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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022114085
(43)【公開日】2022-08-05
(54)【発明の名称】自走台車
(51)【国際特許分類】
   G05D 1/02 20200101AFI20220729BHJP
【FI】
G05D1/02 X
【審査請求】有
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021010216
(22)【出願日】2021-01-26
(71)【出願人】
【識別番号】301020891
【氏名又は名称】マツダエース株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100115381
【弁理士】
【氏名又は名称】小谷 昌崇
(74)【代理人】
【識別番号】100067828
【弁理士】
【氏名又は名称】小谷 悦司
(74)【代理人】
【識別番号】100133916
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 興
(72)【発明者】
【氏名】中田 達哉
(72)【発明者】
【氏名】中野 亮祐
【テーマコード(参考)】
5H301
【Fターム(参考)】
5H301BB05
5H301CC03
5H301CC06
5H301EE08
5H301FF06
5H301FF16
5H301GG09
5H301HH18
(57)【要約】
【課題】走行路に沿って適切に走行できる自走台車を提供する。
【解決手段】被搬送物が載置される本体部2と、複数の駆動輪6と、駆動輪6を回転駆動する駆動装置8と、複数の従動輪7と、駆動輪6と従動輪7とが同一平面上にある状態で駆動輪を下向きに押圧する弾発力を発揮する弾発力発揮部50を有する連結機構5とを設け、従動輪7を、本体部2に上下方向に移動不能に連結する一方、連結機構5によって、、本体部2と駆動輪6との上下方向の距離が可変となるように駆動輪6を本体部2に連結する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
予め定められた走行路に沿って自動で走行して被搬送物を搬送する自走台車であって、
被搬送物が載置される本体部と、
前記本体部の下方に配置されて回転することで前記本体部を移動させる複数の駆動輪と、
前記駆動輪を回転駆動する駆動装置と、
各前記駆動輪と前記本体部とを連結する連結機構と、
前記本体部の下方に配置されて当該本体部の移動に伴って回転および旋回する複数の従動輪とを備え、
各前記従動輪は、前記本体部に上下方向に移動不能に連結されており、
前記連結機構は、各前記駆動輪と各前記従動輪とが同一平面上にある状態で各前記駆動輪を下向きに押圧する弾発力を発揮する弾発力発揮部を有するうとともに、前記本体部と各前記駆動輪との上下方向の距離が可変となるように各前記駆動輪を前記本体部に連結している、ことを特徴とする自走台車。
【請求項2】
請求項1に記載の自走台車において、
前記連結機構は、前記本体部の下方に配設されて複数の前記駆動輪がともに固定された駆動輪固定部と、当該駆動輪固定部の上下方向の移動を案内するガイド部とを備え、
前記弾発力発揮部は、前記駆動輪固定部と当接する位置に配設されており、当該駆動輪固定部を下向きに押圧する、ことを特徴とする自走台車。
【請求項3】
請求項2に記載の自走台車において、
前記本体部は、被搬送物が載置される載置部を備えるとともに各前記従動輪が固定された第1本体部と、当該第1本体部に対して上下方向に延びる旋回中心軸回りに旋回可能に連結された第2本体部とを備え、
前記弾発力発揮部は、前記第2本体部と前記駆動輪固定部との間に配設されており、
前記連結機構は、前記駆動輪固定部を前記第2本体部にこれと一体に旋回可能に連結している、ことを特徴とする自走台車。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか1項に記載の自走台車において、
前記弾発力発揮部は、複数のばね部材を備え、
各前記駆動輪は、各前記ばね部材と平面視で重複する位置に配設されている、ことを特徴とする自走台車。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか1項に記載の自走台車において、
複数の前記駆動輪をそれぞれ駆動する複数の前記駆動装置を備え、
各前記駆動装置は、各前記駆動輪にそれぞれ一体に移動可能に連結されている、ことを特徴とする自走台車。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、予め定められた走行路に沿って自動で走行して被搬送物を搬送する自走台車に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、自動で走行して被搬送物を自動的に搬送する自走台車いわゆるAGV(Automatic Guided Vehicle)が知られている。このような自走台車として、例えば、特許文献1には、路面に張り付けられた磁気テープに沿って走行するように構成された自走台車が開示されている。具体的に、特許文献1には、車両の走行路に所定ピッチでN、S極が交互に着磁された磁気テープを張り付けるとともに車両側に磁気センサを設け、磁気センサにより検出された磁気テープの磁極をカウントすることで車両の位置を検出するようにしたシステムであって、磁極の検出結果に基づいて車両が走行路に沿って移動するように車両の走行速度や走行方向を制御するものが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001-5525号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
自走台車では、予め設定された走行路に沿って走行することが求められる。例えば、上記の特許文献1のシステムでは、車両が磁気テープに沿って移動することが求められる。しかし、路面に凹凸がある場合では車両が傾いて走行路から外れるおそれがある。しかも、このときに駆動輪の接地圧が低くなって駆動輪が空転してしまうと、車両を走行路に自動的に復帰させることも困難となり、車両を適切に走行路に沿って走行させることができなくなるおそれがある。
【0005】
本発明は、前記のような事情に鑑みてなされたものであり、走行路に沿って適切に走行できる自走台車の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するため、本発明の自走台車は、予め定められた走行路に沿って自動で走行して被搬送物を搬送する自走台車であって、被搬送物が載置される本体部と、前記本体部の下方に配置されて回転することで前記本体部を移動させる複数の駆動輪と、前記駆動輪を回転駆動する駆動装置と、各前記駆動輪と前記本体部とを連結する連結機構と、前記本体部の下方に配置されて当該本体部の移動に伴って回転および旋回する複数の従動輪とを備え、各前記従動輪は、前記本体部に上下方向に移動不能に連結されており、前記連結機構は、各前記駆動輪と各前記従動輪とが同一平面上にある状態で各前記駆動輪を下向きに押圧する弾発力を発揮する弾発力発揮部を有するとともに、前記本体部と各前記駆動輪との上下方向の距離が可変となるように各前記駆動輪を前記本体部に連結している、ことを特徴とする。
【0007】
この自走台車では、弾発力発揮部の弾発力によって駆動輪が下方つまり走行路の路面に付勢されつつ駆動輪が上下方向に移動可能となるように本体部に連結されている。そのため、路面に凹凸があった場合にも、駆動輪を路面の凹凸に合わせて上下動させて駆動輪を確実に接地させておくことができる。しかも、弾発力発揮部の弾発力によって駆動輪の接地圧を確保して駆動輪の空転を防止することができる。従って、自走台車を確実に走行路に沿って走行させることができる。また、路面の凹凸を駆動輪の上下動により吸収することで本体部が傾くのを防止でき、本体部に載置された被搬送物を安定して搬送することができる。
【0008】
前記構成において、好ましくは、前記連結機構は、前記本体部の下方に配設されて複数の前記駆動輪がともに固定された駆動輪固定部と、当該駆動輪固定部の上下方向の移動を案内するガイド部とを備え、前記弾発力発揮部は、前記駆動輪固定部と当接する位置に配設されており、当該駆動輪固定部を下向きに押圧する。
【0009】
この構成によれば、本体部に載置された被搬送物の荷重および弾発力発揮部の弾発力を各駆動輪により均一に分散でき各駆動輪を適切に回転させることができるとともに、各駆動輪を適切に上下動させることができる。
【0010】
前記構成において、好ましくは、前記本体部は、被搬送物が載置される載置部を備えるとともに各前記従動輪が固定された第1本体部と、当該第1本体部に対して上下方向に延びる旋回中心軸回りに旋回可能に連結された第2本体部とを備え、前記弾発力発揮部は、前記第2本体部と前記駆動輪固定部との間に配設されており、前記連結機構は、前記駆動輪固定部を前記第2本体部にこれと一体に旋回可能に連結している。
【0011】
この構成によれば、本体部に対する各駆動輪の上下動を可能として凹凸のある路面での適切な走行を実現しつつ、第2本体部と駆動輪固定部と駆動輪の旋回によって載置部を含む第1本体部を移動させることなく自走台車の進行方向を変更することができる。
【0012】
前記構成において、好ましくは、前記弾発力発揮部は、複数のばね部材を備え、各前記駆動輪は、各前記ばね部材と平面視で重複する位置に配設されている。
【0013】
この構成によれば、各駆動輪に対してより確実に弾発力発揮部の弾発力を付与でき、各駆動輪の接地圧を確保できる。
【0014】
前記構成において、好ましくは、複数の前記駆動輪をそれぞれ駆動する複数の前記駆動装置を備え、各前記駆動装置は、各前記駆動輪にそれぞれ一体に移動可能に連結されている。
【0015】
駆動輪と駆動装置のうち駆動輪のみを上下動可能に構成する場合には、これらの連結構造が複雑になる。これに対して、この構成によれば、駆動輪と駆動装置とが一体に上下動するので、これらの連結構造を簡素化することができる。
【発明の効果】
【0016】
以上のように、本発明によれば、走行路に沿って適切に走行できる自走台車を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の一実施形態に係る自走台車の概略斜視図である。
図2図1の自走台車の一部を示した概略斜視図である。
図3図1の自走台車の背面図である。
図4図1の自走台車の底面図である。
図5図4のV-V線断面の一部を示した断面図である。
図6図4のVI-VI線断面の一部を示した断面図である。
図7】第2状態にある自走台車の底面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明を実施するための形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。図1は、本発明の実施形態に係る自走台車1の概略斜視図である。図2は、自走台車1の一部を示した概略斜視図である。図3および図4は、それぞれ自走台車1の正面図および底面図である。図5および図6は、それぞれ図4のV-V線断面および図4のVI-VI線断面の一部を示した断面図である。なお、図3では、図を明瞭にするために一部の要素に色付けを行っている。また、図5および図6では、後述する従動輪7および従動輪固定部18の図示を省略している。
【0019】
(全体構成)
自走台車1は、被搬送物が載置される本体部2と、本体部2を移動させる一対の駆動輪6、6と、各駆動輪6をそれぞれ駆動する一対の駆動モータ8、8と、各駆動輪6と本体部2とを連結する連結機構5と、本体部2を移動可能に支持して本体部2の移動に伴って回転および旋回する複数の従動輪7とを備えている。本実施形態では、自走台車1は4つの従動輪7を有する。上記の駆動モータ8は請求項の「駆動装置」に相当する。
【0020】
本体部2は、底面が正方形の略直方体の外形を有する。図1に破線等で示したように、本体部2は、その外形を形成する複数のフレーム部材とパネル部材とを有する。
【0021】
具体的に、本体部2は、平面視で正方形を区画するように互いに接合された4本のメインフレーム11と、対向する2つのメインフレーム11間にわたってこれらメインフレーム11の長手方向に並ぶ2本のサブフレーム12と、メインフレーム11どうしの接合部つまりメインフレーム11によって形成された正方形の四隅から上方に延びる4本の縦フレーム13とを有している。以下の説明および図面では、サブフレーム12の長手方向を前後方向とし、2つのサブフレーム12の並び方向を左右方向とする。
【0022】
また、本体部2は、メインフレーム11が区画する正方形の空間を塞ぐようにサブフレーム12の上面に配設された板状の底パネル14と、縦フレーム13どうしをそれぞれつなぐ4枚の板状の側面パネル15と、4枚の側面パネル15の上縁に配設されて本体部2の天面を構成する板状の上パネル16とを有する。
【0023】
被搬送物は上パネル16に載置されて搬送されるようになっており、上パネル16は、被搬送物が載置される載置部として機能する。底パネル14の中央には、これを上下に貫通する貫通孔17が形成されている。貫通孔17は、円形を呈している。
【0024】
本体部2の内側には、各パネル14、15、16によって区画されて各種の機器を収容可能な収容部2Aが形成されている。収容部2Aには、後述するカメラ91や旋回規制装置95、これらカメラ91、旋回規制装置95および駆動モータ8等を制御するための制御装置94、これらの電気機器に給電するバッテリー96が収容されている。旋回規制装置95、制御装置94およびバッテリー96は底パネル14に載置された状態で収容部2A内に収容されている。
【0025】
4つの従動輪7は、メインフレーム11によって区画される正方形の四隅の下方に配設されており、各メインフレーム11の長手方向の両端部にそれぞれ固定されている。具体的に、メインフレーム11どうしの各接合部分の下面には板状の従動輪固定部18がそれぞれ固定されており、各従動輪固定部18にそれぞれ1つずつ従動輪7が支持されている。各従動輪7は、それぞれ水平方向に延びる軸回りに回転可能且つ上下方向に延びる軸回りに旋回可能な状態で従動輪固定部18に支持されている。従動輪固定部18および各従動輪7は、メインフレーム11つまり本体部2に上下方向に移動不能に固定されている。
【0026】
底パネル14の貫通孔17には、円筒状の枠部21が嵌め込まれている。枠部21はサブフレーム12に固定されている。枠部21には、円筒状のボールベアリング22を介して円筒状の旋回部31が連結されている。具体的に、ボールベアリング22の外周側に枠部21が固定されており、ボールベアリング22の内周側に旋回部31が固定されている。旋回部31は、ボールベアリング22を介して枠部21に旋回部31の中心軸X1回りに旋回可能(回転可能)に連結されている。
【0027】
旋回部31の下端には、旋回部31よりも大径の円板状の本体側旋回板32が固定されている。本体側旋回板32の中央には、旋回部31の内側の貫通孔31aの径とほぼ同じ孔径の円形の貫通孔32aが形成されている。本体側旋回板32と旋回部31とは同心状に配設されており、これらの各貫通孔31a、32aは平面視でほぼ一致している。本体側旋回板32は、旋回部31にこれと一体に旋回可能に固定されている。
【0028】
このように、本体部2は、枠部21を含む第1本体部3と、旋回部31と本体側旋回板32とを含み第1本体部3に対して旋回中心軸X1回りに旋回可能に連結された第2本体部4とで構成されている。第1本体部3には、枠部21に加えて、これが固定されているサブフレーム12、サブフレーム12が固定されたメインフレーム11、メインフレーム11に固定された縦フレーム13、これらフレーム11、12、13に固定された各パネル14、15、16や従動輪固定部18が含まれる。
【0029】
本体側旋回板32には、カメラ91が支持されている。カメラ91は、走行路に設置された走行テープやマーカー等を撮影するためのものである。カメラ91は、本体側旋回板32にこれと一体に第1本体部3に対して相対的に旋回可能に支持されている。具体的に、本体側旋回板32の下面には、板状のカメラ支持部33が固定されている。カメラ支持部33は、本体側旋回板32の下面から本体側旋回板32の内周側に延びた後、本体側旋回板32の貫通孔32aおよび旋回部31の貫通孔31aを通って旋回部31よりも上方に延びている。カメラ91は、このカメラ支持部33の上端に固定されている。カメラ91は、平面視で、そのレンズ部91aが、旋回中心軸X1上に位置するように配設されている。
【0030】
カメラ91により撮影された画像は制御装置94に送られ、制御装置94はこの検出結果に基づいて自走台車1を制御する。例えば、走行路に走行テープが設置されている場合は、制御装置94は、自走台車1がこの走行テープに沿って移動するように駆動モータ8を制御する。また、自走台車1の停止や後退等を表すマーカーが走行路に設置されている場合は、制御装置94は、カメラ91が撮影した画像からマーカーを抽出して、マーカーに表されている停止等の指令内容が実現されるように駆動モータ8を制御する。
【0031】
(連結機構)
連結機構5は、車輪側旋回板51と、複数の板ばね50と、複数の駆動輪支持部52とを有する。本実施形態では、連結機構5は、4枚の板ばね50と、4つの駆動輪支持部52とを有する。上記の車輪側旋回板51は請求項の「駆動輪固定部」に相当し、板ばね50は請求項の「弾発力発揮部」および「ばね部材」に相当し、駆動輪支持部52は請求項の「ガイド部」に相当する。
【0032】
車輪側旋回板51は、略円形の板状部材である。車輪側旋回板51の中央には、これを表裏に貫通する円形の貫通孔51aが形成されている。
【0033】
車輪側旋回板51は、駆動輪支持部52によって本体側旋回板32の下方に支持されている。駆動輪支持部52は、車輪側旋回板51を上下方向に移動可能に支持している。また、駆動輪支持部52は、車輪側旋回板51を上下方向に案内する機能を有している。
【0034】
具体的に、駆動輪支持部52は、上下方向に延びる円柱状のシャフト52aと、これが挿通された円筒状のスライドブッシュ52bとを有する。シャフト52aは、本体側旋回板32の下面に固定されておりこの下面から下方に延びている。シャフト52aは、スライドブッシュ52bが下方に落下するのを規制する規制部(不図示)を有しており、スライドブッシュ52bは、この規制部によって所定の位置から下方への移動は規制される一方、この所定の位置から上方に移動できるようになっている。スライドブッシュ52bの内径とシャフト52aの外径とはほぼ同じに設定されており、スライドブッシュ52bはシャフト52aの外周面に沿って上下方向にほぼまっすぐスライドする。
【0035】
車輪側旋回板51は、スライドブッシュ52bにこれと一体に移動可能に固定されており、スライドブッシュ52bおよびシャフト52aによって、本体側旋回板32の下方に上下方向に移動可能に支持されるとともに上下方向に案内されるようになっている。
【0036】
4つの駆動輪支持部52は、旋回中心軸X1回りにほぼ等間隔に、つまり、旋回中心軸X1回りに約90度の間隔で設置されている。
【0037】
ここで、車輪側旋回板51の貫通孔51aと本体側旋回板32の貫通孔32aとは平面視で一致している。これより、カメラ91は、旋回部31の貫通孔31aおよびこれら旋回板32、51の貫通孔32a、51aを通して自走台車1の下方を撮影する。
【0038】
板ばね50は、車輪側旋回板51と本体側旋回板32との間にこれらと当接するように配設されており、車輪側旋回板51を本体側旋回板32に対して下向きの弾発力つまり付勢力を付与している。板ばね50は、車輪側旋回板51の径方向に沿って、これの外周縁付近から貫通孔51aの縁よりもわずかに外周側の位置まで延びる板状を有する。板ばね50は、車輪側旋回板51の外周端付近においてこれの上面に沿って延びる部分と、この上面に沿う部分から車輪側旋回板51の内周側に向かって上方に傾斜する部分と、この傾斜部分の先端から車輪側旋回板51の内周側に向かって下方に折れ曲がる部分とを有する。板ばね50は、車輪側旋回板51の上面に沿う部分がこの上面に固定されることで、車輪側旋回板51と本体側旋回板32との間に、上下方向に弾性変位可能に配設されている。
【0039】
板ばね50の寸法は、自走台車1が水平な面に載置されて駆動輪6と従動輪7とが同一平面上にあり且つ上パネル16に被搬送物が載置されていない状態で、上下方向に圧縮されて車輪側旋回板51に下向きの弾発力つまり付勢力を付与するように設定されている。
【0040】
4つの板ばね50は、旋回中心軸X1回りにほぼ等間隔に、つまり、旋回中心軸X1回りに約90度の間隔で設置されている。
【0041】
2つの駆動輪6、6は、車輪側旋回板51に固定されている。2つの駆動輪6は、車輪側旋回板51の下面に、水平方向に延びる回転軸回りに回転可能に固定されている。2つの駆動輪6は、旋回中心軸X1を挟んで対称となる位置に固定されている。また、各駆動輪6は、それぞれ1つの板ばね50とそれぞれ平面視で重複する位置に配設されている。つまり、本実施形態では、一方の駆動輪6の直上方に1つの板バネ50が配置されて、他方の駆動輪6の直上方にも他の1つの板バネ50が配置されている。
【0042】
各駆動輪6の側部には、それぞれ1つずつ駆動モータ8が連結されている。駆動モータ8は、車輪側旋回板51に固定されたモータ支持部53によって車輪側旋回板51の下方に支持された状態で駆動モータ8に連結されている。駆動モータ8はそれぞれ個別に、対応する駆動輪6を回転駆動する。
【0043】
上記のように車輪側旋回板51は駆動輪支持部52によって本体側旋回板32に上下方向に移動可能に支持されている。これより、車輪側旋回板51に固定された各駆動輪6および各駆動モータ8は、本体側旋回板32つまり第2本体部4に対して上下方向に移動可能に連結されていることになる。また、板ばね50から車輪側旋回板51に付与された付勢力は各駆動輪6にも付与されることになる。つまり、各駆動輪6は本体側旋回板32に対して板ばね50によって下方に付勢されていることになる。また、本体側旋回板32に支持された車輪側旋回板51およびこれに固定された駆動輪支持部52、板ばね50、駆動輪6および駆動モータ8は、本体側旋回板32つまり第2本体部4と一体に旋回中心軸X1回りに旋回することになる。
【0044】
ここで、制御装置94は駆動モータ8をそれぞれ個別に制御する。これより、本実施形態では、2つの駆動輪6の回転数に差が生じるように制御装置94に駆動モータ8を制御させることで、自走台車1を旋回つまり自走台車1の進行方向を変更できるようになっている。さらに、本実施形態では、上記のように、駆動輪6が第2本体部4と一体に旋回できるようになっている。これより、2つの駆動輪6が互いに逆方向に回転するように制御装置94に駆動モータ8を制御させることで、駆動輪6および第2本体部4を旋回中心軸X1回りに旋回させることができ、第1本体部3を移動させることなく、つまり、自走台車1を停止させた状態で、自走台車1の進行方向を変更できる。上記の旋回規制装置95は、駆動輪6および第2本体部4の旋回を規制するための装置であり、自走台車1が図4に示す第1の状態あるいは図7に示す第2の状態にあるときに駆動輪6および第2本体部4の旋回を規制する。つまり、本実施形態では、自走台車1の状態が第1の状態と第2の状態とに切り替えられるようになっており、この切替時にのみ駆動輪6および第2本体部4の旋回が許容されて、その他の場合はこれらの旋回が禁止される。図4に示すように、第1の状態とは、2つの駆動輪6が左右に並び自走台車1が前後方向に移動可能な状態であり、図7に示すように、第2の状態とは、第1の状態に対して駆動輪6および第2本体部4が90度旋回して2つの駆動輪6が前後方向に並び自走台車1が左右方向に移動可能となる状態である。旋回規制装置95は、上記のように駆動輪6および第2本体部4の旋回中心軸X1回りの旋回を規制できるものであればよくその具体的な構成は限定されないが、例えば、旋回部31や本体側旋回板32と当接する位置とこの位置から退避した位置との間で移動可能なピン部材を第1本体部3に設けて、このピン部材をモータ等により移動させることで旋回部31や本体側旋回板32の第1本体部3に対する相対的な旋回の規制と許容とを切り替える構成が挙げられる。
【0045】
本実施形態では、車輪側旋回板51に、駆動輪6に加えて一対のレーザースキャナ92および一対の磁気テープセンサ93が支持されている。
【0046】
レーザースキャナ92は、自走台車1の進行方向に障害物が存在するか否かを検出するためのものである。自走台車1は前進および後進が可能であり、2つのレーザースキャナ92は、それぞれ2つの駆動輪6の並び方向と直交する方向の一方側と他方側とを向くように車輪側旋回板51に支持されている。本実施形態では、自走台車1が図4に示す第1の状態にあるときに車輪側旋回板51の前端となる位置および後端となる位置にそれぞれ1つずつレーザースキャナ92が固定されている。具体的に、第1の状態で車輪側旋回板51の前端となる部分および後端となる部分の下面には、この下面に沿う水平部54aと水平部54aの車輪側旋回板51の内周端から下方に延びる延設部54bとを有する略L字状の取付板54がそれぞれ固定されており、各水平部54aの下面に各レーザースキャナ92がそれぞれ固定されている。
【0047】
レーザースキャナ92の検出結果は制御装置94に送られ、制御装置94はこの検出結果に基づいて自走台車1を制御する。例えば、自走台車1の進行方向の所定の範囲内に障害物があることがレーザースキャナ92により検知されると、制御装置94は自走台車1を減速あるいは停止させる。
【0048】
磁気テープセンサ93は、走行路の路面に設置された磁気テープを検知するためのセンサである。2つの磁気テープセンサ93は、上記の取付板54の延設部54bの下端にそれぞれ固定されている。
【0049】
磁気テープセンサ93の検出結果は制御装置94に送られ、制御装置94はこの検出結果に基づいて磁気テープに沿って自走台車1が移動するようにこれを制御する。
【0050】
(作用等)
以上のように、上記実施形態に係る自走台車1では、駆動輪6が板ばね50によって下方に付勢されつつ駆動輪支持部52によって本体側旋回板32つまり本体部2に対して上下方向に移動可能に連結されている。従って、駆動輪6の接地圧を確保してその空転を防止でき、自走台車1を確実に走行路に沿って走行させることができる。
【0051】
具体的に、この自走台車1では、走行路の路面の一部が突出しており駆動輪6がこの凸部分に乗り上げた場合、駆動輪6が板ばね50の付勢力に抗して上方に移動することになる。これより、駆動輪6および自走台車1に凸部分を乗り越えさせることができるとともに、凸部分の通過時にも駆動輪6の接地圧を確保でき、自走台車1を確実に走行路に沿って移動させることができる。また、走行路の路面の一部が凹んでおり駆動輪6がこの凹み部にはまった場合には、板ばね50の付勢力によって駆動輪6が下方に移動することになり、この場合にも駆動輪6を確実に接地させて自走台車1を走行路に沿って移動させることができる。
【0052】
ここで、走行路の凹凸を車輪で吸収する構成として、4つの従動輪7を上下方向に移動可能とする構成も考えられるが、この構成では従動輪7の上下動に伴って本体部2が傾いた場合に駆動輪6が路面から浮き上がる等してその接地圧が低下するおそれがあり、駆動輪6の接地圧の確保ひいては自走台車1の適切な走行が困難になる。これに対して、上記実施形態では、上記のように駆動輪6によって走行路の凹凸が吸収されることで駆動輪6の接地圧を確保して自走台車1の適切な走行を実現できる。
【0053】
特に、上記実施形態では、1つの板ばね50と1つの駆動輪6とが平面視で重複する位置に配設されている。そのため、板ばね50の付勢力を確実に各駆動輪6に付与して各駆動輪6の接地圧を確保できる。
【0054】
また、被搬送物が載置される本体部2に対して駆動輪6が上下方向に移動することから、走行路の路面の凹凸を駆動輪6の上下動により吸収することができ、本体部2が傾くのを防止でき、本体部2に載置された被搬送物を安定して搬送することができる。
【0055】
また、上記実施形態では、2つの駆動輪6が共通の車輪側旋回板51に固定されて、この車輪側旋回板51が板ばね50により付勢されつつ駆動輪支持部52によって上下方向に移動可能に支持されている。そのため、上記実施形態では、本体部2に載置された被搬送物の荷重および板ばね50により付与される付勢力が各駆動輪6により均一に分散される。従って、一方の駆動輪6に過度に荷重が付与されてこれの動きが阻害されるのを防止でき、各駆動輪6を適切に回転させることができる。
【0056】
また、駆動輪支持部52によって車輪側旋回板51が上下方向に案内されるようになっている。そのため、各駆動輪6を適切に上下動させることができる。つまり、駆動輪6が上下方向に対して傾いて適切に回転しなくなるのを防止でき、自走台車1の安定した走行を実現できる。
【0057】
また、上記実施形態では、本体部2が、被搬送物が載置される上パネル16を含む第1本体部3と、第1本体部3に対して上下方向に延びる旋回中心軸X1回りに旋回可能に連結された第2本体部4とで構成されている。そして、板ばね50が第2本体部4に対して車輪側旋回板51を下方に付勢するように構成されて、この板ばね50と、駆動輪支持部52、車輪側旋回板51および駆動輪6が第2本体部4にこれと一体に旋回可能となっている。
【0058】
これより、上記実施形態では、上記のように各駆動輪6を本体部4に対して上下動を可能として自走台車1の走行路に沿う適切な走行を実現しつつ、第1本体部3を移動させることなく駆動輪6の向きをかえて自走台車1の進行方向を変更することができ、自走台車1をより細やかに移動させることができる。
【0059】
また、上記実施形態では、各駆動モータ8が各駆動輪6にそれぞれ一体に移動可能に連結されている。そのため、各駆動モータ8と各駆動輪6の連結構造を簡素化することができる。具体的に、仮に駆動モータ8を収容部2A内に収容する等して駆動輪6と一体に上下動しないように構成した場合には、駆動輪6を駆動モータ8に対しても相対的に上下動可能に配設する必要があり、これらの連結構造が複雑になる。これに対して、上記実施形態では、各駆動モータ8が各駆動輪6にそれぞれ一体に移動可能であることからこれらの連結構造を簡素化できる。
【0060】
(変形例)
上記実施形態では、駆動輪6に付勢力を付与する弾発力発揮部として板ばね50を用いた場合を説明したが、弾発力発揮部(ばね部材)の具体的な構成はこれに限らない。例えば、板バネ50の代わりにコイルスプリングを用いて、複数のコイルスプリングを車輪側旋回板51と本体側旋回板32との間に配設してもよい。なお、コイルスプリングを用いた場合は、自走台車1が水平な面に載置されて駆動輪6と従動輪7とが同一平面上にあり且つ上パネル16に被搬送物が載置されていない状態で、コイルスプリングが上下方向に圧縮されて車輪側旋回板51に下向きの弾発力つまり付勢力を付与するように、コイルスプリングの可動ストロークを設定すればよい。
【0061】
また、上記実施形態では、1つの駆動輪6と1つの板バネ50とが平面視で重複するように配設される場合を説明したが、1つの駆動輪6と複数の板バネ50つまり板バネ50やコイルスプリング等のばね部材とが平面視で重複するように配設されてもよい。
【0062】
また、弾発力発揮部の数は4つに限らない。また、駆動輪6の個数は2つに限らず、2つ以上であってもよい。
【0063】
また、上記実施形態では、シャフト52aとスライドブッシュ52bとを含む駆動輪支持部52によって車輪側旋回板51が本体側旋回板32に支持される場合を説明したが、板ばね50を車輪側旋回板51と本体側旋回板32とに固定して、板ばね50が車輪側旋回板51および駆動輪6を本体側旋回板32つまり第2本体部4および本体部2に支持するように構成してもよい。
【符号の説明】
【0064】
1 自走台車
2 本体部
3 第1本体部
4 第2本体部
5 連結機構
6 駆動輪
7 従動輪
8 駆動モータ(駆動装置)
50 板ばね(弾発力発揮部、ばね部材)
51 車輪側旋回板(駆動輪固定部)
52 駆動輪支持部(ガイド部)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7