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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022114096
(43)【公開日】2022-08-05
(54)【発明の名称】燃料電池
(51)【国際特許分類】
   H01M 4/86 20060101AFI20220729BHJP
   H01M 8/10 20160101ALI20220729BHJP
【FI】
H01M4/86 M
H01M4/86 H
H01M8/10 101
【審査請求】未請求
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021010231
(22)【出願日】2021-01-26
(71)【出願人】
【識別番号】000004695
【氏名又は名称】株式会社SOKEN
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104499
【弁理士】
【氏名又は名称】岸本 達人
(74)【代理人】
【識別番号】100101203
【弁理士】
【氏名又は名称】山下 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100129838
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 典輝
(72)【発明者】
【氏名】松廣 泰
(72)【発明者】
【氏名】木村 将之
(72)【発明者】
【氏名】広瀬 寛
【テーマコード(参考)】
5H018
5H126
【Fターム(参考)】
5H018AA06
5H018DD03
5H018DD05
5H018DD06
5H018EE02
5H018EE03
5H018EE05
5H018HH04
5H126BB06
5H126DD02
5H126DD05
(57)【要約】
【課題】排水性が高いガス拡散層を備える燃料電池を提供する。
【解決手段】反応ガスの流路に当接されるガス拡散層を備える燃料電池であって、前記ガス拡散層は、気体透過性のある導電性多孔質基材を備え、前記ガス拡散層の孔は、コーナーを有する形状であり、前記コーナーは鋭角であり、前記ガス拡散層は、内層部と前記流路側に表層部を有し、前記内層部は、撥水部で構成され、前記表層部は、親水部と前記撥水部とが混在し、前記親水部は、前記撥水部に囲まれた形状であり、複数の前記親水部の長径の中央値が、前記流路の深さの中央値の1/3より大きく1/2より小さいか、又は、複数の前記親水部の長径の中央値が、前記ガス拡散層の孔径の中央値の3倍以下であることを特徴とする燃料電池。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
反応ガスの流路に当接されるガス拡散層を備える燃料電池であって、
前記ガス拡散層は、気体透過性のある導電性多孔質基材を備え、
前記ガス拡散層の孔は、コーナーを有する形状であり、
前記コーナーは鋭角であり、
前記ガス拡散層は、内層部と前記流路側に表層部を有し、
前記内層部は、撥水部で構成され、
前記表層部は、親水部と前記撥水部とが混在し、
前記親水部は、前記撥水部に囲まれた形状であり、
複数の前記親水部の長径の中央値が、前記流路の深さの中央値の1/3より大きく1/2より小さいか、又は、複数の前記親水部の長径の中央値が、前記ガス拡散層の孔径の中央値の3倍以下であることを特徴とする燃料電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、燃料電池に関する。
【背景技術】
【0002】
燃料電池(FC)は、複数の単セル(以下、セルと記載する場合がある)を積層した燃料電池スタック(以下、単にスタックと記載する場合がある)に、水素等の燃料ガスと酸素等の酸化剤ガスとの電気化学反応によって電気エネルギーを取り出す発電装置である。なお、実際に燃料電池に供給される燃料ガスおよび酸化剤ガスは、酸化・還元に寄与しないガスとの混合物である場合が多く、特に酸化剤ガスは酸素を含む空気であることが多い。
なお、以下では、燃料ガスや酸化剤ガスを、特に区別することなく単に「反応ガス」あるいは「ガス」と呼ぶ場合もある。また、単セル、及び、単セルを積層した燃料電池スタックのいずれも、燃料電池と呼ぶ場合がある。
この燃料電池の単セルは、通常、膜電極接合体(MEA:Membrane Electrode Assembly)を備える。
膜電極接合体は、固体高分子型電解質膜(以下、単に「電解質膜」とも呼ぶ)の両面に、それぞれ、触媒層及びガス拡散層(GDL、以下単に拡散層と記載する場合がある)が順に形成された構造を有している。そのため、膜電極接合体は、膜電極ガス拡散層接合体(MEGA)と称される場合がある。
単セルは、必要に応じて当該膜電極ガス拡散層接合体の両面を挟持する2枚のセパレータを有する。セパレータは、通常、ガス拡散層に接する面に反応ガスの流路としての溝が形成された構造を有している。なお、このセパレータは電子伝導性を持ち、発電した電気の集電体としても機能する。
燃料電池の燃料極(アノード)では、ガス流路及びガス拡散層から供給される燃料ガスとしての水素(H)が触媒層の触媒作用によりプロトン化し、電解質膜を通過して酸化剤極(カソード)へと移動する。同時に生成した電子は、外部回路を通って仕事をし、カソードへと移動する。カソードに供給される酸化剤ガスとしての酸素(O)は、カソードの触媒層でプロトンおよび電子と反応し、水を生成する。生成した水は、電解質膜に適度な湿度を与え、余剰な水はガス拡散層を透過して、系外へと排出される。
【0003】
燃料電池車両(以下車両と記載する場合がある)に車載されて用いられる燃料電池に関して様々な技術が提案されている。
例えば特許文献1では、撥水性の拡散層に親水性の繊維を縫い付け、拡散層の裏表を貫通する親水性領域を設ける、ガス拡散層用基材が開示されている。
【0004】
また、特許文献2では、セパレータと対面する親水層の表面が、触媒層と対面する撥水層の表面よりも親水性が高く、拡散層と対面するセパレータに形成されたガス流路の親水化処理により形成された表面層の表面は、所望の親水性を有する燃料電池が開示されている。
【0005】
また、特許文献3では、起電力低下を良好に抑制し、安定した起電力を確保することが可能な固体高分子形燃料電池が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2008-010164号公報
【特許文献2】特開2008-186623号公報
【特許文献3】特開2016-039150号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
燃料電池のガス拡散層には、発電時に生じる液水を滞留させないこと、掃気時の排水性を向上させることが求められる。
上記特許文献1では、親水部を拡散層の面直方向に貫通させるため、拡散層厚さ方向より拡散層面沿い方向のラプラス圧差が大きく面直方向のラプラス圧差より強くなるため、拡散層の面直方向への水移動・排水が促進できない。また、表面に水がたまる大きさの親水部が存在することとなり、ガス流路のガス流れを阻害する。従来と比較し燃料電池の発電電流密度を大きくして使うニーズが増大し、これらの課題が顕在化している。なお親水部の径を拡散層繊維径程度に抑え、微細な親撥水パターンとすればこれを解決することは可能であるが、特許文献1のように「縫い付ける」方法の場合、直径10μm程度の極細の繊維を「縫い付ける」ことは困難を伴い、可能だとしても高コスト化を招く。
【0008】
本開示は、上記実情に鑑みてなされたものであり、排水性が高いガス拡散層を備える燃料電池を提供することを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本開示においては、反応ガスの流路に当接されるガス拡散層を備える燃料電池であって、前記ガス拡散層は、気体透過性のある導電性多孔質基材を備え、前記ガス拡散層の孔は、コーナーを有する形状であり、前記コーナーは鋭角であり、前記ガス拡散層は、内層部と前記流路側に表層部を有し、前記内層部は、撥水部で構成され、前記表層部は、親水部と前記撥水部とが混在し、前記親水部は、前記撥水部に囲まれた形状であり、複数の前記親水部の長径の中央値が、前記流路の深さの中央値の1/3より大きく1/2より小さいか、又は、複数の前記親水部の長径の中央値が、前記ガス拡散層の孔径の中央値の3倍以下であることを特徴とする燃料電池を提供する。
【発明の効果】
【0010】
本開示の燃料電池は、特に高負荷発電時に大量に生じる液水を滞留させずに排水しやすいガス拡散層を備えるため、発電性能を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は、表面が撥水性の場合の拡散層の排水性を説明する図(左)と表面が親水性の場合の拡散層の排水性を説明する図(右)である。
図2図2は本開示の拡散層を含む燃料電池の一例を示す断面模式図である。
図3図3図2のA-A断面図である。
図4図4は、図2のB-B断面図である。
図5図5は、本開示の拡散層の孔(網目)におけるGDL内層部(内部)からセパレータ側表層部(表面)への液水移動の一例を示す模式図である。
図6図6は、本開示の拡散層の孔(網目)の一例を示す模式図(左)とそのA-A断面模式図(右)である。
図7図7は、本開示の拡散層の孔(網目)における液滴の成長のメカニズムの一例を示す模式図である。
図8図8は、本開示の表面が親撥水性パターンの場合の拡散層の排水性を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本開示においては、反応ガスの流路に当接されるガス拡散層を備える燃料電池であって、前記ガス拡散層は、気体透過性のある導電性多孔質基材を備え、前記ガス拡散層の孔は、コーナーを有する形状であり、前記コーナーは鋭角であり、前記ガス拡散層は、内層部と前記流路側に表層部を有し、前記内層部は、撥水部で構成され、前記表層部は、親水部と前記撥水部とが混在し、前記親水部は、前記撥水部に囲まれた形状であり、複数の前記親水部の長径の中央値が、前記流路の深さの中央値の1/3より大きく1/2より小さいか、又は、複数の前記親水部の長径の中央値が、前記ガス拡散層の孔径の中央値の3倍以下であることを特徴とする燃料電池を提供する。
【0013】
図1は、表面が撥水性の場合の拡散層の排水性を説明する図(左)と表面が親水性の場合の拡散層の排水性を説明する図(右)である。
図1に示すように、GDLの表面が親水かまたは撥水の何れかである場合、生成した液水は、GDL表面が撥水の場合はランダムな小径液滴、GDL表面が親水の場合は薄い液膜となる。
燃料電池流路のガス流れは、通常層流であり、液水状態が前記の小径液滴や薄い液膜では、ガス流れからの力を受けにくく、移動/排水されにくくなる。
【0014】
図2は本開示の拡散層を含む燃料電池の一例を示す断面模式図である。
図3図2のA-A断面図である。
図4は、図2のB-B断面図である。下方発電部があり、発電部は電解質膜を上下から触媒層でサンドイッチされた構造である。発電部の上方にGDLが位置し、GDL上には燃料電池外部に電流を取り出し、かつ酸化剤ガスを導入する流路を形成した導電性のセパレータが位置している。
GDLは炭素繊維、金属繊維等の導電性繊維を立体網目状に編むか抄紙して形成した形状/構造で、前記網目内部表面は撥水性コーティングが施されている。
また、GDLの流路またはセパレータに接した表面は撥水部に囲まれた形の親水部のパターンが位置している。
【0015】
燃料電池は、燃料電池の単セルを複数積層した燃料電池スタックであってもよい。
単セルの積層数は特に限定されず、例えば、2~数百個であってもよく、2~200個であってもよい。
燃料電池スタックは、単セルの積層方向の両端にエンドプレートを備えていてもよい。
【0016】
燃料電池の単セルは、膜電極ガス拡散層接合体を備える。
膜電極ガス拡散層接合体は、アノード側ガス拡散層及び、アノード触媒層及び、電解質膜及び、カソード触媒層及び、カソード側ガス拡散層をこの順に有する。
膜電極ガス拡散層接合体は、膜電極接合体を含み、膜電極接合体は、アノード触媒層及び、電解質膜及び、カソード触媒層をこの順に有する。
【0017】
カソード(酸化剤極)は、カソード触媒層及びカソード側ガス拡散層を含む。
アノード(燃料極)は、アノード触媒層及びアノード側ガス拡散層を含む。
カソード側ガス拡散層及びアノード側ガス拡散層をまとめてガス拡散層と称する。
【0018】
本開示のガス拡散層は、気体透過性のある導電性多孔質基材を備える。
導電性多孔質基材は、気体透過性、導電性を有し、複数の孔(網目)を有する。導電性多孔質基材を構成する導電性材料は、導電性粒子であってもよいし、導電性繊維であってもよい。導電性多孔質基材を構成する導電性材料は、カーボンクロス、及びカーボンペーパー等のカーボン多孔質体、並びに、金属メッシュ等の金属多孔質体等であってもよい。
導電性多孔質基材は、複数本の導電性繊維を立体網目状に編むか又は抄紙するか又は結着材で結着され複数本の当該導電性繊維が積層されることにより構成されていてもよい。
孔(網目)は、コーナーを有する形状であって、コーナーは鋭角であればよい。孔(網目)の平面形状は、例えばひし形状あるいは平行四辺形状等であってもよい。
結着材は、樹脂炭化物であってもよく、樹脂炭化物の原料としては、例えばPEN(ポリエチレンナフタレート)、PES(ポリエーテルサルホン)、PET(ポリエチレンテレフタラート)等であってもよい。
【0019】
ガス拡散層は、内層部と流路側に表層部を有する。
内層部は、撥水部で構成され、
表層部は、親水部と撥水部とが混在する。
【0020】
表層部における親水部は、撥水部に囲まれた形状であり、島状に分布する。すなわち、表層部は、親水部が撥水部に囲まれた親撥水性パターンを有する。
親水部の平面形状は、例えば円形状、楕円形状、ひし形状等であってもよい。
親水部が撥水部に囲まれた形状(孤立形状)であることにより、液水は球形に近く、かつ液水を高さ方向に凹凸があるように成長させることができる。親水部の寸法は液水盛り上がり寸法と近くなる。
【0021】
複数の親水部の長径の中央値が、流路の深さの中央値の1/3より大きく1/2より小さいか、又は、複数の親水部の長径の中央値は、ガス拡散層の孔径の中央値の3倍以下である。
これにより、液水盛り上がりの位置を流路の流速が早い、中央付近に持ってくるように調節することができる。
親水部の長径は、親水部の平面形状が円形状である場合は、親水部の直径であってもよく、親水部の平面形状が楕円形状である場合は、親水部の長径であってもよく、親水部の平面形状がひし形状である場合は、親水部の長い方の対角線の長さであってもよい。
【0022】
ガス拡散層は、反応ガスの流路に当接されて用いられる。
ガス拡散層は、触媒層上に当該触媒層を覆うように配置される。
【0023】
カソード触媒層及びアノード触媒層をまとめて触媒層と称する。
触媒層は、電気化学反応を促進する金属等の触媒、電解質、及び、導電性を有する担体を備える。
触媒(触媒金属)としては、例えば、白金(Pt)、及び、Ptと他の金属とから成る合金(例えばコバルト、及び、ニッケル等を混合したPt合金)等を用いることができる。
【0024】
上記触媒はカーボン粒子等の担体上に担持されており、各触媒層では、触媒金属を担持した担体(触媒担持担体)と電解質とが混在している。
【0025】
電解質膜は、例えば、固体高分子電解質膜であってもよい。固体高分子電解質膜としては、例えば、水分が含まれたパーフルオロスルホン酸の薄膜等のフッ素系電解質膜、及び、炭化水素系電解質膜等が挙げられる。電解質膜としては、例えば、ナフィオン膜(デュポン社製)等であってもよい。
【0026】
単セルは、必要に応じて触媒層とガス拡散層の間にマイクロポーラス層(MPL)を有していてもよい。マイクロポーラス層は、PTFE等の撥水性樹脂とカーボンブラック等の導電性材料との混合物を含んでいてもよい。
【0027】
単セルは、膜電極ガス拡散層接合体の両面を挟持する2枚のセパレータを備える。2枚のセパレータは、一方がアノード側セパレータであり、もう一方がカソード側セパレータである。本開示では、アノード側セパレータとカソード側セパレータとをまとめてセパレータという。
セパレータは、ガス拡散層に接する面に反応ガス流路を有する。また、セパレータは、ガス拡散層に接する面とは反対側の面に燃料電池の温度を一定に保つための冷媒流路を有する。
セパレータは、反応ガス及び冷媒を単セルの積層方向に流通させるための供給孔及び排出孔を有する。冷媒としては、低温時の凍結を防止するために例えばエチレングリコールと水との混合溶液を用いることができる。反応ガスは、燃料ガス、及び、酸化剤ガスである。燃料ガスは水素等であってもよい。酸化剤ガスは酸素、空気、乾燥空気等であってもよい。
供給孔は、燃料ガス供給孔、酸化剤ガス供給孔、及び、冷媒供給孔等が挙げられる。
排出孔は、燃料ガス排出孔、酸化剤ガス排出孔、及び、冷媒排出孔等が挙げられる。
セパレータは、1つ以上の燃料ガス供給孔を有し、1つ以上の酸化剤ガス供給孔を有し、1つ以上の冷媒供給孔を有し、1つ以上の燃料ガス排出孔を有し、1つ以上の酸化剤ガス排出孔を有し、1つ以上の冷媒排出孔を有する。
セパレータがアノード側セパレータである場合は、1つ以上の燃料ガス供給孔を有し、1つ以上の酸化剤ガス供給孔を有し、1つ以上の冷媒供給孔を有し、1つ以上の燃料ガス排出孔を有し、1つ以上の酸化剤ガス排出孔を有し、1つ以上の冷媒排出孔を有し、アノード側セパレータは、アノード側ガス拡散層に接する面に燃料ガス供給孔から燃料ガス排出孔に燃料ガスを流す燃料ガス流路を有し、アノード側ガス拡散層に接する面とは反対側の面に冷媒供給孔から冷媒排出孔に冷媒を流す冷媒流路を有する。
セパレータがカソード側セパレータである場合は、1つ以上の燃料ガス供給孔を有し、1つ以上の酸化剤ガス供給孔を有し、1つ以上の冷媒供給孔を有し、1つ以上の燃料ガス排出孔を有し、1つ以上の酸化剤ガス排出孔を有し、1つ以上の冷媒排出孔を有し、カソード側セパレータは、カソード側ガス拡散層に接する面に酸化剤ガス供給孔から酸化剤ガス排出孔に酸化剤ガスを流す酸化剤ガス流路を有し、カソード側ガス拡散層に接する面とは反対側の面に冷媒供給孔から冷媒排出孔に冷媒を流す冷媒流路を有する。
セパレータは、ガス不透過の導電性部材から構成される。導電性部材としては、例えば、カーボンを圧縮してガス不透過とした緻密質カーボン、及び、プレス成形した金属(例えば、鉄、アルミニウム、及び、ステンレス等)板等であってもよい。
【0028】
燃料電池スタックは、各供給孔が連通した入口マニホールド、及び、各排出孔が連通した出口マニホールド等のマニホールドを有していてもよい。
入口マニホールドは、アノード入口マニホールド、カソード入口マニホールド、及び、冷媒入口マニホールド等が挙げられる。
出口マニホールドは、アノード出口マニホールド、カソード出口マニホールド、及び、冷媒出口マニホールド等が挙げられる。
【0029】
図5は、本開示の拡散層の孔(網目)におけるGDL内層部(内部)から流路側表層部(表面)への液水移動の一例を示す模式図である。
図5に示すように、GDLを、繊維を立体網目状にして形成したものとしておけば、その孔(空孔/網目)のコーナー(角部)は鋭角である。ここで繊維表面を撥水としておけば、網目に液水が供給され液滴が成長する場合、網目角部を避けた形で液滴が成長し、酸素拡散経路として角部空孔が残存する。
【0030】
図6は、本開示の拡散層の孔(網目)の一例を示す模式図(左)とそのA-A断面模式図(右)である。
図7は、本開示の拡散層の孔(網目)における液滴の成長のメカニズムの一例を示す模式図である。
図6~7に示すように、網目に液水が供給され液滴が成長しても繊維表面が撥水であれば、液水は網目短径より大きくなった段階、すなわち網目角部に角部空孔が残っている段階で、液滴は隣接網目の液滴と合体し、空孔のより大きな網目、またはより空間の多い流路側にラプラス圧により移動する。これらはランダムな移動だが、最終的にラプラス圧が最低(液滴径最大)となれる流路側空間に移動する。
【0031】
図8は、本開示の表面が親撥水性パターンの場合の拡散層の排水性を説明する図である。
図8に示すように、GDLの流路側表面に撥水部に囲まれた親水部があると、液滴は親水部に優先的に成長するとともに撥水部には広がらないためにGDL面でなく上方(流路の空間)に向かって優先的に成長する。
このため流路にガス流れがある場合、流れの速い領域に液滴が達して液滴を流れ下流に移動させる力が強くなり流路中の液滴移動/排水を促進する。
【0032】
本開示においては、拡散層の内層部を撥水部とし、セパレータ側の表層部に親水部があることにより、表層部に空隙がある場合よりも拡散層の内部(内層部)と流路側表面(表層部)との間のラプラス圧差が大きくなり拡散層内部から外部への液水移動が促進される。さらに表面の親水部を「親撥水性のパターン」とすることで、表面に移動してきた水を、液膜生成を抑制しつつ液滴を成長させ、ガス流れ方向への水滴の移動・排水を促進する。
【0033】
本開示によれば、従来技術のように親/撥水部を面方向に貫通させずとも、拡散層の排水性を向上させることができる。
本開示のガス拡散層により、特に高負荷発電時に大量に生じる液水を滞留させずに排水しやすくできるため、燃料電池の発電性能を向上させることができる。
本開示のガス拡散層は、特に燃料電池の運転一時停止後の冷間、再起動時に、拡散層表面に滞留する液膜による出力増加不具合の抑制に有効である。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8