(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022114206
(43)【公開日】2022-08-05
(54)【発明の名称】キャピラリカッタ
(51)【国際特許分類】
C03B 33/06 20060101AFI20220729BHJP
B28D 5/00 20060101ALI20220729BHJP
B26F 3/00 20060101ALI20220729BHJP
【FI】
C03B33/06
B28D5/00 Z
B26F3/00 A
【審査請求】有
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021010397
(22)【出願日】2021-01-26
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2021-09-08
(71)【出願人】
【識別番号】516019482
【氏名又は名称】株式会社飯塚製作所
(71)【出願人】
【識別番号】521038795
【氏名又は名称】有限会社リンクテクノス
(71)【出願人】
【識別番号】899000079
【氏名又は名称】慶應義塾
(74)【代理人】
【識別番号】110000800
【氏名又は名称】特許業務法人創成国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】本間 修
(72)【発明者】
【氏名】庄司 豊
(72)【発明者】
【氏名】平山 明由
【テーマコード(参考)】
3C060
3C069
4G015
【Fターム(参考)】
3C060AA08
3C060AB02
3C060CB03
3C060CB14
3C069AA03
3C069BA04
3C069BC04
3C069CA11
3C069EA02
4G015FA03
4G015FA04
4G015FB03
4G015FC02
4G015FC07
(57)【要約】
【課題】CE-MS用のキャピラリを正確に垂直に切断できるキャピラリカッタを提供する。
【解決手段】キャピラリカッタ1は、装置本体2に対して回転自在に支持される回転部3と、キャピラリ4の切断箇所CPの一方d1側を回転部3に固定し及び該固定を解除するために操作される固定操作部5と、ホイールカッタ6を保持するカッタ保持部7と、カッタ保持部の位置を調整するためのカッタ位置調整部8と、キャピラリ4の他方d2側をクランプして一方d1側と反対方向に牽引するための固定牽引部10とを備える。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
装置本体と、
前記装置本体に対して回転軸線を中心として回転自在に支持される回転部と、
キャピラリの切断箇所の一方側を、前記回転軸線を中心として回転し得るように該回転部に固定し及び該固定を解除するために操作される固定操作部と、
前記回転部に固定された前記キャピラリに対して近接・離間方向に変位し得るように前記装置本体により案内され、前記キャピラリの切断箇所に傷を付与するホイールカッタを保持するカッタ保持部と、
前記カッタ保持部の前記近接・離間方向の位置を調整するためのカッタ位置調整部とを備えることを特徴とするキャピラリカッタ。
【請求項2】
前記固定操作部は、
前記キャピラリが挿通される第1挿通孔と、
前記回転部に螺合される螺合部と、
前記螺合部と前記回転部との間に介在して前記キャピラリが通され、該螺合部の該回転部への螺合により、該螺合部と該回転部との間で押しつぶされて該キャピラリを該回転部に固定するOリングとを備えることを特徴とする請求項1に記載のキャピラリカッタ。
【請求項3】
前記装置本体により前記回転軸線の方向に移動し得るように案内されて前記キャピラリの前記切断箇所の他方側を前記一方側と反対方向に牽引するための固定牽引部であって、該他方側が通される第2挿通孔と、該第2挿通孔に通された該他方側をクランプする固定手段とを有する該固定牽引部とを備えることを特徴とする請求項1に記載のキャピラリカッタ。
【請求項4】
前記固定牽引部は、
前記装置本体に対し、前記切断箇所から離れる離間方向に向かって前記回転軸線の方向に向かうように傾斜し、該回転軸線について線対称又は回転対称となるように設けられた少なくとも2つの傾斜面と、
各傾斜面に対向する対向面をそれぞれ有し、前記離間方向に牽引されることにより、前記傾斜面によって前記回転軸線の方向に変位して、前記第2挿通孔に通されている前記他方側をクランプする少なくとも2つのクランプ部材と、
各クランプ部材を前記離間方向に牽引するための牽引部材とを備えることを特徴とする請求項3に記載のキャピラリカッタ。
【請求項5】
前記装置本体には、
前記キャピラリを、前記切断箇所の両側の離れた部分において上方に向けてそれぞれ支持する支持面を有する支持調整部材と、
各支持調整部材の前記支持面にそれぞれ対向し、該支持面との間で前記キャピラリの対応部分を押さえる押え面とが設けられ、
前記支持調整部材及び前記押え面は、協働して前記キャピラリを、前記切断箇所を頂点とし、下方に曲率中心が位置する湾曲を呈して弾性変形するように案内するものであることを特徴とする請求項1に記載のキャピラリカッタ。
【請求項6】
前記カッタ保持部は、ほぼ水平方向に延在する部材で構成され、該部材の延在方向における一方の端部の下端部において前記ホイールカッタを保持し、該部材の他方の端部は、前記装置本体により回動軸を介して回動自在に支持されるものであり、
前記カッタ位置調整部は、前記カッタ保持部の下面における前記ホイールカッタと前記回動軸との間の部分をカムフォロアとし、該カッタ保持部の延在方向に交差する方向に延びて前記装置本体により回転自在に設けられたカムシャフトに固定されたカム部材をカム本体とするカム機構を備え、
前記回転部には、その前記回転軸線を中心として一体的に回転される小ギアが固定され、
前記カムシャフトには、前記小ギアと噛み合い、歯数が該小ギアよりも多い大ギアが固定されることを特徴とする請求項1又は5に記載のキャピラリカッタ。
【請求項7】
前記カム部材は、1回転毎に、前記ホイールカッタを前記カッタ保持部の自重に抗して上方位置と下方位置との間で移動させるような形状を有することを特徴とする請求項6に記載のキャピラリカッタ。
【請求項8】
前記大ギアの歯数は、前記小ギアの歯数の2倍であることを特徴とする請求項6又は7に記載のキャピラリカッタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、CE-MS(キャピラリ電気泳動質量分析)等に用いられるキャピラリを切断するのに適したキャピラリカッタに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ガラス管を切断する方法として、ガラス管の外周面の切断所望箇所にカッタによりケガキ傷を形成し、ケガキ傷と対向するガラス管の内周面を加圧してガラス管を切断する方法が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1の方法では、ケガキ傷の形成は、ガラス旋盤のチャックに取り付けられた断面形状が正円筒形状のガラス管をガラス旋盤により回転させながら、ガラス管の外周面の切断所望箇所にカッタを所定の圧力で押しつけることにより行われる。ガラス管の内周面の加圧は、ガラス管の内周面と当接してガラス管の内周面を押圧する可動部を有する加圧治具を用い、加圧治具の可動部がガラス管の内周面を押圧することにより行われる。
【0004】
また、搬送手段によって一定速度で搬送されるガラス管を、搬送手段に沿って設けた切断傷形成手段によりガラス管の外壁面の所定位置に切断傷を付けて所定長さに切断するガラス管の切断装置が知られている(例えば、特許文献2参照)。
【0005】
特許文献2の装置では、切断傷が付けられたガラス管が、管軸を中心に回転しながら切断手段に搬送され、切断手段で押圧ローラと、2つの支点ローラにより、上方側から押圧され下方向に撓むように変形させられながら走行する。そして、ガラス管が半回転して切断傷が押圧ローラの略下方に位置し、押圧ローラが切断傷の反対側となる管外壁面を押圧する状態になると、切断傷が管全周に伸長し、ガラス管が切断される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第4951494号公報
【特許文献2】特許第4829207号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1の方法によれば、ガラス管の内周面を加圧治具で押圧する必要があるので、直径が0.36mm程度のCE-MS用のキャピラリの切断に適用することはできない。
【0008】
また、特許文献2の装置によれば、ガラス管の切断傷を付けた部分の反対側となる管外壁面を押圧ローラが押圧する状態になったときに切断傷が管全周に伸長してガラス管が切断されるので、切断面がガラス管の長さ方向に正確に垂直とならないおそれがある。切断面が正確に垂直でない場合、CE-MS(キャピラリ電気泳動質量分析)などに用いる場合に不都合を生じるおそれがある。
【0009】
本発明の目的は、かかる従来技術の課題に鑑み、CE-MS用のキャピラリを正確に垂直に切断できるキャピラリカッタを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明のキャピラリカッタは、
装置本体と、
前記装置本体に対して回転軸線を中心として回転自在に支持される回転部と、
前記回転軸線を中心軸線として延在するようにキャピラリの切断箇所の一方側を該回転部に固定し及び該固定を解除するために操作される固定操作部と、
前記装置本体により前記回転軸線に対して径方向に変位し得るように案内され、該径方向内側の先端部において前記キャピラリの切断箇所に傷を付与するホイールカッタを保持するカッタ保持部と、
前記カッタ保持部の前記径方向の位置を調整するためのカッタ位置調整部と、
前記装置本体により前記回転軸線の方向に移動し得るように案内されて前記キャピラリの前記切断箇所の他方側を前記一方側と反対方向に牽引するための固定牽引部であって、該他方側が通される第2挿通孔と、該第2挿通孔に通された該他方側をクランプする固定手段とを有する該固定牽引部とを備えることを特徴とする。
【0011】
本発明によれば、キャピラリの切断箇所の他方側を固定牽引部の第2挿通孔に通し、切断箇所の一方側を回転操作部により回転部に固定し、カッタ位置調整部によりカッタ保持部の位置をキャピラリに対する適切な位置に調整し、回転部を回転させることにより、キャピラリの切断箇所の外周に真円軌道に沿った傷を付与することができる。
【0012】
この後、固定手段によりキャピラリの切断箇所の他方側を固定し、固定牽引部を前記切断箇所から離れる方向に引っ張ることによって、上記傷の部分においてキャピラリを分離し、切断することができる。したがって、キャピラリを上記真円軌道に沿って垂直に切断することができる。
【0013】
本発明において、
前記固定操作部は、
前記キャピラリが挿通される第1挿通孔と、
前記回転部に螺合される螺合部と、
前記螺合部と前記回転部との間に介在して前記キャピラリが通され、該螺合部の該回転部への螺合により、該螺合部と該回転部との間で押しつぶされて該キャピラリを該回転部に固定するOリングとを備えてもよい。
【0014】
これによれば、第1挿通孔及びOリングに通されたキャピラリを、固定操作部を回転させるだけで、確実に回転部に固定することができる。
【0015】
また、本発明において、
前記固定牽引部は、
前記装置本体に対し、前記切断箇所から離れる離間方向に向かって前記回転軸線の方向に向かうように傾斜し、該回転軸線について線対称又は回転対称となるように設けられた少なくとも2つの傾斜面と、
各傾斜面に対向する対向面をそれぞれ有し、前記離間方向に牽引されることにより、前記傾斜面によって前記回転軸線の方向に変位して、前記第2挿通孔に通されている前記他方側をクランプする少なくとも2つのクランプ部材と、
各クランプ部材を前記離間方向に牽引するための牽引部材とを備えてもよい。
【0016】
これによれば、上記のように切断箇所に傷を付与した後、牽引部材を引くだけで、クランプ部材がキャピラリをクランプし、切断箇所から離れる方向にキャピラリの他方側を牽引するので、キャピラリを切断箇所において容易に切断することができる。
【0017】
本発明において、
前記装置本体には、
前記キャピラリを、前記切断箇所の両側の離れた部分において上方に向けてそれぞれ支持する支持面を有する支持調整部材と、
各支持調整部材の前記支持面にそれぞれ対向し、該支持面との間で前記キャピラリの対応部分を押さえる押え面とが設けられ、
前記支持調整部材及び前記押え面は、協働して前記キャピラリを、前記切断箇所を頂点とし、下方に曲率中心が位置する湾曲を呈して弾性変形するように案内するものであってもよい。
【0018】
これによれば、キャピラリの切断箇所における表面は、押え面により位置が規制されているので、切断箇所における外径やコーティングの厚さのばらつきの影響を受けることなく、常に同じ高さ位置において、切断箇所に対してホイールカッタを接触させることができる。
【0019】
また、キャピラリは、切断箇所を頂点として湾曲した状態で切断箇所に傷が付与されるので、頂点の外側に引っ張り応力が働き、切断を容易化することができる。また、上述の固定牽引部が不要となるので、キャピラリカッタを簡便かつコンパクトに構成することができる。
【0020】
この場合、前記カッタ保持部は、ほぼ水平方向に延在する部材で構成され、該部材の延在方向における一方の端部の下端部において前記ホイールカッタを保持し、該部材の他方の端部は、前記装置本体により回動軸を介して回動自在に支持されるものであり、
前記カッタ位置調整部は、前記カッタ保持部の下面における前記ホイールカッタと前記回動軸との間の部分をカムフォロアとし、該カッタ保持部の延在方向に交差又は直交する方向に延びて前記装置本体により回転自在に設けられたカムシャフトに固定されたカム部材をカム本体とするカム機構を備え、
前記回転部には、その前記回転軸線を中心として一体的に回転される小ギアが固定され、
前記カムシャフトには、前記小ギアと噛み合い、歯数が該小ギアよりも多い大ギアが固定されてもよい。
【0021】
これによれば、大ギアを回転させることにより、カム機構によりホイールカッタの位置を調整しながら、小ギアによりキャピラリを回転させてキャピラリを切断することができる。
【0022】
この場合、前記カム部材は、1回転毎に、前記ホイールカッタを前記カッタ保持部の自重に抗して上方位置と下方位置との間で移動させるような形状を有してもよい。これによれば、小ギアの歯数を適切に選択することにより、カム部材を1回転するだけで、キャピラリを切断することができる。
【0023】
この場合、大ギアの歯数は、小ギアの歯数の2倍であってもよい。これによれば、カム部材を1回転させるだけで、キャピラリの切断箇所に1周分の傷を付与してキャピラリを切断することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】本発明の一実施形態に係るキャピラリカッタを示す斜視図である。
【
図2】
図1のキャピラリカッタの要部を示す正面図である。
【
図3】本発明の別の実施形態に係るキャピラリカッタを示す斜視図である。
【
図5】
図3のキャピラリカッタにおいてキャピラリを切断するときのホイールカッタ、キャピラリ、及びカムシャフト上のカム部材の位置関係を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、図面を用いて本発明の実施形態を説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係るキャピラリカッタの全体を示す。
図1に示すように、このキャピラリカッタ1は、装置本体2と、装置本体2に対して回転軸線Aを中心として回転自在に支持される回転部3と、回転軸線Aを中心軸線として延在するようにキャピラリ4の切断箇所CP(
図2参照)の一方d1側を回転部3に固定し及び該固定を解除するために操作される固定操作部5とを備える。
【0026】
装置本体2は、装置本体2により回転軸線Aに対して径方向(上下方向)に変位し得るように案内され、径方向内側(下側)の先端部においてキャピラリ4の切断箇所CPに傷を付与するホイールカッタ6(
図2参照)を保持するカッタ保持部7と、カッタ保持部7の径方向(上下方向)の位置を調整するためのカッタ位置調整部8とを備える。装置本体2におけるカッタ保持部7の下側には、キャピラリ4の切断箇所CPの下側を支持する支持部9が設けられる。
【0027】
装置本体2には、装置本体2により回転軸線Aの方向に移動し得るように案内されてキャピラリ4の切断箇所CPの他方d2側を一方d1側と反対方向に牽引するための固定牽引部10が設けられる。
【0028】
図2は、キャピラリカッタ1の要部を示す。
図2に示すように、固定牽引部10は、キャピラリ4の切断箇所CPの他方d2側が通される第2挿通孔11と、第2挿通孔11に通された他方d2側をクランプする固定手段12とを備える。
【0029】
固定操作部5は、キャピラリ4を挿通するための回転軸線Aを中心とする第1挿通孔13を有する。固定操作部5には、回転部3に螺合される螺合部14と、螺合部14と回転部3との間に介在してキャピラリ4が通され、螺合部14の回転部3への螺合により、螺合部14と回転部3との間で押しつぶされてキャピラリ4を回転部に固定するOリング15が設けられる。
【0030】
回転部3のOリング15よりも装置本体2側から装置本体2の支持部9に至る部分に、キャピラリ4が挿通されて支持される支持孔16が設けられる。
【0031】
固定牽引部10は、装置本体2に対し、回転軸線Aについて線対称又は回転対称となるように設けられた少なくとも2つの傾斜面17を備える。傾斜面17は、切断箇所CPから離れる離間方向に向かって回転軸線Aの方向に向かうように傾斜している。
【0032】
また、固定牽引部10は、キャピラリ4の他方d2側をクランプする少なくとも2つのクランプ部材18と、各クランプ部材18を前記離間方向に牽引するための牽引部材19とを備える。各クランプ部材18は、各傾斜面17に対向する対向面20を有する。
【0033】
すなわち、各クランプ部材18は、牽引部材19により前記離間方向に牽引された場合、傾斜面17によって回転軸線A方向に変位し、第2挿通孔11に通されているキャピラリ4の他方d2側をクランプする機能を有する。
【0034】
この構成において、キャピラリカッタ1によりキャピラリ4を切断するには、まず、キャピラリ4の切断箇所CPに傷を付与する。すなわち、固定操作部5の第1挿通孔13、Oリング15、回転部3及び装置本体2の支持孔16、装置本体の支持部9、並びに固定牽引部10の第1挿通孔13を通るように、キャピラリ4をキャピラリカッタ1に装着する。
【0035】
次に、固定操作部5を回して回転部3に螺合部14を螺合させ、Oリング15を押しつぶすことにより、キャピラリ4の切断箇所CPの一方d1側を回転部3に固定する。そして、カッタ位置調整部8によりカッタ保持部7の位置をキャピラリ4に対する適切な位置に調整し、回転部3を回転させることにより、キャピラリ4の切断箇所CPの外周に真円軌道に沿った傷を付与する。
【0036】
次に、固定牽引部10を切断箇所CPから離れる離間方向に引っ張る。これにより、固定牽引部10がある程度該離間方向に移動する間に、固定手段12のクランプ部材18が傾斜面17に従って回転軸線Aの方向に変位し、キャピラリ4の切断箇所CPの他方d2側をクランプする。さらに固定牽引部10が移動すると、切断箇所CPにおいてキャピラリ4が分離し、切断される。
【0037】
この後、固定牽引部10を切断箇所CPの方に戻すことによりクランプ部材18を径方向に変位させてクランプを解除し、キャピラリ4の他方d2側を第2挿通孔11から生き抜くことにより、切断されたキャピラリ4の他方d2側を得ることができる。また、固定操作部5を回して、Oリング15による回転部3に対する固定を解除し、キャピラリ4の一方d1側を支持孔16、Oリング15及び第1挿通孔13から引き抜くことにより、切断されたキャピラリ4の一方d1側を取得することができる。
【0038】
以上のように、本実施形態によれば、キャピラリ4を回転部3にOリング15で固定し、回転部3を回転することにより、キャピラリ4の切断箇所CPの外周に真円軌道に沿った傷が付与されるので、キャピラリ4を該真円軌道に沿って垂直に切断することができる。
【0039】
また、固定牽引部10を引っ張るだけで、キャピラリ4の他方d2側をクランプし、かつキャピラリ4を切断箇所CPで分離させることができるので、容易にキャピラリ4の切断を行うことができる。
【0040】
図3は、本発明の別の実施形態に係るキャピラリカッタを示す。
図3に示すように、このキャピラリカッタ1bは、装置本体2bと、装置本体2bに対して回転軸線Aを中心として回転自在に支持される回転部3bと、キャピラリ4の切断箇所CPの一方d1側(
図4参照)の切断箇所CPから離れた部分を、回転軸線Aを中心として回転し得るように回転部3bに固定し及び該固定を解除するために操作される固定操作部5bとを備える。
【0041】
固定操作部5bによるキャピラリ4の固定及び該固定の解除は、上述の
図2の固定操作部5の場合と同様に、固定操作部5bと回転部3bとの間の配置されるOリングを介して行われる。
【0042】
装置本体2bには、回転部3bに固定されたキャピラリ4に対して近接・離間方向に変位し得るように装置本体2bにより案内され、キャピラリ4の切断箇所CPに傷を付与するホイールカッタ6を保持するカッタ保持部7bと、カッタ保持部7bの前記近接・離間方向の位置を調整するためのカッタ位置調整部8bが設けられる。
【0043】
図4は、キャピラリカッタ1bにキャピラリ4を装着した様子を示す。
図4に示すように、装置本体2bには、キャピラリ4を、その切断箇所CPの部分の両側においてそれぞれ支持する支持調整部材21が設けられる。この2つの支持調整部材21は、キャピラリ4を切断箇所CPから両側にやや離れた位置において上方に向けて支持する支持面22を有する。
【0044】
また、装置本体2bには、各支持調整部材21の支持面22にそれぞれ対向し、支持面22との間でキャピラリ4の対応部分を押さえる押え面23が設けられる。支持調整部材21及び押え面23は、協働してキャピラリ4を、その切断箇所CPを頂点とし、下方に曲率中心が位置する湾曲を呈して弾性変形するように案内する。
【0045】
各支持調整部材21は、装置本体2bから突出した案内ピン24により、キャピラリ4の長さ方向にほぼ平行に延びた長孔25を介してキャピラリ4の長さ方向における支持位置が調整できるように案内される。双方の長孔25は、切断箇所CP側がややキャピラリ4側に近づくように傾いており、上記の曲率を維持しつつ、支持位置を調整できるようになっている。
【0046】
カッタ保持部7bは、ほぼ水平方向に延在する直方体状の部材により構成され、該部材の延在方向における一方の端部の下端部においてホイールカッタ6を保持する。該部材の他方の端部は、装置本体2bにより回動軸26を介して回動自在に支持される。
【0047】
カッタ位置調整部8bは、カッタ保持部7bの下面におけるホイールカッタ6と回動軸26との間の部分をカムフォロア27とし、カッタ保持部7bの延在方向に直交する方向に延びたカムシャフト28に設けられたカム部材29をカム本体とするカム機構30と、カムシャフト28の端部に設けられ、カム部材29を回転させるためのハンドル31とを備える。カムシャフト28は、装置本体2bにより回転自在に支持される。
【0048】
回転部3bには、その回転軸線Aを中心として一体的に回転される小ギア32が固定される。カムシャフト28には、小ギア32とかみ合い、歯数が小ギア32の2倍である大ギア33が固定される。したがって、カム部材29が1回転する毎に、回転部3bに固定されるキャピラリ4は2回転する。
【0049】
また、カム部材29は、1回転毎に、ホイールカッタ6がカッタ保持部7bの自重により上方位置と下方位置との間で移動するような形状、例えば、楕円の長半径の一方側の半分と、その短半径を半径とする円とを結合したようなカム面の形状を有する。
【0050】
図5は、カム部材29の回転に応じてホイールカッタ6がキャピラリ4に傷を付与してキャピラリ4を切断するときの、ホイールカッタ6、キャピラリ4、カムシャフト28上のカム部材29の位置関係を示す。
【0051】
キャピラリカッタ1bによりキャピラリ4を切断するには、まず、必要に応じ、カッタ保持部7bの自重に抗してカム部材29をハンドル31により回転させ、ホイールカッタ6を、
図5(a)に示す上方位置に配置する。
【0052】
次に、キャピラリ4を、その一方d1側が、固定操作部5bの挿通孔34、上述のOリング、及び回転部3bの支持孔を通り、かつ切断箇所CP近傍の両側が支持調整部材21と装置本体2bの押え面23との間を通るように、キャピラリカッタ1bに装着する。このとき、キャピラリ4は、支持調整部材21と押え面23により案内され、切断箇所CPを頂点として下方に曲率中心が位置して湾曲するように弾性変形する。
【0053】
次に、固定操作部5bを回して、
図2の固定操作部5と回転部3の場合と同様にして、これらの間のOリングをつぶし、キャピラリ4の対応部分を回転部3bに固定する。次に、ハンドル31を1回転させる。
【0054】
この間、例えば、
図5(b)に示すように、ハンドル31が1/4回転したときに、ホイールカッタ6がキャピラリ4への接触を開始する。次にハンドル31が1/2回転する間、キャピラリ4は1回転する。この間、ホイールカッタ6がキャピラリ4に接触し続けるので、
図5(c)に示すように、キャピラリ4の切断箇所CPに1周分にわたって傷35が付与される。
【0055】
このとき、ホイールカッタ6は、初めにキャピラリ4のコーティングに接触し、これをキャピラリ4の回転に伴って切り開いてからキャピラリ4のガラス面に到達する。そして、1周分にわたって傷が付与されると、キャピラリ4には切断箇所CPを頂点とする湾曲の外側に引っ張り応力が働いているので、キャピラリ4は切断箇所CPにおいて切断されることになる。
【0056】
さらにハンドル31が1/4回転する間に、
図5(d)に示すように、ホイールカッタ6がキャピラリ4から離れて、上方位置に戻る。
【0057】
この後、切断されたキャピラリ4の一方d1側については、固定操作部5bを回して回転部3bに対する固定を解除し、固定操作部5bから引き抜くことにより、取得することができる。キャピラリ4の他方d2側については、そのまま、反対方向に引き抜くことにより取得することができる。
【0058】
なお、上記のように、ハンドル31を1回転するだけでキャピラリ4の切断を行うことができるように、カッタ保持部7bの重量や、上記の曲率半径の大きさ、小ギア32と大ギア33のギア比等を調整するのが好ましいが、ハンドル31の1回転で切断できない場合には、さらにハンドル31を回転させ、あるいはカッタ保持部7bを下方に押して切断するようにしてもよい。
【0059】
本実施形態によれば、キャピラリ4の切断箇所CPにおける表面は、押え面23により位置が規制されているので、切断箇所CPにおける外径やコーティング(ポリイミド)の厚さのばらつきの影響を受けることなく、常に同じ高さ位置において、切断箇所CPに対してホイールカッタ6を接触させることができる。
【0060】
また、キャピラリ4は、切断箇所CPを頂点として湾曲した状態で切断箇所CPに傷が付与されるので、頂点の外側に引っ張り応力が働き、切断を容易化することができる。また、上述
図2におけるような固定牽引部10が不要となるので、キャピラリカッタ1bを簡便かつコンパクトに構成することができる。
【符号の説明】
【0061】
1、1b…キャピラリカッタ、2、2b…装置本体、3、3b…回転部、4…キャピラリ、5、5b…固定操作部、6…ホイールカッタ、7、7b…カッタ保持部、8、8b…カッタ位置調整部、9…支持部、10…固定牽引部、11…第2挿通孔、12…固定手段、13…第1挿通孔、14…螺合部、15…Oリング、16…支持孔、17…傾斜面、18…クランプ部材、19…牽引部材、20…対向面、21…支持調整部材、22…支持面、23…押え面、24…案内ピン、25…長孔、26…回動軸、27…カムフォロア、28…カムシャフト、29…カム部材、30…カム機構、31…ハンドル、32…小ギア、33…大ギア、34…挿通孔、35…傷、A…回転軸線、CP…切断箇所。
【手続補正書】
【提出日】2021-05-25
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
装置本体と、
前記装置本体に対して回転軸線を中心として回転自在に支持される回転部と、
キャピラリの切断箇所の一方側を、前記回転軸線を中心として回転し得るように該回転部に固定し及び該固定を解除するために操作される固定操作部と、
前記回転部に固定された前記キャピラリに対して近接・離間方向に変位し得るように前記装置本体により案内され、前記キャピラリの切断箇所に傷を付与するホイールカッタを保持するカッタ保持部と、
前記カッタ保持部の前記近接・離間方向の位置を調整するためのカッタ位置調整部と、
前記装置本体により前記回転軸線の方向に移動し得るように案内されて前記キャピラリの前記切断箇所の他方側を前記一方側と反対方向に牽引するための固定牽引部であって、該他方側が通される第2挿通孔と、該第2挿通孔に通された該他方側をクランプする固定手段とを有する該固定牽引部とを備えることを特徴とするキャピラリカッタ。
【請求項2】
前記固定操作部は、
前記キャピラリが挿通される第1挿通孔と、
前記回転部に螺合される螺合部と、
前記螺合部と前記回転部との間に介在して前記キャピラリが通され、該螺合部の該回転
部への螺合により、該螺合部と該回転部との間で押しつぶされて該キャピラリを該回転部
に固定するOリングとを備えることを特徴とする請求項1に記載のキャピラリカッタ。
【請求項3】
前記固定牽引部は、
前記装置本体に対し、前記切断箇所から離れる離間方向に向かって前記回転軸線の方向に向かうように傾斜し、該回転軸線について線対称又は回転対称となるように設けられた少なくとも2つの傾斜面と、
各傾斜面に対向する対向面をそれぞれ有し、前記離間方向に牽引されることにより、前記傾斜面によって前記回転軸線の方向に変位して、前記第2挿通孔に通されている前記他方側をクランプする少なくとも2つのクランプ部材と、
各クランプ部材を前記離間方向に牽引するための牽引部材とを備えることを特徴とする請求項1又は2に記載のキャピラリカッタ。
【請求項4】
装置本体と、
前記装置本体に対して回転軸線を中心として回転自在に支持される回転部と、
キャピラリの切断箇所の一方側を、前記回転軸線を中心として回転し得るように該回転部に固定し及び該固定を解除するために操作される固定操作部と、
前記回転部に固定された前記キャピラリに対して近接・離間方向に変位し得るように前記装置本体により案内され、前記キャピラリの切断箇所に傷を付与するホイールカッタを保持するカッタ保持部と、
前記カッタ保持部の前記近接・離間方向の位置を調整するためのカッタ位置調整部とを備え、
前記装置本体には、
前記キャピラリを、前記切断箇所の両側の離れた部分において上方に向けてそれぞれ支持する支持面を有する支持調整部材と、
各支持調整部材の前記支持面にそれぞれ対向し、該支持面との間で前記キャピラリの対応部分を押さえる押え面とが設けられ、
前記支持調整部材及び前記押え面は、協働して前記キャピラリを、前記切断箇所を頂点とし、下方に曲率中心が位置する湾曲を呈して弾性変形するように案内するものであることを特徴とするキャピラリカッタ。
【請求項5】
装置本体と、
前記装置本体に対して回転軸線を中心として回転自在に支持される回転部と、
キャピラリの切断箇所の一方側を、前記回転軸線を中心として回転し得るように該回転部に固定し及び該固定を解除するために操作される固定操作部と、
前記回転部に固定された前記キャピラリに対して近接・離間方向に変位し得るように前記装置本体により案内され、前記キャピラリの切断箇所に傷を付与するホイールカッタを保持するカッタ保持部と、
前記カッタ保持部の前記近接・離間方向の位置を調整するためのカッタ位置調整部とを備え、
前記カッタ保持部は、ほぼ水平方向に延在する部材で構成され、該部材の延在方向における一方の端部の下端部において前記ホイールカッタを保持し、該部材の他方の端部は、前記装置本体により回動軸を介して回動自在に支持されるものであり、
前記カッタ位置調整部は、前記カッタ保持部の下面における前記ホイールカッタと前記回動軸との間の部分をカムフォロアとし、該カッタ保持部の延在方向に交差する方向に延びて前記装置本体により回転自在に設けられたカムシャフトに固定されたカム部材をカム本体とするカム機構を備え、
前記回転部には、その前記回転軸線を中心として一体的に回転される小ギアが固定され、
前記カムシャフトには、前記小ギアと噛み合い、歯数が該小ギアよりも多い大ギアが固定されることを特徴とするキャピラリカッタ。
【請求項6】
前記カッタ保持部は、ほぼ水平方向に延在する部材で構成され、該部材の延在方向における一方の端部の下端部において前記ホイールカッタを保持し、該部材の他方の端部は、前記装置本体により回動軸を介して回動自在に支持されるものであり、
前記カッタ位置調整部は、前記カッタ保持部の下面における前記ホイールカッタと前記回動軸との間の部分をカムフォロアとし、該カッタ保持部の延在方向に交差する方向に延びて前記装置本体により回転自在に設けられたカムシャフトに固定されたカム部材をカム本体とするカム機構を備え、
前記回転部には、その前記回転軸線を中心として一体的に回転される小ギアが固定され、
前記カムシャフトには、前記小ギアと噛み合い、歯数が該小ギアよりも多い大ギアが固定されることを特徴とする請求項4に記載のキャピラリカッタ。
【請求項7】
前記カム部材は、1回転毎に、前記ホイールカッタを前記カッタ保持部の自重に抗して上方位置と下方位置との間で移動させるような形状を有することを特徴とする請求項5又は6に記載のキャピラリカッタ。
【請求項8】
前記大ギアの歯数は、前記小ギアの歯数の2倍であることを特徴とする請求項5~7のいずれか1項に記載キャピラリカッタ。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0010
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0010】
本発明のキャピラリカッタは、
装置本体と、
前記装置本体に対して回転軸線を中心として回転自在に支持される回転部と、
キャピラリの切断箇所の一方側を、前記回転軸線を中心として回転し得るように該回転部に固定し及び該固定を解除するために操作される固定操作部と、
前記回転部に固定された前記キャピラリに対して近接・離間方向に変位し得るように前記装置本体により案内され、前記キャピラリの切断箇所に傷を付与するホイールカッタを保持するカッタ保持部と、
前記カッタ保持部の前記近接・離間方向の位置を調整するためのカッタ位置調整部と、
前記装置本体により前記回転軸線の方向に移動し得るように案内されて前記キャピラリの前記切断箇所の他方側を前記一方側と反対方向に牽引するための固定牽引部であって、該他方側が通される第2挿通孔と、該第2挿通孔に通された該他方側をクランプする固定手段とを有する該固定牽引部とを備えることを特徴とする。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0012
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0012】
この後、固定手段によりキャピラリの切断箇所の他方側を固定し、固定牽引部を前記切断箇所から離れる方向に引っ張ることによって、上記傷の部分においてキャピラリを分離し、切断することができる。したがって、キャピラリを上記真円軌道に沿って垂直に切断することができる。
また、上記のように切断箇所に傷を付与した後、牽引部材を引くだけで、クランプ部材がキャピラリをクランプし、切断箇所から離れる方向にキャピラリの他方側を牽引するので、キャピラリを切断箇所において容易に切断することができる。
【手続補正4】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0015
【補正方法】削除
【補正の内容】
【手続補正5】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0016
【補正方法】削除
【補正の内容】