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特開2022-114240クラウンエーテル構造含有ポリイミド
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022114240
(43)【公開日】2022-08-05
(54)【発明の名称】クラウンエーテル構造含有ポリイミド
(51)【国際特許分類】
   C08G 69/26 20060101AFI20220729BHJP
   C08G 73/10 20060101ALI20220729BHJP
   C07D 323/00 20060101ALI20220729BHJP
【FI】
C08G69/26
C08G73/10
C07D323/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021010452
(22)【出願日】2021-01-26
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り (1)公益社団法人 高分子学会、第69回高分子討論会、2020年9月2日、https://main.spsj.or.jp/tohron/69tohron/index.html、https://member.spsj.or.jp/convention/tohron2020/index.php、https://member.spsj.or.jp/convention/tohron2020/index.php?id=PE0109&place_num=1、第69回高分子討論会 高分子学会予稿集69巻2号 (2)2020年度 日本化学会近畿支部北陸地区講演会と研究発表会 実行委員会、2020年度 日本化学会近畿支部北陸地区講演会と研究発表会 講演要旨集、2020年10月30日 (3)第69回高分子学会北陸支部 研究発表会実行委員会、第69回高分子学会北陸支部研究発表会 講演要旨集、2020年11月7日 (4)日本ポリイミド・芳香族系高分子研究会、第28回 日本ポリイミド・芳香族系高分子会議 予稿集、2020年12月4日
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成24年度、国立研究開発法人科学技術振興機構、戦略的創造研究推進事業「バイオスーパーエンジニアリングプラスチックの合成および有機電子材料への展開」委託研究、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(71)【出願人】
【識別番号】304024430
【氏名又は名称】国立大学法人北陸先端科学技術大学院大学
(74)【代理人】
【識別番号】100141472
【弁理士】
【氏名又は名称】赤松 善弘
(72)【発明者】
【氏名】高田 健司
(72)【発明者】
【氏名】森田 裕貴
(72)【発明者】
【氏名】金子 達雄
【テーマコード(参考)】
4C022
4J001
4J043
【Fターム(参考)】
4C022NA04
4J001DA01
4J001DD13
4J001EB14
4J001EB23
4J001EB25
4J001EB44
4J001EE44A
4J001FB03
4J001FC01
4J001GA11
4J001GA13
4J001GB02
4J001JB01
4J001JC01
4J043PA02
4J043PB11
4J043PC065
4J043PC066
4J043QB26
4J043QB31
4J043RA05
4J043RA35
4J043SA06
4J043SA08
4J043SA61
4J043SB01
4J043TA22
4J043TB01
4J043UA021
4J043UA022
4J043UA131
4J043UA231
4J043UA621
4J043UB00
4J043VA021
4J043WA06
4J043WA16
4J043XA16
4J043YA06
4J043ZA60
4J043ZB47
4J043ZB60
(57)【要約】      (修正有)
【課題】金属イオン、アンモニウムイオンなどの陽イオンを捕捉し、各種溶媒に対する溶解性に優れたクラウンエーテル構造含有ポリイミド、該クラウンエーテル構造含有ポリイミドの製造方法、および該クラウンエーテル構造含有ポリイミドの製造中間体として有用なクラウンエーテル構造含有ジアミン化合物を提供する。
【解決手段】式(I)で表わされるクラウンエーテル構造含有ジアミン化合物を用いてクラウンエーテル構造含有ポリイミドを調製する。

【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I):
【化1】
〔式中、R1は置換基を有していてもよい炭素数1~4のアルキレン基であり、R2およびR3は、それぞれ式(II):
【化2】
(式中、R1は前記と同じ)
で表わされる基または式(III):
【化3】
で表わされる基であって、R2およびR3のうちいずれか一方の基が式(II)で表わされる基であるとき他方の基は式(III)で表わされる基であり、nは3~8の整数を示す〕
で表わされるクラウンエーテル構造含有ジアミン化合物。
【請求項2】
式(IV):
【化4】
〔式中、R4およびR5は、それぞれ式(V):
【化5】
(式中、R1は置換基を有していてもよい炭素数1~4のアルキレン基、nは3~8の整数を示す)
で表わされる基、Xは芳香環または脂環構造を有する4価の基を示す〕
で表わされる繰り返し単位を有するクラウンエーテル構造含有ポリイミド。
【請求項3】
請求項2に記載のクラウンエーテル構造含有ポリイミドを製造する方法であって、請求項1に記載のクラウンエーテル構造含有ジアミン化合物と芳香環または脂環構造を有する多価カルボン酸無水物とを反応させてポリアミド酸を調製し、当該ポリアミド酸をイミド化させることを特徴とするクラウンエーテル構造含有ポリイミドの製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クラウンエーテル構造含有ポリイミドに関する。さらに詳しくは、本発明は、陽イオンの捕捉によって色調が変化する色調変化センサー、燃料電池用陰イオン交換膜、陰イオン交換樹脂、医療機器、光学素子などに用いられる刺激応答性ゲルが使用されているゲルセンサー、リチウムイオン二次電池の負極材料などの有機電子材料への展開が期待されるクラウンエーテル構造含有ポリイミド、当該クラウンエーテル構造含有ポリイミドの製造方法、および当該クラウンエーテル構造含有ポリイミドの製造中間体として有用なクラウンエーテル構造含有ジアミン化合物に関する。
【背景技術】
【0002】
天然に広く存在しているフェニルプロパノイドの一種である桂皮酸は、分子中に二重結合、カルボキシル基およびベンゼン環を有する化合物である。当該桂皮酸は、紫外線によって二量化する性質を有することから、光に起因した機能性材料の原料として用いられている(例えば、非特許文献1-3参照)。しかし、桂皮酸は、光に対する機能および反応性に着目されることが多く、桂皮酸光二量体が原料として用いられているポリマーを利用して機能性を付与することに関する報告例があるが、桂皮酸光二量体の側鎖のカルボキシル基を化学修飾することについて十分に検討されていない。
【0003】
本発明者らは、種々の桂皮酸を光二量化反応させることによって調製した桂皮酸光二量体としてトルキシル酸誘導体およびトルキシン酸誘導体が原料として用いられているバイオベースのポリイミドに関する研究を進めている(例えば、特許文献1および非特許文献4-5参照)。本発明者らが開発したバイオベースのポリイミドは、桂皮酸光二量体としてトルキシル酸誘導体およびトルキシン酸誘導体が原料として用いられているバイオベースのポリイミドであり、約350℃以上の耐熱性を有し、機械的強度が高いという優れた性質を有する。しかし、前記バイオベースのポリイミドを調製する際にトルキシン酸誘導体の側鎖のカルボキシル基に対する反応を行なう際の反応工程が複雑であり、前記ポリイミドは各種溶媒に対する溶解性が低いことが課題となっている。
【0004】
また、本発明者らは、バイオベースのポリイミドの主鎖の分子設計をすることにより、剛直で各種溶媒に対する溶解性を有するポリイミド(例えば、非特許文献6-7参照)、光学特性および熱安定性に優れている酸化チタンまたは酸化ジルコニウムを含有し、柔軟性および透明性を有する有機-無機ハイブリッドフィルム(例えば、非特許文献8参照)、ならびに親水性ポリアミドおよび親水性ポリイミド(例えば、特許文献2参照)を開発している。しかし、ポリイミドを機能化させるために当該ポリイミドの側鎖のカルボキシル基を利用した有機-無機ハイブリッド化について検討されているが、機能性官能基が導入されたポリイミドについては検討がされていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2016-166315号公報
【特許文献2】国際公開第2019/026795号パンフレット
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】Kaneko, T. et al., Nature Mater. 2006, 5, 966-970
【非特許文献2】Macromolecules, 2008, 41, 8167-8172
【非特許文献3】Angew. Chem. Int. Ed., 2013, 52, 11143-11148
【非特許文献4】Malletteet, J. R. al., J. Chromatogr. A, 2014, 1364, 234
【非特許文献5】Kaneko, T. et al., Macromolecules, 2014, 47, 1586-1593
【非特許文献6】Kaneko, T. et al., RSC Adv., 2020, 10, 38069-38074
【非特許文献7】Polymers, 2018, 10, 368
【非特許文献8】Kaneko, T. et al., Nanoscale, 2016, 8, 12793-12802
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
桂皮酸光二量体としてトルキシル酸誘導体またはトルキシン酸誘導体が出発物質に用いられているポリイミドは、側鎖にカルボキシル基を有しているが、前記したように各種溶媒に対する溶解性が低いことから、当該ポリイミドを調製した後に化学修飾することが困難である。
【0008】
本発明は、前記従来技術に鑑みてなされたものであり、前駆体となる桂皮酸光二量体へのホスト官能基の導入経路を確立してクラウンエーテル構造含有ジアミン化合物を調製し、当該クラウンエーテル構造含有ジアミン化合物を用いて調製することができる、金属イオン、アンモニウムイオンなどの陽イオンを捕捉し、各種溶媒に対する溶解性に優れたクラウンエーテル構造含有ポリイミドを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、
(1) 式(I):
【0010】
【化1】
【0011】
〔式中、R1は置換基を有していてもよい炭素数1~4のアルキレン基であり、R2およびR3は、それぞれ式(II):
【0012】
【化2】
【0013】
(式中、R1は前記と同じ)
で表わされる基または式(III):
【0014】
【化3】
【0015】
で表わされる基であって、R2およびR3のうちいずれか一方の基が式(II)で表わされる基であるとき他方の基は式(III)で表わされる基であり、nは3~8の整数を示す〕
で表わされるクラウンエーテル構造含有ジアミン化合物、
(2) 式(IV):
【0016】
【化4】
【0017】
〔式中、R4およびR5は、それぞれ式(V):
【0018】
【化5】
(式中、R1は置換基を有していてもよい炭素数1~4のアルキレン基、nは3~8の整数を示す)
で表わされる基、Xは芳香環または脂環構造を有する4価の基を示す〕
で表わされる繰り返し単位を有するクラウンエーテル構造含有ポリイミド、および
(3) 前記(2)に記載のクラウンエーテル構造含有ポリイミドを製造する方法であって、前記(1)に記載のクラウンエーテル構造含有ジアミン化合物と芳香環または脂環構造を有する多価カルボン酸無水物とを反応させてポリアミド酸を調製し、当該ポリアミド酸をイミド化させることを特徴とするクラウンエーテル構造含有ポリイミドの製造方法
に関する。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、前駆体となる桂皮酸光二量体へのホスト官能基の導入経路を確立してクラウンエーテル構造含有ジアミン化合物を調製し、当該クラウンエーテル構造含有ジアミン化合物を用いて調製することができる、金属イオン、アンモニウムイオンなどの陽イオンを捕捉し、各種溶媒に対する溶解性に優れたクラウンエーテル構造含有ポリイミドが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】4,4’-ジアミノ-α-ビス(ベンゾ-18-クラウン-6エーテル)トルキシルアミドの1H-NMRスペクトルを示すグラフである。
図2】4,4’-ジアミノ-δ-ビス(ベンゾ-18-クラウン-6エーテル)トルキシンアミドの1H-NMRスペクトルを示すグラフである。
図3】δ-CBDA-18Crown-PIの1H-NMRスペクトルを示すグラフである。
図4】δ-PMDA-18Crown-PIの1H-NMRスペクトルを示すグラフである。
図5】δ-BTDA-18Crown-PIの1H-NMRスペクトルを示すグラフである。
図6】δ-ODPA-18Crown-PIの1H-NMRスペクトルを示すグラフである。
図7】δ-CHDA-18Crown-PIの1H-NMRスペクトルを示すグラフである。
図8】δ-BPDA-18Crown-PIの1H-NMRスペクトルを示すグラフである。
図9】δ-DSDA-18Crown-PIの1H-NMRスペクトルを示すグラフである。
図10】δ-6FDA-18Crown-PIの1H-NMRスペクトルを示すグラフである。
図11】α-CBDA-18Crown-PAAのFT-IRスペクトルおよびα-CBDA-18Crown-PIのFT-IRスペクトルを示すグラフである。
図12】α-PMDA-18Crown-PAAのFT-IRスペクトルおよびα-PMDA-18Crown-PIのFT-IRスペクトルを示すグラフである。
図13】α-BTDA-18Crown-PAAのFT-IRスペクトルおよびα-BTDA-18Crown-PIのFT-IRスペクトルを示すグラフである。
図14】α-ODPA-18Crown-PAAのFT-IRスペクトルおよびα-ODPA-18Crown-PIのFT-IRスペクトルを示すグラフである。
図15】α-CHDA-18Crown-PAAのFT-IRスペクトルおよびα-CHDA-18Crown-PAAのPIのFT-IRスペクトルを示すグラフである。
図16】α-BPDA-18Crown-PAAのFT-IRスペクトルおよびα-BPDA-18Crown-PIのFT-IRスペクトルを示すグラフである。
図17】α-DSDA-18Crown-PAAのFT-IRスペクトルおよびα-DSDA-18Crown-PIのFT-IRスペクトルを示すグラフである。
図18】α-6FDA-18Crown-PAAのFT-IRスペクトルおよびα-6FDA-18Crown-PIのFT-IRスペクトルを示すグラフである。
図19】δ-CBDA-18Crown-PIのFT-IRスペクトルを示すグラフである。
図20】δ-PMDA-18Crown-PIのFT-IRスペクトルを示すグラフである。
図21】δ-BTDA-18Crown-PIのFT-IRスペクトルを示すグラフである。
図22】δ-ODPA-18Crown-PIのFT-IRスペクトルを示すグラフである。
図23】δ-CHDA-18Crown-PIのFT-IRスペクトルを示すグラフである。
図24】δ-BPDA-18Crown-PIのFT-IRスペクトルを示すグラフである。
図25】δ-DSDA-18Crown-PIのFT-IRスペクトルを示すグラフである。
図26】δ-6FDA-18Crown-PIのFT-IRスペクトルを示すグラフである。
図27】δ-CBDA-18Crown-PIのGPCチャ-トを示すグラフである。
図28】δ-PMDA-18Crown-PIのGPCチャ-トを示すグラフである。
図29】δ-BTDA-18Crown-PIのGPCチャ-トを示すグラフである。
図30】δ-ODPA-18Crown-PIのGPCチャ-トを示すグラフである。
図31】δ-CHDA-18Crown-PIのGPCチャ-トを示すグラフである。
図32】δ-BPDA-18Crown-PIのGPCチャ-トを示すグラフである。
図33】δ-DSDA-18Crown-PIのGPCチャ-トを示すグラフである。
図34】δ-6FDA-18Crown-PIのGPCチャ-トを示すグラフである。
図35】α-CBDA-18Crown-PIのTGA曲線を示すグラフである。
図36】α-CBDA-18Crown-PIのDSC曲線を示すグラフである。
図37】α-PMDA-18Crown-PIのTGA曲線を示すグラフである。
図38】α-PMDA-18Crown-PIのDSC曲線を示すグラフである。
図39】α-BTDA-18Crown-PIのTGA曲線を示すグラフである。
図40】α-BTDA-18Crown-PIのDSC曲線を示すグラフである。
図41】α-ODPA-18Crown-PIのTGA曲線を示すグラフである。
図42】α-ODPA-18Crown-PIのDSC曲線を示すグラフである。
図43】α-CHDA-18Crown-PIのTGA曲線を示すグラフである。
図44】α-CHDA-18Crown-PIのDSC曲線を示すグラフである。
図45】α-BPDA-18Crown-PIのTGA曲線を示すグラフである。
図46】α-BPDA-18Crown-PIのDSC曲線を示すグラフである。
図47】α-DSDA-18Crown-PIのTGA曲線を示すグラフである。
図48】α-DSDA-18Crown-PIのDSC曲線を示すグラフである。
図49】α-6FDA-18Crown-PIのTGA曲線を示すグラフである。
図50】α-6FDA-18Crown-PIのDSC曲線を示すグラフである。
図51】δ-CBDA-18Crown-PIのTGA曲線を示すグラフである。
図52】δ-CBDA-18Crown-PIのDSC曲線を示すグラフである。
図53】δ-PMDA-18Crown-PIのTGA曲線を示すグラフである。
図54】δ-PMDA-18Crown-PIのDSC曲線を示すグラフである。
図55】δ-BTDA-18Crown-PIのTGA曲線を示すグラフである。
図56】δ-BTDA-18Crown-PIのDSC曲線を示すグラフである。
図57】δ-ODPA-18Crown-PIのTGA曲線を示すグラフである。
図58】δ-ODPA-18Crown-PIのDSC曲線を示すグラフである。
図59】δ-CHDA-18Crown-PIのTGA曲線を示すグラフである。
図60】δ-CHDA-18Crown-PIのDSC曲線を示すグラフである。
図61】δ-BPDA-18Crown-PIのTGA曲線を示すグラフである。
図62】δ-BPDA-18Crown-PIのDSC曲線を示すグラフである。
図63】δ-DSDA-18Crown-PIのTGA曲線を示すグラフである。
図64】δ-DSDA-18Crown-PIのDSC曲線を示すグラフである。
図65】δ-6FDA-18Crown-PIのTGA曲線を示すグラフである。
図66】δ-6FDA-18Crown-PIのDSC曲線を示すグラフである。
図67】α-CBDA-18Crown-PI、KClO4およびKClO4によってK+を包接したα-CBDA-18Crown-PIのFT-IRスペクトルを示すグラフである。
図68】α-CBDA-18Crown-PI、LiClO4およびLiClO4によってLi+を包接したα-CBDA-18Crown-PIのFT-IRスペクトルを示すグラフである。
図69】α-CBDA-18Crown-PI、KPF6およびKPF6によってK+を包接したα-CBDA-18Crown-PIのFT-IRスペクトルを示すグラフである。
図70】δ-CBDA-18Crown-PI、KPF6によってK+を包接したδ-CBDA-18Crown-PIおよびNH4PF6によってNH4 +を包接したδ-CBDA-18Crown-PIの1H-NMRスペクトルを示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0021】
(1)クラウンエーテル構造含有ジアミン化合物
本発明のクラウンエーテル構造含有ジアミン化合物は、前記したように、式(I):
【0022】
【化6】
【0023】
〔式中、R1は置換基を有していてもよい炭素数1~4のアルキレン基、R2およびR3は、それぞれ式(II):
【0024】
【化7】
【0025】
(式中、R1は前記と同じ)
で表わされる基または式(III):
【0026】
【化8】
【0027】
で表わされる基であって、R2およびR3のうちいずれか一方の基が式(II)で表わされる基であるとき他方の基は式(III)で表わされる基であり、nは3~8の整数を示す〕
で表わされる。
【0028】
本発明のクラウンエーテル構造含有ジアミン化合物は、クラウンエーテル構造含有ポリイミドの製造中間体として有用である。また、本発明のクラウンエーテル構造含有ジアミン化合物は、ポリイミドのみならず、各種ポリアミド、各種ポリウレアなどのポリマーの原料モノマーとして使用することができる。
【0029】
1は、置換基を有していてもよい炭素数1~4のアルキレン基である。炭素数1~4のアルキレン基としては、メチレン基、エチレン基、n-プロピレン基、イソプロピレン基、n-ブチレン基、イソブチレン基およびtert-ブチレン基が挙げられる。炭素数1~4のアルキレン基のなかでは、メチレン基(-CH2-基)およびエチレン基(-C24-基)が好ましい。炭素数1~4のアルキレン基が有していてもよい置換基としては、例えば、フッ素原子、塩素原子などのハロゲン原子、アミノ基、水酸基などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。置換基は、本発明のクラウンエーテル構造含有ジアミン化合物の用途などに応じて適宜選択することが好ましい。
【0030】
2およびR3は、それぞれ式(II)で表わされる基または式(III)で表わされる基であって、R2およびR3のうちいずれか一方の基が式(II)で表わされる基であるとき、他方の基は式(III)で表わされる基である。したがって、R2およびR3が同時に式(II)で表わされる基であるか、または同時に式(III)で表わされる基であることはない。
【0031】
nは、3~8の整数であり、好ましくは3~6の整数、より好ましくは4または5、さらに好ましくは5である。
【0032】
式(I)で表わされるクラウンエーテル構造含有ジアミン化合物において、式(II)で表わされる基は2個存在する。式(II)で表わされる基のなかでは、式(IIa):
【0033】
【化9】
【0034】
(式中、R1およびnは前記と同じ)
で表わされる基が好ましく、式(IIa)で表わされる基において、R1がメチレン基またはエチレン基であり、nが3~6の整数であることがより好ましく、R1がエチレン基であり、nが4または5であることがより一層好ましく、式(IIb):
【0035】
【化10】
【0036】
で表わされる基がさらに好ましい。
【0037】
式(I)で表わされるクラウンエーテル構造含有ジアミン化合物中において、式(III)で表わされる基は2個存在する。式(III)で表わされる基において、アミノ基は、ベンゼン環が有する結合手に対してo位、m位およびp位のいずれの位置に存在していてもよいが、o位またはp位に存在していることが好ましく、p位に存在していることがより好ましい。式(III)で表わされる基において、ベンゼン環が有する結合手に対してp位にアミノ基が存在している基は、式(IIIa):
【0038】
【化11】
【0039】
で表わされる。
本発明のクラウンエーテル構造含有ジアミン化合物の代表例としては、例えば、ジアミノ-α-ビス(ベンゾクラウンエーテル)トルキシルアミド、ジアミノ-β-トルキシン酸ビス(ベンゾクラウンエーテルアミド)、ジアミノ-δ-ビス(ベンゾクラウンエーテル)トルキシルアミドなどが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。
【0040】
本発明のクラウンエーテル構造含有ジアミン化合物は、原料化合物としてジアミノトルキシル酸およびアミノベンゾクラウンエーテルを用い、例えば、以下のようにして調製することができる。なお、ジアミノトルキシル酸は、商業的に容易に入手することができる化合物である。
【0041】
〔ジアミノ-α-ビス(ベンゾクラウンエーテル)トルキシルアミドの調製〕
本発明のクラウンエーテル構造含有ジアミン化合物としてジアミノ-α-ビス(ベンゾクラウンエーテル)トルキシルアミドを調製する場合、当該ジアミノ-α-ビス(ベンゾクラウンエーテル)トルキシルアミドは、以下のようにして調製することができる。
【0042】
まず、ジアミノトルキシル酸とアミノベンゾクラウンエーテルとを反応させる前に、ジアミノトルキシル酸のアミノ基を保護することが好ましい。
【0043】
ジアミノトルキシル酸のアミノ基を保護する方法としては、例えば、テトラヒドロフラン水溶液などの水系溶媒中で水酸化ナトリウムなどのアルカリ金属水酸化物の存在下にてジアミノトルキシル酸とジtert-ブチルカーボネートとを反応させる方法などが挙げられる。ジアミノトルキシル酸とジtert-ブチルカーボネートとを反応させることにより、ジtert-ブトキシカルボニル(Boc)アミノトルキシル酸が得られる。
【0044】
アミノベンゾクラウンエーテルは、商業的に容易に入手することができる化合物であるが、例えば、ニトロベンゾクラウンエーテルをメタノールなどの溶媒中でパラジウム炭素などの触媒の存在下にて水素還元させることにより、得ることができる。
【0045】
次に、例えば、メタノールなどの溶媒中で4-(4,6-ジメトキシ-1,3,5-トリアジン-2-イル)-4-メチルモルホリニウムクロライド(以下、DMT-MMという)などの縮合剤の存在下でジtert-ブトキシカルボニルアミノトルキシル酸とアミノベンゾクラウンエーテルとを反応させることにより、tert-ブトキシカルボニルアミノビス(ベンゾクラウンエーテル)トルキシルアミドを得ることができる。
【0046】
ジtert-ブトキシカルボニルアミノトルキシル酸とアミノベンゾクラウンエーテルとの反応においては、化学量論的にはジtert-ブトキシカルボニルアミノトルキシル酸1モルに対してアミノベンゾクラウンエーテル2モルが反応するが、ジtert-ブトキシカルボニルアミノトルキシル酸1モルあたりのアミノベンゾクラウンエーテルの量は、1.9~2.1モルであることが好ましく、1.95~2.05モルであることがより好ましい。
【0047】
ジtert-ブトキシカルボニルアミノトルキシル酸とアミノベンゾクラウンエーテルとの反応温度は、特に限定されないが、0~40℃であることが好ましく、5~35℃であることがより好ましい。また、ジtert-ブトキシカルボニルアミノトルキシル酸とアミノベンゾクラウンエーテルとの反応の際の雰囲気は、空気であってもよく、窒素ガス、アルゴンガスなどの不活性ガスであってもよいが、空気中に含まれている酸素による影響を回避する観点から不活性ガスであることが好ましい。
【0048】
次に、前記で得られたジtert-ブトキシカルボニルアミノビス(ベンゾクラウンエーテル)トルキシルアミドには保護基(Boc)が存在していることから、当該保護基の脱保護を行なう。
【0049】
ジtert-ブトキシカルボニルアミノビス(ベンゾクラウンエーテル)トルキシルアミドの保護基の脱保護は、例えば、ジtert-ブトキシカルボニルアミノビス(ベンゾクラウンエーテル)トルキシルアミドとギ酸などの有機酸とを反応させることによって行なうことができる。
【0050】
前記有機酸の量は、ジtert-ブトキシカルボニルアミノビス(ベンゾクラウンエーテル)トルキシルアミド10gあたり50~150mL程度であることが好ましい。ジtert-ブトキシカルボニルアミノビス(ベンゾクラウンエーテル)トルキシルアミドの保護基の脱保護の際の温度は、特に限定されないが、0~40℃であることが好ましく、5~35℃であることが好ましい。また、ジtert-ブトキシカルボニルアミノビス(ベンゾクラウンエーテル)トルキシルアミドの保護基の脱保護の際の雰囲気は、空気であってもよく、窒素ガス、アルゴンガスなどの不活性ガスであってもよいが、空気中に含まれている酸素による影響を回避する観点から不活性ガスであることが好ましい。
【0051】
以上のようにしてジtert-ブトキシカルボニルアミノビス(ベンゾクラウンエーテル)トルキシルアミドの保護基を脱保護させることにより、本発明のクラウンエーテル構造含有ジアミン化合物としてジアミノ-α-ビス(ベンゾクラウンエーテル)トルキシルアミドを得ることができる。
【0052】
前記で得られたジアミノ-α-ビス(ベンゾクラウンエーテル)トルキシルアミドは、必要により、例えば、抽出溶媒を用いて洗浄してもよく、乾燥させてもよい。
【0053】
〔ジアミノ-β-トルキシン酸ビス(ベンゾクラウンエーテルアミド)の調製〕
本発明のクラウンエーテル構造含有ジアミン化合物としてジアミノ-β-トルキシン酸ビス(ベンゾクラウンエーテルアミド)を調製する場合、当該ジアミノ-β-トルキシン酸ビス(ベンゾクラウンエーテルアミド)は、以下のようにして調製することができる。
【0054】
例えば、メタノールなどの溶媒中でDMT-MMなどの縮合剤の存在下にてジニトロ-β-トルキシル酸とアミノベンゾクラウンエーテルとを反応させることにより、ジニトロ-β-トルキシル酸ビス(ベンゾクラウンエーテルアミド)を得ることができる。
【0055】
ジニトロ-β-トルキシル酸とアミノベンゾクラウンエーテルとの反応においては、化学量論的にはジニトロ-β-トルキシル酸1モルに対してアミノベンゾクラウンエーテル2モルが反応するが、ジニトロ-β-トルキシル酸1モルあたりのアミノベンゾクラウンエーテルの量は、1.9~2.1モルであることが好ましく、1.95~2.05モルであることがより好ましい。
【0056】
ジニトロ-β-トルキシル酸とアミノベンゾクラウンエーテルとの反応温度は、特に限定されないが、0~40℃であることが好ましく、5~35℃であることが好ましい。また、ジニトロ-β-トルキシル酸とアミノベンゾクラウンエーテルとの反応の際の雰囲気は、空気であってもよく、窒素ガス、アルゴンガスなどの不活性ガスであってもよいが、空気中に含まれている酸素による影響を回避する観点から不活性ガスであることが好ましい。
【0057】
次に、前記で得られたジニトロ-β-トルキシル酸ビス(ベンゾクラウンエーテルアミド)をジメチルホルムアミドなどの溶媒中でパラジウム炭素などの触媒の存在下にて水素還元させることにより、ジアミノ-β-トルキシン酸ビス(ベンゾクラウンエーテルアミド)を得ることができる。
【0058】
前記で得られたジアミノ-β-トルキシン酸ビス(ベンゾクラウンエーテルアミド)は、必要により、例えば、抽出溶媒を用いて洗浄してもよく、乾燥させてもよい。
【0059】
〔ジアミノ-δ-ビス(ベンゾクラウンエーテル)トルキシンアミドの調製〕
まず、ニトロ桂皮酸N-ヒドロキシスクシンイミドエステルを調製する。ニトロ桂皮酸N-ヒドロキシスクシンイミドエステルは、例えば、ニトロ桂皮酸およびN-ヒドロキシスクシンイミドを混合し、得られた混合物に1,4-ジオキサンを添加し、得られた混合物にN,N-ジイソプロピルカルボジイミドを添加した後、還流することにより、得ることができる。
【0060】
前記で得られたニトロ桂皮酸N-ヒドロキシスクシンイミドエステルを必要によりプロパノールなどの溶媒で洗浄し、乾燥させてもよい。
【0061】
次に、前記で得られたニトロ桂皮酸N-ヒドロキシスクシンイミドエステルをトルエンなどの溶媒中に分散させ、得られた分散物に紫外線を照射することにより、ジニトロ-δ-トルキシン酸ビス(N-ヒドロキシスクシンイミドエステル)を得ることができる。
【0062】
前記で得られたジニトロ-δ-トルキシン酸ビス(N-ヒドロキシスクシンイミドエステル)とアミノベンゾクラウンエーテルとを混合し、得られた混合物をジオキサンなどの溶媒に溶解させ、加熱還流することにより、ジニトロ-δ-トルキシン酸ビス(ベンゾクラウンエーテルアミド)が得られる。
【0063】
前記で得られたジニトロ-δ-トルキシン酸ビス(ベンゾクラウンエーテルアミド)は、必要により再沈殿などによって精製させてもよく、乾燥させてもよい。
【0064】
次に、前記で得られたジニトロ-δ-トルキシン酸ビス(ベンゾクラウンエーテルアミド)およびジメチルホルムアミドなどの溶媒を混合し、得られた溶液にパラジウム炭素を添加し、水素で還元させることにより、ジアミノ-δ-ビス(ベンゾクラウンエーテル)トルキシンアミドが得られる。
【0065】
前記で得られたジアミノ-δ-ビス(ベンゾクラウンエーテル)トルキシンアミドは、必要により再沈殿などによって精製させてもよく、乾燥させてもよい。
【0066】
以上のようにして得られる本発明のクラウンエーテル構造含有ジアミン化合物は、本発明のクラウンエーテル構造含有ポリイミドの製造中間体として有用な化合物であり、各種ポリイミド、各種ポリアミド、各種ポリウレアなどのポリマーの原料モノマーとして使用することができる。
【0067】
(2)クラウンエーテル構造含有ポリイミド
本発明のクラウンエーテル構造含有ポリイミドは、前記したように、
式(IV):
【0068】
【化12】
【0069】
〔式中、R4およびR5は、それぞれ式(V):
【0070】
【化13】
(式中、R1は置換基を有していてもよい炭素数1~4のアルキレン基、nは3~8の整数を示す)
で表わされる基、Xは芳香環または脂環構造を有する4価の基を示す〕
で表わされる繰り返し単位を有する。
【0071】
4およびR5は、それぞれ式(V)で表わされる基である。式(V)で表わされる基において、R1は、置換基を有していてもよい炭素数1~4のアルキレン基であり、式(I)で表わされるクラウンエーテル構造含有ジアミン化合物におけるR1と同様であることが好ましい。nは、3~8の整数であり、式(I)で表わされるクラウンエーテル構造含有ジアミン化合物と同様であることが好ましい。
【0072】
Xは、芳香環または脂環構造を有する4価の基である。ここで4価の基とは、4本の結合手を有する基を意味する。Xとしては、例えば、炭素数4~8の脂環構造を有する4価の基、1個または2個のベンゼン環を有する4価の基、ベンゼン環とベンゼン環との間に酸素原子、-S(O2)-基、ハロゲン原子を有していてもよい炭素数2~4のアルキレン基が存在する4価の基などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。
【0073】
本発明において、好適なXとして、式:
【0074】
【化14】
【0075】
(式中、R6およびR7は、それぞれ独立して水素原子またはハロゲン原子を示す)
で表わされる基が挙げられる。R6およびR7は、それぞれ独立して水素原子またはハロゲン原子であるが、ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子およびヨウ素原子が挙げられる。これらのハロゲン原子のなかでは、フッ素原子および塩素原子が好ましく、フッ素原子がより好ましい。
【0076】
式(IV)において、シクロブタン環に結合している2つのフェニレン基、-C(O)NHR4基および-C(O)NHR5基の位置は、特に限定されない。したがって、式(IV)で示される基は、2つのフェニレン基がシクロブタン環を介してそれぞれ対向する位置に存在している場合および2つのフェニレン基がシクロブタン環を介して互いに隣接している場合の双方を含む概念のものであり、便宜上、式(IV)で示されるように記載されている。
【0077】
式(IV)で表わされる繰り返し単位を有するクラウンエーテル構造含有ポリイミドの代表例としては、式(IVa):
【0078】
【化15】
【0079】
(式中、R4、R5およびXは、前記と同じ)
で表わされる繰り返し単位を有するクラウンエーテル構造含有ポリイミドおよび式(IVb):
【0080】
【化16】
【0081】
(式中、R4、R5およびXは、前記と同じ)
で表わされる繰り返し単位を有するクラウンエーテル構造含有ポリイミドが挙げられる。これらのクラウンエーテル構造含有ポリイミドは、それぞれ単独で用いてもよく、併用してもよい。
【0082】
本発明のクラウンエーテル構造含有ポリイミドは、式(IV) で表わされる繰り返し単位を有するが、本発明の目的が阻害されない範囲内で他のポリマーに基づく繰り返し単位が含まれていてもよい。
【0083】
本発明のクラウンエーテル構造含有ポリイミドの数平均分子量は、通常、1万~10万、好ましくは1.5万~8万、より好ましくは1.5万~6.5万である。なお、本発明のクラウンエーテル構造含有ポリイミドの数平均分子量は、以下の実施例に記載の方法に基づいて測定したときの値である。
【0084】
本発明のクラウンエーテル構造含有ポリイミドは、例えば、本発明のクラウンエーテル構造含有ジアミン化合物と芳香環または脂環構造を有する多価カルボン酸無水物とを反応させてポリアミド酸を調製し、当該ポリアミド酸をイミド化させることにより、得ることができる。
【0085】
前記多価カルボン酸無水物は、複数のカルボキシル基を有するカルボン酸の無水物を意味する。前記多価カルボン酸無水物としては、例えば、ピロメリット酸無水物、4,4’-フタル酸無水物、4,4’-ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、4,4’-オキシジフタル酸無水物、4,4’-(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸無水物、1,2,3,4-シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、1,2,4,5-シクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’-ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらの多価カルボン酸無水物は、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
【0086】
クラウンエーテル構造含有ジアミン化合物と多価カルボン酸無水物とは、化学量論的には等モルで反応するが、クラウンエーテル構造含有ジアミン化合物1モルあたりの多価カルボン酸無水物の量は、0.90~1.1モルであることが好ましく、0.95~1.05モルであることがより好ましい。
【0087】
クラウンエーテル構造含有ジアミン化合物と多価カルボン酸無水物との反応温度は、特に限定されないが、0~40℃であることが好ましく、5~35℃であることが好ましい。また、クラウンエーテル構造含有ジアミン化合物と多価カルボン酸無水物との反応の際の雰囲気は、空気であってもよく、窒素ガス、アルゴンガスなどの不活性ガスであってもよいが、空気中に含まれている酸素による影響を回避する観点から不活性ガスであることが好ましい。
【0088】
以上のようにしてクラウンエーテル構造含有ジアミン化合物と多価カルボン酸無水物とを反応させることによってポリアミド酸が得られる。ポリアミド酸は、必要によりジメチルアセトアミドなどの溶媒を用いて再沈殿などによって精製してもよく、乾燥させてもよい。
【0089】
次に、前記で得られたポリアミド酸をイミド化させることにより、クラウンエーテル構造含有ポリイミドを得ることができる。なお、ポリアミド酸をイミド化させる方法としては、例えば、窒素ガス、アルゴンガスなどの不活性ガス雰囲気中でポリアミド酸を100~300℃に加熱し、当該ポリアミド酸を熱イミド化させることにより、ポリアミド酸をイミド化させる方法、窒素ガス、アルゴンガスなどの不活性ガス雰囲気中でポリアミド酸と無水酢酸およびトリエチルアミンなどのアミン化合物とをジメチルアセトアミドなどの溶媒中で混合し、100~150℃に加熱することにより、ポリアミド酸をイミド化させる方法などが挙げられるが、本発明は、かかる方法のみに限定されるものではない。
【0090】
以上のようにして得られる本発明のクラウンエーテル構造含有ポリイミドは、前記多価カルボン酸無水物の種類によって異なるが、ガラス転移温度が180~210℃程度であることから、加熱溶融させて射出成形、押出成形など成形法による成形性に優れている。
【0091】
また、本発明のクラウンエーテル構造含有ポリイミド、なかでもδ型のクラウンエーテル構造含有ポリイミドは、前記多価カルボン酸無水物の種類によって異なるが、例えば、ジクロロメタン、クロロホルム、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、トリフルオロ酢酸、濃硫酸などの種々の溶媒に対する溶解性に優れているので、当該クラウンエーテル構造含有ポリイミドを溶媒に溶解させた溶液を用いて成形する際の成形性にも優れている。
【0092】
また、本発明のクラウンエーテル構造含有ポリイミドは、クラウンエーテル構造を有することから、例えば、リチウムイオン、ナトリウムイオン、カリウムイオン、アンモニウムイオンなどの陽イオンを当該クラウンエーテル構造で包接し、ゲル化する性質を有する。したがって、本発明のクラウンエーテル構造含有ポリイミドは、例えば、陽イオンの捕捉によって色調が変化する色調変化センサー、燃料電池用陰イオン交換膜、陰イオン交換樹脂、医療機器、光学素子などに用いられる刺激応答性ゲルが使用されているゲルセンサー、リチウムイオン二次電池の負極材料などの有機電子材料への展開が期待される。
【実施例0093】
次に、本発明を実施例に基づいてさらに詳細に説明するが、本発明は、かかる実施例のみに限定されるものではない。
【0094】
以下の各実施例で得られた化合物の物性は、以下の方法に基づいて調べた。
〔構造の決定〕
化合物の構造は、核磁気共鳴(1H-NMR、13C-NMR)、フーリエ変換赤外分光(FT-IR)およびマトリックス支援レーザー脱離イオン化タンデム飛行時間型質量分析(MALDI-TOFTOF MS)によって決定した。
【0095】
なお、核磁気共鳴は、核磁気共鳴測定装置〔ブルカー(BRUKER)社製、商品名:AVANCE III HD NMR Spectrometer 400MHz)を用いてサンプル5mgをジメチルスルホキシド(DMSO)-d6(0.5mL)に溶解させ、得られた溶液をガラス製サンプルチューブに移し、25℃の温度で積算回数を16にて測定した。
【0096】
フーリエ変換赤外分光は、フーリエ変換赤外分光測定装置〔パーキン・エルマー(Perkin Elmer)社製、商品名:Spectrum 100、ATR法〕を用い、測定波数領域を400cm-1から4000cm-1とし、積算回数4回にて測定した。
【0097】
マトリックス支援レーザー脱離イオン化タンデム飛行時間型質量分析は、〔ブルカー・ダルトニクス・インク(Bruker Daltonics Inc.)社製、商品名:MALDI-TOF/TOF MS UltrafleXtreme〕を使用し、6.0mg/mLの原料モノマー10μL、マトリックス剤として9.0mg/mLゲンチジン酸90μL、カチオン化剤として10mg/mLトリフルオロ酢酸ナトリウム10μLをテトラヒドロフランに溶解させた溶液を用い、測定モードをリフレクターモードとした。
【0098】
〔分子量〕
化合物の分子量は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)で測定した。なお、化合物の分子量を測定する際の装置構成は、送液ポンプユニット〔日本分光(株)製、品番:PU-2080〕、カラムオーブン〔ジーエル・サイエンス(GL Science)社製、品番:CO631A、設定温度:40℃〕、紫外可視検出器〔日本分光(株)製、品番:UV-2075〕、示差屈折計〔日本分光(株)製、品番:RI-2031〕、カラム〔昭和電工(株)製、品番:SB-806M HQ、2本〕、標準物質(ポリメチルメタクリレートスタンダード、分子量:30701、7360、18500、68800、211000、569000または1050000)とし、移動相として0.01mol/Lの臭化リチウムのN,N’-ジメチルホルムアミド溶液を用い、当該溶液の流速を1.0mL/minに調節した。
【0099】
〔熱的性質〕
ポリイミドの熱的性質は、熱重量分析(TGA)および示差走査熱量測定(DSC)によって調べた。
【0100】
熱重量分析の際には、熱重量分析装置〔(株)日立製作所製、品番:STA7200〕を用い、サンプルの量を4~8mgに調整し、窒素ガスの雰囲気中で(窒素ガスの流速:250mL/min)、プラチナパンを使用し、リファレンスをブランク(サンプルなし)とし、測定前に25℃から180℃まで昇温速度20℃/minにて加熱し、180℃で30分間保持した後、180℃から25℃まで降温速度20℃/minで冷却し、25℃での保持時間を20分間とした。
【0101】
示差走査熱量の測定は、25℃から800℃まで昇温速度10℃/minにて加熱し、サンプルの質量が5%または10%減少したときの温度をそれぞれTd5またはTd10とした。示差走査熱量は、示差走査熱量測定装置〔(株)日立製作所製、品番:X-DSC 7000T〕を用い、サンプルの量を3~5mgに調整し、窒素ガスの雰囲気中で(窒素ガスの流速:40mL/min)、リファレンスをブランク(サンプルなし)とし、25℃からサンプルの分解温度に沿って250~300℃まで昇温速度10℃/minにて昇温し、最高温度の300℃で5分間保持し、当該最高温度の300℃から25℃まで降温速度10℃/minで25℃まで冷却し、25℃で10分間保持するサイクルを3回繰り返して測定を行ない、2回目または3回目のサイクルの試験によって得られたデータを使用した。
【0102】
実施例1〔4,4’-ジアミノ-α-ビス(ベンゾ-18-クラウン-6エーテル)トルキシルアミドの調製〕
(1)4,4’-ジtert-ブトキシカルボニルアミノ-α-トルキシル酸の調製
【0103】
【化17】
【0104】
4,4’-ジアミノ-α-トルキシル酸3.00g(9.19mmol)、純水40mLおよびテトラヒドロフラン(THF)40mLを混合し、得られた混合物を10分間撹拌した。
【0105】
次に、前記で得られた混合物に水酸化ナトリウム1.62g(40.4mmol)、ジtert-ブチルジカーボネート4.85g(22.2mmol)を添加し、得られた混合物を60時間室温で撹拌した。
【0106】
前記で得られた混合物からエバポレーターでテトラヒドロフランを留去した後、純水150mLを当該混合物に添加し、さらに酢酸を添加して当該混合物のpHを3.0に調整し、得られた沈殿物を吸引濾過することによって回収し、真空乾燥することにより、目的化合物である4,4’-ジtert-ブトキシカルボニルアミノ-α-トルキシル酸3.92gを白色固形分として得た(収率:81%)。
【0107】
(2)4’-アミノベンゾ-18-クラウン-6エーテルの調製
【0108】
【化18】
【0109】
4’-ニトロベンゾ-18-クラウン-6エーテル1.00g(2.80mmol)およびメタノール40mLを均一な組成となるように混合した。得られた混合物に触媒としてパラジウムカーボン(20質量%)0.2gを添加し、当該混合物に水素ガスを吹き込みながら室温下で4時間撹拌することにより、4’-ニトロベンゾ-18-クラウン6-エーテルを還元させた。
【0110】
次に、前記で得られた反応混合物を濾過することによってパラジウムカーボンを除去し、得られた濾液からエバポレーターでメタノールを留去し、真空乾燥することにより、目的化合物である4’-アミノベンゾ-18-クラウン-6エーテル0.86gを得た(収率93%)。
【0111】
(3)4,4’-ジtert-ブトキシカルボニルアミノ-α-ビス(ベンゾ-18-クラウン-6エーテル)トルキシルアミドの調製
【0112】
【化19】
【0113】
前記で得られた4’-アミノベンゾ-18-クラウン-6エーテル1.82g(5.55mmol)に4,4’-ジtert-ブトキシカルボニルアミノ-α-トルキシル酸1.46g(2.78mmol)を添加し、得られた混合物をメタノール(MeOH)40mLに溶解させた。
【0114】
前記で得られた溶液に縮合剤としてDMT-MM2.31g(8.33mmol)を添加し、室温下で16時間撹拌した後、析出した固形分を濾過し、回収した固形分をメタノールで洗浄し、真空乾燥することにより、目的化合物である4,4’-ジtert-ブトキシカルボニルアミノ-α-ビス(ベンゾ-18-クラウン-6エーテル)トルキシルアミド2.34gを白色固形分として得た(収率74%)。
【0115】
(4)4,4’-ジアミノ-α-ビス(ベンゾ-18-クラウン-6エーテル)トルキシルアミドの調製
【0116】
【化20】
【0117】
前記で得られた4,4’-ジ-tert-ブトキシカルボニルアミノ-α-(ベンゾ-18-クラウン-6エーテル)トルキシルアミド3.70g(3.23mmol)をギ酸30mLに溶解させ、室温中で12時間反応を行なった。反応終了後、エバポレーターでギ酸を留去し,溶液を濃縮した後、反応系内にジエチルエーテルを添加し,析出した固形分を吸引濾過によって回収した。回収した白色固形分をN,N-ジメチルホルムアミドに溶解させた後、トルエンとジエチルエーテルとの混合溶媒〔トルエン/ジエチルエーテル(容量比):1/1〕中に滴下することにより、白色固形分を析出させ、吸引濾過によって回収した。
【0118】
回収した白色固形分をジエチルエーテルとメタノールとの混合溶媒〔ジエチルエーテル/メタノール(容量比):3/1〕で洗浄し、真空乾燥することにより、目的化合物である4,4’-ジアミノ-α-ビス(ベンゾ-18-クラウン-6エーテル)トルキシルアミド1.91gを白色固形分として得た(収率63%)。
【0119】
実施例2〔4,4’-ジアミノ-β-ビス(ベンゾ-18-クラウン-6エーテル)トルキシンアミドの調製〕
【0120】
(1)4,4’-ジニトロ-β-トルキシル酸ビス(ベンゾ-18-クラウン-6エーテルアミド)の調製
【0121】
【化21】
前記と同様にして得られた4’-アミノベンゾ-18-クラウン6-エーテル4.70g(14.3mmol)に4,4’-ジニトロ-β-トルキシン酸2.77g(7.15mmol)を添加し、得られた混合物をメタノール30mLに溶解させた。
【0122】
前記で得られた溶液に縮合剤としてDMT-MM6.00g(21.5mmol)を添加し、室温で12時間撹拌することにより、反応を行なった。反応終了後、析出した固形分を濾過し、当該固形分をメタノールで洗浄し、真空乾燥することにより、目的化合物である4,4’-ジニトロ-β-トルキシル酸ビス(ベンゾ-18-クラウン-6エーテルアミド)4.32gを白色固形分として得た(収率60%)。
【0123】
(2)4,4’-ジアミノ-β-ビス(ベンゾ-18-クラウン-6エーテル)トルキシンアミドの調製
【0124】
【化22】
【0125】
前記で得られた4,4’-ジニトロ-β-トルキシン酸ビス(ベンゾ-18-クラウン-6エーテルアミド)3.00g(2.98mmol)およびN,N-ジメチルホルムアミド(DMF)30mLを混合し、得られた混合物にパラジウムカーボン(30質量%)0.90gを添加し、水素ガスの雰囲気中で15時間反応させた。反応終了後、得られた反応混合物を濾過することによってパラジウムカーボンを除去し、得られた濾液をトルエン中に滴下することによって再沈殿させた。
【0126】
次に、析出した固形分を吸引濾過によって回収し、真空乾燥することにより、目的化合物である4,4’-ジアミノ-β-トルキシン酸ビス(ベンゾ-18-クラウン6-エーテルアミド)1.41gを黄色固形分として得た(収率50%)。
【0127】
実施例3〔4,4’-ジアミノ-δ-ビス(ベンゾ-18-クラウン-6 エーテル)トルキシンアミドの調製〕
(1)4-ニトロ桂皮酸N-ヒドロキシスクシンイミドエステルの調製
【0128】
【化23】
【0129】
4-ニトロ桂皮酸25g(129mmol)およびN-ヒドロキシスクシンイミド22.3g(194mmol)を混合し、得られた混合物に1,4-ジオキサン150mLを添加し、撹拌した。
【0130】
前記で得られた混合物にN,N-ジイソプロピルカルボジイミド(DIC)30.8mL(198mmol)を添加した後、110℃で12時間加熱して還流することにより、反応を行なった。反応終了後、得られた反応混合物を室温まで放冷し、生成した固形分を吸引濾過することによって回収した。回収された固形分を2-プロパノールで洗浄した後、真空乾燥することにより、目的化合物である4-ニトロ桂皮酸N-ヒドロキシスクシンイミドエステル25.8gを薄黄色結晶として得た(収率68%)。
【0131】
(2)4,4’-ジニトロ-δ-トルキシン酸ビス(N-ヒドロキシスクシンイミドエステル)の調製
【0132】
【化24】
【0133】
前記で得られた4-ニトロ桂皮酸N-ヒドロキシスクシンイミドエステル6.00g(20.7mmol)をトルエン45mL中に分散させ、得られた分散物に室温下にて高圧水銀灯で紫外線を照射し、反応の進行状況を1H-NMRで追跡し、4-ニトロ桂皮酸N-ヒドロキシスクシンイミドエステルのオレフィンに基づくピ-クの消失を確認した後、紫外線の照射を終了した。なお、紫外線の照射には約72時間を要した。
【0134】
紫外線の照射後、前記分散物に含まれている固形分を吸引濾過することによって回収し、当該固形分を真空乾燥することにより、目的化合物である4,4’-ジニトロ-δ-トルキシン酸ビス(N-ヒドロキシスクシンイミドエステル)3.93gを褐色固形分として得た(収率66%)。
【0135】
(3)4,4’-ジニトロ-δ-ビス(ベンゾ-18-クラウン-6エーテル)トルキシンアミドの調製
【0136】
【化25】
【0137】
実施例1と同様にして調製された4’-アミノベンゾ-18-クラウン-6エーテル4.81g(14.7mmol)および4,4’-ジニトロ-δ-トルキシン酸N-ヒドロキシスクシンイミドエステル4.26g(7.35mmol)を混合し、得られた混合物を1,4-ジオキサン40mLに溶解させた後、110℃で12時間加熱して加熱還流することにより、反応を行なった。反応終了後、得られた反応混合物に水を添加することによって晶析させ、得られた固形分を濾過し、真空乾燥させることにより、粗生成物を回収した。
【0138】
次に、前記で得られた粗生成物をアセトンに溶解させ、水中に滴下することにより、再沈殿させた。得られた沈殿物を濾過することによって回収し、真空乾燥することにより、目的化合物である4,4’-ジニトロ-δ-トルキシン酸ビス(ベンゾ-18-クラウン-6エーテルアミド)4.38gを茶褐色固形分として得た(収率59%)。
【0139】
(4)4,4’-ジアミノ-δ-ビス(ベンゾ-18-クラウン-6エーテル)トルキシンアミドの調製
【0140】
【化26】
【0141】
4,4’-ジニトロ-δ-トルキシン酸ビス(ベンゾ-18-クラウン-6エーテルアミド)3.43g(3.41mmol)およびN,N-ジメチルホルムアミド(DMF)30mLを混合し、得られた溶液にパラジウムカーボン(29質量%)1.00gを添加し、水素ガスの雰囲気中で15時間反応を行なった。反応終了後、得られた反応混合物を濾過することによってパラジウムカーボンを除去し、得られた濾液をトルエン中に滴下することにより、再沈殿させた。得られた沈殿物を吸引濾過することによって回収し、真空乾燥することにより、目的化合物である4,4’-ジアミノ-δ-ビス(ベンゾ-18-クラウン-6エーテル)トルキシンアミド1.35gを茶褐色固形分として得た(収率42%)。
【0142】
実施例4〔1,2,3,4-シクロブタンテトラカルボン酸二無水物-4,4’-ジアミノ-α-ビス(ベンゾ-18-クラウン-6エーテル)トルキシルアミド-ポリイミドの調製〕
【0143】
【化27】
【0144】
アルゴンガスの雰囲気中で4,4’-ジアミノ-α-ビス(ベンゾ-18-クラウン6-エーテル)トルキシルアミド300mg(0.317mmol)および1,2,3,4-シクロブタンテトラカルボン酸二無水物62.3mg(0.317mmol)をジメチルアセトアミド(DMAc)0.6mLに溶解させ、室温で48時間撹拌することにより、反応を行なった。反応終了後、得られた反応混合物にジメチルアセトアミド1.0mLを添加し、得られた混合物をメタノール150mL中に滴下することにより、再沈殿させた。得られた沈殿物を吸引濾過することによって回収し、真空乾燥することにより、フィブリル状のポリアミド酸315mgを得た(収率87%)。
【0145】
次に、前記で得られたポリアミド酸を100℃から段階的に200℃まで昇温させることにより、熱イミド化を行ない、1,2,3,4-シクロブタンテトラカルボン酸二無水物-4,4’-ジアミノ-α-ビス(ベンゾ-18-クラウン-6エーテル)トルキシルアミド-ポリイミド(以下、α-CBDA-18Crown-PIという)を得た。
【0146】
前記で得られたα-CBDA-18Crown-PIの数平均分子量は39000であり、重量平均分子量は65000であった。
【0147】
実施例5〔ピロメリット酸無水物-4,4’-ジアミノ-α-ビス(ベンゾ-18-クラウン-6エーテル)トルキシルアミド-ポリイミドの調製〕
【0148】
【化28】
【0149】
アルゴンガスの雰囲気中で4,4’-ジアミノ-α-ビス(ベンゾ-18-クラウン6-エーテル)トルキシルアミド200mg(0.212mmol)およびピロメリット酸無水物46.2mg(0.212mmol)をジメチルアセトアミド0.5mLに溶解させて室温で48時間撹拌することにより、反応を行なった。反応終了後、得られた反応混合物にジメチルアセトアミド(DMAc)1.0mLを添加し、当該反応混合物をメタノール100mL中に滴下することにより、再沈殿させた。得られた沈殿物を吸引濾過によって回収し、真空乾燥することにより、フィブリル状のポリアミド酸が196mgを得た(収率80%)。
【0150】
次に、前記で得られたポリアミド酸を100℃から段階的に200℃まで昇温させることにより、熱イミド化を行ない、ピロメリット酸無水物-4,4’-ジアミノ-α-ビス(ベンゾ-18-クラウン-6エーテル)トルキシルアミド-ポリイミド(以下、α-PMDA-18Crown-PIという)を得た。
【0151】
前記で得られたα-PMDA-18Crown-PIの数平均分子量は28000であり、重量平均分子量は36000であった。
【0152】
実施例6〔3,3’,4,4’-ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物-4,4’-ジアミノ-α-ビス(ベンゾ-18-クラウン-6エーテル)トルキシルアミド-ポリイミドの調製〕
【0153】
【化29】
【0154】
実施例5において、4,4’-ジアミノ-α-ビス(ベンゾ-18-クラウン6-エーテル)トルキシルアミド200mg(0.212mmol)および4,4’-ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物68.2mg(0.212mmol)を用いたこと以外は、実施例5と同様の操作を行なうことにより、3,3’,4,4’-ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物-4,4’-ジアミノ-α-ビス(ベンゾ-18-クラウン-6エーテル)トルキシルアミド-ポリイミド(以下、α-BTDA-18Crown-PIという)を得た。
【0155】
前記で得られたα-BTDA-18Crown-PIの数平均分子量は34000であり、重量平均分子量は54000であった。
【0156】
実施例7〔4,4’-オキシジフタル酸無水物-4,4’-ジアミノ-α-ビス(ベンゾ-18-クラウン-6エーテル)トルキシルアミド-ポリイミドの調製〕
【0157】
【化30】
【0158】
実施例5において、4,4’-ジアミノ-α-ビス(ベンゾ-18-クラウン6-エーテル)トルキシルアミド200mg(0.212mmol)および4,4’-オキシジフタル酸無水物65.6mg(0.212mmol)を用いたこと以外は、実施例5と同様の操作を行なうことにより、4,4’-オキシジフタル酸無水物-4,4’-ジアミノ-α-ビス(ベンゾ-18-クラウン-6エーテル)トルキシルアミド-ポリイミド(以下、α-ODPA-18Crown-PIという)を得た。
【0159】
前記で得られたα-ODPA-18Crown-PIの数平均分子量は57000であり、重量平均分子量は150000であった。
【0160】
実施例8〔1,2,4,5-シクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物-4,4’-ジアミノ-α-ビス(ベンゾ-18-クラウン-6エーテル)トルキシルアミド-ポリイミドの調製〕
【0161】
【化31】
【0162】
実施例5において、4,4’-ジアミノ-α-ビス(ベンゾ-18-クラウン6-エーテル)トルキシルアミド200mg(0.212mmol)および1,2,4,5-シクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物47.4mg(0.212mmol)を用いたこと以外は、実施例5と同様の操作を行なうことにより、1,2,4,5-シクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物-4,4’-ジアミノ-α-ビス(ベンゾ-18-クラウン-6エーテル)トルキシルアミド-ポリイミド(以下、α-CHDA-18Crown-PIという)を得た。
【0163】
前記で得られたα-CHDA-18Crown-PIの数平均分子量は42000であり、重量平均分子量は88000であった。
【0164】
実施例9〔3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸ニ無水物-4,4’-ジアミノ-α-ビス(ベンゾ-18-クラウン-6エーテル)トルキシルアミド-ポリイミドの調製〕
【0165】
【化32】
【0166】
実施例5において、4,4’-ジアミノ-α-ビス(ベンゾ-18-クラウン6-エーテル)トルキシルアミド200mg(0.212mmol)および3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸ニ無水物62.3mg(0.212mmol)を用いたこと以外は、実施例5と同様の操作を行なうことにより、3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸ニ無水物-4,4’-ジアミノ-α-ビス(ベンゾ-18-クラウン-6エーテル)トルキシルアミド-ポリイミド(以下、α-BPDA-18Crown-PIという)を得た。
【0167】
前記で得られたα-BPDA-18Crown-PIの数平均分子量は44000であり、重量平均分子量は170000であった。
【0168】
実施例10〔3,3’,4,4’-ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物-4,4’-ジアミノ-α-ビス(ベンゾ-18-クラウン-6エーテル)トルキシルアミド-ポリイミドの調製〕
【0169】
【化33】
【0170】
実施例5において、4,4’-ジアミノ-α-ビス(ベンゾ-18-クラウン6-エーテル)トルキシルアミド200mg(0.212mmol)および3,3’,4,4’-ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物75.8mg(0.212mmol)を用いたこと以外は、実施例5と同様の操作を行なうことにより、3,3’,4,4’-ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物-4,4’-ジアミノ-α-ビス(ベンゾ-18-クラウン-6エーテル)トルキシルアミド-ポリイミド(以下、α-DSDA-18Crown-PI)を得た。
【0171】
前記で得られたα-DSDA-18Crown-PIの数平均分子量は47000であり、重量平均分子量は120000であった。
【0172】
実施例11〔4,4’-(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸無水物-4,4’-ジアミノ-α-ビス(ベンゾ-18-クラウン-6エーテル)トルキシルアミド-ポリイミドの調製〕
【0173】
【化34】
【0174】
実施例5において、4,4’-ジアミノ-α-ビス(ベンゾ-18-クラウン6-エーテル)トルキシルアミド200mg(0.212mmol)および4,4’-(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸無水物94.0mg(0.212mmol)を用いたこと以外は、実施例5と同様の操作を行なうことにより、4,4’-(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸無水物-4,4’-ジアミノ-α-ビス(ベンゾ-18-クラウン-6エーテル)トルキシルアミド-ポリイミド(以下、α-6FDA-18Crown-PIという)を得た。
【0175】
前記で得られたα-6FDA-18Crown-PIの数平均分子量は37000であり、重量平均分子量は61000であった。
【0176】
実施例12〔1,2,3,4-シクロブタンテトラカルボン酸二無水物-4,4’-ジアミノ-δ-ビス(ベンゾ-18-クラウン-6エーテル)トルキシンアミド-ポリイミドの調製〕
【0177】
【化35】
【0178】
アルゴンガスの雰囲気中で4,4’-ジアミノ-δ-ビス(ベンゾ-18-クラウン-6エーテル)トルキシンアミド300mg(0.317mmol)および1,2,3,4-シクロブタンテトラカルボン酸二無水物62.3mg(0.317mmol)をジメチルアセトアミド0.6mLに溶解させ、室温で1時間撹拌することにより、溶液を得た。
【0179】
前記で得られた溶液に、ジメチルアセトアミド0.4mLを添加した後,無水酢酸0.3mLおよびトリエチルアミン(TEA)0.2mLを滴下し、40℃で1時間加熱し、ついで100℃で10分間加熱することにより、イミド化を行ない、ポリイミド溶液を得た。
【0180】
前記で得られたポリイミド溶液をメタノール150mL中に滴下することにより、ポリイミドを再沈殿させた。沈殿したポリイミドを吸引濾過によって回収し、160℃の温度で真空乾燥することにより、1,2,3,4-シクロブタンテトラカルボン酸二無水物-4,4’-ジアミノ-δ-ビス(ベンゾ-18-クラウン-6エーテル)トルキシンアミド-ポリイミド(以下、δ-CBDA-18Crown-PIという)359mgを褐色粉体で得た(収率99%)。
【0181】
前記で得られたδ-CBDA-18Crown-PIの数平均分子量は39000であり、重量平均分子量は65000であった。
【0182】
実施例13〔ピロメリット酸無水物-4,4’-ジアミノ-δ-ビス(ベンゾ-18-クラウン-6エーテル)トルキシンアミド-ポリイミドの調製〕
【0183】
【化36】
【0184】
アルゴンガスの雰囲気中で4,4’-ジアミノ-δ-ビス(ベンゾ-18-クラウン-6エーテル)トルキシンアミド200mg(0.212mmol)およびピロメリット酸無水物46.2mg(0.212mmol)をジメチルアセトアミド(DMAc)0.6mLに溶解させ、室温で1時間撹拌することにより、溶液を得た。
【0185】
前記で得られた溶液に、ジメチルアセトアミド0.4mLを添加した後、無水酢酸(Ac2O)0.3mLおよびトリエチルアミン(TEA)0.2mLを滴下し、40℃で1時間加熱し、100℃で10分間加熱することにより、イミド化を行ない、ポリイミド溶液を得た。
【0186】
前記で得られたポリイミド溶液をメタノール100mL中に滴下することによって再沈殿させた。沈殿したポリイミドを吸引濾過によって回収し、160℃の温度で真空乾燥することにより、ピロメリット酸無水物-4,4’-ジアミノ-δ-ビス(ベンゾ-18-クラウン-6エーテル)トルキシンアミド-ポリイミド(以下、δ-PMDA-18Crown-PIという)230mgを褐色粉体で得た(収率93%)。
【0187】
前記で得られたδ-PMDA-18Crown-PIの数平均分子量は28000であり、重量平均分子量は36000であった。
【0188】
実施例14〔3,3’,4,4’-ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物-4,4’-ジアミノ-δ-ビス(ベンゾ-18-クラウン-6エーテル)トルキシンアミド-ポリイミドの調製〕
【0189】
【化37】
【0190】
実施例13において、4,4’-ジアミノ-δ-ビス(ベンゾ-18-クラウン-6 エーテル)トルキシンアミド(200mg(0.212mmol)および4,4’-ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物68.2mg(0.212mmol)を用いたこと以外は、実施例13と同様の操作を行なうことにより、3,3’,4,4’-ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物-4,4’-ジアミノ-δ-ビス(ベンゾ-18-クラウン-6エーテル)トルキシンアミド-ポリイミド(以下、δ-BTDA-18Crown-PIという)を得た。
【0191】
前記で得られたδ-BTDA-18Crown-PIの数平均分子量は34000であり、重量平均分子量は54000であった。
【0192】
実施例15〔4,4’-オキシジフタル酸無水物-4,4’-ジアミノ-δ-ビス(ベンゾ-18-クラウン-6エーテル)トルキシンアミド-ポリイミドの調製〕
【0193】
【化38】
【0194】
実施例13において、4,4’-ジアミノ-δ-ビス(ベンゾ-18-クラウン-6 エーテル)トルキシンアミド200mg(0.212mmol)および4,4’-オキシジフタル酸無水物65.6mg(0.212mmol)を用いたこと以外は、実施例13と同様の操作を行なうことにより、4,4’-オキシジフタル酸無水物-4,4’-ジアミノ-δ-ビス(ベンゾ-18-クラウン-6エーテル)トルキシンアミド-ポリイミド(以下、δ-ODPA-18Crown-PIという)を得た。
【0195】
前記で得られたδ-ODPA-18Crown-PIの数平均分子量は57000であり、重量平均分子量は150000であった。
【0196】
実施例16〔1,2,4,5-シクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物-4,4’-ジアミノ-δ-ビス(ベンゾ-18-クラウン-6エーテル)トルキシンアミド-ポリイミドの調製〕
【0197】
【化39】
【0198】
実施例13において、4,4’-ジアミノ-δ-ビス(ベンゾ-18-クラウン-6エーテル)トルキシンアミド200mg(0.212mmol)および1,2,4,5-シクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物47.4mg(0.212mmol)を用いたこと以外は、実施例13と同様の操作を行なうことにより、1,2,4,5-シクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物-4,4’-ジアミノ-δ-ビス(ベンゾ-18-クラウン-6エーテル)トルキシンアミド-ポリイミド(以下、δ-CHDA-18Crown-PIという)を得た。
【0199】
前記で得られたδ-CHDA-18Crown-PIの数平均分子量は42000であり、重量平均分子量は88000であった。
【0200】
実施例17〔3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸ニ無水物-4,4’-ジアミノ-δ-ビス(ベンゾ-18-クラウン-6エーテル)トルキシンアミド-ポリイミドの調製〕
【0201】
【化40】
【0202】
実施例13において、4,4’-ジアミノ-δ-ビス(ベンゾ-18-クラウン-6エーテル)トルキシンアミド200mg(0.212mmol)および3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸ニ無水物62.3mg(0.212mmol)を用いたこと以外は、実施例13と同様の操作を行なうことにより、3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸ニ無水物-4,4’-ジアミノ-δ-ビス(ベンゾ-18-クラウン-6エーテル)トルキシンアミド-ポリイミド(以下、δ-BPDA-18Crown-PIという)を得た。
【0203】
前記で得られたδ-BPA-18Crown-PIの数平均分子量は44000であり、重量平均分子量は170000であった。
【0204】
実施例18〔3,3’,4,4’-ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物-4,4’-ジアミノ-δ-ビス(ベンゾ-18-クラウン-6エーテル)トルキシンアミド-ポリイミドの調製〕
【0205】
【化41】
【0206】
実施例13において、4,4’-ジアミノ-δ-ビス(ベンゾ-18-クラウン-6エーテル)トルキシンアミド200mg(0.212mmol)および3,3’,4,4’-ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物75.8mg(0.212mmol)を用いたこと以外は、実施例13と同様の操作を行なうことにより、3,3’,4,4’-ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物-4,4’-ジアミノ-δ-ビス(ベンゾ-18-クラウン-6エーテル)トルキシンアミド-ポリイミド(以下、δ-DSDA-18Crown-PIという)を得た。
【0207】
前記で得られたδ-DSDA-18Crown-PIの数平均分子量は47000であり、重量平均分子量は120000であった。
【0208】
実施例19〔4,4’-(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸無水物-4,4’-ジアミノ-δ-ビス(ベンゾ-18-クラウン-6エーテル)トルキシンアミド-ポリイミドの調製〕
【0209】
【化42】
【0210】
実施例13において、4,4’-ジアミノ-δ-ビス(ベンゾ-18-クラウン-6エーテル)トルキシンアミド200mg(0.212mmol)および4,4’-(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸無水物94.0mg(0.212mmol)を用いたこと以外は、実施例13と同様の操作を行なうことにより、4,4’-(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸無水物-4,4’-ジアミノ-δ-ビス(ベンゾ-18-クラウン-6エーテル)トルキシンアミド-ポリイミド(以下、δ-6FDA-18Crown-PIという)を得た。
【0211】
前記で得られたδ-6FDA-18Crown-PIの数平均分子量は37000であり、重量平均分子量は61000であった。
【0212】
実施例20〔9,9-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)フルオレン二無水物-4,4’-ジアミノ-δ-ビス(ベンゾ-18-クラウン-6エーテル)トルキシンアミド-ポリイミドの調製〕
【0213】
【化43】
【0214】
実施例13において、4,4’-ジアミノ-δ-ビス(ベンゾ-18-クラウン-6エーテル)トルキシンアミド200mg(0.212mmol)および9,9-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)フルオレン二無水物64.6mg(0.212mmol)を用いたこと以外は、実施例13と同様の操作を行なうことにより、9,9-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)フルオレン二無水物-4,4’-ジアミノ-δ-ビス(ベンゾ-18-クラウン-6エーテル)トルキシンアミド-ポリイミド(以下、δ-BPAF-18Crown-PIという)を得た。
【0215】
前記で得られたδ-BPAF-18Crown-PIの数平均分子量は18000であり、重量平均分子量は46000であった。
【0216】
実施例21〔4,4’-(4,4’-イソプロピリデンジフェノキシ)ジフタル酸無水物-4,4’-ジアミノ-δ-ビス(ベンゾ-18-クラウン-6エーテル)トルキシンアミド-ポリイミドの調製〕
【0217】
【化44】
【0218】
実施例13において、4,4’-ジアミノ-δ-ビス(ベンゾ-18-クラウン-6エーテル)トルキシンアミド200mg(0.212mmol)および4,4’-(4,4’-イソプロピリデンジフェノキシ)ジフタル酸無水物73.3mg(0.212mmol)を用いたこと以外は、実施例13と同様の操作を行なうことにより、4,4’-(4,4’-イソプロピリデンジフェノキシ)ジフタル酸無水物-4,4’-ジアミノ-δ-ビス(ベンゾ-18-クラウン-6エーテル)トルキシンアミド-ポリイミド(以下、δ-BPADA-18Crown-PIという)を得た。
【0219】
前記で得られたδ-BPADA-18Crown-PIの数平均分子量は23000であり、重量平均分子量は67000であった。
【0220】
実施例22〔ビス(1,3-ジオキソ-1,3-ジヒドロイソベンゾフラン-5-カルボン酸)1,4-フェニレン-4,4’-ジアミノ-δ-ビス(ベンゾ-18-クラウン-6エーテル)トルキシンアミド-ポリイミドの調製〕
【0221】
【化45】
【0222】
実施例13において、4,4’-ジアミノ-δ-ビス(ベンゾ-18-クラウン-6エーテル)トルキシンアミド200mg(0.212mmol)およびビス(1,3-ジオキソ-1,3-ジヒドロイソベンゾフラン-5-カルボン酸)1,4-フェニレン64.6mg(0.212mmol)を用いたこと以外は、実施例13と同様の操作を行なうことにより、ビス(1,3-ジオキソ-1,3-ジヒドロイソベンゾフラン-5-カルボン酸)1,4-フェニレン-4,4’-ジアミノ-δ-ビス(ベンゾ-18-クラウン-6エーテル)トルキシンアミド-ポリイミド(以下、δ-TAHQ-18Crown-PIという)を得た。
【0223】
前記で得られたδ-TAHQ-18Crown-PIの数平均分子量は21000であり、重量平均分子量は62000であった。
【0224】
実施例23〔1,2,3,4-シクロブタンテトラカルボン酸二無水物-4,4’-ジアミノ-α-ビス(ベンゾ-18-クラウン-6エーテル)トルキシルアミド-ポリアミド酸の調製〕
【0225】
【化46】
【0226】
アルゴンガスの雰囲気中で4,4’-ジアミノ-α-ビス(ベンゾ-18-クラウン6-エーテル)トルキシルアミド300mg(0.317mmol)および1,2,3,4-シクロブタンテトラカルボン酸二無水物62.3mg(0.317mmol)をジメチルアセトアミド0.6mLに溶解させ、室温で48時間撹拌することにより、反応を行なった。反応終了後、得られた反応混合物にジメチルアセトアミド1.0mLを添加し、得られた混合物をメタノール150mL中に滴下することにより、再沈殿させた。得られた沈殿物を吸引濾過することによって回収し、真空乾燥することにより、フィブリル状の1,2,3,4-シクロブタンテトラカルボン酸二無水物-4,4’-ジアミノ-α-ビス(ベンゾ-18-クラウン-6エーテル)トルキシルアミド-ポリアミド酸(以下、α-CBDA-18Crown-PAAという)315mgを得た(収率87%)。
【0227】
実施例24〔カリウムイオンが包接されたα-CBDA-18Crown-PIの調製〕
【0228】
【化47】
【0229】
α-CBDA-18Crown-PAA86.0mg(75.4μmol)および過塩素酸カリウム(KClO4)20.9mg(151μmol)をジメチルアセトアミド0.4mLに溶解させ、室温で24時間撹拌することにより、ポリアミド酸溶液を得た。
【0230】
次に、前記で得られたポリアミド酸溶液を100℃から段階的に200℃まで昇温させることにより、熱イミド化を行ない、カリウムイオンが包接されたα-CBDA-18Crown-PI(以下、α-CBDA-18Crown-PI-KClO4という)を得た。
【0231】
実施例25〔リチウムイオンが包接されたα-CBDA-18Crown-PIの調製〕
【0232】
【化48】
【0233】
実施例24において、α-CBDA-18Crown-PAA100mg(87.6μmol)および過塩素酸リチウム(LiClO4)18.6mg(175μmol)を用いたこと以外は、実施例24と同様の操作を行なうことにより、リチウムイオンが包接されたα-CBDA-18Crown-PI(以下、α-CBDA-18Crown-PI-LiClO4という)を得た。
【0234】
実施例26〔ナトリウムが包接されたα-CBDA-18Crown-PIの調製〕
【0235】
【化49】
【0236】
実施例24において、α-CBDA-18Crown-PAA100mg(87.6μmol)および過塩素酸ナトリウム(NaClO4)21.5mg(175μmol)を用いたこと以外は、実施例24と同様の操作を行なうことにより、ナトリウムが包接されたα-CBDA-18Crown-PI(以下、α-CBDA-18Crown-PI-NaClO4という)を得た。
【0237】
実施例27〔カリウムイオンが包接されたα-CBDA-18Crown-PIの調製〕
【0238】
【化50】
【0239】
実施例24において、α-CBDA-18Crown-PAA100mg(87.6μmol)およびヘキサフルオロリン酸カリウム(KPF6)32.2mg(175μmol)を用いたこと以外は、実施例24と同様の操作を行なうことにより、カリウムイオンが包接されたα-CBDA-18Crown-PI(以下、α-CBDA-18Crown-PI-KPF6という)を得た。
【0240】
以上の結果から、前記で得られたクラウンエーテル構造含有ポリイミドは、アルカリ金属イオンを包接する性質を有することがわかる。
【0241】
実施例28〔δ-CBDA-18Crown-PIの架橋体の調製〕
【0242】
【化51】
【0243】
δ-CBDA-18Crown-PI10mg(9.05μmol)およびε-ポリリジン塩酸塩2.98mg(9.05μmol)にジメチルアセトアミド0.5mLを添加し、室温で24時間撹拌したところ、ポリイミド側鎖のクラウン部位とε-ポリリジン塩酸塩の第1級アミンンとの相互作用によって架橋構造が形成され、得られたδ-CBDA-18Crown-PIの架橋体がゲル化することが確認された。
【0244】
実施例29〔δ-CBDA-18Crown-PIの架橋体の架橋体の調製〕
【0245】
【化52】
【0246】
実施例28において、δ-CBDA-18Crown-PI10mg(9.05μmol)および4,4’-ジアミノ-α-トルキシル酸塩酸塩3.61mg(9.05μmol)を用いたこと以外は、実施例28と同様の操作を行なうことにより、δ-CBDA-18Crown-PIの架橋体が得られ、当該δ-CBDA-18Crown-PIの架橋体がゲル化することが確認された。
【0247】
以上の結果から、前記で得られたクラウンエーテル構造含有ポリイミドは、架橋させることにより、ゲル化する性質を有することがわかる。
【0248】
実施例30〔カリウムイオンが包接されたδ-CBDA-18Crown-PIの調製〕
【0249】
δ-CBDA-18Crown-PI3mgをN,N-ジメチルホルムアミド-d70.75mLに溶解させ、得られた溶液にヘキサフルオロリン酸カリウム(KPF6)10mgを添加し、室温で48時間撹拌することにより、カリウムイオンが包接されたδ-CBDA-18Crown-PI(以下、δ-CBDA-18Crown-PI-KPF6という)を得た。
【0250】
δ-CBDA-18Crown-PIおよびδ-CBDA-18Crown-PI-KPF6の1H-NMRを調べたところ、ヘキサフルオロリン酸カリウム(KPF6)をδ-CBDA-18Crown-PIに添加することにより、シクロブタンとクラウンエーテル部位および芳香族由来のシグナルが低磁場側にシフトしていることが確認された。
【0251】
実施例31〔アンモニウムイオンが包接されたδ-CBDA-18Crown-PIの調製〕
【0252】
δ-CBDA-18Crown-PI3mgおよびヘキサフルオロリン酸アンモニウム(NH4PF6)10mgを添加し、室温で48時間撹拌することにより、アンモニウムイオンが包接されたδ-CBDA-18Crown-PI(以下、δ-CBDA-18Crown-PI-NH4PF6という)を得た。
【0253】
δ-CBDA-18Crown-PIおよびδ-CBDA-18Crown-PI-NH4PF6の1H-NMRを調べたところ、ヘキサフルオロリン酸アンモニウム(NH4PF6)をδ-CBDA-18Crown-PIに添加することにより、シクロブタンとクラウンエーテル部位および芳香族由来のシグナルが低磁場側にシフトしていることが確認された。
【0254】
〔各化合物の構造解析〕
各実施例で得られた化合物の構造解析の結果を以下に示す。
(1)4,4’-ジアミノ-α-ビス(ベンゾ-18-クラウン-6エーテル)トルキシンアミド
1H-NMR (400MHz, DMSO-d6) δ: 3.52 (brs, 8H, CH2), 3.53-3.56 (m, 8H, CH2), 3.57-3.61 (m, 8H, CH2), 3.69-3.71 (m, 4H, CH2), 3.73-3.75 (m, 4H, CH2), 3.76-3.80 (m, 2H, CH), 3.91-3.94 (m, 4H, CH2), 3.97-4.00 (m, 4H, CH2), 4.18-4.22 (m, 2H, CH), 5.15 (brs, 4H, NH2), 6.48 (d, 4H, J=8.3Hz, ArH), 6.77 (brs, 4H, ArH), 6.84 (brs, 2H, ArH), 7.01 (d, 2H, J=8.4Hz, ArH), 9.55 (brs, 2H, NH)
【0255】
4,4’-ジアミノ-α-ビス(ベンゾ-18-クラウン-6エーテル)トルキシルアミドの1H-NMRスペクトルを図1に示す。
【0256】
13C-NMR (100MHz, DMSO-d6) δ: 48.5, 65.4, 68.4, 68.8, 69.1, 69.2, 70.3, 79.3, 106.9, 112.6, 113.7, 114.1, 127.6, 128.8, 133.0, 144.6, 147.1, 148.2, 170.2
【0257】
MALDI-TOF-MS: m/z 967.380 (M+Na)+ [C5064N4O14Naの計算値: 967.432]
【0258】
(2)4,4’-ジアミノ-δ-ビス(ベンゾ-18-クラウン-6 エーテル)トルキシンアミド
1H-NMR (400MHz, DMSO-d6) δ: 3.28-3.30 (m, 2H, CH), 3.46-3.48 (m, 2H, CH), 3.52 (brs, 8H, CH2), 3.54-3.56 (m, 8H, CH2), 3.57-3.61 (m, 8H, CH2), 3.70-3.73 (m, 8H, CH2), 3.74-3.76 (m, 8H, CH2), 4.00-4.02 (m, 8H, CH2), 5.02 (brs, 2H, NH2), 6.52 (d, 4H, J=8.4Hz, ArH), 6.85 (d, 2H, J=8.8Hz, ArH), 6.95 (d, 4H, J=8.4Hz, ArH), 7.10-7.12 (dd, 2H, J=2.2, 8.7Hz, ArH), 7.41 (d, 2H, J=2.2Hz, ArH), 9.93 (brs, 2H, NH)
【0259】
4,4’-ジアミノ-δ-ビス(ベンゾ-18-クラウン-6 エーテル)トルキシンアミドの1H-NMRスペクトルを図2に示す。
【0260】
13C-NMR (100MHz, DMSO-d6) δ: 46.9, 47.6, 68.4, 68.8, 69.1, 69.3, 70.2, 70.3, 105.9, 111.7, 113.9, 114.4, 128.0, 128.7, 129.4, 129.8, 133.4, 144.6, 147.7, 148.3, 170.7
【0261】
MALDI-TOF-MS: m/z 967.343 (M+Na)+ [C50H64N4O14Naの計算値: 967.432]
【0262】
(3)各実施例で得られたポリマーの構造解析
〔1H-NMRスペクトル〕
δ-CBDA-18Crown-PIの1H-NMRスペクトルを図3に、δ-PMDA-18Crown-PIの1H-NMRスペクトルを図4に、δ-BTDA-18Crown-PIの1H-NMRスペクトルを図5に、δ-ODPA-18Crown-PIの1H-NMRスペクトルを図6に、δ-CHDA-18Crown-PIの1H-NMRスペクトルを図7に、δ-BPDA-18Crown-PIの1H-NMRスペクトルを図8に、δ-DSDA-18Crown-PIの1H-NMRスペクトルを図9に、δ-6FDA-18Crown-PIの1H-NMRスペクトルを図10に示す。
【0263】
〔FT-IRスペクトル〕
α-CBDA-18Crown-PAAのFT-IRスペクトルおよびα-CBDA-18Crown-PIのFT-IRスペクトルを図11に、α-PMDA-18Crown-PAAのFT-IRスペクトルおよびα-PMDA-18Crown-PIのFT-IRスペクトルを図12に、α-BTDA-18Crown-PAAのFT-IRスペクトルおよびα-BTDA-18Crown-PIのFT-IRスペクトルを図13に、α-ODPA-18Crown-PAAのFT-IRスペクトルおよびα-ODPA-18Crown-PIのFT-IRスペクトルを図14に、α-CHDA-18Crown-PAAのFT-IRスペクトルおよびα-CHDA-18Crown-PAAのPIのFT-IRスペクトルを図15に、α-BPDA-18Crown-PAAのFT-IRスペクトルおよびα-BPDA-18Crown-PIのFT-IRスペクトルを図16に、α-DSDA-18Crown-PAAのFT-IRスペクトルおよびα-DSDA-18Crown-PIのFT-IRスペクトルを図17に、α-6FDA-18Crown-PAAのFT-IRスペクトルおよびα-6FDA-18Crown-PIのFT-IRスペクトルを図18に、δ-CBDA-18Crown-PIのFT-IRスペクトルを図19に、δ-PMDA-18Crown-PIのFT-IRスペクトルを図20に、δ-BTDA-18Crown-PIのFT-IRスペクトルを図21に、δ-ODPA-18Crown-PIのFT-IRスペクトルを図22に、δ-CHDA-18Crown-PIのFT-IRスペクトルを図23に、δ-BPDA-18Crown-PIのFT-IRスペクトルを図24に、δ-DSDA-18Crown-PIのFT-IRスペクトルを図25に、δ-6FDA-18Crown-PIのFT-IRスペクトルを図26に示す。
【0264】
〔GPCチャ-ト〕
δ-CBDA-18Crown-PIのGPCチャ-トを図27に、δ-PMDA-18Crown-PIのGPCチャ-トを図28に、δ-BTDA-18Crown-PIのGPCチャ-トを図29に、δ-ODPA-18Crown-PIのGPCチャ-トを図30に、δ-CHDA-18Crown-PIのGPCチャ-トを図31に、δ-BPDA-18Crown-PIのGPCチャ-トを図32に、δ-DSDA-18Crown-PIのGPCチャ-トを図33に、δ-6FDA-18Crown-PIのGPCチャ-トを図34に示す。
【0265】
〔溶媒に対する溶解性〕
各実施例で得られたポリイミド5mgを各種溶媒1mLに添加し、室温(約23℃)で1時間放置し、ポリイミドが溶解しているかどうかを目視にて観察した。なお、ポリイミドが溶媒に溶解していなかったときには、当該溶媒に超音波を付与することにより、ポリイミドが溶解するかどうかを目視にて観察した。超音波の付与でもポリイミドが溶解しなかったときには、当該溶媒を60℃加熱することにより、ポリイミドが溶解するかどうかを目視にて観察した。
【0266】
以上のいずれかの操作により、ポリイミドが溶媒に溶解したときには「+」の評価をし、ポリイミドが溶媒に溶解しなかったときには「-」の評価をした。
【0267】
各種溶媒に対するポリイミドの溶解性を調べた結果を表1に示す。なお、表1に記載の略号は、以下の事項を意味する。
【0268】
(ポリイミド)
CBDA:α-またはδ-CBDA-18Crown-PI
PMDA:α-またはδ-PMDA-18Crown-PI
BTDA:α-またはδ-BTDA-18Crown-PI
ODPA:α-またはδ-ODPA-18Crown-PI
CHDA:α-またはδ-CHDA-18Crown-PI
BPDA:α-またはδ-BPDA-18Crown-PI
DSDA:α-またはδ-DSDA-18Crown-PI
6FDA:α-またはδ-6FDA-18Crown-PI
【0269】
(溶媒)
DMSO:ジメチルスルホキシド
DMF:N,N-ジメチルホルムアミド
DMAc:ジメチルアセトアミド
TFA:トリフルオロ酢酸
【0270】
【表1】
【0271】
表1に示された結果から、前記で得られたクラウンエーテル構造含有ポリイミドは、各種溶媒に溶解させることができることがわかる。なかでもδ型のクラウンエーテル構造含有ポリイミドは、α型のクラウンエーテル構造含有ポリイミドよりも溶媒に対する溶解性に優れていることがわかる。
【0272】
〔熱的性質〕
各実施例で得られたポリイミドの熱重量分析(TGA)および示差走査熱量測定(DSC)を行なった。
【0273】
図35はα-CBDA-18Crown-PIのTGA曲線を示すグラフ、図36はα-CBDA-18Crown-PIのDSC曲線を示すグラフ、図37はα-PMDA-18Crown-PIのTGA曲線を示すグラフ、図38はα-PMDA-18Crown-PIのDSC曲線を示すグラフ、図39はα-BTDA-18Crown-PIのTGA曲線を示すグラフ、図40はα-BTDA-18Crown-PIのDSC曲線を示すグラフ、図41はα-ODPA-18Crown-PIのTGA曲線を示すグラフ、図42はα-ODPA-18Crown-PIのDSC曲線を示すグラフ、図43はα-CHDA-18Crown-PIのTGA曲線を示すグラフ、図44はα-CHDA-18Crown-PIのDSC曲線を示すグラフ、図45はα-BPDA-18Crown-PIのTGA曲線を示すグラフ、図46はα-BPDA-18Crown-PIのDSC曲線を示すグラフ、図47はα-DSDA-18Crown-PIのTGA曲線を示すグラフ、図48はα-DSDA-18Crown-PIのDSC曲線を示すグラフ、図49はα-6FDA-18Crown-PIのTGA曲線を示すグラフ、図50はα-6FDA-18Crown-PIのDSC曲線を示すグラフ、図51はδ-CBDA-18Crown-PIのTGA曲線を示すグラフ、図52はδ-CBDA-18Crown-PIのDSC曲線、図53はδ-PMDA-18Crown-PIのTGA曲線を示すグラフ、図54はδ-PMDA-18Crown-PIのDSC曲線を示すグラフ、図55はδ-BTDA-18Crown-PIのTGA曲線を示すグラフ、図56はδ-BTDA-18Crown-PIのDSC曲線を示すグラフ、図57はδ-ODPA-18Crown-PIのTGA曲線を示すグラフ、図58はδ-ODPA-18Crown-PIのDSC曲線を示すグラフ、図59はδ-CHDA-18Crown-PIのTGA曲線を示すグラフ、図60はδ-CHDA-18Crown-PIのDSC曲線を示すグラフ、図61はδ-BPDA-18Crown-PIのTGA曲線を示すグラフ、図62はδ-BPDA-18Crown-PIのDSC曲線を示すグラフ、図63はδ-DSDA-18Crown-PIのTGA曲線を示すグラフ、図64はδ-DSDA-18Crown-PIのDSC曲線を示すグラフ、図65はδ-6FDA-18Crown-PIのTGA曲線を示すグラフ、図66はδ-6FDA-18Crown-PIのDSC曲線を示すグラフである。
【0274】
〔熱分解温度〕
各実施例で得られたポリイミドの5%重量減少温度および10%重量減少温度の測定結果を表2に示す。なお、表2に記載の各略号の意味内容は、表1に記載の各略号と同じである。
【0275】
【表2】
【0276】
以上の結果から、前記で得られたクラウンエーテル構造含有ポリイミドは、重量が5%減少するときの温度が340℃以上であり、重量が10%減少するときの温度が355℃以上であることから、耐熱性に優れていることがわかる。
【0277】
〔ガラス転移温度〕
各実施例で得られたポリイミドのガラス転移温度を調べた。その結果を表3に示す。なお、表3に記載の各略号の意味内容は、表1に記載の各略号と同じである。
【0278】
【表3】
【0279】
表3に示された結果から、前記で得られたポリイミドは、そのほとんどのガラス転移温度が170~210℃の範囲内あることから、加熱溶融させることによって得られた溶融物を用いることにより、射出成形に使用される成形材料として用いることができるものであることがわかる。
【0280】
〔陽イオンの包接性〕
各実施例で得られたポリイミドの陽イオンの包接性をフーリエ変換赤外分光(FT-IR)および核磁気共鳴(1H-NMR)によって調べた。
【0281】
図67はα-CBDA-18Crown-PI、KClO4およびKClO4によってK+を包接したα-CBDA-18Crown-PI(図中のα-CBDA-18Crown-PI-KClO4)のFT-IRスペクトルを示すグラフ、図68はα-CBDA-18Crown-PI、LiClO4およびLiClO4によってLi+を包接したα-CBDA-18Crown-PI(図中のα-CBDA-18Crown-PI-KClO4)のFT-IRスペクトルを示すグラフ、図69はα-CBDA-18Crown-PI、KPF6およびKPF6によってK+を包接したα-CBDA-18Crown-PI(図中のα-CBDA-18Crown-PI+KPF6)のFT-IRスペクトルを示すグラフ、図70はδ-CBDA-18Crown-PI、KPF6によってK+を包接したδ-CBDA-18Crown-PI(図中のδ-CBDA-18Crown-PI-KPF6)およびNH4PF6によってNH4 +を包接したδ-CBDA-18Crown-PI(図中のδ-CBDA-18Crown-PI-NH4PF6)の1H-NMRスペクトルを示すグラフである。
【0282】
以上の結果から、前記で得られたクラウンエーテル構造含有ポリイミドは、アルカリ金属イオンおよびアンモニウムイオンを捕捉し、包接する能力を有することがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0283】
本発明クラウンエーテル構造含有ポリイミドは、陽イオンの捕捉によって色調が変化する色調変化センサー、燃料電池用陰イオン交換膜、陰イオン交換樹脂、医療機器、光学素子などに用いられる刺激応答性ゲルが使用されているゲルセンサー、リチウムイオン二次電池の負極材料などの有機電子材料への展開が期待される。
【0284】
また、本発明のクラウンエーテル構造含有ポリイミドにフタロシアニンなどの機能性色素が導入されたポリイミドは、重金属によって色調が変化する刺激応答性ポリマーに応用することが期待され、本発明のクラウンエーテル構造含有ポリイミドは、当該クラウンエーテル構造含有ポリイミドに多価の陽イオンを捕捉させることによってゲル化することから刺激応答材料などに応用することが期待される。

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
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図20
図21
図22
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図24
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図26
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図32
図33
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図35
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図37
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図39
図40
図41
図42
図43
図44
図45
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図51
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