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特開2022-113873防水シートの継目検査システム及びプログラム
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  • 特開-防水シートの継目検査システム及びプログラム 図1
  • 特開-防水シートの継目検査システム及びプログラム 図2
  • 特開-防水シートの継目検査システム及びプログラム 図3
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022113873
(43)【公開日】2022-08-04
(54)【発明の名称】防水シートの継目検査システム及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   G01M 3/26 20060101AFI20220728BHJP
   G01M 3/02 20060101ALI20220728BHJP
【FI】
G01M3/26 M
G01M3/02 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022097477
(22)【出願日】2022-06-16
(62)【分割の表示】P 2019226229の分割
【原出願日】2019-12-16
(71)【出願人】
【識別番号】591029921
【氏名又は名称】フジモリ産業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003340
【氏名又は名称】特許業務法人湧泉特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】坂根 一聡
(72)【発明者】
【氏名】斎藤 高司
(57)【要約】
【課題】防水シートの継目検査の正確性を高め、取得データ数を増やし、PC入力のミスを回避する。
【解決手段】防水シート2の継目6内に画成された閉止空間6cに継目検査システム9の検査路10から試験圧を導入する。圧力検知器22によって閉止空間6cの内圧を検知して電気信号として出力する。信号変換器23によって電気信号をデジタル信号に変換して出力する。携帯端末30によってデジタル信号を受信して良否検査情報を生成する。携帯端末30の記憶部には、閉止空間6cの内圧に対応するデジタル値を蓄積する処理と、その蓄積データに基づいて継目6の良否の判定をする処理と、閉止空間6cの内圧の経時変化及び良否の判定結果を含む良否検査情報をディスプレイ表示する処理を実行させるプログラム35,38が格納されている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
防水シートの継目の良否状態を検査するシステムであって、
前記継目内に画成された閉止空間に試験圧を導入する検査路と、
前記検査路を介して前記閉止空間の内圧を検知して電気信号として出力する圧力検知器と、
前記電気信号をデジタル信号に変換して出力する信号変換器と、
前記デジタル信号を受信して良否検査情報を生成する携帯端末と
を備え、前記携帯端末の記憶部には、前記閉止空間の内圧に対応するデジタル値を蓄積する処理と、その蓄積データに基づいて前記継目の良否の判定をする処理と、前記閉止空間の内圧の経時変化及び前記良否の判定結果を含む良否検査情報をディスプレイ表示する処理を前記携帯端末に実行させるプログラムが格納されていることを特徴とする継目検査システム。
【請求項2】
請求項1に記載の継目検査システムにおける携帯端末の記憶部に格納されたプログラムであって、前記閉止空間の内圧に対応するデジタル値を蓄積する処理と、その蓄積データに基づいて前記継目の良否の判定をする処理と、前記閉止空間の内圧の経時変化及び前記良否の判定結果を含む良否検査情報をディスプレイ表示する処理を前記携帯端末に実行させるプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、防水シートの継目の良否状態を検査するシステム及びプログラムに関し、特に、隣接する防水シートどうしを溶着等によって接合した継目の密封性(液密性、気密性)の良否を検査するシステム及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
例えばNATM(New Austrian Tunneling Method)トンネルなどの山岳トンネルにおいては、吹付コンクリート等の一次覆工と二次覆工との間にEVAシートなどの防水シートが張設されている(特許文献1など参照)。防水シートによって、地山からの湧水が二次覆工コンクリートひいてはトンネル内空間へ流れ込むのが防止される。
【0003】
防水シートは、数メートルの幅を有しており、その幅方向をトンネル軸方向へ向けて、トンネルのアーチ部の周方向に張り渡される。複数の防水シートがトンネル軸方向に並べられ、隣接する防水シートの端部どうしが溶着されることによって、これら防水シートの継目が形成される。ここで溶着不良があると継目から漏水するおそれがあるため、継目検査が行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2016-113801号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
一般に、継目検査は、加圧試験によって行われる。詳しくは、溶着部によって継目内に閉止空間を画成し、該閉止空間に圧縮空気による試験圧を導入する。溶着が良好であれば、閉止空間の内圧は圧縮空気導入時の試験圧にほぼ維持される。溶着不良があればそこから空気が漏れるために、閉止空間の内圧が下がる。したがって、圧力検知器で閉止空間の内圧を測定することで、継目の良否状態を判定できる。通常、圧力検知器はアナログゲージである。
【0006】
しかし、アナログゲージを人の目で確認して圧力値を読み取っているため、誤判定が起きやすい。検査結果をノートに記録したりパソコン入力したりする際もミスが起きやすい。検査した現場の写真を撮って検査したことの証拠とすることも行われているが、検査の正確性が担保されるものではない。さらに、検出圧力の経時変化については、たとえば1分間に1回程度しか読み取られておらず、詳細な分析はされていない。
本発明は、かかる事情に鑑み、防水シートの継目検査の正確性を高め、取得データ数を増やして詳細な分析を可能とすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するため、本発明は、防水シートの継目の良否状態を検査するシステムであって、
前記継目内に画成された閉止空間に試験圧を導入する検査路と、
前記検査路を介して前記閉止空間の内圧を検知して電気信号として出力する圧力検知器と、
前記電気信号をデジタル信号に変換して出力する信号変換器と、
前記デジタル信号を受信して良否検査情報を生成する携帯端末と
を備えたことを特徴とする。
好ましくは、本発明システムは、防水シートの継目の良否状態を検査するシステムであって、
前記継目内に画成された閉止空間に試験圧を導入する検査路と、
前記検査路を介して前記閉止空間の内圧を検知して電気信号として出力する圧力検知器と、
前記電気信号をデジタル信号に変換して出力する信号変換器と、
前記デジタル信号を受信して良否検査情報を生成する携帯端末と
を備え、前記携帯端末の記憶部には、前記閉止空間の内圧に対応するデジタル値を蓄積する処理と、その蓄積データに基づいて前記継目の良否の判定をする処理と、前記閉止空間の内圧の経時変化及び前記良否の判定結果を含む良否検査情報をディスプレイ表示する処理を前記携帯端末に実行させるプログラムが格納されていることを特徴とする。
好ましくは、本発明に係るプログラムは、前記の継目検査システムにおける携帯端末の記憶部に格納されたプログラムであって、前記閉止空間の内圧に対応するデジタル値を蓄積する処理と、その蓄積データに基づいて前記継目の良否の判定をする処理と、前記閉止空間の内圧の経時変化及び前記良否の判定結果を含む良否検査情報をディスプレイ表示する処理を前記携帯端末に実行させる。
【0008】
本システムによれば、閉止空間の内圧値が検査作業者等の携帯端末に入力され、該携帯端末において継目の良否判定を含む良否検査情報が生成される。したがって、人為的な読み取りミスや記録ミスが起きることがなく、検査の正確性が担保される。
さらにアナログゲージを人の目で読み取るよりも、閉止空間の内圧変化の取得データ数を大幅に増やすことができ、詳細な分析を行うことができる。例えば内圧低下が急であれば、大きな溶着不良箇所があることが推測できる。
【0009】
前記圧力検知器及び信号変換器が防水筐体に収容されていることが好ましい。
これによって、圧力検知器及び信号変換器が水に濡れて故障するのを防止できる。
【0010】
また、本発明方法は、防水シートの継目の良否状態を検査する方法であって、
前記継目内に画成された閉止空間に試験圧を導入する工程と、
圧力検知器によって前記閉止空間の内圧を検知して電気信号として出力する工程と、
信号変換器によって前記電気信号をデジタル信号に変換して出力する工程と、
携帯端末によって前記デジタル信号を受信して良否検査情報を生成する工程と
を備えたことを特徴とする。
前記良否検査情報としては、前記デジタル信号ひいては前記閉止空間の内圧検出値の蓄積情報、良好か不良かの判定情報、前記内圧の経時変化データ及び判定結果などを記載した継目検査レポートその他の帳票などが挙げられる。
「良否検査情報を生成すること」は、前記デジタル信号の受信データひいては前記内圧検出値を蓄積すること、良好か不良かの判定情報を得ること、前記帳票を作成して表示すること等を含む。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、防水シートの継目検査の正確性を高めることができ、更に取得データ数を増やして詳細な分析を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1図1は、本発明の一実施形態に係る継目検査システムによってトンネル用防水シートの継目検査をする様子を示す解説図である。
図2図2は、前記継目検査システムのブロック図である。
図3図3は、前記継目検査システムによって作成される帳票の一例を示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の一実施形態を図面にしたがって説明する。
図1に示すように、本実施形態の検査対象の防水シートは、NATMトンネル1の防水シート2である。防水シート2は、吹付コンクリート3のトンネル内側を向く内面(図1において下面)に張設されている。防水シート2は、EVA樹脂等からなる不透水シート4と、不織布等からなる透水シート5との積層構造になっている。透水シート5が吹付コンクリート3に面している。不透水シート4は、図示しない二次覆工に面する。なお、二次覆工は、防水シート2のトンネル内側(図1において下側)に構築される。不透水シート4によって、地山8からの湧水が二次覆工ひいてはトンネル内空間へ流れ込むのが防止される。湧水は、透水シート5の内部を通り道にして排出される。
【0014】
1枚の防水シート2は、数メートルの幅を有しており、その幅方向をトンネル軸方向(図1において左右)へ向けて、トンネル1のアーチ部の周方向(図1において紙面と交差する方向)に沿って張り渡されている。複数の防水シート2がトンネル軸方向(図1の左右方向)に並べられている。隣接する2枚の防水シート2の不透水シート4の端部どうしが拝み溶着によって接合されて、継目6(シート接続部分)が形成されている。
【0015】
継目6には、少なくとも2つの溶着部6a,6bが形成されている。溶着部6aは、不透水シート4の端縁4eの近傍に配置されている。溶着部6bは、溶着部6aよりも端縁4eから離れて配置されている。溶着部6a,6bは、防水シート2の長手方向(図1において紙面と直交する方向)の全長にわたって途切れなく線状に延びている。これら溶着部6a,6bによって拝み溶着された2枚の不透水シート4の端部が、片方(図1において右側)の不透水シート4側へ倒され、溶着部7によって該片方の不透水シート4と接合されている。
【0016】
図1に示すように、前記継目6の形成後、継目検査システム9によって、継目6の良否状態が検査される。継目検査システム9は、検査路10と、検査ユニット20と、携帯端末30を含む。
【0017】
検査路10は、ガス用チューブなどによって構成されている。検査路10の上流端にはエアコンプレッサー11(試験圧源)が接続されている。検査路10の下流端には、中空の検圧針12が設けられている。検査路10の中間部には、上流側から順次、圧力調整バルブ13、開閉バルブ14、及び検圧分岐部15が設けられている。圧力調整バルブ13の二次圧は、所定の試験圧になるよう調整されている。試験圧の大きさは、防水シートの種類、材質、厚みなどに応じて設定されるが、例えば1気圧超、数気圧以下である。
検圧分岐部15から検圧路16が分岐されている。検圧路16に検査ユニット20が接続されている。
【0018】
検査ユニット20は、防水筐体21と、圧力検知器22と、信号変換器23とを有している。防水筐体21は、樹脂などの不透水材によって構成され、水が内部に侵入しないよう、防水構造になっている。検圧路16が、防水筐体21のポート21を通して防水筐体21の内部に挿し入れられている。ポート21cの内周面と、検圧路16を構成するチューブの外周面との間は、Oリングやパッキンなどのシール材(図示省略)によって液密にシールされている。
【0019】
図1に示すように、防水筐体21には、圧力検知器22及び信号変換器23が収容されている。防水筐体21内において、検圧路16が圧力検知器22に接続されている。図2
に示すように、圧力検知器22は、ピエゾ素子等の圧電変換素子22aを有し、検圧路16のガス圧の大きさに応じた電流値又は電圧値の電気信号を出力する。
圧力検知器22と信号変換器23とは、電気信号線24によって有線接続されている。
【0020】
図2に示すように、信号変換器23は、入力回路23aと、A/D変換部23bと、通信部23cを含む。入力回路23aは、電気信号線24を介して圧力検知器22から電気信号を受け取る。
A/D変換部23bは、該電気信号をデジタル信号に変換する。具体的には、A/D変換部23bは、圧力検知器22からの一定範囲(例えば4mA~20mA程度)内の特定の電流値(電気信号)を、一定の数値範囲(例えば0~4000)内における前記特定の電流値に対応する特定の二進数の数値(デジタル信号)に置換する。
通信部23cは、該デジタル信号を有線又は無線で発信する。
【0021】
図1に示すように、携帯端末30は、例えばスマートフォン、タブレット、ノートパソコン等の、携帯可能なPC端末によって構成されている。携帯端末30は、CPU31と、通信部32と、記憶部33と、ディスプレイ34とを含む。携帯端末30と信号変換器23の通信部32,23cどうしは、有線又は無線で通信可能である。有線の接続手段としては、USBケーブルが挙げられる。無線の接続手段としては、ブルートゥース(登録商標)、WiFi、赤外線などが挙げられる。
好ましくは、信号変換器23の通信部23cは、ブルートゥース規格の電波を発信可能であり、携帯端末30の通信部32は、ブルートゥース規格の電波を受信可能である。携帯端末30と信号変換器23とはブルートゥースによって無線通信可能にペアリングされている。
【0022】
図2に示すように、携帯端末30の記憶部33には、継目検査のための処理プログラム35及び設定データ36が格納されている。継目検査処理プログラム35は、前記信号変換器23からのデジタル信号を受信して、閉止空間6cの内圧検出値として蓄積するとともに、その蓄積データに基づいて継目6の良否判定をして、その判定結果をディスプレイ34に表示する処理を携帯端末30に実行させる。
【0023】
継目検査設定データ36としては、良否判定の閾値、良否判定時間などのデータが挙げられる。閾値は、例えば試験圧の60%~90%程度、好ましくは80%程度の値が設定されている。例えば、試験圧が0.15MPaの場合、好ましくは閾値は0.12MPaに設定されている。
良否判定時間は、例えば数分間程度、好ましくは2分間程度である。
記憶部33には、前記デジタル信号ひいては内圧検出値の蓄積データや判定結果などの良否検査情報を記憶する検査情報記憶領域37が設けられている。
【0024】
さらに、記憶部33には、前記良否検査情報から帳票を作成して表示するためのプログラム38及びデータ39が格納されている。データ39は、帳票として、例えば図3に例示する継目検査レポート50のフォーマット(形式データ)を含む。図3に示すように、継目検査レポート50は、閉止空間6cの内圧の経時変化のグラフ51及び表52、良否判定結果の表示53を含む。
【0025】
前記継目検査レポート50などの良否検査情報は、携帯端末30のディスプレイ34に表示可能であり、好ましくは携帯端末30に搭載されたブラウザで表示可能である。
【0026】
図1及び図2に示すように、継目検査システム9は、管理パソコン40を更に備えている。管理パソコン40は、CPU41と、通信部42と、記憶部43と、ディスプレイ44とを含む。管理パソコン40と携帯端末30の通信部42,32どうしは、有線又は無
線で通信可能である。SDカードなどの外部記憶媒体を介して、携帯端末30の記憶データを管理パソコン40に移すようにしてもよい。
【0027】
管理パソコン40の記憶部43には、携帯端末30から受け取った良否検査情報を記憶する検査情報記憶領域47が設けられている。さらに、記憶部43には、前記記憶領域47の良否検査情報から帳票を作成して表示するためのプログラム48及びデータ49が格納されている。プログラム48及びデータ49は、携帯端末30のプログラム38及びデータ39と同様の構成になっている。データ49は、帳票として、例えば図3に例示する継目検査レポート50のフォーマットデータ(書式データ)を含む。前記継目検査レポート50などの良否検査情報は、管理パソコン40のディスプレイ44に表示可能であり、好ましくは管理パソコン40に搭載されたブラウザで表示可能である。
【0028】
防水シート2の継目6は、次のようにして良否判定される。
図1に示すように、まず、継目6の内部に閉止空間6cを画成する。閉止空間6cは、防水シート2の長手方向(トンネル1のアーチ部の周方向)に沿って延びている。閉止空間6cの幅方向の両端部は、溶着部6a,6bによって画成されている。図示は省略するが、閉止空間6cの長手方向の両端部は、クリップ等で継目6を挟み付けることによって封止する。
【0029】
続いて、継目検査システム9の検圧針12を1枚の不透水シート4における溶着部6a,6bどうし間の部分に突き刺し、検圧針12の先端を閉止空間6cに臨ませる。
次に、開閉バルブ14を開く。これによって、エアコンプレッサー11からの空気圧が、圧力調整バルブ13によって所定の試験圧になるよう調整されたうえで検圧針12から閉止空間6cに導入される。その後、開閉バルブ14を閉じる。
【0030】
閉止空間6cの内圧は、開閉バルブ14より下流側の検査路10の内圧と等しい。該検査路10ひいては閉止空間6cの内圧が圧力検知器22によって検知され、電圧値などの電気信号(アナログ信号)として連続的に出力される。
前記電気信号は信号変換器23に入力されてデジタル信号に変換される。
前記デジタル信号が信号変換器23から送信される。前記デジタル信号の送信間隔は、好ましくは1秒以下~数秒である。
圧力検知器22及び信号変換器23は、防水筐体21に収容されているから、トンネル内の水に濡れて故障するのを防止できる。
【0031】
検査作業者Aは、予め携帯端末30の検査処理プログラム35を起動させておく。これによって、ディスプレイ34に検査データ取得開始ボタン34aなどが表示される。また、信号変換器23からのデジタル信号が携帯端末30によって受信される。
検査作業者Aは、前記開閉バルブ14の閉操作後、ディスプレイ34内のボタン34aを押下することによって、検査データ取得開始指令を出す。
該指令を受けた携帯端末30は、一定の検査期間中(例えば数分間、好ましくは2分間程度)、デジタル信号を受信するたびに検査情報記憶領域37に記憶する。該デジタル信号は閉止空間6cの内圧値を表す。これによって、閉止空間6cの内圧の経時変化データ(良否判定情報)が蓄積される。
デジタル信号の数値のまま記憶してもよく、閉止空間6cの内圧値に換算したうえで記憶してもよい。
【0032】
携帯端末30は、該経時変化データによって、継目6の良否判定を行う。すなわち、検査期間中、閉止空間6cの内圧が閾値を下回ることが無ければ「良好」と判定し、閾値を下回ったら「不良」と判定する。
判定結果は、検査情報記憶領域37に記憶されるとともにディスプレイ34に表示され
る。これによって、検査作業者Aは、継目6の溶着部6a,6bの良否を知ることができる。すなわち、溶着が良好であれば、閉止空間6cの内圧は導入試験圧にほぼ維持され、少なくとも閾値を下回ることはない。溶着不良があればそこから空気が漏れるために、閉止空間6cの内圧が下がり、閾値を下回る。「不良」と判定された場合、継目6の溶着をやり直す。これによって、継目6からの水漏れを確実に防止できる。
このように、本システム9によれば、閉止空間6cの内圧値を示すデジタル信号が携帯端末30に入力され、該携帯端末30において継目6の良否判定がなされる。したがって、人為的な読み取りミスや記録ミスが起きる心配が無く、検査の正確性を担保できる。
本システム9によれば、アナログゲージを人の目で読み取るよりも、閉止空間6cの内圧変化の取得データ数を大幅に増やすことができる。たとえば、人の目で読み取る場合、せいぜい1分間に1個程度しかデータ取得していなかったのに対して、本システム9によれば、デジタル信号の出力間隔に対応して、1秒間で数個程度のデータを取得することができる。したがって、閉止空間6cの内圧の経時変化を正確に把握でき、詳細な分析を行うことができる。例えば内圧低下が急であれば、大きな溶着不良箇所があることが推測できる。
【0033】
さらに、携帯端末30は、検査作業者A等による帳票表示指令に応じて、検査情報記憶領域37の良否検査情報から継目検査レポート50(図3)を作成し、ディスプレイ34に表示する。これによって、検査作業者Aは、継目検査レポート50中のグラフ51等から閉止空間6cの内圧の経時変化を確認することができる。
携帯端末30は、検査中の継目の良否検査情報だけでなく、検査情報記憶領域37に蓄積された過去の良否検査情報を読み出して表示することもできる。これによって、防水シートの継目施工を的確に管理できる。
【0034】
検査情報記憶領域37の良否検査情報は、携帯端末30から管理パソコン40に転送されて、管理パソコン40にも記憶される。転送は、携帯端末30又は管理パソコン40の入力操作にしたがって実行されるようになっていてもよく、データ量や時間によって自動的に実行されるようになっていてもよい。
人が良否検査情報の各データを手入力する必要が無いから、入力ミスを解消できる。
【0035】
管理パソコン40は、作業管理者B等による帳票表示指令に応じて、検査情報記憶領域47の良否検査情報から継目検査レポート50(図3)を作成し、ディスプレイ44に表示したり、印刷したりする。これによって、作業管理者Bは、継目検査レポート50中のグラフ51等から閉止空間6cの内圧の経時変化を確認することができる。管理パソコン40は、検査情報記憶領域47に蓄積された過去の良否検査情報を読み出して表示することができる。これによって、防水シートの継目施工を的確に管理できる。
【0036】
本発明は、前記実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲において種々の改変をなすことができる。
例えば、防水シートは、トンネル用に限らず、ゴルフ場、産業廃棄物処理場などに敷設されるものであってもよい。
携帯端末30と管理パソコン40のうち管理パソコン40だけが、帳票を作成して表示する機能すなわちプログラム48及びデータ49を有し、携帯端末30にはプログラム38及びデータ39を搭載しないことにしてもよい。
継目検査システム9の検査回路は適宜改変できる。たとえば、圧力調整バルブ13を開閉バルブ14と検圧分岐部15との間に配置してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0037】
本発明は、例えばトンネル等の防水シートの継目処理の良否検査に適用できる。
【符号の説明】
【0038】
2 防水シート
4 不透水シート
6 継目
6a,6b 溶着部
6c 閉止空間
9 継目検査システム
10 検査路
20 検査ユニット
21 防水筐体
22 圧力検知器
23 信号変換器
30 携帯端末
33 記憶部
35,38 プログラム
40 管理パソコン
50 継目検査レポート(帳票)
図1
図2
図3