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特開2022-114052カフェイン吸着材およびフィルタ素材
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  • 特開-カフェイン吸着材およびフィルタ素材 図1
  • 特開-カフェイン吸着材およびフィルタ素材 図2
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  • 特開-カフェイン吸着材およびフィルタ素材 図4
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022114052
(43)【公開日】2022-08-05
(54)【発明の名称】カフェイン吸着材およびフィルタ素材
(51)【国際特許分類】
   B01J 20/22 20060101AFI20220729BHJP
【FI】
B01J20/22 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021010163
(22)【出願日】2021-01-26
(71)【出願人】
【識別番号】000232885
【氏名又は名称】株式会社ロキテクノ
(74)【代理人】
【識別番号】100094112
【弁理士】
【氏名又は名称】岡部 讓
(74)【代理人】
【識別番号】100101498
【弁理士】
【氏名又は名称】越智 隆夫
(74)【代理人】
【識別番号】100120064
【弁理士】
【氏名又は名称】松井 孝夫
(72)【発明者】
【氏名】山口 義貴
【テーマコード(参考)】
4G066
【Fターム(参考)】
4G066AA05C
4G066AB05D
4G066AB06B
4G066AB07B
4G066AB09D
4G066BA01
4G066BA09
4G066CA27
4G066DA07
(57)【要約】
【課題】カフェイン含有飲料品のカフェインを選択的に除去することができる吸着材が求められる。
【解決手段】活性炭と、前記活性炭の表面に固定化がなされているガロイル基を有するポリフェノールと、を備えるカフェイン吸着材により解決する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
活性炭と、
前記活性炭の表面に固定化がなされているガロイル基を有するポリフェノールと、を備えるカフェイン吸着材。
【請求項2】
請求項1に記載のカフェイン吸着材であって、
前記固定化は架橋剤による固定であるカフェイン吸着材。
【請求項3】
請求項2に記載のカフェイン吸着材であって、
前記架橋剤はカルボジイミドであるカフェイン吸着材。
【請求項4】
請求項1に記載のカフェイン吸着材であって、
前記固定化は熱処理による固定であるカフェイン吸着材。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか一項に記載のカフェイン吸着材であって、
前記活性炭は粉状または粒状の形態であるカフェイン吸着材。
【請求項6】
請求項5に記載のカフェイン吸着材を有するフィルタ素材であって、
前記粉状または粒状の形態の前記カフェイン吸着材をバインダにより筒形状に形成したフィルタ素材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、カフェイン吸着材と、それを有するフィルタ素材に関する。
【背景技術】
【0002】
茶系、コーヒー等に代表されるカフェインを含む飲料品(以下、「カフェイン含有飲料品」)において脱カフェインの文化が定着し、カフェイン含有飲料品においてカフェインを効率的に除去する方法が必要とされている。たとえば、カフェイン含有飲料品の代表例であるコーヒーでは、有機溶剤抽出法、スイスウォター抽出法、超臨界抽出法などの方法で、コーヒーの抽出前にコーヒー豆からカフェインを直接除去する方法が主流である。しかし、有機溶剤抽出法は人体に有害な有機溶剤を使用し、スイスウォター抽出法は装置の操作が煩雑であり、また超臨界抽出法では使用する装置が高額となるなど、コーヒーの抽出前にカフェインを除去する方法には問題がある。
【0003】
これに対して、コーヒーの抽出後のコーヒー抽出液に活性炭のような吸着材を添加して、カフェインを活性炭に吸着させて除去する方法がある。活性炭は細孔を有する多孔質体であるため表面積が大きく、安全性が高いこともあり、飲料品などのさまざまな物質の除去に適している。特許文献1では水性抽出物を活性炭吸着材と接触させてカフェインを除去する方法を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特表2017-510256号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、カフェイン除去に活性炭を使用すると、その吸着性の高さから必要な成分までもが吸着してしまう。図4はカフェイン吸着材の問題点を模式的に示した模式図であって、丸印はカフェイン40を示し、四角はカフェイン以外の有効成分50を示している。コーヒー抽出液にカフェインを吸着させるカフェイン吸着材として活性炭10を使用すると、図4に示すように、活性炭10の表面にはカフェイン40が吸着してカフェインの除去ができるものの、たとえばクロロゲン酸などのカフェイン以外の有効成分も活性炭10の表面に吸着する。その結果、図4のように、本来、カフェイン40が吸着できる表面積がカフェイン40の吸着には利用されず、カフェイン40の除去のための実効的な表面積が減少することになる。また、一方で、活性炭を使用したカフェイン吸着材はカフェイン以外の有効成分までも除去してしまう問題にもつながる。そのため、カフェイン含有飲料品において、カフェインのみを選択的に除去できるカフェイン吸着材が求められる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一の態様は、活性炭と、前記活性炭の表面に固定化がなされているガロイル基を有するポリフェノールと、を備えるカフェイン吸着材である。
【0007】
本発明の他の態様は、活性炭と、前記活性炭の表面に固定化がなされているガロイル基を有するポリフェノールと、を備えるカフェイン吸着材を有するフィルタ素材であって、前記粉状または粒状の形態の前記カフェイン吸着材をバインダにより筒形状に形成したフィルタ素材である。
【発明の効果】
【0008】
本発明により、カフェイン含有飲料品中のカフェインを選択的に除去することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の実施の形態であるカフェイン吸着材の模式図である。
図2】本発明の実施の形態であるカフェイン吸着材にカフェインが吸着するメカニズムを示した模式図である。
図3】本発明の実施の形態であるカフェイン吸着材を有するフィルタ素材の斜視図である。
図4】カフェイン吸着材の問題点を模式的に示した模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
(実施例1)
図1図2を参照して、本発明の実施の形態としてのカフェイン含有飲料品用のカフェイン吸着材1について説明する。カフェイン吸着材1は、活性炭10と、ガロイル基30を有するポリフェノール20とを備える。ガロイル基30を有するポリフェノール20としては、たとえば、タンニン酸またはテアフラビン、およびこれらの誘導体であるが、ガロイル基30を有するポリフェノール20である限り、これらに限られない。ガロイル基30を有するポリフェノール20はカフェインとの結合性が非常に高い。このように、ガロイル基30を有するポリフェノールが、活性炭10の表面に固定化がなされているように形成される。カフェイン含有飲料品では、飲料品内にポリフェノールが含有されている場合が多い。したがって、ポリフェノールが活性炭に固定されていると、飲料品内に含有されるポリフェノールが活性炭に吸着されることも防止できる。
【0011】
ガロイル基30を有するポリフェノール20が固定される活性炭10の表面は、活性炭10の細孔も含めた全表面である。活性炭10の最頻度細孔径は、望ましくは1ナノメータから2ナノメータである。
【0012】
ポリフェノールは一般にカフェインとの結合性がよいので、カフェインの除去には適している。しかし、ポリフェノール自体は水溶性であり、飲料品の溶液中にポリフェノールが溶解してしまう性質があり、飲料品の味に影響を与えてしまう。そのため、ガロイル基30を有するポリフェノール20は活性炭10の表面に固定化されている。ガロイル基30を有するポリフェノール20の活性炭10の表面への固定化の態様としては、代表的に架橋剤による固定である。また、架橋剤としては、代表的には、たとえばカルボジイミドであるが、これに限られない。ガロイル基30を有するポリフェノール20を架橋剤で活性炭10の表面に固定することで、カフェインの除去に使用しても、ポリフェノールの飲料品への溶解を防ぐことができる。
【0013】
ガロイル基30を有するポリフェノール20を架橋剤で活性炭10の表面に固定する方法としては、たとえば以下のとおりである。以下、ガロイル基30を有するポリフェノール20として、タンニン酸の例で説明する。
【0014】
まず、タンニン酸溶液を準備する。たとえば、タンニン酸を純水で溶解させる、またはアルコールで溶解させて、タンニン酸溶液を準備する。このとき、タンニン酸溶液の濃度は固定に必要な量以上のタンニン酸が含まれるようにタンニン酸溶液の濃度を調節する。
【0015】
最頻度細孔径が1ナノメータから5ナノメータの活性炭を準備する。活性炭を必要な粒径の粉状または粒状の活性炭に粉砕して、粉状または粒状の粒状活性炭とする。そして、この粉状活性炭または粒状活性炭(以下、両者を併せて、単に「粒状活性炭」とよぶ)を任意の量のタンニン酸溶液に浸漬するか、または粒状活性炭に任意の量のタンニン酸溶液を通液させる。このとき、活性炭へのタンニン酸の固定量は10ミリグラム/グラムから200ミリグラム/グラムが好ましい。活性炭へのタンニン酸の固定量がこの範囲となるように浸漬時間または通液時間を調整する。粒状活性炭は、タンニン酸溶液に浸漬後またはタンニン酸溶液を通液後、タンニン酸が所定の固定量に達した後に、水洗いをして粒状活性炭の過剰な付着物を除去する。
【0016】
続いて、粒状活性炭を、架橋剤である水溶性カルボジイミドを溶解した溶液に浸漬して架橋する。カルボジイミド溶液は25℃から70℃の範囲内の一定の温度に維持し、約30分から3時間浸漬してタンニン酸の吸着量の0.01倍量から1倍量、好ましくは0.07倍量から0.1倍量程度の割合の量で架橋する。この時間が経過後、架橋した粒状活性炭に付着する余分な架橋剤を水洗いすることで、図1に模式的に示すようなガロイル基30を有するポリフェノール20を架橋剤で表面に固定した活性炭10が得られる。
【0017】
カフェイン吸着材1には、ポリフェノール20が活性炭10の表面に固定され、ポリフェノール20からガロイル基30が伸びて活性炭10の表面に広がる状態になる。これにより、図2に示すように、カフェイン40が選択的にガロイル基30に吸着する状態が実現できる。活性炭10に吸着されやすいその他の成分は、もはや吸着されない。
【0018】
これを確認するために、ポリフェノールを表面に固定しない活性炭と、タンニン酸を表面に固定した活性炭とを、それぞれ、カフェインとクロロゲン酸とのそれぞれを溶解させた溶液に投入して浸漬させた。その結果、ポリフェノールを表面に固定しない活性炭と、タンニン酸を表面に固定した活性炭とを投入した双方の溶液において、溶液中のカフェインの大きな減少がみられた。さらに、ポリフェノールを固定しない活性炭を投入した溶液では、溶液中のクロロゲン酸の大きな減少がみられたが、タンニン酸を表面に固定した活性炭を投入した溶液では、溶液中のクロロゲン酸の減少は小さいことが確認された。これにより、タンニン酸を表面に固定した活性炭は、有効成分であるクロロゲン酸の吸着を抑えた上でカフェインの吸着が実現できることがわかった。
【0019】
(実施例2)
以下、本発明の実施例2について説明する。実施例1ではガロイル基30を有するポリフェノール20の活性炭10の表面への固定化の態様が架橋剤であったが、実施例2ではその固定化の態様が熱処理による固定である点で異なっている。以下、実施例2について、実施例1と同じ部分の説明は割愛して実施例1と異なる部分を説明する。
【0020】
実施例2は、粉状活性炭または粒状活性炭(以下、両者を併せて、単に「粒状活性炭」とよぶ)を任意の量のタンニン酸溶液に浸漬し、または粒状活性炭にタンニン酸溶液を通液させて、水洗いするまでの工程は実施例1と同じである。この工程の後に、実施例2では、粒状活性炭を加熱する熱処理により固定化する。熱処理において、粒状活性炭の温度が60℃から120℃の範囲で粒状活性炭を加熱することが望ましい。また、熱処理の時間は1時間から24時間程度である。熱処理することで、実施例1の図1と同様に、ここに模式的に示したようなガロイル基30を有するポリフェノール20が表面に固定化された活性炭10が得られる。
【0021】
実施例2で得られたガロイル基30を有するポリフェノール20が表面に固定化された活性炭10のカフェイン吸着材1においても、実施例1と同じ効果をえることができる。
【0022】
(実施例3)
続いて、図3を参照して、本発明の実施例3について説明する。実施例1および実施例2のカフェイン吸着材1は粉状または粒状の活性炭を使用した粉状または粒状のカフェイン吸着材1である。これに対し、実施例3では、実施例1および実施例2の粉状または粒状の形態のカフェイン吸着材1をバインダにより筒形状に形成したフィルタ素材11である。筒形状としては、代表的には断面が円である円筒形状であるが、中空の筒形状であれば断面が円形に限られず、断面が多角形、または曲面であるものも含まれる。実施例3で使用するカフェイン吸着材1は実施例1および実施例2で説明したものと同じ構成および効果を有し、同じように製造するものであるので、説明は割愛する。実施例3では、粉状または粒状の形態のカフェイン吸着材1をバインダ(結着材)で必要な形状に成形する。たとえば、代表的には図3に示すような筒形状のフィルタ素材11である。または、所定の厚さを有する平板形状(不図示)に成形する。カフェイン含有飲料品は、このフィルタ素材を通過させることで、実施例1および実施例2と同様に、飲料品中に含まれるカフェインをカフェイン吸着材1のガロイル基30を有するポリフェノール20に選択的に吸着させる効果を生じる。
【符号の説明】
【0023】
1 カフェイン除去剤
10 活性炭
11 フィルタ素材
20 ポリフェノール
30 ガロイル基
40 カフェイン
50 カフェイン以外の有効成分
図1
図2
図3
図4