
図6B
図7