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特開2022-113886異常な細胞成長を処置するための方法および組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022113886
(43)【公開日】2022-08-04
(54)【発明の名称】異常な細胞成長を処置するための方法および組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 45/06 20060101AFI20220728BHJP
   A61K 31/506 20060101ALI20220728BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20220728BHJP
   A61P 35/02 20060101ALI20220728BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20220728BHJP
   A61K 31/519 20060101ALI20220728BHJP
   A61K 31/44 20060101ALI20220728BHJP
   A61K 31/437 20060101ALI20220728BHJP
   A61K 31/4523 20060101ALI20220728BHJP
   A61K 31/4188 20060101ALI20220728BHJP
【FI】
A61K45/06
A61K31/506
A61P35/00
A61P35/02
A61P43/00 121
A61K31/519
A61K31/44
A61K31/437
A61K31/4523
A61K31/4188
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022098159
(22)【出願日】2022-06-17
(62)【分割の表示】P 2020034703の分割
【原出願日】2015-02-06
(31)【優先権主張番号】61/937,253
(32)【優先日】2014-02-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】513000780
【氏名又は名称】ベラステム・インコーポレーテッド
【氏名又は名称原語表記】Verastem,Inc.
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【弁護士】
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】ジョナサン エー. パクター
(72)【発明者】
【氏名】ウィニー タム
(72)【発明者】
【氏名】チュンリ シュウ
(57)【要約】
【課題】異常な細胞成長を処置するための方法および組成物の提供。
【解決手段】本発明は、とりわけ、異常な細胞成長(例えば、がん)を処置するための、FAK阻害剤およびMEK阻害剤の組み合わせ、方法、組成物および経口剤形に関する。一局面では、がんを有する被験体を処置する方法が提供され、治療有効量のFAK阻害剤(例えば、VS-6063または薬学的に許容されるその塩)をMEK阻害剤(例えば、GDC-0623、コビメチニブ、トラメチニブ、ピマセルチブ、AZD6244)と組み合わせて上記被験体に投与し、これにより上記被験体を処置するステップを含む。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
図面に記載の発明。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
優先権の主張
本出願は、2014年2月7日に出願された「METHODS AND COMPOSITIONS FOR TREATING ABNORMAL CELL GROWTH」との表題の米国仮特許出願第61/937,253号(これは、全ての目的のために、その全体が本明細書で援用される)に対する優先権を主張する。
【0002】
発明の背景
焦点接着キナーゼ(FAK)、すなわち細胞質非受容体チロシンキナーゼは、細胞-マトリックスのシグナル伝達経路において必須の役割を果たしていること(ClarkおよびBrugge 1995年、Science 268巻:233~239頁)、およびその異常な活性化が、腫瘍の転移可能性の増大と関連していること(Owensら 1995年、Cancer Research 55巻:2752~2755頁)が、説得力のある証拠により示唆されている。FAK(焦点接着キナーゼ)、Ick、src、ablまたはセリン/トレオニンキナーゼ(例えば、サイクリン依存性キナーゼ)などのある種の非受容体チロシンキナーゼの選択的阻害剤は、哺乳動物における異常な細胞成長、特にがんの処置において有用である。FAKもまた、タンパク質-チロシンキナーゼ2、すなわちPTK2として公知である。したがって、被験体におけるFAKを阻害する化合物、化合物の組み合わせ、組成物および方法が望ましい。FAK発現および/または活性は、甲状腺、前立腺、子宮頸部(cervix)、結腸、直腸、口腔上皮、卵巣および胸部のがんを含めた、一連の悪性疾患において上方調節されることが報告されている。
【0003】
Ras/Raf/MEK/ERKのシグナル伝達経路の構成要素もまた、異常な細胞成長、例えばがんの処置の機会となる。MEKタンパク質は、Rafの主要な下流の標的である。MEKファミリーの遺伝子は、5つの遺伝子:MEK1、MEK2、MEK3、MEK4およびMEK5からなる。MEKタンパク質は、セリン/トレオニンおよびチロシンキナーゼ活性の両方を有する2重特異性キナーゼのファミリーに属する。MEK阻害剤は、例えば、ヌードマウスの異種移植片において、ヒトの腫瘍成長の阻害に対する潜在的な治療的有益性を示した(Yeh, T.ら、Proceedings of the American Association of Cancer Research 2004年、45巻、Abs3889頁)。MEK/ERK経路もまた、胸部および前立腺がんにおいて、がん幹細胞の自己複製に関与している(Balkoら、Cancer Research 2013年;Rybakら、PLoS One 2013年)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】ClarkおよびBrugge、Science(1995年)268巻:233~239頁
【非特許文献2】Owensら、Cancer Research(1995年)55巻:2752~2755頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本出願人らは、例えば、ヒトにおいて、がんなどの異常な細胞成長を処置するために使用することができる、ある種の組み合わせ(例えば、本明細書に記載されている組み合わせ、例えば、MEK阻害剤と組み合わせたFAK阻害剤)を発見した。
【0006】
一態様では、本発明は、がんを有する被験体を処置する方法であって、治療有効量のFAK阻害剤(例えば、VS-6063または薬学的に許容されるその塩)をMEK阻害剤(例えば、GDC-0623、コビメチニブ、トラメチニブ、ピマセルチブ(pimasertib)、AZD6244)と組み合わせて前記被験体に投与し、これにより前記被験体を処置するステップを含む、方法を含む。一部の実施形態では、前記FAK阻害剤または前記MEK阻害剤が、経口投与される(例えば、前記FAK阻害剤および前記MEK阻害剤は、経口投与される)。
【0007】
一部の実施形態では、前記被験体がヒトである。
【0008】
一部の実施形態では、前記FAK阻害剤が、VS-6063または薬学的に許容されるその塩である。一部の実施形態では、VS-6063または薬学的に許容されるその塩が、1日あたり、10~2000mg、50~1500mg、100~1000mg、500~1000mgまたは700~900mgで投与される。一部の実施形態では、VS-6063または薬学的に許容されるその塩が、1日2回、10~1000mg、50~750mg、100~750mg、250~500mgまたは300~500mgで投与される。一部の実施形態では、VS-6063または薬学的に許容されるその塩が、少なくとも、10、25、50、100、150、200、250、500、750または800mg/日の量で投与される。一部の実施形態では、VS-6063または薬学的に許容されるその塩が、1日2回あたり、少なくとも、10、25、50、100、150、200、250、400mgの量で投与される。一部の実施形態では、VS-6063または薬学的に許容されるその塩が、1500、1000、800mg/日またはそれ未満の量で投与される。一部の実施形態では、VS-6063または薬学的に許容されるその塩が、1日2回あたり、750、500、400mgまたはそれ未満の量で投与される。一部の実施形態では、VS-6063または薬学的に許容されるその塩が、組成物(例えば、経口剤形中などの医薬組成物)として投与される。一部の実施形態では、VS-6063または薬学的に許容されるその塩が、組成物の重量あたり、5~30%、10~30%、10~20%、12~15%、13%重量のVS-6063または薬学的に許容されるその塩を含む、前記組成物(例えば、経口剤形中などの医薬組成物)中に存在している。
【0009】
一部の実施形態では、前記MEK阻害剤が、トラメチニブまたは薬学的に許容されるその塩である。一部の実施形態では、前記MEK阻害剤が、GDC-0623または薬学的に許容されるその塩である。一部の実施形態では、前記MEK阻害剤が、コビメチニブまたは薬学的に許容されるその塩である。一部の実施形態では、前記MEK阻害剤が、AZD6244または薬学的に許容されるその塩である。一部の実施形態では、前記MEK阻害剤が、ピマセルチブまたは薬学的に許容されるその塩である。一部の実施形態では、ピマセルチブまたは薬学的に許容されるその塩が、1日あたり、1~500mg、1~250mg、1~100mg、1~75mg、5~500mg、5~250mg、5~100mg、5~75mg、10~500mg、10~250mg、10~100mg、10~75mgの間で投与される。一部の実施形態では、ピマセルチブまたは薬学的に許容されるその塩が、少なくとも1、5、10、25または50mg/日で投与される。一部の実施形態では、ピマセルチブまたは薬学的に許容されるその塩が、150、100、60mg/日またはそれ未満で投与される。一部の実施形態では、ピマセルチブまたは薬学的に許容されるその塩が、組成物(例えば、経口剤形)として投与される。
【0010】
一部の実施形態では、前記がんが、固形腫瘍、軟部組織腫瘍、転移または非固形がんである。一部の実施形態では、前記がんが固形腫瘍である。一部の実施形態では、前記固形腫瘍が、臓器(例えば、肺、胸部、リンパ、胃腸(例えば、結腸)、および尿生殖(例えば、腎臓、尿路上皮または精巣の腫瘍)路、咽頭、前立腺および卵巣)の悪性疾患(例えば、肉腫、腺癌および癌腫)である。一部の実施形態では、前記がんが、中皮腫;神経線維腫症;例えば、2型神経線維腫症、1型神経線維腫症;腎がん;肺がん、非小細胞肺がん;肝臓がん;甲状腺がん;卵巣;乳がん;神経系腫瘍;神経鞘腫;髄膜腫;神経鞘腫症;聴神経腫瘍;腺様嚢胞癌;上衣腫;上衣腫瘍、あるいはマーリン(Merlin)発現の低下および/もしくは変異、ならびに/またはNF-2遺伝子の欠失および/もしくはプロモーター過剰メチル化を示す任意の他の腫瘍である。一部の実施形態では、前記がんが、中皮腫(例えば、悪性胸膜中皮腫、例えば、外科的に切除可能な悪性胸膜中皮腫)、乳がん(例えばトリプルネガティブ乳がん)、卵巣がん(例えば、進行性卵巣がん)、肺がん(例えば、非小細胞肺がん(NSCLC)、例えば、KRAS変異NSCLC))および非血液系悪性疾患を含む群より選択される。一部の実施形態では、前記がんが、黒色腫(例えば、N-Ras変異局所進行性または転移性の悪性皮下黒色腫)、結腸直腸がん(例えば、転移性結腸直腸がん)、白血病(例えば、急性骨髄性白血病)、腺癌(例えば、膵臓腺癌)、固形腫瘍(例えば、局所進行性固形腫瘍、転移性固形腫瘍、肝細胞癌)を含む群より選択される。
【0011】
一部の実施形態では、前記FAK阻害剤および前記MEK阻害剤が、相乗(例えば、治療的)効果をもたらす量(例えば、用量)で投与される。
【0012】
一部の実施形態では、前記投与が、追加の薬剤(例えばがん治療薬、例えば標準がん治療薬(standard of care cancer therapeutic)、例えばタキサン、例えばパクリタキセル)の投与と組み合わせて行われる。一部の実施形態では、前記追加の薬剤ががん治療(例えば、第1選択治療、標準治療処置)である。一部の実施形態では、前記がん治療が、化学療法、標的化治療法(例えば、抗体治療法)、免疫療法またはホルモン治療法である。一部の実施形態では、前記がん治療が、抗炎症剤、鎮痛剤または抗嘔吐剤の投与を含む。
【0013】
一態様では、本発明は、同時、別個または逐次の使用のための、それぞれの場合において遊離形態または薬学的に許容されるこれらの塩もしくは水和物の形態で存在している、FAK阻害剤およびMEK阻害剤、ならびに場合により少なくとも1種の薬学的に許容される担体を含む、組成物または剤形を含む。
【0014】
一態様では、本発明は、FAK阻害剤およびMEK阻害剤を含む、組成物または剤形であって、前記両阻害剤がそれぞれの場合において遊離形態または薬学的に許容されるこれらの塩もしくは水和物の形態で存在しており、前記両阻害剤が相乗的な比で存在している、組成物または剤形を含む。
【0015】
一態様では、本発明は、治療有効量のFAK阻害剤(例えば、VS-6063または薬学的に許容されるその塩)、およびMEK阻害剤(例えば、GDC-0623、コビメチニブ、トラメチニブ、ピマセルチブ、AZD6244)を含む、組成物または剤形を含む。
【0016】
一部の実施形態では、前記FAK阻害剤が、VS-6063または薬学的に許容されるその塩である。一部の実施形態では、VS-6063または薬学的に許容されるその塩が、1日2回あたり、400mgまたはそれ未満で投与される。
【0017】
一部の実施形態では、前記MEK阻害剤が、トラメチニブまたは薬学的に許容されるその塩である。一部の実施形態では、前記MEK阻害剤が、GDC-0623または薬学的に許容されるその塩である。一部の実施形態では、前記MEK阻害剤が、コビメチニブまたは薬学的に許容されるその塩である。一部の実施形態では、前記MEK阻害剤が、AZD624または薬学的に許容されるその塩である。一部の実施形態では、前記MEK阻害剤が、ピマセルチブまたは薬学的に許容されるその塩である。一部の実施形態では、ピマセルチブまたは薬学的に許容されるその塩が、1日あたり、60mgまたはそれ未満で投与される。
特定の実施形態では、例えば以下が提供される:
(項目1)
がんを有する被験体を処置する方法であって、治療有効量のFAK阻害剤(例えば、VS-6063または薬学的に許容されるその塩)をMEK阻害剤(例えば、GDC-0623、コビメチニブ、トラメチニブ、ピマセルチブ、AZD6244)と組み合わせて前記被験体に投与し、これにより前記被験体を処置するステップを含む、方法。
(項目2)
前記FAK阻害剤または前記MEK阻害剤が、経口投与される(例えば、前記FAK阻害剤および前記MEK阻害剤は、経口投与される)、項目1に記載の方法。
(項目3)
前記被験体がヒトである、項目1に記載の方法。
(項目4)
前記FAK阻害剤が、VS-6063または薬学的に許容されるその塩である、項目1に記載の方法。
(項目5)
VS-6063または薬学的に許容されるその塩が、1日あたり、10~2000mg、50~1500mg、100~1000mg、500~1000mgまたは700~900mgで投与される、項目4に記載の方法。
(項目6)
VS-6063または薬学的に許容されるその塩が、1日2回、10~1000mg、50~750mg、100~750mg、250~500mgまたは300~500mgで投与される、項目4に記載の方法。
(項目7)
VS-6063または薬学的に許容されるその塩が、少なくとも、10、25、50、100、150、200、250、500、750または800mg/日の量で投与される、項目4に記載の方法。
(項目8)
VS-6063または薬学的に許容されるその塩が、1日2回あたり、少なくとも、10、25、50、100、150、200、250、400mgの量で投与される、項目4に記載の方法。
(項目9)
VS-6063または薬学的に許容されるその塩が、1500、1000、800mg/日またはそれ未満の量で投与される、項目4に記載の方法。
(項目10)
VS-6063または薬学的に許容されるその塩が、1日2回あたり、750、500、400mgまたはそれ未満の量で投与される、項目4に記載の方法。
(項目11)
VS-6063または薬学的に許容されるその塩が、組成物(例えば、経口剤形中などの医薬組成物)として投与される、項目4に記載の方法。
(項目12)
VS-6063または薬学的に許容されるその塩が、組成物の重量あたり、5~30%、10~30%、10~20%、12~15%、13%重量のVS-6063または薬学的に許容されるその塩を含む、前記組成物(例えば、経口剤形中などの医薬組成物)中に存在している、項目4に記載の方法。
(項目13)
前記MEK阻害剤が、トラメチニブまたは薬学的に許容されるその塩である、項目1に記載の方法。
(項目14)
前記MEK阻害剤が、GDC-0623または薬学的に許容されるその塩である、項目1に記載の方法。
(項目15)
前記MEK阻害剤が、コビメチニブまたは薬学的に許容されるその塩である、項目1に記載の方法。
(項目16)
前記MEK阻害剤が、AZD6244または薬学的に許容されるその塩である、項目1に記載の方法。
(項目17)
前記MEK阻害剤が、ピマセルチブまたは薬学的に許容されるその塩である、項目1に記載の方法。
(項目18)
ピマセルチブまたは薬学的に許容されるその塩が、1日あたり、1~500mg、1~250mg、1~100mg、1~75mg、5~500mg、5~250mg、5~100mg、5~75mg、10~500mg、10~250mg、10~100mg、10~75mgの間で投与される、項目17に記載の方法。
(項目19)
ピマセルチブまたは薬学的に許容されるその塩が、少なくとも1、5、10、25または50mg/日で投与される、項目17に記載の方法。
(項目20)
ピマセルチブまたは薬学的に許容されるその塩が、150、100、60mg/日またはそれ未満で投与される、項目17に記載の方法。
(項目21)
ピマセルチブまたは薬学的に許容されるその塩が、組成物(例えば、経口剤形)として投与される、項目17に記載の方法。
(項目22)
前記がんが、固形腫瘍、軟部組織腫瘍、転移または非固形がんである、項目1に記載の方法。
(項目23)
前記がんが固形腫瘍である、項目1に記載の方法。
(項目24)
前記固形腫瘍が、臓器(例えば、肺、胸部、リンパ、胃腸(例えば、結腸)、および尿生殖(例えば、腎臓、尿路上皮または精巣の腫瘍)路、咽頭、前立腺および卵巣の)の悪性疾患(例えば、肉腫、腺癌および癌腫)である、項目23に記載の方法。
(項目25)
前記がんが、中皮腫;神経線維腫症;例えば、2型神経線維腫症、1型神経線維腫症;腎がん;肺がん、非小細胞肺がん;肝臓がん;甲状腺がん;卵巣;乳がん;神経系腫瘍;神経鞘腫;髄膜腫;神経鞘腫症;聴神経腫瘍;腺様嚢胞癌;上衣腫;上衣腫瘍、あるいはマーリン発現の低下および/もしくは変異、ならびに/またはNF-2遺伝子の欠失および/もしくはプロモーター過剰メチル化を示す任意の他の腫瘍である、項目1に記載の方法。
(項目26)
前記がんが、中皮腫(例えば、悪性胸膜中皮腫、例えば、外科的に切除可能な悪性胸膜中皮腫)、乳がん(例えばトリプルネガティブ乳がん)、卵巣がん(例えば、進行性卵巣がん)、肺がん(例えば、非小細胞肺がん(NSCLC)、例えば、KRAS変異NSCLC))および非血液系悪性疾患を含む群より選択される、項目1に記載の方法。
(項目27)
前記がんが、黒色腫(例えば、N-Ras変異局所進行性または転移性の悪性皮下黒色腫)、結腸直腸がん(例えば、転移性結腸直腸がん)、白血病(例えば、急性骨髄性白血病)、腺癌(例えば、膵臓腺癌)、固形腫瘍(例えば、局所進行性固形腫瘍、転移性固形腫瘍、肝細胞癌)を含む群より選択される、項目1に記載の方法。
(項目28)
前記FAK阻害剤および前記MEK阻害剤が、相乗(例えば、治療的)効果となる量(例えば、用量)で投与される、項目1に記載の方法。
(項目29)
前記投与が、追加の薬剤(例えばがん治療薬、例えば標準がん治療薬、例えばタキサン、例えばパクリタキセル)の投与と組み合わせて行われる、項目1に記載の方法。
(項目30)
前記追加の薬剤ががん治療(例えば、第1選択治療、標準治療処置)である、項目29に記載の方法。
(項目31)
前記がん治療が、化学療法、標的化治療法(例えば、抗体治療法)、免疫療法またはホルモン治療法である、項目30に記載の方法。
(項目32)
前記がん治療が、抗炎症剤、鎮痛剤または抗嘔吐剤の投与を含む、項目30に記載の方法。
(項目33)
同時、別個または逐次の使用のための、それぞれの場合において遊離形態または薬学的に許容されるこれらの塩もしくは水和物の形態で存在している、FAK阻害剤およびMEK阻害剤、ならびに場合により少なくとも1種の薬学的に許容される担体を含む、組成物または剤形。
(項目34)
FAK阻害剤およびMEK阻害剤を含む、組成物または剤形であって、前記阻害剤がそれぞれの場合において遊離形態または薬学的に許容されるこれらの塩もしくは水和物の形態で存在しており、前記阻害剤が相乗的な比で存在している、組成物または剤形。
(項目35)
治療有効量のFAK阻害剤(例えば、VS-6063または薬学的に許容されるその塩)、およびMEK阻害剤(例えば、GDC-0623、コビメチニブ、トラメチニブ、ピマセルチブ、AZD6244)を含む、組成物または剤形。
(項目36)
前記FAK阻害剤が、VS-6063または薬学的に許容されるその塩である、項目34に記載の組成物または剤形。
(項目37)
VS-6063または薬学的に許容されるその塩が、1日2回あたり、400mgまたはそれ未満で投与される、項目36に記載の組成物または剤形。
(項目38)
前記MEK阻害剤が、ピマセルチブまたは薬学的に許容されるその塩である、項目33に記載の組成物または剤形。
(項目39)
ピマセルチブまたは薬学的に許容されるその塩が、1日あたり、60mgまたはそれ未満で投与される、項目38に記載の組成物または剤形。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1A図1Aおよび図1Bは、例示的なMEK阻害剤であるトラメチニブ(tramatinib)を含むおよび含まない、例示的なFAK阻害剤であるVS-6063の濃度の向上に伴う、中皮腫の細胞生存度の例示的なプロットを示すグラフである。
図1B図1Aおよび図1Bは、例示的なMEK阻害剤であるトラメチニブを含むおよび含まない、例示的なFAK阻害剤であるVS-6063の濃度の向上に伴う、中皮腫の細胞生存度の例示的なプロットを示すグラフである。
図2図2は、例示的なMEK阻害剤であるGDC-6023を含むおよび含まない、例示的なFAK阻害剤であるVS-6063の濃度の向上に伴う、中皮腫の細胞生存度の例示的なプロットを示すグラフである。
図3図3は、例示的なMEK阻害剤であるコビメチニブを含むおよび含まない、例示的なFAK阻害剤であるVS-6063の濃度の向上に伴う、中皮腫の細胞生存度の例示的なプロットを示すグラフである。
図4図4は、例示的なMEK阻害剤であるピマセルチブを含むおよび含まない、例示的なFAK阻害剤であるVS-6063の濃度の向上に伴う、中皮腫の細胞生存度の例示的なプロットを示すグラフである。
図5図5は、例示的なMEK阻害剤であるAZD6244を含むおよび含まない、例示的なFAK阻害剤であるVS-6063の濃度の向上に伴う、中皮腫の細胞生存度の例示的なプロットを示すグラフである。
図6図6は、中皮腫の細胞における、例示的なFAK阻害剤であるVS-6063について、GDC-0623、コビメチニブ、AZD-6244、ピマセルチブおよびトラメチニブとの例示的な組み合わせ指数解析を示すグラフである。
図7図7は、例示的なMEK阻害剤であるGDC-6023を含むおよび含まない、例示的なFAK阻害剤であるVS-6063の濃度の向上に伴う、乳がんの細胞生存度の例示的なプロットを示すグラフである。
図8図8は、例示的なMEK阻害剤であるコビメチニブを含むおよび含まない、例示的なFAK阻害剤であるVS-6063の濃度の向上に伴う、乳がんの細胞生存度の例示的なプロットを示すグラフである。
図9図9は、例示的なMEK阻害剤であるトラメチニブを含むおよび含まない、例示的なFAK阻害剤であるVS-6063の濃度の向上に伴う、乳がんの細胞生存度の例示的なプロットを示すグラフである。
図10図10は、例示的なMEK阻害剤であるピマセルチブを含むおよび含まない、例示的なFAK阻害剤であるVS-6063の濃度の向上に伴う、乳がんの細胞生存度の例示的なプロットを示すグラフである。
図11図11は、乳がんの細胞における、例示的なFAK阻害剤であるVS-6063について、GDC-0623、コビメチニブ、トラメチニブおよびピマセルチブとの例示的な組み合わせ指数解析を示すグラフである。
図12図12は、例示的なMEK阻害剤であるAZD6244の濃度向上に伴う、がん幹細胞の生存度の例示的なプロットを示すグラフである。
図13図13は、FAK阻害剤およびMEK阻害剤が相互作用し得る、可能性のある経路を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
発明の詳細な説明
本開示は、本明細書に記載されている方法および組成物の詳細に対してその適用を限定するものでない。同様に、本明細書で使用されている表現および用語は、説明を目的としているものであり、限定として見なされるべきではない。
【0020】
定義
本明細書で使用する場合、冠詞「a」および「an」は、該冠詞の文法上の目的語が1つまたは1つ超(例えば、少なくとも1つ)であることを指す。
【0021】
「約」および「およそ」は、一般に、測定値の性質または精度を考慮して、測定された量の許容可能な程度の誤差を意味するものとする。誤差の例示的な程度は、所与の値または値の範囲の、20パーセント(%)以内、典型的には10%以内、より典型的には5%以内である。
【0022】
本明細書で使用する場合、障害(例えば、本明細書に記載されている障害)を処置するのに有効な化合物または組み合わせの量、「治療有効量」「有効量」または「有効なクール」とは、被験体に単回または多回用量で投与する際に、このような処置の非存在下(例えば、プラセボ処置)で予期されるものを超えて、被験体を処置する、または障害(本明細書に記載されている障害)を有する被験体を治癒、緩和、軽減もしくは改善するのに有効な化合物または組み合わせの量を指す。
【0023】
用語「薬学的に許容される」とは、本明細書で使用する場合、本明細書に記載されている化合物(例えば、FAK阻害剤、MEK阻害剤)と一緒に、被験体に投与されることができる化合物または担体(例えば、添加剤)であって、その薬理学的活性を破壊せず、かつ該化合物の治療量を送達するのに十分な用量で投与した場合、非毒性である、化合物または担体を指す。
【0024】
用語「薬学的に許容される塩」とは、本明細書で使用する場合、本明細書に記載されている化合物(例えば、FAK阻害剤、MEK阻害剤)の誘導体を指し、この場合、該化合物は、存在している酸または塩基の部位をその塩形態に変換することにより修飾される。薬学的に許容される塩の例には、以下に限定されないが、アミンなどの塩基性残基の無機酸塩または有機酸塩;カルボン酸などの酸性残基のアルカリ塩または有機塩などが含まれる。本開示の薬学的に許容される塩には、例えば、非毒性無機酸または有機酸から形成される、本明細書に記載されている化合物(例えば、FAK阻害剤、MEK阻害剤)の従来的の非毒性塩が含まれる。本開示の薬学的に許容される塩は、従来的の化学的な方法により、塩基性または酸性部位を含有している、本明細書に記載されている化合物(例えば、FAK阻害剤、MEK阻害剤)から合成することができる。一般に、こうした塩は、これらの化合物の遊離酸または塩基形態を、水中、または有機溶媒(一般には、エーテル、酢酸エチル、エタノール、イソプロパノールまたはアセトニトリルの様な非水性媒体が好ましい)中、またはこれら2種の混合物中、化学量論量の適切な塩基または酸と反応させることにより調製することができる。適切な塩の一覧表示は、そのそれぞれの全体が参照により本明細書に組み込まれている、Remington’s Pharmaceutical Sciences、第17版、Mack Publishing Company、Easton、Pa.、1985年、1418頁およびJournal of Pharmaceutical Science、66巻、2号(1977年)に見いだされる。
【0025】
「薬学的に許容される誘導体またはプロドラッグ」という句は、本明細書で使用する場合、任意の薬学的に許容される塩、エステル、エステルの塩、または化合物(例えば、FAK阻害剤、MEK阻害剤)の他の誘導体を指し、レシピエントに投与されると、治療剤をもたらす(直接または間接的に)ことができる。特に、好都合な誘導体およびプロドラッグは、本明細書に記載されている化合物(例えば、FAK阻害剤、MEK阻害剤)が哺乳動物に投与されると(経口投与される化合物を、血中により容易に吸収させることを可能にすることによって)、例えば、本明細書に記載されている化合物(例えば、FAK阻害剤、MEK阻害剤)と比べて、こうした化合物のバイオアベイラビリティが向上するか、または本明細書に記載されている化合物(例えば、FAK阻害剤、MEK阻害剤)の生物学的区画への送達を増強するものである。好ましいプロドラッグは、水溶解度または消化管膜を通る能動輸送を増強する基が本明細書に記載されている化合物(FAK阻害剤、MEK阻害剤)の式の構造に付加されている、誘導体を含む。
【0026】
用語「経口剤形」とは、本明細書で使用する場合、薬剤、例えばVS-6063を被験体に投与するために使用される組成物または媒体を指す。通常、経口剤形は、口を経て投与されるが、「経口剤形」は被験体に投与され、かつ例えば口、食道、胃、小腸、大腸および結腸を含めた、消化管の膜、例えば粘膜を横切って吸収される、あらゆる物質を包含するよう意図されている。例えば、「経口剤形」は、栄養管を介して胃に投与される溶液を包含する。
【0027】
用語「処置する」または「処置」とは、本明細書で使用する場合、化合物を単独で、または追加の薬剤と組み合わせて、被験体、例えば、障害(例えば、本明細書に記載されている障害)、障害の症状、または障害への素因を有する被験体に、該障害を治癒する、治す、緩和する、軽減する、改変する、救済する、改良する、改善するまたは障害に影響を及ぼす目的で適用または投与することを指す。
【0028】
本明細書で使用する場合、句「相乗効果」とは、2種またはそれ超の化合物または組成物の相加効果(例えば、治療効果)よりも大きいことを指す。例示的な相乗効果には、単独で使用されるMEK阻害剤とFAK阻害剤の各々の相加性治療効果よりも大きな治療効果をもたらす、MEK阻害剤(例えば、ピマセルチブまたは薬学的に許容されるその塩)の量と組み合わせて使用(例えば、投与)されるFAK阻害剤(例えば、VS-6063または薬学的に許容されるその塩)の量の投与が含まれる。
【0029】
本明細書で使用する場合、用語「被験体」は、ヒトおよび非ヒト動物を含むよう意図される。例示的なヒト被験体は、障害、例えば本明細書に記載されている障害を有するヒト被験体を含む。本発明の用語「非ヒト動物」には、すべての脊椎動物、例えば非哺乳動物(ニワトリ、両生類、爬虫類など)および非ヒト霊長類などの哺乳動物、家畜および/または農業上有用な動物、例えば、ヒツジ、イヌ、ネコ、ウシ、ブタなどが含まれる。
【0030】
組み合わせ
本発明は、とりわけ、それを必要としている被験体に、MEK阻害剤と組み合わせたFAK阻害剤を投与するステップを含む、異常な細胞成長、例えばがんを処置するための、FAK阻害剤とMEK阻害剤との組み合わせ(すなわち、MEK阻害剤と組み合わせたFAK阻害剤)および方法に関する。
【0031】
句「と組み合わせて(in combination with)」および用語「共投与(co-administration)」、「共投与する(co-administering)」または「共提供する(co-providing)」は、本明細書で使用する場合、本明細書に記載されている化合物または本明細書に記載されている治療法の投与の文脈では、2種(またはそれ超)の異なる化合物または治療が、疾患または障害(例えば、本明細書に記載されている疾患または障害、例えばがん)により被験体が病気の過程にある間に該被験体に送達されること、例えば、2種(またはそれ超)の異なる化合物または治療が、被験体が疾患または障害(例えば、本明細書に記載されている疾患または障害、例えばがん)であると診断された後、および疾患または障害が治癒されるかもしくは除かれる前、または他の理由のために処置が中止される前に、該被験体に送達されることを意味する。一部の実施形態では、1種の化合物または治療の送達は、第2の送達が開始される際に依然として行われており、その結果、投与に関して重なりが存在する。これは、本明細書では、時として、「同時」または「並行送達」と呼ばれる。他の実施形態では、1種の化合物または治療の送達が、他の化合物または治療の送達が開始される前に終了する。どちらか一方の場合の一部の実施形態では、上記の処置(例えば、化合物、組成物または治療の投与)は、組み合わせ投与のために一層効果的である。例えば、第2の化合物または治療がより有効である。例えば、第1の化合物または治療の非存在下で第2の化合物または治療が投与された場合に観察されると思われるものよりも、より少ない第2の化合物または第2の治療を用いて等価な効果が観察されるか、または第2の化合物もしくは治療によってかなりの程度まで症状が軽減するか、または第1の化合物または治療を用いた場合に、同様の状況が観察される。一部の実施形態では、送達は、症状、または障害に関連する他のパラメータにおける低下が他のものの非存在下で送達される1つの化合物または治療を用いた場合に観察されると思われるものよりも大きいものである。2つの化合物または治療の効果は、部分的に相加性であり、完全に相加性であり、または相加性を超える(例えば、相乗性)ものとなり得る。その送達は、送達される第1の化合物または治療が、第2のものが送達された際に、依然として検出可能であるものとすることができる。
【0032】
一部の実施形態では、第1の化合物または治療および第2の化合物または治療は、同一または別個の組成物で同時(例えば、同じ時間)に、または逐次投与することができる。逐次投与は、追加的な、例えば第2の化合物または治療の投与の前(例えば、その直前、その5、10、15、30、45、60分未満前、1、2、3、4、6、8、10、12、16、20、24、48、72、96時間またはそれを超えて前、4、5、6、7、8、9日間またはそれを超えて前、1、2、3、4、5、6、7、8週間またはそれを超えて前)に、1つの化合物または治療を投与することを指す。第1および第2の化合物または治療の投与の順序は、やはり逆転することができる。
【0033】
本明細書に記載されている組み合わせ、例えばMEK阻害剤と組み合わせたFAK阻害剤は、異常な細胞成長、例えばがんの第1選択処置とすることができる。すなわち、がんを処置することを意図した別の薬物が以前に投与されていない患者において使用される。がんの第2選択の処置では、すなわち、がんを処置することを意図した別の薬物が以前に投与されている、それを必要としている被験体において使用される。がんの第3または第4の処置では、すなわち、がんを処置することを意図した2つまたは3つの他の薬物が以前に投与された被験体において使用される。
【0034】
一部の実施形態では、本明細書に記載されている組み合わせ、例えばMEK阻害剤と組み合わせたFAK阻害剤は、がんの第1選択処置である。一部の実施形態では、本明細書に記載されている組み合わせ、例えばMEK阻害剤と組み合わせたFAK阻害剤は、がんの第2選択処置である。
【0035】
FAK阻害剤
化合物VS-6063
FAK阻害剤の例は、米国特許第7,928,109号において開示されている、化合物VS-6063(例えば、VS-6063遊離塩基):
【化1】

または薬学的に許容されるその塩(例えば、VS-6063塩酸塩)である。VS-6063は、デファクチニブ(defactinib)またはPF-04554878としても公知である。
【0036】
VS-6063は、FAKタンパク質チロシンキナーゼの強力な阻害剤であり、哺乳動物、特にヒトにおいて、抗増殖剤(例えば抗がん)、抗腫瘍(例えば、固形腫瘍に対して有効)、抗血管新生(例えば、血管の増殖を停止または予防)としての治療的使用に適応され得る。VS-6063は、非血液系悪性疾患の予防および処置において有用となり得る。さらに、VS-6063は、肝臓、腎臓、膀胱、胸部、胃、卵巣、結腸直腸、前立腺、膵臓、肺、外陰部、甲状腺の悪性疾患および良性腫瘍、肝癌、肉腫、神経膠芽腫、頭部および頚部を含めた様々なヒト過剰増殖性障害、ならびに皮膚の良性過形成(例えば、乾癬)および前立腺の良性過形成(例えば、BPH)などの他の過形成状態の予防および処置において有用となり得る。VS-6063はまた、中皮腫などの障害の予防および処置において有用となり得る。
【0037】
MEK阻害剤
MEK阻害剤は、マイトジェン活性化タンパク質キナーゼ(MAPK)酵素MEK1および/またはMEK2(例えば、MAPK/ERK経路)の低分子または生物的阻害剤とすることができる。
【0038】
MEK阻害剤の例には、
【0039】
トラメチニブ(Mekinst、GSK1120212としても公知である)
【化2】
【0040】
ピマセルチブ(AS703026、MSC1936369Bとしても公知である):
【化3】
が含まれる。
【0041】
GDC-0623は、潜在的な抗新生物活性を有する選択的MEK阻害剤である。MEK阻害剤であるGDC-0623は、マイトジェン活性化タンパク質キナーゼ(MEKまたはMAP/ERKキナーゼ)を特異的に阻害し、成長因子媒介性細胞シグナル伝達および腫瘍細胞の増殖を阻害する。MEKは、細胞成長を調節するRAS/RAF/MEK/ERKシグナル伝達経路の重要な構成要素であり、この経路の構成的活性化は多数のがんに関与している。Hatzivassiliouら、Nature 2013年、501巻(7466号)、232~6頁。
【化4】
【0042】
コビメチニブ(GDC-0973、XL-518としても公知である)
【化5】
【0043】
セルメチニブ(AZD6244、ARRY-142886としても公知である)
【化6】
【0044】
MEK162(ARRY-162、ARRY-438162としても公知である)
【化7】
【0045】
PD-325901
【化8】
【0046】
CI-1040
【化9】
【0047】
一部の実施形態では、MEK阻害剤は、ピマセルチブ(AS703026、MSC1936369Bとしても公知である)である。一部の実施形態では、MEK阻害剤は、トラメチニブ(Mekinst、GSK1120212としても公知である)。一部の実施形態では、MEK阻害剤はGDC-0623である。一部の実施形態では、MEK阻害剤はAZD6244である。一部の実施形態では、MEK阻害剤は、コビメチニブ(GDC-0973、XL-518としても公知である)である。一部の実施形態では、MEK阻害剤は、セルメチニブ(AZD6244、ARRY-142886としても公知である)である。一部の実施形態では、MEK阻害剤は、MEK162(ARRY-162、ARRY-438162としても公知である)である。
【0048】
疾患および障害
異常な細胞成長
本明細書で使用する場合、および別に示さない限り、異常な細胞成長は、正常な調節機構(例えば、接触阻害の喪失)に依存しない細胞成長を指す。これには、(1)例えば、変異したチロシンキナーゼを発現することにより、または受容体チロシンキナーゼの過剰発現により増殖する腫瘍細胞(腫瘍)、(2)例えば、異常なチロシンキナーゼ活性化が起こる、他の増殖性疾患の良性および悪性細胞、(3)例えば、受容体チロシンキナーゼにより増殖する任意の腫瘍、(4)例えば、異常なセリン/トレオニンキナーゼ活性化により増殖する任意の腫瘍、および(5)例えば、異常なセリン/トレオニンキナーゼ活性化が起こる、他の増殖性疾患の良性および悪性細胞からなる成長異常が含まれる。異常な細胞成長は、上皮(例えば、癌腫、腺癌)、間葉(例えば、肉腫(例えば、平滑筋肉腫、ユーイング肉腫))、血液系(例えば、リンパ腫、白血病、脊髄形成異常(例えば、前悪性))、または他(例えば、黒色腫、中皮腫、および起源が未知の他の腫瘍)の細胞における細胞成長を指すことができる。
【0049】
新生物障害
異常な細胞成長とは、新生物障害を指すことができる。「新生物障害」は、自律的成長または複製、例えば、増殖性細胞成長を特徴とする異常な状況または状態の能力を有する細胞を特徴とする疾患または障害である。異常な細胞成長もしくは分裂、または「新生物」の結果としての組織の異常な塊が、良性、前悪性(上皮内癌)または悪性(がん)とすることができる。
【0050】
例示的な新生物障害には、癌腫、肉腫、転移性障害(例えば、前立腺、結腸、肺、胸部および肝臓を由来とするものから発生する腫瘍)、血液系新生物障害、例えば白血病、転移性腫瘍が含まれる。化合物による処置は、新生物障害の少なくとも1つの症状を改善、例えば細胞増殖の低減、腫瘍量の低下などに有効な量とすることができる。
【0051】
がん
本発明の独創的な方法は、例えば固形腫瘍、軟部組織腫瘍およびそれらの転移を含めた、がんの予防および処置において有用となり得る。開示されている方法はまた、非固形がんの処置にも有用である。例示的な固形腫瘍には、肺、胸部、リンパ、胃腸(例えば、結腸)、および尿生殖(例えば、腎臓、尿路上皮または精巣の腫瘍)路、咽頭、前立腺および卵巣のものなどの、様々な臓器系の悪性疾患(例えば、肉腫、腺癌および癌腫)が含まれる。例示的な腺癌には、結腸直腸がん、腎細胞癌、肝臓がん(例えば、肝細胞癌)、肺の非小細胞癌、膵臓(例えば、転移性膵臓腺癌)および小腸のがんが含まれる。
【0052】
がんは、中皮腫;神経線維腫症;例えば、2型神経線維腫症、1型神経線維腫症;腎がん;肺がん、非小細胞肺がん;肝臓がん;甲状腺がん;卵巣;乳がん;神経系腫瘍;神経鞘腫;髄膜腫;神経鞘腫症;聴神経腫瘍;腺様嚢胞癌;上衣腫;上衣腫瘍、あるいはマーリン発現の低下および/もしくは変異、ならびに/またはNF-2遺伝子の欠失および/もしくはプロモーター過剰メチル化を示す任意の他の腫瘍を含むことができる。一部の実施形態では、がんは腎がんである。
【0053】
がんは、がん幹細胞、がん関連性間葉細胞または腫瘍始原がん細胞を含むものとして特徴づけられるがんを含むことができる。がんは、がん幹細胞、がん関連性間葉細胞または腫瘍始原がん細胞(例えば、上皮間葉転換を受けた細胞、または転移性腫瘍が豊富な腫瘍)が豊富であるものとして特徴づけられるがんを含むことができる。
【0054】
がんは、原発性腫瘍とすることができる。すなわち腫瘍成長開始の解剖学的部位に位置し得る。がんはまた転移性とすることもできる。すなわち、腫瘍成長開始の解剖学的部位とは別の少なくとも第2の解剖学的部位に現れているものとすることができる。がんは、再発性がん、すなわち、処置後、および該がんが検出不可能なある期間の後に再発するがんとすることができる。再発性がんは、元々の腫瘍に局所的に解剖学的に、例えば、元々の腫瘍近くに解剖学的に、元々の腫瘍に局地的に、例えば元々の腫瘍近辺に位置しているリンパ節に、または元々の腫瘍の遠位に、例えば、元々の腫瘍から離れた領域に解剖学的に位置し得る。
【0055】
がんはまた、例えば、以下に限定されないが、上皮がん、胸部、肺、膵臓、結腸直腸(例えば、転移性結腸直腸、例えば、転移性変異K Ras)、前立腺、頭部および頸部、黒色腫(例えば、N Rasが変異した局所進行性または転移性の悪性皮下黒色腫)、急性骨髄性白血病および神経膠芽腫を含むことができる。例示的な乳がんには、トリプルネガティブ乳がん、基底様乳がん、低クローディン(claudin-low)乳がん、治療に耐性を示す、浸潤性、炎症性、異形成性および進行性のHer-2ポジティブまたはER-ポジティブがんが含まれる。
【0056】
他のがんには、以下に限定されないが、脳、腹部、食道、胃腸、グリオーマ、肝臓、舌、神経芽細胞腫、骨肉腫、卵巣、網膜芽細胞腫、ウィルムス腫瘍、多発性骨髄腫、皮膚、リンパ腫、血液および骨髄のがん(例えば、進行性血液系悪性疾患、白血病、例えば急性骨髄性白血病(例えば、原発性または続発性)、急性リンパ芽球性白血病、急性リンパ性白血病、T細胞白血病、血液系悪性疾患、進行性骨髄増殖性障害、骨髄異形成症候群、再発性または治療抵抗性多発性骨髄腫、進行性骨髄増殖性障害)、網膜、膀胱、子宮頸部、腎臓、子宮内膜、髄膜腫、リンパ腫、皮膚、子宮、肺、非小細胞肺、鼻咽頭癌、神経芽細胞腫、固形腫瘍、血液系悪性疾患、扁平上皮癌、精巣、甲状腺、中皮腫、脳 外陰部、肉腫、腸、口腔、内分泌腺、唾液、精巣精母細胞性セミノーマ(spermatocytic seminoma)、散発性甲状腺髄様癌(sporadic medulalry
thyroid carcinoma)、非増殖性精巣細胞、悪性肥満細胞に関連するがん、非ホジキンリンパ腫およびびまん性大細胞型B細胞性リンパ腫が含まれる。
【0057】
例示的ながんには、急性リンパ芽球性白血病、成体;急性リンパ芽球性白血病、小児;急性骨髄性白血病、成体;副腎皮質癌;副腎皮質癌、小児;AIDS関連リンパ腫;AIDS関連悪性疾患;肛門部のがん;星状細胞腫、小児小脳;星状細胞腫、小児大脳;胆管がん、肝臓外;膀胱がん;膀胱がん、小児;骨がん、骨肉腫/悪性線維性組織球腫;脳幹グリオーマ、小児;脳腫瘍、成体;脳腫瘍、脳幹グリオーマ、小児;脳腫瘍、小脳星状細胞腫、小児;脳腫瘍、大脳星状細胞腫/悪性グリオーマ、小児;脳腫瘍、上衣腫、小児;脳腫瘍、髄芽腫、小児;脳腫瘍、テント上未分化神経外胚葉性腫瘍、小児;脳腫瘍、視路および視床下部グリオーマ、小児;脳腫瘍、小児(その他);乳がん;乳がんおよび妊娠;乳がん、小児;乳がん、雄性;気管支腺腫/カルチノイド、小児;カルチノイド腫瘍、小児;カルチノイド腫瘍、消化管;癌腫、副腎皮質;癌腫、島細胞;原発不明癌;中枢神経系悪性リンパ腫、原発性;小脳星状細胞腫、小児;大脳星状細胞腫/悪性グリオーマ、小児;子宮頚がん;小児がん;慢性リンパ球性白血病;慢性骨髄性白血病;慢性骨髄増殖性疾患;腱鞘の明細胞肉腫;結腸がん;結腸直腸がん、小児;皮膚T細胞リンパ腫;子宮内膜がん;上衣腫、小児;上皮がん、卵巣;食道がん;食道がん、小児;ユーイングファミリーの腫瘍(Ewing’s Family of Tumor);頭蓋外胚細胞腫瘍、小児;性腺外胚細胞腫瘍;肝臓外胆管がん;眼のがん、眼内黒色腫;眼のがん、網膜芽細胞腫;胆嚢がん;胃の(胃)がん;胃の(胃)がん、小児;消化管カルチノイド腫瘍;胚細胞腫瘍、頭蓋外、小児;胚細胞腫瘍、性腺外;胚細胞腫瘍、卵巣;妊娠性絨毛腫瘍;グリオーマ、小児脳幹;グリオーマ、小児視路および視床下部;ヘアリー細胞白血病;頭部および頸部のがん;肝細胞(肝臓)がん、成体(原発性);肝細胞(肝臓)がん、小児(原発性);ホジキンリンパ腫、成体;ホジキンリンパ腫、小児;妊娠中のホジキンリンパ腫;下咽頭がん;視床下部および視路グリオーマ、小児;眼内黒色腫;島細胞癌(内分泌性膵臓);カポジ肉腫;腎臓がん;喉頭がん;喉頭がん、小児;白血病、急性リンパ芽球性、成体;白血病、急性リンパ芽球性、小児;白血病、急性骨髄性、成体;白血病、急性骨髄性、小児;白血病、慢性リンパ球性;白血病、慢性骨髄性;白血病、ヘアリー細胞;口唇がんおよび口腔がん;肝臓がん、成体(原発性);肝臓がん、小児(原発性);肺がん、非小細胞;肺がん、小細胞;リンパ芽球性白血病、成体急性;リンパ芽球性白血病、小児急性;リンパ球性白血病、慢性;リンパ腫、AIDS関連;リンパ腫、中枢神経系(原発性);リンパ腫、皮膚T細胞;リンパ腫、ホジキン、成体;リンパ腫、ホジキン、小児;リンパ腫、妊娠中のホジキン;リンパ腫、非ホジキン、成体;リンパ腫、非ホジキン、小児;リンパ腫、妊娠中の非ホジキン;リンパ腫、原発性中枢神経系;マクログロブリン血症、ワルデンシュトレーム型;雄性の乳がん;悪性中皮腫、成体;悪性中皮腫、小児;悪性胸腺腫;髄芽腫、小児;黒色腫;黒色腫、眼内;メルケル細胞癌;中皮腫、悪性;原発不明転移性扁平上皮性頸部がん(Metastatic Squamous Neck Cancer with Occult Primary);多発性内分泌腫瘍症候群、小児;多発性骨髄腫/プラズマ細胞新生物;菌状息肉腫;骨髄異形成症候群;骨髄性白血病、慢性;骨髄性白血病、小児急性;骨髄腫、多発性;骨髄増殖性疾患、慢性;鼻腔および副鼻腔がん;鼻咽頭がん;鼻咽頭がん、小児;神経芽細胞腫;非ホジキンリンパ腫、成体;非ホジキンリンパ腫、小児;妊娠中の非ホジキンリンパ腫;非小細胞肺がん;口腔がん、小児;口腔および口唇のがん;中咽頭がん;骨肉腫/骨の悪性線維性組織球腫;卵巣がん、小児;卵巣上皮がん;卵巣胚細胞腫瘍;卵巣低悪性度腫瘍(Ovarian
Low Malignant Potential Tumor);膵臓がん;膵臓がん、小児;膵臓がん、島細胞;副鼻腔および鼻腔がん;副甲状腺がん;陰茎がん;クローム親和細胞腫;松果体およびテント上未分化神経外胚葉性腫瘍、小児;下垂体腫瘍;形質細胞新生物/多発性骨髄腫;胸膜肺芽腫;妊娠および乳がん;妊娠およびホジキンリンパ腫;妊娠および非ホジキンリンパ腫;原発性中枢神経系リンパ腫;原発性肝臓がん、成体;原発性肝臓がん、小児;前立腺がん;直腸がん;腎細胞(腎臓)がん;腎細胞がん、小児;腎盂および尿管の移行上皮がん;網膜芽細胞腫;横紋筋肉腫、小児;唾液腺がん;唾液腺がん、小児;肉腫、ユーイングファミリーの腫瘍;肉腫、カポジ;肉腫(骨肉腫)/骨の悪性線維性組織球腫;肉腫、横紋筋肉腫、小児;肉腫、軟部組織、成体;肉腫、軟部組織、小児;セザリー症候群;皮膚がん;皮膚がん、小児;皮膚がん(黒色腫);皮膚癌、メルケル細胞;小細胞肺がん;小腸がん;軟組織肉腫、成体;軟組織肉腫、小児;原発不明の扁平上皮性頸部がん(Squamous Neck Cancer with Occult Primary)、転移性;胃(胃の)がん;胃(胃の)がん、小児;テント上未分化神経外胚葉性腫瘍、小児;T細胞リンパ腫、皮膚;精巣がん;胸腺腫、小児;胸腺腫、悪性;甲状腺がん;甲状腺がん、小児;腎盂および尿管の移行上皮がん;絨毛性腫瘍、妊娠性;原発部位が不明の小児がん;小児の希少がん;腎盂および尿管の移行上皮がん;尿道がん;子宮肉腫;膣がん;視路および視床下部グリオーマ、小児;外陰がん;ワルデンシュトレーム型マクログロブリン血症;およびウィルムス腫瘍が含まれる。前述のがんの転移はまた、本明細書に記載されている方法に従って、処置および/または予防され得る。
【0058】
一部の実施形態では、腫瘍は固形腫瘍である。一部の実施形態では、この固形腫瘍は、局所進行性または転移性である。一部の実施形態では、この固形腫瘍は標準治療後に、治療抵抗性(例えば、耐性)である。
【0059】
本明細書に記載されている方法は、障害および/またはその関連症状を軽減する、改善するまたは完全に取り除いて、悪化するのを予防する、進行速度を遅延させる、または一旦、最初に取り除かれると、障害の再発速度を最小限にする(すなわち、再発を回避する)ことができる。好適な用量および治療レジメンは、使用される具体的な化合物、組み合わせおよび/または医薬組成物、ならびに化合物、組み合わせおよび/または医薬組成物の送達様式に応じて様々となり得る。一部の実施形態では、本方法は、統計的に有意な様式で、本明細書に記載されている組み合わせを用いて処置される被験体の、生存の平均長さを増加させる、無進行生存の平均長さを増加させる、および/または再発の速度を低減する。
【0060】
一部の実施形態では、がんは、肺がん(例えば、非小細胞肺がん(NSCLC)、例えばKRAS変異NSCLC、転移性のがん)、骨がん、膵臓がん、皮膚がん、頭部または頚部のがん、皮膚または眼内黒色腫、子宮がん、卵巣がん(例えば、切除不能で低グレードの卵巣(unresectable low-grade ovarian)、進行性または転移性卵巣がん)、直腸がん、肛門部のがん、胃がん、結腸がん、乳がん(例えば、トリプルネガティブ乳がん(例えば、エストロゲン受容体、黄体ホルモン受容体(receiptor)およびHer2/neuについての遺伝子を発現しない乳がん))、子宮がん、卵管の癌腫、子宮内膜の癌腫、子宮頸部(cervix)の癌腫、膣の癌腫、外陰の癌腫、ホジキン病、食道のがん、小腸のがん、内分泌系のがん、甲状腺のがん、副甲状腺のがん、副腎のがん、軟部組織の肉腫、尿道のがん、陰茎のがん、前立腺がん、慢性または急性白血病、リンパ球性リンパ腫、膀胱のがん、腎臓または尿管のがん、腎細胞癌、腎盂の癌、中枢神経系(CNS)の新生物、原発性CNSリンパ腫、脊椎軸(spinal axis)の腫瘍、脳幹グリオーマ、下垂体腺腫、中皮腫(例えば、悪性胸膜中皮腫、例えば外科的に切除可能な悪性胸膜中皮腫)、または上述のがんの1つまたは複数の組み合わせが含まれる。一部の実施形態では、がんは転移性である。一部の実施形態では、異常な細胞成長は、局所再発性(例えば、被験体は、局所再発性疾患、例えばがんを有する)である。
【0061】
本発明の独創的な方法は、本明細書に記載されている組み合わせ、例えば、MEK阻害剤と組み合わせたFAK阻害剤の治療有効量を単回および多回投与することを企図している。組み合わせ、例えば本明細書に記載されている組み合わせ、例えば、MEK阻害剤と組み合わせたFAK阻害剤は、被験体の状態の性質、重症度および程度に応じて、規則的な間隔で投与することができる。一部の実施形態では、本明細書に記載されている組み合わせ、例えばMEK阻害剤と組み合わせたFAK阻害剤は、単回用量で投与される。一部の実施形態では、本明細書に記載されている組み合わせ、例えばMEK阻害剤と組み合わせたFAK阻害剤は、多回用量で投与される。一部の実施形態では、治療有効量の本明細書に記載の組み合わせ(例えば、MEK阻害剤と組み合わせたFAK阻害剤)は、経口かつ規則的な間隔で定期的(例えば、1、2、3、4、5もしくは6日間、または1、2、3、4、5、6、7、8もしくは9週間、または1、2、3、4、5、6、7、8、9か月間もしくはそれ超毎に、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10回またはそれ超)に投与され得る。
【0062】
一部の実施形態では、本明細書に記載の組み合わせ(例えば、MEK阻害剤と組み合わせたFAK阻害剤)は、所定の間隔(例えば、1、2、3、4、5もしくは6日間、または1、2、3、4、5、6、7、8もしくは9週間、または1、2、3、4、5、6、7、8、9か月間またはそれ超毎に、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10回またはそれ超)で投与される。
【0063】
がんの併用療法
一部の実施形態では、本明細書に記載されている方法および組成物(例えば、MEK阻害剤と組み合わされるFAK阻害剤)は、追加の治療(例えば、がん処置)と一緒に投与される。一実施形態では、1つもしくは複数の化合物または医薬組成物の混合物は、本明細書に記載されている組み合わせ、例えばMEK阻害剤と組み合わせたFAK阻害剤と共にそれを必要としている被験体に投与され得る。さらに別の実施形態では、1つもしくは複数の化合物または組成物(例えば、医薬組成物)は、例えば、がん、糖尿病、神経変性疾患、心血管疾患、血液凝固、炎症、紅潮、肥満、加齢、ストレスなどを含めた様々な疾患を処置または回避するために、本明細書に記載されている組み合わせ、例えば、MEK阻害剤と組み合わせたFAK阻害剤と共に投与され得る。様々な実施形態では、本明細書に記載されている化合物または医薬組成物を含む併用療法は、(1)本明細書に記載されている組み合わせ、例えばMEK阻害剤と組み合わせたFAK阻害剤と組み合わせた1つまたは複数の化合物を含む、医薬組成物、および(2)本明細書に記載されている1つもしくは複数の化合物または医薬組成物と、本明細書に記載されている組み合わせ、例えばMEK阻害剤と組み合わせたFAK阻害剤との共投与を指すことができ、この場合、本明細書に記載されている化合物または医薬組成物は、同一組成物中に製剤化されていない。一部の実施形態では、本明細書に記載されている組み合わせ(例えば、MEK阻害剤と組み合わせたFAK阻害剤)は、追加的な処置(例えば、追加的ながん処置)と共に投与される。一部の実施形態では、追加的な処置(例えば、追加的ながん処置)は、同一または別個の組成物で同時(例えば、同じ時間)に投与され得るか、または逐次投与され得る。逐次投与は、追加的な、例えば第2の処置(例えば、化合物または治療)の投与の前(その直前、その5、10、15、30、45、60分間未満前、1、2、3、4、6、8、10、12、16、20、24、48、72、96時間またはそれを超えて前、4、5、6、7、8、9日またはそれを超えて前、1、2、3、4、5、6、7、8週またはそれを超えて前)に、1つの処置を投与することを指す。第1および第2の化合物または治療の投与の順序を、逆転することもできる。
【0064】
例示的ながん処置には、例えば、化学療法、抗体治療法などの標的化治療法、免疫療法およびホルモン治療法が含まれる。これらの処置の各々の例は、以下に提供されている。
【0065】
化学療法
一部の実施形態では、本明細書に記載されている組み合わせ(例えばMEK阻害剤と組み合わせたFAK阻害剤)は、化学療法と一緒に投与される。化学療法は、がん細胞を破壊することができる薬物によるがんの処置である。「化学療法」は、通常、一般には標的化治療法とは対照的に、迅速に分裂する細胞に影響を及ぼす細胞毒性薬を指す。化学療法薬は、様々な可能性のある方法で、細胞分裂、例えば、DNAの複製または新しく形成される染色体の分離を妨害する。化学療法の大部分の形態は、迅速に分裂する細胞を標的とし、がん細胞に特異的ではないが、ある程度の特異性は、正常な細胞は一般にDNAの損傷を修復可能である一方、多くのがん細胞がDNAの損傷を修復する能力がないことに由来し得る。
【0066】
がん治療において使用される化学治療剤の例には、例えば、代謝拮抗薬(例えば、葉酸、プリンおよびピリミジン誘導体)およびアルキル化剤(例えば、ナイトロジェンマスタード、ニトロソ尿素、白金、スルホン酸アルキル、ヒドラジン、トリアジン、アジリジン、紡錘体毒、細胞毒性剤、トポイソメラーゼ(toposimerase)阻害剤および他のもの)が含まれる。例示的な薬剤には、アクラルビシン、アクチノマイシン、アリトレチノン(Alitretinon)、アルトレタミン、アミノプテリン、アミノレブリン酸、アムルビシン、アムサクリン、アナグレリド、三酸化ひ素、アスパラギナーゼ、アトラセンタン、ベロテカン(belotecan)、ベキサロテン、エンダムスチン、ブレオマイシン、ボルテゾミブ、ブスルファン、カンプトテシン、カペシタビン、カルボプラチン、カルボコン、カルモフール、カルムスチン、セレコキシブ、クロラムブシル、クロルメチン、シスプラチン、クラドリビン、クロファラビン、クリサンタスパーゼ(Crisantaspase)、シクロホスファミド、シタラビン、ダカルバジン、ダクチノマイシン、ダウノルビシン、デシタビン、デメコルシン、ドセタキセル、ドキソルビシン、エファプロキシラル、エレスクロモル(Elesclomol)、エルサミトルシン(Elsamitrucin)、エノシタビン、エピルビシン、エストラムスチン、エトグルシド、エトポシド、フロクスウリジン、フルダラビン、フルオロウラシル(5FU)、フォテムスチン、ゲムシタビン、Gliadelインプラント(Gliadel implant)、ヒドロキシカルバミド、ヒドロキシ尿素、イダルビシン、イホスファミド、イリノテカン、イロフルベン、イキサベピロン、ラロタキセル(Larotaxel)、ロイコボリン、リポソームドキソルビシン、リポソームダウノルビシン、ロニダミン、ロムスチン、ルカントン、マンノスルファン、マソプロコール、メルファラン、メルカプトプリン、メスナ、メトトレキセート、アミノレブリン酸メチル、ミトブロニトール、ミトグアゾン、ミトタン、マイトマイシン、ミトキサントロン、ネダプラチン、ニムスチン、オブリメルセン、オマセタキシン、オルタタキセル(Ortataxel)、オキサリプラチン、パクリタキセル、ペガスパルガーゼ、ペメトレキセド、ペントスタチン、ピラルビシン、ピクサントロン、プリカマイシン、ポルフィマーナトリウム、プレドニムスチン、プロカルバジン、ラルチトレキセド、ラニムスチン、ルビテカン、サパシタビン(Sapacitabine)、セムスチン、シチマジーンセラデノベック、ストラタプラチン(Strataplatin)、ストレプトゾシン、タラポルフィン、テガフル-ウラシル、テモポルフィン、テモゾロミド、テニポシド、テセタキセル(Tesetaxel)、テストラクトン、テトラニトレート、チオテパ、チアゾフリン、チオグアニン、チピファルニブ、トポテカン、トラベクテジン、トリアジコン、トリエチレンメラミン、トリプラチン(Triplatin)、トレチノイン、トレオスルファン、トロホスファミド、ウラムスチン、バルルビシン、ベルテポルフィン、ビンブラスチン、ビンクリスチン、ビンデシン、ビンフルニン、ビノレルビン、ボリノスタット、ゾルビシン、および本明細書に記載されている他の細胞増殖抑制剤または細胞毒性剤が含まれる。
【0067】
一部の薬物は、単独でよりも一緒にしてよく働くので、2つまたはそれ超の薬物が、同時または逐次に与えられることが多い。多くの場合、2つまたはそれ超の化学治療剤が、併用化学療法として使用される。一部の実施形態では、この化学療法剤(併用化学療法を含む)は、本明細書に記載されている組み合わせ(例えば、MEK阻害剤と組み合わせたFAK阻害剤)と組み合わせて使用することができる。
【0068】
標的化治療法
一部の実施形態では、本明細書に記載されている組み合わせ(例えばMEK阻害剤と組み合わせたFAK阻害剤)は、標的化治療法と一緒に投与される。標的化治療法は、がん細胞の調節解除されたタンパク質に特異的な薬剤の使用を構成する。低分子標的化治療薬は、一般に、がん細胞内の変異した、過剰発現した、そうでなければ重要なタンパク質上の酵素ドメインの阻害剤である。著名な実施例には、アキシチニブ、ボスチニブ、セジラニブ、デサチニブ、エルロチニブ(erolotinib)、イマチニブ、ゲフィチニブ、ラパチニブ、レスタウチニブ、ニロチニブ、セマキサニブ、ソラフェニブ、スニチニブおよびバンデタニブなどのチロシンキナーゼ阻害剤であり、さらには、アルボシジブおよびセリシクリブなどのサイクリン依存性キナーゼ阻害剤である。モノクローナル抗体療法は、治療剤が、がん細胞の表面上のタンパク質に特異的に結合する抗体である、別の戦略である。例には、通常、乳がんにおいて使用される抗HER2/neu抗体であるトラスツズマブ(HERCEPTIN(登録商標))、および様々なB細胞悪性疾患において通常、使用される抗CD20抗体であるリツキシマブおよびトシツモマブが含まれる。他の例示的な抗体には、セツキシマブ(Ctuximab)、パニツムマブ、トラスツズマブ、アレムツズマブ、ベバシズマブ、エドレコロマブおよびゲムツズマブが含まれる。例示的な融合タンパク質には、アフリベルセプトおよびデニロイキンジフチトクスが含まれる。一部の実施形態では、この標的化治療法は、本明細書に記載されている組み合わせ(例えば、MEK阻害剤と組み合わせたFAK阻害剤)と組み合わせて使用することができる。
【0069】
標的化治療法はまた、細胞表面受容体または腫瘍を取り囲む冒された細胞外マトリックスに結合することができる、「ホーミングデバイス(homing device)」としての小さなペプチドも含むことができる。核種が細胞の近傍で減衰する場合、これらのペプチド(例えば、RGD)に結合している放射性核種は、がん細胞を最終的に死滅させる。こうした治療法の一例には、BEXXAR(登録商標)が含まれる。
【0070】
免疫療法
一部の実施形態では、本明細書に記載されている組み合わせ(例えばMEK阻害剤と組み合わせたFAK阻害剤)は、免疫療法と一緒に投与される。がんの免疫療法とは、腫瘍と闘う患者自身の免疫系を誘発するよう設計されている、多様なセットの治療的戦略を指す。腫瘍に対する免疫応答を発生するための現行の方法には、表在性膀胱がんの場合の嚢内BCG免疫療法、ならびに腎細胞癌および黒色腫を有する被験体における免疫応答を誘発するための、インターフェロンおよび他のサイトカインの使用が含まれる。
【0071】
同種造血幹細胞移植は、ドナーの免疫細胞が移植片対腫瘍効果において腫瘍を攻撃することが多いので、免疫療法の一形態と見なすことができる。一部の実施形態では、この免疫療法剤は、本明細書に記載されている組み合わせ(例えば、MEK阻害剤と組み合わせたFAK阻害剤)と組み合わせて使用することができる。
【0072】
ホルモン治療法
一部の実施形態では、本明細書に記載されている組み合わせ(例えばMEK阻害剤と組み合わせたFAK阻害剤)は、ホルモン治療法と一緒に投与される。一部のがんの成長は、ある種のホルモンを提供または遮断することにより阻害され得る。ホルモン感受性腫瘍の一般的な例には、ある種のタイプの乳がんおよび前立腺がんが含まれる。エストロゲンまたはテストステロンの除去または遮断は、多くの場合、重要な追加処置である。ある種のがんでは、プロゲストゲンなどのホルモンアゴニストの投与が、治療上有益なことがある。一部の実施形態では、このホルモン治療剤は、本明細書に記載されている組み合わせ(例えば、MEK阻害剤と組み合わせたFAK阻害剤)と組み合わせて使用することができる。
【0073】
放射線療法
本明細書に記載されている組み合わせ(例えば、MEK阻害剤と組み合わせたFAK阻害剤)は、増殖性疾患、例えばがん、例えばがん幹細胞に関連するがんの処置のための、指向性エネルギーもしくは粒子、または放射性同位体処置、例えば放射線治療、例えば放射線腫瘍学と組み合わせて使用することができる。本明細書に記載されている組み合わせ(例えば、MEK阻害剤と組み合わせたFAK阻害剤)は、指向性エネルギーもしくは粒子、または放射性同位体処置と一緒に、被験体に同時にまたは逐次に投与され得る。例えば、本明細書に記載されている組み合わせ(例えば、MEK阻害剤と組み合わせたFAK阻害剤)は、指向性エネルギーもしくは粒子、または放射性同位体処置、またはそれらの組み合わせの前、これらの最中またはこれらの後に投与され得る。指向性エネルギーまたは粒子治療は、全身の照射、身体の局所照射または点照射を含むことができる。指向性エネルギーまたは粒子は、加速器、シンクロトロン、核反応、真空管、レーザー、または放射性同位体に由来し得る。この治療法は、外部ビーム照射療法、遠隔放射線療法、近接照射療法、密封線源放射線療法(sealed source radiation therapy)、全身放射性同位体療法または非密封線源放射線療法(unsealed source radiotherapy)を含むことができる。この治療法は、放射性同位体、例えば、放射性ヨウ素、コバルト、セシウム、カリウム、臭素、フッ素、炭素の摂取、またはこれらの近位部に配置することを含むことができる。外部ビーム照射は、指向性アルファ粒子、電子(例えば、ベータ粒子)、プロトン、中性子、陽電子または光子(例えば、電波、ミリ波、マイクロ波、赤外線、可視光、紫外線、X線またはガンマ-線光子)への曝露を含むことができる。放射は、処置を必要としている被験体のいかなる部分も対象となり得る。
【0074】
手術
本明細書に記載されている組み合わせ(例えば、MEK阻害剤と組み合わせたFAK阻害剤)は、増殖性疾患、例えばがん、例えばがん幹細胞に関連するがんの処置のための、手術、例えば外科的診査、介入、生検と組み合わせて使用することができる。本明細書に記載されている組み合わせ(例えば、MEK阻害剤と組み合わせたFAK阻害剤)は、手術と一緒に、被験体に同時にまたは逐次に投与され得る。例えば、本明細書に記載されている組み合わせ(例えば、MEK阻害剤と組み合わせたFAK阻害剤)は、手術の前(術前)、これらの最中またはこれらの後(術後)、またはそれらの組み合わせに投与され得る。手術は、1つまたは複数の細胞がさらなる分析のために採集されている間の生検であってもよい。生検は、例えば、メス、ニードル、カテーテル、内視鏡、スパチュラまたははさみを使用して実施され得る。この生検は、切除生検、切開生検、コア生検、またはニードル生検、例えばニードル吸引生検とすることができる。手術は、がん性である疑いがあるかまたはそのように特定された局所組織の除去を含むことができる。例えば、手順は、がん性病変、しこり、ポリープまたは母斑の除去を含むことができる。手順は、胸部、骨、皮膚、脂肪または筋肉などの、大量の組織の除去を含むことができる。手順は、臓器または節、例えば、肺、喉、舌、膀胱、子宮頸部、卵巣、精巣、リンパ節、肝臓、膵臓、脳、眼、腎臓、胆嚢、胃、結腸、直腸または腸の一部またはそれらの全部の除去を含むことができる。一実施形態では、がんは乳がん、例えばトリプルネガティブ乳がんであり、手術は、乳房切除術またはランペクトミーである。
【0075】
抗炎症剤
本明細書に記載されている組み合わせ(例えばMEK阻害剤と組み合わせたFAK阻害剤)は、抗炎症剤と一緒に投与され得る。抗炎症剤は、以下に限定されないが、非ステロイド系抗炎症剤(例えば、サリチレート系(アスピリン(アセチルサリチル酸)、ジフルニサル、サルサレート)、プロピオン酸誘導体(イブプロフェン、ナプロキセン、フェノプロフェン、ケトプロフェン、フルルビプロフェン、オキサプロジン、ロキソプロフェン)、酢酸誘導体(インドメタシン、スリンダク、エトドラク、ケトロラク、ジクロフェナク、ナブメトン)、エノール酸(オキシカム)誘導体(ピロキシカム、メロキシカム、テノキシカム、ドロキシカム、ロルノキシカム、イソキシカム)、フェナム酸誘導体(フェナメート)(メフェナム酸、メクロフェナム酸、フルフェナム酸、トルフェナム酸)、選択的COX-2阻害剤(コキシブ系)(セレコキシブ)、スルホンアニリド系(ニメスリド)を含むことができる。ステロイド系(例えば、ヒドロコルチゾン(コルチソール)、酢酸コルチソン、プレドニゾン、プレドニゾロン、メチルプレドニゾロン、デキサメサゾン、ベタメタゾン、トリアムシノロン、ベクロメタゾン、酢酸フルドロコルチゾン、酢酸デオキシコルチコステロン、アルドステロン)を含むことができる。
【0076】
鎮痛剤
鎮痛剤は、以下に限定されないが、オピエート系(例えば、モルヒネ、コデイン、オキシコドン、ヒドロコドン、ジヒドロモルフィン、ペチジン、ブプレノルフィン、トラマドール、ベンラファキシン)、パラセタモール(paracetomal)、および非ステロイド系抗炎症剤(例えば、サリチレート系(アスピリン(アセチルサリチル酸)、ジフルニサル、サルサレート)、プロピオン酸誘導体(イブプロフェン、ナプロキセン、フェノプロフェン、ケトプロフェン、フルルビプロフェン、オキサプロジン、ロキソプロフェン)、酢酸誘導体(インドメタシン、スリンダク、エトドラク、ケトロラク、ジクロフェナク、ナブメトン)、エノール酸(オキシカム)誘導体(ピロキシカム、メロキシカム、テノキシカム、ドロキシカム、ロルノキシカム、イソキシカム)、フェナム酸誘導体(フェナメート)(メフェナム酸、メクロフェナム酸、フルフェナム酸、トルフェナム酸)、選択的COX-2阻害剤(コキシブ系)(セレコキシブ)、スルホンアニリド系(ニメスリド)を含むことができる。
【0077】
抗嘔吐剤
本明細書に記載されている組み合わせ(例えばMEK阻害剤と組み合わせたFAK阻害剤)は、抗嘔吐剤と一緒に投与され得る。抗嘔吐剤は、以下に限定されないが、5-HT3受容体アンタゴニスト(ドラセトロン(Anzemet)、グラニセトロン(Kytril、Sancuso)、オンダンセトロン(Zofran)、トロピセトロン(Navoban)、パロノセトロン(Aloxi)、ミルタザピン(Remeron))、ドーパミンアンタゴニスト(ドンペリドン、オランザピン、ドロペリドール、ハロペリドール、クロルプロマジン、プロメタジン、プロクロルパラジン、メトクロプラミド(Reglan)、アリザプリド、プロクロルペラジン(Compazine、Stemzine、Buccastem、Stemetil、Phenotil))、NK1受容体アンタゴニスト(アプレピタント(Emend)、抗ヒスタミン薬(シクリジン、ジフェンヒドラミン(Benadryl)、ジメンヒドリネート(Gravol、Dramamine)、メクロジン(Bonine、Antivert)、プロメタジン(Pentazine、Phenergan、Promacot)、ヒドロキシジン)、ベンゾジアザピン系(ロラゼパム、ミダゾラム)、抗コリン作用薬(ヒヨスチン)、ステロイド系(デキサメサゾン)を含むことができる。
【0078】
投与および投与量
本発明の組み合わせは、経口、非経口、局所、直腸で、または埋め込み式レザーバーを介して、好ましくは経口投与または注射による投与によって、投与され得る。一部の場合、本組成物(例えば、医薬組成物)のpHは、薬学的に許容される酸、塩基または緩衝液により調節されて、該組成物の安定性または有効性を増強することができる。
【0079】
一部の実施形態では、被験体には、経口的に組成物(例えば、医薬組成物)が投与される。一部の実施形態では、本組成物(例えば、医薬組成物)は、以下に限定されないが、液状ゲル(liqui-gel)錠剤またはカプセル剤、シロップ剤、エマルション剤および水性懸濁剤を含めた、任意の経口として許容される剤形で経口投与される。液状ゲルは、好適な粘稠度を達成するために必要な場合、ゼラチン、可塑剤および/または乳白剤を含むことができ、使用に承認されている腸溶コーティング、例えばセラックによりコーティングされていてもよい。経口投与として使用される場合、追加の増粘剤、例えばガム、例えばキサンタンガム、デンプン、例えばトウモロコシデンプン、またはグルテンが加えられて、組成物(例えば、医薬組成物)の所望の粘稠度を達成することができる。所望の場合、ある種の甘味剤および/または矯味矯臭剤および/または着色剤が加えられてもよい。
【0080】
一部の実施形態では、被験体には、例えば、錠剤、カプセル剤、丸剤、散剤、持続放出性製剤、溶液剤および懸濁剤などの経口投与に適した形態の組成物(例えば、医薬組成物)が投与される。本組成物(例えば、医薬組成物)は、正確な投与量の単回投与に適した単位剤形にあってもよい。医薬組成物は、本明細書に記載の化合物(例えば、FAK阻害剤(例えば、VS-6063または薬学的に許容されるその塩);MEK阻害剤(例えば、ピマセルチブまたは薬学的に許容されるその塩))に加え、薬学的に許容される担体を含んでもよく、例えば安定化剤、賦形剤、結合剤および滑沢剤をさらに含んでもよい。さらに、この錠剤は、他の医療的または薬学的な薬剤、担体、およびまたはアジュバントを含んでもよい。例示的な医薬組成物には、例えばFAK阻害剤(例えば、VS-6063または薬学的に許容されるその塩);またはMEK阻害剤(例えば、ピマセルチブまたは薬学的に許容されるその塩)を含む、圧縮された錠剤(例えば、直接圧縮された錠剤)を含む。
【0081】
活性成分または治療成分(例えば、本明細書に記載されている化合物(例えば、FAK阻害剤(例えば、VS-6063または薬学的に許容されるその塩);MEK阻害剤(例えば、ピマセルチブまたは薬学的に許容されるその塩)))を含む錠剤も提供される。活性成分または治療成分に加え、錠剤は、担体などのいくつかの不活発物質を含んでもよい。薬学的に許容される担体は、石油、動物、植物または合成起源(ピーナッツ油、ゴマ油など)のものを含む、水および油などの滅菌液体とすることができる。食塩溶液および水性デキストロースもまた、液体担体として使用することができる。こうして、本発明による使用のための経口剤形は、添加剤および補助剤を含む1種または複数の薬学的に許容される担体を使用して、従来の方法で製剤化することができ、これらの担体は、薬学的に使用することができる調製物への活性成分の加工を容易にする。
【0082】
添加剤は、圧縮される材料に、良好な粉末流動および圧縮特徴を付与することができる。添加剤の例は、例えば、Raymond C Rowe、Paul J. SheskeyおよびSian C. Owenにより編集されたHandbook of Pharmaceutical Excipients(第5版);出版社:Pharmaceutical Pressにおいて記載されている。
【0083】
経口投与の場合、活性成分、例えば本明細書に記載されている化合物(例えば、FAK阻害剤(例えば、VS-6063または薬学的に許容されるその塩);MEK阻害剤(例えば、ピマセルチブまたは薬学的に許容されるその塩))は、活性成分と当技術分野で周知の薬学的に許容される担体とを組み合わせることにより、容易に製剤化することができる。こうした担体は、本発明の活性成分を、被験体によって経口で摂取するために、錠剤、丸剤、カプセル剤、液剤、ゲル剤、シロップ剤、スラリー剤、散剤または顆粒剤、水性または非水性媒体中の懸濁剤または溶液剤などとして製剤化することを可能にする。経口使用のための薬理学的調製物は、固体添加剤を使用し、場合により得られた混合物を粉砕し、そして顆粒の混合物を加工し、所望の場合、好適な補助剤を加えた後に、例えば錠剤を得ることができる。賦形剤、結合剤または崩壊剤などの適切な添加剤が望ましくなり得る。
【0084】
投与量は、使用される剤形および利用される投与経路に応じて、様々になり得る。正確な製剤、投与経路および投与量は、患者の状態を考慮して、個々の医師によって選択され得る(例えば、Finglら、1975年の「The Pharmacological
Basis of Therapeutics」を参照されたい)。上で列挙されているものよりも少ないかまたは多い用量が必要となることがある。特定のいかなる被験体にとっての具体的な投与量および処置レジメンは、使用される具体的な化合物の活性、年齢、体重、一般的な健康状態、性別、食事、投与時間、排出率、薬物組み合わせ、疾患、状態もしくは症状の重症度および経過、疾患、状態もしくは症状に対する被験体の傾向、および処置する医師の判断を含む、様々な要因に依存する。治療の一クールは、本明細書に記載されている化合物(例えば、FAK阻害剤、MEK阻害剤)の1つまたは複数の別個の投与を含むことができる。治療の一クールは、本明細書に記載されている化合物(例えば、FAK阻害剤、MEK阻害剤)の1つまたは複数のサイクルを含むことができる。
【0085】
一部の実施形態では、サイクルとは、薬物投与のサイクルの文脈において本明細書で使用する場合、薬物が患者に投与される期間を指す。例えば、ある薬物が21日間のサイクルにわたり投与される場合、この周期的投与は、例えば、毎日または1日2回で21日間、投与される。薬物は、1回より多いサイクルにわたり投与することができる。休止期間が、各サイクルの間に設けられてもよい。休止サイクルは、長さが、1、2、4、6、8、10、12、16、20、24時間、1、2、3、4、5、6、7日間、または1、2、3、4週間またはそれ超とすることができる。
【0086】
経口剤形は、所望の場合、FDAにより承認を受けたキットなどのパックまたはディスペンサーデバイスで提示されてもよく、これらは、活性成分を含有する1つまたは複数の単位剤形を含有してもよい。このパックは、例えば、ブリスターパックなどの金属製またはプラスチック製フォイルを含むことができる。パックまたはディスペンサーデバイスは、投与するための指示書を伴ってもよい。パックまたはディスペンサーは、医薬品の製造、使用または販売を規制する政府機関によって規定された形態の容器を伴う注意書きを伴ってもよく、この注意書きは、該政府機関による、組成物の形態またはヒトもしくは獣医学的投与の承認を反映したものである。こうした注意書きは、例えば、処方薬に対して米国食品医薬品局によって承認を受けたラベル付け、または承認済み製品インサートとすることができる。
【実施例0087】
本開示は、以下の実施例においてさらに記載され、この実施例は、特許請求の範囲を限定するものではない。
【0088】
材料および方法
細胞株:がん細胞株は、American Type Culture Collection(Manassas、VA)から購入し、ATCCにより推奨されている標準培養条件下で培養した。Mero-41(中皮腫細胞株)は、Sigma-Aldrich(St.Louis、MO)から購入し、ECACCにより推奨されている標準培養条件下で培養した。MDA-MB-231(トリプルネガティブ乳がんの細胞株)は、ECACCにより推奨されている標準培養条件下で培養した。TOV-21G(卵巣明細胞腺癌細胞株)は、ECACCにより推奨されている標準培養条件下で培養した。すべての細胞株用の成長培地に、ペニシリン(100単位/ml)/ストレプトマイシン(100μg/ml)を補充した。培地は、MCDB105培地((+1.5g/Lの炭酸水素ナトリウム):培地199(+2.2g/Lの炭酸水素ナトリウム)の1:1の混合物、15%FBSを含んだ。
【0089】
A. 組み合わせのスクリーニングフォーマット:
9×9の全マトリックスフォーマットを使用し、幅広い濃度範囲および用量比にわたる、VS-6063とMEK阻害剤との間の組み合わせ効果を評価した。化合物は、2倍希釈で、最大濃度10uMで使用した。パクリタキセルは、3倍希釈で、最大濃度1uMで投与した。
【0090】
B. アッセイ
細胞が3次元培養で増殖する、「Matrigel on-top」(MoT)アッセイを使用した。細胞は、培養培地を用いて1:1に希釈した、Matrigel(BD Biosciences、Franklin Lakes、NJ)の濃厚な基底層の上で平板培養した。単一細胞調製物は、希釈Matrigel(培養培地中1:50)に再懸濁させ、Matrigel基底層を覆うように播種した。これは、卵巣がん細胞が、コラーゲンおよびラミニンがその主要なMatrigel構成成分である、細胞外マトリックス(ECM)構成要素により取り囲まれるのを確実にした。細胞は、透明な底部を有する、384ウェルの黒色超低接着プレート(Corning、Tewksbury MA)中、ウェルあたり500個の細胞密度で播種した。インキュベートの24時間後、細胞を様々な濃度のVS-6063、または様々な濃度のVS-6063とMEK阻害剤との組み合わせにより処理した。細胞生存/増殖は、CellTiter-Glo(登録商標)Luminescent Cell Viability Assay(Promega、Madison、WI)によって評価した。Tの読み取り(化合物の添加時)およびT96の読み取り(化合物と一緒にして96時間のインキュベート)は、Envision2104 Multilabel Reader(PerkinElmer、Boston、MA)を使用して得た。
【0091】
C. 組み合わせの解析方法
組み合わせ効果は、単剤の活性に由来する3種の異なるヌル参照モデルに対する平均化した生存度/阻害を比較することにより評価した。
【0092】
Bliss独立モデル
Bliss独立モデルは、単剤が相互に非排他的に作用すること、および各薬剤が得られた効果に独立して寄与しているという仮定を含めた相互作用効果を予想するものである(Blissら、1939年)。予期された相加性効果は、独立した阻害剤に由来する併用効果に対する統計的予期である。数学的に、Bliss(F)=FUA1×FUA2(FUA1およびFUA2は、化合物A1およびA2によりそれぞれ処理した場合の影響を受けていない割合である)である。
【0093】
最高単剤(HSA)モデル/Gaddumの非相互作用モデル
Gaddumの非相互作用モデルは、組み合わせの効果が単剤のどちらかを超える場合、これらの単剤は必然的に互いに手助けをしているにちがいないと明記したものである(Berenbaumら、1989年)。数学的に、HSA(F)=max(FaA1、FaA2)(FaA1およびFaA2は、化合物A1およびA2によりそれぞれ処理した場合の影響を受けた割合である)である。
【0094】
Loewe加成性モデル
Loewe加成性モデルは、2種の阻害剤が類似のメカニズムにより標的に作用すること、およびこれらの阻害剤は、効力しか違いがないということを仮定したものである(Fitzgeraldら、2006年)。Loewe加成性モデルを超える組み合わせ効果は、所与の効果レベルを達成するために必要な単剤の用量と比べて、組み合わせにおける有効な薬物の全用量が低下していると見なされ得る。相乗作用は、組み合わせ指数CI=DA1/dA1+DA2/dA2(DA1およびDA2は、化合物A1とA2との組み合わせ用量であり、dA1およびdA2は、組み合わせ用量により達成される影響を受けた場合の同じ割合の化合物A1およびA2の単剤の用量である。相乗的組み合わせの場合、CI<1であり、拮抗的組み合わせの場合CI>1となる)について測定することができる。Loewe(F)は、(DA1/dA1(Loewe))+(DA2/dA2(Loewe))=1(dA1(Loewe)およびdA2(Loewe)は、単剤化合物A1およびA2のLoewe(F)における有効濃度である)を満足する、影響を受けた割合である。
【0095】
結果
図1から12は、例示的なMEK阻害剤であるGDC-0623、コビメチニブ、AZD-6244、ピマセルチブおよびトラメチニブを含むおよび含まない、例示的なFAK阻害剤であるVS-6063の存在下での、中皮腫および乳がんの細胞の細胞生存度の例示的なプロットおよび解析を示している。MEK阻害剤の存在下および非存在下での生存度の比較プロットにより、FAK阻害剤、例えばVS-6063とMEK阻害剤(例えば、GDC-0623、コビメチニブ、AZD-6244、ピマセルチブおよびトラメチニブ)との組み合わせの相加効果を超えている(例えば、相乗効果)ことが示唆される。FAK阻害剤とMEK阻害剤の所与の組み合わせの活性(例えば、細胞生存度に対する効果)が、どのように2種の阻害剤の阻害の相加効果に基づくプロットに現れるかを示す、組み合わせ効果(例えば、Bliss独立モデル、最高単剤(HSA)モデルおよびLoewe加成性モデル)をモデル化するプロットも含まれる。
【0096】
参考文献
1. Bliss, C.(1939年). The toxicity of poisons applied jointly. Annals of Applied Biology, 26巻:585~615頁
2. Berenbaum, M.C.(1989年). What is synergy? Pharmacology Review, 41巻:93~141頁
3. Fitzgerald, J.B.ら(2006年). System biology and combination therapy in the quest for clinical efficacy. Nature Chemical Biology, 2:458~466巻。
図1A
図1B
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
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図10
図11
図12
図13
【外国語明細書】