(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022113996
(43)【公開日】2022-08-05
(54)【発明の名称】什器
(51)【国際特許分類】
A47C 7/00 20060101AFI20220729BHJP
A47B 91/12 20060101ALI20220729BHJP
A47B 91/04 20060101ALI20220729BHJP
A47B 13/02 20060101ALI20220729BHJP
【FI】
A47C7/00 A
A47B91/12
A47B91/04
A47B13/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021010071
(22)【出願日】2021-01-26
(71)【出願人】
【識別番号】592026325
【氏名又は名称】東海金属工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100136113
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 寿浩
(72)【発明者】
【氏名】水越 裕司
【テーマコード(参考)】
3B053
3B069
3B084
【Fターム(参考)】
3B053NR01
3B069EA03
3B069EA06
3B069GA03
3B084AA00
(57)【要約】
【課題】簡素な構成で汎用性が高く、且つ取付作業が容易でありながらガタつきも抑えられる什器脚部用保護部材を提供する。
【解決手段】複数の保護部材10を周方向に連結することで、円錐状又は円盤状の脚部4の外周縁全体を保護する。隣接する保護部材10の端面同士で互いに連結固定され、脚部4には直接固定されない。内周面に、脚部4の外周縁を受け入れる溝11が形成されている。周方向一端面に凸部12が形成され、他端面に凹部13が形成されており、隣接する保護部材10の凹部13と凸部12が篏合している。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
円錐状又は円盤状の什器脚部の外周縁全体を保護するための什器脚部用保護部材であって、
複数の前記保護部材を周方向に連結することで円環状となり、
前記什器脚部の外周縁へ取り付けた状態において、隣接する前記保護部材の周方向端面同士で互いに周方向に連結固定され、前記什器脚部には直接固定されていない、什器脚部用保護部材。
【請求項2】
内周面に、前記什器脚部の外周縁を受け入れる溝が形成されている、請求項1に記載の什器脚部用保護部材。
【請求項3】
周方向一端面に凸部が形成され、他端面に凹部が形成されており、
周方向に連結した状態では、隣接する前記保護部材の凹部と凸部が篏合している、請求項1または請求項2に記載の什器脚部用保護部材。
【請求項4】
隣接する前記保護部材の周方向端面同士は、ボルトとナットによって連結固定され、
周方向両端面にボルト挿通孔が形成され、
周方向一端部と他端部のいずれか一方又は双方に、前記ナットを収容するナット用凹部が形成されている、請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の什器脚部用保護部材。
【請求項5】
前記ナット用凹部の内形が、前記ナットの外面形状と同一である、請求項4に記載の什器脚部用保護部材。
【請求項6】
円錐状又は円盤状の脚部を備え、
前記脚部の外周縁全体に、請求項1ないし請求項5のいずれかに記載の什器脚部用保護部材が取り付けられている、什器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、円錐状又は円盤状の什器脚部の外周縁全体を保護するための什器脚部用保護部材と、これを備える椅子やテーブル等の什器に関する。
【背景技術】
【0002】
什器の脚部には、当該脚部が床面と直接接触して互いに傷つけることを避けるため、ゴム製や樹脂製等の保護部材が取り付けられることが多い。什器の脚部には種々の形態があるが、座体や天板を支える支柱の下面に、円錐状ないし円盤状の脚部を備える椅子やテーブル等がある。このような円錐状又は円盤状の脚部も、保護部材が取り付けられる。
【0003】
例えば特許文献1の椅子では、脚部が、円錐状の台盤と、その台盤の下方を覆う押え盤とを備え、台盤と押え盤の間の環状の隙間に、保護部材として円環状のパッキングが取り付けられている。これにより、脚部の外周縁全体が保護部材によって保護されている。なお、パッキングは台盤と押え盤によって挟持されている。
【0004】
また、特許文献2の椅子では、円錐状の脚部が、上層部材と下層部材が上下方向で対向した状態で結合されて成り、脚部の外周縁に、複数の同一形状の保護部材を周方向に並設することで、脚部外周縁全体を保護している。各保護部材は、脚部の下層部材に結合されるねじ孔と、ねじ孔に対して水平方向に離間した位置から上方に突出し、脚部の下層部材を上方に貫通して上層部材によって略水平方向の変位を規制される突出部とを有している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】実全昭50-13705号公報
【特許文献2】特開2017-124104号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1では、円環状の保護部材を台盤と押え盤とで挟持している。これでは、保護部材を取り付けるために脚部を専用の構造にする必要があるため汎用性が低く、かつ構造が複雑で取付作業も煩雑となる。また、台盤と押え盤とで挟持した構造なので、保護部材がガタつくおそれもある。
【0007】
特許文献2でも、脚部を上層部材と下層部材とに分け、保護部材は下層部材にねじ固定している。これにより、保護部材を強固に取り付けることができる。しかし、特許文献1と同じく保護部材を取り付けるために脚部を専用の構造にする必要があるため汎用性が低く、かつ構造が複雑となる。しかも、複数の保護部材を1つ1つ脚部へねじ固定する必要があるため、取付作業が極めて煩雑である。
【0008】
そこで本発明は、上記課題を解決するものであって、簡素な構成で汎用性が高く、且つ取付作業が容易でありながらガタつきも抑えられる什器脚部用保護部材と、これを備える什器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
そのための手段として、本発明は、円錐状又は円盤状の什器脚部(以下、単に「脚部」と称す)の外周縁全体を保護するための什器脚部用保護部材(以下、単に「保護部材」と称す)であって、複数の前記保護部材を周方向に連結することで、円環状となる。そのうえで、前記脚部の外周縁へ取り付けた状態において、隣接する前記保護部材の周方向端面同士で互いに周方向に連結固定され、前記脚部には直接固定されていないことを特徴とする。
【0010】
これによれば、複数の保護部材を連結して脚部の外周縁全体を円環状に囲むだけでよいので、脚部を専用の構造とする必要はなく、既存什器の脚部にも事後適用可能であり、汎用性が高い。また、脚部に取り付ける際には、保護部材同士を連結するだけでよく、脚部には保護部材を直接固定する必要がないので、取付作業も簡便である。しかも、各保護部材同士は周方向に連結されるので、各保護部材同士の締結力を大きくしていくと、円環形状の直径が小さくなっていく。そのため、各保護部材同士の締結力を大きくしていくと、各保護部材が脚部の外周縁に密着するように締め付けていくため、取付状態におけるガタつきを抑えることができる。
【0011】
各保護部材の内周面には、前記脚部の外周縁を受け入れる溝を形成することが好ましい。これにより、溝が位置決めとなることで、保護部材を脚部の外周縁へ取り付け易くなる。また、脚部の外周縁が溝内に収容されていることで、取付安定性も向上する。
【0012】
各保護部材の周方向一端面に凸部を形成し、他端面に凹部を形成したうえで、周方向に連結した状態では、隣接する保護部材の凹部と凸部を篏合させることが好ましい。これにより、凸部と凹部が互いに各保護部材同士を連結する際の位置決めとなり、連結作業性が向上すると共に、取付安定性も向上する。
【0013】
各保護部材の周方向両端面にボルト挿通孔を形成し、周方向一端部と他端部のいずれか一方又は双方にナットを収容するナット用凹部を形成したうえで、隣接する保護部材の周方向端面同士をボルトとナットによって連結固定することが好ましい。これによれば、ボルトとナットによって各保護部材同士を強固に固定できると共に、ナットを予め所定の位置及び向きに設置できるため、締結作業性も向上する。
【0014】
このとき、ナット用凹部の内形とナットの外面形状とを同一にしておくことが好ましい。これにより、ナットを安定して設置することができる。
【0015】
また、別の本発明として、円錐状又は円盤状の脚部を備え、脚部の外周縁全体に、上記保護部材が取り付けられた什器を提供することができる。
【0016】
なお、円錐状又は円盤状の脚部としては、典型的には一枚板からなる脚部が挙げられる。本発明の保護部材を取り付けるために、わざわざ脚部を複数部材構成とする必要はないが、別の目的で複数部材構成とした脚部にも、本発明の保護部材を適用することもできる。
【発明の効果】
【0017】
本発明の保護部材によれば、円錐状又は円盤状の脚部の外周縁全体を保護する際に、簡素な構成で汎用性が高く、且つ取付作業が容易でありながらガタつきも抑えられる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図3】保護部材を取り付ける途中の脚部の裏面斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明の保護部材は、什器の脚部に取り付けられる。什器としては、円錐状又は円盤状の脚部を備える物であれば特に限定されない。代表的には、一本足の椅子やテーブル等が挙げられるが、複数本の脚部を有する什器にも適用可能である。すなわち、本発明の保護部材は、円錐状又は円盤状の脚部を備える什器であれば広く適用可能であり、以下に説明する代表的な実施形態に限らず、椅子本体部及びテーブル本体部の形状・構造に制限はなく、従来から公知の什器であればよい。また、既存の什器に後付け適用も可能である。以下に、円盤脚を有する椅子に本発明の保護部材を適用した例を代表的な実施形態として、説明する。
【0020】
図1に示すように、本実施形態の椅子1は、使用者が腰掛けるための座体2と、座体2の下面中央を支持する支柱3と、支柱3の下部に連結された脚部4とを有し、脚部4に保護部材10が取り付けられている。本実施形態では、座体2、支柱3、及び脚部4からなる構成が、上述の椅子本体部に相当する。
【0021】
座体2は、使用者の臀部を支持する円形部材であって、詳細構造の図示は省略するが、座板の上にクッションを配し、表皮で覆われている。本実施形態では、最もシンプルな座体2を図示しているが、座体2は円形に限らす矩形や三角形でもよいし、背凭れやひじ掛けを有するものでもよい。
【0022】
支柱3は棒状部材であって、本実施形態では上下昇降可能に内外二重構造筒となっている。符号5は、座体2の高さ位置を調節固定するためのレバーである。なお、支柱3は高さ調節機能を有しない1本筒であってもよい。
【0023】
脚部4は、一枚板の金属板をヘラ絞り加工により円錐状に成形した部材や、アルミダイカスト品であって、平面方向中央部において支柱3と連結固定されている。脚部4は、一枚板からなる合成樹脂製であってもよい。なお、円錐状とは、平面方向中央部が最も上方に膨出しており、当該中央部から周辺部にかけて下方へ傾斜した末広がり形状を意味する。
【0024】
そのうえで、脚部4の外周縁に、合成樹脂又はゴム製の保護部材10が取り付けられている。保護部材10は、複数個が周方向に連設されており、脚部4の外周縁全体に亘って取り付けられている。本実施形態では、4つの保護部材10を連設している。保護部材10は、脚部4の外周縁の下面、側面、及び上面を覆っている(
図3参照)。保護部材10が脚部4の外周縁下面も覆っていることで、脚部4が床面と直接接触することは無く、脚部4と床面とが互いに傷つけ合うことが防止されている。
【0025】
図2に示すように、本実施形態の保護部材10は、1/4円長さの円弧形部材である。したがって、4つの保護部材10を周方向に連結することで、円環状となる。保護部材10の内周面には、周方向全体に亘って溝11が形成されている。溝11は、脚部4の外周縁を受け入れ可能なように、脚部4の外周縁形状と合致した形状に形成されている。
【0026】
保護部材10の周方向一端面には凸部12が形成され、周方向他端面には凹部13が形成されている。凸部12の外形と凹部13の内形とは合致しており、凹部13の内部へ凸部12が丁度篏合可能となっている。
【0027】
保護部材10の外周縁部は、裏面側から凹ませた薄肉部14を形成して軽量化を図りながら、薄肉部14内に複数のリブ15を形成して補強している。そのうえで、周方向両端面(凸部12と凹部13の側壁)には、外面から薄肉部14へ至る内外貫通したボルト挿通孔16が形成されている。
【0028】
凸部12側の周方向一端部には、後述するナット19を収容するナット用凹部17が形成されている。ナット用凹部17は、凸部12と薄肉部14との間において裏面側から凹み形成されており、ボルト挿通孔16と中心線が同じ位置に形成されている。また、ナット用凹部17の内形は、ナット19の外形と合致する形状に形成されている。本実施形態では、外形が正方形のナット19に対し、ナット用凹部17の内径も四角形に形成されている。なお、ナット用凹部17の深さは、当該ナット用凹部17内へナット19を収容した状態において、ナット19の下面から上面までの高さよりも大きい。したがって、ナット19をナット用凹部17内へセットした状態では、ナット19の全体がナット用凹部17内に没入している。
【0029】
続いて、保護部材10を脚部4へ取り付ける手順について説明する。
図3に示すように、各保護部材10は、周方向に連結した状態で、ボルト18及びナット19によって固定される。先ず、4つの保護部材10のうち、2つずつを連結して半円形とする。このとき、隣接する一方の保護部材10の凸部12を他方の保護部材10の凹部13内へ挿入篏合する。そして、予めナット用凹部17内へナット19をセットした状態で、双方の保護部材10に形成されたボルト挿通孔16にボルト18を通してナット19と螺合することで、保護部材10同士が連結固定される。このとき、ナット用凹部17の内形とナット19の外形が合致しているので、ボルト18を安定してナット19と締結できる。
【0030】
そのうえで、2つの半円形に連結された保護部材10によって脚部4の外周縁を挟み込むように取り付ける。このとき、各保護部材10の内周面に形成された溝11内に脚部4の外周縁を収容するように挟み込む。これにより、溝11が位置決め機能も果たし、取付作業が容易となる。最後に、上記と同様の手順で半円形の保護部材10同士をボルト固定することで、脚部4の外周縁全体に亘って保護部材10を取り付け完了である。
【0031】
このように、各保護部材10を脚部4へ直接固定する必要はなく、単に保護部材10によって脚部4を囲むように取り付けるだけでよいので、取り付け作業が簡便である。また、脚部4の外周縁は保護部材10の溝11内に収容されているので、保護部材10がガタ付くこともない。しかも、ボルト18を確り締結すればするほど、保護部材10で形成される円環の直径が小さくなることで、保護部材10によって脚部4を締め付けるように働くことによっても、ガタ付きが防止される。また、ナット19はナット用凹部17内に没入しているので、椅子1を使用状態にしてもナット19が床面と接触することはない。溝11の形状を取付対象となる脚部4の外周縁の形状と合致するように形成するだけで、既存の椅子に対して事後取り付けも可能である。
【0032】
以上、本発明の代表的な実施形態について説明したが、これに限られることは無く、本発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の変形が可能である。例えば、
図4に示す実施形態2のように、各保護部材20を1/2円長さの円弧形とすることもできるし、
図5に示す実施形態3のように、各保護部材30を1/3円長さの円弧形とすることもできる。これら実施形態2の保護部材20や実施形態3の保護部材30も、その他の構成及び取り付け手順は実施形態1の保護部材10と同様なので、同じ部位に同じ符号を付してその詳説は省略する。
【0033】
また、溝11を細溝とすることで、円盤状の脚部を有する椅子に対しても適用可能である。ナット用凹部17は、凸部12側ではなく凹部13側の周方向他端部に設けてもよいし、周方向両端部に設けて、どちら側からでもボルト18を締結できるようにすることもできる。ナット用凹部17の内形は、必ずしもナット19の外形と合致させる必要もない。
【0034】
凸部12及び凹部13は、必ずしも形成する必要はない。ナット用凹部17も必ずしも形成する必要はなく、ナット19は薄肉部14内でボルト18と締結することもできる。また、ナット19を使用せず、ボルト挿通孔16内に螺子溝を形成し、ボルト18をボルト挿通孔16に直接螺合させることもできる。
【符号の説明】
【0035】
1 椅子
2 座体
3 支柱
4 脚部
10・20・30 保護部材
11 溝
12 凸部
13 凹部
14 薄肉部
15 リブ
16 ボルト挿通孔
17 ナット用凹部