(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022114234
(43)【公開日】2022-08-05
(54)【発明の名称】ヒンジ装置
(51)【国際特許分類】
E05D 3/16 20060101AFI20220729BHJP
F16C 11/04 20060101ALI20220729BHJP
E05D 3/18 20060101ALI20220729BHJP
E06B 7/36 20060101ALI20220729BHJP
【FI】
E05D3/16
F16C11/04 F
F16C11/04 N
E05D3/18 B
E06B7/36 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021010444
(22)【出願日】2021-01-26
(71)【出願人】
【識別番号】000107572
【氏名又は名称】スガツネ工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100085556
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 昇
(74)【代理人】
【識別番号】100115211
【弁理士】
【氏名又は名称】原田 三十義
(74)【代理人】
【識別番号】100153800
【弁理士】
【氏名又は名称】青野 哲巳
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 学
【テーマコード(参考)】
3J105
【Fターム(参考)】
3J105AA05
3J105AB02
3J105AB50
3J105AC01
(57)【要約】
【課題】 閉じ状態でリンク機構を収めるための収容部を有するヒンジ装置において、閉じる際に指が挟まれるのを防止する。
【解決手段】 ヒンジ装置1は、第1ヒンジ本体10と第2ヒンジ本体20とリンク機構30を備えている。第1、第2ヒンジ本体10,20は収容部11,21を有している。リンク機構30の両端部が収容部11,21に回転可能に連結されている。ヒンジ装置の前記開き状態では、リンク機構30の両端部が、収容部11,21の内部空間において、互いに接近する側に偏って配置され、これにより、収容部11,21の内部空間に空きスペースS,S’が形成されている。これら空きスペースS,S’に、弾性装填部材40,40’がそれぞれ装填されている。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一方の取付対象に取り付けられるヒンジ本体と、一端部が前記ヒンジ本体に回転可能に連結され他端部が他方の取付対象に連結されるリンク機構とを備えたヒンジ装置において、
前記ヒンジ本体は収容部を有し、前記リンク機構の一端部が前記収容部の内部空間に回転可能に連結され、ヒンジ装置の開き状態では前記収容部の内部空間に空きスペースが形成され、
前記空きスペースは、ヒンジ装置が前記開き状態から閉じ状態に移行する過程で前記リンク機構を受け入れることにより狭まるようになっており、
前記空きスペースには弾性装填部材が装填され、前記弾性装填部材は、ヒンジ装置が前記開き状態から前記閉じ状態に移行する過程で前記リンク機構に押されて圧縮され、前記閉じ状態から前記開き状態に移行する過程で元の形状に弾性復帰することを特徴とするヒンジ装置。
【請求項2】
前記ヒンジ本体が第1ヒンジ本体であり、さらに前記他方の取付対象に取り付けられる第2ヒンジ本体を備え、前記第2ヒンジ本体も収容部を有し、前記第2ヒンジ本体の前記収容部に前記リンク機構の他端部が回転可能に連結され、
前記リンク機構の両端部が、前記第1、第2ヒンジ本体の前記収容部の内部空間に配置され、ヒンジ装置の前記開き状態では、前記第1、第2ヒンジ本体の前記収容部の内部空間に空きスペースが形成され、
前記第1、第2ヒンジ本体の空きスペースは、ヒンジ装置が前記開き状態から前記閉じ状態に移行する過程で、前記リンク機構を受け入れることにより狭まるようになっており、
前記第1、第2ヒンジ本体のそれぞれの前記空きスペースに、前記弾性装填部材が装填されていることを特徴とする請求項1に記載のヒンジ装置。
【請求項3】
前記弾性装填部材が樹脂製の薄板を折り曲げることにより形成されていることを特徴とする請求項1または2に記載のヒンジ装置。
【請求項4】
前記弾性装填部材が、パンタグラフ形状を有していることを特徴とする請求項3に記載のヒンジ装置。
【請求項5】
前記弾性装填部材は長尺の薄板からなり、前記薄板には長手方向に沿って間隔をおいて長手方向と直交する直線に沿う複数の折曲部が形成され、前記折曲部により画成された領域同士を交差させることによって、上記パンタグラフ形状をなすことを特徴とする請求項4に記載のヒンジ装置。
【請求項6】
前記弾性装填部材が波形形状を有していることを特徴とする請求項3に記載のヒンジ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、収容部を有するヒンジ本体と、このヒンジ本体に回転可能に連結されたリンク機構とを備え、閉じ状態でリンク機構の主要部を収容部に収容することができるヒンジ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に開示されたヒンジ装置は、ドア枠に設けた第1ヒンジ本体と、ドアに設けた第2ヒンジ本体と、これら第1、第2ヒンジ本体を相対回転可能に連結するリンク機構とを備えている。第1、第2ヒンジ本体はそれぞれ収容部を有している。リンク機構の一端部は第1ヒンジ本体の収容部内において回転可能に連結され、他端部は第2ヒンジ本体の収容部内において回転可能に連結されている。
【0003】
ヒンジ装置が開き状態にある時に、収容部の開口は開放されており、リンク機構は第1、第2ヒンジ本体の収容部間にわたり大きく露出している。
ヒンジ装置が閉じ状態にある時、第1、第2ヒンジ本体は互いに接近して対向した位置にあり、両収容部の開口が互いのヒンジ本体によってほぼ覆われている。この閉じ状態において、リンク機構が両収容部内に収容されており、外部からほぼ隠されているため外観を向上させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1のヒンジ装置では、開き状態では収容部内に空きスペースが存在している。ヒンジ装置が開き状態から閉じ状態に移行する過程で、空きスペースはリンク機構を受け入れて狭まるため、不用意に指を入れると挟まれる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決するため、本発明は、一方の取付対象に取り付けられるヒンジ本体と、一端部が前記ヒンジ本体に回転可能に連結され他端部が他方の取付対象に連結されるリンク機構とを備えたヒンジ装置において、
前記ヒンジ本体は収容部を有し、前記リンク機構の一端部が前記収容部の内部空間に回転可能に連結され、ヒンジ装置の開き状態では前記収容部の内部空間に空きスペースが形成され、前記空きスペースは、ヒンジ装置が前記開き状態から閉じ状態に移行する過程で前記リンク機構を受け入れることにより狭まるようになっており、前記空きスペースには弾性装填部材が装填され、前記弾性装填部材は、ヒンジ装置が前記開き状態から前記閉じ状態に移行する過程で前記リンク機構に押されて圧縮され、前記閉じ状態から前記開き状態に移行する過程で元の形状に弾性復帰することを特徴とする。
【0007】
上記構成によれば、空きスペースに弾性装填部材を装填することにより指の侵入を禁じることができるので、ヒンジ装置が開き状態から閉じ状態に移行する過程で空きスペースが狭まっても、指挟みが発生するのを防止することができる。
【0008】
より具体的な態様の一つでは、前記ヒンジ本体が第1ヒンジ本体であり、さらに前記他方の取付対象に取り付けられる第2ヒンジ本体を備え、前記第2ヒンジ本体も収容部を有し、前記第2ヒンジ本体の前記収容部に前記リンク機構の他端部が回転可能に連結され、前記リンク機構の両端部が、前記第1、第2ヒンジ本体の前記収容部の内部空間に配置され、ヒンジ装置の前記開き状態では、前記第1、第2ヒンジ本体の前記収容部の内部空間に空きスペースが形成され、前記第1、第2ヒンジ本体の空きスペースは、ヒンジ装置が前記開き状態から前記閉じ状態に移行する過程で、前記リンク機構を受け入れることにより狭まるようになっており、前記第1、第2ヒンジ本体のそれぞれの前記空きスペースに、前記弾性装填部材が装填されている。
【0009】
好ましくは、前記弾性装填部材が樹脂製の薄板を折り曲げることにより形成されている。
上記構成によれば、弾性装填部材を低コストで作製することができる。
【0010】
好ましくは、前記弾性装填部材が、パンタグラフ形状を有している。この構成によれば、弾性装填部材が複数の小空間を有していて空きスペースを分割するので、指の侵入をより一層確実に禁じることができる。
より好ましくは、前記弾性装填部材は長尺の薄板からなり、前記薄板には長手方向に沿って間隔をおいて長手方向と直交する直線に沿う複数の折曲部が形成され、前記折曲部により画成された領域同士を交差させることによって、上記パンタグラフ形状をなす。
この構成によれば、パンタグラフ形状を簡単に作製することができる。
【0011】
前記弾性装填部材は波形形状を有していてもよい。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、閉じ状態でリンク機構を収めるための収容部を有するヒンジ装置において、閉じる際に指が挟まれるのを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の第1実施形態に係るヒンジ装置を、ドア枠およびドアとともに示す斜視図であり、180°開いた状態で示す。
【
図2】同ヒンジ装置の正面図であり、180°開いた状態で示す。
【
図4】同ヒンジ装置を90°開いた状態で示す
図3相当図である。
【
図5】同ヒンジ装置を閉じた状態で示す
図3相当図である。
【
図7】(A)同ヒンジ装置で用いられる弾性装填部材の完成間近の状態を示す斜視図、(B)は完成された弾性装填部材の斜視図、(C)は背面図、(D)は側面図である。
【
図8】同弾性装填部材用のブランクを示す図である。
【
図9】本発明の第2実施形態のヒンジ装置で用いられる弾性装填部材の斜視図である。
【
図10】同第2実施形態のヒンジ装置を、180°開いた状態で示す断面図である。
【
図11】本発明の第3実施形態に係るヒンジ装置を示す平断面図であり、(A)は180°開いた状態を示し、(B)は閉じた状態を示す。
【
図12】本発明の第4実施形態に係るヒンジ装置を示す平断面図であり、(A)は125°開いた状態を示し、(B)は閉じた状態を示す。
【
図13】本発明の第5実施形態に係るヒンジ装置を示す平断面図であり、(A)は125°開いた状態を示し、(B)は閉じた状態を示す。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の第1実施形態を、
図1~
図9を参照しながら説明する。
図1~
図3にように、本実施形態のヒンジ装置1は、ドア枠2(一方の取付対象)にドア3(他方の取付対象)を回転可能に支持するために用いられ、ドア3の回転軸線に沿って複数配置されている。
ドア3はドア枠2により画成されたドア開口2aを開閉する。本実施形態では、ドア3は閉じ位置から最大180°回転した位置まで開くことができる。
【0015】
ヒンジ装置1は、ドア枠2の縦枠部2bの内側面に取り付けられた第1ヒンジ本体10と、ドア3の縁面に取り付けられた第2ヒンジ本体20と、これらヒンジ本体10,20を相対回動可能に連結するリンク機構30と、を基本構成として備えている。
【0016】
図6を参照しながら、各構成要素について説明する。
図6において垂直方向をZ方向、ドア枠2が配置される面と直交する水平方向をY方向、ドア枠2の左右方向をX方向と定義する。
第1ヒンジ本体10は、縦長の収容部11と、収容部11の上下端から上下方向に延び出た取付フランジ12とを有している。収容部11を縦枠部2bに形成された穴2c(
図3参照)に嵌め込み、取付フランジ12を縦枠部2bの内側面にネジ(図示しない)で固定することにより、第1ヒンジ本体10が縦枠部2bに取り付けられている。この取付状態で、収容部11の内部空間は縦枠部2bの内側面に開口しており、この開口はドア開口2aに臨んでいる。
【0017】
第1ヒンジ本体10には、収容部11に収容された軸支構造15を介してリンク機構30の一端部が連結されている。この軸支構造15は、第1ヒンジ本体10の収容部11の底壁にZ方向の位置調節可能にしてネジ16aで固定された第1部材16と、この第1部材16の上下端部のそれぞれにY方向の位置調節可能にしてネジ17aで固定された第2部材17とを有している。上下の第2部材17にはZ方向に延びる軸受穴17xが形成されている。
取付フランジ12の固定ネジや軸支構造15の固定ネジ16a,17aは、取付フランジ12に取り付けられたカバー板13により覆われている。
【0018】
第2ヒンジ本体20も第1ヒンジ本体10と同様に、縦長の収容部21と、収容部21の上下端から上下方向に延び出た取付フランジ22とを有している。収容部21をドア3の縁面に形成された穴3c(
図3参照)に嵌め込み、取付フランジ22をドア3の縁面にネジ(図示しない)で固定することにより、第2ヒンジ本体20がドア3に取り付けられる。この取付状態で、収容部21の内部空間は、ドア3の縁面において開口している。
【0019】
第2ヒンジ本体20には、収容部21に収容された軸支部材25(軸支構造)を介してリンク機構30の他端部が連結されている。この軸支部材25は、第2ヒンジ本体20の収容部21の底壁にこの底壁と直交する方向(ドア3が閉じ位置または180°の開き位置にある時のX方向)に位置調節可能にしてネジ25aで固定されている。軸支部材25の上下端部にはZ方向に延びる軸受穴25xが形成されている。
取付フランジ22の固定ネジや軸支部材25の固定ネジ25aは、取付フランジ22に取り付けられたカバー板23により覆われている。
【0020】
上記の軸支構造15および軸支部材25の位置調節により、ドア3はドア枠2に対してX,Y,Z方向の三次元で位置調節された状態でドア枠2に取り付けられるが、この機能は公知であるので詳述しない。
【0021】
図1~
図3に示すようにドア3が180°開いた状態では、ヒンジ本体10,20の収容部11,21の開口が同方向を向いてドア開口2aに臨み外部に開放されている。この時のヒンジ装置1の状態をドア3と同様に180°開き状態と定義する。
図4に示すようにドア3が90°開いた状態では、第2ヒンジ本体20の収容部21の開口はドア枠2が配置される面と直交する方向、すなわち第1ヒンジ本体10の収容部11の開口の向きと直交する方向を向いている。収容部11,21の開口はまだ外部に開放された状態にある。この時のヒンジ装置1の状態をドア3と同様に90°開き状態と定義する。
【0022】
図5に示すようにドア3が閉じた状態では、ヒンジ本体10,20が近接して対向した位置にあり、第1ヒンジ本体10の収容部11の開口が第2ヒンジ本体20で覆われ、第2ヒンジ本体20の収容部21の開口が第1ヒンジ本体10で覆われる。この時のヒンジ装置1の状態をドア3と同様に閉じ状態と定義する。
ヒンジ装置1が90°の開き状態から閉じ状態に向かう過程では、ヒンジ本体10,20は、互いの収容部11,21を徐々に覆う。
【0023】
本実施形態のリンク機構30は、2つの短リンク31,33と、2つの長リンク32,34と、7つの回転軸を有している。以下、詳述する。
第1ヒンジ本体10には、短リンク31と長リンク32の基端部(リンク機構30の一端部)が、軸支構造15の軸受穴17xに挿入された2本の回転軸35により、それぞれ回転可能に連結されている。短リンク31の基端部は収容部11の奥側(底側)、長リンク32の基端部は収容部11の開口側にそれぞれ配置されている。
【0024】
第2ヒンジ本体20には、短リンク33と長リンク34の基端部(リンク機構30の他端部)が、軸支部材25の軸受穴25xに挿入された2本の回転軸36により、それぞれ回転可能に連結されている。短リンク33の基端部は収容部21の奥側(底側)、長リンク34の基端部は収容部21の開口側にそれぞれ配置されている。
【0025】
第1ヒンジ本体10側の短リンク31の先端部と第2ヒンジ本体20側の長リンク34の先端部が回転軸37により回転可能に連結され、第1ヒンジ本体10側の長リンク32の先端部と第2ヒンジ本体20側の短リンク33の先端部が回転軸38により回転可能に連結されている。さらに長リンク32,34の中間部が回転軸39により回転可能に連結されている。
本実施形態では、長リンク32が2本配置され、その間に長リンク34が配置されている。
【0026】
短リンク31と長リンク32の基端部は、収容部11の内部空間において偏った位置に配置されており、収容部11の一方の側壁11a(ヒンジ装置1が
図3の開き状態にある時に、第2ヒンジ本体20に近い側壁11a)に、近接している。同様に、短リンク33と長リンク34の基端部は、収容部21の内部空間において偏った位置にあり、収容部21の一方の側壁21a(ヒンジ装置1が
図3の開き状態にある時に、第1ヒンジ本体10に近い側壁21a)に近接している。
【0027】
図3に示す180°開き状態では、ヒンジ本体10,20の収容部11,21の開口は同方向を向き、外部に大きく開放されており、リンク機構30の短リンク31,33は側壁11a,21aに沿う姿勢で収容部11,21にほぼ収まっているが、長リンク32,34は収容部11,21間に掛け渡されて露出している。この状態で、第1ヒンジ本体10の収容部11の内部空間には、短リンク31と収容部11の側壁11b(第2ヒンジ本体20から遠い方の側壁11b)との間に、広い空きスペースSが存在している。同様に第2ヒンジ本体20の収容部21の内部空間にも、短リンク33と収容部21の側壁21b(第1ヒンジ本体10から遠い方の側壁21b)との間に、広い空きスペースS’が形成されている。
【0028】
図4に示す90°開き状態でも、長リンク32,34は露出しているが、短リンク31が収容部11の側壁11aから離れる方向に傾き、短リンク31と長リンク34の連結部が側壁11bに近づくため、空きスペースSが狭まる。同様に、短リンク33が収容部21の側壁21aから離れる方向に傾き、短リンク33と長リンク32の連結部が側壁21bに近づくため、スペースS’が狭まる。
【0029】
図5に示す閉じ状態では、短リンク31,33がさらに倒れて、それぞれ収容部11,21の底壁に接近し、長リンク32,34が収容部11,21内に収容される。そのため、リンク機構30は外部から殆ど見えず、外観を向上させることができる。
上記閉じ状態では、短リンク31と長リンク34の連結部が収容部11の側壁11bに近接した位置にあるため、この連結部と側壁11bとの間の空きスペースSが僅かとなる。同様に短リンク33と長リンク32の連結部が収容部20の側壁21bに接近した位置にあるため、この連結部との側壁21bとの間の空きスペースS’が僅かとなる。
【0030】
上記説明から明らかなように、ドア3を開き状態から閉じ方向に回すと、ヒンジ本体10,20の収容部11,21の空きスペースS、S’は徐々に狭まる。そのため、ドア3の閉じ動作の過程でこの空きスペースS、S’に誤って指を入れるとリンク機構30と収容部11、21の側壁11b、21bとの間で挟まれる。
【0031】
本実施形態では、上記スペースS,S’にそれぞれ弾性装填部材40,40’を装填することにより、指挟みを防止している。以下、詳述する。
弾性装填部材40は、
図8に示す長尺の樹脂製の薄板からなるブランク40Aにより作製される。ブランク40Aは、その長手方向と直交する折り曲げ予定線41で区切られた多数の領域を有している。中央の領域に符号R0を付し、その左右両隣から両端に向かって順に配置された領域にそれぞれR1,R2,R3,R4を付す。領域R0~R3はほぼ等しい幅を有し、領域R4の幅はそれ以下でもよい。
【0032】
領域R1~R4には折り曲げ予定線41から等距離離れた位置に折り曲げ予定線41と平行をなすスリット42が形成されている。左右の対称位置にある領域同士、すなわち領域R1同士、領域R2同士、領域R3同士、領域R4同士では、互いに異なる側縁からスリット42が延びている。
【0033】
上記ブランク40Aから次のようにして弾性装填部材40が作製される。
折り曲げ予定線41において交互に逆向きの折り曲げを繰り返す。例えば
図8の紙面より手前から見た時に、領域R0、R1を区切る折り曲げ予定線41と領域R2,R3を区切る折り曲げ予定線41で山折りに折り曲げ、領域R1,R2を区切る折り曲げ予定線41と領域R3,R4を区切る折り曲げ予定線41で谷折りに折り曲げる。
【0034】
次に、左右の対称位置にある領域R1~R4同士を、スリット42同士を噛み合わせるようにして交差させることにより、
図7(A)に示す弾性装填部材40Bが得られる。ブランク40Aの折り曲げ予定線41で折り曲げられた部位は、弾性装填部材40Bにおいて外から見て山折りの折曲部45となっている。弾性装填部材40Bは、扁平な三角形または菱形をなす複数の小空間46を有している。
上記のようにして作成された弾性装填部材40Bは、パンタグラフ形状をなし、弾性的に伸縮可能である。伸縮方向の一端側に領域R0(ブランク40Aの中央の領域)が配置され、他端側に領域R4(ブランク40Aの両端部の領域)が配置される。
【0035】
最後に
図7(A)に示す弾性装填部材40Bの2つの領域R4の重なり部を接着することによって1枚の薄板部にして、
図7(B)に示す弾性装填部材40を得る。弾性装填部材40には、収容部11に収容された軸支構造15を逃がすための切欠48が形成されている。
本実施形態では
図7(B)に示す弾性装填部材40を用いるが、
図7(A)に示す弾性装填部材40Bをそのまま完成品として用いてもよい。
上述したように、弾性充填部材40,40Bは、樹脂製の薄板により安価に作製することができる。
【0036】
上記弾性装填部材40は、弾性伸縮方向の一方の端の領域R0または領域R4を収容部11の側壁11bに接着した状態で、空きスペースSに装填されている。この装填状態で、弾性装填部材40を構成する領域RO~R4の薄板部は、収容部11の底壁と直交しており(収容部11の奥行方向と平行をなしており)、小空間46の一方の開口が収容部11の開口側に配置されている。
【0037】
弾性装填部材40’も同様にして作製されており、対応する構成部には同番号を付してその詳細な説明を省略する。弾性装填部材40’も、収容部21の側壁21bに接着された状態で空きスペースS’に装填されている。
弾性装填部材40,40’は、180°の開き状態において圧縮変形された状態で空きスペースS,S’に装填するのが好ましい。
【0038】
上述したように、第1、第2ヒンジ本体10,20の収容部11,21の空きスペースS,S’に弾性装填部材40,40’がそれぞれ装填されているので、ドア3の開き状態において、スペースS,S’に指が入り込む余地を無くすことができる。その結果、ドア3を閉じる過程でスペースS,S’が徐々に狭まっても指が挟まれるのを防止することができる。
【0039】
本実施形態では、弾性装填部材40,40’がパンタグラフ形状をなして複数の小空間46を有していて空きスペースS,S’を分割していること、および弾性装填部材40,40’の薄板部が収容部11の奥行方向と平行をなしているため指からの力を受けても変形しがたいことにより、指の侵入をより一層確実に禁じることができる。
【0040】
ドア3が閉じる過程でスペースS,S’が狭まると、弾性装填部材40はリンク機構30の短リンク31と長リンク34の連結部により押されて圧縮され、弾性装填部材40’はリンク機構30の短リンク33と長リンク32の連結部により押されて圧縮される。ドア3が再び開く過程でスペースS,S’が広まると、弾性装填部材40,40’は弾性復帰して元の形状に戻る。
【0041】
図9、
図10に示す第2実施形態は、第1実施形態と同様の基本構成を有するヒンジ装置が用いられており、各構成要素に同番号を付してその詳細な説明を省略する。本実施形態では、樹脂製の薄板を波形状に折り曲げることにより、弾性装填部材140,140’が形成されている。この弾性装填部材140,140’は、一端側の平坦な薄板部が収容部11,21の側壁11b、21bに接着された状態で収容部11,21の空きスペースS,S’に装填されている。弾性装填部材140,140’により指挟みを防止する点、ヒンジ装置1が開き状態から閉じ状態に移行する過程で弾性装填部材140,140’がリンク機構30により押されて圧縮される点、閉じ状態から開き状態に移行する過程で元の形状に弾性復帰する点は、第1実施形態の弾性装填部材40,40’と同様である。
【0042】
図11に示す第3実施形態のヒンジ装置は、第1、第2実施形態と同様に、ドア枠2に取り付けられた第1ヒンジ本体110と、ドア3に取り付けられた第2ヒンジ本体120と、リンク機構130とを備えている。ヒンジ本体110,120はそれぞれ収容部111,121を有している。収容部111,121には軸支部材115,125がそれぞれ収容固定されており、軸支部材115,125の上下端部には、ガイド溝115a,125aが形成されている。
【0043】
リンク機構130は、2本の長いリンク131,132と、5つの回転軸を有している。一方のリンク131の一端は軸支部材115に回転軸135を介して回転可能に連結され、他端は回転軸136を介して軸支部材125のガイド溝125aにスライド可能かつ回転可能に支持されている。他方のリンク132の一端は回転軸137を介して軸支部材125に回転可能に連結され、他端は回転軸138を介して軸支部材115のガイド溝115aにスライド可能かつ回転可能に支持されている。リンク131,132同士は、中間部において回転軸139を介して互いに回転可能に連結されている。
【0044】
形成された収容部11,21の空きスペースS,S’には、弾性装填部材が装填されている。この弾性装填部材は、軸支部材115,125を逃がすための切欠形状が異なるが、第1実施形態の弾性装填部材40,40’と同様の形状を有しているので、同番号を付してその詳細な説明を省略する。
【0045】
第3実施形態でも第1実施形態と同様に、
図11(A)に示すドア3の開き状態(ヒンジ装置の開き状態)で、弾性装填部材40,40’により空きスペースS,S’に指が入り込むのを阻止することができる。
図11(B)に示すようにドア3が開き状態から閉じ状態になると、空きスペースS,S’が僅かとなり、弾性装填部材40,40’がリンク131,132に押されて圧縮される。ドア3が閉じ状態から開き状態になると、弾性装填部材40,40’が元の形状に弾性復帰する。
【0046】
図12に示す第4実施形態で用いられるヒンジ装置は、ヒンジ本体210と、リンク機構230とを備えている。ヒンジ本体210は収容部211を有し、例えばドア枠に取り付けられている。
【0047】
リンク機構230は、リンク231,232,233と4つの回転軸を有している。リンク231は、基端部がドアに固定されている。リンク232は、一端が回転軸235を介してヒンジ本体210の収容部211に回転可能に連結され、他端がリンク231の先端部に回転軸236を介して回転可能に連結されている。リンク233は、一端がヒンジ本体210の収容部211に回転軸237を介して回転可能に連結され、他端がリンク231の中間部に回転軸238を介して回転可能に連結されている。
リンク232,233の収容部211への連結部は、
図12(A)の開き状態においてドア側に偏って配置されている。
【0048】
ドアが125°の開き状態(ヒンジ装置の125°の開き状態)において、収容部211の内部空間には空きスペースSが形成されており、この空きスペースSに弾性装填部材40が装填されている。
【0049】
ドアが開き状態から閉じ状態へと移行する過程で、空きスペースSが狭まり、弾性装填部材40がリンク機構230のリンク231に押されて圧縮される。閉じ状態では、リンク機構230の殆どが収容部211内に収容される。ドアが閉じ状態から開き状態に移行する過程で、弾性装填部材40は元の形状に弾性復帰する。
なお、第4実施形態において、ヒンジ本体210をドアに取り付け、リンク231の基端部をドア枠に取り付けてもよい。
【0050】
図13に示す第5実施形態で用いられるヒンジ装置は、ヒンジ本体310と、リンク機構330とを備えている。ヒンジ本体310は収容部311を有し、例えばドア枠に取り付けられている。
リンク機構330は、湾曲形状をなす1つの長い湾曲したリンク331により構成されている。このリンク331は、一端がドアに固定され、他端が回転軸335を介して収容部311に回転可能に連結されている。
【0051】
ドアが125°の開き状態(ヒンジ装置の125°の開き状態)において、収容部311の内部空間には空きスペースSが形成されており、この空きスペースSに弾性装填部材40が装填されている。
【0052】
ドアが開き状態から閉じ状態へと移行する過程で、リンク331がその湾曲部を含めて収容部311に収容され、弾性装填部材40がリンク331の湾曲部に押されて圧縮される。ドアが閉じ状態から開き状態に移行する過程で、弾性装填部材40は元の形状に弾性復帰する。
なお、第5実施形態において、ヒンジ本体310をドアに取り付け、リンク331の一端をドア枠に取り付けてもよい。
【0053】
本発明は、上記実施形態に制約されず、その要旨を逸脱しない範囲において各種の変形例を採用することができる。
弾性装填部材はパンタグラフ形状、波形形状の他に、種々の形状を採用可能である。
ヒンジ装置は、ドア枠にドアを回転可能に連結する他に、2つの取付対象を相対回転可能に連結するために用いることができる。
【産業上の利用可能性】
【0054】
本発明は、閉じ状態でリンク機構を隠すことができるヒンジ装置に適用することができる。
【符号の説明】
【0055】
1 ヒンジ装置
2 ドア枠(一方の取付対象)
3 ドア(他方の取付対象)
10,110 第1ヒンジ本体(ヒンジ本体)
20,120 第2ヒンジ本体(ヒンジ本体)
210,310 ヒンジ本体
11,21,111,121,211,311 収容部
30,130,230,330 リンク機構
40,40B,40’,140,140’ 弾性装填部材
S,S’ 空きスペース