(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022114225
(43)【公開日】2022-08-05
(54)【発明の名称】切断装置
(51)【国際特許分類】
E04G 23/08 20060101AFI20220729BHJP
B23D 53/04 20060101ALI20220729BHJP
B23D 53/06 20060101ALI20220729BHJP
B23D 55/02 20060101ALI20220729BHJP
【FI】
E04G23/08 D
B23D53/04
B23D53/06
B23D55/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021010433
(22)【出願日】2021-01-26
(71)【出願人】
【識別番号】521039471
【氏名又は名称】日本工機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100165663
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 光宏
(72)【発明者】
【氏名】宮田 健太郎
(72)【発明者】
【氏名】久保 和也
【テーマコード(参考)】
2E176
3C040
【Fターム(参考)】
2E176DD22
3C040AA16
3C040CC12
3C040DD13
3C040JJ03
3C040LL32
(57)【要約】
【課題】 建造物の柱など両端が支持された構造物の上下端を切断する切断装置を提供する。
【解決手段】 切断対象である柱を挟むように配置可能な平面視で略U字形状の架台100を構成する。架台100の上には、移動可能な切断部200を取り付ける。架台100と切断部200とは、懸吊対応のレールおよびベアリングで連結する。また、切断部200においては、無端帯刃251を駆動する駆動機構250を、支持部210によって、架台100に対して傾斜させて支持する。また、切断装置の各構造は、上下反転させても稼働できるように構成する。
かかる構造の切断装置を用いることにより、柱の下端を切断した後、切断装置を上下反転させて、柱の上端を切断することが可能となる。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
両端が支持された構造体を切断するための切断装置であって、
前記構造体を挟むように設置し得る平面視で略U字形状の架台と、
前記架台のうちU字形状の両方の直延部に平行に設置された懸吊対応のレールと、
前記レールに沿って移動可能に取り付けられ、前記構造体を切断するために動力で駆動する切断刃を有する切断部とを有し、
前記切断部は、該切断装置全体を180度反転させても前記レールに沿った移動および切断を行うことができるよう構成されるとともに、懸吊対応のベアリングによって前記レールに取り付けられている切断装置。
【請求項2】
請求項1記載の切断装置であって、
前記切断刃は無端帯刃であり、
前記切断部は、前記切断刃の搬送経路が前記架台の前記レールが設置された面に対して、所定の傾きを持った状態に構成されている切断装置。
【請求項3】
請求項1または2記載の切断装置であって、
前記切断刃は、前記構造体に当たる部分が直線状になるようとりつけられており、
前記切断部は、前記切断刃の直線状の部分が前記レールに対して直交せず斜めに交差するよう配置されている切断装置。
【請求項4】
請求項1~3いずれか記載の切断装置であって、
前記切断刃は無端帯刃であり、
前記切断刃を駆動する駆動プーリーの外周に、該切断刃が90度以上にわたって接触するよう、該切断刃の搬送経路を決定する他のプーリーが配置されている切断装置。
【請求項5】
請求項1~4いずれか記載の切断装置であって、
前記切断刃は無端帯刃であり、
前記切断刃の搬送経路を決定するプーリーの一部または全部は、その高さおよび傾斜を調整するための機構を有する切断装置。
【請求項6】
請求項1~5いずれか記載の切断装置であって、
前記切断部は、
前記ベアリングを締結するための前記レールに対して交差する方向に取付位置を調整可能に遊びを設けた取付孔を備えるとともに、
該ベアリングに対して、前記交差する方向に両側から押圧し、該交差する方向の位置を固定する固定機構を備える切断装置。
【請求項7】
請求項1~6いずれか記載の切断装置であって、
ボルトを用いて締結される部分の一部または全部は、
締結用のボルト用が貫通する孔の開口部には、テーパ状の面取りが施され、
前記ボルトは、該面取りに対応するテーパ凸部を有するワッシャを介して締結されている
切断装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、両端が支持された構造体を切断するための切断装置に関する。
【背景技術】
【0002】
多層構造物を解体する方法として、特許文献1は、下層階の柱の周囲にジャッキを設置した上で、柱を切断除去し、下層階から順次、解体を進める方法を提案している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1では、柱の切断方法については具体的な開示はなされていない。また、柱の切断に適した装置も、知られていない。かかる課題は、柱に限らず、建築物の梁、筋交い足場の支柱、梁、筋交いなど、両端が支持された構造体を切断する際に共通であった。
本発明は、かかる課題に鑑み、両端が支持された構造体を切断するための切断装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、
両端が支持された構造体を切断するための切断装置であって、
前記構造体を挟むように設置し得る平面視で略U字形状の架台と、
前記架台のうちU字形状の両方の直延部に平行に設置された懸吊対応のレールと、
前記レールに沿って移動可能に取り付けられ、前記構造体を切断するために動力で駆動する切断刃を有する切断部とを有し、
前記切断部は、該切断装置全体を180度反転させても前記レールに沿った移動および切断を行うことができるよう構成されるとともに、懸吊対応のベアリングによって前記レールに取り付けられている切断装置として構成することができる。
【0006】
本発明における構造体としては、建築物や足場の支柱、梁、筋交いなどが挙げられる。 本発明によれば、切断対象となる構造体を直延部が挟むように架台を設置すると、そのレール上を切断部が移動することで構造体の一端を切断することができる。また、切断装置を、180度反転させて稼働することにより、他端を切断することができる。例えば、建築物の柱を切断する際には、切断部が架台の上を移動する状態と、上下反転させて、切断部が架台に懸吊された状態で、柱の上下端を切断することになる。梁を切断する際には、切断部が架台の右側を移動する状態と、180度横転させて、切断部が架台の左側と移動する状態で、梁の左右端を切断することになる。筋交いのように斜めに支持された構造体の場合は、それに応じた角度で180度反転させれば良い。
建築物の柱を切断するための切断装置は、一般に、大きな動力を要するため全体が大型化する。従って、例えば建築物の柱の一端を切断した後、切断装置の高さを調整しても、切断装置自体が邪魔となり、端の他端を切断することはできないことが多い。これに対し、本発明では、上下反転させて稼働することができるため、柱の上下端を支障なく切断することができる。他の構造体の場合も同様である。
【0007】
本発明の切断装置においては、
前記切断刃は無端帯刃であり、
前記切断部は、前記切断刃の搬送経路が前記架台の前記レールが設置された面に対して、所定の傾きを持った状態に構成されているものとしてもよい。
【0008】
無端帯刃の場合、プーリーで搬送されている状態では、刃がプーリーの回転軸と同じ方向を向いているため、構造体を切断する部分では、構造体に無端帯刃が当たるよう、ねじる必要がある。そして、このねじれの角度が大きい場合には、無端帯刃に過剰な負荷がかかることとなる。
これに対し、本発明では、搬送経路がレールが設置された面に対して傾きを持って構成されているため、切断する部分でのねじれの角度を抑制することができ、無端帯刃にかかる負荷を低減することができる。
上記傾きの角度は、無端帯刃にかかる負荷を考慮して任意に決めることができるが、例えば、30度以上とすることが好ましい。
【0009】
本発明の切断装置においては、
前記切断刃は、前記構造体に当たる部分が直線状になるようとりつけられており、
前記切断部は、前記切断刃の直線状の部分が前記レールに対して直交せず斜めに交差するよう配置されているものとしてもよい。
【0010】
建造物の柱その他の構造体は、円柱状のものとは限らず、角柱状のものが少なからず存在する。切断刃の構造体に当たる部分が直線状となっている場合、角柱状の構造体に対しては、その外周面の全幅にわたって切断刃が接触することが起き、切断刃に大きな負荷がかかることが生じ得る。
本発明の態様によれば、切断刃は、レールに対して斜めに交差するように配置されている。従って、角柱状の構造体であっても、切断刃が構造体の外周面に対して斜めに当たることとなり、切断刃に過剰な負荷がかかることを回避できる。
上記態様は、切断刃が上記条件を満たすように、切断部自体を構成してもよい。また、切断部を前記レールに対して、ヨー角を持つように載置することによって実現してもよい。また、必ずしも切断刃は無端帯刃に限られるものではなく、例えば、直線状の刃を往復動させるものであってもよい。
【0011】
本発明の切断装置においては、
前記切断刃は無端帯刃であり、
前記切断刃を駆動する駆動プーリーの外周に、該切断刃が90度以上にわたって接触するよう、該切断刃の搬送経路を決定する他のプーリーが配置されているものとしてもよい。
【0012】
上記態様によれば、駆動プーリーに切断刃が90度以上にわたって接触するため、駆動力を効率的に切断刃に伝達することができる利点がある。
上記態様を実現する構成は、例えば、搬送経路において駆動プーリーの前後に位置するプーリーの配置によって実現することができる。
【0013】
本発明の切断装置においては、
前記切断刃は無端帯刃であり、
前記切断刃の搬送経路を決定するプーリーの一部または全部は、その高さおよび傾斜を調整するための機構を有するものとしてもよい。
【0014】
無端帯刃の搬送経路は、平面内に構成されている必要がある。プーリーの高さまたは傾斜が不均一である場合、搬送経路が平面内に構成されず、無端帯刃がプーリーから脱落することが生じ得る。
上記態様によれば、プーリーの一部または全部に、高さおよび傾斜を調整する機構が備えられているため、搬送経路を平面内に構成することができ、無端帯刃の脱落等を防止することができる。
【0015】
本発明の切断装置においては、
前記切断部は、
前記ベアリングを締結するための前記レールに対して交差する方向に取付位置を調整可能に遊びを設けた取付孔を備えるとともに、
該ベアリングに対して、前記交差する方向に両側から押圧し、該交差する方向の位置を固定する固定機構を備えるものとしてもよい。
【0016】
レール上を、切断部を円滑に移動させるためには、ベアリングの位置の調整が必要となる。一方、切断装置を180度反転させる過程など、切断装置が横転した状態では、ベアリングに横方向、即ちレールに対して交差する方向から荷重がかかることになる。このためには、ベアリングをしっかりと固定する必要がある。
上記態様によれば、取付位置を調整可能とするとともに、固定機構によってレールに対して交差する方向の位置を固定することができるため、上述した2つの要求を両立させることができる。
【0017】
本発明の切断装置においては、
ボルトを用いて締結される部分の一部または全部は、
締結用のボルト用が貫通する孔の開口部には、テーパ状の面取りが施され、
前記ボルトは、該面取りに対応するテーパ凸部を有するワッシャを介して締結されているものとしてもよい。
【0018】
上下反転させるためには、切断装置の各部材を強固に締結する必要がある。しかしながら、孔の位置には、微妙なずれ、または遊びがあり、必ずしも強固に締結することはできない。
上記態様によれば、テーパ面に対して、ワッシャのテーパ凸部をはめ込むようにして、ボルトを固定することができるため、孔の位置のずれ、遊びの影響なく、部材を強固に締結することができる。
【0019】
本発明は、必ずしも上述の特徴の全てを備えている必要はなく、適宜、その一部を省略したり、組み合わせたりして構成してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図2】切断装置による切断の概要を示す説明図である。
【
図9】ベアリングの取付部の構成を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施例について、建築物の柱を切断する装置としての例に基づいて説明する。
図1は、切断装置の全体構造を示す説明図である。切断装置10を斜め後方から撮影した写真に、主要な部位の符号等を付した。切断装置10は、架台100の上を切断部200が図中の矢印方向に進行しながら、無端帯刃251で柱を切断する装置である。
【0022】
図2は、切断装置による切断の概要を示す説明図である。
図2(a)は柱の上端を切断する状態、
図2(b)は柱の下端を切断する状態を示している。
実施例の切断装置10は、架台100と、その上を移動する切断部200を備えている。切断部200においては、無端帯刃251を駆動する駆動機構250が、支持部210によって、架台100に対して傾斜した状態で支持されている。
【0023】
切断装置10の架台100は、平面視で略U字形状をなしている。
図2(a)に示すように、架台100をフォークに固定し、U字形状の部分で切断対象である柱を挟むように配置する。この状態で、無端帯刃251を駆動させながら、切断部200を矢印のように移動させることにより、破線で示すように柱の上部を切断することができる。
【0024】
次に、
図2(b)に示すように、フォークを反転させ、切断装置10を上下反転して支持する。そして、架台100のU字形状の部分で柱を挟むように配置する。この状態で、無端帯刃251を駆動させながら、切断部200を矢印のように移動させることにより、破線で示すように柱の下部を切断することができる。
【0025】
柱の上下は、いずれから切断してもよい。また、一方を切断した後は、切断した部分に、くさびを打ち込むなどして柱を固定した上で他端を切断することが好ましい。
図2では、フォークリフトを利用して切断装置10を支持する例を示したが、切断装置10は、フォークリフトに限らずショベルカーその他の重機を利用して支持してもよいし、切断装置10に専用の台車、支持台などを用いて支持してもよい。
このように、本実施例の切断装置10は、上下反転させても稼働可能に構成されているため、切断装置10が邪魔にならず、柱の上下端を切断することが可能となる利点がある。
以下、切断装置10の構造について説明する。
【0026】
図3は、切断装置の側面図である。架台100では、鉄製の本体110の上面にレール120がほぼ全長にわたって設置されている。寸法は任意に設計可能であるが、本実施例では、全長(図の左右方向の長さ)が約4m程度である。
本体110は、重量軽減のため、図示するとおり、矩形状に切り抜かれている。レール120は、その上を切断部200が移動するためのものである。本実施例の切断装置は、
図2で説明した通り、上下反転した状態でも使用されるため、レール120は、切断部200を移動させられるよう懸吊対応のものを使用している。
【0027】
切断部200は、支持部210R、210Lによって駆動機構250R、250Lを傾斜させて支持した構造となっている。支持部、駆動機構が2つあるのは、架台100が平面視でU字形状をなしており、本体110の直延する部分が2本あるからである。
駆動機構250R、250Lの傾斜角a1は、任意に決めることができる。本実施例では、30度とした。このように傾斜が設けられている理由については後述する。
【0028】
切断部200の下面には、レール120に係合するベアリング220が複数取り付けられている。ベアリング220の作用により、切断部200は、レール120上を、矢印Fおよびその逆方向に前後進することができる。
【0029】
図4は、切断装置の平面図である。架台100は、左右の直延する本体110R、110Lと、両者を連結する本体110Cによって平面視で略U字形状(図の例では逆U字形状となっている)をなしている。図中では、切断部200と区別しやすいよう本体110Cにハッチングを施した。本体110Cは、重量軽減のため、部分的に矩形条に切り抜かれている。
本体110R、110L、110Cの寸法は、切断対象となる柱(図中ではクロスハッチで示した)のサイズに応じて任意に設計可能である。図中に示すように、若干、余裕を持った状態で柱を挟み込める程度の寸法としておくことが好ましい。本体110R、110Lの間隔が狭い場合には、柱を挟むことができなくなる。また、本体110R、110Lの間隔が広すぎる場合には、両者間に張られた無端帯刃251が垂れ下がり、良好に切断しづらくなることがある。
左右の本体110R、110Lの上には、レール120R、120Lが平行に設置されている。切断部200は、このレール120R、120L上を移動することができる。
【0030】
切断部200の駆動機構250は、左右に直延する駆動機構250R、250Lおよび両者を連結する駆動機構250Cによって平面視で略U字形状(図の例では逆U字形状となっている)をなしている。駆動機構250R、250Lは、それぞれレール120R、120L上を移動する。
駆動機構内には、図中に破線で示すようにプーリーが備え付けられており、無端帯刃251が搬送されている。無端帯刃251は、駆動機構250R、250Lの間で聴力によって直線状態に張られた状態で露出しており、柱を切断することができる。
【0031】
実施例では、駆動機構250は、レール120R、120Lに対してヨー角a2を持たせて設置されている。この結果、本体110R、110Lを柱の側面に平行に配置したとき、無端帯刃251は、柱の面に対して斜めに当たるようになり、切断時に無端帯刃251に過剰な負荷がかかることを回避できる。
ヨー角a2の大きさは、無端帯刃251にかかる荷重を考慮して、任意に設計することができる。
【0032】
図5は、切断装置の正面図である。
図3、3で説明した通り、架台は、本体110R、110L、110Cによって構成され、本体110R、110Lの上にレール120R、120Lが設置されている。また、本体110R、110Lの下側には、フォークリフトのフォークを挿入して固定するための挿入部111R、111Lが設けられている。
【0033】
切断部は、支持部210R、210Lによって駆動機構250R、250Lおよび250Cが支持されている。駆動機構250R、250Lの先端には、無端帯刃251が張力によって直線状に張られた状態で露出している。
【0034】
図6は、切断部の構成を示す説明図である。
図6(a)に正面図、
図6(b)に側面図を示した。
無端帯刃251は、切断部の駆動機構250R、250L、250Cの内部に取り付けられた駆動プーリー260、プーリー262、テンションプーリー264、プーリー266で形成される搬送経路を搬送される。駆動プーリー260には、
図6(b)に示すようにモータ270が取り付けられている。モータ270の動力によって駆動プーリー260を回転させることにより、無端帯刃251を駆動させることができる。
テンションプーリー264は、これらのプーリーから脱落しないように無端帯刃251に十分なテンションを付加できるよう、その位置を調整することができる。
【0035】
無端帯刃251は、プーリーの外周面に沿って刃が下側を向いた状態で搬送されているが、駆動機構250R、250Lの間で外部に露出している部分では、ガイド268によって捻られ、水平方向を向く。こうすることで、刃が前方を向き、柱を切断することができる。仮に駆動機構が水平に設置されている場合には、ガイド268は、刃を鉛直下向きから水平に至るまで90度捻る必要が生じることになり、無端帯刃251に大きな負荷を与えることとなる。これに対し、本実施例では、駆動機構は30度傾斜して設置されているため、無端帯刃251を水平にするためには、60度捻れば足りる。このように駆動機構を傾斜して設置することにより、無端帯刃251のねじれ角度を小さく抑えることができ、その負荷を軽減することができる。
駆動機構の傾斜角度は、30度に限らず、種々の設定が可能である。
【0036】
図7は、切断部の駆動機構を示す説明図である。
図6(b)の矢印V方向に見た状態を示した。
図6でも説明した通り、駆動機構には、駆動プーリー260、プーリー262、テンションプーリー264、プーリー266が取り付けられている。無端帯刃251は、矢印d1~d4の方向に搬送される。テンションプーリー264は、矢印T方向に位置を調整することができる。これによる効果は次の通りである。まず、無端帯刃251がプーリーから脱落したり、駆動プーリー260で滑りを生じないよう適度なテンションを与えることができる。また、無端帯刃251は一定とは限らないので、その長さの変動に応じたテンションの調整ができる。併せて、無端帯刃251の柱に当たる部分のたわみを抑えることにより、切断の精度向上を図ることができる。
テンションプーリー264は、事前にテンションを調整した上で、固定しておいてもよいし、動作中に適切なテンションが付与されるようテンションプーリー264を与圧または付勢しておいてもよい。
【0037】
プーリー266から駆動プーリー260を経てプーリー262に至る搬送方向d1、d2がなす角度a3は鋭角である。つまり、プーリー266と駆動プーリー260の中心を結ぶ線分、および駆動プーリー260とプーリー262の中心を結ぶ線分のなす角度a3が鋭角となるようこれらのプーリーが配置されている。こうすることにより、無端帯刃251は、駆動プーリー260の外周面に90度以上にわたって搬送させることとなり、駆動力を効率的に受けることができる。角度a3は、駆動力の伝達を考慮しながら任意に設計可能である。
【0038】
図8は、プーリーの調整機構を示す説明図である。無端帯刃251の搬送経路は、
図7で示した4つのプーリーによって決まるため、これらのプーリーが同一平面内に位置し、しかもその回転軸が当該平面の法線に一致している必要がある。プーリーが同一平面内に存在しない場合や、その回転軸が傾いている場合には、無端帯刃251がプーリーから脱落するおそれがあるからである。
【0039】
こうした配置を実現するため、本実施例のプーリーは、高さおよび傾きを調整可能な機構を備えている。
図8に示す通り、プーリー264は、ベアリングを介して回転軸264aに取り付けられている。回転軸264aは雄ネジ、台座264bは雌ネジとなっており、そのねじ込み量によって矢印Uに示すようにプーリー264の高さを調整することができる。ねじ込み量は、動作中にプーリー264の高さが変動しないよう、ロックナット264eで固定される。台座264bは、ボルト264d、264cで固定されている。ボルト264dの締め具合を変えれば矢印Rで示すようにプーリー264の傾きを調整することができる。
図8では、プーリー264を例示したが、他のプーリーにも同様の調整機構を備えることができる。もっとも、調整機構は、必ずしも全てのプーリーに備える必要はなく一部に備えるものとしても良い。また、高さおよび傾きの調整機構は、
図8に示した機構に限らず、種々の構成を適用可能である。
【0040】
図9は、ベアリングの取付部の構成を示す説明図である。切断部の支持部210の下面に取り付けられたベアリング220について、その構造を示した。
既に説明した通り、架台の本体110上にはレール120が取り付けられている。レール120を固定するのはボルト121である。レール120およびベアリング220は、懸吊対応のものを利用しているため、図示するように上下反転させても脱落しない断面形状となっている。以下、説明の便宜上、レール120に交差する方向をx方向と呼び、上方向をz方向と呼ぶ。
【0041】
ベアリング220は、ボルト221によって支持部210の下面に固定される。ボルト221が貫通する孔は、若干の遊びを設けてあり、これによってベアリング220のx方向の位置を調整可能としてある。こうすることにより、複数のベアリング220の位置を調整して、切断部が円滑にレール120を移動できるようにすることができる。
【0042】
仮に、
図9に示すようにレール120の上に切断部が載った状態、またはこれを上下反転させた状態のいずれかのみで使用されるのであれば、ボルト221による固定だけでも支障は生じない。しかし、本実施例では、
図2(a)、(b)で示したように、柱の上下端を切断するため、途中で切断装置を上下反転させる必要がある。この反転過程では、切断装置が横転した状態が生じるため、かかる横転状態でも、切断部がレール120から脱落しないよう取り付ける必要がある。
図9は、そのための構造を示している。
【0043】
図示するように、ベアリング220の両側には、押圧ブロック230がボルトによって取り付けられている。ボルト231の貫通孔も若干の遊びがあり、押圧ブロック230はx方向に移動可能である。そして、押圧ブロック230の両外側には、ボルト締結用の孔を有し、ボルトを保持するための保持ブロック215が、ボルト216によって支持部210の下面に仮固定された後、溶接されることによって、x方向に移動しないよう強固に固定されている。
そして、保持ブロック215には、押圧ボルト217が取り付けられており、その締め付けによって、押圧ブロック230をベアリング220の側に押すことができる。
かかる構造により、ベアリング220の位置をx方向に調整可能にするとともに、調整後は、押圧ボルト217によってx方向に移動しないよう強固に固定することができる。従って、上下反転の過程で切断装置が横転した状態でも、ベアリング220がx方向にずれたり、レール120から脱落したりすることを回避することができる。
なお、
図9に示した構造において、押圧ブロック230は、ベアリング220の両端部に確実に押圧力を作用させるために設けられたものであり、押圧ボルト217をベアリング220の両端部に確実に押圧するような位置に取り付けられるのであれば、押圧ブロック230を省略してもよい。
【0044】
実施例の切断装置は、上下反転させて使用するため、反転過程も含めて各部位に種々の方向から荷重がかかり得る。従って、こうした荷重によって各部位の締結状態にずれなどが生じないよう、各部位は強固に締結されることが望ましい。そこで、実施例の切断装置は、そのため、以下に示すワッシャを用いた締結機構を用いている。
【0045】
図10は、ワッシャの構造を示す説明図である。部材1、部材2をボルトで締結する状態を示した。本実施例では、部材1にあけたネジ孔の開口部に、図示するようにテーパ面を形成している。
また、図の右側には、締結に利用するワッシャの側面図を示した(内部に形成された孔等を表す破線は省略してある)。ワッシャは、中央に貫通孔を設けた環状部と、同じく中央に貫通孔を設けたテーパ凸部とを有している。
締結する際には、テーパ凸部を下側にして、ボルトを締め付ける。こうすることにより、テーパ凸部が、ネジ孔のテーパ面にはまり込むため、ネジ孔にずれや遊びが存在する場合でも、部材1、部材2を強固に締結することができる。
なお、
図10の構造は、必ずしも全ての締結部に用いる必要はなく、一部の締結部のみに適用しても差し支えない。
【0046】
以上で説明した実施例の切断装置によれば、切断装置を上下反転して稼働させることができ、これによって無端帯刃251を用いて柱の上下端を支障なく切断することができる。
実施例で説明した種々の特徴は、必ずしも全てを備えている必要はなく、適宜、その一部を省略したり組み合わせたりしてもよい。
また、本発明は、実施例で示した種々の構造に限定されるものではなく、その趣旨を変えない範囲で、種々の変形例をとることが可能である。実施例では、建築物の柱の上下を切断する例を示したが、本発明は、建築物や足場などの梁、筋交いなど両端で支持された種々の構造体の切断用の装置として構成することもできる。
【産業上の利用可能性】
【0047】
本発明は、両端が支持された構造体を切断するために利用することができる。
【符号の説明】
【0048】
10 切断装置
100 架台
110、110R、110L、110C 本体
111R、111L 挿入部
120、120R、120L レール
121 ボルト
200 切断部
210、210R、210L 支持部
215 保持ブロック
216 ボルト
217 押圧ボルト
220 ベアリング
221 ボルト
230 押圧ブロック
231 ボルト
250、250C、250R、250L 駆動機構
251 無端帯刃
260 駆動プーリー
262 プーリー
262a 回転軸
262b 台座
262c、262d ボルト
264 テンションプーリー
266 プーリー
268 ガイド
270 モータ