(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022113994
(43)【公開日】2022-08-05
(54)【発明の名称】ペット用飲料フィルタ及びペット用飲料供給装置
(51)【国際特許分類】
A01K 39/024 20060101AFI20220729BHJP
【FI】
A01K39/024
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021010069
(22)【出願日】2021-01-26
(71)【出願人】
【識別番号】594033846
【氏名又は名称】株式会社マルカン
(74)【代理人】
【識別番号】100115381
【弁理士】
【氏名又は名称】小谷 昌崇
(74)【代理人】
【識別番号】100067828
【弁理士】
【氏名又は名称】小谷 悦司
(72)【発明者】
【氏名】松本 幸彦
【テーマコード(参考)】
2B102
【Fターム(参考)】
2B102AA04
2B102AB02
2B102AB32
2B102AB42
2B102AD05
2B102AD13
2B102AD22
2B102AD32
2B102AE10
2B102CA13
2B102CA23
2B102CA41
(57)【要約】
【課題】ペットが水を摂取しても、水質改善効果を長い間維持することができるペット用飲料フィルタ及びペット用飲料供給装置を提供することを目的としている。
【解決手段】貯水タンク2と貯水タンク2の上方に設けられ循環ポンプ3により貯水タンク2内の水が供給される摂水部4との間に配置され、摂水部4から排出された水の異物を除去するペット用飲料フィルタであって、水の異物を除去する異物除去層6a及びその下方の水の特性を改善する水質改善層6bを含むフィルタカートリッジ6と、フィルタカートリッジ6を貯水タンク2内の水の液位に応じて上下方向に浮動させるフロートトレイ7とを備え、フロートトレイ7は、フィルタカートリッジ6が取り付けられた状態で水に浮かべた場合に、水の液面に対して、異物除去層6aの上面が上側に配置され、水質改善層6bの下面が下側に配置されるように構成されている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ペット用飲料を貯留する貯留タンクと前記貯留タンクの上方に設けられ循環ポンプにより前記貯留タンク内の前記ペット用飲料が供給される飲料摂取部との間に配置され、前記飲料摂取部から排出された前記ペット用飲料に含まれる異物を除去するペット用飲料フィルタであって、
前記ペット用飲料に含まれる異物を除去する異物除去層及びこの異物除去層の下方に前記ペット用飲料の特性を改善する特性改善層を含むフィルタ本体と、
前記フィルタ本体に取り付けられるとともに前記フィルタ本体を前記貯留タンク内の前記ペット用飲料の液位に応じて上下方向に浮動させるフロートトレイとを備え、
前記フロートトレイは、前記フィルタ本体が取り付けられた状態で前記ペット用飲料に浮かべた場合に、前記ペット用飲料の液面に対して、前記異物除去層の上面が上側に配置され、前記特性改善層の下面が下側に配置されるように構成されているペット用飲料フィルタ。
【請求項2】
前記フロートトレイは、上方に開口して前記フィルタ本体が収容されるとともに底部に貫通孔を有するトレイ本体と、前記トレイ本体の外周縁に沿って連続して配置されたフロート部とを備える請求項1に記載のペット用飲料フィルタ。
【請求項3】
前記フィルタ本体は前記フロートトレイに対して着脱可能に取り付けられている請求項1又は2に記載のペット用飲料フィルタ。
【請求項4】
請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載のペット用飲料フィルタと、前記ペット用飲料フィルタの少なくとも一部が内部に配置される前記貯留タンクと、前記飲料摂取部と、前記貯留タンクに貯留される前記ペット用飲料を前記飲料摂取部に供給する循環ポンプとを備えるペット用飲料供給装置。
【請求項5】
前記貯留タンクの底面に対して垂直方向に延びるとともに前記フロートトレイの上下方向の浮動を案内するガイドポールを更に備え、
前記フロートトレイは、前記ガイドポールが遊嵌されるガイド孔を有する請求項4に記載のペット用飲料供給装置。
【請求項6】
前記ガイド孔の外形は、前記ガイドポールの軸方向に直交する軸直交断面のポール外形に対して相似するように構成され、対応する寸法が前記ポール外径の寸法に対して1.05~2.00の比率に設定されている請求項5に記載のペット用飲料供給装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、犬、猫、ウサギ、フェレットなどのペットに対し、水やミルク等の飲料を供給するペット用飲料供給装置及びそれに用いるペット用飲料フィルタに関し、特にペット用飲料を循環させる循環式ペット用飲料供給装置及びそれに用いるペット用飲料フィルタに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の循環式ペット用飲料供給装置について、水分をペットに供給するため、循環式給水器が一般的に知られている。
【0003】
具体的には、循環式給水器は、特許文献1に示すように、水を貯留する貯水タンクと、この貯水タンクの上方に設けられた水飲み部と、前記貯水タンクの水を水飲み部に供給する循環ポンプと、前記貯水タンクと水飲み部との間に設けられ前記水飲み部から前記貯水タンクに戻る流水を濾過する濾過材を含む不織布フィルタとを備え、ペット用飲料水を衛生的に保つようになされたものが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、前記従来の循環式給水器においては、フィルタを通過する流水は循環ポンプによって吸い上げられた水量に限定され、水質改善などの水の特性を改善する機能が濾過材に付加されていたとしても、十分な改善効果を得ることが難しかった。特に、この循環式給水器では、ペットが水を飲めばその分、貯水タンクに貯留される水が減って水位が下がるので、仮に当初、水位が濾過材に達していたとしても、ペットが水を飲むことによって濾過材が水から露出してこの水質改善効果が急激に低下するという問題がある。
【0006】
また、フィルタにおいては、不織布フィルタの内部に別途濾過材が配置されているものの、この濾過材が全面に配置されずに周縁部にまで行き届いていないものが多い。このようなフィルタにおいては、循環水がこの周縁部を通過することによって濾過材に触れることなく、貯水タンクに戻ってしまうといったバイパス問題も懸念され、内部の濾過材の機能、例えば細菌の繁殖抑制や循環水の軟水化などの機能を十分に発揮できないといった問題が生じる虞もある。
【0007】
本発明は、前記従来の問題点に鑑みてなされたものであり、ペットが水を摂取しても、水質改善効果を長い間維持することができるペット用飲料フィルタ及びペット用飲料供給装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、この発明に係るペット用飲料フィルタは、ペット用飲料を貯留する貯留タンクと前記貯留タンクの上方に設けられ循環ポンプにより前記貯留タンク内の前記ペット用飲料が供給される飲料摂取部との間に配置され、前記飲料摂取部から排出された前記ペット用飲料に含まれる異物を除去するペット用飲料フィルタであって、前記ペット用飲料に含まれる異物を除去する異物除去層及びこの異物除去層の下方に前記ペット用飲料の特性を改善する特性改善層を含むフィルタ本体と、前記フィルタ本体に取り付けられるとともに前記フィルタ本体を前記貯留タンク内の前記ペット用飲料の液位に応じて上下方向に浮動させるフロートトレイとを備え、前記フロートトレイは、前記フィルタ本体が取り付けられた状態で前記ペット用飲料に浮かべた場合に、前記ペット用飲料の液面に対して、前記異物除去層の上面が上側に配置され、前記特性改善層の下面が下側に配置されるように構成されている。
【0009】
この発明によれば、ペット用飲料フィルタは、貯留タンクと飲料摂取部との間に配置され、飲料摂取部から排出されたペット用飲料に含まれる異物を除去するので、ペット用飲料に経時的に含まれる異物を効果的に除去することができ、当該ペット用飲料を清潔に保つことができる。
【0010】
また、異物除去層及び特性改善層を含むフィルタ本体とフロートトレイとを備え、フロートトレイは、フィルタ本体が取り付けられた状態でペット用飲料に浮かべた場合に、ペット用飲料の液面に対して、異物除去層の上面が上側に配置され、特性改善層の下面が下側に配置されるように構成されているので、フィルタ本体の異物除去層の少なくとも上面をペット用飲料の液面から露出させつつ、フィルタ本体の特性改善層をペット用飲料に浸漬させた状態で、貯留タンク内のペット用飲料の液位に応じてフィルタ本体を昇降させることができる。このため、貯留タンク内のペット用飲料の液位にかかわらず、ペット用飲料に含まれる異物を効果的に除去しつつ、ペット用飲料の特性をも効果的に改善することができる。
【0011】
具体的に、フィルタ本体の異物除去層の少なくとも上面をペット用飲料の液面から露出させた状態を維持できるため、異物除去層により除去された異物そのものやその異物に付着した成分等を異物除去層の上面に位置させることにより、これらの異物等がペット用飲料に溶け込むことを可及的に抑制することができ、ペット用飲料の汚染を抑制することができる。さらに、フィルタ本体の特性改善層をペット用飲料に浸漬させた状態を維持できるため、フィルタ本体に供給された循環水が特性改善層に触れることなく貯留タンクに戻るバイパス問題も解消されることから、ペット用飲料の衛生環境を向上することができる。
【0012】
また、ペット用飲料の液位の変動にフィルタ本体を追随させるために浮力を用いているため、簡素な構成でフィルタ本体を上下に移動させることができる。例えば、フィルタ本体を移動させるための動力機構やペット用飲料の液面を測定する測定機構を省略可能であるため、ペット用飲料フィルタの構成を簡素化することができる。
【0013】
この発明において、前記フロートトレイは、上方に開口して前記フィルタ本体が収容されるとともに底部に貫通孔を有するトレイ本体と、前記トレイ本体の外周縁に沿って連続して配置されたフロート部とを備えるのが好ましい。
【0014】
上記において、トレイ本体は、上方に開口してフィルタ本体が収容されるとともに底部に貫通孔を有するので、簡単な構成で、収容されるフィルタ本体の機能を十分に発揮させることができる。すなわち、トレイ本体は上方に開口してフィルタ本体が収容されるので、飲料摂取部から排出されたペット用飲料がトレイ本体の開口を通じてフィルタ本体の異物除去層に導かれ、この異物除去層でペット用飲料に含まれる異物を効果的に除去することができる。しかも、トレイ本体は底部に貫通孔を有するので、異物が除去されたペット用飲料の排出を可能とするとともに、この貫通孔を通じて貯留タンク内のペット用飲料の特性もトレイ本体内の特性改善層により効果的に改善することができる。
【0015】
また、フロート部はトレイ本体の外周縁に沿って連続して配置されているので、ペット用飲料がフィルタ本体に導入されてもトレイ本体の姿勢を比較的安定させることができ、フィルタ本体の機能を適正に発揮させることができる。しかも、フロート部をトレイ本体に取り付けるにあたってトレイ本体の周方向における位置調整が不要であるから、フロート部のトレイ本体に対する組付けも容易となる。
【0016】
この発明において、前記フィルタ本体は前記フロートトレイに対して着脱可能に取り付けられているのが好ましい。
【0017】
このように構成すれば、経時的劣化等に伴うフィルタ本体の交換が容易である。
【0018】
上記課題を解決するために、この発明に係るペット用飲料供給装置は、上記のペット用飲料フィルタと、前記ペット用飲料フィルタの少なくとも一部が内部に配置される前記貯留タンクと、前記飲料摂取部と、前記貯留タンクに貯留される前記ペット用飲料を前記飲料摂取部に供給する循環ポンプとを備える。
【0019】
この発明によれば、上記ペット用飲料フィルタと同様の作用効果を得ることができるペット用飲料供給装置を提供することができる。
【0020】
この発明において、前記貯留タンクの底面に対して垂直方向に延びるとともに前記フロートトレイの上下方向の浮動を案内するガイドポールを更に備え、前記フロートトレイは、前記ガイドポールが遊嵌されるガイド孔を有するのが好ましい。
【0021】
上記において、フロートトレイはガイドポールが遊嵌されるガイド孔を有するため、フロートトレイがガイドポールに沿って上下方向にスムーズに案内される。これにより当該フロートトレイに収容されているフィルタ本体は、水平方向に安定した姿勢で上下方向に案内される。
【0022】
この発明において、前記ガイド孔の外形は、前記ガイドポールの軸方向に直交する軸直交断面のポール外形に対して相似するように構成され、対応する寸法が前記ポール外径の寸法に対して1.05~2.00の比率に設定されているのが好ましい。
【0023】
上記において、当該比率に設定することにより、フロートトレイはガイドポールにより水平方向に安定した姿勢で上下方向にスムーズに案内される。
【発明の効果】
【0024】
本発明に係るペット用飲料フィルタ及びペット用飲料供給装置によれば、ペットが水を摂取しても、水質改善効果を長い間維持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】本発明の一実施形態に係るペット用飲料供給装置を示す斜視図である。
【
図2】同ペット用飲料供給装置を分解した状態で示す斜視図である。
【
図4】一つのフィルタカートリッジの収容トレイを示す斜視図である。
【
図5】一対のフィルタカートリッジを分解した状態で示す縦断面図である。
【
図7】
図6のVII-VII切断線における断面図である。
【
図8】液位の降下に応じてフロートトレイが降下した場合の同ペット用飲料供給装置の縦断面図である。
【
図9】前記実施形態とは別の形態のフロートトレイの断面図である。
【
図10】前記実施形態とは別の形態のフィルタカートリッジを分解した状態で示す縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下添付図面を参照しながら、本発明の実施の形態について説明する。なお、以下の実施の形態は、本発明を具体化した例であって、本発明の技術的範囲を限定する性格のものではない。
【0027】
本実施形態のペット用飲料供給装置は、ペット用飲料のうち水(飲料水)を犬に供給する犬用給水器として構成されているが、本発明の飲料供給装置は、水に限らず、水に栄養、味、香り等を添加したペット用清涼飲料水やミルクなど、ペットが摂取することができる液体であれば幅広く適用可能である。また、対象となるペットは、犬に限定されるものではなく、猫、ウサギ、ハムスター、フェレット等、ペット用飲料を摂取する動物が広く含まれる。
【0028】
図1は本実施形態のペット用飲料供給装置を示す斜視図であり、
図2はこの供給装置を分解して示す斜視図である。
図3は、
図1の縦断面図である。なお、以下、説明の便宜上、各図における+X方向を右方向、+Y方向を前方向、+Z方向を上方向として説明するが、これらの方向の表現については特に限定されるものではなく、単に本実施形態における相対的な位置関係を表したものである。
【0029】
本実施形態の犬用給水器1は、上方に開口する容器状に構成され内部に水を貯留する貯水タンク2(貯留タンクに対応)と、貯水タンク2内の底部に配置され貯水タンク2に貯留された水を汲み上げる循環ポンプ3と、貯水タンク2の上方に配置され循環ポンプ3により汲み上げられた水が供給される摂水部4(飲料摂取部に対応)と、摂水部4の下方に配置され摂水部4から排出された水を受ける水受け部5と、水受け部5から排出された水が貯水タンク2に戻る際に通過するフィルタ8(ペット用飲料フィルタに対応)と、を備え、貯水タンク2の水を摂水部4に循環供給することにより主に摂水部4及び水受け部5で犬が水を摂取できるようになされている。
【0030】
図1~
図3に示すように、貯水タンク2は、上方に開口する容器であり、内部に水を貯留できる貯水空間Sが形成されている。本実施形態では、貯水タンク2は、有底円筒状に形成されている。具体的には、貯水タンク2は、円板状の底壁部20aと、底壁部20aの外周縁から上方に立ち上がる周壁部20bと、を備える。底壁部20aは、板状に形成され、貯水タンク2が水平面に載置された状態で、下面(底面)が水平面に対して平行(略平行を含む)に配置される。この底壁部20aにおける上面の中央部に循環ポンプ3が配置される。周壁部20bは周方向において同一高さ寸法に設定されるとともに上端面が略面一に形成され、水受け部5が載置される。周壁部20bは、周方向の一部において、上端部が径方向外側に膨出することにより、水受け部5との間に循環ポンプ3の後述する電源コード34を引き出すためのコード引出空間2aが形成されている。
【0031】
循環ポンプ3は、貯水タンク2内の水を取り込んで、摂水部4に水を供給する。循環ポンプ3は、ポンプ本体31と、吐水パイプ33と、を備える。
【0032】
ポンプ本体31は、貯水タンク2内の水を取り込み、摂水部4への水の供給を行う。ポンプ本体31は、上面から上方に突出する吐水ボス部31aが設けられた略直方体形状を呈し、下部に貯水空間Sの水を吸い込む吸水口(不図示)が設けられている。この吐水ボス部31aは、本実施形態では円筒状を呈する。ポンプ本体31は、電源コード34から供給される電力により駆動され、前記吸水口から吸い込んだ水を吐水ボス部31aから所定量吐出する。ポンプ本体31は、平面視において吐水ボス部31aが貯水タンク2の底壁部20aの中心部に配置されるように底壁部20aに吸盤32などを介して着脱自在に取り付けられる。このポンプ本体31は、専ら貯水タンク2内の水に水没された状態で使用され、例えば公知の電動式水中ポンプを用いることができる。
【0033】
吐水パイプ33は、ポンプ本体31が取り込んだ貯水タンク2内の水を上方に向けて通流させ、摂水部4に水を吐出するとともに、本実施形態では後述するフィルタ8の上下浮動をガイドするガイドポールとしての役割を果たす。吐水パイプ33は、パイプ本体33aと、管継手33bと、を備える。管継手33bは、上下方向に延びる円筒スリーブであり、下端部に吐水ボス部31aの先端部が内嵌され、上端部にパイプ本体33aの下端部が内嵌され、これによりポンプ本体31の吐水ボス部31aとパイプ本体33aとを水密に連結する。パイプ本体33aは、本実施形態では軸方向に沿って外径が同寸の円筒状部材が用いられ、外周面が平滑に構成されることによりフィルタ8の上下動を円滑にガイドする。なお、本実施形態では、吐水ボス部31aに対して吐水パイプ33を別部材として設けているが、これらを一体に設けるものであっても良い。また、パイプ本体33aに適宜、吐水量調整孔を設けてポンプ本体31から吐出された水を前記吐水量調整孔から貯水タンク2に逃がすように構成してもよい。
【0034】
図2及び
図3に示すように、摂水部4は、循環ポンプ3によって貯水タンク2から供給された水を犬(ペット)が摂取する部分である。摂水部4は、水受け部5によって下方から支持されている。この摂水部4は、摂水本体41と、給水スリーブ42と、を備える。
【0035】
摂水本体41は、中心部に吐水孔41aが設けられた異形傘状を呈する。具体的には、摂水本体41は、球面(詳しくは長球の球面)の一部が平面により切り取られた球冠状に形成され、平面視略円形状を呈している。本実施形態では、摂水本体41は、吐水孔41aを含む中央部が下方に凹むことにより貯水凹部41bが形成されている。この貯水凹部41bは、吐水孔41aから供給された水を一時貯留してここからの水の摂取も可能とする。一方、摂水本体41の外周縁部には、周方向に沿って複数の外面凹部41cが設けられている。すなわち、外面凹部41cは、摂水本体41の外周縁部が径方向内側に凹むことにより形成されている。この外面凹部41cは、摂水本体41と水受け部5との間に隙間を設けて摂水本体41から排出された水の通水性を向上させるとともに、水受け部5に溜まった水の摂取を容易にする。
【0036】
給水スリーブ42は、貯水凹部41bの下面中央部から下方に延びる筒状部分であり、中空空間が吐水孔41aに連通している。給水スリーブ42の下端部に、吐水パイプ33の上端部が挿入されている。給水スリーブ42と吐水パイプ33とを水密に連結するために両者を外側から緊密状態に嵌合するシールジョイント43が設けられている。なお、給水スリーブ42と吐水パイプ33とを水密状態に接続できる場合には、このシールジョイント43は適宜省略することができる。
【0037】
図2及び
図3に示すように、水受け部5は、水受け皿51と、円錐台ボス部52と、位置決め高台53と、を備え、全体視において環状容器として形成されている。これにより、水受け部5は、摂水部4の外周縁から流下する水を水受け皿51によって受けて一時的に貯留することができるとともに、円錐台ボス部52から溢れた水をフィルタカートリッジ6に流下させる。
【0038】
具体的には、水受け皿51は、平面視において略円形の深皿状部材であり、底壁から外周壁にかけてなだらかに湾曲した碗状に構成されている。この水受け皿51の中心部に、平面視円形の開口が形成されている。この開口の縁部に沿って円錐台ボス部52が立設されている。また、水受け皿51の外径は貯水タンク2の外径、及び摂水部4の外径よりも大きく設定されている。一方、水受け皿51の開口は、摂水部4の外径よりも小径に形成されている。これにより、水受け皿51は、貯水タンク2に載置することができるとともに、摂水部4を支持してこの摂水部4から排出された水を受け止めることができる。なお、水受け皿51は、
図1に示すように、外周縁の一部が直線状に切り欠かれたような切欠き状部51aを備える。
【0039】
円錐台ボス部52は、摂水部4から水受け皿51に流下した水を水受け皿51に一時的に留める堰であり、水受け部5の内周壁を構成するものである。円錐台ボス部52は、上記したように水受け皿51の前記開口の周縁部から上方に立設されている。円錐台ボス部52は、上側ほど径方向内側に傾斜した中空円錐台状に形成されている。円錐台ボス部52の上端の高さ位置は水受け皿51の外周縁の高さ位置よりも低い。これにより、水受け部5に仮貯留された水は円錐台ボス部52の高さに達すると円錐台ボス部52を超えて円錐台ボス部52の中空空間である戻し孔52aを通じて流下する。この円錐台ボス部52の上端開口部及び下端開口部の直径は、この流下する水が確実にフィルタ8に導かれるように、フィルタ8との位置関係で寸法設定される。また、本実施形態では、摂水部4が水受け部5に載置された状態で、摂水部4の給水スリーブ42の下端部が円錐台ボス部52の戻し孔52a内に配置されるので、給水スリーブ42の下端部と干渉しないように、上端開口部の直径の寸法設定がなされている。
【0040】
位置決め高台53は、水受け皿51の下面から下方に延びる円筒状に構成されている。この位置決め高台53は、水受け部5が貯水タンク2に載置された状態で貯水タンク2内に配置され、水受け部5に不測に水平方向の外力が作用した場合に、貯水タンク2の内周面と干渉して貯水タンク2に対する水受け部5の水平方向の相対的移動を規制する。本実施形態では、水受け部5を貯水タンク2から分離して床面などに載置する場合に、いわゆる高台として作用し、水受け皿51を水平に支持するものとなされている。なお、位置決め高台53は、図示していないものの、貯水タンク2のコード引出空間2aに対応して切り欠かれ、電源コード34との干渉を抑制するものとなされている。
【0041】
フィルタ8は、水受け部5から流下した水内の異物を除去するとともに、貯水タンク2内の水の特性を改善するものである。このフィルタ8は、貯水タンク2内の水に浮かべられ、貯水タンク2内の水位に応じて上下浮動するように構成されている。また、フィルタ8は、全体視において、略偏平円環状に構成され、中心孔に吐水パイプ33が遊嵌されることにより水平方向の移動が規制された状態で水位に応じて上下動するように構成されている。具体的には、
図2及び
図3に示すように、フィルタ8は、フィルタカートリッジ6と、フロートトレイ7と、を備える。
【0042】
フィルタカートリッジ6は、水受け部5から流下する水に含まれる毛や埃などの異物を捕捉するとともに、貯水タンク2内の水質を改善するものであり、フロートトレイ7に収容されている。これにより、フィルタカートリッジ6は、専らその上部が貯水タンク2内に貯留されている水の液面から露出し、かつ下部が液面より下に位置するように、貯水タンク2内の水面に浮かべられている。
図2及び
図5に示すように、このフィルタカートリッジ6は、円環状の板状体として構成され、本実施形態では直径に沿って2分割されることによって半円環状の一対のカートリッジ部60により構成されている。
【0043】
各カートリッジ部60は、収容トレイ61と、捕捉シート62とを備える。捕捉シート62に対応する部分が水に含まれる異物を除去する異物除去層6aとして機能するとともに、水質改善処理材が収容されている収容トレイ61に対応する部分(具体的にはこの収容トレイ61の内部に収容された濾過材の層)が貯水タンク2内の水質を改善する水質改善層6b(特性改善層に対応)として機能する。
【0044】
半円環状の各収容トレイ61が対称に組み合わされることにより、一対の収容トレイ61は中心部にトレイ中心孔61aを有するように構成される。トレイ中心孔61aにはフロートトレイ7の後述の円筒状ボス部71aが挿通される。また、半円環状の各捕捉シート62が対称に組み合わされることにより、一対の捕捉シート62は中心部にシート中心孔62aを有するように構成される。これらトレイ中心孔61a及びシート中心孔62aには吐水パイプ33が挿通さる。これにより、一対のカートリッジ部60からなるフィルタカートリッジ6が水位に応じて吐水パイプ33にガイドされながら上下動する。
【0045】
図4に示すように、収容トレイ61は上記のように内部に濾過材(水質改善処理材)を収容するものであり、ABS樹脂、ポリプロピレン、ポリエチレンなどの硬質合成樹脂から一体成形された平皿容器状を呈する。具体的には、この収容トレイ61は、トレイ底板611と、トレイ周壁612と、外周フランジ部613と、を備える。トレイ底板611及びトレイ周壁612に囲まれた収容室61bに所定の濾過材が収容されている。この濾過材としては、専ら化学濾過又は生物濾過を行うものが利用され、例えば活性炭(銀イオンなどの付着させたものを含む)、イオン交換樹脂、マグネシウムなど水に投入することにより水素を発生させる水素発生剤、セラミックス、ゼオライト、アンスラサイトなどが用いられている。但し、この濾過材として、物理的濾過を排除するものではなく、不織布やポリウレタン発泡体なども含まれる。改善すべき特性等を考慮して適宜濾過材を決定することができる。一対のカートリッジ部60の各収容室61bにおいて、前記濾過材を任意の組み合わせで配置することができる。例えば、一方の収容室61bに活性炭を配置し、他方の収容室61bにイオン交換樹脂を配置してもよい。また両方の収容室61bに活性炭を配置してもよいし、両方の収容室61bにイオン交換樹脂を配置してもよい。改善すべき特性等を考慮して適宜濾過材、その配置態様を決定することができる。
【0046】
トレイ底板611は、トレイ底板611を上下方向に貫通する複数の流下貫通孔611aを有する。この流下貫通孔611aを通じて収容室61bと貯水タンク2との間を水が通流する。トレイ周壁612はトレイ底板611の周縁から上方に延びる。外周フランジ部613は、トレイ周壁612の上端部から径方向外側に延びる。この外周フランジ部613の上面には捕捉シート62が溶着される。
【0047】
捕捉シート62はシート状に構成されている。この捕捉シート62は、シート中心孔62aがトレイ中心孔61aに一致された状態で、収容室61bを覆うように収容トレイ61の外周フランジ部613の上面に溶着される。これにより、収容トレイ61と捕捉シート62とを一体としてフィルタカートリッジ6を構成することができる。
【0048】
捕捉シート62の厚みは、収容トレイ61の厚みに対して薄く形成されている。なお、捕捉シート62の材質として、本実施形態では不織布を用いている。ただし、水に含まれる獣毛、食べ滓、埃等の異物を物理的に捕捉して除去できるものであれば捕捉シート62の材質は特に限定されるものではなく、種々の繊維の織布、ろ紙、網部材、焼結金属多孔板、連続気泡の発泡体など、透水可能な濾過材を好適に用いることができる。
【0049】
このようなフィルタカートリッジ6は、水受け部5の円錐台ボス部52から溢れた水を確実に受けることができるように、円錐台ボス部52の上端開口部の直径との関係で寸法設定されている。具体的に、
図3に示すように、フィルタカートリッジ6の中心と円錐台ボス部52の中心とを一致させた状態において、トレイ中心孔61a及びシート中心孔62aの孔径φBは、円錐台ボス部52の上端開口部における直径φAよりも小さい。かつ、フィルタカートリッジ6の外径φCは直径φAよりも大きい。これにより、平面視においてフィルタカートリッジ6の範囲内に円錐台ボス部52の上端開口部が位置するため、円錐台ボス部52の上端開口部からフィルタカートリッジ6に確実に水を流下させることができる。
【0050】
さらに、フィルタカートリッジ6に水が流下された場合にその傾きを抑制するように、フィルタカートリッジ6の位置が円錐台ボス部52の上端開口部の位置との関係で設定されている。平面視においてフィルタカートリッジ6の中心と円錐台ボス部52の中心とを一致させた状態において、円錐台ボス部52の上端開口部がフィルタカートリッジ6の内周部側に位置し、具体的には、フィルタカートリッジ6のトレイ中心孔61a及びシート中心孔62aの中心から、フィルタカートリッジ6の半径の半分までの間に、円錐台ボス部52の上端開口部が位置している。これにより、円錐台ボス部52の上端開口部から溢れた水は、フィルタカートリッジ6の内周部側に近い位置に排出される。この場合には、水が当該内周部側に近い位置よりも外側においてフィルタカートリッジ6に排出される場合に比べて、水の液面に対するフィルタカートリッジ6の傾きを抑制することができる。なお、前記内周部側に近い位置よりも外側の周方向の各位置において異なる量の水がフィルタカートリッジ6に排出される場合、フィルタカートリッジ6が傾き易い。
【0051】
フロートトレイ7は、
図2、
図3、
図6、
図7に示すように、フィルタカートリッジ6が取り付けられるものであり、平面視ドーナツ型の平皿状を呈する。このフロートトレイ7は、その外周縁が貯水タンク2の内に収容されるように構成されるとともに、吐水パイプ33の上下方向に沿って貯水タンク2内の水の水位に応じて上下浮動する。
【0052】
フロートトレイ7は、フィルタカートリッジ6を収容するフロートトレイ本体71(トレイ本体に対応)と、フロートトレイ本体71の外周縁に沿って連続的に設けられフロートトレイ本体71を貯水タンク2内の水に浮かせるフロート部72と、を備える。
【0053】
具体的に、フロートトレイ本体71は、平面視ドーナツ型の平皿状であり、上方に開口してフィルタカートリッジ6を着脱可能に収容するとともに底部に通流孔712(貫通孔に対応)を有する。具体的に、フロートトレイ本体71は、中心部に配置された円筒状ボス部71aと、円筒状ボス部71aから放射状に延びるカートリッジ支持部71bと、フィルタカートリッジ6の収容空間を仕切るトレイ仕切壁71cと、フィルタカートリッジ6の移動を規制するカートリッジ規制部71dと、を備える。
【0054】
円筒状ボス部71aは、その内周面により上下方向に延びるガイド孔711aを形成する。ガイド孔711aに吐水パイプ33が遊嵌されることにより、フロートトレイ本体71が吐水パイプ33により上下方向に案内される。具体的に、
図2、
図3、
図6に示すように、ガイド孔711aの外形は、吐水パイプ33の外形に対して相似するように構成され、かつ、ガイド孔711aの孔径φDは、吐水パイプ33の外径φEよりも大きい。例えば、孔径φDは外径φEに対して1.05~2.00の比率に設定されている。これにより、フロートトレイ本体71及びこれに取り付けられているフィルタカートリッジ6が吐水パイプ33に沿って水平方向に安定した姿勢で上下方向に案内される。しかも、ガイド孔711aに吐水パイプ33が遊嵌されているので、吐水パイプ33にフロートトレイ本体71が引っ掛かってフィルタ8の上下動が阻害されることが抑制される。
【0055】
カートリッジ支持部71bはフィルタカートリッジ6の底面を支持するとともに、フィルタカートリッジ6を通過した水を貯水タンク2へ通流させる。カートリッジ支持部71bは、円筒状ボス部71aを中心として放射状に延びる複数の支持桟711bの組み合わせを含む。複数の支持桟711bは板状部材であり、板状面が上方に向いており、当該板状面によりフィルタカートリッジ6を支持する。互いに隣接する支持桟711bの間が複数の扇形の通流孔712として構成されている。通流孔712には、フィルタカートリッジ6を通過した水が通流する。
【0056】
トレイ仕切壁71cは、円筒状ボス部71aとカートリッジ規制部71dとに囲まれる収容空間を2つに仕切ることにより、2つのカートリッジ収容部711cを形成する。各カートリッジ収容部711cには、各カートリッジ部60それぞれが着脱可能に収容される。よって経時的劣化等に伴う各カートリッジ部60の交換が容易である。
【0057】
カートリッジ規制部71dは、カートリッジ収容部711cに収容されたフィルタカートリッジ6の径方向外方への移動を規制する。本実施形態では、カートリッジ規制部71dは、カートリッジ支持部71b及びトレイ仕切壁71cの外周側に連続しており、下方に開口した有底筒状の環状部材である。カートリッジ規制部71dのうちカートリッジ収容部711cに面した内周壁がフィルタカートリッジ6の移動を規制する。当該内周壁の内径とフィルタカートリッジ6の外径とは概ね一致している。
【0058】
カートリッジ規制部71dの上壁は中心に向かう方向に下方に傾斜している。これにより、カートリッジ収容部711cから溢れた水がカートリッジ規制部71dの前記上壁に到達しても、カートリッジ規制部71dよりも外に流れ出るのを抑制することができる。カートリッジ規制部71dは、前記内周壁及び前記上壁に亘って、その一部が凹んだ一対の内壁凹部711dが形成されている。内壁凹部711dへの指の挿入により、カートリッジ収容部711cに収容されたフィルタカートリッジ6の取り外しが容易になる。
【0059】
本実施形態では、カートリッジ規制部71dは、カートリッジ収容部711cを構成することに加えて、環状空間の内部にフロート部72を保持するための環状の保持空間Hを構成している。
【0060】
このようなフロートトレイ本体71は、ABS樹脂、ポリプロピレン、ポリエチレンなどの硬質合成樹脂から一体成形されている。
【0061】
上記のように構成されたフロートトレイ本体71は、上方に開口してフィルタカートリッジ6を収容するとともに底部に通流孔712を有するので、簡単な構成で、収容されるフィルタカートリッジ6の機能を十分に発揮させることができる。すなわち、フロートトレイ本体71は上方に開口してフィルタカートリッジ6が収容されるので、摂水部4から排出された水がフロートトレイ本体71の通流孔712を通じてフィルタカートリッジ6の異物除去層6aに導かれ、この異物除去層6aで水に含まれる異物を効果的に除去することができる。しかも、フロートトレイ本体71は底部に通流孔712を有するので、異物が除去された水の排出を可能とするとともに、この通流孔712を通じて貯水タンク2内の水の特性もフロートトレイ本体71内の水質改善層6bにより効果的に改善することができる。
【0062】
フロート部72は、貯水タンク2内の水に対して浮力を有する部材である。フロート部72は、本実施形態では環状部材であり、フロートトレイ本体71の前記保持空間Hに保持される。フロート部72が保持空間Hに保持された状態で、フロート部72はフロートトレイ本体71に貯水タンク2内の水に対する浮力を付与する。
【0063】
フロート部72は、フィルタカートリッジ6がフロートトレイ本体71に保持された状態で、液面に対してフィルタカートリッジ6を所定の浮遊状態とするようにフロートトレイ本体71を浮かせるように構成されている。所定の浮遊状態とは、液面に対して、異物除去層6aの上面が上側に配置され、水質改善層6bの下面が下側に配置される状態である。なお、フィルタ8が一時的に揺れてフィルタ8の上面が水に浸漬されることもあるが、通常の使用形態の大半において、前記所定の浮遊状態となるような所定の姿勢が維持されていればよい。具体的に、フロート部72が前記所定の浮遊状態を担保するための要素の一つが比重であり、その他、フロートトレイ本体71に対する大きさ及び配置等が要素として挙げられる。例えば、フロート部72の比重は、貯水タンク2内に貯留されている流体に対してフロートトレイ7がフィルタカートリッジ6を保持しつつ前記所定の浮遊状態を維持できるように設定されている。つまり、貯水タンク2内に貯留されている流体(水等)を基準としたフロート部72の比重は1以下である。なお、フロート部72は耐水性を有するとより好ましい。フロート部72として、例えば、発泡EVA(Ethylene-Vinyl Acetate)、発泡ウレタン、発泡ポリエチレン及び発泡ポリプロピレン等の発泡体を用いてもよい。これら発泡体の比重は発泡の程度によって異なるが例えば0.05~0.3程度である。
【0064】
上記のようにフロート部72はカートリッジ規制部71dの保持空間Hに保持されることにより、フロートトレイ本体71の外周縁に沿って連続して配置されているので、水がフィルタカートリッジ6に導入されてもフロートトレイ本体71の姿勢を比較的安定させることができ、フィルタカートリッジ6の機能を適正に発揮させることができる。しかも、フロート部72をフロートトレイ本体71に取り付けるにあたってフロートトレイ本体71の周方向における位置調整が不要であるから、フロート部72のフロートトレイ本体71に対する組付けも容易となる。
【0065】
以上の構成を有する犬用給水器1は、例えば次のようにして組み立て、使用前の準備を行う。
【0066】
まず、循環ポンプ3を準備する。具体的に、ポンプ本体31の吐水ボス部31aの先端部を管継手33bの下端部に内嵌し、パイプ本体33aの下端部を管継手33bの上端部に内嵌する。これにより、吐水パイプ33が上方に向かって延びる循環ポンプ3を準備する。
【0067】
このように準備された循環ポンプ3を貯水タンク2の略中心部に位置するように吸盤32により底壁部20aに固定する。循環ポンプ3の電源コード34をコード引出空間2aを通じて貯水タンク2内から外部に引き出す。
【0068】
この状態で貯水タンク2に注水する。例えば、
図3に示すように液位L1となるように貯水タンク2に注水する。液位L1は、例えば、貯水タンク2の予め設定された満水状態における水位である。
【0069】
そして、フィルタ8を貯水タンク2内にセットする。具体的に、カートリッジ規制部71dの保持空間Hにフロート部72を保持させてフロートトレイ7を準備する。フロートトレイ7のガイド孔711aに吐水パイプ33を挿入し、吐水パイプ33がガイド孔711aに対して遊嵌した状態にセットする。フィルタカートリッジ6をフロートトレイ7のカートリッジ収容部711c内に収容する。この収容は、フロートトレイ7の円筒状ボス部71aをフィルタカートリッジ6の中心孔(トレイ中心孔61a及びシート中心孔62a)に挿通してフィルタカートリッジ6をフロートトレイ本体71に載置することにより行われる。
【0070】
次に、水受け部5を貯水タンク2に載置する。具体的に、水受け部5の円錐台ボス部52の中心と吐水パイプ33の中心とを一致させつつ、円錐台ボス部52の戻し孔52a内に吐水パイプ33が挿通するように水受け部5を貯水タンク2に載置する。また、水受け部5の位置決め高台53が貯水タンク2の周壁部20bの内側に位置するように水受け部5を配置する。
【0071】
続いて、摂水部4を装着する。具体的に、循環ポンプ3の吐水パイプ33の上端部をシールジョイント43に緊密に挿入する。そのシールジョイント43に給水スリーブ42の外周面を嵌合することにより、吐水パイプ33が給水スリーブ42に挿入された状態で、吐水パイプ33の上端部に摂水部4を取り付ける。
【0072】
以上のように構成された犬用給水器1の使用状態について説明する。
【0073】
まず循環ポンプ3を駆動させると、循環ポンプ3が貯水タンク2内の水を取り込んで吐水パイプ33から吐出する。この吐出された水は、摂水部4の給水スリーブ42を通って吐水孔41aから吐出し、摂水本体41の上面を伝って流れ落ちることにより周縁部にまで達し、水受け部5に流れ落ちる。犬は、この摂水本体41の上面を流れる水や水受け部5に溜まっている水を摂取する。水受け部5の円錐台ボス部52の上端部から溢れた水はフィルタカートリッジ6に流れ落ちる。そして、フィルタカートリッジ6を通過した水は貯水タンク2内に戻る。
【0074】
犬が水を摂取していない状態では、予め貯水空間Sに注水された水は液位L1を保っている。フロートトレイ7は、カートリッジ収容部711cにフィルタカートリッジ6を収容した状態で、フィルタカートリッジ6と液位との関係が前記所定の浮遊状態となるようにフロート部72の浮力により水に浮いている。具体的に、フィルタカートリッジ6は、
図3に示すように、液位L1の液面に対して、異物除去層6aの上面が上側に配置され、水質改善層6bの下面が下側に配置される状態で水に浮いている。
【0075】
例えば犬が水を飲むことにより、
図8に示すように貯水タンク2内の水の液面が下降する。
図8における貯水空間S内の水の液面の位置は液位L2である。フロートトレイ7は、液位L1から液位L2への液面の変動に応じて吐水パイプ33にガイドされながら下降する。このように液位が変動してもフロートトレイ7がその液位に追随して浮動するため、フロートトレイ7とともに浮動するフィルタカートリッジ6の異物除去層6a及び水質改善層6bと液面との位置関係が前記所定の浮遊状態に保たれる。具体的に、フィルタカートリッジ6は、
図8に示すように、液位L2の液面に対して、異物除去層6aの上面が上側に配置され、水質改善層6bの下面が下側に配置される状態で水に浮いている。
【0076】
次に、貯水タンク2内に水が補給されれば貯水タンク2内の水の液面が
図8の状態から例えば
図3の状態に上昇する。フロートトレイ7は、液位L2から液位L1への液面の変動に応じて吐水パイプ33にガイドされながら上昇する。この場合もまた
図3と同様にフィルタカートリッジ6の異物除去層6a及び水質改善層6bと液面との位置関係が前記所定の浮遊状態に維持される。
【0077】
このように、フィルタカートリッジ6の異物除去層6aの少なくとも上面を水の液面から露出させつつ、フィルタカートリッジ6の水質改善層6bを水に浸漬させた状態で、貯水タンク2内の水の液位に応じてフィルタカートリッジ6を昇降させることができる。このため、貯水タンク2内の水の液位にかかわらず、水に含まれる異物を効果的に除去しつつ、ペット用飲料の特性も効果的に改善することができる。
【0078】
具体的に、フィルタカートリッジ6の異物除去層6aの少なくとも上面を水の液面から露出させた状態を維持できるため、異物除去層6aにより除去された異物そのものやその異物に付着した成分等を異物除去層6aの上面に位置させることにより、これらの異物等が水に溶け込むことを可及的に抑制することができ、水の汚染を抑制することができる。さらに、フィルタカートリッジ6の水質改善層6bを水に浸漬させた状態を維持できるため、フィルタカートリッジ6に供給された循環水が水質改善層6bに触れることなく貯水タンク2に戻るバイパス問題も解消されることから、ペット用飲料の衛生環境を向上することができる。
【0079】
また、水の液位の変動にフィルタカートリッジ6の位置を追随させるために浮力を用いているため、簡素な構成でフィルタカートリッジ6を上下に移動させることができる。例えば、フィルタカートリッジ6を移動させるための動力機構や水の液面を測定する測定機構を省略可能であるため、フィルタ8の構成を簡素化することができる。
【0080】
なお、本発明は、前記実施形態に限定されるものではなく、例えば、以下の態様を採用することもできる。
【0081】
(A)フロート部について
(A1)フロート部の形態及び配置について
本発明に係るフロート部は、上記実施形態のように環状のフロート部72に限られず、周方向に複数に分割されていてもよい。この場合、複数に分割されたフロート部は、トレイ本体の外周縁に沿って間欠的に配置されてもよい。また、フロート部は、トレイ本体の外周縁に沿って配置される態様に限られず、トレイ本体の中央部に配置されてもよい。また、本発明に係るフロート部のトレイ本体への取り付け態様は、上記実施形態のように環状のフロート部72がカートリッジ規制部71dに保持される態様に限られず、フロート部はフロートトレイ本体に直接に取り付けられてもよい。この場合、上記実施形態のカートリッジ規制部71dは保持空間Hを形成するように構成される必要はない。
【0082】
(A2)フロート部の材質について
本発明に係るフロート部は、固体に限られず空気等の気体であってもよい。空気等の気体は、貯水タンク内の水等の流体を基準とした比重が1よりも小さい。
図9の例では、カートリッジ規制部71dが下方に開口した有底筒状の環状部材であるが、下方の開口が閉じられていてもよい。この場合、カートリッジ規制部は閉空間H1を有するように形成される。当該閉空間H1には空気等の気体が封入される。さらには、トレイ本体そのものがフロート部を構成してもよい。例えば、貯水タンク内の流体を基準としたトレイ本体の比重が1より小さいことにより、水に浮く部材であってもよい。
【0083】
(B)フィルタカートリッジ(フィルタ本体)とフロートトレイとの成形態様について
本発明に係るペット用飲料フィルタにおいて、上記実施形態のようにフィルタカートリッジ6とフロートトレイ7とが別体である場合、フィルタカートリッジ6がフロートトレイ7に予め取り付けられていてもよいし、ペット用飲料フィルタを組み立てる際にフィルタカートリッジ6がフロートトレイ7に取り付けられてもよい。さらには、フィルタカートリッジ6とフロートトレイ7とが別体に構成されるものに限られず、フィルタカートリッジ6とフロートトレイ7とが別離不可能に一体に構成されるものであってもよい。この場合でも、フィルタカートリッジ6とフロートトレイ7とを一体として交換可能である。
【0084】
(C)フィルタカートリッジ(フィルタ本体)について
本発明に係るフィルタ本体は、上記実施形態では一対の半円環形状のカートリッジ部60を組み合わせることにより円環状に構成されているが、フィルタカートリッジは単体で円環状であってもよい。この場合、収容トレイ及び捕捉シートは円環状に構成される。また、フロートトレイにおいては、トレイ仕切壁を省略することができる。
【0085】
さらに、本発明に係るフィルタ本体は、上記実施形態のように、フィルタカートリッジ6として収容トレイ61上に捕捉シート62を重ね合わせたものを用いるものに限定されず、異物除去層及び特性改善層を有しているものであればよい。
【0086】
このようなフィルタ本体として
図10に示す例を挙げることができる。例えば、円環状のフィルタカートリッジ16として、前記実施形態のフィルタカートリッジ6の下面に更に捕捉シートを接合するものであっても良い。
【0087】
具体的には、フィルタカートリッジ16は、濾過材(不図示)を収容する収容トレイ161と、収容トレイ161の上面に接合された第1捕捉シート162と、収容トレイ161の下面に接合された第2捕捉シート163とを備える。このフィルタカートリッジ16は、第1捕捉シート162に対応する部分が水に含まれる異物を除去する異物除去層16aとして機能し、収容トレイ161に対応する部分(具体的にはこの収容トレイ161の内部に収容された濾過材の層)が貯水タンク2内の水質を改善する水質改善層16bとして機能するとともに、第2捕捉シート163に対応する部分が収容トレイ161内に収容されている濾過材などの流出を抑制する流出抑制層16cとして機能する。なお、この他の実施形態に係る収容トレイ161及び第1捕捉シート162は、前記実施形態の収容トレイ61及び捕捉シート62と同様に構成されており、フィルタカートリッジ16も前記実施形態と同様に、中心部に円筒状ボス部71aが挿入される中心孔が設けられている。
【0088】
この流出抑制層16cを構成する第2捕捉シート163は、第1捕捉シート162と同様に構成されており、焼結金属多孔板、織布、ろ紙、不織布、網部材など、ペット用飲料(ここでは水)が透過可能な濾材を好適に使用することができる。
【0089】
この他の実施形態に係るフィルタカートリッジ16によれば、不測に収容トレイ161内の濾過材などが流出しそうになっても流出抑制層16cによってその濾過材を物理的に捕捉することができ、貯水タンク2の水を清潔に保つことができるという利点がある。
【0090】
また、例えば、フィルタ本体として、収容トレイと捕捉シートとが別体に構成されているものに限られずこれらが一体に構成されていてもよい。例えば、フィルタ本体として、収容トレイを用いることなく、不織布などの捕捉シートの間に、活性炭、イオン交換樹脂などの濾過材を挟み込んだものを用いるものであっても良く、この場合、下側の捕捉シートをトレイ状に成形するものであっても良い。
【0091】
また、上記実施形態では、フィルタカートリッジ6において異物除去層6aと水質改善層6bとが積層状態に重ね合わされているが、これらの各層の間に空気層と他の層が積層されているものであっても良い。
【0092】
(D)ガイドポールについて
本発明に係るガイドポールは、上記実施形態のように吐水パイプ33に限定されず、吐水パイプ33とは別に設けられた部材であってもよい。さらには、ガイドボールは省略されてもよい。例えば、フィルタは、貯水タンクの内周壁に沿って上下方向にガイドされてもよい。
【0093】
(E)フロートトレイの成形態様について
本発明に係るペット用飲料フィルタにおいて、上記実施形態のようにフロートトレイ本体71と、フロート部72を保持するカートリッジ規制部71dとは一体に成形される態様に限られず、別体であってもよい。つまり、フィルタ本体を収容する収容本体と、フロート部を保持するフロート保持部とは、別部材により構成されており、これらが互いに結合することによりフロートトレイが構成されていてもよい。
【0094】
(F)ペット用飲料供給装置の形状について
(F1)摂水部の形状について
本発明に係る飲料摂取部は、上記実施形態では、対象ペットとして犬を想定して、摂水部4についても吐水孔41aからなだらかに上方に傾斜するように構成されているが、対象ペットとして他の動物を想定しても良く、その場合には対象ペットの性質を考慮して、飲料摂取部の具体的構成を変更しても良い。例えば、対象ペットとして猫を想定する場合には、猫は流水を好むことから飲料摂取部(摂水部)として貯水凹部を省略しても良い。
【0095】
具体的には、
図11に示すように、他の実施形態に係る摂水部14は、傘状に構成され中心部に吐水孔141aが設けられた摂水本体141と、この摂水本体141の下面中心部から下方に延び内部空間が吐水孔141aに連通する給水スリーブ142と備える。この摂水本体141は、中心部から外周縁部にかけて滑らかな曲線によって構成され、前記実施形態と異なり、吐水孔141aから吐出した水は一時的に貯留されることなく絶えず流れている。
【0096】
このように、摂水本体141を中心部から外周縁部にかけて滑らかな曲線によって構成することによって、対象ペットである猫の好みに応じた流水状態とすることができ、ペットの飲料摂取を促進することができる。
【0097】
(F2)全体の形状について
本発明に係るペット用飲料供給装置の外形は、上記実施形態のように平面視円形形状を呈するものに限定されず、楕円形状、長方形状等を呈するものであってもよい。具体的に、貯水タンク2、摂水部4、水受け部5、フィルタカートリッジ6及びフロートトレイ7の外形は平面視円形形状に限定されない。
【符号の説明】
【0098】
1 :犬用給水器(ペット用飲料供給装置)
2 :貯水タンク(貯留タンク)
3 :循環ポンプ
4 :摂水部(飲料摂取部)
6 :フィルタカートリッジ(フィルタ本体)
6a :異物除去層
6b :水質改善層(特性改善層)
7 :フロートトレイ
8 :フィルタ(ペット用飲料フィルタ)
33 :吐水パイプ(ガイドポール)
61 :収容トレイ
62 :捕捉シート
71 :フロートトレイ本体(トレイ本体)
72 :フロート部
712 :通流孔(貫通孔)