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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022114016
(43)【公開日】2022-08-05
(54)【発明の名称】ガスセンサ
(51)【国際特許分類】
   G01N 27/409 20060101AFI20220729BHJP
   G01N 27/416 20060101ALI20220729BHJP
   G01N 27/41 20060101ALI20220729BHJP
【FI】
G01N27/409 100
G01N27/416 331
G01N27/41 325G
G01N27/41 325Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021010099
(22)【出願日】2021-01-26
(71)【出願人】
【識別番号】000004695
【氏名又は名称】株式会社SOKEN
(71)【出願人】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】110000648
【氏名又は名称】特許業務法人あいち国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】萩野 翔太
(72)【発明者】
【氏名】中村 聡
(72)【発明者】
【氏名】小澤 直人
【テーマコード(参考)】
2G004
【Fターム(参考)】
2G004BB04
2G004BC02
2G004BF19
2G004BF20
2G004BF27
2G004BH02
2G004BH06
2G004BJ03
(57)【要約】
【課題】ブッシュをハウジングから伝わる熱から適切に保護することができるガスセンサを提供する。
【解決手段】ガスセンサ1は、センサ素子2、素子保持材42、ハウジング41、接点端子44、端子保持材43、ブッシュ47及び外筒46A,46Bを備える。素子保持材42は、セラミックス材料によって構成されており、センサ素子2を保持するための挿通孔420を有している。端子保持材43は、セラミックス材料によって構成されており、素子保持材42に連結されるとともに、接点端子44を保持するための端子保持孔430を有している。端子保持材43の熱伝導率は、素子保持材42の熱伝導率よりも小さい。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
長尺形状を有し、長手方向(L)の先端側部位に検知部(21)が形成されるとともに前記長手方向の基端側部位に端子接続部(22)が形成されたセンサ素子(2)と、
前記センサ素子を保持するための挿通孔(420)を有し、セラミックス材料によって構成された素子保持材(42)と、
前記素子保持材を保持するためのハウジング孔(410)を有し、金属材料によって構成されたハウジング(41)と、
リード線(48)が接続され、前記センサ素子の前記端子接続部に接触する接点端子(44)と、
前記素子保持材に連結され、前記接点端子を保持するための端子保持孔(430)を有し、セラミックス材料によって構成された端子保持材(43)と、
前記リード線を保持するための貫通孔(471)を有し、ゴム材料によって構成されたブッシュ(47)と、
前記ハウジングの外周と前記ブッシュの外周とに装着され、前記端子保持材を覆う、金属材料によって構成された外筒(46A,46B)と、を備え、
前記端子保持材の熱伝導率は、前記素子保持材の熱伝導率よりも小さい、ガスセンサ(1)。
【請求項2】
前記端子保持材と前記外筒との間には、前記外筒によって前記端子保持材を前記素子保持材に押さえ付けるための接触部材(432)が配置されており、
前記ハウジングから前記素子保持材、前記端子保持材、前記接触部材及び前記外筒を経由した前記ブッシュへの内側伝熱経路(K1)の伝熱抵抗値は、前記ハウジングから前記外筒を経由した前記ブッシュへの外側伝熱経路(K2)の伝熱抵抗値以上である、請求項1に記載のガスセンサ。
【請求項3】
前記素子保持材は、酸化アルミニウムによって構成されており、
前記端子保持材は、ステアタイト、ムライト、コージライト及びフォルステライトのうちの少なくとも一種によって構成されている、請求項1又は2に記載のガスセンサ。
【請求項4】
前記ブッシュ、及び前記ブッシュの前記貫通孔と前記リード線との接触部分の少なくとも一方には、前記ブッシュの放熱を促進する部材又は材料が設けられている、請求項1~3のいずれか1項に記載のガスセンサ。
【請求項5】
前記ブッシュの外側端面(472)には、前記ブッシュを構成するゴム材料の熱伝導率に比べて熱伝導率が高い金属材料によって構成された放熱部材(49)が設けられている、請求項1~3のいずれか1項に記載のガスセンサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガスセンサに関する。
【背景技術】
【0002】
ガスセンサは、内燃機関の排気管に排気される排ガス等を検出対象ガスとし、検出対象ガスにおける酸素の濃度、特定ガスの濃度、空燃比等を検出するために用いられる。ガスセンサは、検知部を有するセンサ素子、排気管の取付口に取り付けられるハウジング、センサ素子をハウジングに保持するための素子保持材等を備える。また、センサ素子には、接点端子(端子バネ)が接触しており、接点端子に接続されたリード線は、ゴム製のブッシュに保持されている。
【0003】
例えば、特許文献1のガスセンサは、センサ素子、センサ素子を外部に接続するための信号線及び端子金具、センサ素子を収容するハウジング、センサ素子の基端側を覆う筒状のケーシング、信号線を保持してケーシングに支持されたグロメット等を備える。このガスセンサにおいては、端子金具によって、グロメットとセンサ素子との間に断熱空間を設けている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2015-99110号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ガスセンサにおいては、ブッシュは、リード線を保持するとともにガスセンサの内部への水の浸入を防止するためにゴム材料によって構成される。そのため、ブッシュの耐熱性は、セラミックス材料又は金属材料から構成される他の構成部品の耐熱性に比べて低い。特に、近年の内燃機関の周辺のレイアウトの狭小化、及びガスセンサの小型化の要請を受けて、ガスセンサは、熱が溜まりやすい状況下に置かれる。このことからも、他の構成部品に比べて耐熱性が低いブッシュを熱から保護する必要性が高まる。
【0006】
ガスセンサにおいては、内燃機関から排気される排ガスが流れる排気管からハウジングに熱が伝わり、ハウジングからブッシュに向けて熱が伝導することが分かっている。特許文献1のガスセンサにおいては、断熱空間の形成によって、グロメット(ブッシュ)の底面への熱の伝導は遮断される。しかし、特許文献1のガスセンサにおいては、ハウジングの熱は、ケーシング(外筒)を経由してブッシュに伝導するため、ブッシュを熱から保護するためには更なる工夫が必要とされる。
【0007】
また、積層タイプのセンサ素子を用いる場合には、このセンサ素子をハウジングに保持するための素子保持材、及びセンサ素子に接触する接点端子を保持するための端子保持材が用いられることがある。この場合には、素子保持材及び端子保持材は、強度及び絶縁性を確保することを目的として、アルミナ等のセラミックス材料によって構成される。しかし、発明者らの研究により、素子保持材及び端子保持材の容量は大きく、ハウジングから素子保持材及び端子保持材を経由して、多くの熱がブッシュへ伝導されることが分かった。
【0008】
従って、素子保持材及び端子保持材を備えるガスセンサにおいては、ブッシュをハウジングからの熱の伝導から保護するためには更なる工夫が必要とされる。
【0009】
本発明は、かかる課題に鑑みてなされたもので、ブッシュをハウジングから伝わる熱から適切に保護することができるガスセンサを提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の一態様は、
長尺形状を有し、長手方向(L)の先端側部位に検知部(21)が形成されるとともに前記長手方向の基端側部位に端子接続部(22)が形成されたセンサ素子(2)と、
前記センサ素子を保持するための挿通孔(420)を有し、セラミックス材料によって構成された素子保持材(42)と、
前記素子保持材を保持するためのハウジング孔(410)を有し、金属材料によって構成されたハウジング(41)と、
リード線(48)が接続され、前記センサ素子の前記端子接続部に接触する接点端子(44)と、
前記素子保持材に連結され、前記接点端子を保持するための端子保持孔(430)を有し、セラミックス材料によって構成された端子保持材(43)と、
前記リード線を保持するための貫通孔(471)を有し、ゴム材料によって構成されたブッシュ(47)と、
前記ハウジングの外周と前記ブッシュの外周とに装着され、前記端子保持材を覆う、金属材料によって構成された外筒(46A,46B)と、を備え、
前記端子保持材の熱伝導率は、前記素子保持材の熱伝導率よりも小さい、ガスセンサ(1)にある。
【発明の効果】
【0011】
前記一態様のガスセンサは、センサ素子を保持するための素子保持材、及び素子保持材に連結された端子保持材を備えている。端子保持材の熱伝導率は、素子保持材の熱伝導率よりも小さい。また、センサ素子の先端側部位から端子保持材までの距離は、センサ素子の先端側部位から素子保持材までの距離に比べて長い。そして、ガスセンサの使用時において、端子保持材は素子保持材に比べて加熱されにくく、端子保持材の温度は素子保持材の温度に比べて低い。
【0012】
そのため、端子保持材の耐熱性は、素子保持材の耐熱性よりも低くすることが可能になる。そして、端子保持材は、接点端子との絶縁が確保される限度において、熱伝導率が小さい、換言すれば熱抵抗が大きいセラミックス材料によって構成することが可能になる。こうして、端子保持材を、素子保持材に比べて熱伝導率が小さなセラミックス材料によって構成することにより、ハウジングから、素子保持材及び端子保持材を経由してブッシュに至るまでの熱伝導を適切に弱めることができる。
【0013】
この結果、ハウジングの熱は、素子保持材、端子保持材及び外筒を経由する内側伝熱経路と、外筒を経由する外側伝熱経路とに適切に分散されて、ブッシュまで伝導される。これにより、ブッシュを、ハウジングから伝わる熱から保護することが可能になる。
【0014】
それ故、前記一態様のガスセンサによれば、ブッシュをハウジングから伝わる熱から適切に保護することができる。
【0015】
なお、本発明の一態様において示す各構成要素のカッコ書きの符号は、実施形態における図中の符号との対応関係を示すが、各構成要素を実施形態の内容のみに限定するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1図1は、実施形態1にかかる、ガスセンサの断面を示す説明図である。
図2図2は、実施形態1にかかる、図1の一部を拡大した説明図である。
図3図3は、実施形態1にかかる、図2のIII-III断面を示す説明図である。
図4図4は、実施形態1にかかる、センサ素子の断面を示す説明図である。
図5図5は、実施形態1にかかる、図4のV-V断面を示す説明図である。
図6図6は、実施形態1にかかる、図4のVI-VI断面を示す説明図である。
図7図7は、実施形態1にかかる、ガスセンサの断面を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
前述したガスセンサにかかる好ましい実施形態について、図面を参照して説明する。
<実施形態1>
本形態のガスセンサ1は、図1図3に示すように、センサ素子2、素子保持材42、ハウジング41、接点端子44、端子保持材43、ブッシュ47及び外筒46A,46Bを備える。センサ素子2は、長尺形状を有している。センサ素子2の長手方向Lの先端側L1の部位には、検知部21が形成されており、センサ素子2の長手方向Lの基端側L2の部位には、端子接続部22が形成されている。
【0018】
素子保持材42は、セラミックス材料によって構成されており、センサ素子2を保持するための挿通孔420を有している。ハウジング41は、金属材料によって構成されており、素子保持材42を保持するためのハウジング孔410を有している。接点端子44は、導電性の金属材料から構成されており、リード線48が接続されるとともに、センサ素子2の端子接続部22に接触している。
【0019】
端子保持材43は、セラミックス材料によって構成されており、素子保持材42に連結されるとともに、接点端子44を保持するための端子保持孔430を有している。ブッシュ47は、ゴム材料によって構成されており、リード線48を保持するための貫通孔471を有している。外筒46A,46Bは、金属材料によって構成されており、ハウジング41の外周とブッシュ47の外周とに装着されるとともに、端子保持材43を覆っている。端子保持材43の熱伝導率は、素子保持材42の熱伝導率よりも小さい。
【0020】
以下に、本形態のガスセンサ1について詳説する。
(ガスセンサ1)
図1に示すように、ガスセンサ1は、車両の内燃機関(エンジン)の排気管7の取付口71に配置され、排気管7を流れる排ガスGを検出対象ガスとして、検出対象ガスにおける酸素濃度、特定ガス濃度等を検出するために用いられる。ガスセンサ1は、排ガスGにおける酸素濃度、未燃ガス濃度等に基づいて、内燃機関における空燃比を求める空燃比センサ(A/Fセンサ)として用いることができる。空燃比センサは、理論空燃比と比べて空気に対する燃料の割合が多い燃料リッチの状態から、理論空燃比と比べて空気に対する燃料の割合が少ない燃料リーンの状態まで定量的に連続して空燃比を検出することができるものである。
【0021】
排気管7には、排ガスG中の有害物質を浄化するための触媒が配置されており、ガスセンサ1は、排気管7における排ガスGの流れ方向において、触媒の上流側又は下流側のいずれに配置してもよい。また、ガスセンサ1は、排ガスGを利用して内燃機関が吸入する空気の密度を高める過給機の吸入側の配管に配置してもよい。また、ガスセンサ1を配置する配管は、内燃機関から排気管7に排気される排ガスGの一部を、内燃機関の吸気管に再循環させる排気再循環機構における配管としてもよい。
【0022】
(センサ素子2)
図4図6に示すように、本形態のセンサ素子2は、長尺の長方形状に形成されており、固体電解質体31、排気電極311及び大気電極312、第1絶縁体33A、第2絶縁体33B、ガス室35、大気ダクト36及び発熱体34を備える。センサ素子2は、固体電解質体31に、各絶縁体33A,33B及び発熱体34が積層された積層タイプのものである。
【0023】
本形態において、センサ素子2の長手方向Lとは、センサ素子2が長尺形状に延びる方向のことをいう。また、長手方向Lに直交し、固体電解質体31と各絶縁体33A,33Bとが積層された方向を、積層方向Dという。また、長手方向Lと積層方向Dとに直交する方向を、幅方向Wという。また、センサ素子2の長手方向Lにおいて、排ガスGに晒される側を先端側L1といい、先端側L1の反対側を基端側L2という。ガスセンサ1においても、センサ素子2の長手方向Lと同じ方向のことを長手方向Lという。
【0024】
(固体電解質体31、排気電極311及び大気電極312)
図4図6に示すように、固体電解質体31は、所定の活性温度において、酸素イオン(O2-)の伝導性を有するものである。固体電解質体31の第1表面301には、排ガスGに晒される排気電極311が設けられており、固体電解質体31の第2表面302には、大気Aに晒される大気電極312が設けられている。排気電極311と大気電極312とは、センサ素子2の長手方向Lの、排ガスGに晒される先端側L1の部位において、固体電解質体31を介して積層方向Dに重なる位置に配置されている。センサ素子2の長手方向Lの先端側L1の部位には、排気電極311及び大気電極312と、これらの電極311,312の間に挟まれた固体電解質体31の部分とによる検知部21が形成されている。第1絶縁体33Aは、固体電解質体31の第1表面301に積層されており、第2絶縁体33Bは、固体電解質体31の第2表面302に積層されている。
【0025】
固体電解質体31は、ジルコニア系酸化物からなり、ジルコニアを主成分とし(50質量%以上含有し)、希土類金属元素又はアルカリ土類金属元素によってジルコニアの一部を置換させた安定化ジルコニア又は部分安定化ジルコニアからなる。固体電解質体31を構成するジルコニアの一部は、イットリア、スカンジア又はカルシアによって置換される。
【0026】
排気電極311及び大気電極312は、酸素に対する触媒活性を示す貴金属としての白金、及び固体電解質体31との共材としてのジルコニア系酸化物を含有している。図4に示すように、排気電極311及び大気電極312には、これらの電極311,312をガスセンサ1の外部と電気接続するための電極リード部313が接続されている。電極リード部313は、センサ素子2の長手方向Lの基端側L2の部位まで引き出されている。電極リード部313の長手方向Lの基端側L2の端部には、端子接続部22が形成されている。
【0027】
(ガス室35)
図4及び図6に示すように、固体電解質体31の第1表面301には、第1絶縁体33Aと固体電解質体31とに囲まれたガス室35が隣接して形成されている。ガス室35は、第1絶縁体33Aの長手方向Lの先端側L1の部位において、排気電極311を収容する位置に形成されている。ガス室35は、第1絶縁体33Aと拡散抵抗部32と固体電解質体31とによって閉じられた空間部として形成されている。排気管7内を流れる排ガスGは、拡散抵抗部32を通過してガス室35内に導入される。
【0028】
(拡散抵抗部32)
図4に示すように、本形態の拡散抵抗部(ガス導入部)32は、ガス室35の長手方向Lの先端側L1に隣接して設けられている。拡散抵抗部32は、第1絶縁体33Aにおいて、ガス室35の長手方向Lの先端側L1に隣接して開口された導入口内に、酸化アルミニウム等の金属酸化物の多孔質体を配置することによって形成されている。ガス室35に導入される排ガスGの拡散速度(流量)は、排ガスGが拡散抵抗部32における多孔質体の気孔を通過する速度が制限されることによって決定される。
【0029】
(大気ダクト36)
図4図6に示すように、固体電解質体31の第2表面302には、第2絶縁体33Bと固体電解質体31とに囲まれ、大気Aが導入される大気ダクト36が隣接して形成されている。大気ダクト36は、第2絶縁体33Bにおける、大気電極312を収容する長手方向Lの部位から、センサ素子2の長手方向Lにおける基端位置まで形成されている。
【0030】
(各絶縁体33A,33B)
図4図6に示すように、第1絶縁体33Aは、ガス室35を形成するものであり、第2絶縁体33Bは、大気ダクト36を形成するとともに発熱体34を埋設するものである。第1絶縁体33A及び第2絶縁体33Bは、アルミナ(酸化アルミニウム)等の金属酸化物によって形成されている。各絶縁体33A,33Bは、排ガスG又は大気Aである気体が透過することができない緻密体として形成されている。
【0031】
(発熱体34)
図4及び図5に示すように、発熱体34は、大気ダクト36を形成する第2絶縁体33B内に埋設されており、通電によって発熱する発熱部341と、発熱部341の、長手方向Lの基端側L2に繋がる発熱体リード部342とを有する。発熱部341は、固体電解質体31と各絶縁体33A,33Bとの積層方向Dにおいて、少なくとも一部が排気電極311及び大気電極312に重なる位置に配置されている。発熱体34は、導電性を有する金属材料によって構成されている。発熱体リード部342の長手方向Lの基端側L2の端部には、端子接続部22が形成されている。
【0032】
(表面保護層37)
図1に示すように、センサ素子2の長手方向Lの先端側L1の部位には、検知部21を覆う表面保護層37が形成されている。表面保護層37は、排ガスGが通過可能な気孔を有するセラミックス材料としての、互いに結合された複数のセラミックス粒子によって構成されている。
【0033】
(センサ素子2の他の構成)
図示は省略するが、センサ素子2は、1つの固体電解質体31を有するものに限られず、2つ以上の固体電解質体31を有するものとしてもよい。固体電解質体31に設けられる電極311,312は、排気電極311及び大気電極312の一対のものだけに限られず、複数組の電極としてもよい。1つ又は複数の固体電解質体31に複数組の電極が設けられている場合には、発熱体34の発熱部341は、複数組の電極に積層方向Dから対向する位置に設けることができる。
【0034】
(ハウジング41)
図1に示すように、ハウジング41は、ガスセンサ1を排気管7の取付口71に締め付けるために用いられる。ハウジング41は、最大外径部を構成するフランジ部411と、フランジ部411の長手方向Lの先端側L1に形成された先端側筒部412と、フランジ部411の長手方向Lの基端側L2に形成された基端側筒部414とを有する。先端側筒部412の先端側L1には、先端縮径部413が形成されており、基端側筒部414には、かしめ部415が形成されている。先端側筒部412の長手方向Lの基端側L2の部分の外周には、取付口71のめねじに締め付けられるおねじが形成されている。
【0035】
(外筒46A,46B)
図1に示すように、外筒(基端側カバー)46A,46Bは、ガスセンサ1の長手方向Lの基端側L2に位置する配線部を覆って、この配線部を大気A中の水等から保護するためのものである。配線部は、センサ素子2に電気的に繋がる部分としての、接点端子44、接点端子44とリード線48との接続部分(接続金具441)等によって構成される。
【0036】
外筒46A,46Bは、大気A中の水がガスセンサ1内に浸入することを防止する撥水フィルタ462を挟持するために、2部品に分かれて形成されている。具体的には、本形態の外筒46A,46Bは、ハウジング41の基端側筒部414の外周に装着された第1外筒46Aと、第1外筒46Aの長手方向Lの基端側L2の位置の外周に装着された第2外筒46Bとを有する。第2外筒46Bの長手方向Lの先端側L1の部分は、第1外筒46Aの長手方向Lの基端側L2の部分の外周に装着されている。
【0037】
第2外筒46Bの長手方向Lの基端側L2の部分の内周側には、複数のリード線48を保持するブッシュ47が保持されている。撥水フィルタ462は、第1外筒46Aと第2外筒46Bとの間、及び第2外筒46Bとブッシュ47との間に挟持されている。
【0038】
第2外筒46Bには、ガスセンサ1の外部から大気Aを導入するための大気導入孔461が形成されている。撥水フィルタ462は、第2外筒46Bの内周側から大気導入孔461を覆う状態で配置されている。センサ素子2における、大気ダクト36の基端位置は、外筒46A,46B内の空間に開放されている。第2外筒46Bの大気導入孔461の周辺に存在する大気Aは、外筒46A,46B内が減圧状態になったときに、撥水フィルタ462を経由して外筒46A,46B内に取り込まれる。そして、撥水フィルタ462を通過した大気Aは、センサ素子2の大気ダクト36の基端位置から大気ダクト36内に流れ、大気ダクト36内の大気電極312へと導かれる。
【0039】
(素子保持材42)
図1に示すように、素子保持材42は、ハウジング41の中心部を長手方向Lに貫通するハウジング孔410内に配置されている。素子保持材42は、第1碍子とも呼ばれ、絶縁性のセラミックス材料によって構成されている。素子保持材42の中心部には、センサ素子2を挿通させるために、長手方向Lに貫通する挿通孔420が形成されている。挿通孔420における長手方向Lの基端側L2の端部には、センサ素子2を固定するためのガラス粉末422が配置される固定用凹部421が形成されている。センサ素子2は、素子保持材42の挿通孔420に挿通された状態で、固定用凹部421に配置されたガラス粉末422によって素子保持材42に固定されている。
【0040】
素子保持材42の外周には、素子保持材42における最大外径部を形成する突起部423が形成されている。素子保持材42がハウジング41のハウジング孔410に配置された状態において、ハウジング孔410における、突起部423の長手方向Lの先端側L1には、シール材424が配置され、ハウジング孔410における、突起部423よりも長手方向Lの基端側L2の位置には、かしめ用材料425,426,427が配置されている。かしめ用材料425,426,427は、粉末シール材425、筒状体426及びかしめ材427によって構成されている。ハウジング41の基端側筒部414のかしめ部415が径方向Rの内周側に屈曲されることによって、シール材424及びかしめ用材料425,426,427を介して、ハウジング41のハウジング孔410内に素子保持材42がかしめ固定されている。
【0041】
(端子保持材43)
図1に示すように、端子保持材43は、素子保持材42の長手方向Lの基端側L2に配置され、接点端子44を保持するものである。端子保持材43は、第2碍子とも呼ばれ、絶縁性のセラミックス材料によって構成されている。端子保持材43の中心部には、センサ素子2が挿通される端子保持孔430が長手方向Lに貫通して形成されている。端子保持材43における、端子保持孔430に連通する位置には、接点端子44を配置するための溝部431が形成されている。端子保持材43は、第1外筒46Aの径方向Rの内周側に配置されている。
【0042】
(接触部材432)
図1及び図2に示すように、端子保持材43と第1外筒46Aとの間には、第1外筒46Aによって端子保持材43を素子保持材42に押さえ付けるための接触部材432が配置されている。端子保持材43は、第1外筒46Aによって接触部材432を介して素子保持材42に押圧されている。接触部材432は、長手方向Lに弾性変形可能な板バネによって構成されている。板バネは、中心部に穴が形成された中空円板形状に形成されている。接触部材432は、第1外筒46Aにおける、先端側L1の部分に対して縮径する基端側L2の部分による段差部に係止される。
【0043】
(接点端子44)
図1に示すように、接点端子(端子バネ)44は、センサ素子2における、端子接続部22としての電極リード部313の基端部、及び端子接続部22としての発熱体リード部342の基端部に接触し、電極リード部313及び発熱体リード部342をリード線48に電気的に接続するものである。本形態の接点端子44は、2つの電極リード部313の基端部とリード線48とを接続するものと、2つの発熱体リード部342の基端部とリード線48とを接続するものとの4つがある。
【0044】
接点端子44は、端子保持材43の溝部431に配置されている。接点端子44は、接続金具441を介してリード線48に接続されている。接点端子44は、弾性変形の復元力を作用させて、センサ素子2における、電極リード部313の基端部及び発熱体リード部342の基端部に接触している。
【0045】
(ブッシュ47及びリード線48)
図1に示すように、ブッシュ(封止部材)47は、第2外筒46Bの内周側に配置されて、複数のリード線48を、シールを行って保持するものである。ブッシュ47は、シール材としての機能を有するために、弾性変形可能なゴム材料によって構成されている。ブッシュ47には、リード線48が挿通された貫通孔471が形成されている。ブッシュ47に第2外筒46Bがかしめられることにより、各リード線48と各貫通孔471との間、及びブッシュ47と第2外筒46Bとの間の各隙間がシールされる。リード線48は、各接点端子44を、ガスセンサ1の外部のセンサ制御装置6に接続するためのものである。リード線48は、内部の導体が被覆層によって被覆されたものである。
【0046】
(保護カバー45A,45B)
図1に示すように、保護カバー(先端側カバー)45A,45Bは、ハウジング41の長手方向Lの先端側L1の端面から先端側L1へ突出する、センサ素子2の検知部21を覆うものである。保護カバー45A,45Bは、ハウジング41の先端側筒部412に形成された先端縮径部413の外周に装着されている。本形態の保護カバー45A,45Bは、第1保護カバー45Aと、第1保護カバー45Aを覆う第2保護カバー45Bとの二重構造を有している。第1保護カバー45A及び第2保護カバー45Bには、排ガスGが流通可能なガス流通孔451が形成されている。
【0047】
センサ素子2の検知部21及び保護カバー45A,45Bは、内燃機関の排気管7内に配置される。排気管7内を流れる排ガスGの一部は、保護カバー45A,45Bのガス流通孔451から保護カバー45A,45B内に流入する。そして、保護カバー45A,45B内の排ガスGは、センサ素子2の表面保護層37及び拡散抵抗部32を通過して排気電極311へと導かれる。なお、保護カバー45A,45Bは、ガス流通孔451が形成された一重構造のものとしてもよい。
【0048】
(センサ制御装置6)
図1に示すように、ガスセンサ1におけるリード線48は、ガスセンサ1におけるガス検出の制御を行うセンサ制御装置6に電気接続される。センサ制御装置6は、エンジンにおける燃焼運転を制御するエンジン制御装置と連携してガスセンサ1における電気制御を行うものである。センサ制御装置6には、図4に示すように、排気電極311と大気電極312との間に流れる電流を測定する電流測定回路61、排気電極311と大気電極312との間に電圧を印加する電圧印加回路62、発熱体34に通電を行うための通電回路等が形成されている。なお、センサ制御装置6は、エンジン制御装置内に構築してもよい。
【0049】
(他のガスセンサ1)
ガスセンサ1は、NOx(窒素酸化物)等の特定ガス成分の濃度を検出するものとしてもよい。NOxセンサにおいては、固体電解質体31における、排気電極311に接触する排ガスGの流れの上流側に、電圧の印加によって大気電極312へ酸素をポンピングするポンプ電極が配置される。大気電極312は、ポンプ電極に対して固体電解質体31を介して積層方向Dに重なる位置にも形成される。
【0050】
(ガスセンサ1における熱伝導)
素子保持材42は、セラミックス材料としての金属酸化物である酸化アルミニウム(アルミナ)によって構成されている。本形態の素子保持材42を構成する酸化アルミニウムの熱伝導率は、32[W/(m・K)]である。端子保持材43は、セラミックス材料としての金属酸化物であるステアタイト、ムライト、コージライト及びフォルステライトのうちの少なくとも一種によって構成されている。本形態の端子保持材43を構成するステアタイトの熱伝導率は、2[W/(m・K)]である。本形態の端子保持材43を構成するムライト、コージライト及びフォルステライトの熱伝導率は、5[W/(m・K)]である。
【0051】
図1に示すように、端子保持材43の熱伝導率は素子保持材42の熱伝導率に比べて小さく、ガスセンサ1においては、端子保持材43を熱が伝導しにくい状態が形成されている。そして、この状態の形成により、ハウジング41の熱が端子保持材43を経由してブッシュ47へ伝わりにくくしている。ハウジング41は、排ガスGによって加熱される排気管7に接触しており、排ガスGの熱によって900~1000[℃]程度の高温に加熱される。そして、ハウジング41の熱は、外筒46A,46B、素子保持材42、端子保持材43等を長手方向Lの基端側L2へ伝わってブッシュ47へと放熱される。
【0052】
図2に示すように、ハウジング41からブッシュ47への伝熱経路は、素子保持材42、かしめ用材料425,426,427、端子保持材43、接触部材432及び外筒46A,46Bを経由する内側伝熱経路K1と、外筒46A,46Bを経由する外側伝熱経路K2との2つに分けられる。そして、内側伝熱経路K1の伝熱抵抗値を外側伝熱経路K2の伝熱抵抗値と同じにする、又は内側伝熱経路K1の伝熱抵抗値を外側伝熱経路K2の伝熱抵抗値よりも大きくすることにより、ハウジング41の熱が内側伝熱経路K1及び外側伝熱経路K2を経由してブッシュ47まで伝導されにくくしている。
【0053】
伝熱抵抗値R[K/W]は、伝熱長さをx[m]、伝熱断面積をd[m2]、熱伝導率をα[W/(m・K)]としたとき、R=x/(d・α)の式によって表される。伝熱抵抗値は、内側伝熱経路K1と外側伝熱経路K2とに分けて示す。伝熱長さxは、ハウジング41の熱がブッシュ47に伝導するまでの平均距離のことを示す。伝熱断面積dは、ハウジング41の熱がブッシュ47に伝導するときの断面積のことを示す。熱伝導率αは、ハウジング41の熱がブッシュ47に伝導するときに経由する各部材の熱伝導率のことを示す。
【0054】
図1及び図2に示すように、内側伝熱経路K1と外側伝熱経路K2との違いは、ハウジング41から接触部材432の配置位置までの経路の違いとして示される。接触部材432の配置位置からブッシュ47までの伝熱経路は、内側伝熱経路K1及び外側伝熱経路K2のいずれについても、外筒46A,46Bの同じ部分を経由する経路となる。そのため、本形態においては、内側伝熱経路K1の伝熱抵抗値及び外側伝熱経路K2の伝熱抵抗値は、ハウジング41から接触部材432の配置位置までの経路の伝熱抵抗値として示す。
【0055】
具体的には、本形態の内側伝熱経路K1は、ハウジング41と素子保持材42及びかしめ用材料425,426,427との接触位置から、かしめ用材料425,426,427、素子保持材42、端子保持材43を経由して接触部材432までとする。また、本形態の外側伝熱経路K2は、ハウジング41と外筒46A,46Bとの接触位置から、外筒46A,46Bにおける、接触部材432との接触位置までとする。
【0056】
本形態の内側伝熱経路K1の伝熱抵抗値Rは、素子保持材42に酸化アルミニウムを用いるとともに端子保持材43にステアタイトを用いた場合について、素子保持材42の形状、端子保持材43の形状、かしめ用材料425,426,427の種類を適宜変化させたときの3種類の値とした。本形態の3種類の内側伝熱経路K1の伝熱抵抗値Rは、シミュレーションを行った値として、発明品1が0.26[K/W]、発明品2が0.45[K/W]、発明品3が0.74[K/W]となった。また、比較品として、素子保持材42及び端子保持材43に酸化アルミニウムを用いた場合の内側伝熱経路K1の伝熱抵抗値Rは、シミュレーションを行った値として、0.05[K/W]となった。
【0057】
一方、本形態の外側伝熱経路K2の伝熱抵抗値Rは、外筒46A,46Bにステンレス鋼を用いた場合についての値とした。本形態の外側伝熱経路K2の伝熱抵抗値Rは、シミュレーションを行った値として、0.26[K/W]となった。ハウジング41の温度を900[℃]としたときの発明品1~3及び比較品についてのブッシュ47の温度についてシミュレーションを行った。その結果、比較品のブッシュ47の温度は250[℃]となった。一方、発明品1のブッシュ47の温度は245[℃]、発明品2のブッシュ47の温度は210[℃]、発明品3のブッシュ47の温度は190[℃]となった。
【0058】
表1には、発明品1~3及び比較品について、ブッシュ47の温度のシミュレーションを行った結果を示す。
【表1】
【0059】
これらの結果より、発明品1~3によれば、ガスセンサ1の使用時において、ブッシュ47の温度をより低く保ち、比較品としての従来のガスセンサに比べて、ブッシュ47をハウジング41から伝わる熱から保護できることが分かった。また、発明品1~3によれば、内側伝熱経路K1における熱伝導と外側伝熱経路K2における熱伝導とのバランスを図ることができる。
【0060】
ハウジング41と素子保持材42及びかしめ用材料425,426,427との接触位置から、かしめ用材料425,426,427、素子保持材42及び端子保持材43を経由して接触部材432までの内側伝熱経路K1の熱抵抗値は、0.26~5[K/W]の範囲内にある。この内側伝熱経路K1の熱抵抗値が0.26[K/W]未満である場合には、内側伝熱経路K1における熱伝導の割合が大きく、内側伝熱経路K1における熱伝導と外側伝熱経路K2における熱伝導とのバランスが悪くなるおそれがある。
【0061】
一方、この内側伝熱経路K1の熱抵抗値が5[K/W]超過である場合には、外側伝熱経路K2における熱伝導の割合が大きく、内側伝熱経路K1における熱伝導と外側伝熱経路K2における熱伝導とのバランスが悪くなるおそれがある。また、内側伝熱経路K1の熱抵抗値が5[K/W]超過である場合には、外側伝熱経路K2における熱伝導によってブッシュ47が高温に加熱されるとともに、外筒46A,46B内に熱がこもって、接点端子44とセンサ素子2との間に接触不良が生じるおそれがある。
【0062】
ガスセンサ1の設計仕様の観点より、ハウジング41と素子保持材42及びかしめ用材料425,426,427との接触位置から接触部材432までの内側伝熱経路K1の熱抵抗値は、0.26~0.74[K/W]の範囲内にすることが好ましい。
【0063】
端子保持材43は、接点端子44を絶縁する機能を確保するためには、常温(20℃±5℃)における絶縁抵抗としての体積抵抗率が1013[Ω・cm]以上であることが好ましい。端子保持材43の体積抵抗率が1013[Ω・cm]未満になると、接点端子44の絶縁不良によって、ガスセンサ1の出力にノイズが生じるおそれがある。
【0064】
酸化アルミニウム、ステアタイト、ムライト、コージライト及びフォルステライトの体積抵抗率は、1014[Ω・cm]以上である。端子保持材43に、ステアタイト、ムライト、コージライト及びフォルステライトのうちの少なくとも一種を用いる場合でも、酸化アルミニウムを用いる場合と同等の絶縁抵抗を確保することができる。
【0065】
(作用効果)
本形態のガスセンサ1は、センサ素子2を保持するための素子保持材42、及び素子保持材42に連結された端子保持材43を備えている。端子保持材43の熱伝導率は、素子保持材42の熱伝導率よりも小さい。また、センサ素子2の先端側L1の部位から端子保持材43までの距離は、センサ素子2の先端側L1の部位から素子保持材42までの距離に比べて長い。そして、ガスセンサ1の使用時において、端子保持材43は素子保持材42に比べて加熱されにくく、端子保持材43の温度は素子保持材42の温度に比べて低い。
【0066】
そのため、端子保持材43の耐熱性は、素子保持材42の耐熱性よりも低くすることが可能になる。そして、端子保持材43は、接点端子44との絶縁が確保される限度において、熱伝導率が小さい、換言すれば熱抵抗が大きいセラミックス材料によって構成することが可能になる。本形態においては、端子保持材43を、酸化アルミニウムからステアタイト、ムライト、コージライト及びフォルステライトのうちの少なくとも一種に変更することにより、端子保持材43の耐熱性は若干低下すると考えられる。
【0067】
ただし、端子保持材43にステアタイト、ムライト、コージライト及びフォルステライトのうちの少なくとも一種を使用することにより、端子保持材43の熱伝導率を効果的に低下させることができる。こうして、端子保持材43を、素子保持材42に比べて熱伝導率が小さなセラミックス材料によって構成することにより、ハウジング41から、素子保持材42及び端子保持材43を経由してブッシュ47に至るまでの内側伝熱経路K1の熱伝導を適切に弱めることができる。
【0068】
この結果、ハウジング41の熱は、素子保持材42、端子保持材43及び外筒46A,46Bを経由する内側伝熱経路K1と、外筒46A,46Bを経由する外側伝熱経路K2とに適切に分散されて、ブッシュ47まで伝導される。これにより、ブッシュ47を、ハウジング41から伝わる熱から保護することが可能になる。
【0069】
特に、近年のハイブリッド車両等においては、エンジンの周辺のスペースが狭小化する傾向にある。この傾向に伴い、ガスセンサ1を小型化する要求がある。そして、ガスセンサ1を小型化するためには、ガスセンサ1を構成する部品のうちの耐熱性が最も低いブッシュ47の温度上昇をいかに抑えるかということが課題となる。本形態においては、特に素子保持材42に使用する材料を工夫することにより、ブッシュ47の温度上昇を少なくすることができる。
【0070】
それ故、本形態のガスセンサ1によれば、ブッシュ47をハウジング41から伝わる熱から適切に保護することができる。
【0071】
<実施形態2>
本形態は、ブッシュ47に蓄えられる熱を、ガスセンサ1の外部へ逃がすための工夫をした例を示す。
具体的には、図7に示すように、ブッシュ47の外側端面472には、ブッシュ47を構成するゴム材料の熱伝導率に比べて熱伝導率が高い金属材料によって構成された放熱部材49を設けてもよい。放熱部材49は、ブッシュ47の外側端面472に接触する板部材とすればよい。ブッシュ47の外側端面472とは、ブッシュ47における、長手方向Lの基端側L2に位置する端面のことをいう。放熱部材49は、板形状以外の種々の形状に形成されていてもよい。
【0072】
放熱部材49には、リード線48が貫通する貫通穴491が形成されている。放熱部材49は、種々の方法によってブッシュ47の外側端面472に接触する状態が維持される。例えば、第2外筒46Bの長手方向Lの基端側L2の端部のかしめ固定によって、放熱部材49がブッシュ47の外側端面472に接触する状態を維持してもよい。
【0073】
放熱部材49は、アルミニウム、アルミニウム合金等から構成してもよい。また、放熱部材49には、放熱性を高めるための複数のフィンが形成されていてもよい。アルミニウムから構成された放熱部材49を用いる場合には、放熱部材49を用いない場合に比べて、ブッシュの温度を10[℃]程度低減できることが分かった。また、アルミニウムから構成され、複数のフィンが形成された放熱部材49を用いる場合には、放熱部材49を用いない場合に比べて、ブッシュの温度を15[℃]程度低減できることが分かった。
【0074】
放熱部材49を用いることにより、ハウジング41からブッシュ47に伝わる熱をガスセンサ1の外部へ効果的に逃がすことができる。これによっても、ブッシュ47をハウジング41から伝わる熱から適切に保護することができる。
【0075】
ブッシュ47には、ブッシュ47の放熱を促進するためのコーティング材料が設けられていてもよい。コーティング材料は、樹脂材料による放熱塗料、又は放熱用コーティング剤としてもよい。図7に示すように、コーティング材料は、ブッシュ47の外側端面472、及びブッシュ47の貫通孔471のうちの少なくともいずれかに設けてもよい。また、コーティング材料は、リード線48における、ブッシュ47の貫通孔471との接触部分に設けてもよい。
【0076】
コーティング材料は、放熱部材49と併用してもよい。例えば、ブッシュ47の外側端面472にコーティング材料を設けるとともに、コーティング材料を介してブッシュ47の外側端面472に放熱部材49を配置してもよい。
【0077】
ブッシュ47の貫通孔471にコーティング材料が設けられた場合には、ブッシュ47の貫通孔471にはコーティング材料を介してリード線48が接触する。この場合には、ブッシュ47からリード線48への放熱性が向上する。リード線48における、ブッシュ47の貫通孔471との接触部分にコーティング材料が設けられている場合にも、同様の効果が得られる。
【0078】
本形態のガスセンサ1における、その他の構成、作用効果等については、実施形態1の構成、作用効果等と同様である。また、本形態においても、実施形態1に示した符号と同一の符号が示す構成要素は、実施形態1の構成要素と同様である。
【0079】
本発明は、各実施形態のみに限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲においてさらに異なる実施形態を構成することが可能である。また、本発明は、様々な変形例、均等範囲内の変形例等を含む。さらに、本発明から想定される様々な構成要素の組み合わせ、形態等も本発明の技術思想に含まれる。
【符号の説明】
【0080】
1 ガスセンサ
2 センサ素子
41 ハウジング
42 素子保持材
43 端子保持材
44 接点端子
46A,46B 外筒
47 ブッシュ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7