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特開2022-114184成形型用クリーニングブラシ、樹脂成形装置、樹脂成形品の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022114184
(43)【公開日】2022-08-05
(54)【発明の名称】成形型用クリーニングブラシ、樹脂成形装置、樹脂成形品の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B29C 33/72 20060101AFI20220729BHJP
   B29C 45/26 20060101ALI20220729BHJP
   H01L 21/56 20060101ALI20220729BHJP
   A46B 9/02 20060101ALI20220729BHJP
【FI】
B29C33/72
B29C45/26
H01L21/56 T
A46B9/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021010366
(22)【出願日】2021-01-26
(71)【出願人】
【識別番号】390002473
【氏名又は名称】TOWA株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】吉田 周平
(72)【発明者】
【氏名】安井 飛翔
【テーマコード(参考)】
3B202
4F202
5F061
【Fターム(参考)】
3B202AA00
3B202BA03
3B202BB10
3B202BC07
3B202EA01
3B202ED04
3B202ED05
3B202EF03
4F202AD19
4F202AH37
4F202AM12
4F202CA09
4F202CA12
4F202CB01
4F202CB17
4F202CS02
4F202CS04
5F061AA01
5F061CA21
5F061DA01
5F061DA11
5F061DC01
(57)【要約】
【課題】成形型に対して適切に清掃を行うことが可能な成形型用クリーニングブラシを得る。
【解決手段】樹脂成形装置に備えられる成形型を清掃する、成形型用クリーニングブラシは、基体31と、基体31に固定され基体31から遠ざかる方向に延びる柔毛束32と、基体31に固定され基体31から遠ざかる方向に延びる剛毛束33とを備え、柔毛束32を構成している複数本の毛材は、剛毛束33を構成している複数本の毛材よりも長く、かつ、剛毛束33を構成している複数本の毛材よりも柔らかい毛材料から形成されている。
【選択図】図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂成形装置に備えられる成形型を清掃する、成形型用クリーニングブラシであって、
基体と、
前記基体に固定され、前記基体から遠ざかる方向に延びる柔毛束と、
前記基体に固定され、前記基体から遠ざかる方向に延びる剛毛束と、を備え、
前記柔毛束を構成している複数本の毛材は、前記剛毛束を構成している複数本の毛材よりも長く、かつ、前記剛毛束を構成している複数本の毛材よりも柔らかい毛材料から形成されている、
成形型用クリーニングブラシ。
【請求項2】
前記基体は、軸方向に延びる円柱状の形状を有し、
前記基体の外周面上に、複数の前記柔毛束と複数の前記剛毛束とが固定されている、
請求項1に記載の成形型用クリーニングブラシ。
【請求項3】
複数の前記柔毛束は、前記基体の前記軸方向における一方側から他方側に向かって1つ以上の列構造をなして並んでおり、
複数の前記剛毛束は、前記基体の前記軸方向における一方側から他方側に向かって1つ以上の列構造をなして並んでいる、
請求項2に記載の成形型用クリーニングブラシ。
【請求項4】
前記基体の前記外周面上に、前記軸方向に対して平行な方向に延びる基準直線を定義したとすると、
複数の前記柔毛束によって構成されている列構造、および、複数の前記剛毛束によって構成されている列構造のうちの少なくとも一つの列構造は、前記基準直線に対して交差するように前記基体の前記外周面上に配置されている、
請求項3に記載の成形型用クリーニングブラシ。
【請求項5】
前記少なくとも一つの列構造は、
前記基体の前記軸方向における一方側から他方側に向かうにつれて前記基準直線に対して斜めに延びる第1傾斜部と、
前記第1傾斜部の他端側に設けられ、前記基体の前記軸方向における一方側から他方側に向かうにつれて前記基準直線に対して前記第1傾斜部とは反対向きの傾斜を有して斜めに延びる第2傾斜部と、を含む、
請求項4に記載の成形型用クリーニングブラシ。
【請求項6】
複数の前記剛毛束によって構成されている列構造の数は、複数の前記柔毛束によって構成されている列構造の数よりも多い、
請求項3から5のいずれか1項に記載の成形型用クリーニングブラシ。
【請求項7】
成形対象物を樹脂成形する樹脂成形装置であって、
成形型と、
前記成形型を型締めする型締め機構と、
前記成形型から樹脂を除去することによって清掃を行なう、請求項1から6のいずれか1項に記載の成形型用クリーニングブラシと、を備える、
樹脂成形装置。
【請求項8】
成形型を用いて成形対象物を樹脂成形する工程と、
請求項1から6のいずれか1項に記載の成形型用クリーニングブラシを使用して、前記成形型から樹脂を除去することによって清掃を行なう工程と、を備える、
樹脂成形品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書は、成形型用クリーニングブラシ、樹脂成形装置、および、樹脂成形品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
樹脂成形装置においては、IC(Integrated Circuit)、トランジスタ、コンデンサ等の電子素子が接続された基板が、成形対象物として準備される。トランスファモールド法、圧縮成形法(コンプレッションモールド法)および射出成形法(インジェクションモールド法)等を使用して樹脂成形を行なうことにより、基板上の電子素子が樹脂封止される。
【0003】
樹脂成形装置の成形型には、樹脂成形の実施に伴って発生した樹脂(樹脂片または樹脂カスともいう)等が残存し得る。特開2002-240046号公報(特許文献1)に開示されているように、成形型は、成形型用クリーニングブラシを利用して清掃される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002-240046号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
成形型用クリーニングブラシは、基体と、この基体の表面に固定された複数本の毛材とを備える。複数本の毛材はたとえば、基体が板形状を有している場合には基体の片側表面に固定され、基体が円柱形状を有している場合には基体の外周面に固定される。ここで、複数本の毛材が同一の長さおよび同一の硬さを有している場合には、成形型を適切に清掃することが難しくなる場合がある。
【0006】
たとえば柔らかい毛材を利用した場合、毛材は変形しやすいため、毛材は成形型の表面およびキャビティの内表面である側面や底面に到達することができる。しかしながら柔らかい毛材では、成形型に強く付着した樹脂を除去することができない場合があり得る。
【0007】
一方で硬い毛材を利用した場合には、たとえば、成形型のキャビティの内表面を清掃するためにブラシをキャビティに接近させようとした際に、硬い毛材がキャビティの内表面(特に底面)に到達する前に、硬い毛材が成形型における表面部分(キャビティが形成されていない頂面部分)に接触し、成形型のキャビティの底面などに毛材が到達しにくくなり、その結果、底面などに付着している樹脂を除去することが困難となり得る。
【0008】
本明細書は、従来技術に比べて成形型に対して適切に清掃を行うことが可能な構成を備えた成形型用クリーニングブラシ、樹脂成形装置、および樹脂成形品の製造方法を開示することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
樹脂成形装置に備えられる成形型を清掃する成形型用クリーニングブラシは、樹脂成形装置に備えられる成形型を清掃する、成形型用クリーニングブラシであって、基体と、上記基体に固定され、上記基体から遠ざかる方向に延びる柔毛束と、上記基体に固定され、上記基体から遠ざかる方向に延びる剛毛束と、を備え、上記柔毛束を構成している複数本の毛材は、上記剛毛束を構成している複数本の毛材よりも長く、かつ、上記剛毛束を構成している複数本の毛材よりも柔らかい毛材料から形成されている。
【0010】
成形対象物を樹脂成形する樹脂成形装置は、成形型と、上記成形型を型締めする型締め機構と、上記成形型から樹脂を除去することによって清掃を行なう、上記成形型用クリーニングブラシと、を備える。
【0011】
樹脂成形品の製造方法は、成形型を用いて成形対象物を樹脂成形する工程と、上記成形型用クリーニングブラシを使用して、上記成形型から樹脂を除去することによって清掃を行なう工程と、を備える。
【発明の効果】
【0012】
上記構成を備えた成形型用クリーニングブラシ、樹脂成形装置、および樹脂成形品の製造方法によれば、従来技術に比べて成形型に対して適切に清掃を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】実施の形態における樹脂成形装置の一例の機能ブロック図を示す。
図2】実施の形態における樹脂成形装置の内部の要部構造を模式的に示す平面図である。
図3図2に示すIII-III線に沿った矢視要部断面図である。
図4】実施の形態における樹脂成形装置に備えられる成形型用クリーニングブラシの外観構造を模式的に示す図である。
図5】実施の形態における樹脂成形装置に備えられる成形型用クリーニングブラシおよび下型の断面構造を模式的に示す図である。
図6】実施の形態における樹脂成形装置に備えられる成形型用クリーニングブラシを、基体の周方向に仮想的に展開した状態を示す図である。
図7】実施の形態における樹脂成形装置に備えられる成形型用クリーニングブラシの柔毛束が下型に接触している様子を示す断面図である。
図8図7に示すVIII-VIII線に沿った矢視断面図である。
図9図7に示すIX-IX線に沿った矢視断面図である。
図10】実施の形態における樹脂成形装置に備えられる成形型用クリーニングブラシの剛毛束が下型に接触している様子を示す断面図である。
図11図10に示すXI-XI線に沿った矢視断面図である。
図12】比較例における樹脂成形装置に備えられる成形型用クリーニングブラシが下型に接触している様子を示す断面図である。
図13】実施の形態の第1変形例における樹脂成形装置に備えられる成形型用クリーニングブラシを、基体の周方向に仮想的に展開した状態を示す図である。
図14】実施の形態の第2変形例における樹脂成形装置に備えられる成形型用クリーニングブラシを、基体の周方向に仮想的に展開した状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に、本開示の実施の形態について説明する。以下に説明する実施の形態において、個数、量などに言及する場合、特に記載がある場合を除き、本開示の範囲は必ずしもその個数、量などに限定されない。各々の構成要素は、特に記載がある場合を除き、本開示にとって必ずしも必須のものではない。同一の部品および相当部品には同一の参照番号を付し、重複する説明は繰り返さない場合がある。
【0015】
(樹脂成形装置100)
図1は、実施の形態における樹脂成形装置100の一例の機能ブロック図を示している。樹脂成形装置100は、制御部2、供給モジュール1、樹脂成形モジュール4、および成形品搬出モジュール5を備えている。制御部2は、供給モジュール1、樹脂成形モジュール4、および成形品搬出モジュール5を制御可能に構成されている。
【0016】
供給モジュール1は、成形前の成形対象物および樹脂材料を、樹脂成形モジュール4に供給可能なように構成される。樹脂成形モジュール4は、成形型を型締めして成形対象物を樹脂成形することによって、樹脂成形品を製造可能なように構成される。成形品搬出モジュール5は、成形後の成形対象物の不要樹脂部分を除去した後、樹脂成形品を搬出可能に構成される。供給モジュール1と、樹脂成形モジュール4と、成形品搬出モジュール5とは、互いに着脱可能であるとともに交換可能でもある。また、これらの個数についても増減可能である。
【0017】
図2は、樹脂成形装置100の内部の要部構造を模式的に示す平面図である。図3は、図2に示すIII-III線に沿った矢視要部断面図である。図2に主として示すように、樹脂成形装置100は、供給部10、成形型用クリーニングブラシ30、成形部40、搬出機構50、および排出部60を備える。
【0018】
図1図3を参照して、供給モジュール1は、主として供給部10を含んでいる。供給部10には、成形前の成形対象物が配置される。成形対象物は一般的には半導体チップ等の電子素子が接続された基板である。基板として、たとえばリードフレーム、プリント配線板、金属製基板、樹脂製基板、半導体基板、およびセラミック製基板が用いられる。
【0019】
樹脂成形装置100は不図示の搬送機構をさらに備えており、この搬送機構は、供給モジュール1と樹脂成形モジュール4との間を移動可能に構成されている。搬送機構の退避位置は、供給モジュール1にある。搬送機構により、基板が、樹脂材料とともに供給部10から成形部40に搬入される。樹脂材料としては、たとえば粉末状の熱硬化性樹脂を押し固めることで形成されたタブレット状樹脂が用いられる。
【0020】
樹脂成形モジュール4は、主として成形部40を含んでいる。成形部40は、成形型としての下型41および上型42(図3)と、成形型を型締めする不図示の型締め機構とを含んでいる。成形部40において、下型41および上型42が型締め機構によって型締めされることにより成形対象物が樹脂成形される。
【0021】
成形品搬出モジュール5は、主に排出部60を含んでいる。成形後の成形対象物は搬出機構50によって成形部40から排出部60に搬出され、排出部60においてディゲート処理が行なわれ、アウトマガジン部に最終的に格納される。
【0022】
搬出機構50は、樹脂成形モジュール4と成形品搬出モジュール5との間を移動可能に構成されている。搬出機構50は、成形型用クリーニングブラシ30を有している。ここでは、搬出機構50は、第1本体部51および第2本体部52を含む。第1本体部51の矢印A1方向の移動と、第2本体部52の矢印A2方向の移動とによって、成形後の成形対象物が排出される。第2本体部52が矢印A2方向に移動する際に、成形型の清掃が行なわれる。
【0023】
ここで、搬出機構50の第2本体部52における成形部40に近い側の部分に、成形型用クリーニングブラシ30が設けられている。概括すると、樹脂成形品の製造方法は、成形型としての下型41および上型42を用いて成形対象物を樹脂成形する工程と、成形型用クリーニングブラシ30を使用して、成形型から樹脂を除去することによって清掃を行なう工程とを備えている。
【0024】
樹脂成形装置100の成形型を清掃するために、樹脂成形装置100の搬出機構50に1つ以上の成形型用クリーニングブラシ30(以下に詳述する)が設けられる。図3に示すように2つが設けられる場合には、一方の成形型用クリーニングブラシ30は下型41から樹脂を除去し、他方の成形型用クリーニングブラシ30は上型42(図3)から樹脂を除去し、これらにより成形部40の成形型に対して清掃が行われる。
【0025】
(成形型用クリーニングブラシ30)
図4は、成形型用クリーニングブラシ30の外観構造を模式的に示す図である。成形型用クリーニングブラシ30は、回転駆動される基体31と、基体31に固定され基体31から遠ざかる方向に延びる柔毛束32と、基体31に固定され基体31から遠ざかる方向に延びる剛毛束33とを備えている。
【0026】
ここでは、基体31は、一方側の端部31aから他方側の端部31bに向かって軸方向31cに沿って延びる円柱状の形状を有している。基体31の外周面上に、複数の柔毛束32と複数の剛毛束33とが固定されている。成形型用クリーニングブラシ30はいわゆるロールブラシの形態を有する。柔毛束32は、根元部32sおよび先端部32tを含み、根元部32sの側が基体31に植え付けられている。同様に、剛毛束33は、根元部33sおよび先端部33tを含み、根元部33sの側が基体31に植え付けられている。
【0027】
図4に描かれている柔毛束32は、円柱状の形状を呈しているが、実際には柔毛束32は複数本の毛材から形成されており、複数本の毛材の根元側の部分が束ねられた状態で基体31に植え付けられており、柔毛束32の全体として略円柱状の形状を呈しているものである。実際には柔毛束32は、根元部32s側から先端部32tに向かうにつれて徐々に太くなるような略円錐台の形状を呈していることもあり得る。これらについては剛毛束33についても同様である。
【0028】
柔毛束32は、根元部32s側から先端部32t側に向かうにつれて、基体31の径方向に基体31の外周面から径方向外側に向かって延びている。剛毛束33も、根元部33s側から先端部33t側に向かうにつれて、基体31の径方向に基体31の外周面から径方向外側に向かって延びている。
【0029】
図5は、成形型用クリーニングブラシ30および下型41の断面構造を模式的に示す図である。図5に示すように、剛毛束33を構成している複数本の毛材は、基体31の外周面から長さL1を有して、基体31の径方向に沿って延びており、柔毛束32を構成している複数本の毛材は、基体31の外周面から長さL2を有して、基体31の径方向に沿って延びている(図8も参照)。
【0030】
基体31の中心軸から柔毛束32の先端までの距離は、たとえば20mm~30mmである。本実施の形態においては、柔毛束32を構成している複数本の毛材(長さL2)は、剛毛束33を構成している複数本の毛材(長さL1)よりも長く、かつ、剛毛束33を構成している複数本の毛材よりも柔らかい毛材料から形成されている。
【0031】
一例としては、柔毛束32を構成している複数本の毛材(長さL2)は、線径0.10mm~0.20mm程度のPPS(ポリフェニレンサルファイド)から形成され、剛毛束33を構成している複数本の毛材(長さL1)は、線径0.20mm~0.30mm程度のアラミド繊維(たとえば帝人社製のコーネックス(登録商標)や東レ社製のテトロン(登録商標))から形成される。
【0032】
長さL2と長さL1との差は、たとえば、下型41に形成されているキャビティの最大深さ、すなわち、下型41の表面41a(キャビティが形成されていない頂面部分)からキャビティの底面41bまでの深さ寸法L3と同一の値にすることができる。長さL2と長さL1との差は、深さ寸法L3より大きくてもよい。換言すると、(L3+L1)≦L2の関係が成立していてもよい。仕様にもよるが、深さ寸法L3は、1.0mm以下であったり、3.0mm以下であったりする。深さ寸法L3に合わせて長さL1,L2が最適化される。
【0033】
図6は、成形型用クリーニングブラシ30を、基体31の周方向に仮想的に展開した状態を示す図である。図6に示される長方形形状の全体が基体31の外周面に相当し、その左辺が端部31aに相当し、右辺が端部31bに相当する。上辺M1および下辺M2は、実際には周方向において連続しているものである。
【0034】
成形型用クリーニングブラシ30においては、複数の柔毛束32が、基体31の軸方向31cにおける一方側(端部31aの側)から他方側(端部31bの側)に向かって1つ以上の列構造32Nをなして並んでいる。同様に、複数の剛毛束33が、基体31の軸方向31cにおける一方側(端部31aの側)から他方側(端部31bの側)に向かって1つ以上の列構造33Nをなして並んでいる。基体31の外周面上に、軸方向31cに対して平行な方向に延びる基準直線LNを定義したとすると、列構造32Nは基準直線LNに対して平行に延びており、列構造33Nも基準直線LNに対して平行に延びている。
【0035】
成形型用クリーニングブラシ30においては、周方向に沿って(図6では下から上に向かって)、列構造32N、列構造33N、列構造32N、列構造33N、列構造32N、列構造33Nおよび列構造33Nが、この記載順に並んで設けられている。すなわち、基体31の外周面上には3つの列構造32Nと4つの列構造33Nとが設けられている。複数の剛毛束33によって構成されている列構造33Nの数(4つ)は、複数の柔毛束32によって構成されている列構造32Nの数(3つ)よりも多い。これにより、下型41の表面41aに強く付着した樹脂を適切に除去することができる。
【0036】
(作用および効果)
図7は、樹脂成形装置100に備えられる成形型用クリーニングブラシ30の柔毛束32が下型41に接触している様子を示す断面図である。図8は、図7に示すVIII-VIII線に沿った矢視断面図である。図9は、図7に示すIX-IX線に沿った矢視断面図である。
【0037】
図7図9に示すように、成形型用クリーニングブラシ30を用いて下型41の清掃を行う際には、柔毛束32の先端部32tが下型41の底面41bに到達するように、成形型用クリーニングブラシ30が下型41に接近する方向に移動させられる。
【0038】
一例として、基体31の外周面から底面41bまでの距離L5(図8)は、柔毛束32の長さL2と同じ値に設定でき、基体31の外周面から表面41aまでの距離L4は、剛毛束33の長さL1と同じ値に設定できる。
【0039】
柔毛束32は剛毛束33に比べて変形しやすいため、柔毛束32が表面41aに接触した際には柔毛束32は容易に変形する(図9参照)。基体31が下型41の近くの所定位置に向かって移動すること、および、基体31が下型41の近くの所定位置に配置されている状態は、柔毛束32の剛性によって制限されることはほとんどない。柔毛束32は、下型41の表面41aおよびキャビティの内表面である側面や底面41bに到達することができ、基体31が回転することに伴い柔毛束32は底面41bなどに付着した樹脂などを除去することができる。
【0040】
図10は、樹脂成形装置100に備えられる成形型用クリーニングブラシ30の剛毛束33が下型41に接触している様子を示す断面図である。図11は、図10に示すXI-XI線に沿った矢視断面図である。
【0041】
剛毛束33は柔毛束32に比べて変形しにくいため、柔毛束32による表面41aの清掃効果に比べて、剛毛束33は表面41aに対して高い清掃効果を発揮することができる。剛毛束33は、柔毛束32に比べて剛性が高く、表面41aに接触してもほとんど変形しない。しかしながら、剛毛束33が表面41aに接触することで、成形型用クリーニングブラシ30が下型41に接近する方向へ移動することが制限されるため、剛毛束33がキャビティの内表面である側面や底面41bにまで到達しにくくなる。そのため、剛毛束33が下型41のキャビティの底面41bを清掃することが困難になる。しかしながら本実施の形態においては上記のとおり、剛毛束33の毛材よりも長い毛材により形成された柔毛束32によって底面41bなどに付着した樹脂などを除去することができる。
【0042】
(比較例)
図12は、比較例における樹脂成形装置に備えられる成形型用クリーニングブラシ80が下型91に接触している様子を示す断面図である。成形型用クリーニングブラシ80は、円柱形状の基体81の外周面上に、複数本の毛材82を螺旋状に巻き付けることで構成されている。
【0043】
毛材82として硬い毛材を利用した場合には、下型91のキャビティの内表面を清掃するためにブラシをキャビティに接近させようとした際に、硬い毛材がキャビティの内表面(特に底面)に到達する前に、硬い毛材が下型91における表面91a(キャビティが形成されていない頂面部分)に接触し、ブラシの接近移動が硬い毛材の剛性によって制限され、下型91のキャビティの底面91bなどに毛材が到達しにくくなり、その結果、底面91bなどに付着している樹脂を除去することが困難となり得る。
【0044】
一方で毛材82として柔らかい毛材を利用した場合、毛材は変形しやすいため、毛材は下型91の表面91aおよびキャビティの内表面である側面や底面91bに到達することができる。しかしながら柔らかい毛材では、成形型に強く付着した樹脂を除去することができない場合があり得る。
【0045】
これに対して、上述の実施の形態における成形型用クリーニングブラシ30によれば、底面41bに付着ないし残存している樹脂は柔毛束32によって効果的に除去でき、表面41aに付着ないし残存している樹脂は剛毛束33および柔毛束32によって効果的に除去でき、ひいては、成形型用クリーニングブラシ30、および成形型用クリーニングブラシ30を用いる樹脂成形装置100ならびに樹脂成形品の製造方法によれば、従来技術に比べて下型41に対して適切に清掃を行うことができる。これは図3に示す上型42についても同様に適用できるものである。
【0046】
また、下型41上に位置し、かつ、軸方向31cに直交する或る平面上の1点に着目した場合には、螺旋形状を有するブラシは1回転当たりその1点に対するブラシの清掃回数は1回のみとなり得る。上述の実施の形態における成形型用クリーニングブラシ30によれば、柔毛束32と剛毛束33とが周方向において計7列設けられている。ブラシの1回転当たりのその1点に対するブラシの清掃回数を、螺旋形状の場合に比べて増加させることができ、より高い清掃効果を期待可能である。
【0047】
(実施の形態の第1変形例)
図13は、実施の形態の第1変形例における樹脂成形装置に備えられる成形型用クリーニングブラシを、基体31の周方向に仮想的に展開した状態を示す図である。図13は、実施の形態における上述の図6に対応している。
【0048】
図13に示すように、基体31の外周面上に、軸方向31c(図3図5参照)に対して平行な方向に延びる基準直線LNを定義したとする。複数の柔毛束32によって構成されている列構造32N、および、複数の剛毛束33によって構成されている列構造33Nのうちの少なくとも一つの列構造は、基準直線LNに対して交差するように、基体31の外周面上に配置されていてもよい。隣り合う剛毛束33,33の間隔D2,D3の最小値は、剛毛束33を基体31に植え付けるための加工装置によって規定されるが、列構造が基準直線LNに対して交差するという上記構成が採用されると、間隔D2,D3を、図6に示す間隔D1よりも小さくすることが可能となる。これにより、基体31に対する複数の柔毛束32および複数の剛毛束33の密度を高めることができ、成形型をより効果的に清掃することができる。
【0049】
図13に示す形態においてはさらに、列構造33Nが、第1傾斜部37aと、第2傾斜部37bとを含んでいる。第1傾斜部37aは、基体31の軸方向31c(図3図5参照)における一方側から他方側に向かうにつれて、基準直線LNに対して斜めに延びている。第2傾斜部37bは、第1傾斜部37aの他端側に設けられ、基体31の軸方向31c(図3図5参照)における一方側から他方側に向かうにつれて、基準直線LNに対して第1傾斜部37aとは反対向きの傾斜を有して斜めに延びている。概括すると、図13に示すような展開状態では列構造33NはV字形状を呈している。これは列構造32Nについても同様である。基体31がたとえば矢印A1方向に回転すると、V字形状の凹所部分が、回転方向における前方側に位置することとなる。このような構成が採用されると、列構造32N,33Nによって成形型から除去された樹脂が、軸方向における両外側に向かって移動するため、たとえば軸方向における両端側に吸引部36a,36bが配置されている場合に効率的に集塵でき有効である。
【0050】
(実施の形態の第2変形例)
図14は、実施の形態の第2変形例における樹脂成形装置に備えられる成形型用クリーニングブラシを、基体31の周方向に仮想的に展開した状態を示す図である。図14は、実施の形態における上述の図6に対応している。
【0051】
上述の実施の形態1(図6)およびその第1変形例(図13)においては、1つの列構造32Nの中に、複数の柔毛束32が、端部31a側から端部31b側に向かって1列に並んでいるという構成が採用されている。1つの列構造33Nについても同様である。
【0052】
図14に示すように、1つの列構造32Nの中に、複数の柔毛束32が、端部31a側から端部31b側に向かって2列に千鳥状に並んでいるという構成が採用されてもよい。1つの列構造33Nについても同様である。柔毛束32や剛毛束33を基体31に植え付けるための加工装置の性能などに応じて、柔毛束32や剛毛束33を基体31の外周面上でより高密度に配置するとよい。
【0053】
(実施の形態の他の変形例)
上述の構成においては、基体31が軸方向に延びる円柱状の形状を有しており、その外周面上に柔毛束32および剛毛束33が固定される。このような構成に限られず、板状の基体31を準備して、その片側表面のみに柔毛束32および剛毛束33を固定するという構成が採用されてもよい。そのようなブラシは回転ではなくたとえば揺動するように駆動される。当該構成であっても、下型41のキャビティの底面41bに付着ないし残存している樹脂は柔毛束32によって効果的に除去でき、下型41の表面41aに付着ないし残存している樹脂は剛毛束33および柔毛束32によって効果的に除去できる。
【0054】
以上、本開示の実施の形態について説明したが、今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本開示の範囲は特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0055】
1 供給モジュール、2 制御部、4 樹脂成形モジュール、5 成形品搬出モジュール、10 供給部、30,80 成形型用クリーニングブラシ、31,81 基体、31a,31b 端部、31c 軸方向、32 柔毛束、32N,33N 列構造、32s,33s 根元部、32t,33t 先端部、33 剛毛束、36a,36b 吸引部、37a 第1傾斜部、37b 第2傾斜部、40 成形部、41,91 下型、41a,91a 表面、41b,91b 底面、42 上型、50 搬出機構、51 第1本体部、52 第2本体部、60 排出部、82 毛材、100 樹脂成形装置、D1,D2,D3 間隔、L1,L2 長さ、L3 寸法、L4,L5 距離、LN 基準直線、M1 上辺、M2 下辺。
図1
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