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特開2022-11413作業用アタッチメントへの油量較正方法、較正用治具、較正プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022011413
(43)【公開日】2022-01-17
(54)【発明の名称】作業用アタッチメントへの油量較正方法、較正用治具、較正プログラム
(51)【国際特許分類】
   E02F 9/22 20060101AFI20220107BHJP
【FI】
E02F9/22 P
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020112540
(22)【出願日】2020-06-30
(71)【出願人】
【識別番号】000150154
【氏名又は名称】株式会社竹内製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001726
【氏名又は名称】特許業務法人綿貫国際特許・商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】原 寛貴
(72)【発明者】
【氏名】大橋 一也
(72)【発明者】
【氏名】奥谷 俊平
(72)【発明者】
【氏名】粂内 健吾
(72)【発明者】
【氏名】清水 宏一
【テーマコード(参考)】
2D003
【Fターム(参考)】
2D003AA01
2D003AB04
2D003BA02
2D003BA06
2D003CA02
(57)【要約】
【課題】作業用アタッチメントに対して適切な油量を供給する。
【解決手段】作業用アタッチメントを外した状態で油量計42を予備回路28に接続し、電子制御回路34は、予備回路28に供給する油量を連続的に変化するように油量制御回路36へ出力する電気信号の電流値を連続的に変化させて出力し、油量計42によって予備回路28に供給された油量を計測し、電子制御回路34が油量制御回路36へ出力した電気信号の電流値と、計測された油量との関係を実測データとし、電子制御回路34にあらかじめ記憶されている油量に関連付けられた電流値を、実測データに基づいて較正する。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
作業用アタッチメントを作動油の油圧で動作させる予備回路と、
予備回路へ供給される作動油の油量を制御する油量制御回路と、
作業用アタッチメントの種類ごとにあらかじめ必要な油量と、当該油量を予備回路へ供給する油量制御回路を制御するために必要な電気信号の電流値とが関連付けられてあらかじめ記憶されており、電気信号を出力することで油量制御回路を制御する電子制御回路と、を具備する作業用車両における、作業用アタッチメントへの油量較正方法であって、
作業用アタッチメントを外した状態で油量計を予備回路に接続し、
電子制御回路は、予備回路に供給する油量を連続的に変化するように油量制御回路へ出力する電気信号の電流値を連続的に変化させて出力し、
油量計によって予備回路に供給された油量を計測し、
電子制御回路が油量制御回路へ出力した電気信号の電流値と、計測された油量との関係を実測データとし、
電子制御回路にあらかじめ記憶されている油量に関連付けられた電流値を、実測データに基づいて較正することを特徴とする作業用アタッチメントへの油量較正方法。
【請求項2】
前記油量計及び前記電子制御回路に接続され、
前記予備回路に供給する油量が連続的に変化するように前記油量制御回路へ出力する電気信号の電流値を連続的に変化させて出力するように前記電子制御回路を制御し、
前記電子制御回路が油量制御回路へ出力した電気信号の電流値と、前記油量計により計測された油量との関係を実測データとして算出し、
前記電子制御回路にあらかじめ記憶されている油量に関連付けられた電流値を、実測データに基づいて較正するように前記電子制御回路を制御する較正用治具を用いることを特徴とする請求項1記載の作業用アタッチメントへの油量較正方法。
【請求項3】
前記油量制御回路は、
前記電子制御回路から出力される電気信号に基づいて動作する比例ソレノイドバルブと、比例ソレノイドバルブから出力される作動油の圧力に基づいて動作するコントロールバルブと、を有することを特徴とする請求項1又は請求項2記載の作業用アタッチメントへの油量較正方法。
【請求項4】
前記油量制御回路は、
前記電子制御回路から出力される電気信号に基づいて回転制御が行われるポンプを有することを特徴とする請求項1又は請求項2記載の作業用アタッチメントへの油量較正方法。
【請求項5】
作業用アタッチメントを作動油の油圧で動作させる予備回路と、
予備回路へ供給される作動油の油量を制御する油量制御回路と、
作業用アタッチメントの種類ごとにあらかじめ必要な油量と、当該油量を予備回路へ供給する油量制御回路を制御するために必要な電気信号の電流値とが関連付けられてあらかじめ記憶されており、電気信号を出力することで油量制御回路を制御する電子制御回路と、を具備する作業用車両における、作業用アタッチメントへの油量較正を実行する際に使用される較正用治具であって、
予備回路を流通する油量を計測する油量計、及び電子制御回路に接続され、
予備回路に供給する油量が連続的に変化するように油量制御回路へ出力する電気信号の電流値を連続的に変化させて出力するように電子制御回路を制御し、
電子制御回路が油量制御回路へ出力した電気信号の電流値と、油量計により計測された油量との関係を実測データとして算出し、
電子制御回路にあらかじめ記憶されている油量に関連付けられた電流値を、実測データに基づいて較正するように前記電子制御回路を制御することを特徴とする較正用治具。
【請求項6】
作業用アタッチメントを作動油の油圧で動作させる予備回路と、
予備回路へ供給される作動油の油量を制御する油量制御回路と、
作業用アタッチメントの種類ごとにあらかじめ必要な油量と、当該油量を予備回路へ供給する油量制御回路を制御するために必要な電気信号の電流値とが関連付けられてあらかじめ記憶されており、電気信号を出力することで油量制御回路を制御する電子制御回路と、を具備する作業用車両における、作業用アタッチメントへの油量較正を実行するコンピュータ読み取り可能なプログラムであって、
コンピュータは予備回路を流通する油量を計測する油量計、及び電子制御回路に接続され、
予備回路に供給する油量が連続的に変化するように油量制御回路へ出力する電気信号の電流値を連続的に変化させて出力するように電子制御回路を制御する機能と、
電子制御回路が油量制御回路へ出力した電気信号の電流値と、油量計により計測された油量との関係を実測データとして算出する機能と、
電子制御回路にあらかじめ記憶されている油量に関連付けられた電流値を、実測データに基づいて較正するように前記電子制御回路を制御する機能とを、コンピュータに実現させることを特徴とする較正プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、作業用車両の作業用アタッチメントへ供給する油量の較正方法、較正用治具、較正プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
作業用車両には、フロント作業装置の作業用アタッチメントを取り換えることで様々な用途に用いることができるものが存在する。
例えば、作業用アタッチメントとしてブレーカを装着することにより、岩盤の破砕、コンクリートの破砕、岩盤掘削、岩盤の小割等の作業に使用することができる。
また、例えば作業用アタッチメントとしてバケットを装着することにより、土砂の掘削、整地等の作業に使用することができる。
【0003】
なお、作業用車両に装着する作業用アタッチメントの種類によって、作業用アタッチメントの予備回路へ流入させる作動油の油圧又は流量が異なる場合がある。
そこで、オペレータが操作可能なアタッチメント選択装置を設け、オペレータが選択した作業用アタッチメントに応じた作動油の油圧又は油量設定を実行することが特許文献1に開示されている。
【0004】
また、オペレータがアタッチメント選択装置における設定を間違ってしまうと、誤った油圧又は油量が作業用アタッチメントに流入してしまうので、アタッチメント選択装置によって選択された作業用アタッチメントが、装着されている作業用アタッチメントと一致しているかどうかの判定を行う油圧回路が特許文献2に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2011-163031号公報
【特許文献2】特開2018-135704号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述した従来の特許文献においては、アタッチメント選択装置で選択された作業用アタッチメントに対し、油圧回路のコントローラが、装着されている作業用アタッチメントに供給する作動油を当該作業用アタッチメントに適合する油圧及び油量となるように油圧ポンプ等を制御している。
【0007】
しかし、装着されている作業用アタッチメントに適合するはずの油量が実際には適合しておらず、作業用アタッチメントの性能が出ないということがあった。
これは、油量制御回路を制御する電子制御回路が出力する電気信号の電流値や、電子制御回路からの電気信号に基づいて油量制御回路から供給する油量に作業用車両ごとのバラつきが存在するため、本来必要な油量が供給されていないか、又は必要量以上の油量が供給されたためと考えられる。
【0008】
そこで本発明は上記課題を解決すべくなされ、その目的とするところは、作業用アタッチメントに対して適切な油量を供給することができる、作業用アタッチメントへの油量較正方法、較正用治具、較正プログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る作業用アタッチメントへの油量較正方法によれば、作業用アタッチメントを作動油の油圧で動作させる予備回路と、予備回路へ供給される作動油の油量を制御する油量制御回路と、作業用アタッチメントの種類ごとにあらかじめ必要な油量と、当該油量を予備回路へ供給する油量制御回路を制御するために必要な電気信号の電流値とが関連付けられてあらかじめ記憶されており、電気信号を出力することで油量制御回路を制御する電子制御回路と、を具備する作業用車両における、作業用アタッチメントへの油量較正方法であって、作業用アタッチメントを外した状態で油量計を予備回路に接続し、電子制御回路は、予備回路に供給する油量を連続的に変化するように油量制御回路へ出力する電気信号の電流値を連続的に変化させて出力し、油量計によって予備回路に供給された油量を計測し、電子制御回路が油量制御回路へ出力した電気信号の電流値と、計測された油量との関係を実測データとし、電子制御回路にあらかじめ記憶されている油量に関連付けられた電流値を、実測データに基づいて較正することを特徴としている。
この方法を採用することにより、作業用車両ごとに、油量制御回路を制御する電子制御回路が出力する電気信号のバラつきや、油量制御回路における電気信号の電流値に基づく油量のバラつき(油量制御回路内の油圧ポンプの効率の差、パイロット圧に対するコントロールバルブの実際の動きの差などが含まれる)があったとしても、実際に測定したデータに基づいて必要な油量に対する電気信号の電流値を較正するため、作業用アタッチメントには常に適正な油量を供給して作業用アタッチメントの性能低下を防止することができる。
【0010】
また、前記油量計及び前記電子制御回路に接続され、前記予備回路に供給する油量が連続的に変化するように前記油量制御回路へ出力する電気信号の電流値を連続的に変化させて出力するように前記電子制御回路を制御し、前記電子制御回路が油量制御回路へ出力した電気信号の電流値と、前記油量計により計測された油量との関係を実測データとして算出し、前記電子制御回路にあらかじめ記憶されている油量に関連付けられた電流値を、実測データに基づいて較正するように前記電子制御回路を制御する較正用治具を用いることを特徴としている。
このように較正用治具を用いて較正を実行することによって、電子制御回路に記憶されている電流値の較正を容易に行うことができる。
【0011】
また、前記油量制御回路は、前記電子制御回路から出力される電気信号に基づいて動作する比例ソレノイドバルブと、比例ソレノイドバルブから出力される作動油の圧力に基づいて動作するコントロールバルブと、を有することを特徴としてもよい。
【0012】
また、前記油量制御回路は、前記電子制御回路から出力される電気信号に基づいて回転制御が行われるポンプを有することを特徴としてもよい。
【0013】
本発明に係る較正用治具によれば、作業用アタッチメントを作動油の油圧で動作させる予備回路と、予備回路へ供給される作動油の油量を制御する油量制御回路と、作業用アタッチメントの種類ごとにあらかじめ必要な油量と、当該油量を予備回路へ供給する油量制御回路を制御するために必要な電気信号の電流値とが関連付けられてあらかじめ記憶されており、電気信号を出力することで油量制御回路を制御する電子制御回路と、を具備する作業用車両における、作業用アタッチメントへの油量較正を実行する際に使用される較正用治具であって、予備回路を流通する油量を計測する油量計、及び電子制御回路に接続され、予備回路に供給する油量が連続的に変化するように油量制御回路へ出力する電気信号の電流値を連続的に変化させて出力するように電子制御回路を制御し、電子制御回路が油量制御回路へ出力した電気信号の電流値と、油量計により計測された油量との関係を実測データとして算出し、電子制御回路にあらかじめ記憶されている油量に関連付けられた電流値を、実測データに基づいて較正するように前記電子制御回路を制御することを特徴としている。
この構成を採用することによって、作業用車両ごとに、油量制御回路を制御する電子制御回路が出力する電気信号のバラつきや、油量制御回路における電気信号の電流値に基づく油量のバラつき(油量制御回路内の油圧ポンプの効率の差、パイロット圧に対するコントロールバルブの実際の動きの差などが含まれる)があったとしても、実際に測定したデータに基づいて必要な油量に対する電気信号の電流値を較正するため、作業用アタッチメントには常に適正な油量を供給して作業用アタッチメントの性能低下を防止することができる。
【0014】
また、本発明にかかる較正プログラムによれば、作業用アタッチメントを作動油の油圧で動作させる予備回路と、予備回路へ供給される作動油の油量を制御する油量制御回路と、作業用アタッチメントの種類ごとにあらかじめ必要な油量と、当該油量を予備回路へ供給する油量制御回路を制御するために必要な電気信号の電流値とが関連付けられてあらかじめ記憶されており、電気信号を出力することで油量制御回路を制御する電子制御回路と、を具備する作業用車両における、作業用アタッチメントへの油量較正を実行するコンピュータ読み取り可能なプログラムであって、コンピュータは予備回路を流通する油量を計測する油量計、及び電子制御回路に接続され、予備回路に供給する油量が連続的に変化するように油量制御回路へ出力する電気信号の電流値を連続的に変化させて出力するように電子制御回路を制御する機能と、電子制御回路が油量制御回路へ出力した電気信号の電流値と、油量計により計測された油量との関係を実測データとして算出する機能と、電子制御回路にあらかじめ記憶されている油量に関連付けられた電流値を、実測データに基づいて較正するように前記電子制御回路を制御する機能とを、コンピュータに実現させることを特徴としている。
この構成を採用することによって、作業用車両ごとに、油量制御回路を制御する電子制御回路が出力する電気信号のバラつきや、油量制御回路における電気信号の電流値に基づく油量のバラつき(油量制御回路内の油圧ポンプの効率の差、パイロット圧に対するコントロールバルブの実際の動きの差などが含まれる)があったとしても、実際に測定したデータに基づいて必要な油量に対する電気信号の電流値を較正するため、作業用アタッチメントには常に適正な油量を供給して作業用アタッチメントの性能低下を防止することができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、作業用アタッチメントに対して適切な油量を供給することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】ブレーカを装着した作業用車両の全体構成図である。
図2】バケットを装着した作業用車両の全体構成図である。
図3】作業用アタッチメントの制御系ブロック図である。
図4】ディスプレイの第1の画面である。
図5】ディスプレイの第2の画面である。
図6】ディスプレイの第3の画面である。
図7】ディスプレイの第4の画面である。
図8】実測データの一例を示すグラフである。
図9】他の実施形態における作業用アタッチメントの制御系ブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下本発明の好適な実施の形態を、添付図面を参照して詳細に説明する。
図1図2は、作業用車両の全体構成を示す。
図1の作業用車両10は、作業用アタッチメントとしてブレーカ12を装着した例を示している。
作業用車両10は、左右一対のクローラ機構13を有する走行体14と、走行体14の上部に水平旋回可能に設けられた旋回体16と、旋回体16の前部に設けられたフロント作業装置18とを備えている。図1では、フロント作業装置18にブレーカ12が装着されている。
また、走行体14の前部には、ブレード20が上下に揺動自在に設けられている。
【0018】
旋回体16は、走行体14に対して水平面内で旋回自在であり、オペレータが搭乗するオペレータキャビン21が設けられている。
オペレータキャビン21内には、オペレータがブレーカ12を動作させるための操作レバー(後述する)とディスプレイ(後述する)が設けられている。ディスプレイは、オペレータが各種設定を行えるようにタッチパネル式か、又はボタンが設けられていてもよい。
【0019】
フロント作業装置18は、旋回体16に対して左右方向及び上下方向に揺動可能に設けられたブーム22と、ブーム22の先端部において、ブーム22に対して上下方向に揺動可能に設けられたアーム23とを有している。また、アーム23の先端部にはブレーカ12が設けられている。
ブレーカ12は、アーム23と平行に設けられたシリンダ24の動作により、アーム23に対して上下方向に揺動可能に設けられている。
【0020】
ブレーカ12は、供給された作動油の油圧によって動作する。作動油は、旋回体16内に設けられた油量制御回路(後述する)から、ブーム22及びアーム23に沿って取り付けられたホース26を流通し、アーム23の長さ方向の中途部に設けられた予備回路28の接続口を経てブレーカ12に供給される。なお、作業用アタッチメントへの作動油の供給回路としてホース26を含めて予備回路と称する。
【0021】
なお、図2に示す作業用車両10は、作業用アタッチメントとしてバケット25を装着した例を示している。
図2における作業用アタッチメント以外の各構成は、図1に示した作業用車両の構成と同一であるため、図1と同一の符号を付し、説明を省略する。
【0022】
上述した作業用車両の作業用アタッチメントとしてブレーカ、バケットの例について説明したが、作業用アタッチメントとしては、これらに限定するものではない。
作業用アタッチメントの他の例としては、家屋の解体時等に用いられて対象物を挟むグラップル、コンクリート等を挟んで破砕するクラッシャー、小割の圧砕機であるパクラー、対象物を切断するカッター、掘削・穴掘り用のオーガ、刈払い機などが挙げられる。
【0023】
次に、図3に作業用アタッチメントの制御系ブロック図を示す。
オペレータが操作する操作レバー30及びディスプレイ32は、作業用車両10のECU(電子制御装置)34にデータ通信可能に接続されている。
ディスプレイ32には、後述するように各作業用アタッチメントに対応する油量が設定され、設定された油量はECU34に記憶される。
操作レバー30は、ボタン及びスライダー(図示せず)が設けられており、オペレータが作業用アタッチメントを動かそうとする場合に、ボタン又はスライダーを操作することでECU34へ電気信号を出力する。
【0024】
ECU34は、比例ソレノイドバルブ36に接続されており、操作レバー30のボタン又はスライダーの操作量に基づき、作業用アタッチメントに対応する油量に対応する電気信号を出力することによって比例ソレノイドバルブ36の動作を制御する。
比例ソレノイドバルブ36は、出力するパイロット圧を調整することでコントロールバルブ38のスプール開度を制御して予備回路28へ供給する油量を調整する。
本実施形態では比例ソレノイドバルブ36とコントロールバルブ38が油量制御装置を構成している。
【0025】
図4図6にディスプレイの表示例を示す。
ディスプレイ32は、オペレータが各種設定を実行可能なようにタッチパネル式のものを採用している。
図4は、ディスプレイ32のメニューを表示した画面である。この画面からオペレータは設定したい内容を選択することができる。図4では、左上から左下に向けて、トリップメーターの設定アイコン、予備回路への油量表示アイコン、ディスプレイ表示の設定アイコン、データ表示アイコン、時計設定アイコン、作業用車両の設定アイコン、右上から右下に向けてエラーコード表示アイコン、HDMI(登録商標)接続アイコン、が表示されている。
【0026】
図5は、図4のメニュー画面において、オペレータが作業用車両の設定アイコンをタップした場合の画面を示している。ここでは予備回路への油量の設定、その他パスワードの設定などが可能となっている。
図5においては、予備回路への油量の設定アイコンは、1st、2nd、4thの3種類が存在しており、オペレータは1stの設定アイコンをタップしてパスワードを入力したことを示している。
【0027】
図6は、予備回路への油量の設定(1st)画面を示している。図6では、作業用アタッチメントが6種類、アイコンとして表示されている。図6では、ブレーカ、グラップル、クラッシャー、パクラー、カッター、オーガが初期設定されており、さらに追加可能となるように1~3までのアイコンが表示されている。
【0028】
図7は、予備回路(1st)の具体的な油量設定画面を示している。
図7の画面では、No.1とNo.2の2種類の設定が可能となっており、オペレータは、各作業用アタッチメントにおける最小油量と最大油量のカタログスペック値を入力し、各作業用アタッチメントで使用する油量を設定しておく。
この各作業用アタッチメントの最小油量と最大油量のカタログスペック値入力は、作業用車両10のオペレータが行うだけでなく、作業用車両10の出荷時に作業用車両10のメーカー担当者が行ってもよい。
【0029】
ディスプレイ32において、各作業用アタッチメントの油量が設定されると、ディスプレイ32からECU34へ設定された各作業用アタッチメントの油量データが送信されてECU34に記憶される。
オペレータが作業用アタッチメントを操作する場合、ディスプレイ32において操作する作業用アタッチメントを選択する。ディスプレイ32は、選択された作業用アタッチメントの種類をECU34へ通知する。
ECU34は、操作レバー30のボタン又はスライダーの動作量(操作レバー30から送信される電気信号)に基づいて、必要な油量を出力するように比例ソレノイドバルブ36へ電気信号を出力する。
【0030】
なお、作業用アタッチメントを動作させる際に、操作レバー30からの電気信号の電流値のバラつきがあり、ECU34からの電気信号の電流値のバラつきがあり、比例ソレノイドバルブ36の制御のバラつき、コントロールバルブに接続された油圧ポンプの効率の差、比例ソレノイドバルブ36からコントロールバルブ38へのパイロット圧に対するコントロールバルブ38の実際の動きの差などがあった場合に、これらのバラつきが積み重なってしまうと予め設定した油量とは異なる油量が予備回路28に供給されることがあった。
【0031】
そこで、図3に示すような構成を採用した油量の較正方法を以下に説明する。
まず、予備回路28には、作業用アタッチメントを取り付けていない状態で油量計を接続する。この油量計42によって、予備回路28から作業用アタッチメントへ供給される実際の油量が測定可能となる。
油量計42は、較正用治具44に接続されている。
油量計42は、予備回路28から供給される油量を測定し、これを電圧値として較正用治具44へ出力する。
【0032】
較正用治具44は、ECU34及びディスプレイ32に対してデータ通信可能に接続されている。較正用治具44としてはモニタ40を有する一般的なコンピュータ(例えばいわゆるノートパソコン)を採用することができる。
較正用治具44としてのコンピュータは、CPU、ROM、RAM等からなる制御部46と、制御部46によって制御される通信部48と、データやプログラムを記憶するハードディスクやSSD等からなる記憶部50とを有している。通信部48とECU34及びディスプレイ32との接続は車載ネットワークとして一般的に採用されるCAN通信を採用するとよい。
【0033】
記憶部50には、較正プログラムPが記憶されている。制御部46が較正プログラムPを読み出して実行することにより、後述する動作に基づく較正方法をコンピュータが実行することができる。
【0034】
較正作業を実行する較正作業者は、較正用治具44において較正プログラムPを実行する。
較正プログラムPは、ディスプレイ32に表示されている表示画面をモニタ40に表示させ、ディスプレイ32の操作を較正用治具44から操作可能となるように制御する。
【0035】
較正作業者は、較正用治具44を操作してディスプレイ32上で油量を較正する予備回路への油量の設定アイコンのうち1st、2nd、4thのいずれかを選択する。
すると、ディスプレイ32は、選択された設定アイコンにおける油量の較正に対応するよう、ECU34へ電気信号を出力する。
次に、較正プログラムPは、連続した油量を計測するために、ECU34へ、操作レバー30の代わりに連続して変化する電流値の電気信号を出力させる。ここで較正プログラムPがECU34へ出力する電気信号は、操作レバー30がECU34へ送信するはずの最小電流値から最大電流値(これが、コントロールバルブ38における中立からフルストロークに該当する)までを連続して出力するものとする。すなわち、較正プログラムPは、操作レバー30が操作された場合に出力する電流値を予め記憶しておくことが必要である。
【0036】
ECU34では、選択された設定アイコンに対応してあらかじめ記憶されていた油量に対応する電流値の電気信号を比例ソレノイドバルブ36へ出力する。
比例ソレノイドバルブ36は、ECU34からの電気信号に基づいて連続的にコントロールバルブ38を制御し、コントロールバルブ38は予備回路28へ連続した油量を供給する。
そして、予備回路28に流れた油量を油量計42が計測し、較正用治具44に計測した油量を連続して出力する。
【0037】
較正プログラムPは、ECU34が比例ソレノイドバルブ36へ連続して出力した電気信号の電流値と、油量計42により計測された油量との関係を実測データとして算出する。
図8に実測データの一例を示す。実測データは連続データであるため、横軸にECU34が出力した電流値、縦軸に実際に予備回路28から供給された油量が連続的にグラフ化できる。
なお、図8では電流値の変化と油量の変化が一次直線となるような例を図示したが、実際には一次直線に限られるものではない。
【0038】
そして較正プログラムPは、実測データをECU34へ記憶させる。
ECU34では、予め設定された油量に関連付けされた電流値を、実測データに置き換えて比例ソレノイドバルブ36を制御するようにすることで、必要な油量に対して実測データに基づいた電流値の電気信号を比例ソレノイドバルブ36へ出力することができる。
また、実測データは連続したデータとなっているため、必要な油量に対して正確な電流値を比例ソレノイドバルブ36へ出力することができる。
【0039】
このように、実測データに基づいて、ECU34にあらかじめ記憶されていた油量に関連付けされた電流値を較正することができ、作業用車両ごとのバラつきがあったとしても、作業用アタッチメントへ正しい油量を供給することができる。
【0040】
なお、較正用治具44としては一般的なコンピュータに限定するものではなく、上述した較正方法を実行可能な専用機であってもよい。
【0041】
図9に油量制御回路の他の実施形態を示す。なお、上述した実施形態と同一の構成要素については同一の符号を付し、説明を省略する。
図9に示す実施形態では、ECU34はポンプ52に接続されており、ポンプ52がその回転によって作動油を予備回路28に供給する。
ECU34は、電気信号(回転数制御信号)をポンプ52に出力することによってポンプ52の回転数を制御し、これにより予備回路28へ供給する油量を調整する。
【0042】
図9に示す実施形態においても、上述した実施形態と同様の較正方法を実行することができる。
すなわち、予備回路28には、作業用アタッチメントを取り付けていない状態で油量計を接続する。この油量計42によって、予備回路28から作業用アタッチメントへ供給される実際の油量が測定可能となる。
【0043】
較正用治具44としては、図3の実施形態と同様のものを採用することができ、較正用治具44の較正プログラムPは、ECU34がポンプ52へ連続して出力した回転数制御信号の電流値と、油量計42により計測された油量との関係を実測データとして算出する。
そして較正プログラムPは、実測データをECU34へ記憶させる。
ECU34では、予め設定された油量に関連付けされた電流値によってポンプ52を制御するのではなく、必要な油量に対して実測データに基づいた電流値による回転数制御信号(吐出量制御信号)をポンプ52へ出力することができる。
【0044】
上述してきた油量の較正作業は、作業用車両の出荷時において作業用車両の製造メーカーにおいて実行してもよいし、作業用車両を実際に運転するオペレータが実行してもよい。
【符号の説明】
【0045】
10 作業用車両
12 ブレーカ
13 クローラ機構
14 走行体
16 旋回体
18 フロント作業装置
20 ブレード
21 オペレータキャビン
22 ブーム
23 アーム
24 シリンダ
25 バケット
26 ホース
28 予備回路
30 操作レバー
32 ディスプレイ
34 電子制御装置(ECU)
36 比例ソレノイドバルブ
38 コントロールバルブ
40 モニタ
42 油量計
44 較正用治具
46 制御部
48 通信部
50 記憶部
52 ポンプ
P 較正プログラム
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9