(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022114108
(43)【公開日】2022-08-05
(54)【発明の名称】泡エアゾール組成物および泡エアゾール製品
(51)【国際特許分類】
A61K 8/34 20060101AFI20220729BHJP
A61K 9/12 20060101ALI20220729BHJP
A61K 47/10 20060101ALI20220729BHJP
A61K 47/34 20170101ALI20220729BHJP
A61K 47/06 20060101ALI20220729BHJP
A61K 47/02 20060101ALI20220729BHJP
A61K 8/02 20060101ALI20220729BHJP
A61K 8/894 20060101ALI20220729BHJP
B65D 83/14 20060101ALI20220729BHJP
【FI】
A61K8/34
A61K9/12
A61K47/10
A61K47/34
A61K47/06
A61K47/02
A61K8/02
A61K8/894
B65D83/14 200
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021010254
(22)【出願日】2021-01-26
(71)【出願人】
【識別番号】000219934
【氏名又は名称】エア・ウォーター・ゾル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100135183
【弁理士】
【氏名又は名称】大窪 克之
(74)【代理人】
【識別番号】100116241
【弁理士】
【氏名又は名称】金子 一郎
(72)【発明者】
【氏名】菅原 主基
【テーマコード(参考)】
3E014
4C076
4C083
【Fターム(参考)】
3E014PA01
3E014PB04
3E014PC02
3E014PD01
3E014PE06
3E014PF10
4C076AA24
4C076BB31
4C076CC18
4C076DD29V
4C076DD34V
4C076DD37A
4C076EE27V
4C076FF54
4C083AB131
4C083AC011
4C083AC012
4C083AC101
4C083AC102
4C083AC121
4C083AC122
4C083AC182
4C083AD161
4C083AD162
4C083AD202
4C083BB49
4C083CC02
4C083DD08
4C083DD47
4C083EE06
4C083EE07
4C083EE12
(57)【要約】
【課題】起泡性が良好で外観の良い泡を形成することができ、かつ使用感も良好な、高濃度のアルコールを含有する泡エアゾール組成物を提供する。
【解決手段】泡状で吐出される、原液と噴射剤とからなる泡エアゾール組成物は、原液100重量%中に、(A)炭素数1~3のアルコールを55重量%以上90重量%、(B)ポリエーテル変性シリコーンを0.3重量%以上、含有し、前記泡エアゾール組成物100重量%中の前記噴射剤の含有量が22重量%以下である。
【選択図】 なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
泡状で吐出される、原液と噴射剤とからなる泡エアゾール組成物であって、
前記原液100重量%中に、
(A)炭素数1~3のアルコールを55重量%以上90重量%以下、
(B)ポリエーテル変性シリコーンを0.3重量%以上、含有し、
前記泡エアゾール組成物100重量%中の前記噴射剤の含有量が22重量%以下である、
泡エアゾール組成物。
【請求項2】
(B)ポリエーテル変性シリコーンの含有量が、0.3重量%以上2.0重量%以下であり、
さらに、(C)グリセリン、プロピレングリコールおよび1,3-ブチレングリコールからなる群のうちの1または2以上を、合計で2.0~8.0重量%含有している、
請求項1に記載の泡エアゾール組成物。
【請求項3】
(B)ポリエーテル変性シリコーンの含有量が、0.3重量%以上2.0重量%以下であり、
さらに(C)グリセリンを2.0~8.0重量%含有している、
請求項1に記載の泡エアゾール組成物。
【請求項4】
(A)炭素数1~3のアルコールが、エタノールまたはイソプロピルアルコールであり、
前記噴射剤が液化石油ガス、HFO-1234zeおよび炭酸ガスからなる群のうちの一又は2以上である、
請求項1~3のいずれか一項に記載の泡エアゾール組成物。
【請求項5】
(A)炭素数1~3のアルコール100重量%中にエタノールを50重量%以上含有している、
請求項4に記載の泡エアゾール組成物。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか一項に記載の泡エアゾール組成物が容器に充填された泡エアゾール製品であって、
前記容器内の圧力が0.05MPa以上0.80MPa以下である、
泡エアゾール製品。
【請求項7】
前記容器を構成するエアゾールバルブのステム孔の断面が円形であり、その内径が0.2mm以上0.5mm以下である、
請求項6に記載の泡エアゾール製品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、起泡性および使用感の良好な、アルコールを高濃度で含有する泡エアゾール組成物および泡エアゾール製品に関する。
【背景技術】
【0002】
高濃度アルコールを含有する消毒用の組成物は、主に手指を消毒することを目的として、医療現場などで使用される。その一般的な使用方法として、スプレー容器から霧状の液剤を噴霧する、ポンプ容器からジェル剤を吐出する、ポンプ容器を用いて液剤を泡状(フォーム状)にして吐出する等の態様が挙げられる。液剤を噴霧する態様には、液だれや舞い散りにより液剤が無駄になる問題があり、ジェル剤を吐出する態様には、ジェル剤が固化してポンプ容器の吐出部が詰まったり、所定の方向から吐出方向がずれたりする問題がある。さらには、これらによって衣服や床などが汚損するという問題もある。対して、液剤を泡状にして吐出する態様は、液だれ、舞い散り、ずれた方向への吐出といった問題が生じ難く、手指全体に素早く伸ばすことが容易であり使用性に優れている。
【0003】
しかし、高濃度でアルコールを含有する液剤の場合、アルコールの消泡作用によって、界面活性剤による泡の膜形成作用が阻害されて液剤の粘度が低下するから、液剤を起泡させ泡を維持することは困難である。そこで、高濃度のアルコールを含有する液剤を用いて使用性の良好な泡を形成するには、例えば、界面活性剤を高濃度で配合したり、増粘剤を配合したりする必要がある。高濃度の界面活性剤や増粘剤の配合は、塗付後の乾燥残分による使用感(感触)の悪化や、皮膚刺激性を招くおそれがある。起泡性向上の観点からアルコールの配合量を少なくすると、液剤の乾燥性が低下して手指の消毒に要する時間が長くなったり、殺菌力が低下したりするおそれがある。
【0004】
特許文献1には、(A)全組成物あたり50~90容量%の量で存在するアルコール、(B)全組成物あたり0.1~10質量%の量でビス-PEG/PPG-[14-20]/[5-20]ジメチコンを含む、シリコーンベースの界面活性剤、および(C)全組成物を100質量%とする量で存在する水を含み、pHが5以下である発泡性組成物が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1の発泡性組成物は、発泡ポンプ等のノンガス吐出容器内で大気圧程度の低加圧条件で空気と混合することにより、発泡性組成物を泡状とするため、高濃度の界面活性剤を配合する必要がある。したがって、界面活性剤に起因する、ぬめり感、粘着感、べたつき感が生じやすく、使用感が良くないという問題があった。さらに、グリセリンなどの保湿剤は、吸湿性が高く界面活性剤のべたつき感を増加させるから、発泡性組成物に保湿剤を加えて、皮膚を保護する機能を付与することが困難であった。
本発明は、起泡性が良好で外観の良い泡を形成することができ、かつ使用感も良好な、高濃度のアルコールを含有する泡エアゾール組成物および泡エアゾール製品の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するために提供される本発明は次のとおりである。
[1]泡状で吐出される、原液と噴射剤とからなる泡エアゾール組成物であって、前記原液100重量%中に、(A)炭素数1~3のアルコールを55重量%以上90重量%以下、(B)ポリエーテル変性シリコーンを0.3重量%以上、含有し、前記泡エアゾール組成物100重量%中の前記噴射剤の含有量が22重量%以下である、泡エアゾール組成物。
【0008】
[2](B)ポリエーテル変性シリコーンの含有量が、0.3重量%以上2.0重量%以下であり、さらに、(C)グリセリン、プロピレングリコールおよび1,3-ブチレングリコールからなる群のうちの1または2以上を、合計で2~8重量%含有している、[1]に記載の泡エアゾール組成物。
[3](B)ポリエーテル変性シリコーンの含有量が、0.3重量%以上2.0重量%以下であり、さらに(C)グリセリンを2~8重量%含有している、[1]に記載の泡エアゾール組成物。
[4](A)炭素数1~3のアルコールが、エタノールおよび/またはイソプロピルアルコールであり、前記噴射剤が、液化石油ガス、HFO-1234zeおよび炭酸ガスからなる群のうちの1または2以上である、[1]~[3]のいずれか一項に記載の泡エアゾール組成物。
[5](A)炭素数1~3のアルコール100重量%中にエタノールを50重量%以上含有している、[4]に記載の泡エアゾール組成物。
【0009】
[6][1]~[5]のいずれか一項に記載の泡エアゾール組成物が容器に充填された泡エアゾール製品であって、前記容器内の圧力が0.05MPa以上0.80MPa以下である、泡エアゾール製品。
[7]前記容器を構成するエアゾールバルブのステム孔の断面が円形であり、その内径が0.2mm以上0.5mm以下である、[6]に記載の泡エアゾール製品。
【発明の効果】
【0010】
起泡剤としてポリエーテル変性シリコーンを用いるとともに、泡エアゾール組成物100重量%中の噴射剤の含有量を所定範囲内とすることで、アルコールを高濃度で含有する原液により良好な泡を形成できる。また、噴射剤を用いるエアゾールとすることで、原液中のポリエーテル変性シリコーンの含有量を少なくできるから、べたつきを抑えることができる。したがって、使用性に優れかつ使用感の良好な泡エアゾール組成物および泡エアゾール製品を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】泡エアゾール製品の構成を模式的に示す部分断面図
【発明を実施するための形態】
【0012】
(泡エアゾール組成物)
本実施形態の泡エアゾール組成物は、使用の際、容器から泡状で吐出される、原液と噴射剤とからなるものである。原液および噴射剤について、以下に説明する。
原液は(A)炭素数1~3のアルコールおよび(B)ポリエーテル変性シリコーンを含有しており、噴射剤とともに容器に充填される。
【0013】
(A)炭素数1~3のアルコール
炭素数1~3のアルコール(以下、「アルコール」ともいう)としては、例えば、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール(2-プロパノール)、n-プロパノール等が挙げられる。これらは、単独(一種)で用いても、複数(二種以上)を混合して用いてもよい。泡比重が小さくかつ外観が良い泡を形成する観点から、エタノールを含有するアルコールが好ましく、エタノールのみからなるアルコールを用いてもよい。エタノールと他のアルコールとの混合物を用いる場合、アルコール100重量%中のエタノールの含有量は、50重量%以上が好ましく、70重量%以上がより好ましく、90重量%以上がさらに好ましい。また、エタノールは、ノロウイルスなどの親水性ウイルスに対する消毒効果が高く、脱脂作用や毒性が弱い点においても優れている。
【0014】
原液100重量%中のアルコールの含有量は、消毒作用および起泡性の観点から、55重量%以上90重量%以下が好ましく、60重量%以上80重量%以下がより好ましく、65重量%以上75重量%以下がさらに好ましい。
【0015】
(B)ポリエーテル変性シリコーン
ポリエーテル変性シリコーンは、シリコーン系の気泡剤(界面活性剤)であり、高濃度のアルコールを含有する原液の起泡剤として作用する。ポリエーテル変性シリコーンとしては、ポリオキシエチレン型、ポリオキシエチレン・オキシプロピレン型等が挙げられ、ポリオキシエチレン型が好ましい。
【0016】
ポリエーテル変性シリコーンとしては、例えば、PEG3-ジメチコン、PEG-9ジメチコン、PEG-10ジメチコン、PEG-11メチルエーテルジメチコン、PEG-12ジメチコン、PEG32メチルエーテルジメチコン、Bis-PEG3-ジメチコン、Bis-PEG-9ジメチコン、Bis-PEG-10ジメチコン、Bis-PEG-11メチルエーテルジメチコン、Bis-PEG-12ジメチコンなどのポリオキシエチレン・ポリメチルシロキサン共重合体を用いることができる。
【0017】
ポリオキシエチレン・メチルポリシロキサン共重合体(POE・ジメチコン共重合体)は、ジメチルポリシロキサン(ジメチコン)のメチル基の一部をポリオキシエチレン(ポリエチレングリコール)で置換したものである。ポリオキシエチレン・メチルポリシロキサン共重合体は、ポリジメチルシロキサン骨格の末端にポリオキシエチレン鎖が結合している線状ブロック共重合体構造と、ポリジメチルシロキサン骨格の末端ではない部分にポリオキシエチレン鎖が結合しているペンダント状共重合体構造とがある。安定な泡を形成する観点から、線状ブロック共重合体構造のポリオキシエチレン・メチルポリシロキサン共重合体が好ましい。
【0018】
ポリオキシエチレン・メチルポリシロキサン共重合体におけるポリオキシエチレン(ポリエチレングリコール)鎖の平均重合度は、安定な泡を形成する観点から、7~18が好ましく、8~15がより好ましく、9~13がさらに好ましい。
【0019】
原液100重量%中におけるポリエーテル変性シリコーンの含有量は、アルコールに対する起泡作用の観点から、0.3重量%以上が好ましく、0.5重量%以上がより好ましく、0.7重量%以上がさらに好ましい。手指を消毒する際のべたつきを抑制する観点から、3.0重量%以下が好ましく、2.5重量%以下がより好ましく、2.0重量%以下がさらに好ましい。
【0020】
(C)保湿剤
原液と噴射剤とを所定の容量比で吐出して泡を形成するエアゾール製品とすることにより、低加圧条件で泡を形成するポンプ製品よりも、少ない量のポリエーテル変性シリコーンにより、良好な泡を形成できる。このため、ポリエーテル変性シリコーンに起因するべたつきが抑えられるから、保湿剤を添加してもべたつき感を増大させず、使用感の低下を招かない。
【0021】
保湿剤としては、例えば、グリセリン、プロピレングリコール、1,3-ブチレングリコール、乳酸、ピロリドンカルボン酸ナトリウム、尿素などが挙げられる。これらの中では、保湿性および使用感の観点から、グリセリン、プロピレングリコールおよび1,3-ブチレングリコールが好ましく、グリセリンがより好ましい。
【0022】
保湿剤は、単独(一種)で用いても、複数(二種以上)を混合して用いてもよい。泡エアゾール組成物への保湿性の付与と、使用時のべたつき抑制とを両立する観点から、原液100重量%中における保湿剤の含有量は、2~8重量%が好ましく、3~7重量%がより好ましく、4~6重量%がさらに好ましい。
【0023】
(噴射剤)
噴射剤は、泡エアゾール製品の容器中の泡エアゾール組成物を構成する成分であり、容器中において、液体、気体、または気体と液体とが混在した状態で存在している。
泡エアゾール組成物により泡比重が小さく、きめが細かい泡を形成する観点から、泡エアゾール組成物100重量%中の噴射剤の含有量は、22重量%以下が好ましく、15重量%以下がより好ましく、10重量%以下がさらに好ましい。泡エアゾール組成物100重量%中の噴射剤の含有量は、原液と噴射剤とを容器に充填して泡エアゾール製品を製造した時点の含有量である。
【0024】
噴射剤としては、液化石油ガス、ジメチルエーテル、炭酸ガス、窒素、亜酸化窒素、HFC-134a、HFO-1234ze(E)などが挙げられる。液化石油ガスは、例えば、プロパン、イソブタンおよびノルマルブタンの混合物を用いることができる。
【0025】
液化石油ガスは炭化水素であり、原液中のポリエーテル変性シリコーンとの親和性が高いから、泡比重が小さく、きめが細かい良好な泡を形成することができる。したがって、良好な泡を形成する観点から、液化石油ガスを主成分とする噴射剤が好ましく、液化石油ガスからなる噴射剤がより好ましい。
【0026】
原液は、アルコールおよび上述した成分(A)~(C)以外に、上述した作用を阻害しない範囲で、さらなる成分を含有していてもよい。当該成分としては、防腐剤、他の界面活性剤、増粘剤、油剤、溶剤、他の殺菌消毒剤、pH調整剤、香料等が挙げられる。
【0027】
(泡エアゾール製品)
本発明は、泡エアゾール組成物が容器に充填された泡エアゾール製品として実施することができる。本発明の泡エアゾール製品は、容器に充填されている液化ガスまたは圧縮ガスの圧力によって、その容器又は他の容器に充填されているそのガス(噴射剤)以外の目的物質(香料、医薬、殺虫剤などを含む原液)を噴霧状、泡状、練歯磨状などに排出する機能をもつエアゾール製品のうち、目的物質を泡状に排出するものをいう。
【0028】
図1は、泡エアゾール製品1の構成を模式的に示す部分断面図である。原液32と噴射剤31とを容器本体(容器)10に充填してバルブ11を取り付けると、液体状の噴射剤31Lの一部が蒸発して気体状の噴射剤31Vとなり、容器本体10内の圧力が高くなる。バルブ11のアクチュエータ12を押し下げてバルブ11を開放すると、組成物33中における液体状の噴射剤31Lが急激に気化し、泡状の組成物33として吐出される。
【0029】
良好な泡を形成する観点から、容器本体10内の圧力は、0.05MPa以上0.80MPa以下が好ましく、0.15MPa以上0.70MPa以下がより好ましく、0.25MPa以上0.60MPa以下がさらに好ましい。
【0030】
原液32および噴射剤31を充填する容器本体10としては、一般に用いられている容器を用いることができる。容器の材質は特に限定されないが、例えば、各種金属製、樹脂製、ガラス製等の耐圧性を有する容器が挙げられる。
【0031】
図2はバルブ11の構成を模式的に示す断面図である。バルブ11は、容器本体10との嵌合によって、容器本体10を密封する部品であり、ディップチューブ13、ハウジング14、ステム15、マウンティングカップ17およびスプリング18を備えている。なお、同図には、一例として、正立噴射用のバルブ11を示したが、泡エアゾール製品1のバルブはこれに限られず、倒立噴射用や正立倒立両用のバルブを用いても良い。
【0032】
ディップチューブ13は、ハウジング14およびステム15に、原液32(
図1参照)を供給すると同時に、原液32の吐出量を抑制する。ハウジング14は、スプリング18によりステムガスケット19に向かって付勢された状態でステム15を保持しており、ハウジング孔20を備えている。ハウジング孔20は、アクチュエータ12とは反対側に設けられ、ディップチューブ13に連結されている。
ハウジング孔20は、例えば、断面形状が円形の場合、直径(内径)Uは0.2mm~2.5mm程度、断面積0.03mm
2~5.0mm
2程度とすればよい。なお、ハウジング孔20の形状は、断面円形のものに限られず、他の形状であってもよい。
【0033】
ステム15は、上下移動によりステム孔21を開閉し、ステム孔21と連通するアクチュエータ12と容器本体10内との連通状態を制御する。アクチュエータ12が押し下げられ、ステム15が下方向に移動して、ステムガスケット19により閉塞されていたステム孔21が開いてバルブ11が開放されると、組成物33(
図1参照)はディップチューブ13からハウジング14内に供給されてアクチュエータ12から泡状となって吐出される。
【0034】
上述した泡エアゾールを用いた場合、泡エアゾール製品の容器から吐出される泡の質は、容器本体10を密封するバルブ11に設けられたステム15のステム孔21の大きさに影響される。ステム孔21の断面形状が円形の場合、泡比重が小さくきめの細かい良質な泡を吐出する観点から、ステム孔21の直径(内径)Sは、0.1mm以上0.6mm以下が好ましく、0.2mm以上0.5mm以下がより好ましい。ステム孔21の断面積は、0.01mm2~0.30mm2が好ましく、0.03mm2~0.20mm2がより好ましい。また、ステム孔21を複数備えたものよりも、ステム孔21を1つ備えたエアゾールバルブ11のほうが好ましい。なお、ステム孔21の形状は、断面円形のものに限られず、他の形状であってもよい。
【0035】
以上説明した実施形態に関する説明は、本発明の理解に資するものであり、本発明を限定するためのものではない。したがって、実施形態に開示された各要素は、本発明の技術的範囲に属する全ての設計変更や均等物をも含む趣旨である。
【実施例0036】
以下、実施例によって本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されない。
実施例では、起泡剤および噴射剤として、以下のものを用いた。
(起泡剤)
(B)ポリエーテル変性シリコーン:Silsoft870(商品名、Momentive Performance Materials Inc.製)、PEG-12ジメチコン(平均重合度n=12、線状ブロック共重合体構造、ポリオキシエチレン・メチルポリシロキサン共重合体)
【化1】
ポリエチレンアルキルエーテル(POEアルキルエーテル):エマルゲンLS-110(商品名、花王(株)製)
デシルグルコシド:マイドール10(商品名、花王(株)製、アルキル(8~16)グルコシド)
(噴射剤)
液化石油ガス(LPG):プロパンとブタン(i-ブタン、n-ブタン)との混合物
炭酸ガス(炭酸):CO
2
ジメチルエーテル(DME)
HFO-1234ze(ze):ハイドロフルオロオレフィン
液化石油ガスとHFO-1234zeとの混合物(LPG+ze):重量比(LPG/ze)=70/30
【0037】
以下の各表に示す配合量(重量%)により各成分を混合して原液を調製した。原液と噴射剤とからなる泡エアゾール組成物を、各表に示す割合(重量%)で容器に充填して泡エアゾール製品を製造した。各泡エアゾール製品から泡エアゾール組成物を吐出した泡について、以下の方法および基準により評価した結果を各表に示す。
【0038】
[泡密度]
形成した泡を25cm3の容器にとって重量を測定し、泡比重を求めた。
◎:100(g/L)未満
〇:100(g/L)以上160(g/L)未満
△:160(g/L)以上
×:測定不能(ほぼ液体状態)
[泡の外観]
泡密度を求める際、下記の基準に基づいて、泡の外観を評価した。
○:泡の径が全体的に小さく均一性が良好であり、しっかりした泡である。
△:径の大きな泡が散見され、均一性が悪い。
×:泡にならない。
[使用感]
泡を手に擦りこんだ後、アルコールが蒸発した乾燥直後における感触を以下の基準により評価した。
○:ぬめり感、粘着感がなく、使用感が良好である。
△:ぬめり感、粘着感はやや感じる程度であるが、手洗い時にぬめり感が取れにくく感触の悪さを感じる。
×:ぬめり感、粘着感があり、使用感が悪い。
【0039】
【0040】
表1に示すように、0.3重量%程度のポリエーテル変性シリコーンを配合することにより、70重量%以上のエタノールを含有する原液を用いて、泡比重が小さく良好な外観の泡を形成できた。エアゾール製品とすることで、少ない量のポリエーテル変性シリコーンを用いて泡を形成できるから、ポリエーテル変性シリコーンによるべたつきは生じなかった。ポリエーテル変性シリコーンに他の界面活性剤を併用した場合も良好な泡を形成できた。起泡剤として、ポリエーテル変性シリコーンのみ、またはポリエーテル変性シリコーンとPOEアルキルエーテルとを併用することで、べたつきが無く使用感が良い泡を形成することができた。
処方例1、5、10の結果から、使用感の良い泡を形成するためには、ポリエーテル変性シリコーンの配合量は、2.5重量%以下が好ましく、2.0重量%以下がより好ましいといえる。
【0041】
(保湿剤)
上述のとおり、ポリエーテル変性シリコーンを用いることにより、手にのばしやすく使用性に優れ、べたつきがなく使用感が良い泡を形成できた。そこで、保湿機能を有する成分をさらに配合することによる、起泡性、使用感への影響を評価した。
【表2】
【0042】
表2に示すように、グリセリン、プロピレングリコール、1,3-ブチレングリコールを配合した泡エアゾール組成物はいずれも、これら保湿剤を含まないもの同様、使用性に優れた泡を形成することができ、使用感も良好であった。
ポリエーテル変性シリコーンを含有しない泡エアゾール組成物は、他の界面活性剤やグリセリンの含有量を増やしても、泡を形成することができなかった。
【0043】
(噴射剤)
プロパンの含有割合(重量%)が異なるLPGおよびLPG以外の噴射剤を用いて、泡エアゾール組成物および泡エアゾール製品を製造し、泡を評価した。
【表3】
【0044】
処方例21~25の結果から、原液/噴射剤の重量比を、98/2~78/22とすることにより、泡比重の小さな泡を形成できることが分かった。ただし、重量比(原液/噴射剤)が93/7の泡エアゾール製品は、泡比重が小さく、かつ外観の良好な泡となったのに対して、重量比(原液/噴射剤)が78/22の泡エアゾール製品は、泡比重は小さいものの、外観が良くないスカスカした泡であった。したがって、泡エアゾール組成物100重量%中の噴射剤の含有量は、22重量%以下が好ましく、18重量%以下がより好ましく、8重量%以下がさらに好ましい。また、噴射剤を3重量%配合することで、泡比重が低く、外観の良好な泡を形成することができたから、噴射剤の含有量は、泡エアゾール組成物100重量%中に3重量%以上が好ましい。
【0045】
【0046】
処方例37~39に示すように、LPG以外の噴射剤を用いて、泡比重(g/L=mg/cm3)が小さい泡を形成することができた。泡比重が100(g/L)以下の外観が良い泡を形成する観点から、噴射剤としてはLPGが好ましい。なお、プロパンとブタンとからなるLPGにおけるプロパンの含有割合によって、泡エアゾール組成物の起泡性は変化しなかった。
【0047】
処方例27、30~36の結果から、比重の小さい泡を形成するためには、容器の内圧を0.8MPa以下とすることが好ましい。容器の内圧が低くなることによって、形成される泡の比重が大きくなる傾向は認められないから、容器の内圧は原液を吐出可能な圧力以上とすればよい。
【0048】
(アルコールの配合量と種類)
表5に示す原液および噴射剤を用いて、泡エアゾール製品を製造し、泡を評価した。
【表5】
【0049】
アルコール含有量55重量%以上90重量%以下の原液を用いて、起泡性の良い発泡エアゾール組成物を調製することができた。泡比重が小さく外観の良好な泡を形成する観点から、原液中のアルコールの含有量は60重量%以上80重量%以下が好ましい。
アルコールとしてイソプロピルアルコールのみを用いた処方例43の発泡エアゾール組成物も、泡比重を測定可能な泡を形成することができた。ただし、起泡性の観点から、イソプロピルアルコールよりもエタノールのほうが好ましい。
【0050】
(ステム孔の直径)
表6に示す原液および噴射剤を用いて、直径、孔数の異なるステムを備えた泡エアゾール製品を製造し、泡を評価した。
【表6】
【0051】
表6に示すように、アクチュエータ側のステム孔の直径および数により、泡エアゾール製品から吐出される泡の泡比重が変わることが分かった。表6に示す原液を用いた場合、断面円形のステム孔の直径(内径)を0.3mm以上0.5mm以下とすることで、泡比重が小さくかつ外観が良い泡を形成できた。しかし、ステム孔の直径を0.6mmとすると、泡エアゾール製品により形成される泡の泡比重が大きくなり、泡の外観が悪くなった。したがって、良好な泡を形成する観点から、ステム孔の直径は0.1~0.6mmが好ましく0.3~0.5mmがより好ましい。ステム孔の断面積は0.01~0.30mm2が好ましく0.07~0.20mm2がより好ましい。また、ステム孔は二個(複数)よりも一個のほうが好ましい。なお、ディップチューブおよびディップチューブ側のハウジング孔の大きさ(内径)は、泡エアゾール製品から吐出される泡の泡比重および外観に影響しなかった。
【0052】
(発泡ポンプ)
発泡ポンプ(F5ポンプフォーマー(竹本容器(株)))を用いて、表7に示す原液を発泡させて、泡を評価した。
【表7】
【0053】
処方例51~54に示すように、発泡ポンプを用いた場合、ポリエーテル変性シリコーン1~3重量%によって泡を形成することができず、泡を形成するには、5~10重量%のポリエーテル変性シリコーンが必要であった。このため、ポリエーテル変性シリコーンに起因するべたつきによって使用感の低下が生じた。本発明は、ポンプ製品ではなく泡エアゾール製品とすることにより、泡の形成に必要なポリエーテル変性シリコーンの配合量を少なくしてべたつきを抑えている。これにより、保湿剤の添加が可能となり、肌を守る機能が高く使用感の良い泡エアゾール組成物を実現することができた。
【0054】
(パームスタンプ法による除菌性の評価)
表2に示す処方例11のエアゾール製品から泡状のエアゾール組成物1.0gを手のひらに取り出し、両手をすり合わせながら乾燥させた。泡比重が小さくきめの細かい泡であったため、手のひら以外に付着させることなく、エアゾール組成物を素早く伸ばすことができた。
除菌の前後において、手形の標準寒天培地に手の平を接触させて、手の平の菌を培地に移した後、培地を35℃の下、48時間放置した後に、コロニーの数(CFU;colony forming unit)を数えた。除菌前の手の平を接触させた培地におけるコロニー数が135(135CFU/hand)であったのに対し、除菌後の手の平を接触させた培地におけるコロニー数が8CFU/handであり、本実施例のエアゾール製品は十分な除菌効果を示した。
本発明の泡エアゾール組成物および泡エアゾール製品は、手指の消毒に用いることができる。起泡性が良く使用性に優れており、かつ乾燥直後の使用感も良好であるから、医療機関など頻繁に手指を消毒する必要がある場所での使用に有用である。