(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022114060
(43)【公開日】2022-08-05
(54)【発明の名称】機械学習装置、画像処理装置、機械学習方法、および画像処理方法
(51)【国際特許分類】
G03G 15/00 20060101AFI20220729BHJP
G03G 15/16 20060101ALI20220729BHJP
G06N 20/00 20190101ALI20220729BHJP
G06N 3/08 20060101ALI20220729BHJP
G06F 3/12 20060101ALI20220729BHJP
【FI】
G03G15/00 303
G03G15/16 103
G06N20/00 130
G06N3/08
G06F3/12 324
G06F3/12 308
G06F3/12 329
【審査請求】未請求
【請求項の数】16
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021010172
(22)【出願日】2021-01-26
(71)【出願人】
【識別番号】000000295
【氏名又は名称】沖電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001357
【氏名又は名称】弁理士法人つばさ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】河野 晃光
【テーマコード(参考)】
2H200
2H270
【Fターム(参考)】
2H200JA02
2H200JC03
2H200NA02
2H200PA02
2H200PA22
2H200PB05
2H200PB08
2H200PB27
2H200PB28
2H200PB29
2H270KA28
2H270KA32
2H270KA53
2H270LA07
2H270LA19
2H270LA20
2H270LA29
2H270LB01
2H270LD03
2H270LD08
2H270LD11
2H270LD15
2H270MA24
2H270MA35
2H270MB25
2H270MB28
2H270MB43
2H270MB55
2H270ME03
2H270MF09
2H270MH10
2H270RB04
2H270ZC03
2H270ZC04
(57)【要約】
【課題】印刷画像の画質を高めることができる機械学習装置を得る。
【解決手段】本発明の一実施の形態に係る機械学習装置は、画像形成部によって実際に印刷がなされた印刷物における特徴量データと、印刷物に用いられた印刷媒体の媒体データと、印刷物を出力した際に画像形成部が使用した第1の制御データと、画像形成部において現像剤像を印刷媒体に転写する転写部における抵抗値を示す抵抗値データとを含む状態変数データセットを取得する状態変数取得部と、画像形成部が使用すべき第2の制御データを含む教師データを取得する教師データ取得部と、状態変数データセットおよび教師データに基づいて機械学習を行うことにより、特徴量データ、媒体データ、第1の制御データ、および抵抗値データが入力され第2の制御データが出力される学習モデルを生成する学習モデル生成部とを備える。
【選択図】
図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像形成部によって実際に印刷がなされた印刷物における特徴量データと、前記印刷物に用いられた印刷媒体の媒体データと、前記印刷物を出力した際に前記画像形成部が使用した第1の制御データと、前記画像形成部において現像剤像を前記印刷媒体に転写する転写部における抵抗値を示す抵抗値データとを含む状態変数データセットを取得する状態変数取得部と、
前記画像形成部が使用すべき第2の制御データを含む教師データを取得する教師データ取得部と、
前記状態変数データセットおよび前記教師データに基づいて機械学習を行うことにより、前記特徴量データ、前記媒体データ、前記第1の制御データ、および前記抵抗値データが入力され前記第2の制御データが出力される学習モデルを生成する学習モデル生成部と
を備えた機械学習装置。
【請求項2】
前記転写部における前記抵抗値は、前記印刷媒体が、前記転写部における、互いに対向配置された第1の回転体および第2の回転体の間を通過している通過期間において、前記第1の回転体および前記第2の回転体の間に流れる第1の電流の電流値に基づいて算出された
請求項1に記載の機械学習装置。
【請求項3】
前記状態変数取得部は、前記状態変数データセットが得られた前記画像形成部の前記転写部における、前記通過期間以外の期間において、前記第1の回転体および前記第2の回転体の間に流れる第2の電流の電流値に基づいて、前記抵抗値を補正する補正部を有する
請求項2に記載の機械学習装置。
【請求項4】
前記補正部は、前記第2の電流の電流値と、基準電流値との比に基づいて、前記抵抗値を補正する
請求項3に記載の機械学習装置。
【請求項5】
前記第1の制御データおよび前記第2の制御データは、前記転写部における転写電圧の設定値を含む
請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の機械学習装置。
【請求項6】
画像形成部によって実際に印刷がなされた印刷物の特徴量データと、前記印刷物に用いられた印刷媒体の媒体データと、前記印刷物を出力した際に前記画像形成部が使用した第1の制御データとを取得する印刷物情報取得部と、
前記画像形成部において現像剤像を前記印刷媒体に転写する転写部における抵抗値を示す抵抗値データを取得する抵抗値情報取得部と、
前記印刷物情報取得部および前記抵抗値情報取得部により取得された情報に基づいて、前記特徴量データ、前記媒体データ、前記第1の制御データ、および前記抵抗値データが入力され、前記画像形成部が使用すべき第2の制御データが出力される学習モデルを用いて、前記第2の制御データを生成する制御データ生成部と
を備えた画像処理装置。
【請求項7】
前記転写部における前記抵抗値は、前記印刷媒体が、前記転写部における、互いに対向配置された第1の回転体および第2の回転体の間を通過している通過期間において、前記第1の回転体および前記第2の回転体の間に流れる第1の電流の電流値に基づいて算出された
請求項6に記載の画像処理装置。
【請求項8】
前記抵抗値情報取得部は、前記通過期間以外の期間において、前記第1の回転体および前記第2の回転体の間に流れる第2の電流の電流値に基づいて、前記抵抗値データを補正する補正部を有する
請求項7に記載の画像処理装置。
【請求項9】
前記補正部は、前記第2の電流の電流値と、基準電流値との比に基づいて、前記抵抗値を補正する
請求項8に記載の画像処理装置。
【請求項10】
前記基準電流値は、前記学習モデルを生成する機械学習において用いられた状態変数データセットを得た画像形成部の転写部における前記第2の電流の電流値である
請求項9に記載の画像処理装置。
【請求項11】
前記通過期間において、前記第1の回転体には複数の電圧のうちのいずれかが印加されることが可能であり、
前記制御データ生成部は、前記複数の電圧に対応する複数の前記学習モデルのうちの、前記第1の回転体に印加された電圧に対応する前記学習モデルを用いて、前記委第2の制御データを生成する
請求項7から請求項10のいずれか一項に記載の画像処理装置。
【請求項12】
前記第1の制御データおよび前記第2の制御データは、前記転写部における転写電圧の設定値を含む
請求項6から請求項11のいずれか一項に記載の画像処理装置。
【請求項13】
前記画像形成部をさらに備え、
前記画像形成部は、前記第2の制御データに基づいて、前記印刷媒体に印刷を行う
請求項6から請求項12のいずれか一項に記載の画像処理装置。
【請求項14】
前記第2の制御データを、前記画像形成部に送信する通信部をさらに備えた
請求項6から請求項12のいずれか一項に記載の画像処理装置。
【請求項15】
画像形成部によって実際に印刷がなされた印刷物における特徴量データと、前記印刷物に用いられた印刷媒体の媒体データと、前記印刷物を出力した際に前記画像形成部が使用した第1の制御データと、前記画像形成部において現像剤像を前記印刷媒体に転写する転写部における抵抗値を示す抵抗値データとを含む状態変数データセットを取得することと、
前記画像形成部が使用すべき第2の制御データを含む教師データを取得することと、
前記状態変数データセットおよび前記教師データに基づいて機械学習を行うことにより、前記特徴量データ、前記媒体データ、前記第1の制御データ、および前記抵抗値データが入力され前記第2の制御データが出力される学習モデルを生成することと
を含む機械学習方法。
【請求項16】
画像形成部によって実際に印刷がなされた印刷物の特徴量データと、前記印刷物に用いられた印刷媒体の媒体データと、前記印刷物を出力した際に前記画像形成部が使用した第1の制御データとを取得することと、
前記画像形成部において現像剤像を前記印刷媒体に転写する転写部における抵抗値を示す抵抗値データを取得することと、
前記特徴量データ、前記媒体データ、前記第1の制御データ、および前記抵抗値データに基づいて、前記特徴量データ、前記媒体データ、前記第1の制御データ、および前記抵抗値データが入力され、前記画像形成部が使用すべき第2の制御データが出力される学習モデルを用いて、前記第2の制御データを生成することと
を含む画像処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像処理において学習を行う機械学習装置、機械学習装置により得られた学習モデルを利用した画像処理装置、機械学習装置において用いられる機械学習方法、および画像処理装置において用いられる画像処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
画像形成装置では、画質を高めるために、しばしば、画像を形成する際に使用する制御パラメータの設定値(制御データ)が調整される。例えば、特許文献1には、印刷媒体の種類に応じた転写電圧および定着温度を設定する画像形成装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
画像形成装置では、印刷画像の画質が高いことが望まれており、さらなる画質の向上が期待されている。
【0005】
印刷画像の画質を高めることができる機械学習装置、画像処理装置、機械学習方法、および画像処理方法を提供することが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一実施の形態における機械学習装置は、状態変数取得部と、教師データ取得部と、学習モデル生成部とを備えている。状態変数取得部は、画像形成部によって実際に印刷がなされた印刷物における特徴量データと、印刷物に用いられた印刷媒体の媒体データと、印刷物を出力した際に画像形成部が使用した第1の制御データと、画像形成部において現像剤像を印刷媒体に転写する転写部における抵抗値を示す抵抗値データとを含む状態変数データセットを取得するように構成される。教師データ取得部は、画像形成部が使用すべき第2の制御データを含む教師データを取得するように構成される。学習モデル生成部は、状態変数データセットおよび教師データに基づいて機械学習を行うことにより、特徴量データ、媒体データ、第1の制御データ、および抵抗値データが入力され第2の制御データが出力される学習モデルを生成するように構成される。
【0007】
本発明の一実施の形態における画像処理装置は、印刷物情報取得部と、抵抗値情報取得部と、制御データ生成部とを備えている。印刷物情報取得部は、画像形成部によって実際に印刷がなされた印刷物の特徴量データと、印刷物に用いられた印刷媒体の媒体データと、印刷物を出力した際に画像形成部が使用した第1の制御データとを取得するように構成される。抵抗値情報取得部は、画像形成部において現像剤像を印刷媒体に転写する転写部における抵抗値を示す抵抗値データを取得するように構成される。制御データ生成部は、印刷物情報取得部および抵抗値情報取得部により取得された情報に基づいて、特徴量データ、媒体データ、第1の制御データ、および抵抗値データが入力され、画像形成部が使用すべき第2の制御データが出力される学習モデルを用いて、第2の制御データを生成するように構成される。
【0008】
本発明の一実施の形態における機械学習方法は、画像形成部によって実際に印刷がなされた印刷物における特徴量データと、印刷物に用いられた印刷媒体の媒体データと、印刷物を出力した際に画像形成部が使用した第1の制御データと、画像形成部において現像剤像を印刷媒体に転写する転写部における抵抗値を示す抵抗値データとを含む状態変数データセットを取得することと、画像形成部が使用すべき第2の制御データを含む教師データを取得することと、状態変数データセットおよび教師データに基づいて機械学習を行うことにより、特徴量データ、媒体データ、第1の制御データ、および抵抗値データが入力され第2の制御データが出力される学習モデルを生成することとを含んでいる。
【0009】
本発明の一実施の形態における画像処理方法は、画像形成部によって実際に印刷がなされた印刷物の特徴量データと、印刷物に用いられた印刷媒体の媒体データと、印刷物を出力した際に画像形成部が使用した第1の制御データとを取得することと、画像形成部において現像剤像を印刷媒体に転写する転写部における抵抗値を示す抵抗値データを取得することと、特徴量データ、媒体データ、第1の制御データ、および抵抗値データに基づいて、特徴量データ、媒体データ、第1の制御データ、および抵抗値データが入力され、画像形成部が使用すべき第2の制御データが出力される学習モデルを用いて、第2の制御データを生成することとを含んでいる。
【発明の効果】
【0010】
本発明の一実施の形態における機械学習装置および機械学習方法によれば、特徴量データ、媒体データ、第1の制御データ、および抵抗値データが入力され、画像形成部が使用すべき第2の制御データが出力される学習モデルを生成するようにしたので、印刷画像の画質を高めることができる。
【0011】
本発明の一実施の形態における画像処理装置および画像処理方法によれば、特徴量データ、媒体データ、第1の制御データ、および抵抗値データが入力され、画像形成部が使用すべき第2の制御データが出力される学習モデルを用いて、第2の制御データを生成するようにしたので、印刷画像の画質を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】一実施の形態に係る画像形成装置の一構成例を表す説明図である。
【
図2】
図1に示した現像部の一構成例を表す説明図である。
【
図3】
図1に示した画像形成装置の制御系の一構成例を表すブロック図である。
【
図4】
図3に示した印刷物情報取得部、抵抗値情報取得部、および制御データ生成部の一構成例を表すブロック図である。
【
図5】2次転写部における抵抗値と望ましい2次転写電圧との間の相関関係の一例を表す特性図である。
【
図6】
図3に示した制御データ生成モデルを生成する機械学習装置の一構成例を表すブロック図である。
【
図7】
図6に示したデータセット取得部、教師データ取得部、および学習モデル生成部の一構成例を表すブロック図である。
【
図8】
図7に示した学習モデル生成部におけるニューラルネットワークの一例を表す説明図である。
【
図9】
図3に示した画像形成装置の一動作例を表すフローチャートである。
【
図10】
図6に示した機械学習装置の一動作例を表すフローチャートである。
【
図11】変形例に係る画像形成装置の制御系の一構成例を表すブロック図である。
【
図12】2次転写部における抵抗値と望ましい2次転写電圧との間の相関関係の一例を表す他の特性図である。
【
図13】2次転写部における抵抗値と望ましい2次転写電圧との間の相関関係の一例を表す他の特性図である。
【
図14】
図11に示した画像形成装置の一動作例を表すフローチャートである。
【
図15】変形例に係る機械学習装置の一構成例を表すブロック図である。
【
図16】変形例に係る画像形成システムの一構成例を表すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。
【0014】
<実施の形態>
[構成例]
図1は、本発明の一実施の形態に係る画像処理装置(画像形成装置1)の一構成例を表すものである。画像形成装置1は、例えば、様々な種類の印刷媒体に対して、電子写真方式を用いて画像を形成するプリンタとして機能するものである。なお、本発明の実施の形態に係る機械学習装置は、本実施の形態により具現化されるので、併せて説明する。
【0015】
画像形成装置1は、媒体収容部11と、ホッピングローラ12と、媒体センサ13と、ピンチローラ14と、レジストローラ15と、5つの現像部20(現像部20S,20Y,20M,20C,20K)と、5つの露光ヘッド29(露光ヘッド29S,29Y,29M,29C,29K)と、5つの1次転写ローラ31(1次転写ローラ31S,31Y,31M,31C,31K)と、中間転写ベルト32と、駆動ローラ33と、従動ローラ34と、バックアップローラ35と、クリーニングブレード36と、廃トナー収容部37と、2次転写ローラ41と、媒体センサ42と、定着部50と、媒体センサ43と、搬送ローラ44,45と、排出ローラ46とを備えている。
【0016】
媒体収容部11は、画像が形成される印刷媒体9を収容するように構成される。ホッピングローラ12は、媒体収容部11から印刷媒体9を取り出し、取り出した印刷媒体9を搬送路8に沿って送り出すように構成される。媒体センサ13は、印刷媒体9の通過を検出するように構成される。ピンチローラ14は、搬送路8を通過する印刷媒体9の斜行(スキュー)を矯正するように構成され、搬送路8を挟んでレジストローラ15と対向配置される。レジストローラ15は、印刷媒体9を搬送路8に沿って2次転写部40に向かって送り出すように構成され、搬送路8を挟んでピンチローラ14と対向配置される。搬送路8には、印刷媒体9を導くガイド(図示せず)が設けられ、印刷媒体9は、このガイドにより導かれることにより、搬送路8に沿って搬送方向F1に搬送されるようになっている。
【0017】
5つの現像部20は、トナー像をそれぞれ形成するように構成される。具体的には、現像部20Sは、白色や蛍光色などの特殊色のトナー像を形成し、現像部20Yは黄色(Y)のトナー像を形成し、現像部20Mはマゼンタ色(M)のトナー像を形成し、現像部20Cはシアン色(C)のトナー像を形成し、現像部20Kはいわゆるキープレート(Key plate)に対応する黒色(K)のトナー像を形成するようになっている。現像部20S,20Y,20M,20C,20Kは、中間転写ベルト32の搬送方向F2においてこの順に配置される。
【0018】
図2は、現像部20の一構成例を表すものである。現像部20は、感光ドラム21と、クリーニングブレード22と、帯電ローラ23と、現像ローラ24と、現像ブレード25と、供給ローラ26と、トナー収容部27とを有している。
【0019】
感光ドラム21は、表面(表層部分)に静電潜像を担持するように構成される。感光ドラム21は、図示しないドラムモータから伝達された動力により、この例では時計回りで回転する。感光ドラム21は、帯電ローラ23により帯電し、露光ヘッド29により露光される。これにより、感光ドラム21の表面には、静電潜像が形成される。そして、感光ドラム21に、現像ローラ24によりトナーが供給されることにより、感光ドラム21には、静電潜像に応じたトナー像が形成されるようになっている。
【0020】
クリーニングブレード22は、感光ドラム21の表面(表層部分)に残留するトナーを掻き取ってクリーニングするように構成される。そして、掻き取られたトナーは、廃トナーボックス(図示せず)に廃トナーとして回収されるようになっている。
【0021】
帯電ローラ23は、感光ドラム21の表面(表層部分)を帯電させるように構成される。帯電ローラ23は、感光ドラム21の表面(周面)に接するように配置され、所定の押し付け量で感光ドラム21に押し付けられるように配置される。帯電ローラ23は、感光ドラム21の回転に応じて、この例では反時計回りで回転する。帯電ローラ23には、画像形成制御部65(後述)により帯電電圧が印加されるようになっている。
【0022】
現像ローラ24は、トナーを表面に担持するように構成される。現像ローラ24は、感光ドラム21の表面(周面)に接するように配置され、所定の押し付け量で感光ドラム21に押し付けられるように配置される。現像ローラ24は、図示しないドラムモータから伝達された動力により、この例では反時計回りで回転する。現像ローラ24には、画像形成制御部65(後述)により現像電圧が印加されるようになっている。
【0023】
現像ブレード25は、現像ローラ24の表面に当接することにより、この現像ローラ24の表面にトナーからなる層(トナー層)を形成させるとともに、そのトナー層の厚さを規制(制御,調整)するように構成される。現像ブレード25は、折れ曲がった部分が現像ローラ24の表面に当接するように配置されるとともに、所定の押し付け量で現像ローラ24に押し付けられるように配置される。現像ブレード25には、画像形成制御部65(後述)により規制電圧が印加されるようになっている。
【0024】
供給ローラ26は、トナー収容部27内に収容されたトナーを、現像ローラ24に対して供給するように構成される。供給ローラ26は、現像ローラ24の表面(周面)に接するように配置され、所定の押し付け量で現像ローラ24に押し付けられるように配置される。供給ローラ26は、図示しないドラムモータから伝達された動力により、この例では反時計回りで回転する。これにより、各現像部20では、供給ローラ26の表面と現像ローラ24の表面との間に摩擦が生じる。その結果、各現像部20では、トナーが、いわゆる摩擦帯電により帯電する。供給ローラ26には、画像形成制御部65(後述)により供給電圧が印加されるようになっている。
【0025】
トナー収容部27は、現像部20において使用されるトナーを収容するように構成される。具体的には、現像部20Sのトナー収容部27は特殊色のトナーを収容し、現像部20Yのトナー収容部27は黄色のトナーを収容し、現像部20Mのトナー収容部27はマゼンタ色のトナーを収容し、現像部20Cのトナー収容部27はシアン色のトナーを収容し、現像部20Kのトナー収容部27は黒色のトナーを収容するようになっている。
【0026】
5つの露光ヘッド29(
図1)は、感光ドラム21に対して光を照射するように構成される。露光ヘッド29は、例えば、主走査線方向(
図1における奥行方向)に並設された複数の発光ダイオードを有し、これらの発光ダイオードを用いて、ドット単位で感光ドラム21に対して光を照射する。これにより、これらの感光ドラム21は、対応する露光ヘッド29により露光され、感光ドラム21の表面に、静電潜像が形成されるようになっている。
【0027】
5つの1次転写ローラ31は、5つの現像部20により形成されたトナー像を、中間転写ベルト32の被転写面上に静電的にそれぞれ転写(1次転写)するように構成される。1次転写ローラ31Sは、中間転写ベルト32を介して現像部20Sの感光ドラム21に対向配置され、1次転写ローラ31Yは、中間転写ベルト32を介して現像部20Yの感光ドラム21に対向配置され、1次転写ローラ31Mは、中間転写ベルト32を介して現像部20Mの感光ドラム21に対向配置され、1次転写ローラ31Cは、中間転写ベルト32を介して現像部20Cの感光ドラム21に対向配置され、1次転写ローラ31Kは、中間転写ベルト32を介して現像部20Kの感光ドラム21に対向配置される。各1次転写ローラ31には、画像形成制御部65(後述)により1次転写電圧が印加されるようになっている。
【0028】
中間転写ベルト32は、この例では5つの現像部20により形成されたトナー像を担持する無端の弾性ベルトであり、駆動ローラ33、従動ローラ34、およびバックアップローラ35によって張設(張架)される。中間転写ベルト32は、駆動ローラ33の回転に応じて、搬送方向F2の方向に循環搬送されるようになっている。
【0029】
駆動ローラ33は、中間転写ベルト32を循環搬送させるように構成される。この例では、駆動ローラ33は、搬送方向F2において、5つの現像部20の下流に配置され、ベルトモータ(図示せず)から伝達された動力により、この例では反時計回りで回転する。これにより、駆動ローラ33は、中間転写ベルト32を搬送方向F2の方向へ循環搬送させるようになっている。
【0030】
従動ローラ34は、中間転写ベルト32の循環搬送に応じて従動回転するように構成される。従動ローラ34は、搬送方向F2において、5つの現像部20の上流に配置されている。
【0031】
バックアップローラ35は、中間転写ベルト32の循環搬送に応じて従動回転するように構成される。バックアップローラ35は、印刷媒体9を搬送する搬送路8および中間転写ベルト32を挟んで、2次転写ローラ41と対向配置される。バックアップローラ35は、この2次転写ローラ41とともに、2次転写部40を構成する。
【0032】
クリーニングブレード36は、中間転写ベルト32の被転写面上に付着した残留トナーなどの付着物を掻き取ってクリーニングするように構成される。クリーニングブレード36は、この例では、搬送方向F2における2次転写部40の下流において、中間転写ベルト32の被転写面に当接するように配置される。
【0033】
廃トナー収容部37は、クリーニングブレード36により掻き取られた付着物を収容するように構成される。
【0034】
2次転写ローラ41は、中間転写ベルト32の被転写面上のトナー像を、印刷媒体9の被転写面上に転写(2次転写)するように構成される。2次転写ローラ41は、搬送路8および中間転写ベルト32を挟んで、バックアップローラ35と対向配置され、所定の押し付け量でバックアップローラ35に押し付けられるように配置される。2次転写ローラ41は、バックアップローラ35とともに、2次転写部40を構成する。2次転写ローラ41には、画像形成制御部65(後述)により2次転写電圧が印加されるようになっている。2次転写電圧の電圧値は、例えば、1000V~5000V程度の電圧範囲内の電圧である。また、後述するように、画像形成装置1が2次転写部40における抵抗値R40を検出する際に、この2次転写ローラ41には、画像形成制御部65(後述)により検出電圧V1が印加される。検出電圧V1の電圧値は、例えば、1000V~5000V程度の電圧範囲内の電圧である。そして、画像形成装置1は、この検出電圧V1と、2次転写ローラ41およびバックアップローラ35の間に流れる電流とに基づいて、2次転写部40における抵抗値R40を検出するようになっている。
【0035】
媒体センサ42は、印刷媒体9の通過を検出するように構成される。
【0036】
定着部50は、2次転写部40から供給された印刷媒体9に対して熱および圧力を付与することにより、印刷媒体9上に転写されたトナー像を印刷媒体9に定着させるように構成される。定着部50は、ヒートローラ51と、加圧ローラ53と、サーミスタ54を有する。ヒートローラ51は、その内部にハロゲンヒータ等のヒータ52を含んで構成されており、印刷媒体9上のトナーに対して熱を付与するように構成される。ヒートローラ51は、ヒータモータ(図示せず)から伝達された動力により回転するようになっている。加圧ローラ53は、ヒートローラ51との間に圧接部が形成されるように配置されており、印刷媒体9上のトナーに対して圧力を付与するように構成される。サーミスタ54は、ヒートローラ51の温度(定着温度)を検出するように構成される。この定着温度は、画像形成制御部65(後述)により制御される。これにより、定着部50では、印刷媒体9上のトナーが、加熱され、融解し、加圧される。その結果、トナー像が印刷媒体9上に定着するようになっている。
【0037】
媒体センサ43は、印刷媒体9の通過を検出するように構成される。搬送ローラ44は、搬送路8を挟んで配置された一対のローラであり、定着部50から供給された印刷媒体9を、搬送路8に沿って搬送するように構成される。搬送ローラ45は、搬送路8を挟んで配置された一対のローラであり、搬送路8に沿って搬送された印刷媒体9を、排出ローラ46に向かって搬送するように構成される。排出ローラ46は、搬送路8を挟んで配置された一対のローラであり、印刷媒体9を画像形成装置1の外部のスタッカ47に排出するように構成される。
【0038】
図3は、画像形成装置1における制御系の一構成例を表すものである。画像形成装置1は、通信部61と、表示操作部62と、環境センサ63と、電流センサ64と、画像形成制御部65と、処理部70と、記憶部66とを備えている。
【0039】
通信部61は、LAN(Local Area Network)を用いて通信を行うように構成される。通信部61は、この例では、ネットワークNETを介して、情報処理装置91および画像読取装置92に接続される。情報処理装置91は、例えばパーソナルコンピュータであり、画像読取装置92は、いわゆるスキャナである。通信部61は、例えば、情報処理装置91から送信された印刷データや、画像読取装置92から送信された読取画像データを受信することができるようになっている。
【0040】
表示操作部62は、ユーザの操作を受け付けるとともに、画像形成装置1の動作状態などを表示するように構成される。表示操作部62は、例えば各種ボタン、タッチパネル、液晶ディスプレイ、各種インジケータなどを用いて構成される。
【0041】
環境センサ63は、画像形成装置1の周囲の温度および湿度を検出するように構成される。
【0042】
電流センサ64は、2次転写部40に流れる電流を検出するように構成される。画像形成装置1は、後述するように、印刷物に印刷不良が発生した場合に、印刷媒体9に画像を形成することなく、印刷媒体9を搬送することにより、2次転写部40における抵抗値R40を検出する。その際、電流センサ64は、2次転写部40において、トナー像が形成されていない印刷媒体9が通過している期間において、2次転写ローラ41に検出電圧V1が印加されている場合に、2次転写ローラ41とバックアップローラ35との間に流れる電流の電流値を検出する。そして、電流センサ64は、検出した電流値についての情報を処理部70の抵抗値情報取得部73(後述)に供給するようになっている。
【0043】
画像形成制御部65は、処理部70からの指示に基づいて、画像形成装置1における画像形成動作を制御するように構成される。具体的には、画像形成制御部65は、例えば、5つの露光ヘッド29における露光動作を制御する。また、画像形成制御部65は、各種電源の動作を制御することにより、帯電電圧、現像電圧、規制電圧、供給電圧、1次転写電圧、2次転写電圧、および検出電圧V1の生成動作を制御する。また、画像形成制御部65は、各種モータの動作を制御することにより、印刷媒体9の搬送動作、現像部20におけるトナー像の形成動作、および中間転写ベルト32の搬送動作を制御する。また、画像形成制御部65は、定着部50のサーミスタ54による定着温度の検出結果に基づいて、ヒータ52への通電を制御することにより、定着温度を制御するようになっている。
【0044】
処理部70は、画像形成装置1内の各ブロックの動作を制御することにより、画像形成装置1の全体動作を制御するように構成される。処理部70は、例えば、CPU(Central Processing Unit)、情報を一時的に記憶するRAM(Random Access Memory)などを用いて構成される。処理部70は、画像形成処理部71と、印刷物情報取得部72と、抵抗値情報取得部73と、制御データ生成部74とを有している。
【0045】
画像形成処理部71は、例えば印刷データに基づいて、印刷データに含まれる画像データに対して所定の画像処理を行うとともに、例えば画像形成装置1の周囲の温度および湿度や、印刷媒体の種類などに基づいて、画像形成を行う際に使用する制御パラメータの設定値(制御データ)を生成するように構成される。処理部70は、画像形成処理部71により画像処理が施された画像データ、および画像形成処理部71により生成された制御データを画像形成制御部65に供給することにより、画像形成制御部65に対して画像形成動作を指示するようになっている。
【0046】
印刷物情報取得部72、抵抗値情報取得部73、および制御データ生成部74は、画像形成装置1が実際に印刷を行い、印刷物に印刷不良が生じた場合に、その印刷不良を改善可能な制御データ123を生成するように構成される。
【0047】
図4は、印刷物情報取得部72、抵抗値情報取得部73、および制御データ生成部74の一例を表すものである。
【0048】
印刷物情報取得部72は、画像形成装置1が実際に印刷を行い、印刷物に印刷不良が生じた場合に、その印刷物についての情報(印刷物情報100)を取得するように構成される。印刷物情報100は、画像データ101と、媒体データ102と、制御データ103と、環境データ104とを含んでいる。
【0049】
画像データ101は、画像読取装置92が、画像形成装置1により印刷された、印刷不良が生じた印刷物の画像を読み取ることにより生成した画像データであり、印刷不良が生じた印刷物と同様の印刷不良についての情報を含む。印刷物情報取得部72は、画像読取装置92が送信し、通信部61が受信した画像データ101を取得することができる。なお、これに限定されるものではなく、例えば、スマートフォンやタブレット端末などのカメラが印刷物を撮像し、印刷物情報取得部72は、その撮像結果に基づいて画像データ101を取得してもよい。また、例えば、画像形成装置1における印刷媒体9の排出口に画像読取センサが設けられている場合には、この画像読取センサが印刷物の画像を読み取り、印刷物情報取得部72は、この読取結果に基づいて画像データ101を取得してもよい。
【0050】
媒体データ102は、印刷不良が生じた印刷物の印刷媒体9についての様々なデータであり、好適には印刷媒体9のコーティングの有無、素材、厚さ、重量、および密度に関するデータを含んでいる。ここで、素材に関するデータは、印刷媒体9に用いられている主要な素材を特定すれば足り、付加的に含まれる素材についての情報までをも要するものでは必ずしもない。また、重量に関するデータは、印刷媒体9の重さに関連する特性を示すものであれば種々のものを利用可能であり、具体的には、例えば坪量や連量といった、画像形成装置の技術分野において一般に用いられるものを利用することができる。密度に関するデータは、例えば、厚さおよび重量(坪量)に基づいて得ることができる。例えば、ユーザが表示操作部62を操作して、印刷媒体9に予め付与された製品コードを入力した場合に、印刷物情報取得部72は、その製品コードに基づいて媒体データ102を取得することができる。なお、これに限定されるものではなく、印刷物情報取得部72は、例えば、通信部61が受信した印刷データに含まれる、印刷媒体9についてのデータに基づいて、媒体データ102を取得してもよい。また、例えば、印刷物情報取得部72は、画像形成装置1に印刷媒体9についての情報を検出するセンサが設けられている場合には、印刷物情報取得部72は、このセンサの検出結果に基づいて媒体データ102を取得してもよい。
【0051】
制御データ103は、印刷不良が生じた印刷物を印刷したときに画像形成装置1が用いた制御データであり、この例では、2次転写電圧の設定値および定着温度の設定値を含む。すなわち、
図1に示した画像形成装置1では、2次転写電圧および定着温度が、画質に大きな影響を及ぼし得るものであり、印刷不良との間に高い相関関係を有している。具体的には、例えば、2次転写電圧が高いことは、主にちり(白点が発生する印刷不良)の原因となり、反対に2次転写電圧が低いことは、主にかすれ(色が薄くなる印刷不良)の原因となる。また、定着温度が高いことは、主に斑点(斑点状の模様が発生する印刷不良)の原因となり、反対に定着温度が低いことは、主に定着不良(トナー剥がれの印刷不良)やいわゆる画ずれ(濃度の薄い部分が生じる印刷不良)の原因となる。よって、制御データ103は、2次転写電圧および定着温度の設定値を含むようにしている。印刷物情報取得部72は、印刷不良が生じた印刷物を印刷したときに画像形成処理部71が生成した制御データに基づいて、この制御データ103を取得するようになっている。
【0052】
環境データ104は、画像形成装置1が、印刷不良が生じた印刷物を印刷したときの、画像形成装置1の周囲の温度および湿度のデータである。印刷物情報取得部72は、例えば、環境センサ63の検出結果に基づいて、この環境データ104を取得することができる。なお、これに限定されるものではなく、例えば、画像形成装置1の外部に環境センサが設けられている場合には、印刷物情報取得部72は、この環境センサの検出結果に基づいて環境データ104を取得してもよい。また、例えば、ユーザが表示操作部62を操作することにより、画像形成装置1の周囲の温度および湿度のデータを入力し、印刷物情報取得部72は、この入力データに基づいて環境データ104を取得してもよい。
【0053】
印刷物情報取得部72は、このような画像データ101、媒体データ102、制御データ103、および環境データ104を含む印刷物情報100を取得し、この印刷物情報100を記憶部66に記憶させる。そして、印刷物情報取得部72は、この印刷物情報100を制御データ生成部74に供給するようになっている。
【0054】
抵抗値情報取得部73は、画像形成装置1が実際に印刷を行い、印刷物に印刷不良が生じた場合に、電流センサ64の検出結果に基づいて、2次転写部40における抵抗値R40についての情報(抵抗値情報110)を取得するように構成される。抵抗値情報110は、抵抗値データ111を含んでいる。抵抗値データ111は、2次転写部40における抵抗値R40のデータである。画像形成装置1は、後述するように、印刷物に印刷不良が発生した場合に、印刷媒体9に画像を形成することなく、印刷媒体9を搬送することにより、2次転写部40における抵抗値R40を検出する。抵抗値情報取得部73は、検出電圧V1の電圧値を、電流センサ64が検出した、2次転写ローラ41とバックアップローラ35との間に流れる電流の電流値で除算することにより、2次転写部40における抵抗値R40を算出する。この抵抗値R40は、例えば、印刷媒体9の抵抗値、2次転写ローラ41の抵抗値、中間転写ベルト32の抵抗値、バックアップローラ35の抵抗値などを含む。2次転写部40における抵抗値R40を検出する場合には、印刷媒体9に画像を形成しないので、印刷媒体9にはトナー像は形成されていない。よって、検出した抵抗値R40はトナーの影響を受けない。抵抗値情報取得部73は、このように、2次転写部40における抵抗値R40を検出することにより、この抵抗値R40についての情報を含む抵抗値データ111を生成する。抵抗値情報取得部73は、このようにして、抵抗値データ111を含む抵抗値情報110を取得し、この抵抗値情報110を記憶部66に記憶させる。そして、抵抗値情報取得部73は、この抵抗値情報110を制御データ生成部74に供給するようになっている。
【0055】
制御データ生成部74は、予め機械学習を行うことにより生成され記憶部66に記憶された制御データ生成モデルMを用いて、印刷不良を改善可能な制御データ123を生成するように構成される。制御データ生成モデルMは、画像データ101、媒体データ102、制御データ103、環境データ104、および抵抗値データ111が入力され、印刷不良を改善可能な、2次転写電圧の設定値および定着温度の設定値を含む制御データ123が出力されるように構成される。制御データ生成部74は、このような制御データ生成モデルMを用いて、印刷物情報取得部72が取得した画像データ101、媒体データ102、制御データ103、および環境データ104と、抵抗値情報取得部73が取得した抵抗値データ111とに基づいて、印刷不良を改善可能な制御データ123を生成する。そして、制御データ生成部74は、生成した制御データ123を記憶部66に記憶させるようになっている。
【0056】
このように、画像形成装置1では、画像データ101、媒体データ102、制御データ103、環境データ104に加え、2次転写部40における抵抗値R40のデータである抵抗値データ111を、制御データ生成モデルMに入力することにより、制御データ123を生成する。これにより、画像形成装置1では、以下に示すように、印刷画像の画質を高めることができる。
【0057】
図5は、2次転写部40における抵抗値R40と、良好な画質が得られる望ましい2次転写電圧との関係を表すものである。2次転写部40における抵抗値と、望ましい2次転写電圧との間には、
図5に示したような、1次関数的な相関関係がある。この相関関係では、2次転写部40における抵抗値R40が大きい場合には、望ましい2次転写電圧は高くなり、2次転写部40における抵抗値R40が小さい場合には、望ましい2次転写電圧は低くなる。例えば、抵抗値が高い印刷媒体9に画像を形成する場合において、2次転写電圧を低くすると、あまり電流が流れず適切に2次転写を行うことができないので、かすれ(色が薄くなる印刷不良)が生じ得る。また、例えば、抵抗値が低い印刷媒体9に画像を形成する場合において、2次転写電圧を高くすると、ちり(白点が発生する印刷不良)が生じ得る。よって、
図5に示したように、2次転写部40における抵抗値R40が大きい場合には2次転写電圧を高くすることが望ましく、2次転写部40における抵抗値R40が小さい場合には2次転写電圧を低くすることが望ましい。制御データ生成モデルMでは、機械学習により、2次転写部40における抵抗値R40と、望ましい2次転写電圧との間のこのような相関関係が反映されている。これにより、画像形成装置1では、印刷画像の画質を高めることができるようになっている。
【0058】
記憶部66(
図3)は、画像形成装置1において使用される様々なデータを記憶する不揮発性の記憶装置である。記憶部66は、制御データ生成モデルM、印刷物情報100、抵抗値情報110、および制御データ123を記憶する。制御データ生成モデルMは、後述する機械学習装置200により生成され、記憶部66に予め記憶される。印刷物情報100は、印刷物情報取得部72により取得され、記憶部66に記憶される。抵抗値情報110は、抵抗値情報取得部73により取得され、記憶部66に記憶される。制御データ123は、制御データ生成部74により生成され、記憶部66に記憶される。
【0059】
この構成により、画像形成装置1では、実際に印刷を行い、印刷物に印刷不良が生じた場合に、印刷物情報取得部72が印刷物情報100(画像データ101、媒体データ102、制御データ103、および環境データ104)を取得し、抵抗値情報取得部73が抵抗値情報110(抵抗値データ111)を取得し、制御データ生成部74が印刷物情報100および抵抗値情報110に基づいて、その印刷不良を改善可能な制御データ123を生成する。これにより、画像形成装置1は、印刷画像の画質を高めることができるようになっている。
【0060】
(機械学習装置200)
図6は、制御データ生成モデルMを生成する機械学習装置200の一構成例を表すものである。機械学習装置200は、例えば画像形成装置1の製造業者の技術者が操作する装置である。機械学習装置200は、この例では、パーソナルコンピュータである。機械学習装置200には、ディスプレイ201と、キーボード202と、マウス203と、画像読取装置204とが接続されている。ディスプレイ201は、機械学習装置200から供給された画像信号に基づいて画像を表示するものである。キーボード202およびマウス203は、ユーザが情報を入力する際に用いるものである。画像読取装置204は、いわゆるスキャナである。
【0061】
機械学習装置200は、処理部210と、記憶部220と、メモリ230と、インタフェース240と、ディスプレイインタフェース250と、通信部260とを有している。処理部210、記憶部220、メモリ230、インタフェース240、ディスプレイインタフェース250、および通信部260は、バス290に接続されている。
【0062】
処理部210は、例えばCPUを用いて構成される。処理部210は、データセット取得部211と、教師データ取得部212と、学習モデル生成部213とを有している。
【0063】
図7は、データセット取得部211、教師データ取得部212、および学習モデル生成部213の一構成例を表すものである。
【0064】
データセット取得部211は、印刷不良が生じた印刷物PについてのデータセットDSを取得するように構成される。データセットDSは、画像データ221と、媒体データ222と、制御データ223と、環境データ224と、抵抗値データ271とを含んでいる。
【0065】
画像データ221は、画像読取装置204が、例えば印刷不良が生じた印刷物Pを読み取ることにより生成した画像データである。データセット取得部211は、例えば、画像読取装置204から供給された画像データ221を取得するようになっている。なお、これに限定されるものではなく、例えば、通信部260が、他の装置と通信を行うことにより、画像データ221を取得してもよい。
【0066】
媒体データ222は、媒体データ102と同様に、印刷物Pの印刷媒体9についての様々なデータである。データセット取得部211は、例えば技術者がキーボード202やマウス203を操作して、印刷媒体9についての情報を入力することにより、媒体データ222を取得することができる。なお、これに限定されるものではなく、例えば、通信部260が、他の装置と通信を行うことにより、媒体データ222を取得してもよい。
【0067】
制御データ223は、制御データ103と同様に、印刷物Pを印刷した画像形成装置1が用いた制御データであり、2次転写電圧の設定値および定着温度の設定値を含む。例えば技術者は、印刷物Pを印刷した画像形成装置において使用された制御データに基づいて、制御データ223を得ることができる。データセット取得部211は、例えば技術者がキーボード202やマウス203を操作して、画像形成装置1において使用された制御パラメータの設定値を入力することにより、制御データ223を取得することができる。なお、これに限定されるものではなく、例えば、通信部260が、他の装置と通信を行うことにより、制御データ223を取得してもよい。
【0068】
環境データ224は、環境データ104と同様に、印刷物Pを印刷した画像形成装置1の周囲の温度および湿度のデータである。データセット取得部211は、例えば技術者がキーボード202やマウス203を操作して、測定した温度や湿度についての情報を入力することにより、環境データ224を取得することができる。なお、これに限定されるものではなく、例えば、通信部260が、他の装置と通信を行うことにより、環境データ224を取得してもよい。
【0069】
抵抗値データ271は、抵抗値データ111と同様に、印刷物Pを印刷した画像形成装置1の2次転写部40における抵抗値R40のデータである。データセット取得部211は、例えば技術者がキーボード202やマウス203を操作して、印刷物Pを印刷した画像形成装置において検出された、2次転写部40における抵抗値R40を入力することにより、抵抗値データ271を取得することができる。なお、これに限定されるものではなく、例えば、通信部260が、他の装置と通信を行うことにより、抵抗値データ271を取得してもよい。
【0070】
データセット取得部211は、印刷不良が生じた印刷物Pについての、このような画像データ221、媒体データ222、制御データ223、環境データ224、および抵抗値データ271を含むデータセットDSを取得する。データセット取得部211は、複数の印刷物Pのそれぞれについて、このようなデータセットDSを取得するようになっている。
【0071】
教師データ取得部212は、印刷物Pにおける印刷不良が十分に少なくなるように改善された制御データ283を含む教師データDTを取得するように構成される。制御データ283は、2次転写電圧の設定値および定着温度の設定値を含む。例えば技術者は、印刷物Pや、その印刷物Pを印刷した際に使用された制御データ等に基づいて、画質が向上する設定値を調べることにより、印刷不良が十分に少なくなるように改善された制御データを導き出すことができる。教師データ取得部212は、例えば技術者がキーボード202やマウス203を操作して、2次転写電圧や定着温度などの制御パラメータの設定値を入力することにより、制御データ283を取得することができる。なお、これに限定されるものではなく、例えば、通信部260が、他の装置と通信を行うことにより、制御データ283を取得してもよい。
【0072】
学習モデル生成部213は、データセット取得部211が取得したデータセットDS、および教師データ取得部212が取得した教師データDTに基づいて、機械学習を行うことにより、制御データ生成モデルMを生成するように構成される。学習モデル生成部213は、ニューラルネットワークモデルを用いた、いわゆる教師あり学習を行うことにより、制御データ生成モデルMを生成するようになっている。
【0073】
記憶部220(
図6)は、機械学習装置200において使用される様々なデータを記憶する不揮発性の記憶装置である。記憶部220は、データセットDS、教師データDT、および制御データ生成モデルMを記憶している。データセットDSは、データセット取得部211により取得され、記憶部220に記憶される。教師データDTは、教師データ取得部212により取得され、記憶部220に記憶される。制御データ生成モデルMは、学習モデル生成部213により生成され、記憶部220に記憶される。
【0074】
メモリ230は、処理部210が処理を行う際に一時的にデータを記憶するように構成される。インタフェース240は、機械学習装置200に外部機器を接続するためのインタフェースであり、この例では、キーボード202、マウス203、および画像読取装置204が接続されている。ディスプレイインタフェース250は、機械学習装置200にディスプレイ201を接続するためのインタフェースであり、ディスプレイ201に対して画像信号を供給するように構成される。通信部260は、例えばLANなどを用いて様々な装置に接続され、これらの装置との間で通信を行うように構成される。
【0075】
図8は、機械学習装置200において実施される教師あり学習のためのニューラルネットワークモデルの一例を表すものである。ニューラルネットワークモデルにおけるニューラルネットワークNNは、入力層LXにおけるk個のニューロンx(ニューロンx
1~x
k)と、第1中間層LY1おけるm個のニューロンy1(ニューロンy1
1~y1
m)と、第2中間層LY2におけるn個のニューロンy2(ニューロンy2
1~y2
n)と、出力層LZにおける2個のニューロンz(ニューロンz
1~z
2)とを有している。第1中間層および第2中間層は、隠れ層とも呼ばれる。ニューラルネットワークNNは、第1中間層および第2中間層の他に、さらに複数の隠れ層を有してもよく、あるいは第1中間層のみを隠れ層としてもよい。
【0076】
また、入力層と第1中間層との間、第1中間層と第2中間層との間、第2中間層と出力層との間には、層間のニューロンを接続するノードが張られており、それぞれのノードには、重みwi(iは自然数)が対応づけられている。
【0077】
以下に、データセットDSおよび教師データDTに基づいて、機械学習を実行することにより制御データ生成モデルMを生成する処理を例に挙げて説明する。
【0078】
学習モデル生成部213は、データセットDSを用いて、画像形成装置1の制御データと、その画像形成装置1が印刷した印刷物Pとの相関関係を学習する。具体的には、学習モデル生成部213は、データセットDSを入力層LXの複数のニューロンxに対応づけることにより、出力層LZの各ニューロンzの値を算出する。まず、学習モデル生成部213は、入力層LXのk個のニューロンxの値に基づいて、第1中間層LY1のm個のニューロンy1の値を算出する。具体的には、学習モデル生成部213は、第1中間層LY1の各ニューロンy1の値を、当該ニューロンy1に接続された、入力層LXのk個のニューロンxの値に基づいて、各ノードに対応づけられた重みWiを用いて重みづけ加算を行うことにより算出する。同様に、学習モデル生成部213は、第1中間層LY1のm個のニューロンy1の値に基づいて、第2中間層LY2のn個のニューロンy2の値を算出し、第2中間層LY2のn個のニューロンy2の値に基づいて、出力層LZの2つのニューロンzの値を算出する。このようにして、学習モデル生成部213は、データセットDSを入力層LXの複数のニューロンxに対応づけることにより、出力層LZにおける各ニューロンzの値を算出することができる。なお、データセットDSを入力層LXのk個のニューロンxに対応付けるに際し、データセットDSに含まれるデータをどのような形式で対応付けるかは、生成される制御データ生成モデルMの精度等を考慮して適宜設定することができる。例えば、データセットDSに含まれる画像データ221を入力層LXの複数のニューロンxに対応付ける場合には、その画像データを複数の領域に分割した上で、分割された各領域の色値(例えばRGB値)を入力層LXの複数のニューロンxにそれぞれ対応付けることができる。
【0079】
そして、学習モデル生成部213は、算出された出力層LZの2つのニューロンz1,z2の値と、教師データDTに含まれる2つのデータt1,t2の値とを、それぞれ比較して誤差を求める。ここで、ニューロンz1,z2の値は、この例では2次転写電圧の設定値および定着温度の設定値である。また、データt1,t2の値は、教師データDTにおける、2次転写電圧の設定値および定着温度の設定値である。そして、学習モデル生成部213は、求められた誤差が小さくなるように、各ノードに対応づけられた重みwiを調整する(バックプロバケーション)ことを反復する。
【0080】
そして、上述した一連の工程を所定回数反復して実施し、あるいは上述した誤差が許容値より小さくなること等の所定の条件が満たされるまで反復して実施した場合には、学習モデル生成部213は、学習を終了して、そのニューラルネットワークモデルを制御データ生成モデルMとして記憶部220に記憶する。このようにして、学習モデル生成部213は、ニューラルネットワークモデルのノードのそれぞれに対応づけられた全ての重みwiについての情報を含む制御データ生成モデルMを生成する。学習モデル生成部213は、例えば、印刷不良が生じた複数の印刷物Pについて、このような処理を行うことにより、制御データ生成モデルMを生成するようになっている。
【0081】
ここで、機械学習装置200は、本発明における「機械学習装置」の一具体例に対応する。データセット取得部211は、本発明における「データセット取得部」の一具体例に対応する。教師データ取得部212は、本発明における「教師データ取得部」の一具体例に対応する。学習モデル生成部213は、本発明における「学習モデル生成部」の一具体例に対応する。データセットDSは、本発明における「状態変数データセット」の一具体例に対応する。画像データ221は、本発明における「特徴量データ」の一具体例に対応する。媒体データ222は、本発明における「媒体データ」の一具体例に対応する。制御データ223は、本発明における「第1の制御データ」の一具体例に対応する。抵抗値データ271は、本発明における「抵抗値データ」の一具体例に対応する。教師データDTは、本発明における「教師データ」の一具体例に対応する。制御データ283は、本発明における「第2の制御データ」の一具体例に対応する。制御データ生成モデルMは、本発明における「学習モデル」の一具体例に対応する。現像部20、2次転写部40、および定着部50は、本発明における「画像形成部」の一具体例に対応する。2次転写部40は、本発明における「転写部」の一具体例に対応する。2次転写ローラ41は、本発明における「第1の回転体」の一具体例に対応する。バックアップローラ35は、本発明における「第2の回転体」の一具体例に対応する。
【0082】
画像形成装置1は、本発明における「画像処理装置」の一具体例に対応する。印刷物情報取得部72は、本発明における「印刷物情報取得部」の一具体例に対応する。抵抗値情報取得部73は、本発明における「抵抗値情報取得部」の一具体例に対応する。制御データ生成部74は、本発明における「制御データ生成部」の一具体例に対応する。制御データ105は、本発明における「制御データ」の一具体例に対応する。印刷物情報100は、本発明における「印刷物情報」の一具体例に対応する。画像データ101は、本発明における「画像データ」の一具体例に対応する。媒体データ102は、本発明における「媒体データ」の一具体例に対応する。制御データ103は、本発明における「第1の制御データ」の一具体例に対応する。環境データ104は、本発明における「環境データ」の一具体例に対応する。抵抗値データ111は、本発明における「抵抗値データ」の一具体例に対応する。
【0083】
[動作および作用]
続いて、本実施の形態の画像形成装置1および機械学習装置200の動作および作用について説明する。
【0084】
(全体動作概要)
まず、
図3,4を参照して、画像形成装置1の全体動作概要を説明する。画像形成装置1において、通信部61は、LANを用いて通信を行うことにより、情報処理装置91から送信された印刷データや、画像読取装置92から送信された読取画像データを受信する。表示操作部62は、ユーザの操作を受け付けるとともに、画像形成装置1の動作状態などを表示する。環境センサ63は、画像形成装置1の周囲の温度および湿度を検出する。処理部70の画像形成処理部71は、例えば印刷データに基づいて、印刷データに含まれる画像データに対して所定の画像処理を行うとともに、例えば画像形成装置1の周囲の温度および湿度や、印刷媒体の種類などに基づいて、制御パラメータの設定値(制御データ)を生成する。画像形成制御部65は、処理部70からの指示に基づいて、画像形成装置1における画像形成動作を制御する。
【0085】
画像形成装置1が実際に印刷を行い、印刷物に印刷不良が生じた場合に、印刷物情報取得部72は、その印刷物についての印刷物情報100(画像データ101、媒体データ102、制御データ103、および環境データ104)を取得する。画像形成装置1は、印刷媒体9に画像を形成することなく印刷媒体9を搬送し、画像形成制御部65は2次転写ローラ41に検出電圧V1を印加し、電流センサ64は2次転写部40に流れる電流を検出する。抵抗値情報取得部73は、電流センサ64の検出結果に基づいて2次転写部40における抵抗値R40を検出することにより抵抗値情報110(抵抗値データ111)を取得する。制御データ生成部74は、予め機械学習を行うことにより生成された制御データ生成モデルMを用いて、印刷物情報取得部72が取得した画像データ101、媒体データ102、制御データ103、および環境データ104と、抵抗値情報取得部73が取得した抵抗値データ111とに基づいて、印刷不良を改善可能な制御データ123を生成する。そして、画像形成制御部65は、この制御データ123に基づいて、画像形成装置1における画像形成動作を制御する。
【0086】
次に、
図6,7を参照して、機械学習装置200の全体動作概要を説明する。データセット取得部211は、印刷不良が生じた印刷物PについてのデータセットDS(画像データ221、媒体データ222、制御データ223、環境データ224、および抵抗値データ271)を取得する。教師データ取得部212は、印刷物Pにおける印刷不良が十分に少なくなるように改善された制御データ283を含む教師データDTを取得する。学習モデル生成部213は、データセット取得部211が取得したデータセットDS、および教師データ取得部212が取得した教師データDTに基づいて、機械学習を行うことにより、制御データ生成モデルMを生成する。そして、学習モデル生成部213は、生成した制御データ生成モデルMを、記憶部220に記憶させる。
【0087】
(画像形成装置1の詳細動作)
図9は、画像形成装置1の一動作例を表すものである。画像形成装置1は、実際に印刷を行い、印刷物に印刷不良が生じた場合に、印刷不良を改善可能な制御データ123を生成する。以下に、この動作について詳細に説明する。
【0088】
まず、処理部70は、印刷物に印刷不良が生じたかどうかを確認する(ステップS101)。具体的には、印刷物に印刷不良が生じた場合には、ユーザは、表示操作部62を操作し、印刷物に印刷不良が生じた旨を入力する。なお、これに限定されるものではなく、例えば、ユーザが、例えば画像形成装置1の製造業者のカスタマーサービスに対して印刷物に印刷不良が生じた旨を伝え、カスタマーサービスのスタッフが印刷物に印刷不良が生じた旨を入力してもよい。処理部70は、このようにして入力された情報に基づいて、印刷物に印刷不良が生じたかどうかを確認することができる。印刷物に印刷不良が生じていない場合(ステップS101において“N”)には、印刷物に印刷不良が生じるまで、ステップS101を繰り返す。
【0089】
ステップS101において、印刷物に印刷不良が生じた場合(ステップS101において“Y”)には、画像形成装置1は、例えば、動作モードを印刷不良改善モードに設定し、まず、2次転写部40における抵抗値R40を検出することにより抵抗値データ111を含む抵抗値情報110を取得する(ステップS102)。具体的には、まず、画像形成制御部65は、検出電圧V1を生成し、この検出電圧V1を2次転写ローラ41に印加する。そして、画像形成装置1は、印刷媒体9に画像を形成することなく、印刷媒体9を搬送する。電流センサ64は、2次転写部40においてトナー像が形成されていない印刷媒体9が通過している期間において、2次転写ローラ41とバックアップローラ35との間に流れる電流の電流値を検出する。そして、抵抗値情報取得部73は、検出電圧V1の電圧値を、電流センサ64が検出した、2次転写ローラ41とバックアップローラ35との間に流れる電流の電流値で除算することにより、2次転写部40における抵抗値R40を算出する。抵抗値情報取得部73は、このように、2次転写部40における抵抗値R40を検出することにより、この抵抗値R40についての情報を含む抵抗値データ111を生成する。抵抗値情報取得部73は、このようにして、抵抗値データ111を含む抵抗値情報110を取得し、この抵抗値情報110を記憶部66に記憶させる。
【0090】
次に、印刷物情報取得部72は、画像データ101、媒体データ102、制御データ103、および環境データ104を含む印刷物情報100を取得する(ステップS103)。
【0091】
具体的には、表示操作部62は、印刷不良が生じた印刷物を読み取ることにより生成された画像データの提供をユーザに促すメッセージを表示する。ユーザが、そのメッセージに応じて、画像読取装置92が、印刷不良が生じた印刷物を読み取るように、画像読取装置92を操作する。これにより、画像読取装置92は、画像データ101を生成し、その画像データ101を画像形成装置1に送信する。印刷物情報取得部72は、画像読取装置92から送信された画像データ101を取得する。
【0092】
また、表示操作部62は、印刷不良が生じた印刷物の印刷媒体9についてのデータの入力をユーザに促すメッセージを表示する。ユーザは、表示操作部62を操作して、印刷媒体9に予め付与された製品コードを入力する。印刷物情報取得部72は、その製品コードに基づいて媒体データ102を取得する。
【0093】
また、印刷物情報取得部72は、印刷不良が生じた印刷物を印刷したときに画像形成処理部71が生成した制御データに基づいて、制御データ103を取得し、環境センサ63の検出結果に基づいて、環境データ104を取得する。
【0094】
このようにして、印刷物情報取得部72は、画像データ101、媒体データ102、制御データ103、および環境データ104を含む印刷物情報100を取得する。そして、印刷物情報取得部72は、取得した印刷物情報100を記憶部66に記憶させる。
【0095】
次に、制御データ生成部74は、記憶部66から、制御データ生成モデルMを取得する(ステップS104)。
【0096】
次に、制御データ生成部74は、ステップS104において取得された制御データ生成モデルMを用いて、制御データ123を生成し、この制御データ123を記憶部66に記憶させる(ステップS105)。具体的には、制御データ生成部74は、制御データ生成モデルMを用いて、ステップS103において取得された画像データ101、媒体データ102、制御データ103、および環境データ104と、ステップS102において取得された抵抗値データ111とに基づいて、印刷不良を改善可能な制御データ123を生成する。そして、制御データ生成部74は、この制御データ123を記憶部66に記憶させる。
【0097】
次に、処理部70は、表示操作部62が、ステップS101において印刷不良が生じた印刷物についての、ユーザの再印刷指示操作を受け付けたかどうかを確認する(ステップS106)。表示操作部62がユーザの再印刷指示操作を受け付けていない場合(ステップS106において“N”)には、ユーザの再印刷指示操作を受け付けるまで、このステップS106の処理を繰り返す。
【0098】
ステップS106において、表示操作部62がユーザの再印刷指示操作を受け付けた場合(ステップS106において“Y”)には、画像形成装置1は、ステップS105において記憶された制御データ123を用いて、印刷処理を実行する(ステップS107)。これにより、ユーザは、印刷不良が解消した印刷物を得ることができる。
【0099】
以上で、このフローは終了する。
【0100】
このように、画像形成装置1では、印刷物情報取得部72および抵抗値情報取得部73により取得された情報に基づいて、画像データ101、媒体データ102、制御データ103、および抵抗値データ111が入力され、画像形成装置1が使用すべき制御データ123が出力される制御データ生成モデルMを用いて、制御データ123を生成するようにした。これにより、この制御データ生成モデルMでは、2次転写部40における抵抗値R40に応じた制御データ123が生成されるので、印刷画像の画質を高めることができる。
【0101】
また、画像形成装置1では、このように制御データ生成モデルMを用いて、使用すべき制御データ123を生成するようにしたので、例えば、いわゆるインダストリープリントのような、様々な種類の印刷媒体に印刷を行う場合に、印刷不良を低減することができるため、画質を高めることができる。すなわち、商品のパッケージ印刷、ワインボトル等に貼付されるラベル印刷、あるいは結婚式の招待状の印刷等のようなインダストリープリントでは、印刷の質が商品やサービスの価値に大きな影響を及ぼすので、画質が高いことが望まれている。画像形成装置1では、様々な種類の印刷媒体に印刷を行う場合に、画質を高めることができる。これにより、商品やサービスの価値を高めることができる。
【0102】
(機械学習装置200の詳細動作)
図10は、機械学習装置200の一動作例を表すものである。機械学習装置200は、印刷不良が生じた印刷物PについてのデータセットDSと、印刷物Pにおける印刷不良が十分に少なくなるように改善された制御データ283を含む教師データDTとに基づいて、いわゆる教師あり学習を行うことにより、制御データ生成モデルMを生成する。以下に、この動作について詳細に説明する。
【0103】
まず、処理部210は、機械学習において使用される制御データ生成モデルM0を準備する(ステップS201)。この制御データ生成モデルM0におけるニューラルネットワークでは、重みWiが所定の初期値に設定されている。
【0104】
次に、データセット取得部211は、画像データ221、媒体データ222、制御データ223、環境データ224、および抵抗値データ271を含むデータセットDSを取得する(ステップS202)。
【0105】
具体的には、ディスプレイ201は、印刷不良が生じた印刷物Pを読み取ることにより生成された画像データの提供を技術者に促すメッセージを表示する。技術者は、そのメッセージに応じて、画像読取装置204が印刷物Pを読み取るように、画像読取装置204を操作する。これにより、画像読取装置204は、画像データ221を生成し、その画像データ221を機械学習装置200に送信する。データセット取得部211は、画像読取装置204から送信された画像データ221を取得する。
【0106】
また、ディスプレイ201は、印刷不良が生じた印刷物Pの印刷媒体9についてのデータの入力を技術者に促すメッセージを表示する。技術者は、そのメッセージに応じて、キーボード202やマウス203を操作して、印刷媒体9についての情報を入力する。データセット取得部211は、この入力されたデータに基づいて媒体データ222を取得する。
【0107】
また、ディスプレイ201は、印刷不良が生じた印刷物Pを印刷したときに使用した制御データの入力を技術者に促すメッセージを表示する。技術者は、そのメッセージに応じて、キーボード202やマウス203を操作して、制御データを入力する。データセット取得部211は、この入力されたデータに基づいて制御データ223を取得する。
【0108】
また、ディスプレイ201は、印刷不良が生じた印刷物Pを印刷したときの温度や湿度の入力を技術者に促すメッセージを表示する。技術者は、そのメッセージに応じて、キーボード202やマウス203を操作して、温度や湿度を入力する。データセット取得部211は、この入力されたデータに基づいて環境データ224を取得する。
【0109】
また、ディスプレイ201は、印刷不良が生じた印刷物Pを印刷した画像形成装置1の2次転写部40における抵抗値R40の入力を技術者に促すメッセージを表示する。技術者は、そのメッセージに応じて、キーボード202やマウス203を操作して、2次転写部40における抵抗値R40を入力する。データセット取得部211は、この入力されたデータに基づいて抵抗値データ271を取得する。
【0110】
このようにして、データセット取得部211は、画像データ221、媒体データ222、制御データ223、環境データ224、および抵抗値データ271を含むデータセットDSを取得する。そして、データセット取得部211は、取得したデータセットDSを記憶部220に記憶させる。
【0111】
次に、教師データ取得部212は、制御データ283を含む教師データDTを取得する(ステップS203)。例えば技術者は、印刷物Pや、その印刷物Pを印刷した際に使用された制御データ等に基づいて、画質が向上する設定値を調べることにより、印刷不良が十分に少なくなるように改善された制御データを導き出すことができる。ディスプレイ201は、改善された制御データの入力を技術者に促すメッセージを表示する。技術者は、そのメッセージに応じて、キーボード202やマウス203を操作して、改善された制御データを入力する。教師データ取得部212は、この入力されたデータに基づいて制御データ283を含む教師データDTを取得する。そして、教師データ取得部212は、取得した教師データDTを記憶部220に記憶させる。
【0112】
次に、学習モデル生成部213は、データセットDSに含まれる画像データ221、媒体データ222、制御データ223、環境データ224、および抵抗値データ271を、制御データ生成モデルM0の入力層LXに入力する(ステップS204)。これにより、制御データ生成モデルM0の出力層LZから、2次転写電圧の設定値および定着温度の設定値を含む制御データが出力される。
【0113】
次に、学習モデル生成部213は、ステップS204において制御データ生成モデルM0の出力層LZから出力された制御データと、ステップS203において取得された教師データDTに含まれる制御データ283とを用いて、機械学習を実施する(ステップS205)。具体的には、学習モデル生成部213は、出力層LZから出力された制御データ(2次転写電圧の設定値および定着温度の設定値)と、教師データDTに含まれる制御データ283(2次転写電圧の設定値および定着温度の設定値)とをそれぞれ比較し、両者の誤差を検出し、この誤差が小さくなるようなデータが出力層LZから出力されるよう、制御データ生成モデルM0における重みWiを調整する。
【0114】
次に、学習モデル生成部213は、機械学習が終了したかどうかを確認する(ステップS206)。具体的には、学習モデル生成部213は、さらに機械学習を行う必要がないと判断する場合に、機械学習が終了したと判断する。機械学習が終了していない場合(ステップS206において“N”)には、ステップS202の処理に戻り、機械学習が終了するまで、ステップS202~S206の処理を繰り返す。このように繰り返すことにより、制御データ生成モデルM0の精度は向上していく。
【0115】
そして、ステップS206において、機械学習が終了した場合(ステップS206において“Y”)には、学習モデル生成部213は、この機械学習において使用した制御データ生成モデルM0を、学習済みの制御データ生成モデルMとして、記憶部220に記憶させる。
【0116】
以上で、このフローは終了する。
【0117】
このように、機械学習装置200では、データセットDS(画像データ221、媒体データ222、制御データ223、抵抗値データ271)および教師データDT(制御データ283)に基づいて機械学習を行うことにより、画像データ101、媒体データ102、制御データ103、および抵抗値データ111が入力され、画像形成装置1が使用すべき制御データ123が出力される制御データ生成モデルMを生成するようにした。これにより、この制御データ生成モデルMでは、2次転写部40における抵抗値R40に応じた制御データ123が生成されるので、印刷画像の画質を高めることができる。
【0118】
[効果]
以上のように本実施の形態では、印刷物情報取得部および抵抗値情報取得部により取得された情報に基づいて、画像データ、媒体データ、制御データ、および抵抗値データが入力され、画像形成装置が使用すべき制御データが出力される制御データ生成モデルを用いて、制御データを生成するようにしたので、印刷画像の画質を高めることができる。
【0119】
本実施の形態では、データセット(画像データ、媒体データ、制御データ、抵抗値データ)および教師データ(制御データ)に基づいて機械学習を行うことにより、画像データ、媒体データ、制御データ、および抵抗値データが入力され、画像形成装置が使用すべき制御データが出力される制御データ生成モデルを生成するようにしたので、印刷画像の画質を高めることができる。
【0120】
[変形例1]
上記実施の形態では、
図1に示したように、現像部20が形成したトナー像を、中間転写ベルト32に一旦転写し、中間転写ベルト32に転写されたトナー像を印刷媒体9に転写したが、これに限定されるものではなく、これに代えて、例えば、現像部20が形成したトナー像を、印刷媒体9に直接転写してもよい。この場合には、制御データ103,123,223,283は、現像部20が形成したトナー像を印刷媒体9に転写する際の転写電圧の設定値と、定着温度の設定値とを含むようにすることができる。その場合には、抵抗値データ111,271は、複数の現像部20のそれぞれにおける感光ドラム21とその感光ドラム21に対向する転写ローラからなる転写部における電流値のデータであってもよい。
【0121】
[変形例2]
上記実施の形態では、機械学習装置200(
図6,7)は、画像データ221に基づいて機械学習を行うことにより制御データ生成モデルMを生成したが、画像データ221に応じた特徴量であれば、どのようなものを用いてもよい。特徴量は、例えば、印刷不良の種類や程度などについてのデータであってもよい。この場合には、画像形成装置1における制御データ生成部74(
図3,4)は、画像データ101に応じたこの特徴量に基づいて制御データ123を生成することができる。
【0122】
[変形例3]
上記実施の形態では、機械学習装置200(
図6,7)は、環境データ224に基づいて制御データ生成モデルMを生成したが、これに限定されるものではない。これに代えて、例えば、機械学習装置200は、環境データ224を用いずに制御データ生成モデルMを生成してもよい。この場合には、画像形成装置1における制御データ生成部74(
図3,4)は、環境データ104を用いずに制御データ123を生成することができる。
【0123】
[変形例4]
上記実施の形態では、画像形成装置1は、媒体収容部11に収容された印刷媒体9に画像を形成するようにしたが、これに限定されるものではなく、さらに、いわゆる手差しトレイなどのマルチパーパストレイを設け、このトレイにセットされた印刷媒体9に画像を形成することができるようにしてもよい。これにより、画像形成装置1は、より様々な印刷媒体に画像を形成することができる。
【0124】
[変形例5]
上記実施の形態では、
図9に示したように、画像形成装置1は、ステップS102において、印刷媒体9に画像を形成することなく、印刷媒体9を搬送することにより、2次転写部40における抵抗値R40を検出するようにしたが、これに限定されるものではない。これに代えて、例えば、画像形成装置1は、印刷媒体9を搬送することにより2次転写部40における抵抗値R40を検出し、抵抗値R40を検出したその印刷媒体9に対して、制御データ123を用いて印刷処理を行うようにしてもよい。具体的には、例えば、画像形成装置1は、2次転写部40における2次転写ローラ41およびバックアップローラ35の間に、印刷媒体9の先頭付近が挟まれたときに、2次転写部40における抵抗値R40を検出し、その抵抗値R40のデータを含む抵抗値データ111を生成し、この抵抗値データ111に基づいて制御データ生成モデルMを用いて制御データ123を生成し、その制御データ123を用いてその印刷媒体9に画像を形成してもよい。また、画像形成装置1が、例えば両面印刷を行うことができる場合には、印刷媒体9が2次転写部40を最初に通過する期間において、2次転写部40における抵抗値R40を検出し、その抵抗値R40のデータを含む抵抗値データ111を生成し、この抵抗値データ111に基づいて制御データ生成モデルMを用いて制御データ123を生成し、その制御データ123を用いて、その印刷媒体9が次に2次転写部40を通過する期間において、その印刷媒体9に画像を形成してもよい。
【0125】
[変形例6]
上記実施の形態では、画像形成装置1は、2次転写ローラ41に検出電圧V1を印加し、2次転写ローラ41とバックアップローラ35との間に流れる電流を検出するようにした。この検出電圧V1は、固定された電圧であってもよいし、変更可能であってもよい。例えば、印刷媒体9の抵抗値が大きい場合において、検出電圧V1を低くした場合には、2次転写部40に流れる電流が少なくなるので、2次転写部40における抵抗値R40が大きくなり、抵抗値R40の検出精度が低下する能性がある。このように、印刷媒体9の抵抗値が大きい場合には、検出電圧V1を高くすることにより、抵抗値R40の検出精度を高めることができる。画像形成装置1は、2次転写ローラ41に、複数の検出電圧V1を順次印加し、複数の検出電圧V1のうち、2次転写ローラ41とバックアップローラ35との間に流れる電流の電流値が正常な電流値である検出電圧V1と、そのときの電流値に基づいて、2次転写部40における抵抗値R40を検出することができる。この場合、複数の検出電圧V1に応じて、複数の制御データ生成モデルMを設けるようにしてもよい。画像形成装置1は、複数の制御データ生成モデルMのうちの、使用した検出電圧V1に応じた制御データ生成モデルMを用いて、制御データ123を生成することができる。これにより、画像形成装置1では、様々な種類の印刷媒体9に対応することができる。1つの制御データ生成モデルMを用いる場合には、制御データ生成モデルMに入力されるデータは、検出電圧V1についてのデータを含むようにしてもよい。
【0126】
[変形例7]
上記実施の形態では、画像形成装置1の抵抗値情報取得部73は、検出電圧V1の電圧値を、電流センサ64が検出した、2次転写ローラ41とバックアップローラ35との間に流れる電流の電流値で除算することにより、2次転写部40における抵抗値R40を算出し、算出した抵抗値R40についての情報を含む抵抗値データ111を生成したが、これに限定されるものではない。これに代えて、抵抗値情報取得部は、例えば、算出した抵抗値R40に対して補正処理を行うことにより、抵抗値データ111を生成してもよい。以下に、本変形例について詳細に説明する。
【0127】
図11は、本変形例に係る画像形成装置2の一構成例を表すものである。画像形成装置2は、電流センサ164と、記憶部166と、処理部170とを備えている。
【0128】
電流センサ164は、上記実施の形態の場合と同様に、印刷物に印刷不良が発生した場合に、印刷媒体9に画像を形成することなく、印刷媒体9を搬送することにより、2次転写部40における抵抗値R40を検出する。その際、電流センサ164は、2次転写部40においてトナー像が形成されていない印刷媒体9が通過している期間において、2次転写ローラ41とバックアップローラ35との間に流れる電流の電流値を検出する。また、電流センサ64は、2次転写部40において印刷媒体9が通過していない期間において、2次転写ローラ41とバックアップローラ35との間に流れる電流の電流値IBを検出するようになっている。
【0129】
記憶部166は、モデル関連データDMを記憶している。モデル関連データDMは、制御データ生成モデルMに関連するデータである。この例では、モデル関連データDMは、機械学習装置200が制御データ生成モデルMを生成する際に用いたデータセットDSを得る際に用いた画像形成装置2における、電流値IAの情報を含んでいる。この電流値IAは、電流値IBと同様に、2次転写部40において印刷媒体9が通過していない期間における、2次転写ローラ41とバックアップローラ35との間に流れる電流の電流値である。すなわち、電流値IAは、制御データ生成モデルMを生成する際に用いたデータセットDSが得られた画像形成装置2の2次転写部40における電流の電流値であり、電流値IBは、この制御データ生成モデルMを用いて画像を形成する画像形成装置2の2次転写部40における電流の電流値である。
【0130】
処理部170は、抵抗値情報取得部173を有している。抵抗値情報取得部173は、上記実施の形態の場合と同様に、画像形成装置2が実際に印刷を行い、印刷物に印刷不良が生じた場合に、電流センサ164の検出結果に基づいて、2次転写部40における抵抗値R40についての情報(抵抗値情報110)を取得する。抵抗値情報取得部173は、補正部173Aを有している。補正部173Aは、2次転写部40における抵抗値R40を補正するように構成される。具体的には、補正部173Aは、記憶部166に記憶されたモデル関連データMDに含まれる電流値IAについての情報と、電流センサ164により検出された電流値IBに基づいて、電流値IA,IBの比(IB/IA)を算出し、2次転写部40における抵抗値R40にこの電流値IA,IBの比(IB/IA)を乗算することにより、2次転写部40における抵抗値R40を補正するようになっている。すなわち、制御データ生成モデルMを用いて画像を形成する画像形成装置2は、データセットDSを得る際に用いた画像形成装置2とは別の装置であるので、これらの2つの装置では、使用される部材の特性が異なる可能性がある。具体的には、例えば2次転写部40における2次転写ローラ41の抵抗値が互いに異なる可能性があり、バックアップローラ35の抵抗値が互いに異なる可能性があり、中間転写ベルト32の抵抗値が互いに異なる可能性がある。補正部173Aは、2次転写部40における抵抗値R40を補正することにより、以下に示すように、2次転写部40における抵抗値R40に対する、このような部材の特性差の影響を抑えることができる。ここで、補正部173Aは、本発明における「補正部」の一具体例に対応する。
【0131】
図12,13は、2つの画像形成装置2A,2Bにおける、2次転写部40における抵抗値R40と、良好な画質が得られる望ましい2次転写電圧との関係を表すものである。
図12は、補正前の抵抗値R40を用いてプロットした例を示し、
図13は、補正後の抵抗値R40を用いてプロットした例を示す。
図12に示した、補正前の抵抗値R40と、望ましい2次転写電圧との間の相関関係では、相関係数は約0.48であり、相関関係はやや弱い。一方、
図13に示した、補正後の抵抗値R40と、望ましい2次転写電圧との間の相関関係では、相関係数は約0.73であり、相関関係は強い。このように、画像形成装置2では、2次転写部40における抵抗値R40の補正を行うことにより、相関関係が強くなるので、制御データ生成モデルMを用いて生成された制御データ123の精度を高めることができる。実験例では、補正後の抵抗値R40を用いて生成された2次転写電圧の予測精度は、補正前の抵抗値R40を用いて生成された2次転写電圧の予測精度よりも約17%改善された。このように、画像形成装置2では、制御データ123の精度を高めることができるので、印刷画像の画質を高めることができる。
【0132】
図14は、画像形成装置2の一動作例を表すものである。ステップS101,S103~S107の処理は、上記実施の形態の場合(
図9)と同様である。
【0133】
ステップS101において、印刷物に印刷不良が生じた場合(ステップS101において“Y”)には、画像形成装置1は、例えば、動作モードを印刷不良改善モードに設定し、2次転写部40における電流値IBを検出する(ステップS112)。具体的には、まず、画像形成制御部65は、検出電圧V1を生成し、この検出電圧V1を2次転写ローラ41に印加する。そして、電流センサ164は、2次転写部40において印刷媒体9が通過していない期間において、2次転写ローラ41とバックアップローラ35との間に流れる電流の電流値IBを検出する。
【0134】
次に、画像形成装置2は、2次転写部40における抵抗値R40を検出する(ステップS113)。具体的には、画像形成装置1は、印刷媒体9に画像を形成することなく、印刷媒体9を搬送する。電流センサ164は、2次転写部40においてトナー像が形成されていない印刷媒体9が通過している期間において、2次転写ローラ41とバックアップローラ35との間に流れる電流の電流値を検出する。そして、抵抗値情報取得部73は、検出電圧V1の電圧値を、電流センサ164が検出した、2次転写ローラ41とバックアップローラ35との間に流れる電流の電流値で除算することにより、2次転写部40における抵抗値R40を算出する。
【0135】
次に、画像形成装置2は、2次転写部40における抵抗値R40を補正することにより抵抗値データ111を含む抵抗値情報110を取得する(ステップS113)。具体的には、抵抗値情報取得部173の補正部173Aは、記憶部166に記憶されたモデル関連データMDに含まれる電流値IAについての情報と、電流センサ164により検出された電流値IBに基づいて、電流値IA,IBの比(IB/IA)を算出し、2次転写部40における抵抗値R40にこの電流値IA,IBの比(IB/IA)を乗算することにより、2次転写部40における抵抗値R40を補正する。抵抗値情報取得部173は、このように、2次転写部40における抵抗値R40を補正することにより、補正後の抵抗値R40についての情報を含む抵抗値データ111を生成する。抵抗値情報取得部173は、このようにして、抵抗値データ111を含む抵抗値情報110を取得し、この抵抗値情報110を記憶部66に記憶させる。
【0136】
これ以降の処理は、上記実施の形態の場合と同様である。
【0137】
このように、画像形成装置2では、制御データ123の精度を高めることができるので、印刷画像の画質を高めることができる。
【0138】
[変形例8]
上記実施の形態では、機械学習装置200のデータセット取得部211は、例えば技術者がキーボード202やマウス203を操作して、印刷物Pを印刷した画像形成装置において検出された、2次転写部40における抵抗値R40を入力することにより、抵抗値データ271を取得したが、これに限定されるものではない。これに代えて、データセット取得部は、例えば、入力された抵抗値R40に対して補正処理を行うことにより、抵抗値データ271を取得してもよい。以下に、本変形例について詳細に説明する。
【0139】
図15は、本変形例に係る機械学習装置300の一構成例を表すものである。機械学習装置300は、処理部310を備えている。処理部310は、データセット取得部311を有している。
【0140】
データセット取得部311は、上記実施の形態に係るデータセット取得部211と同様に、印刷不良が生じた印刷物PについてのデータセットDSを取得するように構成される。データセット取得部211は、複数の印刷物Pのそれぞれについて、データセットDSを取得する。例えば、データセット取得部311は、例えば技術者がキーボード202やマウス203を操作して、印刷物Pを印刷した画像形成装置において検出された、2次転写部40における抵抗値R40を入力することにより、抵抗値データ271を取得することができる。データセット取得部311は、補正部311Aを有している。補正部311Aは、2次転写部40における抵抗値R40を補正するように構成される。すなわち、機械学習装置300は、複数のデータセットDSおよび複数の教師データDTを順次選択し、選択されたデータセットDSおよび教師データDTを用いて機械学習を行うことにより、制御データ生成モデルMを生成する。データセットDSおよび教師データDTは、互いに異なる画像形成装置1により得られる場合もあり得る。これらの2つの装置では、使用される部材の特性が異なる可能性がある。よって、変形例7の場合と同様に、補正部311Aは、2次転写部40における抵抗値R40を補正する。例えば、画像形成装置1の2次転写部40における電流値の設計値を、電流値IAとすることができる。これに限定されるものではなく、例えば、複数の画像形成装置1の2次転写部40における電流値の平均値を、電流値IAとしてもよい。また、現在処理を行っているデータセットDSを得た画像形成装置1の2次転写部40における電流値を、電流値IBとすることができる。電流値IA,IBは、変形例7の場合と同様に、2次転写部40において印刷媒体9が通過していない期間における、2次転写ローラ41とバックアップローラ35との間に流れる電流の電流値である。補正部311Aは、これらの電流値IA,IBに基づいて、電流値IA,IBの比(IB/IA)を算出し、入力された2次転写部40における抵抗値R40にこの電流値IA,IBの比(IB/IA)を乗算することにより、2次転写部40における抵抗値R40を補正する。ここで、補正部311Aは、本発明における「補正部」の一具体例に対応する。
【0141】
機械学習装置300の一動作例は、上記実施の形態に係る機械学習装置200の場合(
図10)と同様である。ステップS202において、抵抗値データ271は、データセット取得部311の補正部311Aにより補正されたものである。
【0142】
このように、機械学習装置300では、様々な画像形成装置1から得られたデータセットDSに基づいて制御データ生成モデルMを生成することができるので、例えば制御データ生成モデルMの精度を高めることができるため、印刷画像の画質を高めることができる。
【0143】
なお、この例では、複数の画像形成装置1を用いて複数のデータセットDSを得る場合を例に挙げて説明したが、これに限定されるものではない。これに代えて、例えば、画像形成装置1における部材の交換を想定して、2次転写部40における抵抗値R40を補正してもよい。また、例えば、画像形成装置1の経時変化を想定して、2次転写部40における抵抗値R40を補正してもよい。
【0144】
[変形例9]
上記実施の形態では、画像形成装置1が、制御データ生成モデルMを用いて制御データ123を生成するようにしたが、これに限定されるものではない。例えば、画像形成装置1に接続されたサーバが、制御データ123を決定してもよい。以下に、本変形例に係る画像形成システム400について詳細に説明する。
【0145】
図16は、本変形例に係る画像形成システム400の一構成例を表すものである。画像形成システム400は、画像形成装置401と、サーバ410とを備えている。
【0146】
サーバ410は、通信部461と、処理部470と、記憶部466とを備えている。
【0147】
通信部461は、ネットワークNETを介して、情報処理装置91、画像読取装置92、および画像形成装置401に接続される。ここで、通信部461は、本発明における「通信部」の一具体例に対応する。
【0148】
処理部470は、印刷物情報取得部472と、抵抗値情報取得部473と、制御データ生成部474とを有している。印刷物情報取得部472、抵抗値情報取得部473、および制御データ生成部474は、画像形成装置401が実際に印刷を行い、印刷物に印刷不良が生じた場合に、その印刷不良を改善可能な制御データ123を生成するように構成される。
【0149】
印刷物情報取得部472は、上記実施の形態に係る印刷物情報取得部72と同様に、画像形成装置401が実際に印刷を行い、印刷物に印刷不良が生じた場合に、その印刷物についての情報(印刷物情報100)を取得するように構成される。印刷物情報取得部472は、画像読取装置92および画像形成装置401と通信を行うことにより、印刷物情報100に含まれる画像データ101、媒体データ102、制御データ103、および環境データ104を取得する。具体的には、例えば、ユーザが画像読取装置92を操作して、画像読取装置92が印刷物を読み取ることにより画像データ101を生成した場合に、印刷物情報取得部472は、その画像データ101を取得する。また、例えば、ユーザが画像形成装置401の表示操作部を操作して、印刷媒体9に予め付与された製品コードを入力した場合に、印刷物情報取得部472は、その製品コードに基づいて媒体データ102を取得する。また、印刷物情報取得部472は、印刷不良が生じた印刷物を印刷したときに画像形成装置401が使用した制御データに基づいて、制御データ103を取得する。また、印刷物情報取得部472は、画像形成装置401における環境センサの検出結果に基づいて、環境データ104を取得する。
【0150】
抵抗値情報取得部473は、上記実施の形態に係る抵抗値情報取得部73と同様に、画像形成装置401が実際に印刷を行い、印刷物に印刷不良が生じた場合に、画像形成装置401の電流センサ64の検出結果に基づいて、2次転写部40における抵抗値R40についての情報(抵抗値情報110)を取得するように構成される。
【0151】
制御データ生成部474は、上記実施の形態に係る制御データ生成部74と同様に、制御データ生成モデルMを用いて、印刷不良を改善可能な制御データ123を生成するように構成される。
【0152】
記憶部466は、サーバ410において使用される様々なデータを記憶する不揮発性の記憶装置である。記憶部466は、制御データ生成モデルM、印刷物情報100、抵抗値情報110、および制御データ123を記憶している。
【0153】
この構成により、画像形成システム400では、画像形成装置401が実際に印刷を行い、印刷物に印刷不良が生じた場合に、サーバ410の制御データ生成部474が、その印刷不良を改善可能な制御データ123を生成する。サーバ410は、この制御データ123を画像形成装置401に送信する。そして、画像形成装置401は、この制御データ123を用いて、再印刷を行う。
【0154】
[その他の変形例]
また、これらの変形例のうちの2以上を組み合わせてもよい。
【0155】
以上、実施の形態およびいくつかの変形例を挙げて本技術を説明したが、本技術はこれらの実施の形態等には限定されず、種々の変形が可能である。
【0156】
例えば、上記の実施の形態等では、印刷媒体9にカラー画像を形成したが、これに限定されるものではなく、モノクロ画像を形成してもよい。
【0157】
例えば、上記の実施の形態等では、本技術を単機能のプリンタに適用したが、これに限定されるものではなく、これに代えて、例えば、コピー機能、ファックス機能、スキャン機能、プリント機能などを有する、いわゆる多機能周辺装置(MFP;Multi Function Peripheral)に適用してもよい。
【符号の説明】
【0158】
1,2…画像形成装置、11…媒体収容部、12…ホッピングローラ、13…媒体センサ、14…ピンチローラ、15…レジストローラ、20,20S,20Y,20M,20C,20K…現像部、21…感光ドラム、22…クリーニングブレード、23…帯電ローラ、24…現像ローラ、25…現像ブレード、26…供給ローラ、27…トナー収容部、29,29S,29Y,29M,29C,29K…露光ヘッド、31,31S,31Y,31M,31C,31K…1次転写ローラ、32…中間転写ベルト、33…駆動ローラ、34…従動ローラ、35…バックアップローラ、36…クリーニングブレード、37…廃トナー収容部、40…2次転写部、41…2次転写ローラ、42…媒体センサ、43…媒体センサ、44,45…搬送ローラ、46…排出ローラ、47…スタッカ、50…定着部、51…ヒートローラ、52…ヒータ、53…加圧ローラ、54…サーミスタ、61,461…通信部、62…表示操作部、63…環境センサ、64,164…電流センサ、65…画像形成制御部、66,166,466…記憶部、70,170,470…処理部、71…画像形成処理部、72,472…印刷物情報取得部、73,173,473…抵抗値情報取得部、173A…補正部、74,474…制御データ生成部、91…情報処理装置、92…画像読取装置、100…印刷物情報、101…画像データ、102…媒体データ、103…制御データ、104…環境データ、110…抵抗値情報、111…抵抗値データ、123…制御データ、200,300…機械学習装置、201…ディスプレイ、202…キーボード、203…マウス、204…画像読取装置、210,310…処理部、211,311…データセット取得部、212…教師データ取得部、213…学習モデル生成部、220…記憶部、221…画像データ、222…媒体データ、223…制御データ、224…環境データ、230…メモリ、240…インタフェース、250…ディスプレイインタフェース、260…通信部、271…抵抗値データ、283…制御データ、290…バス、311A…補正部、400…画像形成システム、401…画像形成装置、410…サーバ、DM…モデル関連データ、DS…データセット、DT…教師データ、LX…入力層、LY1…第1中間層、LY2…第2中間層、LZ…出力層、M,M0…制御データ生成モデル、NN…ニューラルネットワーク、R40…抵抗値。