IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社デンソーウェーブの特許一覧

<>
  • 特開-印字装置 図1
  • 特開-印字装置 図2
  • 特開-印字装置 図3
  • 特開-印字装置 図4
  • 特開-印字装置 図5
  • 特開-印字装置 図6
  • 特開-印字装置 図7
  • 特開-印字装置 図8
  • 特開-印字装置 図9
  • 特開-印字装置 図10
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022113968
(43)【公開日】2022-08-05
(54)【発明の名称】印字装置
(51)【国際特許分類】
   B41J 29/38 20060101AFI20220729BHJP
   B23K 26/00 20140101ALI20220729BHJP
   G06K 1/12 20060101ALI20220729BHJP
   G06K 19/06 20060101ALI20220729BHJP
   B41J 3/01 20060101ALN20220729BHJP
   B41J 3/407 20060101ALN20220729BHJP
【FI】
B41J29/38 350
B23K26/00 B
G06K1/12 H
G06K19/06 037
G06K19/06 046
B41J3/01
B41J3/407
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021010011
(22)【出願日】2021-01-26
(71)【出願人】
【識別番号】501428545
【氏名又は名称】株式会社デンソーウェーブ
(74)【代理人】
【識別番号】100095795
【弁理士】
【氏名又は名称】田下 明人
(74)【代理人】
【識別番号】100143454
【弁理士】
【氏名又は名称】立石 克彦
(72)【発明者】
【氏名】田畑 惣太郎
(72)【発明者】
【氏名】深谷 量崇
【テーマコード(参考)】
2C055
2C061
4E168
【Fターム(参考)】
2C055JJ00
2C055JJ12
2C061AS11
2C061HJ01
2C061HK07
2C061HK11
2C061KK18
2C061KK28
2C061KK33
4E168AA00
4E168CA06
4E168CB04
4E168DA24
4E168DA28
4E168DA43
4E168EA15
4E168JA01
4E168JA17
(57)【要約】
【課題】運用中に情報コードの印字品質を改善する場合でも、試行錯誤することなく選択すべき印字パラメータの値に変更可能な構成を提供する。
【解決手段】レーザ照射部13等によりワークWに印字された情報コードCの印字品質に関する指標の値を取得する指標取得処理が行われる。制御部11によって印字パラメータの値を複数段階変化させてレーザ照射部13等により検証用ワークに情報コードCを印字した際に、指標取得処理により取得される指標の値が複数段階の印字パラメータの値にそれぞれ関連付けられるようにして生成された調整用情報が、印字パラメータの値を調整するための情報としてワークWごとに記憶部16に予め記憶されている。そして、運用中に指標取得処理により取得される指標の値が所定の悪化状態になると、当該指標の値と記憶部16に記憶されている調整用情報とに基づいて、上記所定の悪化状態を改善するように印字パラメータの値が調整される。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワークに情報コードを印字する印字部と、
前記ワークに前記情報コードを印字する際の前記印字部の印字パラメータの値を調整可能な制御部と、
前記印字パラメータの値を調整するための情報が前記ワークごとに調整用情報として予め記憶されている記憶部と、
前記印字部により前記ワークに印字された前記情報コードの印字品質に関する指標の値を取得する指標取得部と、
を備え、
前記調整用情報は、前記制御部によって前記印字パラメータの値を複数段階変化させて前記印字部により前記ワークと同じ検証用ワークに前記情報コードを印字した際に、前記指標取得部により取得される前記指標の値が前記複数段階の印字パラメータの値にそれぞれ関連付けられるようにして生成され、
前記制御部は、前記指標取得部により取得される前記指標の値が所定の悪化状態になると、当該指標の値と前記記憶部に記憶されている前記調整用情報とに基づいて、前記所定の悪化状態を改善するように前記印字パラメータの値を調整することを特徴とする印字装置。
【請求項2】
前記指標は、前記情報コードのコントラストであることを特徴とする請求項1に記載の印字装置。
【請求項3】
前記指標は、前記情報コードを構成する各セルの配列方向の長さであることを特徴とする請求項1に記載の印字装置。
【請求項4】
前記印字部は、パルスレーザ光を走査させて前記ワークに照射することで当該ワークに前記情報コードを印字し、
前記印字パラメータは、前記パルスレーザ光のレーザ出力であることを特徴とする請求項1~3のいずれか一項に記載の印字装置。
【請求項5】
前記制御部は、前記指標取得部により取得される前記指標の値が所定の悪化状態になると、当該指標の値と前記記憶部に記憶されている前記調整用情報を線形補間した情報とに基づいて、前記所定の悪化状態を改善するように前記印字パラメータの値を調整することを特徴とする請求項1~4のいずれか一項に記載の印字装置。
【請求項6】
前記調整用情報は、複数の前記検証用ワークに前記情報コードをそれぞれ印字する際の前記印字パラメータの値を前記検証用ワークごとに異なるように複数段階変化させて生成されることを特徴とする請求項1~5のいずれか一項に記載の印字装置。
【請求項7】
前記調整用情報は、1つの前記検証用ワークに前記情報コードが印字される領域を複数の印字変更領域にわけて、前記情報コードを印字する際の前記印字パラメータの値を前記印字変更領域ごとに異なるように複数段階変化させて生成されることを特徴とする請求項1~5のいずれか一項に記載の印字装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ワークに情報コードを印字する印字装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、製品(ワーク)となる基板等の媒体に直接QRコード(登録商標)などの情報コードを印字するダイレクトマーキングが広く利用されており、この情報コードの読取結果を用いた製品管理等が行われている。このように情報コードを基板等のワークに直接印字する際、そのワークの状態等によっては印字品質が低下する場合があり、情報コードを安定して読み取るためにはその情報コードの印字品質を高める必要がある。
【0003】
特に、ダイレクトマーキングを利用して情報コードをワークに印字する場合、例えばレーザ加工ではパルスレーザ光の発振周波数や出力等の様々な印字パラメータがあり、安定して読み取り可能に情報コードを印字するためには、そのワークに適した印字パラメータを選択する必要がある。しかしながら、同じ印字加工であっても、そのワークの材質や形状等によって適した印字パラメータが変わる場合があり、そのワークに適した印字パラメータを選択することが困難であるという問題がある。
【0004】
このような問題を解決するための技術として、例えば、下記特許文献1に開示される情報コードの印字品質改善システムが知られている。この印字品質改善システムは、ワークに関する製造工程中に配置されて、印字装置によってワークに印字される情報コードの印字品質を検証装置によって検証し、その印字品質が不良(規定レベル未満)であると、その検証結果を印字装置にフィードバックしてそのワークに適した印字パラメータを選択し直すことで情報コードの印字品質を改善するように構成されている。そして、印字品質が良好(規定レベル以上)になると、その選択された印字パラメータを量産用の印字パラメータに設定することで、印字装置により印字される情報コードの印字品質向上を図っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許2019-061315号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、運用開始時にそのワークに対して最適な印字パラメータの値が選択指示されることで印字品質に関する指標が良くなる情報コードが印字されていたとしても、経時変化や周囲環境の変化等(以下、単に、経時変化等ともいう)のために、運用中に情報コードの印字品質に関する指標が悪化する場合がある。例えば、運用開始時にそのワークに対して最適なパルスレーザ光の出力値が選択指示されることでコントラスト値が良くなる情報コードが印字されていたとしても、経時変化等のために、運用中に実際の出力値が選択指示された指示値よりも低下してしまうことでコントラスト値が低下する場合がある。このような場合には、その指標(例えば、情報コードのコントラスト)を改善するように印字パラメータの値(例えば、パルスレーザ光の出力値)を調整することができる。その際、製品として出荷しない検証用ワークではなく運用中のワークを用いて、印字される情報コードの指標の値をワークごとに段階的に変化させた印字パラメータの値とともに取得することで、取得された指標の値が最も良くなる印字パラメータの値を最適な印字パラメータの値として求めることができる。このようにして現時点での最適な印字パラメータの値を求めることで、運用中であっても、悪化した指標を改善するように印字パラメータの値を調整することができる。
【0007】
しかしながら、上述のように最適な印字パラメータの値を求める手法では、より適した指標の値を取得するために、より多くの段階にて印字パラメータの値を変化させる必要がある。このように、運用中に印字パラメータの値を多数段階変化させるように試行錯誤すると、指標が比較的良くない情報コード、すなわち、読み取り難い情報コードがワークに印字されてしまう。このような読み取り難い情報コードは、印字直後の時点では読み取れても、修理等の返却時に読み取れなくなっている可能性があるという問題がある。
【0008】
本発明は、上述した課題を解決するためになされたものであり、その目的とするところは、運用中に情報コードの印字品質を改善する場合でも、試行錯誤することなく選択すべき印字パラメータの値に変更可能な構成を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため、特許請求の範囲の請求項1に記載の発明は、
ワーク(W)に情報コード(C)を印字する印字部(12,13)と、
前記ワークに前記情報コードを印字する際の前記印字部の印字パラメータの値を調整可能な制御部(11)と、
前記印字パラメータの値を調整するための情報が前記ワークごとに調整用情報として予め記憶されている記憶部(16)と、
前記印字部により前記ワークに印字された前記情報コードの印字品質に関する指標の値を取得する指標取得部(11,14)と、
を備え、
前記調整用情報は、前記制御部によって前記印字パラメータの値を複数段階変化させて前記印字部により前記ワークと同じ検証用ワークに前記情報コードを印字した際に、前記指標取得部により取得される前記指標の値が前記複数段階の印字パラメータの値にそれぞれ関連付けられるようにして生成され、
前記制御部は、前記指標取得部により取得される前記指標の値が所定の悪化状態になると、当該指標の値と前記記憶部に記憶されている前記調整用情報とに基づいて、前記所定の悪化状態を改善するように前記印字パラメータの値を調整することを特徴とする。
なお、上記各括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示すものである。
【発明の効果】
【0010】
請求項1の発明では、印字部によりワークに印字された情報コードの印字品質に関する指標の値を取得する指標取得部が設けられている。制御部によって印字パラメータの値を複数段階変化させて印字部により検証用ワークに情報コードを印字した際に、指標取得部により取得される指標の値が複数段階の印字パラメータの値にそれぞれ関連付けられるようにして生成された調整用情報が、印字パラメータの値を調整するための情報としてワークごとに記憶部に予め記憶されている。そして、指標取得部により取得される指標の値が所定の悪化状態になると、当該指標の値と記憶部に記憶されている調整用情報とに基づいて、上記所定の悪化状態を改善するように印字パラメータの値が制御部により調整される。
【0011】
これにより、情報コードをワークに順次印字している運用中に印字パラメータの値が変化したために情報コードの印字品質に関する指標の値が最適な状態から上記所定の悪化状態に変わったとしても、その所定の悪化状態が改善されるように印字パラメータの値が調整されるので、運用中であっても情報コードの印字品質を改善することができる。特に、上記調整用情報は、運用時のワークと同じ検証用ワークに対して情報コードを印字する際の複数段階の印字パラメータの値と指標の値とが関連付けられて生成されるため、この調整用情報から指標を基準とする印字パラメータの値の変化傾向を推定することができる。このため、経時変化等に起因して印字パラメータに関する実際の値が指示値からずれた場合には、そのずれた実際の値を、現時点の指標の値と上記調整用情報とから推定することで、指標の値を最適な状態に近づけるために選択すべき印字パラメータの値(以下、選択値ともいう)を、この選択値と上記指示値との差が当該指示値と上述のように推定した実際の値との差に等しくなるように設定することができる。例えば、指示値「80」が実際の値「70」にずれていると推定される場合には、選択値として「90」を設定することができる。すなわち、印字パラメータの値に関して推定された実際の値から上記選択値を設定できるので、運用中に情報コードの印字品質を改善する場合でも、試行錯誤することなく選択すべき印字パラメータの値に変更することができる。
【0012】
請求項2の発明では、指標は、情報コードのコントラストであるため、情報コードの印字品質に影響しやすいだけでなく容易に取得可能な値を指標とすることができる。
【0013】
請求項3の発明では、指標は、情報コードを構成する各セルの配列方向の長さであるため、情報コードの印字品質に影響しやすいだけでなく容易に取得可能な値を指標とすることができる。
【0014】
請求項4の発明では、印字パラメータは、印字部から照射されるパルスレーザ光のレーザ出力であるため、運用中に指示値から変化する可能性がある値を印字パラメータとして採用することができる。
【0015】
請求項5の発明では、指標取得部により取得される指標の値が所定の悪化状態になると、当該指標の値と記憶部に記憶されている調整用情報を線形補間した情報とに基づいて、上記所定の悪化状態を改善するように印字パラメータの値が制御部により調整される。これにより、調整用情報として予め記憶部に記憶される指標の値及び印字パラメータの値の数が少ない場合でも印字パラメータに関して上述のようにずれた実際の値を推定することができる。
【0016】
請求項6の発明では、調整用情報は、複数の検証用ワークに情報コードをそれぞれ印字する際の印字パラメータの値を検証用ワークごとに異なるように複数段階変化させて生成される。これにより、検証用ワークの個数を多くするほど、印字パラメータの値の変化傾向を精度良く推定可能な調整用情報を生成することができる。
【0017】
請求項7の発明では、調整用情報は、1つの検証用ワークに情報コードが印字される領域を複数の印字変更領域にわけて、情報コードを印字する際の印字パラメータの値を印字変更領域ごとに異なるように複数段階変化させて生成される。これにより、1つの検証用ワークから複数の指標の値及び印字パラメータの値を取得できるので、調整用情報を生成するために必要な検証用ワークの個数を削減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】第1実施形態に係る印字装置の概略構成を示すブロック図である。
図2】第1実施形態において印字装置の制御部にてなされる調整用情報生成処理の流れを例示するフローチャートである。
図3】調整用情報生成処理によって生成された調整用情報を例示する説明図である。
図4】第1実施形態において印字装置の制御部にてなされる印字パラメータ調整処理の流れを例示するフローチャートである。
図5】所定の悪化状態になった際に取得された指標の値と図3の調整用情報とに基づいて、所定の悪化状態を改善するためのレーザ出力選択値を設定する流れを説明する説明図である。
図6図6(A)は、第2実施形態において、情報コードが印字される領域を7つの印字変更領域に分けた状態を説明する説明図であり、図6(B)は、印字変更領域Da3におけるコントラスト値の算出方法を説明する説明図である。
図7図6(A)のように分けた印字変更領域Da9でのレーザ出力値の設定理由を説明する説明図である。
図8図8(A)は、誤り訂正レベルHでの各ブロックと印字変更領域Da9とを関係を説明する説明図であり、図8(B)は、誤り訂正レベルQでの各ブロックと印字変更領域Da9とを関係を説明する説明図である。
図9】第2実施形態の変形例において、印字変更領域をコードワード単位で設定する例を説明する説明図である。
図10図10(A)は、各印字変更領域が属しているブロックを説明する説明図であり、図10(B)は、図10(A)の状態を、ブロックのコードワード単位で設定されるレーザ出力値を用いて説明する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
[第1実施形態]
以下、本発明の第1実施形態に係る情報コードの印字装置について、図面を参照して説明する。
本実施形態に係る印字装置10は、搬送装置20により所定の印字位置に搬送されたワークWに情報コードCを直接印字する所定の印字加工を施す装置として構成されている。より具体的には、印字装置10は、パルスレーザ光を用いてワークWに情報コードCを直接印字するダイレクトマーキング用のレーザマーキング装置として構成されている。
【0020】
ワークWは、情報コードCを付すべき製品そのものであって、樹脂や金属などの様々な材料、平板状や傾斜面状など様々な形状のものが想定される。また、ワークWに印字される情報コードCは、例えば、QRコードであって、所定の情報が記録されるように、複数の正方形状のセルが明色系セルと暗色系セルとに区別されて配列されるようにして形成される。このため、ワークWにおいてQRコードが設けられる領域(以下、コード領域ともいう)のうち、明色系セル及び暗色系セルのいずれか一方に相当する部分(以下、加工対象セルともいう)に対して所定の印字加工が施されることで、複数の明色系セル及び暗色系セルからなるQRコードがワークWに印字される。
【0021】
印字装置10は、図1に示すように、主に、制御部11、レーザ発振器12、レーザ照射部13、撮像部14、入力部15、記憶部16、表示部17、通信部18を備えている。レーザ発振器12は、パルスレーザ光Lを発振して出射するレーザ光源として機能するもので、本実施形態では、例えば、YAGなどのマーキング用レーザが採用されている。なお、ファイバーなどの固体レーザに限らず、気体レーザまたは液体レーザが用いられていてもよい。
【0022】
レーザ照射部13は、レーザ発振器12から出射されたパルスレーザ光Lを所定方向へ反射するスキャナ(ガルバノスキャナ等)と、このスキャナにより反射されたパルスレーザ光LをワークWの所定位置に集光させるレンズとを備えている。
【0023】
制御部11は、印字装置10全体を制御可能なマイコンを主体として構成されるものであり、CPU、システムバス、入出力インタフェース等からなり、パルスレーザ光Lのレーザ出力(パワー)や照射位置、発振周波数等の印字パラメータの値を調整してレーザ発振器12及びレーザ照射部13等を制御することで、ラスタ方式により印字処理を行うように機能する。なお、レーザ発振器12及びレーザ照射部13は、「印字部」の一例に相当し得る。
【0024】
撮像部14は、受光センサ(例えば、C-MOSエリアセンサ、CCDエリアセンサ等)を備えたカメラであって、レーザ照射部13から照射されたパルスレーザ光LによってワークWに印字される情報コードCを撮像範囲とするように配置されている。この撮像部14は、制御部11により制御されて、撮像した画像データを制御部11に出力するように構成されている。
【0025】
入力部15は、ワークWの材質及び情報コードCに記録する情報やそのコードサイズ、仕上げ等の情報(以下、印字情報ともいう)を印字装置10に入力するため入力手段であって、キーボード、マウス、その他の入力装置を備えるように構成されている。入力部15により情報コードCに記録する情報が入力されると、制御部11によりこの情報等が記録されるように情報コードCがQRコード等として生成されて、当該情報コードCを構成するセルのセル数や各セルの配列が決まる。
【0026】
記憶部16は、ROM、RAM、HDD等からなる記憶装置であって、レーザ発振器12及びレーザ照射部13等の各ハードウェアを制御可能なシステムプログラム等が制御部11により実行可能に予め格納されている。また、記憶部16には、印字パラメータの値を調整するための情報がワークWごとに調整用情報として予め記憶されている。この調整用情報については後述する。
【0027】
表示部17は、公知の液晶ディスプレイ(LCD)等によって構成されており、制御部11による制御に応じて表示内容が制御されるようになっている。通信部18は、LAN等の所定のネットワークを介して通信を行う公知の通信インタフェースとして構成されており、制御部11と協働して外部機器と通信を行うように機能する。
【0028】
このように構成される印字装置10では、制御部11にてなされる指標取得処理によって、ワークWに印字された情報コードCを撮像部14にて撮像した撮像画像を利用して、その情報コードCの印字品質に関する指標の値が取得される。なお、上記指標取得処理を行う制御部11及び撮像部14は、「指標取得部」の一例に相当し得る。
【0029】
本実施形態では、情報コードCの印字品質に関する指標として、情報コードCのコントラストが採用されている。情報コードCのコントラスト値Pは、デコード処理が成功することでその撮像画像での明色系セル及び暗色系セルの領域を確定した後、撮像画像のコード領域における明色系セルが占める領域の平均輝度値をML1、暗色系セルが占める領域の平均輝度値をML2とするとき、以下の式(1)によって算出することができる。
P=(ML1-ML2)/ML1 ・・・(1)
【0030】
特に、本実施形態では、運用開始前の設備導入時において、制御部11にてなされる調整用情報生成処理によって、印字パラメータの値を複数段階変化させてワークWと同じ検証用ワークに対して情報コードCを印字した際に、上記指標取得処理により取得される指標の値が各印字パラメータの値にそれぞれ関連付けられるようにして調整用情報が生成されて記憶部16に記憶される。そして、運用中において、制御部11にてなされる印字パラメータ調整処理によって、ワークWに印字される情報コードCの印字品質に関する指標の値が所定の悪化状態になると、そのワークWに関連付けられて記憶部16に記憶されている上記調整用情報等に基づいて、上記所定の悪化状態を改善するように印字パラメータの値が調整される。
【0031】
本実施形態では、印字パラメータとして、パルスレーザ光Lのレーザ出力値Lpが採用されており、このレーザ出力値Lpを複数段階変化させて検証用ワークに対して情報コードCを印字した際に、取得されるコントラスト値Pがレーザ出力値Lpに関連付けられるようにして上記調整用情報が生成される。
【0032】
以下、設備導入時に、制御部11にてなされる調整用情報生成処理について、図2に示すフローチャート等を用いて詳細に説明する。
なお、経時変化や周囲環境の変化等(以下、単に、経時変化等ともいう)の影響がない設備導入時では、そのワークWに対して指標が最も良くなる印字パラメータの値がわかっているものとする。
【0033】
まず、そのワークWに対して情報コードCのコントラスト値Pが最も高くなるレーザ出力値(以下、レーザ出力指示値Lpoともいう)で情報コードCを検証用ワークに印字する(図2のS101)。次に、印字した情報コードCを撮像部14にて撮像して、その撮像画像に対して情報コードCを解読するためのデコード処理を行う(S103)。そのデコードが成功すると(S105でYes)、上記撮像画像からその情報コードCのコントラスト値Pが上記式(1)を利用して算出されて取得される(S107)。このように取得されたコントラスト値Pはレーザ出力値Lpに関連付けられて記憶部16に記憶される(S109)。
【0034】
続いて、レーザ出力値Lpが予め設定された所定値に応じて減少されるように変更設定された後(S111)、その変更されたレーザ出力値Lpにて次の検証用ワークに情報コードCが印字される(S101)。そして、この情報コードCの撮像画像に対するデコード処理が成功すると(S105でYes)、その撮像画像から取得されたコントラスト値Pが変更されたレーザ出力値Lpに関連付けられて記憶部16に記憶される(S109)。このようにして、デコード処理が失敗するまで、徐々に下げられたレーザ出力値Lpとこのレーザ出力値Lpで印字された情報コードCのコントラスト値Pとが関連付けられて順次記憶部16に記憶される。
【0035】
そして、レーザ出力不足のために印字された情報コードCのデコードが失敗すると(S105でNo)、レーザ出力値Lpが上記レーザ出力指示値Lpoよりも所定値に応じて増加方向に調整された後(S113)、その変更されたレーザ出力値Lpにて次の検証用ワークに情報コードCが印字される(S115)。そして、印字した情報コードCの撮像画像に対してデコード処理がなされ(S117)、そのデコードが成功すると(S119でYes)、上記撮像画像からその情報コードCのコントラスト値Pが算出されて取得される(S121)。このように取得されたコントラスト値Pは上述のように変更されたレーザ出力値Lpに関連付けられて記憶部16に記憶される(S123)。
【0036】
続いて、レーザ出力値Lpが上記所定値に応じて増加されるように変更設定された後(S125)、その変更されたレーザ出力値Lpにて次の検証用ワークに情報コードCが印字される(S115)。そして、この情報コードCの撮像画像に対するデコード処理が成功すると(S119でYes)、その撮像画像から取得されたコントラスト値Pが変更されたレーザ出力値Lpに関連付けられて記憶部16に記憶される(S123)。このようにして、デコード処理が失敗するまで、徐々に上げられたレーザ出力値Lpとこのレーザ出力値Lpで印字された情報コードCのコントラスト値Pとが関連付けられて順次記憶部16に記憶される。
【0037】
そして、レーザ出力過剰のために印字された情報コードCのデコードが失敗すると(S119でNo)、本調整用情報生成処理が終了する。この調整用情報生成処理により得られた複数組のレーザ出力値Lp及びコントラスト値Pによって、例えば、図3に例示されるようにして、調整用情報が生成される。このように生成される調整用情報によって、そのワークWに関して、コントラスト値Pを基準とするレーザ出力値Lpの変化傾向を推定することができる。
【0038】
なお、上記調整用情報生成処理では、レーザ出力値Lpが上記所定値に応じて常に同じ減少幅で減少されるように変更設定されることに限らず、取得されるコントラスト値Pに応じてレーザ出力値Lpの減少幅を変化させてもよい。例えば、初期調査として所定回数にて上記所定値に応じて減少させた後に、コントラスト値Pの変化が少ない場合に、コントラスト値Pの変化がある場合と比較して、その後の減少幅を大きくしてもよい。これにより、調整用情報を生成するための検証用ワークの個数を減らすことができるだけでなく、調整用情報を生成するための作業時間も軽減することができる。また、デコード失敗した場合に、前回デコード成功したレーザ出力値Lpからの減少幅を小さくしてデコード可能なレーザ出力値Lpの最小値を探索することで、レーザ出力値Lp及びコントラスト値Pを幅広く取得できる。
【0039】
同様に、上記調整用情報生成処理では、レーザ出力値Lpが上記所定値に応じて常に同じ増加幅で増加されるように変更設定されることに限らず、取得されるコントラスト値Pに応じてレーザ出力値Lpの増加幅を変化させてもよい。また、デコード失敗した場合に、前回デコード成功したレーザ出力値Lpからの増加幅を小さくしてデコード可能なレーザ出力値Lpの最大値を探索することで、レーザ出力値Lp及びコントラスト値Pを幅広く取得できる。なお、印字パラメータとしてのレーザ出力値Lpは、経時変化等によって減少方向に変化しやすいので、レーザ出力値Lpを変化させる際の上記増加幅を上記減少幅よりも大きくすることで、調整用情報を生成するための検証用ワークの個数を減らすことができるだけでなく、調整用情報を生成するための作業時間も軽減することができる。
【0040】
次に、印字装置10にて順次ワークWに情報コードCを印字する運用中において、上記調整用情報を利用して情報コードCの印字品質を改善するため、制御部11にてなされる印字パラメータ調整処理について、図4に示すフローチャート等を用いて詳細に説明する。
【0041】
印字装置10による情報コードCの印字が開始されることで、制御部11にて印字パラメータ調整処理が開始されると、情報コードCを印字するごとに(図4のS201)、その情報コードCの撮像画像に対するデコード処理が行われる(S203)。そして、そのデコード処理が成功すると(S205でYes)、上記撮像画像からその情報コードCのコントラスト値Pが算出されて指標の値として取得される(S207)。なお、デコード処理が失敗すると(S205でNo)、印字不良を報知するための所定の警告がなされて(S209)、本印字パラメータ調整処理が終了する。
【0042】
上述のように取得されたコントラスト値Pが所定の閾値Pth以上であれば、印字パラメータであるレーザ出力値Lpの調整を要するような所定の悪化状態ではないと判定されて(S211でNo)、レーザ出力値Lpが維持される。なお、上記所定の閾値Pthは、例えば、最も良くなるコントラスト値Pと読めなくなる直前でのコントラスト値Pとの中間値程度に設定することができる。
【0043】
そして、多数のワークWにそれぞれ情報コードCを順次印字していくうちに、経時変化等によって、取得されたコントラスト値Pが上記所定の閾値Pth未満になると、レーザ出力値Lpの調整を要するような所定の悪化状態であると判定される(S211でYes)。このような場合には、取得されたコントラスト値Pと予め記憶部16に記憶されている調整用情報とに基づいて、印字パラメータ値であるレーザ出力値Lpが変更(調整)される(S213)。
【0044】
具体的には、上記所定の閾値Pth未満となるコントラスト値Paが取得されたことで、経時変化等に起因してレーザ出力値Lpがレーザ出力指示値Lpoからずれているとして、そのずれた実際のレーザ出力値Lpaを、図5に示すように、現時点で取得されたコントラスト値Paと上記調整用情報を線形補間した情報とに基づいて推定する。これにより、コントラスト値Pを最適な状態に近づけるために選択すべき印字パラメータの値(以下、レーザ出力選択値Lpbともいう)を、このレーザ出力選択値Lpbとレーザ出力指示値Lpoとの差が当該レーザ出力指示値Lpoと上述のように推定した実際のレーザ出力値Lpaとの差に等しくなるように設定することができる。例えば、レーザ出力指示値Lpo「80」に対して、実際のレーザ出力値Lpaが「70」にずれていると推定される場合には、レーザ出力選択値Lpbとして「90」を設定することができる。特に、上述のように調整用情報を線形補間した情報を利用することで、調整用情報として予め記憶部16に記憶される指標の値及び印字パラメータの値の数が少ない場合でも印字パラメータに関して上述のようにずれた実際の値を推定することができる。
【0045】
なお、上記調整用情報が上に凸となるカーブのように生成される場合には、指標の値を元に実際の印字パラメータの値を求めようとすると、2つの候補値が得られるために実際の印字パラメータの値を推定できない場合がある。このような場合には、実際の印字パラメータの値が指示値よりも下がっていることを前提に選択値を設定し、この設定で印字品質が改善されない場合に、実際の印字パラメータの値が指示値よりも上がっていることを前提に選択値を設定し直すことができる。特に、印字パラメータの値としてレーザ出力値Lpが採用される場合、パルスレーザ光Lのレーザ出力値Lpの変動は気温変化による短期的な上下と、部品の劣化によるレーザ出力値Lpの低下によるものである事を考えると、まず、実際のレーザ出力値Lpaがレーザ出力指示値Lpoよりも下がっていることを前提にレーザ出力選択値Lpbを設定することがよい。
【0046】
また、上記調整用情報が上に凸となるカーブのように生成される場合でも、設備導入時に検証用ワークに対して印字パラメータの指示値(例えば、レーザ出力指示値Lpo)で印字した際に取得される指標の値が上記カーブでの最高値から減少方向にずれている場合には、それ以前の測定データを考慮して、2つの候補値の一方を実際の印字パラメータの値として推定することができる。例えば、コントラスト値Pが所定の閾値Pth未満となった場合に、それ以前の(所定の閾値Pth未満となるまでの)測定結果としてコントラスト値Pが単純に下がっているのであれば、レーザ出力値Lpがレーザ出力指示値Lpoよりも下がっていると推定できる。その一方で、それ以前の測定結果としてコントラスト値Pが一旦上がった後に下がっているのであれば、レーザ出力値Lpがレーザ出力指示値Lpoよりも上がっていると推定できる。
【0047】
また、上記調整用情報が上に凸となるカーブのように生成される場合でも、設備導入時に検証用ワークに対して印字パラメータの指示値(例えば、レーザ出力指示値Lpo)で印字した際に取得される指標の値が上記カーブでの最高値から増加方向にずれている場合でも、それ以前の測定データを考慮して、2つの候補値の一方を実際の印字パラメータの値として推定することができる。例えば、コントラスト値Pが所定の閾値Pth未満となった場合に、それ以前の測定結果としてコントラスト値Pが単純に下がっているのであれば、レーザ出力値Lpがレーザ出力指示値Lpoよりも上がっていると推定できる。その一方で、それ以前の測定結果としてコントラスト値Pが一旦上がった後に下がっているのであれば、レーザ出力値Lpがレーザ出力指示値Lpoよりも下がっていると推定できる。
【0048】
以上説明したように、本実施形態に係る印字装置10では、レーザ照射部13等によりワークWに印字された情報コードCの印字品質に関する指標の値を取得する指標取得処理が行われる。制御部11によって印字パラメータの値を複数段階変化させてレーザ照射部13等により検証用ワークに情報コードCを印字した際に、指標取得処理により取得される指標の値が複数段階の印字パラメータの値にそれぞれ関連付けられるようにして生成された調整用情報が、印字パラメータの値を調整するための情報としてワークWごとに記憶部16に予め記憶されている。そして、運用中に指標取得処理により取得される指標の値が所定の悪化状態になると(S211でYes)、当該指標の値と記憶部16に記憶されている調整用情報とに基づいて、上記所定の悪化状態を改善するように印字パラメータの値が調整される(S213)。
【0049】
これにより、情報コードCをワークWに順次印字している運用中に印字パラメータの値が変化したために情報コードCの印字品質に関する指標の値が最適な状態から上記所定の悪化状態に変わったとしても、その所定の悪化状態が改善されるように印字パラメータの値が調整されるので、運用中であっても情報コードCの印字品質を改善することができる。特に、上記調整用情報は、運用時のワークWと同じ検証用ワークに対して情報コードCを印字する際の複数段階の印字パラメータの値と指標の値とが関連付けられて生成されるため、この調整用情報から指標を基準とする印字パラメータの値の変化傾向を推定することができる。このため、経時変化等に起因して印字パラメータに関する実際の値(実際のレーザ出力値Lpa)が指示値(レーザ出力指示値Lpo)からずれた場合には、そのずれた実際の値を、現時点の指標の値と上記調整用情報とから推定することで、指標の値を最適な状態に近づけるために選択すべき印字パラメータの値となる選択値(レーザ出力選択値Lpb)を、この選択値と上記指示値との差が当該指示値と上述のように推定した実際の値との差に等しくなるように設定することができる。すなわち、印字パラメータの値に関して推定された実際の値から上記選択値を設定できるので、運用中に情報コードCの印字品質を改善する場合でも、試行錯誤することなくより少ない変更回数で選択すべき印字パラメータの値に変更することができる。
【0050】
そして、本実施形態では、指標として、情報コードCのコントラストが採用されているため、情報コードCの印字品質に影響しやすいだけでなく容易に取得可能な値を指標とすることができる。
【0051】
なお、情報コードCの印字品質に関する指標として、情報コードCのコントラストが採用されることに限らず、例えば、情報コードCを構成する各セルの配列方向の長さ(セルの太り細り)が採用されてもよい。各セルの配列方向の長さを上記指標として採用する場合でも、情報コードの印字品質に影響しやすいだけでなく容易に取得可能な値を指標とすることができる。
【0052】
また、本実施形態では、印字パラメータの値として、レーザ照射部13等から照射されるパルスレーザ光Lのレーザ出力値Lpが採用されているため、運用中に指示値から変化する可能性がある値を印字パラメータとして採用することができる。
【0053】
なお、印字パラメータとして、レーザ出力値Lpが採用されることに限らず、例えば、パルスレーザ光Lの発振周波数、パルス幅、パルス間隔、スキャンスピードなどが採用されてもよい。
【0054】
そして、本実施形態では、上記調整用情報は、複数の検証用ワークに情報コードCをそれぞれ印字する際の印字パラメータの値を検証用ワークごとに異なるように複数段階変化させて生成される。これにより、検証用ワークの個数を多くするほど、印字パラメータの値の変化傾向を精度良く推定可能な調整用情報を生成することができる。
【0055】
[第2実施形態]
次に、本第2実施形態に印字装置について、図面を参照して説明する。
本第2実施形態では、1つの検証用ワークに印字される情報コードCを撮像した撮像画像から得られる複数の指標の値に基づいて上記調整用情報が生成される点が、上記第1実施形態と主に異なる。したがって、第1実施形態と実質的に同一の構成部分には、同一符号を付し、その説明を省略する。
【0056】
本実施形態では、上記調整用情報は、1つの検証用ワークに情報コードCが印字される領域を複数の印字変更領域にわけて、情報コードCを印字する際の印字パラメータの値を印字変更領域ごとに異なるように複数段階変化させて生成される。これにより、1つの検証用ワークから複数の指標の値及び印字パラメータの値を取得できるので、調整用情報を生成するために必要な検証用ワークの個数を削減することができる。
【0057】
具体的には、図6(A)から分かるように、検証用ワークでの情報コードCが印字される領域を9つの印字変更領域Da1~Da9にわけ、各印字変更領域Da1~Da9でのレーザ出力値Lpを印字変更領域で異なるように複数段階変化させる。本実施形態では、印字変更領域Da1が2つのFPパターン(位置検出パターン)を含むように設定され、印字変更領域Da2が残りの1つのFPパターンを含むように設定される。また、残りの領域が、同じ専有面積の7つの印字変更領域Da3~Da9として設定される。
【0058】
そして、印字変更領域Da1~Da3では、情報コードCが印字される矩形状のコード領域(各印字変更領域Da1~Da9が含まれるコード領域)を撮像画像から認識しやすくするため、レーザ出力値Lpが上述したレーザ出力指示値Lpoに設定される。このため、印字変更領域Da1~Da3を、レーザ出力値Lpが同じレーザ出力指示値Lpoとなる1つの印字変更領域と考えることもできる。そして、各印字変更領域Da4~Da9では、コード領域の外縁(下縁)の一部を構成する印字変更領域Da3から離れるほど、レーザ出力値Lpが、レーザ出力指示値Lpoからの変化量を大きくする値に設定される。このため、印字変更領域Da9では、他の印字変更領域Da1~Da8に対して、印字される明色系セルと暗色系セルとを区別し難い領域に設定される。
【0059】
ここで、上述のように印字変更領域Da9でのレーザ出力値Lpを、レーザ出力指示値Lpoからの変化量が大きくなる値に設定する理由について、図7を参照して説明する。
仮に、印字変更領域Da9での明色系セル及び暗色系セルを区別して認識できない場合、印字変更領域Da9に記録されるデータが得られなくなる。しかしながら、QRコードの特性上、印字変更領域Da9に記録されるデータは、図7の破線S1にて示すコードワードの一部と破線S2にて示すコードワードの一部との2個所であり、QRコードの誤り訂正機能によって訂正することができる。また、図7での印字変更領域Da9内での下段と左側のセルは一対の形式情報の一部を構成するもので、形式情報の誤り訂正機能によって訂正することができる。そして、図7での印字変更領域Da9の残りの明色系セルの部分は、FPパターンとデータを分割する分離パターンと呼ばれる情報を持たない領域であるため、認識不要な領域である。このような理由により、印字変更領域Da9でのレーザ出力値Lpを、レーザ出力指示値Lpoからの変化量が大きくなる値に設定する。すなわち、訂正容易な領域での印字パラメータの値とそのワークに最適な印字パラメータの値との差を、コード領域の認識に要する印字変更領域での印字パラメータの値と上記最適な印字パラメータの値との差よりも大きくする。
【0060】
これにより、検証用ワークに情報コードCを印字する際の印字パラメータの値を印字変更領域ごとに異なるように複数段階変化させる場合でも、その情報コードCのデコード成功率が高まり、撮像画像から指標の値が取得できないような情報コードCが検証用ワークに印字されることを抑制することができる。
【0061】
このように検証用ワークに印字した情報コードCを撮像した撮像画像において、各印字変更領域Da1~Da9内の明色系セルの輝度値の平均値と暗色系セルの輝度値の平均をそれぞれ求めて、上記式(1)に当てはめてそれぞれコントラスト値Pを算出して取得する。より具体的には、例えば、印字変更領域Da3における明色系セルの輝度値の平均値は、図6(B)の18個の黒丸部分の輝度値の平均値から算出し、暗色系セルの輝度値の平均値は、10個の白丸部分の輝度値の平均値から算出する。この時黒丸白丸は、正方形1セルを代表する輝度値を取得する位置を例示しており、図6(B)のように必ずしも正方形の中心の輝度値である必要はなく、また、正方形1セルを構成する1画素から算出しても良いし、1セル内の複数の画素の輝度値から算出しても良い。印字変更領域Da1,Da2や印字変更領域Da4~Da9も同様に算出して取得する。このようにそれぞれ取得されたコントラスト値Pが、対応するレーザ出力値Lpに関連付けられるようにして、上記調整用情報が生成される。
【0062】
本実施形態では、印字変更領域Da1と印字変更領域Da2と印字変更領域Da3とで同じレーザ出力値Lpが採用されるが、それぞれ個別にコントラスト値Pを算出する。このように個別にコントラスト値Pを算出することで、コード領域全体が均一に撮影できているかを知る手掛かりとなり、導入時に照明が均一に情報コード全体にあたっているのか、一部に影が出来ていないかを判断することができる。
【0063】
上述した構成では、印字変更領域Da9のように明色系セルと暗色系セルとを区別し難い領域が予め分かるため、印字パラメータの値を印字変更領域で異なるように複数段階変化させる際にその影響を受けやすいコードワードとブロックを情報コードCごとに把握することができる。このため、その区別し難い領域に合わせて情報コードCの誤り訂正レベルを設定することで、情報コードCのデコード成功率を高めることができる。
【0064】
例えば、Version4のQRコードの場合、誤り訂正レベルHでは、図8(A)に示すように、誤り訂正用のコードワードが4つのブロックBa1~Ba4のいずれかに所属するが、印字変更領域Da9での明暗区別ができなくなると、この影響を受けるコードワードが2つのブロックBa3,Ba4に集中する。誤り訂正はブロック単位で行うため、1ブロック当たりの訂正可能数を超えてしまい、デコードが失敗してしまう。
【0065】
これに対して、誤り訂正レベルQにすると、図8(B)に示すように、誤り訂正用のコードワードが2つのブロックBb1,Bb2のどちらかに所属し、印字変更領域Da9での明暗区別ができなくなっても、この影響を受けるコードワードが2つのブロックBb1,Bb2に対してほぼ均等に分散する。このため、1ブロック当たりの訂正可能数を超えることなくデコードすることが可能となる。
【0066】
なお、本実施形態の変形例として、印字パラメータの値を複数段階変化させる各印字変更領域は、上述のような9つの印字変更領域Da1~Da9に設定されることに限らず、取得すべき指標の値の個数に応じて他の方式にてわけるように設定されてもよい。
【0067】
例えば、印字パラメータの値を複数段階変化させる各印字変更領域は、コードワード単位で設定されてもよい。具体的には、図9に示すように、Version1のQRコードを、指標が最も良くなる印字パラメータの値で印字されるFPパターンなどの特定パターンや形式情報等を除き、コードワード単位で7つの印字変更領域Db1~Db7にわけて、各印字変更領域Db1~Db7での印字パラメータの値を印字変更領域ごとに異なるように複数段階変化させることができる。
【0068】
なお、Versionの小さなQRコードでは変化させられる部分がVersionの大きなQRコード等と比べ少ないことから、印字変更領域ごとでのセル数の差が大きくなりやすいため、形式情報等の少なくとも一部を、印字変更領域として利用しても良い。例えば、上述した印字変更領域Db1を構成するセル数(コードワードの個数)や印字変更領域Db2を構成するセル数が他と比べて少なくなる場合には、例えば、形式情報等の少なくとも一部での印字パラメータの値を、印字変更領域Db1での印字パラメータの値や印字変更領域Db2での印字パラメータの値に一致させることで、印字変更領域ごとでのセル数の差を小さくすることができる。
【0069】
また、印字パラメータの値を変化させる段階数は、誤り訂正の特徴を考慮すると奇数である方が望ましい。Version3以上のQRコードでは、誤り訂正を複数のブロックごとに行っている関係で、特定のブロックに誤りが集中すると、コード全体で訂正できるコードワード数よりも少ない誤りであるにもかかわらず、デコード不可となるという問題がある。
【0070】
この問題を解決するためは、デコードできない可能性のある印字パラメータの値で印字する印字変更領域を、複数のブロックに均等に分散させる必要がある。ダイレクトパーツマーキング(DPM)で採用されるQRコードは比較的小さいサイズのものが多く、Version6以下のQRコードであれば、ブロック数が1になる場合を除いて、ブロック数は全て偶数になる。
【0071】
このため、Version6以下のQRコードを印字する際には、印字パラメータの値を変化させる段階数を奇数にして、コードワードの並びの順番で印字パラメータの値を変化させることで、自動的に1つの印字パラメータの値が複数のブロックに振り分けられることになる。これにより、1つの印字変更領域で明暗区別ができなくなっても、その印字変更領域が複数のブロックに均等に分散されやすくなるので、デコードの成功率を高めることができる。
【0072】
例えば、Version4でブロック数が2個(ブロックBc1,Bc2)のQRコードを検証用ワークに印字する際に、印字パラメータの値となるレーザ出力値LpをLp1~Lp7の7段階で変化させて各印字変更領域を印字する場合には、図10(A)(B)に示すように、各印字変更領域を複数のブロックに分散させることができる。なお、図10(A)では、便宜上、ブロックBc1に所属する一部のコードワード部分に対してハッチングを付してそのレーザ出力値Lpを記載し、ブロックBc2に所属する一部のコードワード部分に対して別のハッチングを付してそのレーザ出力値Lpを記載している。
【0073】
なお、印字パラメータの値を大きく変化させたためにその印字変更領域での明暗区別ができなくなった場合でも、その情報コードのデコードを成功させるため、コード全体のコードワードを印字変更領域として使用するのではなく、ブロックごとの訂正可能数を考慮して印字変更領域を設定することが望ましい。その際、変化させるコードワードがコード領域内の1か所に固まると、ワーク自身の影や照明の強さの影響を受けやすくなるため、変化させるコードワード(印字変更領域)がコード全体に分散するようにすることが望ましい。
【0074】
なお、本発明は上記各実施形態等に限定されるものではなく、例えば、以下のように具体化してもよい。
(1)ワークWに情報コードCを印字する印字加工には、パルスレーザ光Lを走査させて印字する方法が採用されることに限らず、印刷加工等、他の加工方法が採用されてもよい。この場合、その加工方法にて経時変化等のために変化しやすい印字パラメータを利用して上記調整用情報を生成することができる。
【0075】
(2)ワークWに印字される情報コードCとして、QRコードが採用されることに限らず、例えば、バーコード等の一次元コードやデータマトリックスコード、マキシコード等の二次元コードなどの他の種別の情報コードが採用されてもよい。
【0076】
(3)運用中に印字パラメータ値(レーザ出力値Lp)を調整する処理(S213)では、選択すべき印字パラメータの値(選択値)を、この選択値と指示値との差が当該指示値と推定した実際の値との差に等しくなるように算出して設定することに限らず、例えば、指示値を基準として推定した実際の値の変化率と選択値を基準とした指示値の変化率とが等しくなるように算出して設定してもよい。ここで、変化率=(任意の値‐基準の値)/基準の値であるとして、例えば、指示値が「80」の時に推定した実際の値が「70」であれば、上記変化率は、(70-80)/80=-0.125となる。この値を設定した値と実際に出力される値の関係を表す係数とみなして、実際に出力される値が「80」となるような設定値Xを求めると、-0.125=(80-X)/Xから約91.4を選択値とすることができる。
【符号の説明】
【0077】
10…印字装置
11…制御部(指標取得部)
12…レーザ発振器(印字部)
13…レーザ照射部(印字部)
14…撮像部(指標取得部)
16…記憶部
C…情報コード
Lp…レーザ出力値(印字パラメータの値)
Lpo…レーザ出力指示値
P…コントラスト値(指標の値)
W…ワーク
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10