(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022114131
(43)【公開日】2022-08-05
(54)【発明の名称】ヒータプレート及びヒータプレートの製造方法
(51)【国際特許分類】
H05B 3/72 20060101AFI20220729BHJP
【FI】
H05B3/72
【審査請求】有
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021010294
(22)【出願日】2021-01-26
(71)【出願人】
【識別番号】515214693
【氏名又は名称】株式会社UACJ鋳鍛
(74)【代理人】
【識別番号】110001036
【氏名又は名称】特許業務法人暁合同特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】渡邊 克己
(72)【発明者】
【氏名】福地 昭
(72)【発明者】
【氏名】▲桑▼田 英憲
【テーマコード(参考)】
3K092
【Fターム(参考)】
3K092PP20
3K092RA01
3K092RF09
3K092RF18
3K092RF26
3K092SS12
3K092TT19
3K092TT28
3K092VV40
(57)【要約】
【課題】温度調整シースと第2部材との間の高い密着性を実現できるヒータプレート及びその製造方法を提供する。
【解決手段】ヒータプレート1は、互いに鍛接接合しているアルミニウムまたはアルミニウム合金製のパネル部材(第1部材)2とプラグ部材(第2部材)4とによって、ヒータシース(温度調整シース)3が挟み込まれて保持されたヒータプレート1であって、パネル部材2には、プラグ部材4が入る第2溝部5Bと、第2溝部5Bの底面5B2においてヒータシース3が入る第1溝部5Aと、が設けられており、パネル部材2とプラグ部材4との少なくとも一方に、ヒータシース3の外形に沿った形状のグレンフロー6が形成されている。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに鍛接接合しているアルミニウムまたはアルミニウム合金製の第1部材と第2部材とによって、温度調整シースが挟み込まれて保持されたヒータプレートであって、
前記第1部材には、前記第2部材が入る第2溝部と、前記第2溝部の底面において前記温度調整シースが入る第1溝部と、が設けられており、
前記第1部材と前記第2部材との少なくとも一方に、前記温度調整シースの外形に沿った形状のグレンフローが形成されているヒータプレート。
【請求項2】
前記第1部材及び前記第2部材には、前記第2溝部の側面を跨ぐよう配されるとともに前記第2溝部の側面に対して交差するよう延びる形状の第2のグレンフローが形成されている請求項1記載のヒータプレート。
【請求項3】
前記第2部材は、幅が前記温度調整シースの外径よりも大きくされており、
前記第1部材は、前記第2溝部が前記第1溝部よりも幅広になるよう構成される請求項1または請求項2記載のヒータプレート。
【請求項4】
前記第1部材は、前記第2溝部の底面に複数の前記第1溝部が開口するよう構成される請求項3記載のヒータプレート。
【請求項5】
前記第1部材は、前記第1溝部の深さが前記温度調整シースの外径の半分よりも大きい請求項3または請求項4記載のヒータプレート。
【請求項6】
前記温度調整シースの外径の半分を「r」とし、前記第1溝部の深さを「D」としたとき、前記第1部材は、前記第1溝部の深さが次の式(1)を満たすよう構成される請求項5記載のヒータプレート。
D≦r+r・sin54° (1)
【請求項7】
前記グレンフローは、少なくとも前記第2部材のうちの前記温度調整シースと対向する部分に形成されている請求項1から請求項6のいずれか1項に記載のヒータプレート。
【請求項8】
前記グレンフローは、少なくとも前記第1部材のうちの前記第1溝部の溝縁に形成されている請求項1から請求項7のいずれか1項に記載のヒータプレート。
【請求項9】
前記第1部材及び第2部材は、互いに鍛接接合される前記第2溝部の側面と前記第2部材の側面とが共に鍛接方向に対して傾斜するよう構成される請求項1から請求項8のいずれか1項に記載のヒータプレート。
【請求項10】
アルミニウムまたはアルミニウム合金製の第1部材と第2部材とを鍛接接合することにより、温度調整シースを挟み込んで保持させる鍛接工程を含むヒータプレートの製造方法であって、
前記第1部材には、前記第2部材が入る第2溝部と、前記第2溝部の底面において前記温度調整シースが入る第1溝部と、が設けられており、
前記鍛接工程では、前記第1部材と前記第2部材との少なくとも一方に、前記温度調整シースの外形に沿った形状のグレンフローが形成されるように鍛接接合するヒータプレートの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書が開示する技術は、ヒータプレート及びヒータプレートの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のヒータプレートの一例として下記特許文献1に記載されたものが知られている。特許文献1に記載のヒータプレートは、アルミニウム又はアルミニウム合金基部材に内部部品としてシースヒータが収納され、その上から接合用アルミニウム又はアルミニウム合金部材を鍛圧圧接して密封した構造を持ち、液晶製造装置等の各種薄型ディスプレー(FPD)製造装置や半導体製造装置のヒータプレートとして使用可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1において、シースヒータと接合用アルミニウム又はアルミニウム合金部材との密着性が不足することにより、熱伝導性が低下するという問題があった。
【0005】
本明細書に記載の技術は、上記のような事情に基づいて完成されたものであって、シースヒータと接合用アルミニウム又はアルミニウム合金部材との間の高い密着性を実現できるヒータプレート及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(1)本明細書に記載の技術に関わるヒータプレートは、互いに鍛接接合しているアルミニウムまたはアルミニウム合金製の第1部材と第2部材とによって、温度調整シースが挟み込まれて保持されたヒータプレートであって、前記第1部材には、前記第2部材が入る第2溝部と、前記第2溝部の底面において前記温度調整シースが入る第1溝部と、が設けられており、前記第1部材と前記第2部材との少なくとも一方に、前記温度調整シースの外形に沿った形状のグレンフローが形成されている。
【0007】
(2)また、上記ヒータプレートは、上記(1)に加え、前記第1部材及び前記第2部材には、前記第2溝部の側面を跨ぐよう配されるとともに前記第2溝部の側面に対して交差するよう延びる形状の第2のグレンフローが形成されてもよい。
【0008】
(3)また、上記ヒータプレートは、上記(1)または上記(2)に加え、前記第2部材は、幅が前記温度調整シースの外径よりも大きくされており、前記第1部材は、前記第2溝部が前記第1溝部よりも幅広になるよう構成されてもよい。
【0009】
(4)また、上記ヒータプレートは、上記(3)に加え、前記第1部材は、前記第2溝部の底面に複数の前記第1溝部が開口するよう構成されてもよい。
【0010】
(5)また、上記ヒータプレートは、上記(3)または上記(4)に加え、前記第1部材は、前記第1溝部の深さが前記温度調整シースの外径の半分よりも大きくてもよい。
【0011】
(6)また、上記ヒータプレートは、上記(5)に加え、前記温度調整シースの外径の半分を「r」とし、前記第1溝部の深さを「D」としたとき、前記第1部材は、前記第1溝部の深さが次の式(1)を満たすよう構成されてもよい。
【0012】
D≦r+r・sin54° (1)
【0013】
(7)また、上記ヒータプレートは、上記(1)から上記(6)のいずれかに加え、前記グレンフローは、少なくとも前記第2部材のうちの前記温度調整シースと対向する部分に形成されてもよい。
【0014】
(8)また、上記ヒータプレートは、上記(1)から上記(7)のいずれかに加え、前記グレンフローは、少なくとも前記第1部材のうちの前記第1溝部の溝縁に形成されてもよい。
【0015】
(9)また、上記ヒータプレートは、上記(1)から上記(8)のいずれかに加え、前記第1部材及び第2部材は、互いに鍛接接合される前記第2溝部の側面と前記第2部材の側面とが共に鍛接方向に対して傾斜するよう構成されてもよい。
【0016】
(10)本明細書に記載の技術に関わるヒータプレートの製造方法は、アルミニウムまたはアルミニウム合金製の第1部材と第2部材とを鍛接接合ヒータプレートの製造方法することにより、温度調整シースを挟み込んで保持させる鍛接工程を含むヒータプレートの製造方法であって、前記第1部材には、前記第2部材が入る第2溝部と、前記第2溝部の底面において前記温度調整シースが入る第1溝部と、が設けられており、前記鍛接工程では、前記第1部材と前記第2部材との少なくとも一方に、前記温度調整シースの外形に沿った形状のグレンフローが形成されるように鍛接接合する。
【発明の効果】
【0017】
本明細書に記載の技術によれば、温度調整シースと第2部材との間の高い密着性を実現できるヒータプレート及びその製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図4】ヒータプレートを構成するパネル部材、ヒータシース及びプラグ部材の断面を撮影した写真
【
図5】
図4を拡大してプラグ部材のグレンフローを示す写真
【
図6】
図4を拡大してパネル部材のグレンフローを示す写真
【
図7】パネル部材及びプラグ部材の断面を撮影した写真であって、第2のグレンフローを示す写真
【
図8】ヒータプレートの製造方法に含まれる鍛接工程においてヒータシースを第1溝部に入れる前の状態を示す断面図
【
図9】鍛接工程においてプラグ部材を第2溝部に入れる前の状態を示す断面図
【
図10】鍛接工程においてプラグ部材を第2溝部に入れる途中の状態を示す断面図
【
図12】実施形態2に係るヒータプレートを構成するパネル部材、ヒータシース及びプラグ部材の断面図
【
図13】鍛接工程においてプラグ部材を第2溝部に入れる途中の状態を示す断面図
【
図14】実施形態3に係るヒータプレートを構成するパネル部材、ヒータシース及びプラグ部材の断面図
【発明を実施するための形態】
【0019】
本明細書において、内部にヒータシース(シースヒータ)を配設したヒータプレートは、金属部材にヒータシースを密着させたもので、ヒータシースの発熱がヒータプレートの金属部材に伝えられる。また、ヒータシースはヒータプレートを均一な温度に加熱するようにヒータプレートの内部に配設されているものである。例えば、ヒータシースを蛇行、渦巻状等に配設してヒータプレートが均一な温度に加熱されるようにしている。またヒータシースは、ステンレス鋼例えばSUS304、ニッケル合金例えばインコロイ、チタンのシース材(パイプ)の中に電熱線と絶縁材が封入されているものである。
【0020】
本明細書において、内部にヒータシースを配設したヒータプレートは、半導体や液晶等の製造装置の真空容器(真空チャンバー)内でヒータプレートとして用いられるものである。
図11に、内部にヒータシースを配設したヒータプレートの使用例を示す。
図11は化学的気相成長(CVD)処理装置を示し、真空チャンバー122内にヒータシース123を配設したヒータプレート121が支持部材124により設けられている。ヒータプレート121には基板125が載置される。また真空チャンバー122内には、CVD処理のためのガス供給部126が設けられており、供給口127よりガスを供給して化学的気相成長により基板125に成膜するものである。
【0021】
以下、本明細書の好ましい実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1は、実施形態1に係るヒータプレート1の断面図である。ヒータプレート1は、パネル部材(第1部材)2に内部部品としてヒータシース(温度調整シース)3が収容され、その上をプラグ部材(第2部材)4で密封された構造を持つ。パネル部材2及びプラグ部材4は、いずれもアルミニウムまたはアルミニウム合金製とされる。また、ヒータシース3は、断面形状が円形とされる。
【0022】
図2は、ヒータプレート1の平面図である。ヒータプレート1は、平面形状が
図2に示すような矩形状であってもよいし、また円形状であってもよい。ヒータプレート1のレイアウト形状は、互いに直交する2つの中心軸の少なくとも1つに対して対称であるか、又は中心に対して点対称であるのが好ましい。パネル部材2は、
図2に示すように、ヒータプレート1と同じ平面形状で板状をなしている。プラグ部材4は、パネル部材2の板面に沿って延在するとともに蛇行するような平面形状とされる。ヒータシース3は、プラグ部材13と同様の平面形状とされる。
【0023】
図3は、
図2のA-A線断面図である。パネル部材2は、
図3に示すように、一方の板面にヒータシース3とプラグ部材4とを収容する溝部5が開口して設けられている。溝部5は、ヒータシース3が入る奥側(深い側)の第1溝部5Aと、プラグ部材4が入る手前側(浅い側)第2溝部5Bと、が連通する構成とされる。ヒータプレート1の製造に際しては、第1溝部5Aにヒータシース3を収容した後に、第2溝部5Bにプラグ部材4を収容し、パネル部材2とプラグ部材4とを鍛接接合している。このときの鍛接方向は、
図3に示すZ軸方向(上下方向)と一致している。ヒータシース3は、パネル部材2とプラグ部材4とにより挟み込まれて密着状態で保持される。
【0024】
次に、パネル部材2及びプラグ部材4について詳しく説明する。プラグ部材4は、
図3に示すように、断面形状が略矩形とされているが、ヒータシース3に接する面がヒータシース3の外形に沿って円弧状に凹んでいる。プラグ部材4は、両側面4Aが鍛接方向に沿ってほぼ真っ直ぐな面となっている。プラグ部材4は、その幅Wがヒータシース3の外径Rよりも大きい。
【0025】
第1溝部5Aの断面形状が略U字型とされるとともに、第2溝部5Bの断面形状が矩形とされる。詳しくは、第1溝部5Aは、その幅が、鍛接方向の手前側では最大値W1でほぼ一定とされるが、鍛接方向の奥側では奥端に近づくほど小さくなるよう可変とされる。第1溝部5Aは、その幅の最大値W1がヒータシース3の外径Rとほぼ一致している。第1溝部5Aは、その周面が、鍛接方向の奥側にある円弧状面5A1と、鍛接方向の手前側にあって鍛接方向に沿ってほぼ真っ直ぐな真直面5A2と、からなる。円弧状面5A1は、その曲率半径がヒータシース3の曲率半径とほぼ同じとされており、第1溝部5Aに入ったヒータシース3の外周面に接触される。真直面5A2は、一対が幅W1分の間隔を空けて対向するよう配されており、第1溝部5Aに入ったヒータシース3の外周面とは殆ど非接触とされる。
【0026】
第2溝部5Bは、その幅W2が鍛接方向についてほぼ一定とされる。第2溝部5Bは、その周面が、鍛接方向に沿ってほぼ真っ直ぐな側面5B1と、鍛接方向に対してほぼ直交する底面5B2と、からなる。側面5B1は、底面5B2からほぼ垂直に立ち上がる面である。第2溝部5Bは、その幅W2が第1溝部5Aの幅の最大値W1よりも大きい。つまり、第2溝部5Bの幅W2は、ヒータシース3の外径Rよりも大きい。従って、第1溝部5Aは、幅広な第2溝部5Bの底面5B2における中央側部分をさらに凹ませて形成されている、と言え、残存する第2溝部5Bの底面5B2における両端側部分によって挟み込まれている。また、第1溝部5Aは、第2溝部5Bにおける幅方向(
図3の左右方向)についてのほぼ中央位置に配されている。
【0027】
そして、第1溝部5Aは、その深さDがヒータシース3の外径Rよりも小さい。従って、第1溝部5Aに入ったヒータシース3は、その一部が第2溝部5B側に突き出した状態となっている。一方、第1溝部5Aは、その深さDがヒータシース3の外径Rの半分(半径)rよりも大きい。従って、ヒータシース3が第1溝部5Aに入った状態では、ヒータシース3の中心Cが第1溝部5A内に存在していて第2溝部5Bの底面5B2よりも低い配置となる。この状態では、ヒータシース3の外周面のうち、第1溝部5A内に存在し且つ中心Cよりも高い部分(第2溝部5B側の部分)については、第1溝部5Aの周面のうちのヒータシース3の中心Cよりも高い部分との間に隙間が生じていて当該部分とは非接触となっている。ヒータシース3の外周面のうちの第1溝部5Aの周面との非接触部分3Aは、ヒータシース3の中心Cを挟んで左右に2箇所存在している。非接触部分3Aは、ヒータシース3において中心Cを通る2つの半径によって切り取られる扇形部分の円弧となっている。ヒータシース3の外周面は、上記した2つの非接触部分3Aを除いた部分がパネル部材2及びプラグ部材4に対して接触した状態とされる。
【0028】
さらには、第1溝部5Aは、その深さDが次の式(2)を満たすよう構成されている。ここで、式(2)の中の「r・sin54°」は、ヒータシース3の中心Cを通る底辺と、その底辺に対して54°の角度をなし且つ中心Cを通る斜辺と、を有する直角三角形の高さを表している。従って、第1溝部5Aの深さDが式(2)を満たしていれば、ヒータシース3の中心Cと第2溝部5Bの底面5B2との間の鍛接方向についての距離Lが、「r・sin54°」よりも小さくなる。一方、ヒータシース3において、中心角が54°となる扇形部分の円弧の長さが、ヒータシース3の外周長さに占める割合は、15%となっている。従って、第1溝部5Aの深さDが式(2)を満たしていれば、ヒータシース3の非接触部分3Aの長さが、ヒータシース3の外周長さに占める割合が30%未満となる。つまり、第1溝部5Aの深さDが式(2)を満たしていれば、鍛接接合に伴って塑性変形したプラグ部材4が第1溝部5A内に充填されなかった場合には、ヒータシース3の外周面がパネル部材2及びプラグ部材4に対して非接触となる非接触面積の割合が30%未満となる。
【0029】
r<D≦r+r・sin54° (2)
【0030】
上記のような構成のパネル部材2及びプラグ部材4は、間にヒータシース3を挟み込んだ状態で鍛接接合されている。そして、鍛接接合されたパネル部材2及びプラグ部材4のうちのヒータシース3を取り囲む部分には、
図4から
図6に示すように、ヒータシース3の外形に沿う形状のグレンフロー(鍛流線)6が形成されている。「グレンフロー」とは、金属材料を鍛造等した際にみられる繊維状の金属組織の流れのことである。
図4は、パネル部材2、ヒータシース3及びプラグ部材4の断面を撮影した写真である。
図5は、
図4を拡大した写真であって、プラグ部材4のグレンフロー6を示す写真である。
図6は、
図4を拡大した写真であって、パネル部材2のグレンフロー6を示す写真である。
図4には、ヒータシース3の外形をなぞった破線を併記している。また、
図5及び
図6には、グレンフロー6をなぞった破線を併記している。プラグ部材4のうちのヒータシース3と対向する部分には、
図5に示すように、ヒータシース3のうちの第2溝部5B側に突き出した部分の外形に沿う形状のグレンフロー6が形成されている。パネル部材2のうちのヒータシース3と対向する部分には、
図6に示すように、ヒータシース3のうちの第1溝部5Aに収容された部分の外形に沿う形状のグレンフロー6が形成されている。パネル部材2及びプラグ部材4に形成されたグレンフロー6は、いずれもヒータシース3の外形に沿うよう曲線状をなすとともに鍛接方向に対して交差するよう延在している。
【0031】
上記のように、ヒータシース3の外形に沿った形状のグレンフロー6が形成される程にヒータシース3を強く押し付けた状態でパネル部材2とプラグ部材4とが鍛接接合されているので、ヒータシース3に対してパネル部材2とプラグ部材4とを高い密着度合いで密着させることができる。従って、ヒータシース3の熱を効率的にパネル部材2とプラグ部材4とに伝導させることができる。これにより、加熱されたヒータシース3の温度と、ヒータシース3からの伝熱によって加熱されたパネル部材2及びプラグ部材4の温度と、に生じ得る差が小さくなる。この温度差が小さくなることで、ヒータシース3の加熱温度を無駄に高くせずに済んで省エネ化を図ることができるとともに、ヒータシース3の熱膨張量と、パネル部材2及びプラグ部材4の各熱膨張量と、の差が低減されて、ヒータシース3が熱膨張時にパネル部材2とプラグ部材4とから受ける圧縮応力と引張応力とを低減できる。その結果、加熱サイクルにおけるヒータシース3の繰り返し応力を抑制することができ、ヒータシース3の疲労破壊が低減され、ヒータシース3の長寿命化を実現できる。
【0032】
鍛接接合されたパネル部材2のうちの第2溝部5Bの溝縁と、プラグ部材4のうちの側縁部と、には、
図7に示すように、第2のグレンフロー7が形成されている。
図7は、パネル部材2及びプラグ部材4の断面を撮影した写真である。また、
図7には、第2のグレンフロー7をなぞった破線を併記している。第2のグレンフロー7は、第2溝部5Bの側面5B1に対して交差するよう延在しており、第2溝部5Bの側面5B1を跨ぐようパネル部材2及びプラグ部材4の双方に設けられている。第2のグレンフロー7は、プラグ部材4側の方が低くなるのに対してパネル部材2側の方が高くなるよう傾くとともに曲線状をなしている。また、第2のグレンフロー7は、グレンフロー6と同様に、鍛接方向に対して交差するよう延在している。
【0033】
上記のように、第2溝部5Bの側面5B1を跨ぐよう配されるとともに第2溝部5Bの側面5B1に対して交差するよう延びる形状の第2のグレンフロー7が形成される程にパネル部材2とプラグ部材4とが鍛接接合されているので、プラグ部材4がパネル部材2に対して強固に保持される。これにより、ヒータシース3に対してパネル部材2とプラグ部材4とをより高い密着度合いで密着させることができる。
【0034】
また、パネル部材2は、第1溝部5Aの深さDが上記した式(2)を満たすよう構成されているので、ヒータシース3の外周面がパネル部材2及びプラグ部材4に対して非接触となる非接触面積の割合が30%未満となっている。仮にヒータシースの外周面がパネル部材2及びプラグ部材4に対して非接触となる非接触面積の割合が30%を超えると、ヒータシース3からパネル部材2及びプラグ部材4への伝熱性能が悪化することが懸念されるものの、そのような事態を避けることができる。これにより、ヒータシース3からパネル部材2及びプラグ部材4への伝熱性能を良好に保つことができる。
【0035】
本実施形態に係るヒータプレート1は以上のような構造であり、続いてヒータプレート1の製造方法を、構造に基づく作用及び効果と共に説明する。本実施形態に係るヒータプレート1の製造方法では、予めパネル部材2、ヒータシース3及びプラグ部材4をそれぞれ製造しておき、パネル部材2とプラグ部材4とを鍛接接合(鍛圧圧接)することにより、ヒータシース3を挟み込んで保持させる鍛接工程を行うようにしている。鍛接工程の前処理として、水、湯、または硝酸などを用いた洗浄処理、硝酸などを用いた表面の油取り処理などをパネル部材2やプラグ部材4に行うことも可能である。このような前処理を行うことで、パネル部材2とプラグ部材4との接合性が向上する。
【0036】
鍛接工程について
図8から
図10を用いて詳しく説明する。
図8は、ヒータシース3を第1溝部5A内に入れる前の状態を示す断面図である。
図9は、ヒータシース3を第1溝部5A内に入れた後にプラグ部材4を第2溝部5B内に入れる前の状態を示す断面図である。
図10は、プラグ部材4を第2溝部5B内に入れる途中の状態を示す断面図である。鍛接工程では、
図8に示すように、まずパネル部材2の第1溝部5A内にヒータシース3を入れる作業が行われる。ヒータシース3を第1溝部5Aに入れる際には、ヒータシース3が第2溝部5Bを通される。この第2溝部5Bの幅W2がヒータシース3の外径Rよりも大きいので、第2溝部5Bを通過するヒータシース3が第2溝部5Bの側面5B1に干渉する事態が生じ難く、ヒータシース3を第1溝部5Aに入れやすい。第1溝部5Aに入れられたヒータシース3は、
図9に示すように、一部(上端部)が第2溝部5B側に突き出した状態とされるとともに、中心Cが第2溝部5Bの底面5B2よりも低い配置となっている。
【0037】
続いて、鍛接工程では、
図9に示すように、パネル部材2の第2溝部5B内にプラグ部材4を入れてパネル部材2及びプラグ部材4を鍛接接合する作業が行われる。なお、第2溝部5B内に入れられる前のプラグ部材4の底面4Bは、第2溝部5Bの底面5B2に並行するほぼ平らな面となっている。プラグ部材4の幅Wが第2溝部5Bの幅W2よりもわずかに大きくされているので、プラグ部材4は、その側面4Aが第2溝部5Bの側面5B1に接した状態で第2溝部5B内の奥方へと押し込まれる。従って、プラグ部材4の側面4A及び第2溝部5Bの側面5B1は、鍛接接合に際して摩擦抵抗を生じさせるとともにプラグ部材4の変位を拘束し得る箇所である、と言える。プラグ部材4は、幅Wがヒータシース3の外径Rよりも大きいので、仮にプラグ部材の幅がヒータシース3の外径Rと同じとされる場合に比べると、プラグ部材4の強度が高い。従って、プラグ部材4を第2溝部5Bに入れて鍛接接合する際にプラグ部材4に座屈変形などの不用意な変形が生じ難くなっている。
【0038】
プラグ部材4が第2溝部5B内に押し込まれる途中の段階で、
図10に示すように、第1溝部5A内に収容されたヒータシース3のうちの第2溝部5B側に突き出した部分に対してプラグ部材4の底面4Bが接する。この状態からさらにプラグ部材4が奥方へと押し込まれると、プラグ部材4の底面4Bがヒータシース3によって塑性変形させられ、底面4Bにおける中央側部分がほぼ平らな形状からヒータシース3の外周面に沿う円弧形状となる(
図3を参照)。このとき、プラグ部材4は、底面4Bについては塑性変形する。第1溝部5Aに入ったヒータシース3の中心Cが第2溝部5Bの底面5B2よりも低い配置となっているので、プラグ部材4を鍛接接合する際に、ヒータシース3が第1溝部5Aから第2溝部5B側に浮き上がるよう位置ずれする事態が生じ難くなっている。
【0039】
ここで、第2溝部5Bは、第1溝部5Aよりも幅広であることから、第2溝部5Bの側面5B1と第1溝部5Aに入ったヒータシース3との間には、第2溝部5Bの底面5B2分の距離が空けられている。第2溝部5Bの側面5B1は、鍛接接合におけるプラグ部材4の側面4Aと第2溝部5Bの側面5B1との間に生じる摩擦抵抗によってプラグ部材4の変位が拘束されるものの、当該箇所からヒータシース3までの距離が底面5B2の存在によって十分に確保されることで、プラグ部材4の底面4Bのうちのヒータシース3と対向する部分がヒータシース3に到達し易くなっている。さらには、プラグ部材4の幅Wがヒータシース3の外径Rよりも大きいので、プラグ部材4の底面4Bが十分に広くなっており、それによりプラグ部材4の底面4Bのうちのヒータシース3と対向する部分がヒータシース3の外形に追従するように塑性変形し易くなっている。
【0040】
図3に示すように、プラグ部材4の底面4Bが第2溝部5Bの底面5B2に接する深さまでプラグ部材4が押し込まれると、鍛接工程が完了する。このようにして鍛接工程が行われ、パネル部材2及びプラグ部材4が間にヒータシース3を挟み込んだ状態で鍛接接合されると、パネル部材2及びプラグ部材4のうちのヒータシース3を取り囲む部分には、
図4から
図6に示すように、ヒータシース3の外形に沿う形状のグレンフロー6が形成される。詳しくは、プラグ部材4のうちのヒータシース3と対向する部分には、
図5に示すように、ヒータシース3のうちの第2溝部5B側に突き出した部分の外形に沿う形状のグレンフロー6が形成される。パネル部材2のうちのヒータシース3と対向する部分には、
図6に示すように、ヒータシース3のうちの第1溝部5Aに収容された部分の外形に沿う形状のグレンフロー6が形成される。
【0041】
ところで、鍛接工程を行う前の状態では、パネル部材2及びプラグ部材4の各周面には、アルミニウムが酸化した状態の酸化皮膜が存在している。一方、鍛接工程が行われると、プラグ部材4の側面4Aと第2溝部5Bの側面5B1とが互いに接した状態でプラグ部材4が奥方へ押し込まれるので、両側面4A,5B1同士が擦れ合うことでそれぞれの酸化皮膜が除去される。このとき、両側面4A,5B1において酸化していないアルミニウム同士の金属結合(金属固相接合)が生じるが、金属結合が生じた状態でさらにプラグ部材4が第2溝部5Bの奥方へ押し込まれると、両側面4A,5B1の間に塑性流動が生じ、それに伴って
図7に示される第2のグレンフロー7が形成される。
【0042】
このように、本実施形態に係るヒータプレート1の製造方法に備わる鍛接工程では、ヒータシース3をパネル部材2とプラグ部材4とにより挟み込んだ状態で、パネル部材2及びプラグ部材4のうちのヒータシース3を取り囲む部分に、ヒータシース3の外形に沿う形状のグレンフロー6が形成される程にパネル部材2とプラグ部材4とを鍛接接合することで、ヒータシース3に対してパネル部材2とプラグ部材4とを高い密着度合いで密着させることができる。しかも、鍛接工程では、第2溝部5Bの側面5B1を跨ぐよう配されるとともに第2溝部5Bの側面5B1に対して交差するよう延びる形状の第2のグレンフロー7が形成される程に金属結合の開始後においてもプラグ部材4を押し込むようにしている。これにより、プラグ部材4の底面4Bを強くヒータシース3に押し付けて塑性変形させることができ、ヒータシース3に対してパネル部材2とプラグ部材4とをより高い密着度合いで密着させることができる。従って、ヒータシース3の熱を効率的にパネル部材2とプラグ部材4とに伝導させることができる。これにより、加熱されたヒータシース3の温度と、ヒータシース3からの伝熱によって加熱されたパネル部材2及びプラグ部材4の温度と、に生じ得る差が小さくなる。この温度差が小さくなることで、ヒータシース3の加熱温度を無駄に高くせずに済んで省エネ化を図ることができるとともに、ヒータシース3の熱膨張量と、パネル部材2及びプラグ部材4の各熱膨張量と、の差が低減されて、ヒータシース3が熱膨張時にパネル部材2とプラグ部材4とから受ける圧縮応力を低減できる。その結果、加熱サイクルにおけるヒータシース3の繰り返し応力を抑制することができ、ヒータシース3の疲労破壊が低減され、ヒータシース3の長寿命化を実現できる。
【0043】
また、鍛接工程を行う際の鍛接温度は、250~500℃の温度範囲が好ましく、300~450℃の温度範囲がより好ましく、350~420℃がさらに好ましい。また、鍛接工程を行う装置の使用温度に合わせて鍛接温度を適宜に選択することが可能である。また、鍛接工程においては、プラグ部材4の体積を第2溝部5Bの体積にて除した比率や鍛接時の圧力などを徐々に大きくするなどし、グレンフロー6や第2のグレンフロー7を形成するための条件出しを行うことができる。また、鍛接工程を行った後には、切削、研磨、アルマイトおよびショットブラストなどの後処理を行うのが好ましい。
【0044】
また、鍛接工程が行われた後に自然冷却されて常温になると、パネル部材2とヒータシース3との収縮差により応力が生じるが、常温ではパネル部材2の耐力は大きいのでヒータプレート1が変形することはない。またヒータシース3のステンレス鋼の強度も高いので、ヒータシース3の変形や破損も起こることはない。400℃近辺で鍛圧されたヒータプレート1が使用温度領域である400℃近辺に加熱されるということは、鍛圧されたときの状態の戻ることになり、プラグ部材4とヒータシース3のシース材との間の応力は極めて小さくなり、ヒータプレート1の変形、ヒータシース3のシース材の変形や破損が生じる恐れが無くなる。
【0045】
また、パネル部材2及びプラグ部材4に用いる具体的なアルミニウム材料またはアルミニウム合金材料としては、JIS1050、1100、3003、3004、5005、5052、6063、6061、7003、7N01のいずれかを選択することができる。パネル部材2は、材質、製法については特定しないが、耐リーク性を考慮すると内部欠陥の少ない圧延板、鍛造品を素材とするのが望ましい。また、洗浄ガスに対する耐食性の観点からは、アルミ材質は純度99.5%以上のJIS1050が最も望ましい。ヒータプレート1の大型化に伴いクリープ変形防止の点では、1100、6061等より高強度の合金が使用されるようになりつつあるが、上記のいずれのアルミニウムまたはアルミニウム合金も用いることができる。その他、マグネシウム含有量が少ない5005、5052等のAl-Mg合金も圧接性を満足し、金属結合が確保できる組成範囲においては用いることができる。
【0046】
パネル部材2及びプラグ部材4が同一材料の場合には、鍛接接合時の変形により部材同士が圧接し物理的に金属結合し易い。またパネル部材2及びプラグ部材4が異種の材料であっても、鍛接圧縮時の変形により部材同士が圧接し物理的に金属結合するものであり、例えば、JIS1000系のアルミニウム材とJIS3000系のアルミニウム材の異なる材料同士であっても鍛接接合により物理的に金属結合する。
【0047】
以上説明したように本実施形態のヒータプレート1は、互いに鍛接接合しているアルミニウムまたはアルミニウム合金製のパネル部材(第1部材)2とプラグ部材(第2部材)4とによって、ヒータシース(温度調整シース)3が挟み込まれて保持されたヒータプレート1であって、パネル部材2には、プラグ部材4が入る第2溝部5Bと、第2溝部5Bの底面5B2においてヒータシース3が入る第1溝部5Aと、が設けられており、パネル部材2とプラグ部材4との少なくとも一方に、ヒータシース3の外形に沿った形状のグレンフロー6が形成されている。
【0048】
ヒータシース3をパネル部材2とプラグ部材4とにより挟み込んだ状態で、パネル部材2とプラグ部材4との少なくとも一方に、ヒータシース3の外形に沿った形状のグレンフロー6が形成される程にパネル部材2とプラグ部材4とを鍛接接合することで、ヒータシース3に対してパネル部材2とプラグ部材4とを高い密着度合いで密着させることができる。従って、ヒータシース3の熱を効率的にパネル部材2とプラグ部材4とに伝導させることができる。これにより、加熱されたヒータシース3の温度と、ヒータシース3からの伝熱によって加熱されたパネル部材2及びプラグ部材4の温度と、に生じ得る差が小さくなる。この温度差が小さくなることで、ヒータシース3の加熱温度を無駄に高くせずに済んで省エネ化を図ることができるとともに、ヒータシース3の熱膨張量と、パネル部材2及びプラグ部材4の各熱膨張量と、の差が低減されて、ヒータシース3が熱膨張時にパネル部材2とプラグ部材4とから受ける圧縮応力と引張応力とを低減できる。その結果、加熱サイクルにおけるヒータシース3の繰り返し応力を抑制することができ、ヒータシース3の疲労破壊が低減され、ヒータシース3の長寿命化を実現できる。
【0049】
また、パネル部材2及びプラグ部材4には、第2溝部5Bの側面5B1を跨ぐよう配されるとともに第2溝部5Bの側面5B1に対して交差するよう延びる形状の第2のグレンフロー7が形成されている。このようにすれば、第1溝部5Aにヒータシース3を入れた状態で第2溝部5Bにプラグ部材4を入れる際に、パネル部材2とプラグ部材4とが鍛接接合されると、ヒータシース3がパネル部材2とプラグ部材4とにより挟み込まれる。このとき、パネル部材2及びプラグ部材4に、第2溝部5Bの側面5B1を跨ぐよう配されるとともに第2溝部5Bの側面5B1に対して交差するよう延びる形状の第2のグレンフロー7が形成される程にパネル部材2とプラグ部材4とを鍛接接合することで、プラグ部材4がパネル部材2に対して強固に保持される。これにより、ヒータシース3に対してパネル部材2とプラグ部材4とをより高い密着度合いで密着させることができる。
【0050】
また、プラグ部材4は、幅Wがヒータシース3の外径Rよりも大きくされており、パネル部材2は、第2溝部5Bが第1溝部5Aよりも幅広になるよう構成される。このようにすれば、第1溝部5Aにヒータシース3を入れた状態で第2溝部5Bにプラグ部材4を入れる際に、パネル部材2とプラグ部材4とが鍛接接合されると、ヒータシース3がパネル部材2とプラグ部材4とにより挟み込まれる。プラグ部材4は、幅Wがヒータシース3の外径Rよりも大きいので、仮にプラグ部材の幅がヒータシース3の外径Rと同じとされる場合に比べると、プラグ部材4の強度が高い。従って、プラグ部材4を第2溝部5Bに入れて鍛接接合する際にプラグ部材4に座屈変形などの不用意な変形が生じ難くなる。また、ヒータシース3を第1溝部5Aに入れる際には、ヒータシース3が第2溝部5Bを通ることになるが、この第2溝部5Bが第1溝部5Aよりも幅広となっているので、ヒータシース3が第2溝部5Bの側面5B1に干渉する事態が生じ難く、ヒータシース3を第1溝部5Aに入れやすい。
【0051】
また、パネル部材2は、第1溝部5Aの深さDがヒータシース3の外径Rよりも小さい。このようにすれば、第1溝部5Aに入ったヒータシース3の一部が第2溝部5B側に突き出した状態となる。従って、プラグ部材4をその一部が第1溝部5A側に突き出すような形状としなくても、プラグ部材4をヒータシース3に対して密着させることができる。しかも、第2溝部5Bが第1溝部5Aよりも幅広なので、第2溝部5Bの周面には側面5B1に加えて底面5B2が含まれている。従って、鍛接接合に際してプラグ部材4の変位が拘束されるものの、第2溝部5Bの底面5B2分の距離が空けられることになるので、プラグ部材4の底面4Bのうちのヒータシース3と対向する部分がヒータシース3に到達し易くなっている。さらには、プラグ部材4の幅Wがヒータシース3の外径Rよりも大きいので、プラグ部材4の底面4Bが十分に広くなっており、それによりプラグ部材4の底面4Bのうちのヒータシース3と対向する部分がヒータシース3の外形に追従するように塑性変形し易くなっている。以上により、プラグ部材4をヒータシース3に対してより高い密着度合いでもって密着させることができる。
【0052】
また、パネル部材2は、第1溝部5Aの深さDがヒータシース3の外径Rの半分rよりも大きい。このようにすれば、第1溝部5Aに入ったヒータシース3の中心Cが第2溝部5Bの底面5B2よりも低い配置となるので、プラグ部材4を鍛接接合する際に、ヒータシース3が第1溝部5Aから第2溝部5B側に浮き上がるよう位置ずれする事態が生じ難くなる。
【0053】
また、パネル部材2は、第1溝部5Aの深さDが次の式(3)を満たすよう構成される。
【0054】
D≦r+r・sin54° (3)
【0055】
第1溝部5Aの深さDがヒータシース3の外径Rの半分rよりも大きいと、ヒータシース3の外周面の一部が、第1溝部5Aの周面の一部とは非接触となる可能性がある。ここで、仮にヒータシースの外周面がパネル部材2及びプラグ部材4に対して非接触となる非接触面積の割合が30%を超えると、ヒータシース3からパネル部材2及びプラグ部材4への伝熱性能が悪化することが懸念される。その点、パネル部材2は、第1溝部5Aの深さDが上記した式(3)を満たすよう構成されているので、ヒータシース3の外周面がパネル部材2及びプラグ部材4に対して非接触となる非接触面積の割合が30%未満となる。これにより、ヒータシース3からパネル部材2及びプラグ部材4への伝熱性能を良好に保つことができる。
【0056】
また、グレンフロー6は、少なくともプラグ部材4のうちのヒータシース3と対向する部分に形成されている。このようにすれば、ヒータシース3をパネル部材2とプラグ部材4とにより挟み込んだ状態で、プラグ部材4のうちのヒータシース3と対向する部分にグレンフロー6が形成される程にパネル部材2とプラグ部材4とを鍛接接合することで、ヒータシース3に対してパネル部材2とプラグ部材4とを高い密着度合いで密着させることができる。
【0057】
また、グレンフロー6は、少なくともパネル部材2のうちの第1溝部5Aの溝縁に形成されている。このようにすれば、ヒータシース3をパネル部材2とプラグ部材4とにより挟み込んだ状態で、パネル部材2のうちの第1溝部5Aの溝縁にグレンフロー6が形成される程にパネル部材2とプラグ部材4とを鍛接接合することで、ヒータシース3に対してパネル部材2とプラグ部材4とを高い密着度合いで密着させることができる。
【0058】
また、本実施形態に係るヒータプレート1の製造方法は、アルミニウムまたはアルミニウム合金製のパネル部材2とプラグ部材4とを鍛接接合することにより、ヒータシース3を挟み込んで保持させる鍛接工程を含むヒータプレート1の製造方法であって、パネル部材2には、プラグ部材4が入る第2溝部5Bと、第2溝部5Bの底面5B2においてヒータシース3が入る第1溝部5Aと、が設けられており、鍛接工程では、パネル部材2とプラグ部材4との少なくとも一方に、ヒータシース3の外形に沿った形状のグレンフロー6が形成されるように鍛接接合する。
【0059】
鍛接工程では、ヒータシース3をパネル部材2とプラグ部材4とにより挟み込んだ状態で、パネル部材2とプラグ部材4との少なくとも一方に、ヒータシース3の外形に沿った形状のグレンフロー6が形成される程にパネル部材2とプラグ部材4とを鍛接接合することで、ヒータシース3に対してパネル部材2とプラグ部材4とを高い密着度合いで密着させることができる。従って、ヒータシース3の熱を効率的にパネル部材2とプラグ部材4とに伝導させることができる。これにより、加熱されたヒータシース3の温度と、ヒータシース3からの伝熱によって加熱されたパネル部材2及びプラグ部材4の温度と、に生じ得る差が小さくなる。この温度差が小さくなることで、ヒータシース3の加熱温度を無駄に高くせずに済んで省エネ化を図ることができるとともに、ヒータシース3の熱膨張量と、パネル部材2及びプラグ部材4の各熱膨張量と、の差が低減されて、ヒータシース3が熱膨張時にパネル部材2とプラグ部材4とから受ける圧縮応力を低減できる。その結果、加熱サイクルにおけるヒータシース3の繰り返し応力を抑制することができ、ヒータシース3の疲労破壊が低減され、ヒータシース3の長寿命化を実現できる。
【0060】
<実施形態2>
実施形態2を
図12または
図13によって説明する。この実施形態2では、パネル部材12及びプラグ部材14の構成を変更したものを示す。なお、上記した実施形態1と同様の構造、作用及び効果について重複する説明は省略する。また、本実施形態の説明で登場する上記した実施形態1と同じ名称の構成要素には、同じ符号を用いるとともにその先頭に添え字「1」を付す。
【0061】
図12は、ヒータプレート11を構成するパネル部材12、ヒータシース13及びプラグ部材14の断面図である。本実施形態に係るプラグ部材14は、
図12に示すように、鍛接方向についての前端側(
図12の下端側)が鍛接方向についての後端側(
図12の上端側)よりも幅狭とされており、断面形状が逆台形状をなしている。これに伴い、パネル部材12は、第2溝部15Bの断面形状が逆台形状をなすよう構成されている。プラグ部材14の側面14A及び第2溝部15Bの側面15B1は、共に直線状をなすとともに鍛接方向に対して傾斜状(テーパ状)をなしている。プラグ部材14の側面14A及び第2溝部15Bの側面15B1は、鍛接方向についての前端側が幅方向(
図12の左右方向)についてヒータシース13に近くなり、鍛接方向についての後端側が幅方向についてヒータシース13から遠くなるような勾配とされる。また、プラグ部材14は、その幅の最小値(底面14Bの幅)W3がヒータシース13の外径Rよりも大きい。
【0062】
また、プラグ部材14の高さh1と幅の最小値W3との関係(比率)は、鍛接方向に対する側面14Aの傾斜角度(テーパ角度)を調整することにより、座屈抵抗を向上できることから特に制約を設けないでも良いが、ヒータプレート11の全体厚さとヒータシース13の外径Rとの関係や上記傾斜角度が0°に近い場合などの座屈抵抗を考慮すると1以上5以下が好ましく、さらに、鍛接接合時に第2溝部15Bの側面15B1から受ける抵抗を考慮すると、1以上3以下とするのが好ましい。 尚、1以下でも接合は可能であるが、鍛接接合される部分のヒータプレート11使用中の熱変形や接合部強度などを考慮すると1以上が好ましいため、ここでは下限値は1以上とした。
【0063】
図13は、鍛接工程においてプラグ部材14を第2溝部15Bに入れる途中の状態を示す断面図である。このような構成によれば、鍛接工程において、第1溝部15Aにヒータシース13を入れた状態で第2溝部15Bにプラグ部材14を入れる際に、
図13に示すように、パネル部材12の第2溝部15Bの側面15B1とプラグ部材14の側面14Aとが互いに鍛接接合されると、ヒータシース13がパネル部材12とプラグ部材14とにより挟み込まれる。鍛接接合に際しては、プラグ部材14の側面14Aと第2溝部15Bの側面15B1とが互いに接した状態でプラグ部材14が奥方へ押し込まれるので、両側面14A,15B1同士が擦れ合うことでそれぞれの酸化皮膜が除去される。ここで、パネル部材12の第2溝部15Bの側面15B1とプラグ部材14の側面14Aとが共に鍛接方向に対して傾斜することで、各側面14A,15B1に存在していた酸化皮膜が剥離され易くなっている。従って、両側面14A,15B1において酸化していないアルミニウム同士が強固に金属結合されるようになっている。また、パネル部材12及びプラグ部材14には、上記した実施形態1にて説明したような第2のグレンフローが形成される(
図7を参照)。
【0064】
以上説明したように本実施形態によれば、パネル部材12及びプラグ部材14は、互いに鍛接接合される第2溝部15Bの側面15B1とプラグ部材14の側面14Aとが共に鍛接方向に対して傾斜するよう構成される。このようにすれば、第1溝部15Aにヒータシース13を入れた状態で第2溝部15Bにプラグ部材14を入れる際に、パネル部材12の第2溝部15Bの側面15B1とプラグ部材14の側面14Aとが互いに鍛接接合されると、ヒータシース13がパネル部材12とプラグ部材14とにより挟み込まれる。鍛接接合に際しては、パネル部材12の第2溝部15Bの側面15B1とプラグ部材14の側面14Aとに存在していた酸化皮膜が剥離されることで、パネル部材12とプラグ部材14とが金属結合されるようになっている。ここで、パネル部材12の第2溝部15Bの側面15B1とプラグ部材14の側面14Aとが共に鍛接方向に対して傾斜することで、各側面14A,15B1に存在していた酸化皮膜が剥離され易くなっているので、パネル部材12とプラグ部材14とが強固に金属結合されるようになっている。
【0065】
<実施形態3>
実施形態3を
図14によって説明する。この実施形態3では、上記した実施形態2から溝部25に入れるヒータシース23の数を変更したものを示す。なお、上記した実施形態1と同様の構造、作用及び効果について重複する説明は省略する。また、本実施形態の説明で登場する上記した実施形態1と同じ名称の構成要素には、同じ符号を用いるとともにその先頭に添え字「2」を付す。
【0066】
図14は、ヒータプレート21を構成するパネル部材22、ヒータシース23及びプラグ部材24の断面である。本実施形態に係るパネル部材22の溝部25には、
図14に示すように、2つのヒータシース23が収容されるようになっている。詳しくは、パネル部材22の溝部25には、2つの第1溝部25Aが含まれており、これら2つの第1溝部25Aが第2溝部25Bの底面25B2に開口するよう設けられている。2つの第1溝部25Aは、幅方向(
図14の左右方向)について間隔を空けた位置に配されている。従って、第2溝部25Bの底面25B2は、2つの第1溝部25Aのそれぞれに対して幅方向について端側にあって各側面25B1に連なる2つの部分と、2つの第1溝部25Aの間に挟まれる部分と、の3つに分割されることになる。このように、第2溝部25Bの底面25B2に2つの第1溝部25Aが開口するよう構成されるのに伴い、プラグ部材24は、その幅の最小値W4が上記した実施形態2における幅の最小値W3よりも拡張されている。具体的には、プラグ部材24の幅の最小値W4は、ヒータシース23の外径Rの2倍よりも大きくなっており、プラグ部材24の底面24Bがより広くなっている。
【0067】
このような構成によれば、鍛接工程では、2つのヒータシース23が共通の第2溝部25Bを通して2つの第1溝部25Aに対してそれぞれ入れられる。第2溝部25Bにプラグ部材24を入れる際に、パネル部材22とプラグ部材24とを鍛接接合すると、2つの第1溝部25Aに入れられた2つのヒータシース23がパネル部材22とプラグ部材24とにより一括して挟み込まれる。しかも、プラグ部材24の底面24Bが上記した実施形態1よりも広くなっているので、プラグ部材24の底面24Bのうちのヒータシース23と対向する部分がヒータシース23の外形に追従するようにより塑性変形し易くなっている。これにより、プラグ部材24をヒータシース23に対してさらに高い密着度合いでもって密着させることができる。
【0068】
以上説明したように本実施形態によれば、パネル部材22は、第2溝部25Bの底面25B2に複数の第1溝部25Aが開口するよう構成される。このようにすれば、第2溝部25Bを通して複数の第1溝部25Aに対してそれぞれヒータシース23が入れられる。第2溝部25Bにプラグ部材24を入れる際に、パネル部材22とプラグ部材24とを鍛接接合すると、複数の第1溝部25Aの各ヒータシース23がパネル部材22とプラグ部材24とにより一括して挟み込まれる。しかも、第2溝部25Bの底面25B2に複数の第1溝部25Aが開口するよう構成されていれば、プラグ部材24の幅の最小値W4がヒータシース23の外径Rの2倍よりも大きいので、プラグ部材24の底面24Bがより広くなっている。従って、プラグ部材24の底面24Bのうちのヒータシース23と対向する部分がヒータシース23の外形に追従するようにより塑性変形し易くなる。これにより、プラグ部材24をヒータシース23に対してさらに高い密着度合いでもって密着させることができる。
【0069】
<他の実施形態>
本明細書が開示する技術は、上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような実施形態も技術的範囲に含まれる。
【0070】
(1)プラグ部材4,14,24は、複数の部材(分割プラグ部材)に分割されていても構わない。その場合には、複数の分割プラグ部材を同時に鍛接することも、あるいは順次鍛接していくことも可能である。複数の分割プラグ部材を順次鍛接する場合には、1度に鍛接する部位の範囲が減少することから、より小さなプレス機を用いても鍛接が可能である。
【0071】
(2)グレンフロー6は、パネル部材2,12,22及びプラグ部材4,14,24のうちのパネル部材2,12,22のみに設けられる場合もあれば、プラグ部材4,14,24のみに設けられる場合もある。グレンフロー6の具体的な形状や形成範囲は、各図面以外にもなり得る。
【0072】
(3)第2のグレンフロー7は、非形成とされる可能性もある。また、第2のグレンフロー7の具体的な形状や形成範囲は、各図面以外にもなり得る。
【0073】
(4)パネル部材2,12,22は、第1溝部5A,15A,25Aの深さDがヒータシース3,13,23の外径Rと同じであってもよく、またヒータシース3,13,23の外径Rよりも大きくてもよい。いずれの場合においても、プラグ部材4,14,24の底面4Bには、第1溝部5A,15A,25A側に突き出す突部を設けるようにすれば、当該突部をヒータシース3,13,23に対して圧接することが可能となる。
【0074】
(5)パネル部材2,12,22は、第1溝部5A,15A,25Aの深さDがヒータシース3,13,23の外径Rの半分rと同じであってもよく、またヒータシース3,13,23の外径Rの半分rよりも小さくてもよい。
【0075】
(6)プラグ部材4,14,24における幅Wと高さ(第2溝部5B,15B,25Bの深さ)との具体的な比率については、図示以外にも適宜に変更可能である。
【0076】
(7)第1溝部5A,15A,25Aの幅の最大値W1と、第2溝部5B,15B,25Bの幅W2と、の具体的な比率については、図示以外にも適宜に変更可能である。
【0077】
(8)各図面には、ヒータシース3,13,23の非接触部分3Aが図示されているが、鍛接接合に伴って塑性変形したプラグ部材4,14,24が第1溝部5A,15A,25A内にほぼ隙間無く充填される場合もあり、その場合はヒータシース3,13,23には非接触部分が生じなくなる可能性もある。また、第1溝部5A,15A,25Aにおけるプラグ部材4,14,24の充填状況によっては、ヒータシース3,13,23の非接触部分3Aが各図面とは異なる形で残存する可能性もある。
【0078】
(9)実施形態1,2に記載の構成において、第1溝部5A,15Aが第2溝部5B,15Bにおける幅方向についての中央位置から偏在していても構わない。
【0079】
(10)実施形態2,3に記載の構成において、プラグ部材14,24の側面14A及び第2溝部15B,25Bの側面15B1,25B1は、直線状でなくて曲線状であってもよい。また、プラグ部材14,24の側面14A及び第2溝部15B,25Bの側面15B1,25B1が鍛接方向に対してなす具体的な角度は、図示以外にも適宜に変更可能である。
【0080】
(11)実施形態3に記載の構成において、パネル部材22は、第2溝部25Bの底面25B2に3つ以上の第1溝部25Aが開口するよう構成されてもよい。その場合、パネル部材22の溝部25には、3つ以上のヒータシース23が収容される。
【0081】
(12)第1溝部5A,15A,25A内に複数のヒータシース3,13,23を鍛接方向に沿って並ぶ形で入れるようにしてもよい。
【0082】
(13)パネル部材2,12,22やプラグ部材4,14,24に用いる具体的な材料は、アルミニウムを含有している限りにおいて適宜に変更可能である。
【0083】
(14)プラグ部材4,14,24及びヒータシース3,13,23における具体的な平面形状は、図示以外にも適宜に変更可能である。
【0084】
(15)ヒータプレート1,11,21における具体的な平面形状は、図示以外にも円形や楕円形などに変更可能である。
【0085】
(16)伝熱(加熱)を行うための電熱線を有するヒータシース3,13,23に代えて、伝熱及び吸熱(冷却)を適宜に行って温度調整する温度調整シースを用いることも可能である。すなわち、温度調整シースを介して、第1部材と第2部材への伝熱が行われてもよいし、第1部材と第2部材から吸熱してもよい。温度調整シースは、伝熱を行うための電熱線等のヒータと、吸熱を行うための冷媒等の熱流体と、を内包してもよい。熱流体は、温度調整シース内を流動し、外部から吸熱するものである。高温の熱流体が流動する温度調整シースを介して第1部材と第2部材を加熱してもよい。このような温度調整シースを用いた場合であっても、ヒータシース3,13,23を用いた場合と同様の作用及び効果を得ることができる。
【符号の説明】
【0086】
1,11,21…ヒータプレート、2,12,22…パネル部材(第1部材)、3,13,23…ヒータシース(温度調整シース)、4,14,24…プラグ部材(第2部材)、4A,14A…側面、5A,15A,25A…第1溝部、5B,15B,25B…第2溝部、5B1,15B1,25B1…側面、5B2,25B2…底面、6…グレンフロー、7…第2のグレンフロー、D…深さ、R…外径、r…半分、W…幅