特開 2022-11417 パーキングブレーキ装置

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)

(12)【公報種別】公開特許公報(A)

(11)【公開番号】P2022011417

(43)【公開日】2022-01-17

(54)【発明の名称】パーキングブレーキ装置

(51)【国際特許分類】

   B60T 7/10 20060101AFI20220107BHJP

   G05G 1/04 20060101ALI20220107BHJP

【ＦＩ】

B60T7/10 Q

B60T7/10 L

G05G1/04 C

【審査請求】未請求

【請求項の数】2

【出願形態】ＯＬ

(21)【出願番号】P 2020112546

(22)【出願日】2020-06-30

(71)【出願人】

【識別番号】000003218

【氏名又は名称】株式会社豊田自動織機

(71)【出願人】

【識別番号】390023098

【氏名又は名称】大塚工機株式会社

(74)【代理人】

【識別番号】100104237

【弁理士】

【氏名又は名称】鈴木 秀昭

(72)【発明者】

【氏名】和田 研一

(72)【発明者】

【氏名】増田 覚

(72)【発明者】

【氏名】杉山 智哉

(72)【発明者】

【氏名】久保庭 光一

【テーマコード（参考）】

3D124

3J070

【Ｆターム（参考）】

3D124AA12

3D124BB02

3D124CC07

3D124DD03

3D124DD04

3J070AA03

3J070BA14

3J070BA24

3J070CB02

3J070CC04

3J070CC23

3J070DA04

(57)【要約】

【課題】操作力の低減に係るレシオの大きさと、出力の大きさに係るストロークの大きさとを、両立できるパーキングブレーキ装置を提供する。
【解決手段】ブレーキレバー３０の途中位置とケーブルＣの連結部材４４とを中継部材４３で連結してトグル機構を構成し、中継部材４３は、回動可能に連結された２つのリンク４３１，４３２から成り、フレーキレバー３０の操作によってブレーキが非制動状態から制動状態へとなる段階で、ブレーキの非制動状態からブレーキレバー３０の操作角度が所定角度になるまでは、２つのリンク４３１，４３２が一体となって回動し、所定角度を超えると２つのリンク４３１，４３２のうちブレーキレバー３０の途中位置側に連結されたリンク４３２のみが２つのリンク４３１，４３２同士の連結部分４３０Ａを中心に回動可能となる。
【選択図】図１

【特許請求の範囲】

【請求項1】

ベース部材に、ケーブルが連結される連結部材を摺動可能に支持させ、該連結部材が摺動する縦動方向の延長線上の位置を中心にして起倒可能にブレーキレバーを枢着し、該ブレーキレバーの途中位置と前記連結部材とを中継部材を介して連結してトグル機構を構成したパーキングブレーキ装置において、
前記中継部材は、互いに回動可能に連結された２つのリンクを備え、前記ブレーキレバーの操作によってブレーキが非制動状態から制動状態へとなる段階で、ブレーキの非制動状態から前記ブレーキレバーの操作角度が所定角度になるまでは、前記２つのリンクが一体となって回動し、前記所定角度を超えると、前記２つのリンクのうち前記ブレーキレバーの途中位置側に連結されたリンクのみが、前記２つのリンク同士の連結部分を中心に回動可能となることを特徴とするパーキングブレーキ装置。

【請求項2】

前記中継部材の２つのリンクは、一端が前記連結部材に回動可能に連結された第１の中継部材と、一端が前記第１の中継リンクの他端に回動可能に連結され、他端が前記ブレーキレバーの途中位置側に回動可能に連結された第２の中継リンクとから成ることを特徴とする請求項１に記載のパーキングブレーキ装置。

【発明の詳細な説明】

【技術分野】

【0001】

本発明は、パーキングブレーキ装置に関する。

【背景技術】

【0002】

従来のパーキングブレーキ装置としては、例えば、本出願人が既に提案した技術として、特許文献１に記載のものがある。特許文献１には、トグルリンク機構を採用したパーキングブレーキ装置に関する構成が開示されている。

【0003】

一般にトグルリンク機構の特徴としては、（１）高レシオを得ることができること、および（２）デッドポイントを利用したロック機構を採用できることがある。これらの特徴により、トグルリンク機構を用いるパーキングブレーキ装置では、一般の四輪車用のパーキングブレーキ装置が具備するラチェットやポールが不要となる。このため、ラチェットとポールとが噛合う部分等に施す焼入れなどの熱処理等が不要となり、構造が簡単になるとともに、加工性が向上する。

【先行技術文献】

【特許文献】

【0004】

【特許文献1】特許第３５４２７１８号公報

【発明の概要】

【発明が解決しようとする課題】

【0005】

しかしながら、前述した従来の技術では、高レシオを得ることができる反面、出力ストロークが少ないため、所定の出力を得ることができない場合があるという問題点があった。

【0006】

これは、出力剛性に関わる問題である。すなわち、出力はストロークによって定まるので、ストロークが小さいと、レシオがいくら大きくても出力は大きくならない。このため、所定の出力を得るためには、レシオは大きく、ストロークも大きいことが要求されるが、レシオが大きいとストロークは小さくなり、両立させることができなかった。

【0007】

本発明は、以上のような従来の技術が有する問題点に着目してなされたもので、操作力の低減に係るレシオの大きさと、出力の大きさに係るストロークの大きさとを、両立することができるパーキングブレーキ装置を提供することを目的とする。

【課題を解決するための手段】

【0008】

前述した目的を達成するための本発明の要旨とするところは、次の各項の発明に存する。
［１］ベース部材（２０）に、ケーブル（Ｃ）が連結される連結部材（４４）を摺動可能に支持させ、該連結部材（４４）が摺動する縦動方向の延長線上の位置を中心にして起倒可能にブレーキレバー（３０）を枢着し、該ブレーキレバー（３０）の途中位置と前記連結部材（４４）とを中継部材（４３）を介して連結してトグル機構を構成したパーキングブレーキ装置（１０）において、
前記中継部材（４３）は、互いに回動可能に連結された２つのリンク（４３１，４３２）を備え、前記ブレーキレバー（３０）の操作によってブレーキが非制動状態から制動状態へとなる段階で、ブレーキの非制動状態から前記ブレーキレバー（３０）の操作角度が所定角度になるまでは、前記２つのリンク（４３１，４３２）が一体となって回動し、前記所定角度を超えると、前記２つのリンク（４３１，４３２）のうち前記ブレーキレバー（３０）の途中位置側に連結されたリンク（４３２）のみが、前記２つのリンク（４３１，４３２）同士の連結部分（４３０Ａ）を中心に回動可能となることを特徴とするパーキングブレーキ装置（１０）。

【0009】

［２］ 前記中継部材（４３）の２つのリンク（４３１，４３２）は、一端（４３１ａ）が前記連結部材（４４）に回動可能に連結された第１の中継部材（４３１）と、一端（４３２ａ）が前記第１の中継部材（４３１）の他端（４３１ｂ）に回動可能に連結され、他端（４３２ｂ）が前記ブレーキレバー（３０）の途中位置側に回動可能に連結された第２の中継部材（４３２）とから成ることを特徴とする項［１］に記載のパーキングブレーキ装置（１０）。

【0010】

次に、前述した解決手段に基づく作用を説明する。
項［１］に記載のパーキングブレーキ装置（１０）によれば、ブレーキが非制動状態にあるときにブレーキレバー（３０）を操作していくと、ブレーキレバー（３０）の操作力が２つのリンク（４３１，４３２）から成る中継部材（４３）と、連結部材（４４）とに伝わる。連結部材（４４）は、連結部材（４４）に連結されたケーブル（Ｃ）を引くように動作する。これにより、ブレーキが制動する。

【0011】

中継部材（４３）の２つのリンク（４３１，４３２）は、互いに一体となって動作する。このとき中継部材（４３）の２つのリンク（４３１，４３２）は、具体的には例えばブレーキレバー（３０）に対して調整リンク部材（４２）との連結ピン（４３０Ｂ）を回転中心として回転する。さらにブレーキレバー（３０）を操作して操作角度が所定角度に至った後は、２つのリンク（４３１，４３２）のうちブレーキレバー（３０）の途中位置側に連結されたリンク（４３２）のみが、前記２つのリンク（４３１，４３２）同士の連結部分（４３０Ａ）を中心に回動する。

【0012】

これにより、ブレーキレバー（３０）の操作角度が所定角度に至るまでの操作におけるレバーレシオよりもレシオ変化が小さくなり、ストロークが大きくなる。

【0013】

したがって、操作角度が所定角度以降の操作において、従来のパーキングブレーキ装置と同じ操作力でも、より大きな出力が得ることができる。すなわち、同じ操作力でも、従来のパーキングブレーキ装置よりも、より大きなブレーキ制動力が得ることができる。

【0014】

項［２］に記載のパーキングブレーキ装置（１０）によれば、中継部材（４３）の２つのリンク（４３１，４３２）は、一端（４３１ａ）が連結部材（４４）に回動可能に連結された第１の中継部材（４３１）と、一端（４３２ａ）が第１の中継部材（４３１）の他端（４３１ｂ）と回動可能に連結され、他端（４３２ｂ）がブレーキレバー（３０）の途中位置側に回動可能に連結された第２の中継部材（４３２）とから成るので、構成が簡易であり、故障リスクやコストの大きな上昇を抑えることができる。

【発明の効果】

【0015】

本発明にかかるパーキングブレーキ装置によれば、ブレーキレバーの途中位置とケーブルが連結された連結部材とを２つのリンクから成る中継部材を介して連結し、ブレーキレバーの操作角度が所定角度以上になる状態では、ブレーキレバーの途中位置側に連結されたリンクのみが２つのリンク同士の連結部分を中心に回動することができるので、レシオ変化は小さいがストローク変化が大きく、出力が大きいものとすることができる。

【図面の簡単な説明】

【0016】

【図1】本発明の一実施の形態にかかるパーキングブレーキ装置を示す斜視図である。

【図2】ブレーキが非制動状態にあるときの図１のパーキングブレーキ装置を示す側面図である。

【図3】ブレーキレバーの操作過程におけるパーキングブレーキ装置を示す側面図である。

【図4】ブレーキレバーが最大操作角度にあるときのパーキングブレーキ装置を示す側面図である。

【図5】操作レバーの操作角度とレシオとの関係を示すグラフである。

【図6】操作レバーの操作角度と操作力及び出力との関係を示すグラフである。

【発明を実施するための形態】

【0017】

以下、図面に基づき、本発明の一実施の形態を説明する。
図１から図４は、本発明の一の実施の形態を示している。
図１は、本発明の一実施の形態にかかるパーキングブレーキ装置の斜視図である。図２は、ブレーキが非制動状態にあるときのパーキングブレーキ装置の側面図である。すなわち、パーキングブレーキ装置がイニシャル位置にあるときの状態を示している。

【0018】

図３は、図２のイニシャル状態からブレーキレバーを操作している過程であり、操作過程のパーキング装置を示す側面図である。図４は、ブレーキレバーが最大操作角度まで操作されたときのパーキング装置を示す側面図である。すなわち、ブレーキが最大の制動状態にあるときのパーキング装置である。

【0019】

図１に示すように、パーキングブレーキ装置１０は、ベース部材２０に、ケーブルＣが連結される連結部材４４を縦動方向に摺動可能に支持させ、連結部材４４の縦動方向の延長線の近傍の取付け部２２に起倒可能にブレーキレバー３０を枢着し、ブレーキレバー３０の途中位置と連結部材４４とを中継部材４３を介して連結してトグル機構を構成して備えるものである。

【0020】

中継部材４３は、後述するように、互いに回動可能に連結された２つのリンクである第１の中継部材４３１と第２の中継部材４３２とから成る分割リンク構造を有している。

【0021】

ブレーキレバー３０の先端側には、操作時に握持し易いようにハンドルＨが設けられている。ハンドルＨの端部には、ブレーキ制動時におけるブレーキレバー３０のロック状態を解除するための解除ボタン５１が設けられている。なお、解除ボタン５１には、不図示の解除ロッドが連結されている。

【0022】

ベース部材２０は、その固定部２０Ａがボルト等によって所定の場所に固定されている。ベース部材２０には、縦長のスライド孔２１が穿設されており、スライド孔２１には、連結部材４４を構成するスライドピン４４Ａが摺動可能に挿通されている。これにより、連結部材４４は、スライド孔２１に沿って縦動することができる。

【0023】

ベース部材２０には、さらにケーブルＣを構成するワイヤーＷをスライド孔２１の長手方向と同一方向からスライドピン４４Ａへ向けて真っ直ぐ導くためのケーブル取付け部４４Ｂが設けられている。固定部２０Ａとスライド孔２１との間には、ブレーキが非制動時にブレーキレバー３０の一部に当接して、ブレーキレバー３０を支持するためのストッパーＳが設けられている。ストッパーＳは、例えば、当接部分が硬質ゴムから作られている。

【0024】

パーキングブレーキ装置１０は、ケーブルＣの張力を調整する張力調整機構４０を備えている。張力調整機構４０は、中継部材４３の位置を変えることによりケーブルＣの張力を調整するものであり、ブレーキレバー３０と中継部材４３との間に介在して中継部材４３に連結された調整リンク部材４２と、該調整リンク部材４２を係止する拘束リンク部材３１と、調整リンク部材４２の位置を拘束するねじ部材４１とを備えている。

【0025】

拘束リンク部材３１は、ブレーキレバー３０の両側に一対を成すように設けられた湾曲した板状のリンクで、ブレーキレバー３０の中間部に基端部３１ａが連結ピン３２により枢着され、他端部３１ｂが第１トラニオンピンＴ１を挾持するように第１トラニオンピンＴ１の両端部に枢支されている。第１トラニオンピンＴ１はブレーキレバー３０の側端縁３３に当接する位置に配置されている。

【0026】

中継部材４３の２つのリンクのうち一つのリンクである第１の中継部材４３１は、一端４３１ａがスライドピン４４Ａによって連結部材４４に回動可能に連結されている。第１の中継部材４３１の他端４３１ｂは、中継部材４３のもう一つのリンクである第２の中継部材４３２の一端４３２ａと連結ピン４３０Ａによって回動可能に連結されている。

【0027】

したがって、第１の中継部材４３１と第２の中継部材４３２とは、互いに連結ピン４３０Ａを中心に回動可能である。また、第２の中継部材４３２の他端４３２ｂは、連結ピン４３０Ｂによって調整リンク部材４２に回動可能に連結されている。ここで調整リンク部材４２は、ブレーキレバー３０の両側で一対を成し、ブレーキレバー３０の途中位置である略中間に配置されている。

【0028】

第２の中継部材４３２は、横断面がコの字状に形成されている。このコの字状の内側の底面を、以下、コ字内底面４３２ｃと記す。このコ字内底面４３２ｃは、後述するようにブレーキレバー３０をブレーキの非制動状態から制動状態へと操作する過程において、操作角度が図３に示した所定の操作角度に達した時に、調整リンク部材４２のストッパー４２ａが当接するように設定されている。以下、この所定の操作角度を境界角度と記す。

【0029】

調整リンク部材４２は、図１～４に示したように、ブレーキレバー３０のハンドルＨに対して拘束リンク部材３１よりも後方に設けられている。この調整リンク部材４２はブレーキレバー３０の略中間の両側に添装されるプレートである。この調整リンク部材４２の一端側には、前記のように第２の中継部材４３２の他端４３２ｂが回動可能に連結されている。

【0030】

また、調整リンク部材４２の他端側は、ブレーキレバー３０の側端縁３３に摺接する第２トラニオンピンＴ２に連結されている。調整リンク部材４２の一端側は、ブレーキレバー３０に拘束リンク部材３１を取り付けている連結ピン３２と第１トラニオンピンＴ１との間に嵌挿されており、連結ピン３２に当接して支持されている。

【0031】

第２の中継部材４３２は、前記のように横断面がコの字状になっており、コ字内底面４３２ｃは、ブレーキレバー３０が境界角度以上に操作されている間は、調整リンク部材４２のストッパー４２ａが当接した状態にある。

【0032】

調整リンク部材４２の一端側が連結ピン３２と第１トラニオンピンＴ１との間に嵌挿された当接状態は、調整リンク部材４２との間隔が最も開いたときであっても維持されている。このように、調整リンク部材４２は、ケーブルＣが引かれる方向である出力軸線上から外れた位置で該出力軸線の延びる方向に沿って移動調節可能にブレーキレバー３０に配設されている。

【0033】

ねじ部材４１は、ボルト状のものであり、その先端部側は、第１トラニオンピンＴ１に挿通されている。ねじ部材４１の先端部には、ねじ部材４１が第１トラニオンピンＴ１から抜脱してしまうのを防止するために、挿通した第１トラニオンピンＴ１の貫通孔よりも大きい抜脱防止部４１Ａが設けられている。

【0034】

ねじ部材４１は、その途中から基端まで螺子が切られている。基端側は第２トラニオンピンＴ２を貫通しており、螺子を切った部分が第２トラニオンピンＴ２に螺嵌している。ねじ部材４１のうち、第１トラニオンピンＴ１と第２トラニオンピンＴ２の間の部分には、つるまきネジ１４１が巻装されている。

【0035】

ねじ部材４１の基端には、ねじ部材４１を回すための摘部４１Ｂが固設されている。摘部４１Ｂは第２トラニオンピンＴ２の螺子穴を抜けることがなく、摘まみ易い寸法および形状（本実施の形態では六角形ナット状）に形成されている。摘部４１Ｂには、マイナスドライバーで回せるようにマイナス溝４１Ｃが刻設されている。

【0036】

このようにして、ねじ部材４１は調整リンク部材４２側とブレーキレバー３０側との間に介装され、ねじ作用により第１トラニオンピンＴ１と第２トラニオンピンＴ２との間の距離を変えることによって調整リンク部材４２の位置を移動させて拘束するものである。

【0037】

調整リンク部材４２に回転可能に枢着された第２の中継部材４３２の一端部４３２aには、第１の中継部材４３１の他端４３１ｂが回動可能に連結されている。第１の中継部材４３１の一端４３１ａには、上記連結部材４４のスライドピン４４Ａがスライド孔２１を貫通した状態で枢支されている。

【0038】

スライドピン４４Ａにはベース部材２０を境に左右両側に、スライド孔２１を間にしてスライド孔２１の両側にそれぞれ中間部材４４Ｂが取り付けられており、各中間部材４４ＢにはケーブルＣ、ＣのワイヤーＷが１本ずつ連結されている。ケーブルＣの他端部側は制動装置（図示せず）に連結されている。

【0039】

次に、パーキングブレーキ装置１０の作用を説明する。
図２に示したように、パーキングブレーキ装置１０がイニシャル状態にあるときは、スライドピン４４Ａ、連結ピン４３０Ａ、及び連結ピン４３０Ｂが一直線上にあり、第１の中継部材４３１と第２の中継部材４３２とは全体として一直線状に一体となっている。このとき、調整リンク部材４２のストッパー４２ａは、第２の中継部材４３２のコ字内底面４３２ｃに当接していない。

【0040】

このイニシャル状態からブレーキを制動させるためにブレーキレバー３０を操作していくと、ブレーキレバー３０が境界角度にいたったときに図３に示した状態となる。このときは、スライドピン４４Ａがスライド孔２１の上方へ引き上げられており、ブレーキの制動力が発生している。このときスライドピン４４Ａ、連結ピン４３０Ａ、及び連結ピン４３０Ｂはまだ一直線上にあり、第１の中継部材４３１と第２の中継部材４３２とは全体として一直線状に一体となったままである。

【0041】

図３のこの状態は、調整リンク部材４２のストッパー４２ａが第２の中継部材４３２のコ字内底面４３２ｃに当接したときの状態である。この状態まではブレーキレバー３０による入力によって発生するケーブルＣからの張力により、第１の中継部材４３１と第２の中継部材４３２とは全体として一直線状に一体となったままである。したがって、一体となった中継部材４３は、連結ピン４３０Ｂを回転中心として調整リンク部材４２との相対運動が行われる。

【0042】

図４は、ブレーキレバー３０を操作してブレーキレバー３０が最大操作角度になったときのパーキングブレーキ装置１０を示している。このときブレーキの制動力は最大になっている。図３の状態からこの図４の状態までの第２の中継部材４３２と調整リンク部材４２とは、ケーブルＣからの張力によって調整リンク部材４２のストッパー４２ａが第２の中継部材４３２のコ字内底面４３２ｃに当接しているので一体となっている。

【0043】

このため、ブレーキレバー３０の操作による中継部材４３の動作は、第２の中継部材４３２と調整リンク部材４２とが第１の中継部材４３１と第２の中継部材４３２とを連結している連結ピン４３０Ａを回動中心として相対的に回動する。

【0044】

図５はブレーキレバー３０の操作角度とレシオの関係を示すグラフであり、図６はブレーキレバー３０の操作角度と操作力及び出力とを示すグラフである。
図５及び図６において、「領域１」と示した領域は、図２に示した状態から図３に示した状態に至る間の状態を示し、「領域２」と示した領域は、図３に示した状態から図４に示した状態に至る間の状態を示している。

【0045】

ここで、図３に示したように、取付部２２から操作ポイントＰまでの距離を「Ｌ」とする。また、図３及び図４における「ｍ」は、出力作用線である。したがって、図３におけるｂ１及び図４におけるｂ２は、それぞれブレーキレバー３０の取付け部２２から出力作用線ｍまでの距離を示している。したがって領域１におけるレバーレシオはＬ／ｂ１であり、領域２におけるレバーレシオはＬ／ｂ２となる。

【0046】

また、図３においてパーキングブレーキ装置１０の回転中心である取付け部２２から調整リンク部材４２と第２の中継部材４３２とを連結する連結ピン４３０Ｂまでの距離を表す線をｃとし、取付け部２２から第２の中継部材４３２と第１の中継部材４３１とを連結する連結ピン４３０Ａまでの距離を表す線をｄとする。さらにスライドピン４４Ａと取付け部２２との距離を表す線をｅとする。

【0047】

図３の状態においてはｅ線とｄ線との成す角度がｃ線とｄ線との成す角度よりも大きくなる。したがって、図３の状態を境にしてレシオ変化が小さくなり、ストローク変化は大きくなる。すなわち、出力が大きくなる。

【0048】

このような特性を有する本願発明に係るパーキングブレーキ装置１０では、図５に示したように領域２の操作においてもレシオは殆ど大きくならない。一方、従来技術のものにおいては境界角度４０°を過ぎて５０°近くから急激にレシオが大きくなってしまう。

【0049】

図６は操作角度に対する操作力及び出力の特性を示している。この例は、ブレーキレバー３０の境界角度が４０°のときに図３に示した状態となり５９°が最大操作角度であるように調整したときのものである。図６から分かるように従来例においては最大操作角度のときの出力は３８４２Ｎであるが、本願発明に係るパーキングブレーキ装置では、４２８３Ｎの出力を得ることができる。

【0050】

以上のように、本願発明に係るパーキングブレーキ装置１０によれば、高レシオが得られるとともに大きな出力を得ることができる。

【0051】

なお、本発明の実施の形態を図面によって説明してきたが、具体的な構成はこれらの実施の形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲における変更や追加があっても本発明に含まれる。例えば、ブレーキレバー３０の境界角度が４０°のときに図３に示した状態となり５９°が最大操作角度となるものを図示したが、それぞれの角度は他の値になるように設定しても良い。

【0052】

また、レシオの調整は、構成部品の寸法や図３に示した状態である境界角度で調整することができる。

【産業上の利用可能性】

【0053】

本願発明に係るパーキングブレーキ装置は、トグルリンクを備えたものに広く採用することができる。

【符号の説明】

【0054】

１０…パーキングブレーキ装置
２０…ベース部材
２０Ａ…固定部
２１…スライド孔
Ｃ…ケーブル
３０…ブレーキレバー
３１…拘束リンク部材
３１ａ…基端部
３１ｂ…他端部
３２…連結ピン
３３…側端縁
４０…張力調整機構
４１…ねじ部材
４１Ａ…抜脱防止部
４１Ｂ…摘部
４１Ｃ…マイナス溝
４２…調整リンク部材
４２ａ…ストッパー
４３…中継部材
４４…連結部材
４４Ａ…スライドピン
１４１…つるまきネジ
４３０Ａ…連結ピン
４３０Ｂ…連結ピン
４３１…第１の中継部材
４３１ａ…一端
４３１ｂ…他端
４３２…第２の中継部材
４３２ａ…一端
４３２ｂ…他端
４３２ｃ…コ字内底面
５１…解除ボタン
Ｈ…ハンドル
Ｗ…ワイヤー
Ｐ…操作ポイント
Ｓ…ストッパー
Ｔ１…第１トラニオンピン
Ｔ２…第２トラニオンピン

【図1】

【図2】

【図3】

【図4】

【図5】

【図6】