(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022113997
(43)【公開日】2022-08-05
(54)【発明の名称】アンカーボルトの固定方法、それに用いるボルト、および免震装置の取付方法
(51)【国際特許分類】
E04B 1/41 20060101AFI20220729BHJP
E04H 9/02 20060101ALI20220729BHJP
F16F 15/04 20060101ALI20220729BHJP
【FI】
E04B1/41 502C
E04H9/02 331A
F16F15/04 P
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021010072
(22)【出願日】2021-01-26
(71)【出願人】
【識別番号】000002299
【氏名又は名称】清水建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】特許業務法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】岡本 治郎
【テーマコード(参考)】
2E125
2E139
3J048
【Fターム(参考)】
2E125AA74
2E125AA75
2E125AF01
2E125AG14
2E125BA02
2E125BA24
2E125CA05
2E125EA11
2E125EA33
2E139AA01
2E139AB03
2E139AC26
2E139AD03
2E139CA02
2E139CC02
2E139CC11
2E139CC17
3J048AA01
3J048BA08
3J048CB30
3J048DA01
3J048EA38
(57)【要約】
【課題】アンカーボルトの締め付け作業と取り外し作業を手間なく容易に行うことができるアンカーボルトの固定方法、それに用いるボルト、および免震装置の取付方法を提供する。
【解決手段】仮ボルト20を、被固定部材14の各ボルト孔16から挿通して各ナット18に装着するステップと、仮ボルト20を各ナット18に装着した後、固定対象物42における各ナット18の位置を決定するステップと、各ナット18の位置を決定した後、仮ボルト20を各ナット18および各ボルト孔16から取り外すステップと、仮ボルト20を取り外した後、アンカーボルトとしての本ボルト50を、被固定部材46の各ボルト孔48から挿通して各ナット18に装着するステップとを有するようにする。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
固定対象物に被固定部材を固定するために、被固定部材に設けられた複数のボルト孔から、各ボルト孔に対応して固定対象物に配置される複数のナットに挿通されるアンカーボルトの固定方法であって、
ナットのネジ孔に螺合するためのネジ部が形成された軸部と、軸部の一端側に設けられるとともに締結工具により軸周りの回転力が与えられる頭部と、頭部と軸部の間に設けられるとともに、ボルト孔の内周面に近接または一致する程度にボルト孔径よりも小さいとともにナット径よりも大きい径の円柱状の胴部と、胴部と軸部の間に設けられるとともに、胴部から軸部に近づくにつれてテーパー状に縮径するテーパー部とを備える仮ボルトを、被固定部材の各ボルト孔から挿通して各ナットに装着するステップと、
仮ボルトを各ナットに装着した後、固定対象物における各ナットの位置を決定するステップと、
各ナットの位置を決定した後、仮ボルトを各ナットおよび各ボルト孔から取り外すステップと、
仮ボルトを取り外した後、アンカーボルトとしての本ボルトを、被固定部材の各ボルト孔から挿通して各ナットに装着するステップとを有することを特徴とするアンカーボルトの固定方法。
【請求項2】
固定対象物に被固定部材を固定するために、被固定部材に設けられた複数のボルト孔から、各ボルト孔に対応して固定対象物に配置される複数のナットに挿通されるアンカーボルトである本ボルトを固定する前に、各ボルト孔の中心と各ナットの中心の位置を揃えるためにボルト孔からナットに一時的に装着される仮ボルトとして用いられるボルトであって、
ナットのネジ孔に螺合するためのネジ部が形成された軸部と、軸部の一端側に設けられるとともに締結工具により軸周りの回転力が与えられる頭部と、頭部と軸部の間に設けられるとともに、ボルト孔の内周面に近接または一致する程度にボルト孔径よりも小さいとともにナット径よりも大きい径の円柱状の胴部と、胴部と軸部の間に設けられるとともに、胴部から軸部に近づくにつれてテーパー状に縮径するテーパー部とを備えることを特徴とするボルト。
【請求項3】
請求項1に記載のアンカーボルトの固定方法を用いて、固定対象物としてのコンクリート構造物に免震装置を取り付ける方法であって、
被固定部材としてのベースプレートに設けられた複数のボルト孔と、コンクリート構造物に配置される複数のナットとが略一致するようにベースプレートを配置するステップと、
仮ボルトを、ベースプレートの各ボルト孔から挿通して各ナットに装着するステップと、
各ナットを埋設する態様でコンクリートを打設し、コンクリート構造物を施工するステップと、
コンクリートを打設した後、仮ボルトを取り外すステップと、
仮ボルトを取り外した後、ベースプレートに免震装置を設置するステップと、
アンカーボルトとしての本ボルトを、免震装置に備わるフランジプレートおよびベースプレートの各ボルト孔から挿通して各ナットに装着するステップとを有することを特徴とする免震装置の取付方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば免震装置を下部基礎などに固定する際に用いられるアンカーボルトの固定方法、それに用いるボルト、および免震装置の取付方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、積層ゴムからなる免震装置を上下の構造体に固定するために、通常、複数のアンカーボルトを用いている(例えば、特許文献1、2を参照)。
図4は、従来の免震装置の取付状態を示したものである。この図に示すように、免震装置1は円柱状の積層ゴム2と、その上下端面に設けられたフランジプレート3を備えている。フランジプレート3は平面視で円形であり、ボルト4を挿通するためのボルト孔5を有している。ボルト孔5は、フランジプレート3の円周上に等間隔で複数(図の例では12個)設けられる。免震装置1は、フランジプレート3のボルト孔5に通されたボルト4を介して上下の構造体に固定される。
【0003】
例えば、下側のフランジプレート3は、下部構造体である下部基礎6の上面のベースプレート7の上に配置される。下部基礎6は鉄筋コンクリートである。ベースプレート7には、フランジプレート3のボルト孔5の位置に対応してボルト孔5が設けられている。これらのボルト孔5は、施工誤差を考慮してボルト径よりも若干(例えば2~3mm程度)大きい孔径に設定されている。ベースプレート7の下側には、ボルト孔5の位置に対応して高ナット8が配置されている。高ナット8は下部基礎6のコンクリート内に埋設されている。ボルト4は、フランジプレート3のボルト孔5からベースプレート7のボルト孔5を通って、下部基礎6内の高ナット8に締結される。高ナット8の下側には定着ボルト9Aが締結されており、定着ボルト9Aには、定着プレート9Bが固定されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2018-119269号公報
【特許文献2】特開2012-67524号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、
図5(1)に示すように、フランジプレート3およびベースプレート7のボルト孔5の中心C1と、下部基礎6内の高ナット8の中心C2がずれていると、各ボルト4の本締め付け作業の際にいくつかのボルト4が競ってしまい一部のボルト4を高ナット8に挿入することが難しくなる場合がある。高ナット8は下部基礎6のコンクリート内部に埋設してあるので、コンクリート打設後に高ナット8の位置を調整するのは難しい。このため通常は、高ナット8の孔径をボルト4の径よりも若干(例えば2~3mm程度)大きい孔径に設定することで、上記のずれを許容できるようにしている。しかし、許容範囲を超えるようなずれが生じている場合には、フランジプレート3およびベースプレート3のボルト孔5の内壁5Aを棒サンダー等で研削加工するなどの作業が必要となる。
【0006】
また、
図5(2)に示すように、ボルト4を首尾よく締結できたとしても無理に回して締結した場合には、かじりを生じるおそれがある。このような場合、将来、免震装置1の交換作業時にボルト4を取り外そうとしても、ボルト4が高ナット8に噛むことによって回らなくなり、場合によってはボルト4の頭部4Aがせん断破断することがある。この場合、高ナット8内を穿り出すような作業が必要となり、その後の是正工事に多大な手間と労力を要してしまう。
【0007】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、アンカーボルトの締め付け作業と取り外し作業を手間なく容易に行うことができるアンカーボルトの固定方法、それに用いるボルト、および免震装置の取付方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記した課題を解決し、目的を達成するために、本発明に係るアンカーボルトの固定方法は、固定対象物に被固定部材を固定するために、被固定部材に設けられた複数のボルト孔から、各ボルト孔に対応して固定対象物に配置される複数のナットに挿通されるアンカーボルトの固定方法であって、ナットのネジ孔に螺合するためのネジ部が形成された軸部と、軸部の一端側に設けられるとともに締結工具により軸周りの回転力が与えられる頭部と、頭部と軸部の間に設けられるとともに、ボルト孔の内周面に近接または一致する程度にボルト孔径よりも小さいとともにナット径よりも大きい径の円柱状の胴部と、胴部と軸部の間に設けられるとともに、胴部から軸部に近づくにつれてテーパー状に縮径するテーパー部とを備える仮ボルトを、被固定部材の各ボルト孔から挿通して各ナットに装着するステップと、仮ボルトを各ナットに装着した後、固定対象物における各ナットの位置を決定するステップと、各ナットの位置を決定した後、仮ボルトを各ナットおよび各ボルト孔から取り外すステップと、仮ボルトを取り外した後、アンカーボルトとしての本ボルトを、被固定部材の各ボルト孔から挿通して各ナットに装着するステップとを有することを特徴とする。
【0009】
また、本発明に係るボルトは、固定対象物に被固定部材を固定するために、被固定部材に設けられた複数のボルト孔から、各ボルト孔に対応して固定対象物に配置される複数のナットに挿通されるアンカーボルトである本ボルトを固定する前に、各ボルト孔の中心と各ナットの中心の位置を揃えるためにボルト孔からナットに一時的に装着される仮ボルトとして用いられるボルトであって、ナットのネジ孔に螺合するためのネジ部が形成された軸部と、軸部の一端側に設けられるとともに締結工具により軸周りの回転力が与えられる頭部と、頭部と軸部の間に設けられるとともに、ボルト孔の内周面に近接または一致する程度にボルト孔径よりも小さいとともにナット径よりも大きい径の円柱状の胴部と、胴部と軸部の間に設けられるとともに、胴部から軸部に近づくにつれてテーパー状に縮径するテーパー部とを備えることを特徴とする。
【0010】
また、本発明に係る免震装置の取付方法は、上述したアンカーボルトの固定方法を用いて、固定対象物としてのコンクリート構造物に免震装置を取り付ける方法であって、被固定部材としてのベースプレートに設けられた複数のボルト孔と、コンクリート構造物に配置される複数のナットとが略一致するようにベースプレートを配置するステップと、仮ボルトを、ベースプレートの各ボルト孔から挿通して各ナットに装着するステップと、各ナットを埋設する態様でコンクリートを打設し、コンクリート構造物を施工するステップと、コンクリートを打設した後、仮ボルトを取り外すステップと、仮ボルトを取り外した後、ベースプレートに免震装置を設置するステップと、アンカーボルトとしての本ボルトを、免震装置に備わるフランジプレートおよびベースプレートの各ボルト孔から挿通して各ナットに装着するステップとを有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係るアンカーボルトの固定方法によれば、固定対象物に被固定部材を固定するために、被固定部材に設けられた複数のボルト孔から、各ボルト孔に対応して固定対象物に配置される複数のナットに挿通されるアンカーボルトの固定方法であって、ナットのネジ孔に螺合するためのネジ部が形成された軸部と、軸部の一端側に設けられるとともに締結工具により軸周りの回転力が与えられる頭部と、頭部と軸部の間に設けられるとともに、ボルト孔の内周面に近接または一致する程度にボルト孔径よりも小さいとともにナット径よりも大きい径の円柱状の胴部と、胴部と軸部の間に設けられるとともに、胴部から軸部に近づくにつれてテーパー状に縮径するテーパー部とを備える仮ボルトを、被固定部材の各ボルト孔から挿通して各ナットに装着するステップと、仮ボルトを各ナットに装着した後、固定対象物における各ナットの位置を決定するステップと、各ナットの位置を決定した後、仮ボルトを各ナットおよび各ボルト孔から取り外すステップと、仮ボルトを取り外した後、アンカーボルトとしての本ボルトを、被固定部材の各ボルト孔から挿通して各ナットに装着するステップとを有するので、仮ボルトでボルト孔の中心とナットの中心を近接または一致した位置に容易に調整することができる。このため、仮ボルトを取り外した後に施工されるアンカーボルトの締め付け作業と取り外し作業を手間なく容易に行うことができるという効果を奏する。
【0012】
また、本発明に係るボルトによれば、固定対象物に被固定部材を固定するために、被固定部材に設けられた複数のボルト孔から、各ボルト孔に対応して固定対象物に配置される複数のナットに挿通されるアンカーボルトである本ボルトを固定する前に、各ボルト孔の中心と各ナットの中心の位置を揃えるためにボルト孔からナットに一時的に装着される仮ボルトとして用いられるボルトであって、ナットのネジ孔に螺合するためのネジ部が形成された軸部と、軸部の一端側に設けられるとともに締結工具により軸周りの回転力が与えられる頭部と、頭部と軸部の間に設けられるとともに、ボルト孔の内周面に近接または一致する程度にボルト孔径よりも小さいとともにナット径よりも大きい径の円柱状の胴部と、胴部と軸部の間に設けられるとともに、胴部から軸部に近づくにつれてテーパー状に縮径するテーパー部とを備えるので、アンカーボルトの締め付け作業と取り外し作業を手間なく容易に行うことができるという効果を奏する。
【0013】
また、本発明に係る免震装置の取付方法によれば、上述したアンカーボルトの固定方法を用いて、固定対象物としてのコンクリート構造物に免震装置を取り付ける方法であって、被固定部材としてのベースプレートに設けられた複数のボルト孔と、コンクリート構造物に配置される複数のナットとが略一致するようにベースプレートを配置するステップと、仮ボルトを、ベースプレートの各ボルト孔から挿通して各ナットに装着するステップと、各ナットを埋設する態様でコンクリートを打設し、コンクリート構造物を施工するステップと、コンクリートを打設した後、仮ボルトを取り外すステップと、仮ボルトを取り外した後、ベースプレートに免震装置を設置するステップと、アンカーボルトとしての本ボルトを、免震装置に備わるフランジプレートおよびベースプレートの各ボルト孔から挿通して各ナットに装着するステップとを有するので、免震装置の取り付け作業と取り外し作業を手間なく容易に行うことができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】
図1は、本発明に係るアンカーボルトの固定方法、それに用いるボルト、および免震装置の取付方法の実施の形態を示す施工手順図である。
【
図4】
図4は、従来の免震装置の取付状態の一例を示す概略図であり、(1)は側断面図、(2)は平断面図である。
【
図5】
図5は、従来のアンカーボルトの固定方法の課題の説明図であり、(1)はボルト孔壁を研削する場合、(2)はボルトのかじりが生じている場合である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に、本発明に係るアンカーボルトの固定方法、それに用いるボルト、および免震装置の取付方法の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施の形態によりこの発明が限定されるものではない。
【0016】
本実施の形態に係るアンカーボルトの固定方法は、下部基礎(固定対象物)に免震装置のフランジプレート(被固定部材)を固定するために、フランジプレートに設けられた複数のボルト孔から、各ボルト孔に対応して下部基礎に配置される複数の高ナットに挿通されるアンカーボルトの固定方法である。本実施の形態に係る免震装置の取付方法は、このアンカーボルトの固定方法を用いて下部基礎(コンクリート構造物)に免震装置を取り付ける方法である。以下に、この免震装置の取付方法について説明する。
【0017】
まず、
図1(1)に示すように、既設のコンクリート打継面10の上側にアンカーフレーム12を組み立て、アンカーフレーム12の上面にベースプレート14を取り付ける。このベースプレート14には、円周方向に等間隔で複数のボルト孔16が設けられている。
【0018】
次に、
図1(2)に示すように、ボルト孔16の位置のベースプレート14の下側に高ナット18を配置するとともに、ボルト孔16に仮ボルト20を通して高ナット18を固定する。
【0019】
図2は、仮ボルト20の装着状況を示したものである。この図に示すように、仮ボルト20は、高ナット18のネジ孔に螺合するためのネジ部が形成された軸部22と、軸部22の一端側に設けられるとともに締結工具により軸周りの回転力が与えられる六角柱状の頭部24と、胴部26と、テーパー部28とを備える。頭部24は、ボルト孔16よりも大径である。胴部26は、頭部24と軸部22の間に設けられるとともに、ボルト孔16の内周面に近接または一致する程度にボルト孔16の径よりも小さいとともに高ナット18の径よりも大きい径の円柱状の部分である。テーパー部28は、胴部26と軸部22の間に設けられるとともに、胴部26から軸部22に近づくにつれてテーパー状に縮径する部分である。なお、本実施の形態では、仮ボルト20の軸部22の径(ボルト径)として36mm程度、胴部26の径として38mm程度、ボルト孔16の径として39mm程度を想定している。また、胴部26の軸方向長さはベースプレート14の厚さよりも若干短い長さを想定している。
【0020】
次に、
図1(3)に示すように、高ナット18の下側から定着ボルト30を装着するとともに、定着ボルト30の下側に定着プレート32を取り付ける。また、定着ボルト30の周囲に補強筋34を設置する。補強筋34の上端には定着部36を設ける。
【0021】
次に、
図1(4)に示すように、ベースプレート14の周囲に型枠38を設置するとともに、鉄筋40の配筋を行う。その後、型枠38内にコンクリート42(コンクリート構造物)を打設し、コンクリート打継面10と一体化させる。こうすることで、下部基礎(固定対象物)を築造する。また、仮ボルト20を高ナット18に装着した状態でコンクリート42を打設することで、コンクリート42における高ナット18の位置を決定することができる。
【0022】
次に、
図1(5)に示すように、コンクリート42を養生して硬化後に脱型する。その後、仮ボルト20をボルト孔16から取り外す。高ナット18内にノロが無いことを目視確認する。
【0023】
次に、
図1(6)に示すように、ベースプレート14上に免震装置44を設置する。このとき、免震装置44のフランジプレート46(被固定部材)のボルト孔48の位置が、ベースプレート14のボルト孔16の位置に対応するように配置する。その後、フランジプレート46のボルト孔48から本ボルト50を高ナット18に挿入して本締めを行う。
【0024】
図3は、本ボルト50の装着状況を示したものである。この図に示すように、本ボルト50には、一般的な六角全ネジボルトが使用される。テーパー付きの仮ボルト20でボルト孔16の中心と高ナット18の中心を合わせてからコンクリートを打設しているので、ボルト孔16の中心と高ナット18の中心を近接または一致した位置に容易に調整することができる。この結果、仮ボルト20を取り外した後に装着される本ボルト50の軸部とベースプレート14のボルト孔16の間には、平面視で円環状の隙間52が形成されることになる。この隙間52は、仮ボルト20のテーパー部28によって形成されたものである。円環状の隙間52を形成することで、本ボルト50を容易に回転することができる。したがって、本ボルト50の締め付け作業を手間なく容易に行うことができる。また、免震装置44の交換時の本ボルト50の取り外し作業を、手間なく容易に行うことができる。
【0025】
なお、本発明者は、上記の仮ボルト20を試作して免震装置44の取付実験を行った。その結果、全ての本ボルト50をベースプレート14のボルト孔16に干渉することなく回転することができ、高ナット18への締め付け作業を手間なくスムーズに行えることを確認した。また、本ボルト50の取り外し作業についても、手間なくスムーズに行えることを確認した。
【0026】
以上説明したように、本発明に係るアンカーボルトの固定方法によれば、固定対象物に被固定部材を固定するために、被固定部材に設けられた複数のボルト孔から、各ボルト孔に対応して固定対象物に配置される複数のナットに挿通されるアンカーボルトの固定方法であって、ナットのネジ孔に螺合するためのネジ部が形成された軸部と、軸部の一端側に設けられるとともに締結工具により軸周りの回転力が与えられる頭部と、頭部と軸部の間に設けられるとともに、ボルト孔の内周面に近接または一致する程度にボルト孔径よりも小さいとともにナット径よりも大きい径の円柱状の胴部と、胴部と軸部の間に設けられるとともに、胴部から軸部に近づくにつれてテーパー状に縮径するテーパー部とを備える仮ボルトを、被固定部材の各ボルト孔から挿通して各ナットに装着するステップと、仮ボルトを各ナットに装着した後、固定対象物における各ナットの位置を決定するステップと、各ナットの位置を決定した後、仮ボルトを各ナットおよび各ボルト孔から取り外すステップと、仮ボルトを取り外した後、アンカーボルトとしての本ボルトを、被固定部材の各ボルト孔から挿通して各ナットに装着するステップとを有するので、仮ボルトでボルト孔の中心とナットの中心を近接または一致した位置に容易に調整することができる。このため、仮ボルトを取り外した後に施工されるアンカーボルトの締め付け作業と取り外し作業を手間なく容易に行うことができる。
【0027】
また、本発明に係るボルトによれば、固定対象物に被固定部材を固定するために、被固定部材に設けられた複数のボルト孔から、各ボルト孔に対応して固定対象物に配置される複数のナットに挿通されるアンカーボルトである本ボルトを固定する前に、各ボルト孔の中心と各ナットの中心の位置を揃えるためにボルト孔からナットに一時的に装着される仮ボルトとして用いられるボルトであって、ナットのネジ孔に螺合するためのネジ部が形成された軸部と、軸部の一端側に設けられるとともに締結工具により軸周りの回転力が与えられる頭部と、頭部と軸部の間に設けられるとともに、ボルト孔の内周面に近接または一致する程度にボルト孔径よりも小さいとともにナット径よりも大きい径の円柱状の胴部と、胴部と軸部の間に設けられるとともに、胴部から軸部に近づくにつれてテーパー状に縮径するテーパー部とを備えるので、アンカーボルトの締め付け作業と取り外し作業を手間なく容易に行うことができる。
【0028】
また、本発明に係る免震装置の取付方法によれば、上述したアンカーボルトの固定方法を用いて、固定対象物としてのコンクリート構造物に免震装置を取り付ける方法であって、被固定部材としてのベースプレートに設けられた複数のボルト孔と、コンクリート構造物に配置される複数のナットとが略一致するようにベースプレートを配置するステップと、仮ボルトを、ベースプレートの各ボルト孔から挿通して各ナットに装着するステップと、各ナットを埋設する態様でコンクリートを打設し、コンクリート構造物を施工するステップと、コンクリートを打設した後、仮ボルトを取り外すステップと、仮ボルトを取り外した後、ベースプレートに免震装置を設置するステップと、アンカーボルトとしての本ボルトを、免震装置に備わるフランジプレートおよびベースプレートの各ボルト孔から挿通して各ナットに装着するステップとを有するので、免震装置の取り付け作業と取り外し作業を手間なく容易に行うことができる。
【産業上の利用可能性】
【0029】
以上のように、本発明に係るアンカーボルトの固定方法、それに用いるボルト、および免震装置の取付方法は、免震装置の取り付け作業や取り外し作業に有用であり、特に、アンカーボルトの締め付け作業と取り外し作業を手間なく容易に行うのに適している。
【符号の説明】
【0030】
10 コンクリート打継面
12 アンカーフレーム
14 ベースプレート
16,48 ボルト孔
18 高ナット
20 仮ボルト
22 軸部
24 頭部
26 胴部
28 テーパー部
30 定着ボルト
32 定着プレート
34 補強筋
36 定着部
38 型枠
40 鉄筋
42 コンクリート(コンクリート構造物、固定対象物)
44 免震装置
46 フランジプレート(被固定部材)
50 本ボルト
52 隙間