(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022114042
(43)【公開日】2022-08-05
(54)【発明の名称】ポリマー、ポリマー溶液、感光性樹脂組成物、および硬化物
(51)【国際特許分類】
C08F 8/14 20060101AFI20220729BHJP
C08F 290/12 20060101ALI20220729BHJP
【FI】
C08F8/14
C08F290/12
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021010142
(22)【出願日】2021-01-26
(71)【出願人】
【識別番号】000002141
【氏名又は名称】住友ベークライト株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110928
【弁理士】
【氏名又は名称】速水 進治
(72)【発明者】
【氏名】田邊 潤壱
【テーマコード(参考)】
4J100
4J127
【Fターム(参考)】
4J100AK32P
4J100AK32Q
4J100AR10P
4J100AR11Q
4J100CA04
4J100CA31
4J100DA01
4J100DA04
4J100DA29
4J100FA03
4J100FA19
4J100FA28
4J100FA30
4J100GA06
4J100GC07
4J100GC26
4J100HA11
4J100HC34
4J100HE08
4J100HE14
4J100HE41
4J100JA37
4J100JA38
4J100JA39
4J100JA43
4J127AA01
4J127AA03
4J127AA04
4J127BB041
4J127BB081
4J127BB221
4J127BC031
4J127BC151
4J127BD031
4J127BE011
4J127BE241
4J127BE24Y
4J127BE281
4J127BE28Y
4J127BE391
4J127BG051
4J127BG05X
4J127BG05Y
4J127BG05Z
4J127BG161
4J127BG16Z
4J127BG171
4J127CB371
4J127CC161
4J127DA28
4J127EA13
4J127FA08
4J127FA16
(57)【要約】 (修正有)
【課題】感度に優れるとともにアルカリ溶解性に優れたポリマーを提供する。
【解決手段】式(IN)で表される構造単位、および(メタ)アクリロイル基を有する特定の構造単位を含むポリマー。
(式(IN)において、R
1~R
8は、それぞれ独立して、水素原子または炭素数1~30の有機基である。)
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(IN)で表される構造単位、および式(1)で表される構造単位を含むポリマー。
【化1】
(式(IN)において、R
1~R
8は、それぞれ独立して、水素原子または炭素数1~30の有機基である。)
【化2】
(式(1)中、R
pは、2以上の(メタ)アクリロイル基を有する基である。)
【請求項2】
式(2)で表される構造単位をさらに含む、請求項1に記載のポリマー。
【化3】
(式(2)中、R
sは、1つの(メタ)アクリロイル基を有する基である。)
【請求項3】
式(3)で表される構造単位をさらに含む、請求項1または2に記載のポリマー。
【化4】
【請求項4】
式(MA)で表される構造単位をさらに含む、請求項1乃至3のいずれかに記載のポリマー。
【化5】
【請求項5】
前記式(1)で表される構造単位におけるR
pが、式(1b)で表される基、式(1c)で表される基、および式(1d)で表される基から選択される少なくとも1つである、請求項1乃至4のいずれかに記載のポリマー。
【化6】
(式(1b)中、
kは2または3であり、
Rは水素原子またはメチル基であり、複数のRは同じでも異なっていてもよく、
X
1は単結合、炭素数1~6のアルキレン基または-Z-X-で表される基(Zは-O-または-OCO-であり、Xは炭素数1~6のアルキレン基である)であり、複数存在するX
1は同一であっても異なっていてもよく、
X
1'は単結合、炭素数1~6のアルキレン基または-X'-Z'-で表される基(X'は炭素数1~6のアルキレン基であり、Z'は-O-または-COO-である)であり、
X
2は炭素数1~12のk+1価の有機基である。)
【化7】
(式(1c)中、
k、R、X
1およびX
2は、それぞれ、式(1b)におけるR、k、X
1およびX
2と同義であり、複数のRは互いに同一であっても異なっていてもよく、複数のX
1は互いに同一であっても異なっていてもよく、
X
3は、炭素数1~6の2価の有機基であり、
X
4およびX
5は、それぞれ独立に、単結合または炭素数1~6の2価の有機基であり、
X
6は、炭素数1~6の2価の有機基である。)
【化8】
(式(1d)中、
nは、2~5の整数であり、
Rは水素原子またはメチル基であり、複数のRは同じでも異なっていてもよい。)
【請求項6】
前記式(2)で表される構造単位におけるR
sが、式(2a)で表される基である、請求項2に記載のポリマー。
【化9】
(式(2a)において、X
10は、2価の有機基であり、Rは、水素原子またはメチル基である。)
【請求項7】
酸価が、105mgOKH/g以上、150mgOKH/g以下であり、二重結合当量が、300g/mol以上、500g/mol以下である、請求項1乃至6のいずれかに記載のポリマー。
【請求項8】
請求項1乃至7のいずれかに記載のポリマーを含む、ポリマー溶液。
【請求項9】
多官能(メタ)アクリル化合物、単官能(メタ)アクリル化合物、およびチオール基とアルコキシ基とを有する化合物またはそのオリゴマーから選択される少なくとも1つをさらに含む、請求項8に記載のポリマー溶液。
【請求項10】
カラーフィルタまたはブラックマトリクスの形成に用いられる、請求項8または9に記載のポリマー溶液。
【請求項11】
請求項1乃至7のいずれかに記載のポリマーと、
光ラジカル重合開始剤と、を含む、
感光性樹脂組成物。
【請求項12】
請求項11に記載の感光性樹脂組成物より形成される、硬化物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリマー、当該ポリマーを含むポリマー溶液、当該ポリマー溶液を含む感光性樹脂組成物、および当該感光性樹脂組成物の硬化物に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶表示装置や固体撮像素子は、通常、カラーフィルタやブラックマトリクスを備えている。カラーフィルタやブラックマトリクスは、基板上に着色パターンや保護膜等の構造物が形成された構成となっている。これらの構造物のうち、着色パターンや保護膜の形成方法としては、感光性樹脂組成物を用いてフォトリソグラフィーにより形成する方法が主流となっている。感光性樹脂組成物に関しては、従来より種々の検討がなされており、例えば、特許文献1では、少なくとも側鎖に、酸性基を有する基および2種以上の互いに異なる重合性不飽和基を有するアルカリ可溶性樹脂、重合性化合物、ならびに、光重合開始剤を含む感光性樹脂組成物が記載されている。また、特許文献1の実施例には、アルカリ可溶性樹脂として、メタクリル酸/メタクリル酸アリル/グリシジル付加体を合成し、これを用いて感光性樹脂組成物を調製したことが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
カラーフィルタやブラックマトリクスを形成するための感光性樹脂組成物には、光により重合反応が起こって硬化する性質を備える樹脂が用いられる。カラーフィルタやブラックマトリクスは、感光性樹脂組成物を、露光、現像によりパターニングした後、これを硬化することにより作製される。感光性樹脂組成物において、「高感度化」は一般的な課題にも思われるが、表示装置や撮像装置の複雑化や普及などに伴い、一層高いレベルの高感度化が求められている。感光性樹脂組成物の感度が高いほど、露光に必要な時間は短くなり、生産性を向上させることができる。また、感光性樹脂組成物は、アルカリ性現像液によるフォトリソグラフィーにおいて優れた加工性を備えることが求められる。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、感光性樹脂組成物に用いられるポリマーを改良することで、感度が良好であるとともに、高いアルカリ溶解性を有し、よって現像性に優れた感光性樹脂組成物が得られることを見出し、本発明に至った。
【0006】
本発明によれば、式(IN)で表される構造単位、および式(1)で表される構造単位を含むポリマーが提供される。
【化1】
(式(IN)において、R
1~R
8は、それぞれ独立して、水素原子または炭素数1~30の有機基である。)
【化2】
(式(1)中、R
pは、2以上の(メタ)アクリロイル基を有する基である。)
【0007】
また本発明によれば、上記ポリマーを含む、ポリマー溶液が提供される。
【0008】
また本発明によれば、上記ポリマー溶液と、光ラジカル重合開始剤と、を含む感光性樹脂組成物が提供される。
【0009】
また本発明によれば、上記感光性樹脂組成物の硬化物が提供される。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、感度が良好であるとともに、高いアルカリ溶解性を有し、よって現像性に優れた感光性樹脂組成物に用いるための樹脂材料としての樹脂組成物が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】液晶表示装置および/または固体撮像素子の構造の一例を模式的に示す図(断面図)である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しつつ説明する。なおすべての図面において、同様な構成要素には同様の符号を付し、適宜説明を省略する。また、すべての図面はあくまで説明用のものである。図面中の各部材の形状や寸法比などは、必ずしも現実の物品と対応するものではない。本明細書中、数値範囲の説明における「a~b」との表記は、特に断らない限り、「a以上b以下」を意味する。例えば、「5~90質量%」とは「5質量%以上90質量%以下」を意味する。
【0013】
本明細書における基(原子団)の表記において、置換か無置換かを記していない表記は、置換基を有しないものと置換基を有するものの両方を包含するものである。例えば、「アルキル基」とは、置換基を有しないアルキル基(無置換アルキル基)のみならず、置換基を有するアルキル基(置換アルキル基)をも包含するものである。
【0014】
本明細書における「(メタ)アクリル」との表記は、アクリルとメタクリルの両方を包含する概念を表す。「(メタ)アクリレート」等の類似の表記についても同様である。
特に、本明細書における「(メタ)アクリロイル基」とは、-C(=O)-CH=CH2で表されるアクリロイル基と、-C(=O)-C(CH3)=CH2で表されるメタクリロイル基とを包含する概念を表す。
【0015】
[ポリマーP]
本実施形態のポリマー(本明細書中、「ポリマーP」と称する)は、式(IN)で表される構造単位、および式(1)で表される構造単位を含む。
【0016】
【0017】
式(IN)において、R1~R8は、それぞれ独立して、水素原子または炭素数1~30の有機基である。
【0018】
【0019】
式(1)において、Rpは、2つ以上の(メタ)アクリロイル基を含む基を表す。
【0020】
本実施形態のポリマーPは、一般式(IN)で表されるインデン由来の構造単位を含む。この構造単位(IN)は、化学的に堅牢である。そのため、これを構造単位として含むポリマーPは、加熱処理に供された際に重量減少が小さく、安定である。よって、ポリマーPを含む感光性樹脂組成物は、耐熱性が要求される液晶表示装置や固体撮像素子に用いるためのフィルムやフィルタを製造するために好適に用いることができる。
【0021】
ポリマーPを構成する一般式(IN)で表される構造単位において、R1~R8を構成し得る炭素数1~30の有機基としては、置換または無置換の、直鎖または分岐鎖の炭素数1~30のアルキルが挙げられ、より具体的には、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アルキリデン基、アリール基、アラルキル基、アルカリル基、シクロアルキル基、アルコキシ基、ヘテロ環基、カルボキシル基などが挙げられる。
【0022】
アルキル基としては、例えばメチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、ネオペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基などが挙げられる。
【0023】
アルケニル基としては、例えばアリル基、ペンテニル基、ビニル基などが挙げられる。
アルキニル基としては、例えばエチニル基などが挙げられる。
アルキリデン基としては、例えばメチリデン基、エチリデン基などが挙げられる。
アリール基としては、例えばトリル基、キシリル基、フェニル基、ナフチル基、アントラセニル基が挙げられる。
【0024】
アラルキル基としては、例えばベンジル基、フェネチル基などが挙げられる。
アルカリル基としては、例えばトリル基、キシリル基などが挙げられる。
シクロアルキル基としては、例えばアダマンチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロオクチル基などが挙げられる。
アルコキシ基としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、n-プロポキシ基、イソプロポキシ基、n-ブトキシ基、sec-ブトキシ基、イソブトキシ基、tert-ブトキシ基、n-ペンチルオキシ基、ネオペンチルオキシ基、n-ヘキシルオキシ基などが挙げられる。
ヘテロ環基としては、例えばエポキシ基、オキセタニル基などが挙げられる。
【0025】
一般式(IN)で表される構造単位における、R1~R8としては水素またはアルキル基が好ましく、水素がより好ましい。
なお、R1~R8の炭素数1~30の有機基中の水素原子は、任意の原子団により置換されていてもよい。例えば、フッ素原子、ヒドロキシル基、カルボキシル基などで置換されていてもよい。より具体的には、R1~R8の炭素数1~30の有機基として、フッ化アルキル基などを選択してもよい。
【0026】
ポリマーPの全構造単位中の、一般式(IN)で表される構造単位の割合は、好ましくは10~90モル%、より好ましくは30~70モル%、さらに好ましくは40~60モル%である。
【0027】
本実施形態のポリマーPは、一般式(1)で表される構造単位を含む。ポリマーPを構成し得る一般式(1)で表される構造単位において、Rpは、2個以上の(メタ)アクリロイル基を含む基であり、好ましくは(メタ)アクリロイル基を2~6個含む基であり、より好ましくは(メタ)アクリロイル基を3~5個含む基である。Rpが含む(メタ)アクリロイル基の数を最適にすることで、これを含むポリマーPの露光処理における感度をより高めることができる。また、ポリマーPの感度とアルカリ溶解性とをより高度に両立させやすくなる。さらに、ポリマーPの耐熱性を改善することができる。
【0028】
一般式(1)におけるRpは、一般式(1b)で表される基、一般式(1c)で表される基、または一般式(1d)で表される基であることが好ましく、これらから選択される少なくとも1種を含む。このような基であることで、上記の各種効果を得やすい傾向がある。
【0029】
【0030】
式(1b)中、
kは2または3であり、
Rは水素原子またはメチル基であり、複数のRは同じでも異なっていてもよく、
X1は単結合、炭素数1~6のアルキレン基または-Z-X-で表される基(Zは-O-または-OCO-であり、Xは炭素数1~6のアルキレン基である)であり、複数存在するX1は同一であっても異なっていてもよく、
X1'は単結合、炭素数1~6のアルキレン基または-X'-Z'-で表される基(X'は炭素数1~6のアルキレン基であり、Z'は-O-または-COO-である)であり、
X2は炭素数1~12のk+1価の有機基である。
Rは、感度の一層の向上(重合のしやすさ)などから、水素原子が好ましい。
kは、2でも3でもよいが、原料の入手容易性や感度の一層の向上の点からは、好ましくは3である。
【0031】
X1が炭素数1~6のアルキレン基である場合、アルキレン基は直鎖状であっても分枝状であってもよい。
X1が炭素数1~6のアルキレン基である場合、X1は好ましくは直鎖状アルキレン基であり、より好ましくは炭素数1~3の直鎖状アルキレン基であり、さらに好ましくは-CH2-(メチレン基)である。
【0032】
X1が-Z-X-で表される基(Zは-O-または-OCO-であり、Xは炭素数1~6のアルキレン基である)場合の、Xの炭素数1~6のアルキレン基は、直鎖状であっても分枝状であってもよい。
Xの炭素数1~6のアルキレン基は、好ましくは直鎖状アルキレン基であり、より好ましくは炭素数1~3の直鎖状アルキレン基であり、さらに好ましくは-CH2-CH2-(エチレン基)または-CH2-CH(CH3)-である。
【0033】
X1'が炭素数1~6のアルキレン基である場合、その具体的態様についてはX1と同様である。
X1'が-X'-Z'-で表される基である場合、X'の具体的態様については上記Xと同様である。
【0034】
X2の炭素数1~12のk+1価の有機基としては、任意の有機化合物からk+1個の水素原子を除いた任意の基を挙げることができる。ここでの「任意の有機化合物」としては、例えば分子量300以下、好ましくは200以下、より好ましくは100以下の有機化合物である。
X2は、例えば、炭素数1~12(好ましくは炭素数1~6)の直鎖状または分枝状炭化水素からk+1個の水素原子を除いた基である。より好ましくは、炭素数1~3の直鎖状炭化水素からk+1個の水素原子を除いた基である。なお、ここでの炭化水素は、酸素原子(例えばエーテル結合やヒドロキシ基など)を含んでもよい。また、炭化水素は飽和炭化水素であることが好ましい。
別の態様として、X2は、環状構造を含む基であってもよい。環状構造を含む基としては、脂環構造を含む基、複素環構造(例えば、イソシアヌル酸構造)を含む基などを挙げることができる。
【0035】
【0036】
式(1c)中、
k、R、X1およびX2は、それぞれ、式(1b)におけるR、k、X1およびX2と同義であり、複数のRは互いに同一であっても異なっていてもよく、複数のX1は互いに同一であっても異なっていてもよく、
X3は、炭素数1~6の2価の有機基であり、
X4およびX5は、それぞれ独立に、単結合または炭素数1~6の2価の有機基であり、
X6は、炭素数1~6の2価の有機基である。
【0037】
R、k、X1およびX2の具体的態様、好ましい態様などについては、一般式(1b)で説明したものと同様である。
X3およびX6の炭素数1~6の2価の有機基としては、例えば、炭素数1~6の直鎖状または分枝状炭化水素から2個の水素原子を除いた基を挙げることができる。なお、ここでの炭化水素は、酸素原子(例えばエーテル結合やヒドロキシ基など)を含んでもよい。また、炭化水素は飽和炭化水素であることが好ましい。
X4およびX5の炭素数1~6の2価の有機基としては、直鎖状または分枝状アルキレン基を挙げることができる。直鎖状または分枝状アルキレン基の炭素数は好ましくは1~3である。
【0038】
【0039】
式(1d)中、nは、2~5の整数であり、好ましくは、2または3である。
Rの具体的態様、好ましい態様などについては、一般式(1b)で説明したものと同様である。
【0040】
ポリマーPの全構造単位中の、一般式(1)で表される構造単位の割合は、好ましくは3~40モル%、より好ましくは3~30モル%である。
【0041】
一実施形態において、ポリマーPは、上記構造単位に加え、一般式(2)で表される構造単位を含んでもよい。一般式(2)で表される構造単位を含むことにより、ポリマーPは、高い感度を有するとともに、高いアルカリ溶解性を有し得る。その結果、ポリマーPを含む感光性樹脂組成物は、アルカリ水溶液を現像液として用いるフォトリソグラフィー処理に供された場合に、優れた現像性を有し得る。
【0042】
【0043】
式(2)において、Rsは、1つの(メタ)アクリロイル基を有する基である。
【0044】
RSは、例えば、以下式(2a)で表される基である。
【0045】
【0046】
式(2a)において、X10は2価の有機基であり、Rは水素原子またはメチル基である。
X10の総炭素数は、好ましくは1~30、より好ましくは1~20である、さらに好ましくは1~10である。
式(2a)において、X10は2価の有機基であり、Rは水素原子またはメチル基である。
X10の総炭素数は、好ましくは1~30、より好ましくは1~20である、さらに好ましくは1~10である。
X10の2価の有機基としては、例えばアルキレン基が好ましい。このアルキレン基中の一部の-CH2-はエーテル基(-O-)となっていてもよい。アルキレン基は、直鎖状でも分枝状でもよいが、直鎖状であることがより好ましい。
【0047】
X10の2価の有機基としてより好ましくは、総炭素数3~6の直鎖状アルキレン基である。X10の炭素数(X10の鎖長)を適切に選択することで、式(2)で表される構造単位が架橋反応に一層関与しやすくなり、感度を高めることができる。
【0048】
X10の2価の有機基(例えばアルキレン基)は、任意の置換基で置換されていてもよい。置換基としては、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基などを挙げることができる。
また、X10の2価の有機基は、アルキレン基以外の任意の基であってよい。例えば、アルキレン基、シクロアルキレン基、アリーレン基、エーテル基、カルボニル基、カルボキシ基等から選ばれる1種又は2種以上の基を連結して構成される2価の基であってもよい。
【0049】
ポリマーPが一般式(2)で表される構造単位を含む場合、ポリマーPの全構造単位中の、一般式(2)で表される構造単位の割合は、好ましくは5~40モル%、より好ましくは10~30モル%である。
【0050】
また、ポリマーPが、一般式(1)で表される構造単位と一般式(2)で表される構造単位との両方を含む場合、ポリマーP中の、一般式(1)で表される構造単位と一般式(2)で表される構造単位との合計の含有量は、ポリマーPを構成する全構造単位を基準として、好ましくは5~60モル%、より好ましくは10~50モル%、さらに好ましくは10~40モル%ある。
【0051】
一実施形態において、ポリマーPは、上記構造単位に加え、式(3)で表される構造単位を含んでもよい。式(3)で表される構造単位を含むことにより、ポリマーPは、高いアルカリ溶解性を有する。その結果、ポリマーPを含む感光性樹脂組成物は、アルカリ水溶液を現像液として用いるフォトリソグラフィー処理に供された場合に、優れた現像性を有する。
【0052】
【0053】
ポリマーPが一般式(3)で表される構造単位を含む場合、ポリマーPの全構造単位中の、一般式(3)で表される構造単位の割合は、好ましくは1~15モル%、より好ましくは2~10モル%である。
【0054】
一実施形態において、ポリマーPは、上記構造単位に加え、式(MA)で表される構造単位を含んでもよい。式(MA)で表される構造単位は、アルカリ現像液により開環して、2つのカルボキシル基を生じる。そのため、当該構造単位を含むポリマーPは、優れた現像性を備える。ポリマーPが、式(MA)で表される構造単位を含む場合、ポリマーPの全構造単位中の、式(MA)で表される構造単位の割合は、好ましくは、1~10モル%、より好ましくは、2~7モル%である。
【0055】
【0056】
なお、ポリマーP中に含まれる各構造単位の含有量(比率)は、ポリマーを合成する際に用いる原料の仕込み量(モル量)、合成後に残存する原料の量、各種スペクトル(例えば、IRスペクトル、1H-NMRスペクトル、13C-NMRスペクトル)のピークの存在、およびピーク面積などから推定/算出することができる。
【0057】
ポリマーPの重量平均分子量Mwは、例えば、1000~80000であり、好ましくは2000~70000、より好ましくは3000~60000、さらに好ましくは3000~55000である。重量平均分子量を適切に調整することで、感度やアルカリ現像液に対する溶解性を調整することができる。
【0058】
また、ポリマーPの分散度(重量平均分子量Mw/数平均分子量Mn)は、好ましくは1.0~10.0、より好ましくは1.0~8.0、さらに好ましくは1.0~7.0である。分散度を適切に調整することで、ポリマーPの物性を均質にすることができ、好ましい。なお、これらの値は、ポリスチレンを標準物質として用いたゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)測定により求めることができる。
【0059】
ポリマーPのガラス転移温度は、好ましくは150~250℃、より好ましくは170~230℃である。ポリマーPは、主として式(IN)で表される構造単位を含むことにより、比較的高いガラス転移温度を有する。このことは、液晶表示装置や固体撮像素子の製造に当たって、基板上に形成されたパターンが安定に存在できるという点で好ましい。なお、ガラス転移温度は、例えば、示差熱分析(differential thermal analysis:DTA)により求めることができる。
【0060】
ポリマーPの酸価は、例えば、105mgKOH/g以上、150mgKOH/g以下であり、好ましくは110mgKOH/g以上、150mgKOH/g以下であり、より好ましくは、120mgKOH/g以上、150mgKOH/g以下である。また、ポリマーPの二重結合当量は、例えば、300g/mol以上、500g/mol以下であり、好ましくは、320g/mol以上、500g/mol以下であり、より好ましくは350g/mol以上、500g/mol以下である。
ポリマーPの酸価が100mgKOH/g以上であることで、良好な現像性を得ることができる。また、二重結合当量が500g/mol以下であることで、ポリマーPを含む感光性樹脂組成物の感度を高くすることができる。
【0061】
なお、ポリマーPの酸価が上記上限値より高い場合、アルカリ現像液での現像の際に、露光部分が溶解しやすくなり光硬化に必要な露光量が多くなってしまったり、パターン形状が不十分になったりする懸念がある。よって、本実施形態では、酸価の上限値を150mgKOH/gとしている。
また、ポリマーPの二重結合当量が上記下限値より低い(すなわち、ポリマー中の二重結合の密度が大きすぎると)、アルカリ現像液での現像時に、未露光部や低露光部が溶解しにくくなる傾向があり、現像時に残膜が発生しがちとなる。また、二重結合当量が小さすぎると、架橋により分子量が過度に増大し、溶解性の過度な低下などが懸念される。よって、本実施形態では、二重結合当量の下限値を300g/molとしている。
【0062】
ポリマーPの酸価および/または二重結合当量を調整することで、より一層高いレベルで感度と現像性を両立させることができる。
【0063】
ポリマーPの酸価および二重結合当量は、スペクトル測定などにより求めることができる。例えば、以下のような手順で求めることができる。より具体的には実施例を参照されたい。
(1)ポリマーの1H-NMRチャートから、カルボキシ基の水素原子や、重合性炭素-炭素二重結合近傍の水素原子に対応するピークの面積(積分値)を求める。
(2)(1)で求めた面積を、標準物質に由来するピークの面積から、カルボキシ基の量および炭素-炭素二重結合の量を求める。
(3)(2)で求めたカルボキシ基の量を、酸価(mgKOH/g)に換算する。また、(2)で求めた重合性炭素-炭素二重結合の量を、二重結合当量(g/mol)に換算する。
【0064】
ポリマーPの酸価および二重結合当量は、ポリマーPに導入される構造単位の比率、特に式(1)および式(2)で表される構造単位に含まれる(メタ)アクリロイル基が有する重合性炭素-炭素二重結合の数を適切に設計することで、所望の値に調整することができる。
【0065】
[ポリマーPの製造方法]
ここで、上述のポリマーPの製造方法について説明する。
ポリマーPは、任意の方法により製造(合成)することができる。ポリマーPは、例えば、
工程(I):式(IN)で表される構造単位と、式(MA)で表される構造単位とを含む原料ポリマーを準備する工程、および
工程(II):工程(I)で得られた原料ポリマーと、ヒドロキシル基および2つ以上の(メタ)アクリロイル基を有する化合物(以下、「多官能(メタ)アクリルモノマー」と称する)、および/またはヒドロキシル基および1つの(メタ)アクリロイル基を有する化合物(以下、「単官能(メタ)アクリルモノマー」と称する)とを、塩基性触媒の存在下で反応させて、式(IN)で表される構造単位、ならびに式(1)で表される構造単位および/または式(2)で表される構造単位を含み、場合によりさらに式(MA)で表される構造単位を含むポリマーPを調製する工程、により製造できる。
【0066】
工程(II)において、多官能(メタ)アクリルモノマーと単官能(メタ)アクリルモノマーの両方が用いられる場合、まず多官能(メタ)アクリルモノマーを原料ポリマーと反応させ、得られた反応混合物に、単官能(メタ)アクリルモノマーを反応させることが好ましい。
【0067】
ポリマーPが、式(3)で表される構造単位をさらに含む場合、工程(II)において、式(IN)で表される構造単位、式(1)で表される構造単位および/または式(2)で表される構造単位、および式(MA)で表される構造単位を含むポリマーを調製し、その後、当該ポリマーを、塩基触媒の存在下、水で処理する工程が実施される(工程(III))。
【0068】
(工程(I))
工程(I)における、式(IN)で表される構造単位と、式(MA)で表される構造単位とを含む原料ポリマーを準備する工程は、式(INm)で表されるモノマーと、無水マレイン酸とを重合(付加重合)する工程を含む。なお、式(INm)のR1~R8の定義は、式(IN)のものと同様である。好ましい態様についても同様である。
【0069】
【0070】
重合の方法については限定されないが、ラジカル重合開始剤を用いたラジカル重合が好ましい。重合開始剤としては、例えば、アゾ化合物、有機過酸化物などを使用できる。
アゾ化合物として具体的には、アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)、ジメチル2,2'-アゾビス(2-メチルプロピオネート)、1,1'-アゾビス(シクロヘキサンカルボニトリル)(ABCN)などを挙げることができる。
有機過酸化物としては、例えば、過酸化水素、ジ-tert-ブチルパーオキサイド(DTBP)、過酸化ベンゾイル(ベンゾイルパーオキサイド,BPO)および、メチルエチルケトンパーオキサイド(MEKP)などを挙げることができる。
重合開始剤については、1種のみを用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0071】
重合反応に用いる溶媒としては、例えば、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、トルエン、メチルエチルケトン等の有機溶剤を用いることができる。重合溶媒は単独溶剤でも混合溶剤でもよい。
【0072】
原料ポリマーの合成は、式(INm)で表されるモノマー、無水マレイン酸および重合開始剤を溶媒に溶解させて反応容器に仕込み、その後、加熱して、2官能以上の前記チオール基含有化合物を滴下しながら、付加重合を進行させることにより実施される。加熱温度は例えば50~80℃であり、加熱時間は例えば5~20時間である。
反応容器に仕込む際の、式(INm)で表されるモノマーと、無水マレイン酸とのモル比は、0.5:1~1:0.5であることが好ましい。分子構造制御の観点から、モル比は1:1であることが好ましい。このような工程により、「原料ポリマー」を得ることができる。
なお、原料ポリマーは、ランダム共重合体、交互共重合体、ブロック共重合体、周期共重合体などのいずれであってもよい。典型的にはランダム共重合体または交互共重合体である。なお、一般に、無水マレイン酸は交互共重合性が強いモノマーとして知られている。
【0073】
なお、原料ポリマーの合成後に、未反応モノマー、オリゴマー、残存する重合開始剤などの低分子量成分を除去する工程を行ってもよい。
具体的には、合成された原料ポリマーと低分子量成分とが含まれた有機相を濃縮し、その後、テトラヒドロフラン(THF)などの有機溶媒と混合して溶液を得る。そして、この溶液を、メタノールなどの貧溶媒と混合し、モノマーを沈殿させる。この沈殿物を濾取して乾燥させることで、原料ポリマーの純度を上げることができる。
【0074】
(工程(II))
工程(I)で得られた原料ポリマーと、多官能(メタ)アクリルモノマーおよび/または単官能(メタ)アクリルモノマーとを、塩基性触媒の存在下で反応させることで、原料ポリマーに含まれる式(MA)で表される構造単位の一部が開環し、式(1)で表される構造単位および/または式(2)で表される構造単位が形成されて、式(IN)で表される構造単位、ならびに式(1)で表される構造単位および/または式(2)で表される構造単位を含み、場合により式(MA)で表される構造単位を含むポリマーPが得られる。
【0075】
より具体的には、まず、原料ポリマーを適当な有機溶剤に溶解させた溶液を準備する。有機溶媒としては、メチルエチルケトン(MEK)、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)、ジメチルアセトアミド(DMAc)、N-メチルピロリドン(NMP)、テトラヒドロフラン(THF)などの単独溶剤または混合溶剤を用いることができるが、これらのみには限定されず、有機化合物や高分子の合成で用いられる種々の有機溶剤を用いることができる。
【0076】
次に、上記の溶液に、多官能(メタ)アクリルモノマーを加える。さらに、塩基性触媒を加える。そして溶液を適切に混合して均一な溶液として、少なくとも式(IN)の構造単位および式(1)の構造単位を含むポリマーを得る(工程(II-i))。
【0077】
ここで用いることができる多官能(メタ)アクリル化合物としては、例えば式(1b-m)で表される化合物、式(1c-m)で表される化合物、および式(1d-m)で表される化合物が挙げられる。式(1b-m)におけるk、R、X1、X1'およびX2の定義および具体的態様は、上述の式(1b)におけるものと同様である。また式(1c-m)におけるk、R、X1、X2、X3、X4、X5およびX6の定義および具体的態様は、上述の式(1c)におけるものと同様である。式(1d-m)におけるnおよびRは、上記の式(1d)におけるものと同様である。
【0078】
【0079】
【0080】
【0081】
次いで、工程(II-i)で得られたポリマーに、単官能(メタ)アクリルモノマーを、塩基性触媒の存在下で反応させることで、少なくとも式(IN)の構造単位、式(1)の構造単位、および式(2)の構造単位を含むポリマーを得ることができる(工程(II-ii)。
【0082】
用いることができる単官能(メタ)アクリル化合物としては、例えば以下一般式(2a-m)で表される化合物が挙げられる。一般式(2a-m)において、X10およびRの定義については一般式(2a)におけるものと同様である。
【0083】
【0084】
一般式(2a-m)で表される化合物の具体例としては、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、1,4-シクロヘキサンジメタノールモノ(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシ-3-フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、2-(メタ)アクリロイロキシエチル-2-ヒドロキシエチル-フタル酸などを挙げることができる。
【0085】
工程(II-i)のみを実施してもよいが、工程(ii-i)と工程(II-i)との両方を実施することが好ましい。工程(II-i)、工程(II-ii)の両方を実施する場合には、工程(II-i)に続いて工程(II-ii)を実施することが好ましい。
【0086】
(工程(III))
工程(III)を実施する場合、工程(II)で得られたポリマーを、塩基性触媒の存在下、水で処理工程が用いられる。工程(III)により、工程(II)で得られたポリマーに含まれる式(MA)で表される構造単位が開環し、式(3)で表される構造単位が形成されて、式(IN)で表される構造単位、式(1)で表される構造単位および/または式(2)で表される構造単位、ならびに式(3)で表される構造単位を含むポリマーPを製造することができる。式(MA)で表される構造単位の一部が開環し、式(MA)の構造単位の一部が開環せずに残る場合には、ポリマーPは、式(IN)、式(1)および/または式(2)、ならびに式(3)の構造単位に加え、式(MA)で表される構造単位を含む。
【0087】
工程(III)で使用される塩基性触媒としては、トリエチルアミン、ピリジン、ジメチルアミノピリジンなどのアミン化合物または含窒素複素環化合物が挙げられる。
【0088】
工程(III)では、工程(II)で得られたポリマーを含む反応系に、水を添加し、得られた反応溶液を、好ましくは60~80℃で、0.25~6時間程度加熱することで、このポリマーに含まれる式(MA)の構造単位が開環して、式(3)で表される構造単位が生成する。塩基性触媒は、工程(II)で得られた反応系に残存している触媒をそのまま使用することができる。そのため、工程(III)は、工程(II)で得られた反応混合物に何ら後処理を行うことなく、インサイチュで、この反応混合物に水を追添することにより実施することが好ましい。
【0089】
以上の工程により本実施形態のポリマーPを得ることができるが、本発明の効果の観点から、所望のポリマー以外の不要な成分の除去などのため、更に以下の工程を適宜行うこともできる。
【0090】
まず、上記で得られたポリマーPを含む反応生成物を、有機溶剤で希釈し、さらに酸(例えば、ギ酸など)を加えた反応溶液を、分液漏斗で少なくとも3分間激しく攪拌する。これを30分以上静止して、有機相と水相に分け、水相を除去する。このようにしてポリマーPの有機溶液を得る。得られたポリマーPを含む有機溶液を再沈殿法、もしくは液液抽出法を用いて精製する。再沈殿法では得られたポリマーPの有機溶液を、過剰量のトルエン、もしくは水に加えてポリマーを再沈殿させる。また、再沈殿により得られたポリマー粉末をさらに数回トルエン、もしくは水で洗浄する。さらに、ギ酸や塩基性触媒の除去のため、得られたポリマー粉末を、イオン交換水で洗浄する操作を数回(1~3回程度)繰り返す。イオン交換水で洗浄後のポリマー粉末を、例えば30~60℃で16時間以上乾燥させることで、高純度のポリマーを得ることができる。
【0091】
液液抽出法では得られたポリマーPの有機溶液に水を加え、分液漏斗で少なくとも3分間激しく攪拌する。これを30分以上静止して、有機相と水相に分け、水相を除去する。さらに水相除去後のポリマーの有機溶液に水を加え、分液漏斗で少なくとも3分間激しく攪拌する。これを30分以上静止して、有機相と水相に分け、水相を除去する。このようにしてポリマーの有機溶液を得る。必要に応じて、水添加と水相除去の工程をさらに行っても良い。
得られたポリマーPの有機溶液をロータリーエバポレーターにより減圧下で加熱することで、濃縮した後、最終溶剤(PGMEA等)を加え希釈する操作を繰り返すことで、最終溶剤に溶解したポリマーP溶液を得ることができる。
【0092】
また、ポリマー溶液はポリマーPを合成する際に用いた多官能(メタ)アクリル化合物および/または単官能(メタ)アクリル化合物を含んでいてもよい。ポリマー溶液がこれらの(メタ)アクリル化合物を含む場合、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)チャートにおける多官能(メタ)アクリル化合物に由来するピーク面積が、ポリマーPのピーク面積に対し、5~50%となる量、特に10~35%となる量であることが好ましく、単官能(メタ)アクリル化合物に由来するピーク面積が、ポリマーPのピーク面積に対し、5~50%となる量、特に10~35%となる量であることが好ましい。これにより、このポリマー溶液を含む感光性樹脂組成物は、良好なアルカリ可溶性を有するとともに、フォトリソグラフィーにおける良好な感度を有する。
【0093】
[ポリマー溶液]
本実施形態のポリマー溶液は、上述のポリマーPを含む。
本実施形態のポリマー溶液は、ポリマー(A)とともに、多官能(メタ)アクリル化合物、単官能(メタ)アクリル化合物、およびチオール基とアルコキシ基とを有する化合物またはそのオリゴマーから選択される少なくとも1つを含んでもよい。
【0094】
(多官能(メタ)アクリル化合物)
本実施形態のポリマー溶液に含まれ得る多官能(メタ)アクリル化合物、または単官能(メタ)アクリル化合物は、ポリマーPの製造において使用された(メタ)アクリル化合物の未反応物であってもよいし、別途添加されたものであってもよい。
【0095】
ポリマー溶液に配合することができる多官能(メタ)アクリル化合物としては、例えば、以下の一般式(1b-p)で表される化合物、一般式(1c-p)で表される化合物、および一般式(1d-p)で表される化合物が挙げられるが、これらに限定されない。
【0096】
【0097】
【0098】
【0099】
一般式(1b-p)におけるk、R、X1、X1'およびX2の定義および具体的態様は、上述の一般式(1b)におけるものと同様である。また一般式(1c-p)におけるk、R、X1、X2、X3、X4、X5およびX6の定義および具体的態様は、上述の一般式(1c)におけるものと同様である。
【0100】
一般式(1b-p)、一般式(1c-p)および一般式(1d-p)におけるYは、水素原子または(メタ)アクリロイル基、あるいはそれらの組み合せである。
【0101】
一般式(1b-p)、一般式(1c-p)および一般式(1d-p)においてYが水素原子である化合物は、未反応モノマー(すなわち、一般式(1b-p)、一般式(1c-p)および一般式(1d-p)で表される化合物)であってもよく、別途添加することもできる。
一般式(1d-p)におけるnは、2以上の整数であり、好ましくは、2~5の整数であり、より好ましくは2~3の整数である。
【0102】
本実施形態のポリマー溶液に、ポリマーPの製造において使用された多官能(メタ)アクリル化合物の未反応物とは別に多官能(メタ)アクリル化合物が配合される場合、その配合量は、当該ポリマー溶液のゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)チャートにおける多官能(メタ)アクリル化合物に由来するピーク面積が、ポリマーPのピーク面積に対し、好ましくは10%以下、より好ましくは5%以下、さらに好ましくは2%以下となる量で配合することができる。
【0103】
(単官能(メタ)アクリル化合物)
本実施形態のポリマー溶液に配合される単官能(メタ)アクリル化合物としては、以下の式(2a-m)で表される化合物が挙げられる。式(2a-m)において、X10およびRの定義については式(2a)におけるものと同様である。
【0104】
【0105】
本実施形態のポリマー溶液に、ポリマーPの製造において使用された単官能(メタ)アクリル化合物の未反応物とは別に単官能(メタ)アクリル化合物が配合される場合、その配合量は、当該ポリマー溶液のゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)チャートにおける単官能(メタ)アクリル化合物に由来するピーク面積が、ポリマーPのピーク面積に対し、好ましくは10%以下、より好ましくは5%以下、さらに好ましくは2%以下となる量で配合することができる。
【0106】
(チオール基とアルコキシ基とを有する化合物またはそのオリゴマー(化合物(B)))
本実施形態のポリマー溶液に配合され得る、チオール基とアルコキシ基とを有する化合物またはそのオリゴマー(本明細書中、「化合物(B)」と称する)は、チオール基およびアルコキシ基を有していれば、本発明の効果を奏する範囲で公知の化合物を用いることができる。
【0107】
本実施形態のポリマー溶液は、化合物(B)またはそのオリゴマーを含むことにより、基板等への密着性に優れる樹脂硬化物を提供することができる。基板としては、特に限定されないが、後述するように、例えば、ガラス基板、シリコンウエハ、セラミック基板、アルミ基板、SiCウエハー、GaNウエハー、銅張積層板などが挙げられる。
【0108】
本実施形態において、化合物(B)に含まれるアルコキシ基は、本発明の効果の観点から、炭素数1~3のアルコキシ基であることが好ましく、O、N、S、PおよびSiから選択される1以上の原子を含んでいてもよい有機鎖に、チオール基およびアルコキシ基が結合した構造を備える、ことも好ましい。
具体的には、化合物(B)は、下記一般式(a)で表される化合物を含むことが好ましい。
【0109】
【0110】
一般式(a)中、Rは、それぞれ独立に、炭素数1~3のアルコキシ基または炭素数1~3のアルキル基を示し、少なくとも2つのRは炭素数1~3のアルコキシ基である。
Lは、O、N、S、PおよびSiから選択される1以上の原子を含んでいてもよい、m+n価の有機鎖を示す。
【0111】
本実施形態において、Lのm+n価の有機鎖としては、炭素数1~10の直鎖または分岐のアルキレン基(m+n:2)、炭素数1~20の直鎖または分岐のアルカンから誘導されるm+n価の基、置換または無置換のシロキサンから誘導されるm+n価の基を挙げることができる。
【0112】
Xは単結合、またはカルボニル基、(チオ)エステル基または(チオ)アミド基を含んでいてもよい2価の有機基を示す。
本実施形態において、Xとしては、単結合、または炭素数1~10のアルキレンエステル基が好ましい。
Qは単結合、またはカルボニル基または(チオ)エステル基または(チオ)アミド基を含んでいてもよい2価の有機基を示す。
本実施形態において、Qとしては、単結合、または炭素数1~10のアルキレンエステル基が好ましい。
m:n(モル比)は1:1~1:8であり、m+nは2~20である。
当該化合物の重量平均分子量は100~2000である。
【0113】
化合物(B)としては、3-メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン(KBM-802、信越シリコーン社製)、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン(KBM-803、信越シリコーン社製)、(3-メルカプトプロピル)トリエトキシシラン、シロキサン鎖含有多官能型シランカップリング剤(KR-519、信越シリコーン社製)、下記構成単位を有する有機鎖含有多官能型シランカップリング剤等を挙げることができる。
【0114】
【0115】
上記一般式中、a:b(モル比)は2:1~4:1である。重量平均分子量は1000~1500である。*は結合手である。当該化合物としては、X-12-1154(信越シリコーン社製)等を挙げることができる。
また化合物(B)またはそのオリゴマーは、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を混合して用いてもよい。
【0116】
本実施形態のポリマー溶液において、化合物(B)は、本発明の効果の観点から、上記ポリマーPに対して、0.25~20質量%、好ましくは、1.0~15質量%であり、より好ましくは、2.0~12質量%の量で配合される。
【0117】
本実施形態のポリマー溶液は、典型的には、有機溶剤を含み、液体またはワニスの形態で提供される。有機溶剤としては、ケトン系溶剤、エステル系溶剤、エーテル系溶剤、アルコール系溶剤、ラクトン系溶剤、カーボネート系溶剤などのうち1種または2種以上を用いることができる。
【0118】
有機溶剤の具体例としては、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテル、γ-ブチルラクトン、N-メチルピロリドンおよびシクロヘキサノン等が挙げられる。これらは1種単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
有機溶剤の使用量は特に限定されないが、不揮発成分の濃度が例えば10~70質量%、好ましくは15~60質量%となるような量で使用される。
【0119】
[ポリマー溶液の製造]
本実施形態のポリマー溶液は、上記成分を、公知の方法で混合することにより作製することができる。本実施形態のポリマー溶液は、以下で説明する感光性樹脂組成物の樹脂材料として用いられる。
【0120】
[感光性樹脂組成物]
本実施形態の感光性樹脂組成物は、上述のポリマーPと、光ラジカル重合開始剤とを含む。すなわち、本実施形態の感光性樹脂組成物は、上述のポリマー溶液と、光ラジカル重合開始剤とを含む。以下に各成分について説明する。
【0121】
(光ラジカル重合開始剤)
本実施形態の感光性樹脂組成物に用いられる光ラジカル重合開始剤としては、公知の化合物を用いることができ、例えば、2,2-ジエトキシアセトフェノン、2,2-ジメトキシー2-フェニルアセトフェノン、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパン-1-オン、1-〔4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル〕-2-ヒドロキシ-2-メチル-1-プロパン-1-オン、2-ヒドロキシ-1-{4-〔4-(2-ヒドロキシ-2-メチルプロピオニル)ベンジル〕フェニル}-2-メチルプロパン-1-オン、2-メチル-1-(4-メチルチオフェニル)-2-モルフォリノプロパン-1-オン、2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルフォリノフェニル)-ブタノン-1、2-(ジメチルアミノ)-2-〔(4-メチルフェニル)メチル〕-1-〔4-(4-モルホリニル)フェニル〕-1-ブタノン等のアルキルフェノン系化合物;ベンゾフェノン、4,4'-ビス(ジメチルアミノ)ベンゾフェノン、2-カルボキシベンゾフェノン等のベンゾフェノン系化合物;ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル等のベンゾイン系化合物;チオキサントン、2-エチルチオキサントン、2-イソプロピルチオキサントン、2-クロロチオキサントン、2,4-ジメチルチオキサントン、2,4-ジエチルチオキサントン等のチオキサントン系化合物;2-(4-メトキシフェニル)-4,6-ビス(トリクロロメチル)-s-トリアジン、2-(4-メトキシナフチル)-4,6-ビス(トリクロロメチル)-s-トリアジン、2-(4-エトキシナフチル)-4,6-ビス(トリクロロメチル)-s-トリアジン、2-(4-エトキシカルボニルナフチル)-4,6-ビス(トリクロロメチル)-s-トリアジン等のハロメチル化トリアジン系化合物;2-トリクロロメチル-5-(2'-ベンゾフリル)-1,3,4-オキサジアゾール、2-トリクロロメチル-5-〔β-(2'-ベンゾフリル)ビニル〕-1,3,4-オキサジアゾール、4-オキサジアゾール、2-トリクロロメチル-5-フリル-1,3,4-オキサジアゾール等のハロメチル化オキサジアゾール系化合物;2,2'-ビス(2-クロロフェニル)-4,4',5,5'-テトラフェニル-1,2'-ビイミダゾール、2,2'-ビス(2,4-ジクロロフェニル)-4,4',5,5'-テトラフェニル-1,2'-ビイミダゾール、2,2'-ビス(2,4,6-トリクロロフェニル)-4,4',5,5'-テトラフェニル-1,2'-ビイミダゾール等のビイミダゾール系化合物;1,2-オクタンジオン,1-〔4-(フェニルチオ)-2-(O-ベンゾイルオキシム)〕、エタノン,1-〔9-エチル-6-(2-メチルベンゾイル)-9H-カルバゾール-3-イル〕-,1-(O-アセチルオキシム)等のオキシムエステル系化合物;ビス(η5-2,4-シクロペンタジエン-1-イル)-ビス(2,6-ジフルオロ-3-(1H-ピロール-1-イル)-フェニル)チタニウム等のチタノセン系化合物;p-ジメチルアミノ安息香酸、p-ジエチルアミノ安息香酸等の安息香酸エステル系化合物;9-フェニルアクリジン等のアクリジン系化合物;等が挙げられる。光ラジカル重合開始剤は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
光ラジカル重合開始剤は、ポリマー100質量部に対し、例えば、1~20質量部の量で、好ましくは、3~10質量部の量で用いられる。
【0122】
本実施形態の感光性樹脂組成物は、上記成分を含むことにより、フォトリソグラフィー処理において高い感度を有するとともに、すぐれたアルカリ溶解性を有する。そのため、感光性樹脂組成物は、フォトリソグラフィー法において優れた現像性、優れた加工性を備える。
【0123】
(着色剤)
一態様として、感光性樹脂組成物は着色剤を含んでもよい。着色剤を含むことで、液晶表示装置や固体撮像素子のカラーフィルタの形成材料として好ましく用いることができる。着色剤としては、種々の顔料または染料を用いることができる。
顔料としては有機顔料や無機顔料を用いることができる。
【0124】
有機顔料としては、アゾ系顔料、フタロシアニン系顔料、キナクリドン系顔料、ペリレン系顔料、ペリノン系顔料、イソインドリノン系顔料、イソインドリン系顔料、ジオキサジン系顔料、チオインジゴ系顔料、アントラキノン系顔料、キノフタロン系顔料、金属錯体系顔料、ジケトピロロピロール系顔料、キサンテン系顔料、ピロメテン系顔料、染料レーキ系顔料等を使用することができる。
【0125】
無機顔料としては、白色・体質顔料(酸化チタン、酸化亜鉛、硫化亜鉛、クレー、タルク、硫酸バリウム、炭酸カルシウム等)、有彩顔料(黄鉛、カドミニウム系、クロムバーミリオン、ニッケルチタン、クロムチタン、黄色酸化鉄、ベンガラ、ジンククロメート、鉛丹、群青、紺青、コバルトブルー、クロムグリーン、酸化クロム、バナジン酸ビスマス等)、光輝材顔料(パール顔料、アルミ顔料、ブロンズ顔料等)、蛍光顔料(硫化亜鉛、硫化ストロンチウム、アルミン酸ストロンチウム等)を使用することができる。
【0126】
染料としては、例えば、特開2003-270428号公報や特開平9-171108号公報、特開2008-50599号公報等に記載されている公知の染料を使用することができる。
感光性樹脂組成物が着色剤を含む場合、感光性樹脂組成物は着色剤を1種のみ含んでもよいし、2種以上含んでもよい。
【0127】
着色剤(特に顔料)は、目的や用途に応じて、適切な平均粒子径を有するものを使用できるが、特にカラーフィルタのような透明性が要求される場合は、0.1μm以下の小さい平均粒子径が好ましく、その他、塗料などの隠蔽性が必要とされる場合は、0.5μm以上の大きい平均粒子径が好ましい。
【0128】
着色剤は、目的や用途に応じて、ロジン処理、界面活性剤処理、樹脂系分散剤処理、顔料誘導体処理、酸化皮膜処理、シリカコーティング、ワックスコーティングなどの表面処理がなされていてもよい。
【0129】
感光性樹脂組成物が着色剤を含む場合、その量は目的や用途に応じて適宜設定すればよいが、着色濃度と着色剤の分散安定性との両立などから、感光性樹脂組成物の不揮発成分(溶剤を除く成分)全体に対して、好ましくは3~70質量%であり、より好ましくは5~60質量%、さらに好ましくは10~50質量%である。
【0130】
(界面活性剤)
本実施形態の感光性樹脂組成物は、界面活性剤を含むことができ、界面活性剤としては非イオン性界面活性剤が好ましい。
【0131】
非イオン性界面活性剤を含むことにより、前記感光性樹脂組成物を基材上に塗布して樹脂膜を得る際の塗布性が良好となり、均一な厚みの塗布膜を得ることができる。また、塗布膜を現像する際の残渣やパターン浮き上がりを防止することができる。
【0132】
非イオン性界面活性剤は、たとえばフッ素基(たとえば、フッ素化アルキル基)もしくはシラノール基を含む化合物、またはシロキサン結合を主骨格とする化合物である。本実施形態においては、非イオン性界面活性剤として、フッ素系界面活性剤またはシリコーン系界面活性剤を含むものを用いることがより好ましく、フッ素系界面活性剤を用いることがとくに好ましい。フッ素系界面活性剤としては例えば、DIC(株)製のメガファックF-171、F-173、F-444、F-470、F-471、F-475、F-482、F-477、F-554、F-556、およびF-557、住友スリーエム(株)製のノベックFC4430、及びFC4432等が挙げられるが、これらに限定されない。
界面活性剤を使用する場合の界面活性剤の配合量としては、樹脂100質量部に対して、0.01~10重量%が好ましい。
【0133】
(溶剤)
感光性樹脂組成物は、典型的には、溶剤を含むことができる。溶剤としては有機溶剤が好ましく用いられる。具体的には、ケトン系溶剤、エステル系溶剤、エーテル系溶剤、アルコール系溶剤、ラクトン系溶剤、カーボネート系溶剤などのうち1種または2種以上を用いることができる。
【0134】
溶剤の例としては、プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME)、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)、乳酸エチル、メチルイソブチルカルビノール(MIBC)、ガンマブチロラクトン(GBL)、N-メチルピロリドン(NMP)、メチル-n-アミルケトン(MAK)、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールメチルエチルエーテル、シクロヘキサノン、またはこれらの混合物を挙げることができる。
溶剤の使用量は特に限定されないが、不揮発成分の濃度が例えば10~70質量%、好ましくは15~60質量%となるような量で使用される。
【0135】
(遮光剤)
本実施形態の樹脂組成物は、遮光剤を含むことができる。感光性樹脂組成物は遮光剤を1種のみ含んでもよいし、2種以上含んでもよい。
【0136】
感光性樹脂組成物が遮光剤を含む場合、その量は目的や用途に応じて適宜設定すればよいが、遮光性能と遮光剤の分散安定性との両立などから、感光性樹脂組成物の不揮発成分(溶剤を除く成分)全体に対して、好ましくは3~70質量%であり、より好ましくは5~60質量%、さらに好ましくは10~50質量%である。
【0137】
(架橋剤)
本実施形態の感光性樹脂組成物は、架橋剤を含むことができる。
架橋剤は、光ラジカル重合開始剤から発生する活性化学種の作用によりポリマーを架橋可能なもの(ポリマーと化学結合することができるもの)であれば、特に限定されない。
架橋剤は、ポリマーとのみ化学結合するのではなく、架橋剤同士で反応して結合形成してもよい。
【0138】
架橋剤は、例えば、一分子中に2以上の重合性二重結合を有する多官能化合物が好ましく、一分子中に2以上の(メタ)アクリロイル基を有する多官能(メタ)アクリル化合物であることがより好ましい(ただし、架橋剤は、前述のポリマーには該当しない)。ポリマーが有する架橋性基(重合性二重結合)と同種の架橋性基を有する架橋剤を用いることが、均一な硬化性、感度の更なる向上などの点で好ましい。
架橋剤一分子あたりの官能数(重合性二重結合の数)の上限は特にないが、例えば8以下、好ましくは6以下である。
【0139】
架橋剤として具体的には、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、シクロヘキサンジメタノールジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAアルキレンオキシドジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールFアルキレンオキシドジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、グリセリントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、エチレンオキシド付加トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、エチレンオキシド付加ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、エチレンオキシド付加ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、エチレンオキシド付加ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、プロピレンオキシド付加トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、プロピレンオキシド付加ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、プロピレンオキシド付加ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、プロピレンオキシド付加ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ε-カプロラクトン付加トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ε-カプロラクトン付加ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ε-カプロラクトン付加ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ε-カプロラクトン付加ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等の、多官能(メタ)アクリレート類;
エチレングリコールジビニルエーテル、ジエチレングリコールジビニルエーテル、ポリエチレングリコールジビニルエーテル、プロピレングリコールジビニルエーテル、ブチレングリコールジビニルエーテル、ヘキサンジオールジビニルエーテル、ビスフェノールAアルキレンオキシドジビニルエーテル、ビスフェノールFアルキレンオキシドジビニルエーテル、トリメチロールプロパントリビニルエーテル、ジトリメチロールプロパンテトラビニルエーテル、グリセリントリビニルエーテル、ペンタエリスリトールテトラビニルエーテル、ジペンタエリスリトールペンタビニルエーテル、ジペンタエリスリトールヘキサビニルエーテル、エチレンオキシド付加トリメチロールプロパントリビニルエーテル、エチレンオキシド付加ジトリメチロールプロパンテトラビニルエーテル、エチレンオキシド付加ペンタエリスリトールテトラビニルエーテル、エチレンオキシド付加ジペンタエリスリトールヘキサビニルエーテル等の、多官能ビニルエーテル類;
(メタ)アクリル酸2-ビニロキシエチル、(メタ)アクリル酸3-ビニロキシプロピル、(メタ)アクリル酸1-メチル-2-ビニロキシエチル、(メタ)アクリル酸2-ビニロキシプロピル、(メタ)アクリル酸4-ビニロキシブチル、(メタ)アクリル酸4-ビニロキシシクロヘキシル、(メタ)アクリル酸5-ビニロキシペンチル、(メタ)アクリル酸6-ビニロキシヘキシル、(メタ)アクリル酸4-ビニロキシメチルシクロヘキシルメチル、(メタ)アクリル酸p-ビニロキシメチルフェニルメチル、(メタ)アクリル酸2-(ビニロキシエトキシ)エチル、(メタ)アクリル酸2-(ビニロキシエトキシエトキシエトキシ)エチル等の、ビニルエーテル基含有(メタ)アクリル酸エステル類;
エチレングリコールジアリルエーテル、ジエチレングリコールジアリルエーテル、ポリエチレングリコールジアリルエーテル、プロピレングリコールジアリルエーテル、ブチレングリコールジアリルエーテル、ヘキサンジオールジアリルエーテル、ビスフェノールAアルキレンオキシドジアリルエーテル、ビスフェノールFアルキレンオキシドジアリルエーテル、トリメチロールプロパントリアリルエーテル、ジトリメチロールプロパンテトラアリルエーテル、グリセリントリアリルエーテル、ペンタエリスリトールテトラアリルエーテル、ジペンタエリスリトールペンタアリルエーテル、ジペンタエリスリトールヘキサアリルエーテル、エチレンオキシド付加トリメチロールプロパントリアリルエーテル、エチレンオキシド付加ジトリメチロールプロパンテトラアリルエーテル、エチレンオキシド付加ペンタエリスリトールテトラアリルエーテル、エチレンオキシド付加ジペンタエリスリトールヘキサアリルエーテル等の、多官能アリルエーテル類;
(メタ)アクリル酸アリル等の、アリル基含有(メタ)アクリル酸エステル類;
トリ(アクリロイルオキシエチル)イソシアヌレート、トリ(メタクリロイルオキシエチル)イソシアヌレート、アルキレンオキシド付加トリ(アクリロイルオキシエチル)イソシアヌレート、アルキレンオキシド付加トリ(メタクリロイルオキシエチル)イソシアヌレート等の、多官能(メタ)アクリロイル基含有イソシアヌレート類;
トリアリルイソシアヌレート等の、多官能アリル基含有イソシアヌレート類;
トリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート等の多官能イソシアネートと(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシプロピル等の、水酸基含有(メタ)アクリル酸エステル類との反応で得られる多官能ウレタン(メタ)アクリレート類;
ジビニルベンゼン等の、多官能芳香族ビニル類;
等を挙げることができる。
【0140】
なかでも、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート等の三官能(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート等の四官能(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等の六官能(メタ)アクリレートが好ましい。
【0141】
感光性樹脂組成物が架橋剤を含む場合、感光性樹脂組成物は架橋剤を1種のみ含んでもよいし、2種以上含んでもよい。感光性樹脂組成物が架橋剤を含む場合、その量は目的や用途に応じて適宜設定すればよい。一例として、架橋剤の量は、感光性樹脂100質量部に対して通常30~70質量部、好ましくは40~60質量部程度とすることができる。
【0142】
(その他の添加剤)
感光性樹脂組成物は、各種目的や要求特性に応じて、フィラー、上述のポリマー以外のバインダー樹脂、酸発生剤、耐熱向上剤、現像助剤、可塑剤、重合禁止剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、艶消し剤、消泡剤、レベリング剤、帯電防止剤、分散剤、スリップ剤、表面改質剤、揺変化剤、揺変助剤、シランカップリング剤、多価フェノール化合物等の成分を含んでもよい。
【0143】
[用途]
上述の感光性樹脂組成物を用いて膜形成し、その膜を露光・現像してパターンを形成することにより、パターン付フィルムを得ることができる。このフィルムは、カラーフィルタやブラックマトリクスなどに適用される。つまり、着色剤を含む感光性樹脂組成物を用いてパターンを形成することで、カラーフィルタを得ることができる。また、遮光剤を含む感光性樹脂組成物を用いてパターンを形成することで、ブラックマトリックスを得ることができる。そして、カラーフィルタやブラックマトリクスを備える液晶表示装置や固体撮像素子を製造することができる。
パターンを形成する典型的な手順を説明する。
【0144】
(感光性樹脂膜の形成)
例えば、上記の感光性樹脂組成物を、任意の基板上に塗布し、必要に応じて乾燥させることで、まず、感光性樹脂膜を得る。
【0145】
組成物を塗布する基板は特に限定されない。例えば、ガラス基板、シリコンウエハ、セラミック基板、アルミ基板、SiCウエハー、GaNウエハー、銅張積層板などが挙げられる。
基板は、未加工の基板であっても、電極や素子が表面に形成された基板であってもよい。接着性の向上のために表面処理さていてもよい。
【0146】
感光性樹脂組成物の塗布方法は特に限定されない。スピナーを用いた回転塗布、スプレーコーターを用いた噴霧塗布、浸漬、印刷、ロールコーティング、インクジェット法などにより行うことができる。
【0147】
基板上に塗布した感光性樹脂組成物の乾燥は、典型的にはホットプレート、熱風、オーブン等で加熱処理することで行われる。加熱温度は、通常80~140℃、好ましくは90~120℃である。また、加熱の時間は、通常30~600秒、好ましくは30~300秒程度である。
【0148】
感光性樹脂膜の膜厚は、特に限定されず、最終的に得ようとするパターンに応じて適宜調整すればよいが、通常0.5~10μm、好ましくは1~5μmである。なお、膜厚は、感光性樹脂組成物中の溶剤の含有量や塗布方法などにより調整可能である。
【0149】
(露光)
露光は、典型的には、適当なフォトマスクを介して活性光線を感光性樹脂膜に当てることで行う。
【0150】
活性光線としては、例えばX線、電子線、紫外線、可視光線などが挙げられる。波長でいうと200~500nmの光が好ましい。パターンの解像度や取り扱い性の点で、光源は水銀ランプのg線、h線又はi線であることが好ましく、特にi線が好ましい。また、2つ以上の光線を混合して用いてもよい。露光装置としては、コンタクトアライナー、ミラープロジェクションアライナー又はステッパーが好ましい。
露光の光量は、感光性樹脂膜中の感光剤の量などにより適宜調整すればよいが、例えば100~500mJ/cm2程度である。
【0151】
なお、露光後、必要に応じて、感光性樹脂膜を再度加熱してもよい(露光後加熱:Post Exposure Bake)。その温度は、例えば70~150℃、好ましくは90~120℃である。また、時間は、例えば30~600秒、好ましくは30~300秒である。露光後加熱をすることで、光ラジカル重合開始剤から発生したラジカルによる反応が促進され、硬化反応が一層促される。
【0152】
(現像)
露光された感光性樹脂膜を、適当な現像液により現像することで、パターンを得ること、また、パターンを備えた基板を製造することができる。
本実施形態のポリマー溶液を含む感光性樹脂組成物からなる感光性樹脂膜は、基板への密着性に優れることから、現像工程においてパターンの剥離が抑制される。
【0153】
現像工程においては、適当な現像液を用いて、例えば浸漬法、パドル法、回転スプレー法などの方法を用いて現像を行うことができる。現像により、感光性樹脂膜の露光部(ポジ型の場合)又は未露光部(ネガ型の場合)が溶出除去され、パターンが得られる。
使用可能な現像液は特に限定されない。例えば、アルカリ水溶液や有機溶剤が使用可能である。
【0154】
アルカリ水溶液として具体的には、(i)水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウム、ケイ酸ナトリウム、アンモニアなどの無機アルカリ水溶液、(ii)エチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、トリエタノールアミンなどの有機アミン水溶液、(iii)テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラブチルアンモニウムヒドロキシドなどの4級アンモニウム塩の水溶液などが挙げられる。
本実施形態のポリマーは、アルカリ溶解性が調整され、感度に優れることから、TMAH(テトラメチルアンモニウムヒドロキシド)溶液等の強塩基性現像液を用いる場合において、露光、現像後のパターンを設計通りの形状とすることができる。
【0155】
有機溶剤として具体的には、シクロペンタノンなどのケトン系溶剤、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)や酢酸ブチルなどのエステル系溶剤、プロピレングリコールモノメチルエーテルなどのエーテル系溶剤、等が挙げられる。
現像液には、例えばメタノール、エタノールなどの水溶性有機溶媒や、界面活性剤などが添加されていてもよい。
【0156】
本実施形態においては、現像液としてアルカリ水溶液を用いることが好ましく、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、炭酸ナトリウム水溶液、または水酸化カリウム水溶液を用いることがより好ましい。
アルカリ水溶液の濃度は、好ましくは0.01~10質量%であり、更に好ましくは0.5~5質量%である。
以上の工程により、パターンを得ること/パターンを備えた基板を製造することができるが、現像の後、様々な処理を行ってもよい。
【0157】
例えば、現像の後、リンス液によりパターンおよび基板を洗浄してもよい。リンス液としては、例えば蒸留水、メタノール、エタノール、イソプロパノール、プロピレングリコールモノメチルエーテルなどが挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0158】
また、得られたパターンを加熱して十分に硬化させるようにしてもよい。加熱温度は、典型的には150~400℃、好ましくは160~300℃、より好ましくは200~250℃である。加熱時間は特に限定されないが、例えば15~300分の範囲内である。この加熱処理は、ホットプレート、オーブン、温度プログラムを設定できる昇温式オーブンなどにより行うことが出来る。加熱処理を行う際の雰囲気気体としては、空気であっても、窒素、アルゴンなどの不活性ガスであってもよい。また、減圧下で加熱してもよい。
カラーフィルタおよび/またはブラックマトリクスを備える、液晶表示装置および/または固体撮像素子の構造の一例について、
図1に模式的に示す。
【0159】
基板10上には、ブラックマトリクス11とカラーフィルタ12が形成されている。また、このブラックマトリクス11とカラーフィルタ12の上部に保護膜13および透明電極層14が設けられている。
【0160】
基板10は、通常、光を通過する材料により構成されるものであり、たとえば、ガラスの他、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリオレフィン、ポリスルホン、環状オレフィンの重合体などにより構成される。基板10は、必要に応じて、コロナ放電処理、オゾン処理、薬液処理等が施されたものであってもよい。
基板10は、好ましくはガラスより構成される。
ブラックマトリクス11は、たとえば、遮光剤を含む感光性樹脂組成物の硬化物によって構成される。
【0161】
カラーフィルタ12としては、通常、赤、緑、青の三色が存在する。カラーフィルタ12は、各色に応じた着色剤を含む感光性樹脂組成物の硬化物により構成される。
【0162】
以上、本発明の実施形態について述べたが、これらは本発明の例示であり、上記以外の様々な構成を採用することもできる。
【実施例0163】
以下、本発明を実施例および比較例により説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0164】
実施例中の使用化合物については、以下の略号または商品名で示す場合がある。
・MA:無水マレイン酸
・IN:インデン
・NB:2-ノルボルネン
・ST:スチレン
・MEK:メチルエチルケトン
・PGMEA:プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート
・KBM-803:3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン(信越シリコーン社製)
・4-HBA:4-ヒドロキシブチルアクリレート
・A-TMM-3LM-N:以下2種の化合物の混合物、ガスクロマトグラフ測定に基づく混合物中の左の化合物の量は約57%(新中村化学工業株式会社製)
【0165】
【0166】
・A-TMM-3L:以下2種の化合物の混合物、ガスクロマトグラフ測定に基づく混合物中の左の化合物の量は約55%(新中村化学工業株式会社製)
【0167】
【0168】
<原料ポリマーの合成>
(原料ポリマー1の合成)
撹拌機および冷却管を備えた適切なサイズの反応容器に、インデン122.4g(1.05モル)と、メチルエチルケトン1376.7gと、ジメチル2,2'-アゾビス(2-メチルプロピオネート)9.70g(0.042モル)とを計量して入れ、撹拌・溶解させた。次いで、窒素バブリングにより系内の溶存酸素を除去した後、加温し、内温が80℃に到達したところで、無水マレイン酸103.2g(1.05モル)をMEK741.30gに溶解させ、窒素バブリングにより系内の溶存酸素を除去した溶液を3時間かけて添加した。その後さらに80℃で4時間加熱することで、無水マレイン酸と、インデンとを重合させ、重合溶液を作製した。
上記で得られた重合溶液を、メタノール2047.94gに滴下することで白色固体を沈殿させた。得られた白色固体を、さらにメタノール2047.94gで洗浄した後、温度120℃で真空乾燥することにより、インデンに由来する構造単位と、無水マレイン酸に由来する構造単位とを備えるポリマー(原料ポリマー1)320.1gを得た。
得られたポリマーをゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用いて測定した結果、重量平均分子量Mwは9248であり、多分散度(重量平均分子量Mw)/(数平均分子量Mn)は2.31であった。
【0169】
(原料ポリマー2の合成)
撹拌機および冷却管を備えた適切なサイズの反応容器に、無水マレイン酸353.02g(3.6モル)と、2-ノルボルネン338.94g(3.6モル)と、ジメチル2,2´-アゾビス(2-メチルプロピオネート)33.16g(0.144モル)とを計量して入れた。これらを、メチルエチルケトン1030.1gおよびトルエン113.0gからなる混合溶媒に溶解させ、溶解液を作製した。
この溶解液に対して、30分間窒素を通気して酸素を除去し、次いで、撹拌しつつ温度65℃で1.5時間加熱し、さらにその後80℃で6時間加熱することで、無水マレイン酸と、2-ノルボルネンとを重合させ、重合溶液を作製した。
上記で得られた重合溶液を、メタノール8519.9gに滴下することで白色固体を沈殿させた。得られた白色固体を、温度120℃で真空乾燥することにより、2-ノルボルネンに由来する構造単位と、無水マレイン酸に由来する構造単位とを備えるポリマー(原料ポリマー2)607.5gを得た。
得られたポリマーをゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用いて測定した結果、重量平均分子量Mwは7000であり、多分散度(重量平均分子量Mw)/(数平均分子量Mn)は1.82であった。
【0170】
(原料ポリマー3の合成)
スチレン由来の構造単位と、無水マレイン酸由来の構造単位とからなる共重合体であるXIRAN(登録商標)1000(巴工業株式会社製、スチレン無水マレイン酸共重合体、(スチレン:マレイン酸比=1:1))を準備し、原料ポリマー3として使用した。
原料ポリマー3の重量平均分子量Mwは6478であり、多分散度(重量平均分子量Mw)/(数平均分子量Mn)は2.51であった。
【0171】
<ポリマーPの調製>
各調製例で、ポリマーPを調製した。表1に、調製例で使用した成分、各成分の仕込み量を無水マレイン酸(MA)換算で示し、各構造単位の量(モル分率、モル%)を1H-NMRの積分値解析により算出し、無水マレイン酸(MA)換算で示した。
【0172】
(調製例1)
原料ポリマー1のMA単位を、3官能(メタ)アクリル化合物および単官能(メタ)アクリル化合物で開環して、ポリマーP1を作製した。以下、詳細を説明する。
まず、原料ポリマー1 60g(MA換算0.312モル)に対して、MEK 99.71gを加えて、溶解液を作製した。次いで、この溶解液に対して、A-TMM-3LM-N 38.75gを加え、その後、トリエチルアミン18.00g(0.178モル)を加え、温度70℃で2時間反応させた。さらにその後、4-HBA 56.27g(0.390モル)を加え、温度70℃で4時間反応させ、反応溶液を作製した。
作製された反応溶液をMEKで希釈し、ギ酸水溶液で処理することで、反応溶液から水相を除去した。その後、以下手順でポリマーを精製した。
・過剰量のトルエンでポリマーを再沈殿させた。
・再沈殿で得られたポリマー粉末を、過剰量のトルエンで洗浄する操作を2回繰り返した。
・上記の2回洗浄後のポリマー粉末を、過剰量の水で洗浄する操作を3回行った。
・得られた反応生成物を、40℃で16時間乾燥させた。
以上により、原料ポリマー1中の無水マレイン酸に由来する構造単位を、A-TMM-3LM-Nおよび4-HBAで開環した、ポリマーP1を48.12g得た。
ポリマーP1のGPC測定により、使用した多官能(メタ)アクリル化合物および単官能(メタ)アクリル化合物のピークの消失を確認した。これにより、得られたポリマーP1には、未反応の(メタ)アクリル化合物も、水酸基を有さない(メタ)アクリル化合物も含まれないことを確認した。GPC測定により測定した、ポリマーP1の、重量平均分子量(Mw)および多分散度(Mw/Mn)を表1に示す。
ポリマーP1が、A-TMM-3LM-Nおよび4-HBAで開環された構造を有することを、1H-NMRにより確認した。
【0173】
(調製例2)
原料ポリマー1のMA単位を、3官能(メタ)アクリル化合物および単官能(メタ)アクリル化合物、ならびに水で開環して、ポリマーP2を作製した。以下、詳細を説明する。
原料ポリマー1 60g(MA換算0.312モル)に対して、MEK 99.71gを加えて、溶解液を作製した。次いで、この溶解液に対して、A-TMM-3LM-N 38.75gを加え、その後、トリエチルアミン18.00g(0.178モル)を加え、温度70℃で2時間反応させた。さらにその後、4-HBA 56.27g(0.390モル)を加え、温度70℃で4時間反応させ、反応溶液を作製した。
次いで、得られた反応溶液を後処理することなく、この反応溶液に水3.00g(0.167モル)を添加し、70℃で2時間反応させた。
得られた反応溶液をMEKで希釈し、ギ酸水溶液で処理することで、反応溶液から水相を除去した。その後、以下手順でポリマーを精製した。
・過剰量のトルエンでポリマーを再沈殿させた。
・再沈殿で得られたポリマー粉末を、過剰量のトルエンで洗浄する操作を2回繰り返した。
・上記の2回洗浄後のポリマー粉末を、過剰量の水で洗浄する操作を3回行った。
・得られた反応生成物を、40℃で12時間乾燥させた。
以上により、原料ポリマー1中の無水マレイン酸に由来する構造単位を、A-TMM-3LM-N、4-HBAおよび水で開環した、ポリマーP2を45.12g得た。
ポリマーP2のGPC測定により、使用した多官能(メタ)アクリル化合物および単官能(メタ)アクリル化合物のピークの消失を確認した。これにより、得られたポリマーP7には、未反応の(メタ)アクリル化合物も、水酸基を有さない(メタ)アクリル化合物も含まれないことを確認した。GPC測定により測定した、ポリマーP2の、重量平均分子量(Mw)および多分散度(Mw/Mn)を表1に示す。
ポリマーP2が、A-TMM-3LM-N、4-HBAおよび水で開環された構造を有することを、13C-NMRにより確認した。
【0174】
(調製例3)
原料ポリマー1のMA単位を、3官能(メタ)アクリル化合物および単官能(メタ)アクリル化合物、ならびに水で開環して、ポリマーP3を含む樹脂混合物を作製した。以下、詳細を説明する。
まず、原料ポリマー1 60.00g(MA換算0.312モル)に対して、MEK 99.71gを加えて、溶解液を作製した。次いで、この溶解液に対して、A-TMM-3LM-N 38.75gを加え、その後、トリエチルアミン18.00g(0.178モル)を加え、温度70℃で2時間反応させた。さらにその後、4-HBA 56.27g(0.390モル)を加え、温度70℃で4時間反応させ、反応溶液を作製した。
次いで、得られた反応溶液を後処理することなく、この反応溶液に水3.00g(0.167モル)を添加し、70℃で2時間反応させた。得られた反応溶液をMEKで希釈し、ギ酸水溶液で処理することで、反応溶液から水相を除去した。さらに液液抽出、続いて溶媒置換を以下の手順で行った。
・液液抽出:反応溶液をMEKで希釈し、次いで水を加え、処理することで、反応溶液から水相を除去した後、さらに同様の操作を1回行った。
・溶媒置換:得られた反応混合物をロータリーエバポレーターにより、減圧下、50℃で溶媒の除去を行った。ポリマー溶液の固形分濃度が加熱乾燥式水分計による測定で27±2質量%になったのを確認し、溶媒除去の操作を中断した。その後、固形分濃度が18質量%になるようにPGMEAを加え、均一になるまで混合した。同様の操作で減圧下、50℃で溶媒の除去を行い、固形分濃度を加熱乾燥式水分計による測定で27±2質量%に調製後、さらに固形分濃度が18質量%になるようにPGMEAを加え、均一になるまで混合する操作をさらに2回繰り返した。その後、固形分濃度が30±3質量%になるように溶媒除去、もしくはPGMEAを加え、均一になるまで攪拌する操作を行った。以上の操作で反応に使用した溶媒が除去され、溶媒がPGMEAに置換される。
続いて、得られたポリマー溶液中の固形分に対し、5質量%のKBM-803を添加した。
以上により、原料ポリマー1中の無水マレイン酸に由来する構造単位を、A-TMM-3LM-N、4-HBAおよび水で開環したポリマーP3と、残存(遊離)A-TMM-3LM-Nおよび残存(遊離)4-HBA、およびKBM-803を含むポリマー溶液3を得た。
得られたポリマー溶液3をゲルパーミエーションクロマトグラフィー法で分析して、組成物中に含まれるポリマーP3、遊離多官能(メタ)アクリル化合物および遊離単官能(メタ)アクリル化合物の量、ならびにポリマーP3の重量平均分子量および多分散度を測定した。結果を表1に示す。なお、遊離(メタ)アクリル化合物の量は、樹脂混合物のゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)チャートにおけるポリマーP3のピーク面積に対する、遊離(メタ)アクリル化合物のピーク面積の割合(%)として示す。
なお、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー法の測定条件は以下のとおりである。
・GPC測定装置としては、東ソー株式会社のHLC-8320GPC EcoSECを用いた。カラム温度は40.0℃、ポンプ流量は0.350mL/分に設定した。
・ピーク位置(保持時間)
-ポリマーP3:20分より前に検出されるピーク(A-TMM-3LM-Nと4-HBAより保持時間が短く、分子量が大きいピーク)
-A-TMM-3LM-N:20.0~20.6分と20.6~21.5分の2ピークの合計
-4-HBA:21.7~22.4分
・測定条件:示差屈折率検出器(RI検出器)で分析した。
【0175】
(調製例4)
原料ポリマー2のMA単位を、水酸基含有の3官能(メタ)アクリル化合物および単官能(メタ)アクリル化合物で開環して、ポリマーP4を作製した。以下、詳細を説明する。
まず、原料ポリマー2 30g(MA換算0.156モル)に対して、MEK 49.86gを加えて、溶解液を作製した。次いで、この溶解液に対して、A-TMM-3L 19.37gを加え、その後、トリエチルアミン9.00g(0.089モル)を加え、温度70℃で2時間反応させた。さらにその後、4-HBA 28.13g(0.195モル)を加え、温度70℃で4時間反応させ、反応溶液を作製した。
得られた反応溶液をMEKで希釈し、ギ酸水溶液で処理することで、反応溶液から水相を除去した。その後、下記の再沈殿法でポリマーを精製した。
・再沈殿法:過剰量の水でポリマーを再沈殿させた。再沈殿で得られたポリマー粉末を、過剰量の水で洗浄する操作を2回繰り返した。得られた反応生成物を、40℃で12時間乾燥させた。
以上により、原料ポリマー2中の無水マレイン酸に由来する構造単位を、A-TMM-3Lおよび4-HBAで開環した、ポリマーP4を、24.64g得た。GPC測定により測定した、ポリマーP4の、重量平均分子量(Mw)および多分散度(Mw/Mn)を表1に示す。
ポリマーP4のGPC測定により、使用した多官能(メタ)アクリル化合物および単官能(メタ)アクリル化合物のピークの消失を確認した。これにより、得られたポリマーP4には、未反応の(メタ)アクリル化合物も、水酸基を有さない(メタ)アクリル化合物も含まれないことを確認した。
1H-NMR測定により、ポリマーP4が、A-TMM-3Lおよび4-HBAで開環された構造を有することを確認した。
【0176】
(調製例5)
A-TMM-3LをA-TMM-3LM-Nに変えた以外は調製例4と同様にし、原料ポリマー2中の無水マレイン酸に由来する構造単位を、A-TMM-3LM-Nおよび4-HBAで開環した、ポリマーP5を、23.41g得た。GPC測定により測定した、ポリマーP5の、重量平均分子量(Mw)および多分散度(Mw/Mn)を表1に示す。
ポリマーP5のGPC測定により、使用した多官能(メタ)アクリル化合物および単官能(メタ)アクリル化合物のピークの消失を確認した。これにより、得られたポリマーP4には、未反応の(メタ)アクリル化合物も、水酸基を有さない(メタ)アクリル化合物も含まれないことを確認した。
1H-NMR測定により、ポリマーP5が、A-TMM-3LM-Nおよび4-HBAで開環された構造を有することを確認した。
【0177】
(調製例6)
原料ポリマー2のMA単位を、3官能(メタ)アクリル化合物および単官能(メタ)アクリル化合物、ならびに水で開環して、ポリマーP6を作製した。以下、詳細を説明する。
原料ポリマー2 60g(MA換算0.312モル)に対して、MEK 99.71gを加えて、溶解液を作製した。次いで、この溶解液に対して、A-TMM-3LM-N 38.75gを加え、その後、トリエチルアミン18.00g(0.178モル)を加え、温度70℃で2時間反応させた。さらにその後、4-HBA 56.27g(0.390モル)を加え、温度70℃で4時間反応させ、反応溶液を作製した。次いで、得られた反応溶液を後処理することなく、この反応溶液に水3.00g(0.167モル)を添加し、70℃で2時間反応させた。
得られた反応溶液をMEKで希釈し、ギ酸水溶液で処理することで、反応溶液から水相を除去した。その後、下記の再沈殿法でポリマーを精製した。
・再沈殿法:過剰量の水でポリマーを再沈殿させた。再沈殿で得られたポリマー粉末を、過剰量の水で洗浄する操作を2回繰り返した。得られた反応生成物を、40℃で12時間乾燥させた。
以上により、原料ポリマー2中の無水マレイン酸に由来する構造単位を、A-TMM-3LM-N、と4-HBA、および水で開環した、ポリマーP6を、25.77g得た。GPC測定により測定した、ポリマーP6の、重量平均分子量(Mw)および多分散度(Mw/Mn)を表1に示す。
ポリマーP6のGPC測定により、使用した多官能(メタ)アクリル化合物および単官能(メタ)アクリル化合物のピークの消失を確認した。これにより、得られたポリマーP6には、未反応の(メタ)アクリル化合物も、水酸基を有さない(メタ)アクリル化合物も含まれないことを確認した。
ポリマーP6が、A-TMM-3LM-N、4-HBAおよび水で開環された構造を有することを、13C-NMRにより確認した。
【0178】
(調製例7)
原料ポリマー3のMA単位を、単官能(メタ)アクリル化合物で開環して、ポリマーP7を作製した。以下、詳細を説明する。
まず、原料ポリマー3 10.00g(MA換算0.052モル)に対して、MEK 18.44gを加えて、溶解液を作製した。次いで、この溶解液に対して、4-HBA 9.38g(0.065モル)を加え、その後、トリエチルアミン3.00g(0.030モル)を加え、温度70℃で6時間反応させ、反応溶液を作製した。
得られた反応溶液をMEKで希釈し、クエン酸水溶液で処理することで、反応溶液から水相を除去した。その後、下記の再沈殿法でポリマーを精製した。
・再沈殿法:過剰量の水でポリマーを再沈殿させた。再沈殿で得られたポリマー粉末を、過剰量の水で洗浄する操作を2回繰り返した。得られた反応生成物を、40℃で12時間乾燥させた。
以上により、原料ポリマー3中の無水マレイン酸に由来する構造単位を、4-HBAで開環した、ポリマーP7を8.0g得た。
得られたポリマーP7について、GPC測定を実施して、ポリマーP7の重量平均分子量および多分散度を測定した。結果を表1に示す。
またポリマーP7のGPC測定により、使用した単官能(メタ)アクリル化合物のピークの消失を確認した。これにより、得られたポリマーP7には、未反応の単官能(メタ)アクリル化合物が含まれないことを確認した。
1H-NMR測定により、ポリマーP7が、4-HBAで開環された構造を有することを確認した。
【0179】
(調製例8)
原料ポリマー3のMA単位を、3官能(メタ)アクリル化合物および単官能(メタ)アクリル化合物および水で開環して、ポリマーP8を含む樹脂混合物を作製した。以下、詳細を説明する。
まず、原料ポリマー3 60.00g(MA換算0.312モル)に対して、MEK 99.71gを加えて、溶解液を作製した。次いで、この溶解液に対して、A-TMM-3LM-N 38.75gを加え、その後、トリエチルアミン18.00g(0.178モル)を加え、温度70℃で2時間反応させた。さらにその後、4-HBA 56.27g(0.390モル)を加え、温度70℃で4時間反応させ、反応溶液を作製した。
次いで、得られた反応溶液を後処理することなく、この反応溶液に水3.00g(0.167モル)を添加し、70℃で2時間反応させた。得られた反応溶液をMEKで希釈し、ギ酸水溶液で処理することで、反応溶液から水相を除去した。その後、下記の再沈殿法でポリマーを精製した。
・再沈殿法:過剰量の水でポリマーを再沈殿させた。再沈殿で得られたポリマー粉末を、過剰量の水で洗浄する操作を2回繰り返した。得られた反応生成物を、40℃で12時間乾燥させた。
以上により、原料ポリマー3中の無水マレイン酸に由来する構造単位を、A-TMM-3LM-N、4-HBAおよび水で開環した、ポリマーP8を45.20g得た。
得られたポリマーP8について、GPC測定を実施して、ポリマーP8の重量平均分子量および多分散度を測定した。結果を表1に示す。
ポリマーP8のGPC測定により、使用した多官能(メタ)アクリル化合物および単官能(メタ)アクリル化合物のピークの消失を確認した。これにより、得られたポリマーP8には、未反応の(メタ)アクリル化合物も、水酸基を有さない(メタ)アクリル化合物も含まれないことを確認した。
ポリマーP8が、A-TMM-3LM-N、4-HBAおよび水で開環された構造を有することを、13C-NMRにより確認した。
【0180】
(調製例9)
原料ポリマー1のMA単位を、単官能(メタ)アクリル化合物で開環して、ポリマーP9を作製した。以下、詳細を説明する。
まず、原料ポリマー1 10.00g(MA換算0.052モル)に対して、MEK 18.44gを加えて、溶解液を作製した。次いで、この溶解液に対して、4-HBA 9.38g(0.065モル)を加え、その後、トリエチルアミン3.00g(0.030モル)を加え、温度70℃で6時間反応させ、反応溶液を作製した。
得られた反応溶液をMEKで希釈し、クエン酸水溶液で処理することで、反応溶液から水相を除去した。その後、下記の再沈殿法でポリマーを精製した。
・再沈殿法:過剰量の水でポリマーを再沈殿させた。再沈殿で得られたポリマー粉末を、過剰量の水で洗浄する操作を2回繰り返した。得られた反応生成物を、40℃で12時間乾燥させた。
以上により、原料ポリマー1中の無水マレイン酸に由来する構造単位を、4-HBAで開環した、ポリマーP9を9.1g得た。
得られたポリマーP9について、GPC測定を実施して、ポリマーP9の重量平均分子量および多分散度を測定した。結果を表1に示す。
またポリマーP9のGPC測定により、使用した単官能(メタ)アクリル化合物のピークの消失を確認した。これにより、得られたポリマーP9には、未反応の単官能(メタ)アクリル化合物が含まれないことを確認した。
1H-NMR測定により、ポリマーP9が、4-HBAで開環された構造を有することを確認した。
【0181】
(物性評価)
上記調製例で作製された各ポリマーPの、酸価および二重結合当量を、以下に示す方法で測定した。
【0182】
(酸価)
ポリマーの酸価は以下の方法で測定した。
ポリマー約50mg及び内部標準物質としてテレフタル酸ジメチル約5mgを計量し、DMSO-d6に溶解させた。この溶液について、核磁気共鳴分光装置JNM-AL300(JEOL社製)を用いて1H-NMRの測定を行った。1H-NMR測定内標準のテレフタル酸ジメチルのフェニル基の4Hのピーク(8.1ppm付近)の積分値を基準にして、ポリマーのカルボキシル基(-COOH)のHのピーク(12.4ppm付近)の積分値からカルボキシル基の量を求める。そして、その量から酸価(mgKOH/g)が算出できる。酸価の値が大きいほど、ポリマー単位質量あたりのカルボキシル基の量が多いことを表す。
結果を表1に示す。酸価が105gKOH/g以上であることにより、ポリマーが十分な現像性を有するために必要なカルボキシ基がポリマー中に存在するとみなすことができる。
【0183】
(二重結合当量)
ポリマーの二重結合当量は以下の方法で測定した。
上記の酸価の測定方法と同様に、1H-NMRの測定を行った。得られたスペクトルチャートのアクリロイル基に由来するシグナル(5.6-5.8ppm、3H)と内部標準物質のフェニル基のシグナル(8.1ppm、4H)の積分比から、ポリマー中のアクリロイル基量(mol/g)を算出し、メタクリロイル基に由来するシグナル(5.6-5.8ppm、2H)と内部標準物質のフェニル基のシグナル(8.1ppm、4H)の積分比から、ポリマー中のメタクリロイル基量(mol/g)を算出した。ここで、6.0-6.1ppmのメタクリロイル基に由来するシグナルについては微小であり、アクリロイル基のシグナルとも重複するため、アクリロイル基のシグナルとして計算した。算出したポリマー中のアクリロイル基量(mol/g)とメタクリロイル基(mol/g)の合計から二重結合量(mol/g)を算出し、二重結合量より、二重結合当量(g/mol)を算出した。
結果を表1に示す。二重結合当量の値が小さいほど、ポリマー単位質量あたりのC=C二重結合の量が多いことを表す。
【0184】
【0185】
(実施例1~3、比較例1~6)
各実施例および比較例において、以下の項目について評価した。
【0186】
<評価>
[ポリマーPのアルカリ溶解速度(アルカリ現像液に対するポリマーPの溶解速度)]
調製例1、2、4~9で得られたポリマーP1、P2、P4~P9をプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)に溶解させて、固形分濃度30質量%の溶液を作製した。
次いで、ウエハー上に上記溶液およびポリマー溶液3をスピンコートし、PGMEAを乾燥させ、そして温度100℃で2分間プリベークすることで、膜厚2μm±0.2の樹脂膜を作製した。
この樹脂膜を、ウエハーごと、温度23℃の2.0質量%炭酸ナトリウム水溶液に浸漬し、樹脂膜の溶解速度を測定した。
溶解速度は、浸漬したウエハーを目視で観察して樹脂膜が溶解して干渉模様が見えなくなるまでの時間を測定し、その時間で膜厚を割り算することで算出した。結果を表2に示す。アルカリ溶解速度が、300nm/s以上であれば、現像性が良好とみなすことができ、400nm/s以上であれば、現像性がより良好とみなすことができる。
【0187】
[感光性樹脂組成物の感度評価(2.0質量%炭酸ナトリウム水溶液)]
まず、全固形分濃度が30質量%になるように、以下成分をプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)に溶解した感光性樹脂組成物を得た。
・ポリマーP(調製例1、2、4~9で得られたポリマーP1、P2、P4~P9):100質量部
(ポリマー溶液3については固形分(ポリマーP3と多官能(メタ)アクリル化合物とKBM-803の合計量)が100質量部になるようにポリマー溶液3を秤量した。)
・多官能アクリレート(ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、A-DPH):50質量部
・光重合開始剤(BASF社製、Irgacure OXE01):5質量部
・密着助剤(信越化学工業株式会社製、KBM-403):1質量部
・界面活性剤(DIC株式会社製、F-556):0.5質量部
得られた感光性樹脂組成物は必要に応じてPTFEメンブレンフィルターMillex-LS(メルクミリポア社製)でろ過し、不溶分を取り除いた。
【0188】
得られた樹脂組成物を、HMDS(Hexamethyldisilazane)処理した3インチシリコンウェハー上に回転塗布し、100℃、120秒間ホットプレートにてベークして、約3.0μm厚(±0.3μm)の薄膜Aを得た。
この薄膜Aに、遮光率1~100%の階調を有するフォトマスクを介して、キヤノン社製g+h+i線マスクアライナー(PLA-501F)にて100mJ/cm2の露光量でg+h+i線を露光した。
露光後、薄膜を2.0質量%炭酸ナトリウム水溶液で23℃、60秒間現像(ウェハーごと浸漬)することで、1~100mJ/cm2の各露光量で露光、現像された薄膜Bを得た。
上記の方法にて得られた薄膜A、薄膜Bの膜厚から、以下の式より残膜率を算出した。
残膜率(%)=(各露光量での薄膜Bの膜厚/薄膜Aの膜厚)×100
そして、残膜率が95%以上となる露光量を、各感光性樹脂組成物の感度として、以下基準により評価した。結果を表2に示す。残膜率が95%以上となる露光量の値は小さい程、感度が高いことを示す。残膜率が95%以上となる露光量が、20mJ/cm2以下であれば感光性材料として問題なく使用することができ、特に15mJ/cm2以下であれば感度が良好であるとみなすことができる。
【0189】
[感光性樹脂組成物のアルカリ溶解速度(2.0質量%炭酸ナトリウム水溶液)]
上述の感度評価で調製した感光性樹脂組成物を、ウエハー上スピンコートし、PGMEAを乾燥させ、そして温度100℃で2分間プリベークすることで、膜厚約2μmの樹脂膜を作製した。
この樹脂膜を、ウエハーごと、温度23℃の2%炭酸ナトリウム水溶液に浸漬し、樹脂膜の溶解速度を測定した。
溶解速度は、浸漬したウエハーを目視で観察して樹脂膜が溶解して干渉模様が見えなくなるまでの時間を測定し、その時間で膜厚を割り算することで算出した。結果を表1に示す。アルカリ溶解速度が、350nm/s以上であれば、感光性材料として問題なく使用することができ、380nm/s以上であれば現像性が良好とみなすことができ、500nm/以上であれば現像性が特に良好であるとみなすことができる。
【0190】
アルカリ溶解速度および感度評価の結果を表2に示す。
【0191】
【0192】
実施例の感光性樹脂組成物は、アルカリ溶解速度が良好であり、よって、現像性に優れていた。実施例の感光性樹脂組成物は、残膜率が95%以上となる露光量が、20mJ/cm2以下であり、換言すると低い露光量で硬化し、感度が高いと言える。よって、実施例の感光性樹脂組成物は、高い現像性と高い感度とをバランス良く備えていた。
【0193】
<カラーフィルタの作製>
実施例1~3で調製した感光性樹脂組成物に対し、さらに、顔料分散液NX-061(大日精化工業株式会社製、緑色)を適量加えた着色感光性樹脂組成物を調製した。
これを基板上に製膜し、露光、アルカリ現像処理などを行うことで、緑色のカラーフィルタを形成することができた。
また、顔料分散液として、NX-061の代わりに、同社製のNX-053(青色)、NX-032(赤色)などを用いて、青色または赤色のカラーフィルタを形成することができた。
【0194】
<ブラックマトリクスの作製>
実施例1~3で調製した感光性樹脂組成物に対し、さらに、カーボンブラック分散液NX-595(大日精化工業株式会社製)を適量加えた黒色感光性樹脂組成物を調製した。
これを基板上に製膜し、露光、アルカリ現像処理などを行うことで、ブラックマトリクスを形成することができた。