(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022114023
(43)【公開日】2022-08-05
(54)【発明の名称】吸収性物品
(51)【国際特許分類】
A61F 13/535 20060101AFI20220729BHJP
A61F 13/536 20060101ALI20220729BHJP
A61F 13/53 20060101ALI20220729BHJP
【FI】
A61F13/535 100
A61F13/536 100
A61F13/53 300
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021010112
(22)【出願日】2021-01-26
(71)【出願人】
【識別番号】000183462
【氏名又は名称】日本製紙クレシア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002871
【氏名又は名称】弁理士法人坂本国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】黒沢 基成
【テーマコード(参考)】
3B200
【Fターム(参考)】
3B200BA01
3B200BB03
3B200DB01
3B200DB02
3B200DB05
3B200DB13
3B200DB16
(57)【要約】
【課題】拡散性及び吸収性に優れ、漏れが防止され、着用感の良好な吸収性物品の提供。
【解決手段】トップシート10と、バックシート30と、これらの間の吸収体20とを備え、吸収体20は、吸収性繊維と高吸収性ポリマー12とを含有するフラッフ吸収体21と、内側表面に高吸収性ポリマー12の固着担持層を有し、固着担持層を内側にしてフラッフ吸収体21の外表面を包む高吸収性シート24とを備え、着用者の股間部に当接する領域が幅狭に形成され、高吸収性シート24は、内側表面が複数の起毛繊維11xを立設した起毛面11a、外側表面が非起毛面11bである基体不織布11と、複数の起毛繊維11x間に高吸収性ポリマー12を固着担持した固着担持層と、を備え、高吸収性シート24の幅方向両端は、トップシート10とフラッフ吸収体21との間で離隔して対向し、吸収体20内部の体液拡散性を向上させるスリット状空間22を形成する、吸収性物品。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
液透過性のトップシートと、液不透過性バックシートと、これらの間に配置される吸収体と、を備える吸収性物品であって、
前記吸収体は、吸収性繊維と高吸収性ポリマーとを含有するフラッフ吸収体と、内側表面に前記高吸収性ポリマーの固着担持層を有し、前記固着担持層を内側にして前記フラッフ吸収体の外表面を包む高吸収性シートと、を備え、着用者の股間部に当接する領域が幅狭に形成され、
前記フラッフ吸収体の外表面を包む前記高吸収性シートは、前記内側表面が複数の起毛繊維を立設した起毛面であり、外側表面が非起毛面である基体不織布と、複数の前記起毛繊維間に前記高吸収性ポリマーを固着担持した前記固着担持層と、を備え、
前記フラッフ吸収体の外表面を包む前記高吸収性シートの幅方向両端は、前記トップシートと前記フラッフ吸収体との間で離隔して対向し、前記吸収体内部の体液拡散性を向上させるスリット状空間を形成する、吸収性物品。
【請求項2】
前記フラッフ吸収体は、非肌側面から肌側面に向かって凹み、かつ長手方向に間隔を空けて幅方向に延び、前記着用者の身体表面に沿って前記フラッフ吸収体を変形させる複数のスリットを有する、請求項1に記載の吸収性物品。
【請求項3】
前記吸収体は、前記吸収性物品の着用者の下腹部に主に当接する前側部と、前記前側部に連設され、前記着用者の股間部に主に当接する股部と、前記股間部に連設され、前記着用者の主に臀部に当接する後側部と、に区分され、
前記吸収体の長さ方向寸法が400mm以上500mm以下、前記前側部及び前記後側部の幅方向寸法がそれぞれ90mm以上110mm以下、前記股部の幅方向寸法が50mm以上70mm以下、及び前記股部の長さ方向寸法が100mm以上150mm以下である、請求項1又は請求項2に記載の吸収性物品。
【請求項4】
前記吸収体において、前記吸収性繊維の坪量が100g/m2以上800g/m2以下であり、前記高吸収性ポリマーの坪量が50g/m2以上400g/m2以下である、請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の吸収性物品。
【請求項5】
前記高吸収性シートにおいて、前記高吸収性シートの坪量が200g/m2以上1200g/m2以下であり、前記基体不織布はエアスルー不織布であり、その坪量が20g/m2以上200g/m2以下、その厚さが0.3mm以上11.0mm以下、それに含まれる繊維の太さが1.6dtex以上14dtex以下である、請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載の吸収性物品。
【請求項6】
前記スリット状空間の前記トップシートを臨む開口部は、長手方向寸法が100mm以上150mm以下、及び幅方向寸法が5mm以上20mm以下である、請求項1乃至請求項5のいずれか1項に記載の吸収性物品。
【請求項7】
前記スリットは前記吸収体の前記前側部の端部から130mm以上200mm以下の範囲に設けられ、前記スリットの幅方向寸法が3mm以上8mm以下、及び深さ方向寸法が2mm以上5mm以下である、請求項1乃至請求項6のいずれか1項に記載の吸収性物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吸収性物品に関する。
【背景技術】
【0002】
吸収性物品は、例えば、着用者の肌側に位置する液透過性のトップシートと、着用者の非肌側に位置する液不透過性のバックシートと、これらの間に配置され、フラッフパルプ等の吸収性繊維や高吸収性ポリマーを体液吸収成分として含むフラッフ吸収体と、を備え、トップシートを透過してきた尿等の体液をフラッフ吸収体で吸収及び保持するように構成されている。吸収性物品には、例えば、軽失禁パッド、軽失禁ライナー、尿吸収パッド、生理用ナプキン等のパッド製品や、パンツタイプ紙おむつ、テープ止めタイプ紙おむつ等の紙おむつ製品等、用途に応じて様々な形態が存在し、成人及び乳幼児を問わず広く汎用されている。
【0003】
従来の吸収性物品では、例えば、排尿量が多い人の尿漏れを防ぐために、体液吸収成分の含有量を多くしたり、吸収体の幅を広くしたりして対応している。しかしながら、このような対応では、漏れ防止という安心感を与える一方で、体液吸収成分量が多いが故に着用者の股間部がごわついたり、吸収体の幅が着用者の股幅よりも広いが故に窮屈感を感じたり等の着用快適性が劣るという課題がある。体液吸収成分量は変えず、吸収体幅を狭めた場合、股下の窮屈感は緩和されるが、横漏れがより一層生じやすくなる。
【0004】
他方、着用快適性や外観の審美性向上を謳っている下着ライクな紙おむつが市販されている。しかしながら、このような紙おむつは、体液吸収成分量が少なく、吸収体幅も狭いことから、排尿量が多い人にとっては高吸収量の紙おむつよりも漏れやすいという課題がある。
【0005】
特許文献1には、吸収体が着用者の肌側に位置する肌側吸収体と着用者の非肌側に位置する非肌側吸収体との積層体として構成され、肌側吸収体が2枚の親水性不織布の間に高吸収性ポリマーを固着担持させた高吸収性シート(以下単に「高吸収性シート」ともいう)であり、非肌側吸収体が吸収性繊維と高吸収性ポリマーとを含むフラッフ吸収体(以下単に「フラッフ吸収体」ともいう)である吸収性物品が提案されている(請求項1、請求項4)。特許文献1によれば、吸収体の強度低下及び吸収体の厚みの増加を防止しつつ、体液吸収量を高めると記載されている。
【0006】
特許文献2には、前方吸収体、中間吸収体及び後方吸収体がこの順に長手方向に直列に配置され、中間吸収体はフラッフ吸収体であり、前方吸収体及び後方吸収体は高吸収性シートであり、前方吸収体の後端部と中間吸収体の前端部とが隣接するか又は重なり合い、中間吸収体の後端部と後方吸収体の前端部とが隣接するか又は重なり合う、吸収性物品が開示されている。特許文献2によれば、吸収性物品を薄型に保持しつつ、体液の漏れが防止されると記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2018-164633号公報
【特許文献2】特開2020-049178号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1及び特許文献2は、吸収性物品におけるフラッフ吸収体と高吸収性シートとの併用を開示している。しかしながら、特許文献1に記載の吸収性物品は、前記併用で体液吸収量が増加するものの、高吸収性シートが着用者の肌側に位置することから、体液を吸収する前は高吸収性シート中の高吸収性ポリマーのざらつき感を感じやすく、体液を吸収した後は体液を吸収して膨潤した高吸収性ポリマーのごつごつ感を感じやすく、着用感の点で十分満足できるものではない。
【0009】
特許文献2に記載の吸収性物品は、前記併用により体液吸収量が増加するものの、高吸収性シートが着用者の肌に当接する領域があることから、高吸収性ポリマーの前述のざらざら感及びごつごつ感を感じやすくなっており、着用感の点で十分満足できるものではない。また、フラッフ吸収体と高吸収性シートとは、体液の吸収速度及び吸収量が異なるため、一度に大量の体液が排出されたときに、フラッフ吸収体と高吸収性シートとの境界領域において、体液の横漏れが生じやすくなる傾向がある。
【0010】
本発明の目的は、体液拡散性及び体液吸収性に優れ、体液漏れが防止され、着用感の良好な吸収性物品を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者は、上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、非肌側面に複数のスリットを有し、吸収性繊維と高吸収性ポリマーとを含有するフラッフ吸収体(以下、吸収性繊維と高吸収性ポリマーとを含有する吸収体を単に「フラッフ吸収体」ともいう)を、従来とは構造の異なる高吸収性シートで包むことにより、目的に叶う吸収性物品、例えば、着用者の股間部に主に当接する股部を厚くしかつ幅を狭くしても、漏れを防止しつつ着用感が良好になる吸収体を含み、体液吸収性に優れ、複数回の体液吸収が可能な吸収性物品が容易に得られることを見出し、本発明を完成するに至った。本発明は、下記の吸収性物品を提供する。
【0012】
(1)液透過性のトップシートと、液不透過性バックシートと、これらの間に配置される吸収体と、を備える吸収性物品であって、
前記吸収体は、吸収性繊維と高吸収性ポリマーとを含有するフラッフ吸収体と、内側表面に前記高吸収性ポリマーの固着担持層を有し、前記固着担持層を内側にして前記フラッフ吸収体の外表面を包む高吸収性シートと、を備え、着用者の股間部に当接する領域が幅狭に形成され、
前記フラッフ吸収体の外表面を包む前記高吸収性シートは、前記内側表面が複数の起毛繊維を立設した起毛面であり、外側表面が非起毛面である基体不織布と、複数の前記起毛繊維間に前記高吸収性ポリマーを固着担持した前記固着担持層と、を備え、
前記フラッフ吸収体の外表面を包む前記高吸収性シートの幅方向両端は、前記トップシートと前記フラッフ吸収体との間で離隔して対向し、前記吸収体内部の体液拡散性を向上させるスリット状空間を形成する、吸収性物品。
(2)前記フラッフ吸収体は、非肌側面から肌側面に向かって凹み、かつ長手方向に間隔を空けて幅方向に延び、前記着用者の身体表面に沿って前記フラッフ吸収体を変形させる複数のスリットを有する、上記(1)の吸収性物品。
(3)前記吸収体は、前記吸収性物品の着用者の下腹部に主に当接する前側部と、前記前側部に連設され、前記着用者の股間部に主に当接する股部と、前記股間部に連設され、前記着用者の主に臀部に当接する後側部と、に区分され、
前記吸収体の長さ方向寸法が400mm以上500mm以下、前記前側部及び前記後側部の幅方向寸法がそれぞれ90mm以上110mm以下、前記股部の幅方向寸法が50mm以上70mm以下、及び前記股部の長さ方向寸法が100mm以上150mm以下である、上記(1)又は(2)の吸収性物品。
(4)前記吸収体において、前記吸収性繊維の坪量が100g/m2以上800g/m2以下であり、前記高吸収性ポリマーの坪量が50g/m2以上400g/m2以下である、上記(1)乃至(3)のいずれかの吸収性物品。
(5)前記高吸収性シートにおいて、前記高吸収性シートの坪量が200g/m2以上1200g/m2以下であり、前記基体不織布はエアスルー不織布であり、その坪量が20g/m2以上200g/m2以下、その厚さが0.3mm以上11.0mm以下、それに含まれる繊維の太さが1.6dtex以上14dtex以下である、上記(1)乃至(4)のいずれかの吸収性物品。
(6)前記スリット状空間の前記トップシートを臨む開口部は、長手方向寸法が100mm以上150mm以下、及び幅方向寸法が5mm以上20mm以下である、上記(1)乃至(5)のいずれかの吸収性物品。
(7)前記スリットは前記吸収体の前記前側部の端部から130mm以上200mm以下の範囲に設けられ、前記スリットの幅方向寸法が3mm以上8mm以下、及び深さ方向寸法が2mm以上5mm以下である、上記(1)乃至(6)のいずれかの吸収性物品。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、体液拡散性及び体液吸収性に優れ、体液漏れが防止され、着用感の良好な吸収性物品が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の実施形態に係るパンツ型吸収性物品の構成を模式的に示す平面図である。
【
図2】
図1に示すパンツ型吸収性物品の構成を示す模式展開図である。
【
図3】
図2に示すX
1-X
1切断線による幅方向の模式断面図である。
【
図4】高吸収性シートの構成を模式的に示す斜視図である。
【
図5】フラッフ吸収体の非肌側面の構成を模式的に示す斜視図である。
【
図6】
図1に示すパンツ型吸収性物品を着用したときのフラッフ吸収体の変形を模式的に示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本明細書において、吸収性物品50の着用とは、体液吸収の前後を問わず、着用者の身体に装着した状態をいう。吸収性物品50の、長手方向(又は縦方向)とは、吸収性物品50を着用したときに着用者の股間部を介して前後に亘る、図中Yで示す方向であり、幅方向(又は横方向)とは長手方向に対して略直交する、図中Xで示す方向であり、厚み方向とは各構成部材を積層する、図中Zで示す方向である。吸収性物品50及びその各構成部材の肌側面とは着用者の肌に当接する表面又は該肌を臨む表面であり、非肌側面とは着用者の衣類に当接する表面又は衣類を臨む表面である。体液とは、尿、血液や軟便中の水分等の体内から体外に排出された液体をいう。
【0016】
<吸収性物品>
以下、図面を参照しつつ、本実施形態のパンツタイプ紙おむつに係る吸収性物品50について説明する。
図1乃至
図3は、パンツ型吸収性物品50(以下単に「吸収性物品50」ともいう)を示す。
図4は、高吸収性シート24を示す。
図5及び
図6は、フラッフ吸収体21の外観構成とその効果を示す。各図は、吸収性物品50及び各構成部材の形状や、寸法の大小関係等を規定するものではない。本実施形態の吸収性物品50は、成人用のパンツタイプ紙おむつであるが、乳幼児用及び成人用の種々の吸収性物品としても使用でき、例えば、軽失禁パッド、軽失禁ライナー、尿吸収パッド、生理用ナプキン等のパッド製品、テープ止めタイプ紙おむつ等の紙おむつ製品等が挙げられる。
【0017】
パンツ型吸収性物品50は、着用者の股間部を前後から覆う前後方向に略帯状の形状を有する吸収部55と、吸収部55をその外側から支持しつつ吸収部55の周囲に延びてパンツ型吸収性物品50の外形形状を構成する外装体60と、を備える。パンツ型吸収性物品50の
図2に示す展開時の長手方向寸法は例えば600mm以上1000mm以下の範囲であり、幅方向寸法は例えば450mm以上900mm以下の範囲である。この展開時寸法を有するパンツ型吸収性物品50は、必要に応じて所定領域に弾性伸縮部材を配設した後、Sサイズ、Mサイズ、Lサイズ等の各種サイズの成人用のパンツ型吸収性物品50とすることができる。パンツ型吸収性物品50は、例えば、紙おむつ、生理用ナプキン、失禁用使い捨ておむつ等として利用できる。
【0018】
本実施形態によれば、後に詳述する構成により、第1に、体液吸収能力の向上、及び体液漏れ(特に横漏れ)の防止を図りつつ、吸収体20の着用者股間部に主に当接する領域の幅方向寸法を着用者の股幅程度に狭くすることが可能になり、着用者の股間部の窮屈感を低減し、着用感を向上させることができる。第2に、
図3及び
図4に示すように、フラッフ吸収体21を高吸収性シート24でC折りに包むことで、フラッフ吸収体21の肌側に形成されるスリット状空間22のトップシート10を臨む開口がスリットとして機能し、吸収体20内部での体液の拡散性を向上させることができる。第3に、
図4に示すように、フラッフ吸収体を、高吸収性シート24の複数の起毛繊維11x間に高吸収性ポリマー12が固着担持された起毛面11aを内側にしたC折りで包むことにより、体液拡散性(体液吸収速度)及び体液吸収量を高水準で両立させることができ、さらに高吸収性シート24や吸収体20をキャリアシート(不図示)で包むことにより、体液拡散性(体液吸収速度)及び体液吸収量のより一層高水準での両立を得ることができる。第4に、
図5や
図6に示すようにフラッフ吸収体21の非肌側面にスリット23を設けることで、
図6に示すように吸収体21が着用者の身体に沿って屈曲しやすくなることから、着用者の身体にフィットしやすく漏れにくくなる。
【0019】
本実施形態のパンツ型吸収性物品50の外装体60及び吸収部55は、例えば、以下の構成を有する。
【0020】
<外装体>
図1及び
図2に示す外装体60は、着用者の腹部に主に当接する腹側領域3と、着用者の背部に主に当接する背側領域5と、腹側領域3と背側領域5との間に介在し、着用者の股間部に主に当接する股下領域4と、に区分される。股下領域4はその肌側面で吸収部55のバックシート30側の一部又は全部を支持する。また、後述するサイドシール部66を設ける領域(脚周り開口部2を形成しない領域)を腹側領域3又は背側領域5とし、サイドシール部66を設けない領域(脚周り開口部2を形成する領域)を股下領域4と区分してもよい。
【0021】
外装体60は、
図1及び
図2に示すように、股下領域4の長手方向中央で幅方向に延びる仮想中心線を中心として略対称な腹側領域3と背側領域5とを有し、吸収部55も仮想中心線に対して略対称に配置されている。そして、吸収部55が内側となるように仮想中心線で二つ折りにされ、腹側領域3及び背側領域5の幅方向両側縁が一対のサイドシール部66で接合されている。サイドシール部66は、外装体60の所定領域の不織布等をヒートシール溶着、超音波溶着等の溶着方法で接合したものであり、これにより、伸縮性を有する胴周り開口部1と、左右一対の脚周り開口部2とを外装体60に形成し、パンツ型吸収性物品50を全体として着脱可能なパンツ状に構成する。
【0022】
外装体60は、2枚以上の不織布により構成されている。本実施形態の外装体60は、
図1及び
図2のように、外装不織布シート67と、外装不織布シート67の肌側に配置される内装不織布シート68と、必要に応じて配置される補助不織布シート69とを含む。補助不織布シート69は、例えば、吸収部55の端部を覆い、吸収部55の肌へのあたりを和らげる。腹側領域3の長手方向端部の幅方向一縁では、
図3に示すように、長手方向に沿って、外装不織布シート67と内装不織布シート68とを2層に積層した領域と、補助不織布シート69を含んで3層に積層した領域と、が存在してもよい。このような不織布積層構造は、図示しないが、腹側領域3の幅方向他縁、及び背側領域5の幅方向両縁でも同様である。外装体60の不織布積層構造は本実施形態に限定されず、従来から公知の種々の実施形態を特に限定なく採用できる。
【0023】
外装不織布シート67、内装不織布シート68及び補助不織布シート69には、それぞれ、サーマルボンド不織布、エアスルー不織布、スパンボンド不織布等の不織布、好ましくはスパンボンド不織布であって、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリエチレン等の熱可塑性樹脂からなる不織布を使用できる。これらの不織布を用いる場合、その坪量は、例えば、10g/m2以上40g/m2以下の範囲である。
【0024】
外装体60の所定の領域には、
図1及び
図2に示すように必要に応じて、1又は複数の弾性伸縮部材61、62、63、64、65等を配設してもよい。例えば、腹側胴周り領域3Aと背側胴周り領域5Aには幅方向に沿って複数の胴周り領域弾性伸縮部材61、62を配設し、腹側胴周り領域3Bと背側胴周り領域5Bには幅方向に沿って複数の胴周り領域弾性伸縮部材63、64を配設し、脚周り開口部2の縁辺に沿って脚周り弾性伸縮部材65を配設している。弾性伸縮部材の配設により、外装体60の表面に複数のギャザーが形成される。弾性伸縮部材61、62、63、64、65としては公知のものをいずれも使用でき、例えば、天然ゴム、合成ゴム、ポリウレタン等からなる、糸状、紐状、帯状のものが挙げられ、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用できる。
【0025】
<吸収部>
吸収部55は、
図2及び
図3に示すように、液透過性のトップシート10と、液不透過性のバックシート30と、トップシート10及びバックシート30の間に配置される吸収体20と、漏れ防止を目的に設けられた立体ギャザー40と、を含む。なお、本実施形態の吸収部55は、トップシート10、吸収体20、及びバックシート30を基本構成単位とするものであり、必要に応じて、前述のような立体ギャザー40の配設、トップシート10と吸収体20との間への液透過性のトランスファシート(不図示)や液透過性のセカンドシート(不図示)の配設等の、公知の様々な改変を施すことができる。以下、吸収性部55の構成部材について、トップシート10、吸収体20、バックシート30、及び立体ギャザー40の順で更に詳しく説明する。
【0026】
(トップシート)
トップシート10は、吸収体20に向けて体液を速やかに通過させる液透過性のシート状基材である。トップシート10は、着用者の肌に直接当接してもよいように、柔らかな感触で、肌に刺激を与えない基材が好ましい。該基材としては、例えば、親水性シート、同種又は異種の親水性シートの積層体である複合不織布、開口ポリエチレンフィルム等の開口性フィルム、ポリエチレンフォーム、ウレタンフォーム等の発泡フィルム等が挙げられる。親水性シートとしては、例えば、ポリプロピレンやポリエチレン等の合成樹脂からなる合成繊維、レーヨン等の再生繊維、綿等の天然繊維等を用いて作製された、エアスルー不織布、サーマルボンド不織布、スパンレース不織布、スパンボンド不織布等が挙げられる。これらの中でも各不織布が好ましい。
【0027】
トップシート10には、液透過性を向上させる観点から、エンボス加工や穿孔加工を表面に施してもよい。トップシート10は、肌への刺激を低減させる観点から、ローション、酸化防止剤、抗炎症成分、pH調整剤、抗菌剤、保湿剤等の1種又は2種以上を含有してもよい。トップシート10の坪量は、強度、加工性及び液戻り量の観点から、例えば、15g/m2)以上40g/m2以下の範囲である。トップシート10の形状は特に制限されず、漏れがないように体液を吸収体20に誘導するために必要とされる、吸収体20の一部又は全部を覆う形状であればよい。
【0028】
(吸収体)
吸収体20は、例えば、トップシート10とバックシート30との間に配置され、トップシート10を透過してきた体液を吸収及び保持する。吸収体20を、着用者の下腹部に主に当接する前側部(不図示)と、長手方向において前側部の一端に連設され、着用者の股間部に主に当接する股部(不図示)と、長手方向において股部の前側部とは反対側の端部に連設され、着用者の主に臀部に当接する後側部(不図示)と、に区分したとき、吸収体20の長手方向寸法は例えば400mm以上500mmの範囲であり、前側部及び後側部の幅方向寸法は例えば90mm以上110mm以下の範囲(好ましくは100mm)であり、股部の幅方向寸法は例えば50mm以上70mm以下の範囲であり、股部の長手方向寸法は例えば100mm以上150mm以下である。吸収体20の各寸法を前述の範囲とすることで、着用者の股間部が窮屈になることや、横漏れの発生等を防止しつつ、吸収速度、吸収量等の吸収性能を高め、複数回(例えば4回以上)の体液吸収を実行し得る吸収体20とすることができる。吸収体20の平面視形状は、股部の幅方向寸法が前述の範囲内であれば特に限定されず、例えば、砂時計型、Iの字型、長方形、4角が丸まった角丸四角形、長円等が挙げられる。
【0029】
吸収体20は、
図3に示すように、フラッフ吸収体21と、フラッフ吸収体21を包む高吸収性シート24(
図4)と、を含む。
【0030】
(フラッフ吸収体)
フラッフ吸収体21は、体液吸収成分として、吸収性繊維、高吸吸性ポリマー(以下「SAP」ともいう)等を含有する。本明細書では、吸収性繊維と高吸収性ポリマーとを含有する吸収体を、フラッフ吸収体といい、符号「21」により示す。
【0031】
(吸収性繊維)
吸収性繊維は、一般に生理用ナプキンや紙おむつ、尿取りパッド等の吸収性物品に使用されるものであれば特に制限はなく、例えば、フラッフパルプ、コットン、レーヨン、アセテート、ティシュー、吸収紙、親水性不織布等が挙げられる。これらの中でも、吸収性の観点から、フラッフパルプが好ましい。フラッフパルプとしては、木材パルプ(例えば、サウザンパインやダグラスファー等の針葉樹晒クラフトパルプ(N-BKP))、合成繊維、樹脂繊維、非木材パルプ等の綿状解繊物等が挙げられる。フラッフ吸収体21に吸収性繊維としてフラッフパルプを用いた場合、吸収性繊維の坪量は、例えば100g/m2以上800g/m2以下の範囲又は325g/m2以上615g/m2以下の範囲である。これにより、肌触りを損なわずに、より多くの体液を吸収できる。
【0032】
(高吸収性ポリマー)
高吸収性ポリマー12としては、体液を吸収し、かつ、逆流を防止できるものであれば特に制限はなく、ポリアクリル酸塩、ポリアスパラギン酸塩、(デンプン-アクリル酸)グラフト共重合体、(アクリル酸-ビニルアルコール)共重合体、(イソブチレン-無水マレイン酸)共重合体及びそのケン化物等が挙げられる。これらの中でも、重量当たりの吸収量の観点から、ポリアクリル酸塩が好ましく、ポリアクリル酸アルカリ金属塩がより好ましく、ポリアクリル酸ナトリウムが更に好ましい。高吸収性ポリマーは、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用できる。
【0033】
高吸収性ポリマー12は、例えば、粒子状、繊維状等の形態で用いられるが、取扱い易さ等の観点から好ましくは粒子状で用いられる。このとき、粉体としての流動性が悪い微粉末の高吸収性ポリマー12の使用を避け、中位粒子径を有する高吸収性ポリマーを用いることにより、吸収に関する基本性能を高め、かつ、フラッフ吸収体21が硬くなることにより発生するごつごつとした触感を低減することができる。高吸収性ポリマー12の中位粒子径は、例えば、50μm以上600μm以下の範囲又は100μm以上500μm以下の範囲である。
【0034】
フラッフ吸収体21中の高吸収性ポリマー12の坪量は、例えば、50g/m2以上800g/m2以下の範囲、又は100g/m2以上400g/m2以下の範囲である。SAP12の坪量を前述の数値範囲内とすることで、フラッフ吸収体21中でのゲルブロッキングを防止し、かつ、フラッフ吸収体21に体液を複数回吸収させることができる。50g/m2より少ないと体液吸収量が減少する傾向があり、800g/m2よりも多いと、フラッフ吸収体21の製造時に安定的な操業性が低下する傾向がある。フラッフ吸収体21において、フラッフ吸収体21全体の重量に対する、高吸収性ポリマー12の重量の比率である、(高吸収性ポリマー12の重量/フラッフ吸収体21全体の重量)×100(%)は、例えば、15重量%以上の範囲、又は15重量%以上70重量%以下の範囲である。
【0035】
フラッフ吸収体21における、吸収性繊維及びSAP12の形態としては、例えば、吸収性繊維中にSAP粒子を混合して所定の形状に成形したもの、吸収性繊維とSAP粒子とを積層した積層マット等があげられる。所定の形状としては、例えば、板状、砂時計状、ひょうたん状等があげられる。
【0036】
(非肌側面のスリット)
本実施形態のフラッフ吸収体21は、
図5及び
図6に示すように、その非肌側面に2つのスリット(溝部)23を有している。スリット23は、フラッフ吸収体21の非肌側面から肌側面に向けて凹んだ位置に底部を有する溝部(溝状の凹部)である。2つのスリット23は、フラッフ吸収体21の非肌側面の長手方向両端部付近に、長手方向に間隔を空けて幅方向に延びるように設けられている。2つのスリット23を設けることで、
図6に示すように、吸収性物品50を着用したときに、フラッフ吸収体21が着用者の肌面に沿って変形し易くなり、吸収性物品50全体としてのフィット性及び着用感が向上する。なお、本実施形態のフラッフ吸収体21では2つのスリット23を設けているが、フラッフ吸収体21の機械的強度が低下しない範囲で、2本以上のスリット23を設けてもよい。
【0037】
好ましい実施形態では、2つのスリット23の形成位置は、それぞれ、フラッフ吸収体21の長手方向一端及び他端から長手方向内側に向かって130mm以上200mm以下の範囲の位置である。フラッフ吸収体21の平面視形状が砂時計型である場合は、長手方向中央付近から長手方向の一方及び他方の幅方向寸法が広がり始める領域に2つのスリット23が設けられることになる。スリット23の非肌側面における開口部の幅方向寸法は例えば3mm以上8mm以下の範囲、スリット23の深さは2mm以上5mm以下の範囲である。なお、スリット23の深さとは、スリット23の開口面からスリット23の最深地点に下した垂線の長さである。スリット23の非肌面における開口部の幅方向寸法が3mm未満及び/又はスリット23の深さが2mm未満では、スリット23の
図6に示す効果が不十分になる傾向がある。また、スリット開口部の幅方向寸法が8mmを超えるか及び/又はスリット23の深さが5mmを超えると、フラッフ吸収体21の吸収成分含有量が減少したり、フラッフ吸収体21の機械的強度が低下したりして、体液の漏れにつながる傾向がある。
【0038】
(高吸収性シート)
高吸収性シート24は、
図3及び
図4に示すように、一方の表面が複数の起毛繊維11xが立設された起毛面11aであり、他方の面が非起毛面11bである基体不織布11と、基体不織布11の起毛面11aの複数の起毛繊維11x間に固着担持された高吸収性ポリマー12と、を含む。高吸収性ポリマー12は、例えば、ホットメルト接着剤により起毛繊維11x間に固着担持される。高吸収性ポリマー12としては、フラッフ吸収体21で用いられるものと同じものを特に限定なく使用できる。高吸収性シート24における高吸収性ポリマー12の坪量は、例えば、200g/m
2以上1200g/m
2以下の範囲である。
【0039】
本実施形態の高吸収性シート24は、起毛面11aの起毛繊維11x間に高吸収性ポリマー12が固着担持された体液吸収層がフラッフ吸収体21と対面し、かつ高吸収性ポリマー12の幅方向両端がフラッフ吸収体21とトップシート10との間で幅方向に離隔して対向し、スリット状空間22を形成するように、フラッフ吸収体21を包む。高吸収性シート24によるフラッフ吸収体21の包み方は、C折りとも呼ばれる。
【0040】
高吸収性シート24によるフラッフ吸収体21のC折りは、より具体的には、高吸収性シート24の起毛面11a(体液吸収層)の幅方向中央部付近にフラッフ吸収体21の非肌側面が下になるように載置し、必要に応じて体液吸収層表面とフラッフ吸収体21の非肌側面とを例えばホットメルト接着剤で接着する第1工程と、高吸収性シート24の幅方向両側をフラッフ吸収体21に向けて折り返してフラッフ吸収体21幅方向の両側面を覆う第2工程と、高吸収性シート24の幅方向両端をフラッフ吸収体21の肌側面の幅方向両端部を覆うように折り返す第3工程と、をこの順で実施することにより行なわれ、フラッフ吸収体21とトップシート10との間にスリット状空間22を有する本実施形態の吸収体20が得られる。
【0041】
フラッフ吸収体21を高吸収性シート24で包むことで、フラッフ吸収体21が体液を吸収しつつ、フラッフ吸収体21の幅方向に位置する高吸収性シート24の体液吸収層により横漏れが防止され、複数回、例えば4回又はそれ以上の体液吸収が可能になる。また、高吸収性シート24の起毛繊維11xがクッション性を示すので、吸収性物品50全体としてのフィット性、着用感も向上する。なお、本実施形態に限定されず、例えば、トップシート10とフラッフ吸収体21との間で、高吸収性シート24の幅方向両端部が重なり合うように構成してもよい。重なり合う部分はホットメルト接着剤等で接着してもよい。
【0042】
(スリット状空間)
スリット状空間22は、
図3に示すように、トップシート10とフラッフ吸収体21との間で、高吸収性シート24の幅方向両端が離隔して対向する空間領域であり、長手方向に延びている。スリット状空間22は、吸収体20の長手方向一端から長手方向他端まで延びていてもよいが、吸収体20全体としての機械的強度及び体液保持能力等の観点から、長手方向寸法は例えば100mm以上150mmの範囲であり、幅方向寸法は5mm以上20mm以下の範囲、又は7mm以上15mm以下の範囲である。長手方向寸法及び幅方向寸法を前述の範囲とすることで、例えば、吸収体20の機械的強度及び体液保持能力を高水準に維持した状態で、体液拡散性を向上させることができる。なお、スリット状空間22の幅方向寸法が5mm未満では、体液拡散性の向上が不十分になる傾向があり、20mmを超えると、高吸収性シート24の幅方向寸法が短くなって吸収体20全体としての高吸収性ポリマー12の量が減少し、また、吸収体20の機械的強度が低下し、漏れにつながる傾向がある。
【0043】
(基体不織布)
基体不織布11としては、親水性不織布が用いられる。基体不織布11の厚さは特に限定されないが、着用感及び吸収性能のバランスの観点から、0.3mm以上11.0mm以下の範囲、0.5mm以上5.0mm以下の範囲又は0.5mm以上2.0mm以下の範囲である。基体不織布11を構成する繊維の太さは例えば1.6dtex以上14dtex以下の範囲、1.8dtex以上9.0dtex以下の範囲又は2.0dtex以上6.0dtex以下の範囲である。また、基体不織布11の坪量は、例えば35g/m2以上120g/m2以下の範囲である。このような親水性不織布の中でも、エアスルー不織布が好ましい。
【0044】
起毛面11aに立設された複数の起毛繊維11xは、基体不織布11の表面に毛羽立ち加工等の起毛加工を施すことにより、形成される。基体不織布11の複数の起毛繊維11xにより、不織布本来の嵩高さに加えて、高吸収性シート24に適度な厚さとやわらかさが付与され、良好なクッション性が発生し、着用時のフィット性や着用感が向上する。また、基体不織布11を起毛させると、起毛繊維11x間に高吸収性ポリマー12を分散させて固着担持させることができる。基体不織布11の片側表面11aを起毛させる方法としては、回転ノコ刃、ニードルパンチ等を用いる方法が挙げられ、インラインでの生産性やコストの観点から回転ノコ刃を用いる方法が好ましい。
【0045】
基体不織布11における起毛の程度は特に限定されず、目視で起毛を確認できればよいが、例えば、起毛の程度としての起毛率が5%以上90%以下の範囲、又は8%以上80%以下の範囲である。起毛率とは、起毛加工による基体不織布11の厚さの増加率を意味する。起毛前の基体不織布11の厚さをT1、起毛後の基体不織布11の厚さをT2としたとき、起毛率(%)=[(T2―T1)/T1]×100である。厚さT1、T2は、ハイトゲージ((株)ミツトヨ製)を用いて無荷重下で測定される。また、基体不織布11の非起毛面11bでも、繊維を起毛させてもよい。
【0046】
高吸収性ポリマー12を基体不織布11の起毛面11aに立設された複数の起毛繊維11x間に固着担持するには、例えば、ホットメルト接着剤が用いられる。ホットメルト接着剤としては、融点が100℃以上180℃以下のものを特に限定なく使用でき、例えば、スチレン-ブタジエン-スチレン系共重合体、スチレン-イソプレン-スチレン系共重合体等の合成ゴム系ホットメルト接着剤、エチレン-酢酸ビニル共重合体等のオレフィン系ホットメルト接着剤等が挙げられる。ホットメルト接着剤の塗布方法としては、ノズルから溶融状態のホットメルト接着剤を非接触式で塗布するカーテンコート法やスパイラル法、接触式で塗布するスロット法等、公知の方法が利用できる。ホットメルト接着剤の含有量は、高吸収性ポリマーの吸収性及び装着時の肌触りを損なわない観点から、例えば10g/m2以下の範囲である。
【0047】
<キャリアシート>
本実施形態では、高吸収性シート24で包まれる前のフラッフ吸収体21や、吸収体20全体をキャリアシート(不図示)で包んでもよい。高吸収性シート24で包まれる前のフラッフ吸収体21や、吸収体20全体をキャリアシートで包む場合、例えば、前述のC折りが利用される。キャリアシートとしては、この分野で常用される親水性シートをいずれも使用でき、例えば、サーマルボンド不織布、スパンボンド不織布、エアレイド不織布、エアスルー不織布、パルプ含有不織布等の親水性不織布、ティシュペーパー、吸収紙等が挙げられる。親水性不織布の中でも、サーマルボンド不織布、スパンボンド不織布、エアスルー不織布、パルプ含有不織布等の親水性不織布がより好ましく、エアスルー不織布、パルプ含有不織布、スパンボンド不織布等がさらに好ましい。また、キャリアシートの厚さは例えば0.10mm以上0.25mm以下の範囲、坪量は例えば5g/m2以上40g/m2以下の範囲である。
【0048】
<バックシート>
バックシート30は、吸収体20が保持する体液が衣類を濡らさないような液不透過性を備えた通気性又は非通気性の基材を用いて形成されればよく、該基材としては、例えば、樹脂フィルム、樹脂フィルムと不織布との積層体である複合シート等が挙げられる。複合シートに用いられる不織布としては、製法を特に限定せず、例えば、スパンボンド不織布、メルトブロー不織布等の単層不織布、スパンボンド不織布/メルトブロー不織布積層体、スパンボンド不織布/メルトブロー不織布/スパンボンド不織布積層体等の複合不織布、これらの複合材料等が挙げられる。また、樹脂フィルムとしては、例えば、ポリエステル、ポリビニルアルコール、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンとポリプロピレンの複合フィルム等が挙げられる。
【0049】
バックシート30の坪量は、強度及び加工性の点から、例えば15g/m2以上60g/m2以下の範囲、又は15g/m2以上40g/m2以下の範囲である。また、着用時の蒸れを防止するため、バックシート30には、通気性を持たせることが好ましい。バックシート30に通気性を備えさせるためには、例えば、基材の樹脂フィルムにフィラーを配合したり、バックシート30にエンボス加工を施したりすればよい。なお、フィラーとしては炭酸カルシウムを挙げることができ、その配合方法は、公知の方法を制限なく実施できる。
【0050】
<立体ギャザー>
立体ギャザー40は、例えば、吸収性物品50の着用者が排泄した体液の横漏れを防止するために、吸収部55の幅方向両端付近で吸収部55の長さ方向に沿ってトップシート10の肌側面に固定される。立体ギャザー40は、弾性伸縮部材40aと、撥水性及び/又は防水性のシート部材40bと、を含む。
【0051】
弾性伸縮部材40aは、シート部材40bの自由端(他端)付近に長さ方向に沿って配設され、該自由端に起立性を付与し、シート部材40bの自由端及びその近傍領域を着用者の体型に合わせて変形可能にする。シート部材40bは、本実施形態では幅方向一端(固定端)がバックシート30の肌側面の幅方向両端付近に固定され、幅方向途中部がトップシート10の肌側面の幅方向両端付近に固定され、幅方向他端が起立性を有する自由端である。シート部材40bの固定端(幅方向一端)の固定位置は、本実施形態に限定されず、例えば、バックシート30の非肌側面、内部に吸収体20を収納したトップシート10とバックシート30との各縁辺の全部又は一部接合体の肌側面又は非肌側面の幅方向両端付近、トップシート10の肌側面の幅方向両端付近等が挙げられる。
【0052】
シート部材40bは撥水性及び/又は防水性を有するシートであり、例えば不織布から構成される。第1シート部材用不織布としては、疎水性繊維にて形成された撥水性及び/又は防水性(液不透過性)の不織布を特に限定なく使用でき、例えば、スパンボンド不織布、メルトブロー不織布、スパンボンド不織布/メルトブロー不織布/スパンボンド不織布積層体である複合不織布(SMS不織布)等が挙げられる。シート部材40bの目付は、例えば、13g/m2以上20g/m2以下の範囲である。弾性伸縮部材40aとしては、例えば、天然ゴム、合成ゴム、ポリウレタン等からなる、糸状、紐状、帯状のものを適宜使用することができる。
【0053】
<吸収性物品の製造方法>
吸収性物品50は、公知の製造方法により製造でき、例えば、吸収体20をトップシート10とバックシート30との間に配置する工程と、トップシート10とバックシート30とを一部又は全周に亘ってホットメルト接着剤やヒートエンボス、超音波エンボス、高周波エンボス等を用いて固定する工程と、バックシート30及びトップシート10の所定位置に立体ギャザー40を設置して吸収部55を得る工程と、不織布等を用いて
図2に示すような所定形状の外装体60を作製する工程と、吸収部55を外装体60の所定位置に取り付ける工程と、吸収部55を取り付けた外装体60をパンツ型の外観形状にする工程と、を含む製造方法が挙げられる。そして、吸収性物品50を所定の折り線に沿って折り畳んで包装体に個別包装することで、製品が得られる。また、吸収部55には、レッグギャザー、ウエストギャザー、サイドフラップ等を必要に応じて設けることができる。
【0054】
以上、実施形態を用いて本発明を説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施形態や実施例に記載の範囲には限定されないことは言うまでもない。上記実施形態に、多様な変更又は改良を加えることが可能であることが当業者に明らかである。また、そのような変更又は改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【実施例0055】
以下に実施例及び比較例を挙げ、本実施形態を更に具体的に説明する。
【0056】
(実施例1~3及び比較例1、2)
吸収性物品として、使い捨てパンツ型おむつを作製した。
エアスルー不織布(坪量60g/m2、厚さ0.96mm、繊維太さ2.0dtex)の片面に回転ノコ刃を用いて起毛処理を施し、起毛後厚さ1.2mm、起毛率25%の基体不織布を作製した。この基体不織布の起毛面に高吸収性ポリマーを280g/m2の坪量で散布しで、ホットメルト接着剤で固着担持し、固着担持層を形成した。一方、フラッフパルプ20g、高吸収性ポリマー16gからなる積層体としてフラッフ吸収体を作製した。なお、実施例1、2のフラッフ吸収体の幅方向両端から150mmの位置に、表1に示す寸法のスリット(溝)を各1本ずつ形成した。上記で得られた基体不織布を、その固着担持層を内側にして用い、上記で得られたフラッフ吸収体をC折りし、表1に示す寸法及びスリット状空間を有する吸収体を作製した(実施例1~3)。なお、比較例1、2では、前述のフラッフ吸収体を表1に示す寸法にして用いた。
【0057】
トップシートとして坪量30g/m2のエアスルー不織布、バックシートとして坪量32g/m2の通気性ポリエチレンフィルムを用い、トップシートとバックシートの間に、上記で得られた各吸収体を配置し、外装体として2枚のポリプロピレン製スパンボンド不織布(坪量20g/m2)の積層体を用い、実施例1~3及び比較例1、2の使い捨てパンツ型紙おむつを作製した。
【0058】
上記で得られた実施例1~3及び比較例1、2の使い捨てパンツ型紙おむつについて、下記の評価試験を実施した。結果を表1に示す。
<吸収速度3回法>
底面積16.8cm2の円柱の中央に内径19mmの穴が開いており、重さを755.6gとした測定冶具を、実施例1~3及び比較例1、2の各使い捨てパンツ型紙おむつの長手方向、かつ幅方向の中央部の上に置き、穴の上部から生理食塩水それぞれ150mlを投下し、生理食塩水が使い捨て紙おむつに接触した時点から治具中央円内の円周に液体が完全に吸い込まれるところを終点として時間を計測した(1回目)。そして3分経過後に同様の時間を計測し(2回目)、同様に3回目を計測した。
<液戻り量>
トップシートを上に向けた状態で、生理食塩水500mlを実施例1~3及び比較例1、2の各吸収体の中心部に向かって注水し、10分間放置した後、生理食塩水の吸収部位に、あらかじめ重量を測定したろ紙(ADVANTEC社製、No.2ろ紙、直径55mm)を置き、その上に35kgf/cm2の錘を乗せ、60秒経過後、ろ紙の重量を測り、ろ紙の重量差を液戻り量とした。
<着用感:吸収前の柔らかさ>
20名のパネラーに実施例1~3及び比較例1、2の各使い捨てパンツ型紙おむつを着用してもらい、20名のパネラーが、吸収前の柔らかさについて、「柔らかい」又は「硬い」の選択で吸収前の柔らかさ(着用感)を判定し、以下の基準により評価した。
◎:「柔らかい」が16人以上20人以下のとき
○:「柔らかい」が11人以上15人以下のとき
△:「柔らかい」が6人以上10人以下のとき
×:「柔らかい」がいないか、1人以上5人以下のとき
<着用感:吸収後の違和感の無さ>
実施例1~3及び比較例1、2の各使い捨てパンツ型紙おむつを着用してもらい、20名のパネラーが、吸収後の違和感の無さついて、「違和感がある」又は「違和感がない」の選択で判定し、以下の基準により評価した。なお、吸収後の違和感は、主に、吸収後の厚みの変化に起因するものである。
◎:「違和感がない」が16人以上20人以下のとき
○:「違和感がない」が11人以上15人以下のとき
△:「違和感がない」が6人以上10人以下のとき
×:「違和感がない」がいないか、1人以上5人以下のとき
<体液漏れ>
実施例1~3及び比較例1、2の各使い捨てパンツ型紙おむつを着用してもらい、20名のパネラーが漏れの有無を判定し、以下の基準により評価した。
◎:「漏れがない」が16人以上20人以下のとき
○:「漏れがない」が11人以上15人以下のとき
△:「漏れがない」が6人以上10人以下のとき
×:「漏れがない」がいないか、1人以上5人以下のとき
【0059】
【0060】
表1から、フラッフ吸収体を、基体不織布の一方の表面の複数の起毛繊維間に高吸収性ポリマーを固着担持した固着担持層を有する高吸収性シートでC折りした吸収体を用いることにより、複数回の吸収後でも吸収速度が高水準に維持され、液戻りがほぼ防止され、フィット感や着用感が良好で、体液漏れが防止されたパンツ型吸収性物品が得られることが分かる。