(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022114210
(43)【公開日】2022-08-05
(54)【発明の名称】振動プローブおよび計測装置
(51)【国際特許分類】
G01H 17/00 20060101AFI20220729BHJP
G01M 99/00 20110101ALI20220729BHJP
【FI】
G01H17/00 D
G01M99/00 Z
【審査請求】有
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021010410
(22)【出願日】2021-01-26
(71)【出願人】
【識別番号】000137889
【氏名又は名称】株式会社ミヤワキ
(74)【代理人】
【識別番号】100115381
【弁理士】
【氏名又は名称】小谷 昌崇
(74)【代理人】
【識別番号】100067828
【弁理士】
【氏名又は名称】小谷 悦司
(74)【代理人】
【識別番号】100176304
【弁理士】
【氏名又は名称】福成 勉
(72)【発明者】
【氏名】吉川 成雄
【テーマコード(参考)】
2G024
2G064
【Fターム(参考)】
2G024AD01
2G024CA13
2G024FA04
2G024FA06
2G024FA11
2G064AA11
2G064AB01
2G064AB02
2G064BA02
2G064BD02
2G064DD02
(57)【要約】
【課題】計測対象物からの熱に起因する振動センサの故障・破損を抑制することができ、且つ、製造コストの上昇を抑制しながら高精度に振動の強度を計測することができる振動プローブおよび当該振動プローブを備える計測装置を提供する。
【解決手段】振動プローブ11は、振動センサ110、台座部111、断熱部材112、探触棒113、金属板材115,116を備える。断熱部材112はアルミナセラミックスから形成され、台座部111と探触棒113はステンレス鋼から形成されている。金属板材115,116は、アルミナセラミックスおよびステンレス鋼よりも硬度が低い冷間圧延鋼板(SPCC)を用いて形成されており、断熱部材112の端面と隙間なく密着する状態で台座部111および探触棒113と断熱部材112との各間に介挿されている。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
振動の強度を計測する対象である計測対象物に先端が当接するように配される、第1の金属材料から形成された探触棒と、
前記探触棒の前記先端から入力される前記振動に基づき当該振動の強度を計測する振動センサと、
前記探触棒と前記振動センサとの間に介挿されるとともに、前記探触棒から入力される前記振動を前記振動センサに伝達可能であって、且つ、前記探触棒を伝わってくる前記計測対象物からの熱を断熱する、ファインセラミックスから形成された断熱部材と、
前記振動センサと前記断熱部材との間に介挿され、前記断熱部材を介して伝達される前記振動を前記振動センサに伝達可能な、第2の金属材料から形成された台座部と、
前記探触棒および前記断熱部材のそれぞれの端面に密着する状態で、前記探触棒と前記断熱部材との間に介挿された、前記ファインセラミックスおよび前記第1の金属材料よりも硬度が低い第3の金属材料から形成された第1金属板材と、
前記台座部および前記断熱部材のそれぞれの端面に密着する状態で、前記台座部と前記断熱部材との間に介挿された、前記ファインセラミックスおよび前記第2の金属材料よりも硬度が低い第4の金属材料から形成された第2金属板材と、
を備える、
振動プローブ。
【請求項2】
請求項1に記載の振動プローブにおいて、
前記第1の金属材料および前記第2の金属材料は、ともにステンレス鋼であり、
前記第3の金属材料および前記第4の金属材料のそれぞれは、FeおよびCuおよびAlの内の少なくとも1種を含む金属材料である、
振動プローブ。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の振動プローブにおいて、
前記断熱部材は、アルミナセラミックスから形成されている、
振動プローブ。
【請求項4】
計測対象物の振動の強度を計測し、計測結果を外部出力する計測装置であって、
請求項1から請求項3の何れかに記載の振動プローブを備える、
計測装置。
【請求項5】
請求項4に記載の計測装置において、
前記振動プローブを前記計測対象物に固定するためのブラケットをさらに備える、
計測装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、振動プローブおよび計測装置に関し、特に蒸気や復水が流れる配管やスチームトラップ等を計測対象とする振動プローブおよび計測装置に関する。
【背景技術】
【0002】
蒸気が流通する配管設備から復水(ドレン)のみを排出する用途に用いられるスチームトラップが知られている。また、当該スチームトラップの振動の強度および表面温度を計測し、それらの相互関係から蒸気漏れの有無を診断することが行われている。このような診断には、スチームトラップの振動の強度を計測するための振動プローブと、スチームトラップの表面温度を計測するための温度プローブとを備える計測装置が用いられる。
【0003】
ここで、計測装置としては、作業者が携帯する可搬タイプのものと、スチームトラップに振動プローブや温度プローブが固定された設置タイプとがある。特許文献1には、設置タイプの計測装置が開示されている。
【0004】
従来技術に係る計測装置9について、
図6を用いて説明する。
【0005】
図6に示すように、計測装置9は、本体部90と、振動プローブ91と、温度プローブ92と、ケーブル93と、ブラケット94とを備える。振動プローブ91は、振動センサ910と、台座部911と、探触棒913とを有する。振動プローブ91における探触棒913の先端913aおよび温度プローブ92の先端92aは、それぞれがスチームトラップ501の表面501aに当接するように配される。そして、振動プローブ91および温度プローブ92は、ブラケット94によりスチームトラップ501に固定されている。振動プローブ91で計測されたスチームトラップ501における振動の強度に関する信号、および温度プローブ92で計測されたスチームトラップ501の表面温度に関する信号は、ケーブル93を通して本体部90に伝送される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、従来技術に係る計測装置9では、スチームトラップ501からの熱が探触棒913および台座部911を介して振動センサ910に伝達されるが、このように伝達される熱から振動センサ910を保護するための方策が講じられていない。よって、特に設置タイプの計測装置9においては、振動センサ910がスチームトラップ501からの熱に絶えず晒されることで故障・破損することが危惧される。具体的には、スチームトラップ501は最大で約550℃の高温となり、設置タイプの計測装置9では、矢印Bで示すようにスチームトラップ501からの熱が振動センサ910に対して伝達され、当該振動センサ910の温度が振動センサ910の耐熱温度(例えば、200℃)を超えることが考えられる。
【0008】
なお、振動センサ910の故障・破損を防ぐために高い耐熱温度を有する振動センサ910を用いることも考えられるが、特殊なセンサということとなり部品コストの上昇を招く。よって、高い耐熱温度を有する振動センサを採用することはできない。
【0009】
本発明は、上記のような事情に鑑みてなされたものであって、計測対象物からの熱に起因する振動センサの故障・破損を抑制することができ、且つ、製造コストの上昇を抑制しながら高精度に振動の強度を計測することができる振動プローブおよび当該振動プローブを備える計測装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の一態様に係る振動プローブは、探触棒と、振動センサと、断熱部材と、台座部と、第1金属板材および第2金属板材とを備える。前記探触棒は、振動の強度を計測する対象である計測対象物に先端が当接するように配された部材であって、第1の金属材料から形成されている。前記振動センサは、前記探触棒の前記先端から入力される前記振動に基づき当該振動の強度を計測する。前記断熱部材は、前記探触棒と前記振動センサとの間に介挿されるとともに、前記探触棒から入力される前記振動を前記振動センサに伝達可能であって、且つ、前記探触棒を伝わってくる前記計測対象物からの熱を断熱する部材であって、ファインセラミックスから形成されている。
【0011】
前記台座部は、前記振動センサと前記断熱部材との間に介挿され、前記断熱部材を介して伝達される前記振動を前記振動センサに伝達可能な部材であって、第2の金属材料から形成されている。前記第1金属板材は、前記探触棒および前記断熱部材のそれぞれの端面に密着する状態で、前記探触棒と前記断熱部材との間に介挿された部材であって、前記ファインセラミックスおよび前記第1の金属材料よりも硬度が低い第3の金属材料から形成されている。前記第2金属板材は、前記台座部および前記断熱部材のそれぞれの端面に密着する状態で、前記台座部と前記断熱部材との間に介挿された部材であって、前記ファインセラミックスおよび前記第2の金属材料よりも硬度が低い第4の金属材料から形成されている。
【0012】
上記態様に係る振動プローブでは、探触棒と振動センサとの間に断熱部材を介挿した構造を採用する。断熱部材は、ファインセラミックスから形成され、探触棒から振動センサへの振動の伝達と、探触棒と振動センサとの間で断熱する機能を有する。よって、上記態様に係る振動プローブでは、高い耐熱性を有する振動センサを採用しなくても、計測対象物からの熱に起因する振動センサの故障・破損を抑制することができる。
【0013】
また、上記態様に係る振動プローブでは、探触棒と断熱部材との間に第1金属板材が、台座部と断熱部材との間に第2金属板材がそれぞれ介挿されている。そして、第1金属板材を構成する第3の金属材料は断熱部材を構成するファインセラミックスよりも硬度が低く、また、第2金属板材を構成する第4の金属材料も断熱部材を構成するファインセラミックスよりも硬度が低い。
【0014】
ここで、一般的にファインセラミックスで構成された部材では、端面を含む外周面に凹凸を有する。このため、ファインセラミックスから形成された断熱部材に対して探触棒や台座部を直接当接させても、端面同士の間に微細な隙間があいてしまうことになる。
【0015】
これに対して、上記態様に係る振動プローブでは、探触棒と断熱部材との間に硬度が低い第1金属板材を介挿し、台座部と断熱部材との間に同じく硬度が低い第2金属板材を介挿した構成を採用している。このため、断熱部材の各端面に第1金属板材および第2金属板材をそれぞれ当接させた場合には、断熱部材の端面における凸部が第1金属板材および第2金属板材にめり込み、断熱部材の端面における凹部には前記めり込みにより塑性流動した第1金属板材および第2金属板材の一部が流れ込む。
【0016】
よって、上記態様に係る振動プローブでは、ファインセラミックスから形成された断熱部材を採用しても、振動の伝達経路中における空隙を生じ難く、高い精度での振動計測が可能である。
【0017】
上記態様に係る振動プローブにおいて、前記第1の金属材料および前記第2の金属材料は、ともにステンレス鋼であってもよく、前記第3の金属材料および前記第4の金属材料のそれぞれは、FeおよびCuおよびAlの内の少なくとも1種を含む金属材料であってもよい。
【0018】
上記態様に係る振動プローブでは、第1金属板材を構成する第3の金属材料、および第2金属板材を構成する第4の金属材料として、Fe、Cu、Alの内の少なくとも1種を含む金属材料を採用する。このため、上記態様に係る振動プローブでは、ファインセラミックスから形成された断熱部材の端面が凹凸を有する面であっても、当該端面に対して第1金属板材および第2金属板材を隙間なく当接させることができる。なお、第1金属板材および第2金属板材として、例えば、冷間圧延鋼板(SPCC)を用いて形成することとすれば、材料入手が容易であり、製造コストの上昇を抑制することができる。
【0019】
上記態様に係る振動プローブにおいて、前記断熱部材は、アルミナセラミックスから形成されてもいてもよい。
【0020】
上記態様に係る振動プローブでは、断熱部材をアルミナセラミックスから形成している。このため、探触棒と振動センサとの間に断熱部材を介挿させた構成としても、探触棒の先端から振動センサまでの振動の伝達を良好なものとするのに優位である。なお、断熱部材を構成する材料としては、他に炭化ケイ素セラミックス、窒化ケイ素セラミックス、ジルコニアセラミックスなどを採用することも可能である。
【0021】
本発明の一態様に係る計測装置は、計測対象物の振動の強度を計測し、計測結果を外部出力する計測装置である。そして、本態様に係る計測装置は、上記の何れかの態様に係る振動プローブを備える。
【0022】
上記態様に係る計測装置は、上記の何れかの態様に係る振動プローブを備えるので、計測対象物からの熱に起因する振動センサの故障・破損を抑制することができ、且つ、製造コストの上昇を抑制しながら高精度に振動の強度を計測することができる。
【0023】
上記態様に係る計測装置において、前記振動プローブを前記計測対象物に固定するためのブラケットをさらに備えていてもよい。
【0024】
上記態様に係る計測装置は、振動プローブがブラケットで計測対象物に固定された、所謂、設置タイプの計測装置である。このようにブラケットにより計測対象物に対して振動プローブが固定されている場合には、計測対象物と振動プローブの先端とが常に当接した状態となる。この状態では、計測対象物からの熱が振動プローブの探触棒に伝達されることになるが、上記のように探触棒と振動センサとの間に断熱部材を介挿することにより、計測対象物からの熱に起因する振動センサの故障・破損を抑制することができる。よって、耐熱仕様(高熱に対して耐性を有する)振動センサを用いなくても当該振動センサの故障・破損を抑制することができ、製造コストの上昇を抑えながら高精度に振動の強度を計測することができる。
【発明の効果】
【0025】
上記の各態様では、計測対象物からの熱に起因する振動センサの故障・破損を抑制することができ、且つ、製造コストの上昇を抑制しながら高精度に振動の強度を計測することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】本発明の実施形態に係る計測装置の構成を示す模式図である。
【
図2】(a)は振動プローブの構成を示す側面図であり、(b)は断熱部材の構成を示す斜視図である。
【
図3】振動プローブの一部構成を示す側面図である。
【
図4】(a)は実施形態に係る振動プローブでの熱の伝わり方を示す断面図であり、(b)は比較例に係る振動プローブでの熱の伝わり方を示す模式図である。
【
図5】(a)は断熱部材と当該端面に装着される金属板材とを示す展開斜視図であり、(b)は装着前における断熱部材と金属板材とを示す断面図であり、(c)は装着後における断熱部材と断熱部材と金属板材とを示す断面図である。
【
図6】従来技術に係る計測装置の構成を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下では、本発明の実施形態について、図面を参酌しながら説明する。なお、以下で説明の形態は、本発明の一例であって、本発明は、その本質的な構成を除き何ら以下の形態に限定を受けるものではない。
【0028】
1.計測装置1の構成
本発明の実施形態に係る計測装置1の構成について、
図1を用いて説明する。
【0029】
図1に示すように、計測装置1は、本体部10と、振動プローブ11と、温度プローブ12と、ケーブル13と、ブラケット14とを備える。本体部10は、筐体と、当該筐体内に収容されたコントローラおよび信号送信部、さらにはバッテリを含む。本体部10のコントローラは、MPU/CPU、ASIC、ROM、RAM等を含むマイクロプロセッサと、メモリとを有して構成されている。コントローラは、メモリに予め格納されたファームウェア等を実行することにより、振動プローブ11から入力された振動の強度に関する情報と、温度プローブ12から入力された温度に関する情報とを演算処理する。演算処理された信号は、信号送信部からプラントのメインサーバ等に送信(外部出力)される。
【0030】
なお、本実施形態において、本体部10は、振動および温度の測定対象物であるスチームトラップ500から離間した位置に配される。
【0031】
振動プローブ11の先端113aおよび温度プローブ12の先端12aのそれぞれは、スチームトラップ500の表面500aに当接するように配されている。振動プローブ11および温度プローブ12は、ブラケット14によりスチームトラップ500に対して位置固定されている。
【0032】
ケーブル13は、振動プローブ11および温度プローブ12と本体部10との間を信号接続するように設けられている。なお、本実施形態では、振動プローブ11および温度プローブ12と本体部10との間を有線方式で信号接続することとしているが、本発明では、無線方式で信号接続することも可能である。
【0033】
2.振動プローブ11の構成
振動プローブ11の構成について、
図2および
図3を用いて説明する。
【0034】
図2(a)に示すように、振動プローブ11は、振動センサ(圧電型加速度センサ)110と、台座部111と、断熱部材112と、探触棒113と、複数のビス114と、金属板材115,116とを有する。
図2(a)の引き出し部分に示すように、探触棒113は、内方に中空部113cが形成された円筒形状を有する。探触棒113の先端113aがスチームトラップ500の表面500aに当接する(
図1を参照)。なお、本実施形態では、ステンレス鋼(第1の金属材料)から形成された探触棒113を一例として採用している。
【0035】
断熱部材112は、探触棒113と振動センサ110との間に挿設されている。より具体的には、断熱部材112は、両端に金属板材(第1金属板材)115と金属板材(第2金属板材)116とが密着した状態で、探触棒113と台座部111との間に設けられている。
【0036】
図2(b)に示すように、断熱部材112は、ファインセラミックスの1種であるアルミナセラミックスから形成されており、内方に中空部112aが形成され、長手方向の両端に開口112b,112cが開けられた円筒形状を有する。断熱部材112の外周壁には、長手方向の両端部分に各2つずつネジ孔112dが開けられている。
【0037】
台座部111は、振動センサ110と断熱部材112との間に挿設されている。台座部111は、ステンレス鋼(第2の金属材料)から形成された、円筒形状または円柱形状を有する部材である。
【0038】
金属板材115,116のそれぞれは、冷間圧延鋼板(SPCC)を用いて形成され、リング形状を有する板材である。なお、金属板材115,116の形成材料(第3の金属材料、第4の金属材料)については、冷間圧延鋼板(SPCC)に限定されるものではないが、断熱部材112を構成するアルミナセラミックス、および探触棒113や台座部111を構成するステンレス鋼よりも低い硬度を有する材料から構成されることが必要である。具体的には、金属板材115,116を、Fe、Cu、Alの内の少なくとも1種を含む材料であって、アルミナセラミックスおよびステンレス鋼よりも低い硬度を有する材料から形成することができる。
【0039】
図3に示すように、断熱部材112の中空部112aに対しては、開口112bから台座部111の嵌入部111bが嵌入されている。なお、台座部111の嵌入部111bは、断熱部材112の端面112fに対して一方の面116bが密着し、且つ、台座部111の端面111cに対して他方の面116cが密着するように台座部111と断熱部材112との間で挟持された金属板材116の孔部116aを挿通している。
【0040】
また、断熱部材112の中空部112aに対しては、開口112cから探触棒113の嵌入部113bが嵌入されている。なお、探触棒113の嵌入部113bも、断熱部材112の端面112eに対して一方の面115bが密着し、且つ、探触棒113の端面113dに対して他方の面115cが密着するように探触棒113と断熱部材112との間で挟持された金属板材115の孔部115aを挿通している。
【0041】
台座部111の嵌入部111bおよび探触棒113の嵌入部113bと断熱部材112とは、径方向に直に当接する状態でビス114により固定されている(
図12(a)を参照)。断熱部材112の中空部112a内において、台座部111の嵌入部111bと探触棒113の嵌入部113bとは、互いに間隔を空けた状態で配置されている。換言すると、台座部111の嵌入部111bと探触棒113の嵌入部113bとは、直に接触していない。
【0042】
台座部111のもう一方の端面111aに対しては、振動センサ110が直に当接する状態で固定されている。
【0043】
3.振動プローブ11における断熱
振動プローブ11における断熱について、
図4を用いて説明する。なお、
図4は、(a)が本実施形態に係る振動プローブ11での熱の伝わり方を示す断面図であり、(b)が比較例に係る振動プローブ91での熱の伝わり方を示す模式図である。
【0044】
図4(a)に示すように、本実施形態に係る振動プローブ11は、スチームトラップ500の表面500aに探触棒113の先端113aが当接されているため、スチームトラップ500からの熱が探触棒113を伝わってくる(矢印A1)。
【0045】
しかしながら、探触棒113を振動センサ110との間には、アルミナセラミックスから形成された断熱部材112が介挿されているため、探触棒113を伝わってきた熱が振動センサ110へ伝達されるのが抑制される。また、断熱部材112の中空部112a内において、探触棒113の嵌入部113bと台座部111の嵌入部111bとは間隔を空けた状態で配されているので、探触棒113から台座部111へ直接に熱が伝わることも抑制される。よって、本実施形態に係る振動プローブ11では、探触棒113を伝わってきた熱が振動センサ110へと伝達されるのが抑制される。
【0046】
これに対して、
図4(b)に示すように、比較例に係る振動プローブ91は、振動センサ910が台座部911の端面911aに固定され、探触棒913が台座部911のもう一方の端面911bに固定されている。よって、探触棒913を伝わってきた熱が、台座部911を通過して振動センサ910へと伝達される(矢印A2)。このため、比較例に係る振動プローブ91では、スチームトラップからの熱により振動センサ910が故障・破損してしまうことが考えられる。
【0047】
4.振動プローブ11の各部材寸法
蒸気および復水(ドレン)の何れか一方が流れるスチームトラップ等の計測対象物において、その振動を計測した場合、計測対象物内を流れる流体が蒸気であるか否かによって特定の周波数成分の振動強度が大きく異なり、特に、10kHz付近の振動強度を計測することで、計測対象物内を流れる流体が蒸気であるか否かを比較的高い精度で判別することが知られている(特開2014-133948号公報)。
【0048】
そのため、スチームトラップ等の蒸気漏れの診断を行う場合に用いられる計測装置1の振動プローブ11については、共振周波数が10kHz付近となるように設計することが重要である。このような知見を基として、台座部111、断熱部材112、探触棒113、金属板材115,116の長さや肉厚が設定される。なお、各部材寸法の設定に際しては、各部材の形成に用いる材料が有する材料係数も考慮される。
【0049】
5.断熱部材112の端面112e,112fへの金属板材115,116の接合状態
断熱部材112の端面112e,112fへの金属板材115,116の接合状態について、
図5を用いて説明する。なお、
図5では、断熱部材112の端面112fへの金属板材116の接合状態のみを図示するが、断熱部材112の端面112eへの金属板材115の接合状態についても同様である。
【0050】
図5(a)に示すように、円筒形状を有する断熱部材112の端面112fに対して、開口112bに対して金属板材116の孔部116aが合致する状態で、金属板材116の面116bを当接させる。
図5(a)に引き出し部分に示すように、アルミナセラミックスから形成された断熱部材112では、端面112fに微細な凹凸112gを有する。このため、ステンレス鋼などの高い硬度を有する材料からなる部材を当該端面112fに当接させた場合には、凹凸112gによって微細な隙間を生じてしまうことになることが懸念される。
【0051】
一方、
図5(b)に示すように、本実施形態では、ファインセラミックスやステンレス鋼に対して硬度が低い冷間圧延鋼板(SPCC)を用いて形成された金属板材116を、断熱部材112の端面112fに当接させることとしている。低い硬度の冷間圧延鋼板(SPCC)を用いて形成された金属板材116の面116bを断熱部材112の端面112fに対して所定圧力で圧接すると、
図5(c)に示すように、断熱部材112の端面112fにおける凸部は、金属板材116の厚み方向内側に向けて侵入する(めり込む)。また、断熱部材112の端面112fにおける凸部が金属板材116にめり込むことにより、金属板材116では塑性流動が生じ、断熱部材112の端面112fにおける凹部に対して金属板材116の金属の一部が充填される。よって、本実施形態に係る振動プローブ11では、断熱部材112の端面112e,112fに対して金属板材115,116が隙間なく密着することとなり、探触棒113の先端113aから入力された振動が少ない減衰で振動センサ110へと伝達される。
【0052】
6.効果
本実施形態に係る振動プローブ11では、探触棒113と振動センサ110との間に断熱部材112が介挿された構造を採用する。断熱部材112は、ファインセラミックスの1種であるアルミナセラミックスから形成され、探触棒113から振動センサ110への振動の伝達と、探触棒113と振動センサ110との間で断熱する機能を有する。よって、振動プローブ11では、高い耐熱性を有する振動センサ110を採用しなくても、計測対象物であるスチームトラップ500からの熱に起因する振動センサ110の故障・破損を抑制することができる。
【0053】
また、振動プローブ11では、探触棒113と断熱部材112との間に金属板材115が、台座部111と断熱部材112との間に金属板材116がそれぞれ介挿されている。そして、金属板材115,116を構成する冷間圧延鋼板(SPCC)は断熱部材112を構成するアルミナセラミックスよりも硬度が低い。
【0054】
ここで、
図5を用いて説明したように、アルミナセラミックスなどのファインセラミックスで構成された断熱部材112では、端面112e,112fを含む外周面に凹凸112gを有する。このため、断熱部材112の端面112e,112fに対して探触棒113や台座部111を直接当接させた場合には、端面112e,112fと端面111c,113dとの間に微細な隙間があいてしまうことになる。
【0055】
これに対して、本実施形態に係る振動プローブ11では、探触棒113と断熱部材112との間に硬度が低い金属板材115を介挿し、台座部111と断熱部材112との間に同じく硬度が低い金属板材116を介挿した構成を採用している。このため、断熱部材112の各端面112e,112fに対して金属板材115,116をそれぞれ当接させて所定圧力で圧接させることにより、断熱部材112の端面112e,112fにおける凸部が金属板材115,116内にめり込み、断熱部材112の端面112e,112fにおける凹部には前記めり込みにより塑性流動した金属板材115,116の一部の金属が流れ込む。
【0056】
よって、振動プローブ11では、アルミナセラミックスから形成された断熱部材112を採用しても、振動の伝達経路中における空隙を生じ難く、高い精度での振動計測が可能である。
【0057】
また、本実施形態に係る振動プローブ11では、金属板材115,116を冷間圧延鋼板(SPCC)で構成しているが、上述のように、これ以外にFe、Cu、Alの内の少なくとも1種を含む金属材料で金属板材115,116を形成することができる。このため、振動プローブ11では、アルミナセラミックスから形成された断熱部材112の端面112e,112fが凹凸を有する面であっても、当該端面112e,112fに対して金属板材115,116を隙間なく密着させることができる。なお、本実施形態では、冷間圧延鋼板(SPCC)を用いて金属板材115,116を形成しているので、材料入手の容易性という観点、材料コストが低いという観点などから製造コストの上昇を抑制することができる。
【0058】
また、本実施形態に係る振動プローブ11では、断熱部材112をアルミナセラミックスから形成している。このため、探触棒113と振動センサ110との間に断熱部材112を介挿させた構成としても、探触棒113の先端113aから振動センサ110までの振動の伝達を良好なものとすることができる。なお、断熱部材112を構成する材料としては、アルミナセラミックスの他に、炭化ケイ素セラミックス、窒化ケイ素セラミックス、ジルコニアセラミックスなどを採用することも可能である。
【0059】
また、本実施形態に係る計測装置1は、上記のような作用・効果を有する振動プローブ11を備えるので、計測対象物であるスチームトラップ500からの熱に起因する振動センサ110の故障・破損を抑制することができ、且つ、製造コストの上昇を抑制しながら高精度に振動の強度を計測することができる。
【0060】
本実施形態に係る計測装置1は、
図1を用いて説明したように、振動プローブ11がブラケット14でスチームトラップ500に固定された、所謂、設置タイプの計測装置1である。このようにブラケット14によりスチームトラップ500に対して振動プローブ11が固定されている場合には、スチームトラップ500と振動プローブ113における探触棒113の先端113aとが常に当接した状態となる。この状態では、スチームトラップ500からの熱が振動プローブ11の探触棒113に伝達されることになるが、振動プローブ11においては探触棒113と振動センサ110との間に断熱部材112が介挿されているので、スチームトラップ500からの熱に起因する振動センサ110の故障・破損を抑制することができる。よって、耐熱仕様(高熱に対して耐性を有する)の振動センサを用いなくても振動センサ110の故障・破損を抑制することができ、製造コストの上昇を抑えながら高精度に振動の強度を計測することができる。
【0061】
以上のように、本実施形態に係る振動プローブ11および当該振動プローブ11を備える計測装置1では、スチームトラップ500からの熱に起因する振動センサ110の故障・破損を抑制することができ、且つ、製造コストの上昇を抑制しながら高精度に振動の強度を計測することができる。
【0062】
[変形例]
上記では、詳細な説明を省略したが、計測装置1における温度プローブ12は熱電対を有する。ただし、本発明では、熱電対に代えて、サーミスタ等の他の温度計測用のデバイスを温度プローブに用いることも可能である。
【0063】
上記実施形態では、探触棒113を中空部113dを有する円柱形状を有する部材としたが、本発明は、これに限定を受けるものではない。例えば、中実の円柱形状を有する探触棒を採用することも可能である。また、横断面形状については、円環形状または円形状に限定されるものではなく、多角形状や長円形状(楕円形状を含む)や、それらの内部が中空であるような形状とすることなども可能である。
【0064】
上記実施形態では、振動プローブ11と温度プローブ12とを併せ持つ計測装置1を一例として採用したが、本発明は、振動プローブ11だけを備え、計測対象物の振動の強度だけを計測する装置に適用することも可能である。
【0065】
上記実施形態では、スチームトラップ500を計測対象物の一例としたが、本発明は、スチームトラップ以外の計測対象物の振動を計測する装置に適用することも可能である。
【0066】
上記実施形態では、計測装置1の本体部10が、振動の強度に関する情報と温度に関する情報とを演算処理し、演算処理された信号を外部(例えば、プラントのメインサーバ)に送信することとしたが、本発明は、これに限定を受けるものではない。例えば、本体部10の外面の一部に表示部を設けておき、演算結果を作業者の要求に応じて表示部に表示する構成としてもよい。
【符号の説明】
【0067】
1 計測装置
11 振動プローブ
110 振動センサ
112 断熱部材
113 探触棒
115,116 金属板材