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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022114248
(43)【公開日】2022-08-05
(54)【発明の名称】病院用カーテン
(51)【国際特許分類】
   A47H 23/02 20060101AFI20220729BHJP
   A47H 23/10 20060101ALI20220729BHJP
【FI】
A47H23/02
A47H23/10
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021010464
(22)【出願日】2021-01-26
(71)【出願人】
【識別番号】501270287
【氏名又は名称】帝人フロンティア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100169085
【弁理士】
【氏名又は名称】為山 太郎
(72)【発明者】
【氏名】石原 裕史
【テーマコード(参考)】
2E182
【Fターム(参考)】
2E182AA00
2E182AB00
2E182AB04
2E182AB13
2E182AC01
2E182BB01
2E182BB18
2E182CC03
2E182CC04
2E182CC11
2E182EE01
2E182EG01
(57)【要約】
【課題】上部のネット状布帛と下部のシートとで構成され、剛性とソフト性とを兼備した病院用カーテンを提供する。
【解決手段】病院用カーテンであって、上部のネット状布帛と下部のシートとを含み、前記シートが、2種以上の不織布を複合してなる複合不織布である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
病院用カーテンであって、上部のネット状布帛と下部のシートとを含み、前記シートが、2種以上の不織布を複合してなる複合不織布であることを特徴とする病院用カーテン。
【請求項2】
前記シートが、スパンボンド不織布とスパンレース不織布とを複合したものである、請求項1に記載の病院用カーテン。
【請求項3】
前記スパンボンド不織布の目付けが5~80g/mであり、前記スパンレース不織布の目付けが30~80g/mである、請求項2に記載の病院用カーテン。
【請求項4】
前記シートに難燃加工が施されてなる、請求項1~3のいずれか1項に記載の病院用カーテン。
【請求項5】
前記シートが取り外し可能である、請求項1~4のいずれか1項に記載の病院用カーテン。
【請求項6】
前記シートを取り外したのちの交換用シートが、人工血液バリア性がASTM F 1670-97規格を満足するシートである、請求項5に記載の病院用カーテン。
【請求項7】
前記交換用シートが透明フィルムである、請求項6に記載の病院用カーテン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、上部のネット状布帛と下部のシートとで構成され、剛性とソフト性とを兼備した病院用カーテンに関するものである。
【背景技術】
【0002】
ウイルス感染が疑われる患者の病床で使用したカーテンをそのまま使い続けると、その病床を別の患者が使用する場合などに、カーテンに付着したウイルスに他者が接触することによる感染拡大の危険性が高くなる。そこで、カーテンを取り外し、回収し、洗浄した後に再利用する方法が考えられるが、回収、洗浄などを行う作業者が作業中にウイルスに接触して感染する恐れがある。しかし、カーテン全部を毎回廃棄することはコストが高い。上部のネット状布帛と下部のシートとで構成されるものが提案されており(特許文献1、2)下部のシートのみを使い捨てにすることも、その布帛が織物である場合、依然としてコストが高いという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平10-234564号公報
【特許文献2】特開平11-276340号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、上記の背景に鑑みなされたものであり、その目的は、上部のネット状布帛と下部のシートとで構成され、使い捨てにすることができ、かつ、剛性とソフト性とを兼備した病院用カーテンを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者は、上部のネット状布帛と下部のシートとで構成される病院用カーテンにおいて、使い捨てするために十分コストが低く、かつ剛性とソフト性とを両立させるという課題を見出し、かかる課題を達成するため鋭意検討を重ねることにより本発明を完成するに至った。
【0006】
かくして、本発明によれば「病院用カーテンであって、上部のネット状布帛と下部のシートとを含み、前記シートが、2種以上の不織布を複合してなる複合不織布であることを特徴とする病院用カーテン。」が提供される。
【0007】
その際、前記シートを構成する不織布は、特に限定されず、スパンボンド、メルトブロー、SMS、フラッシュ紡糸、スパンレース、ニードルパンチ、サーマルボンド、レジンボンド、および、積層延展法、バーストファイバー法ならびにトウ開繊法を組み合わせる方法などの製造方法で得られる不織布のいずれかの2種以上を複合したものが考えられ、コストおよび得られる剛性とソフト性の点からスパンボンド不織布とスパンレース不織布とを複合したものであることが好ましい。また、前記スパンボンド不織布の目付けが5~80g/mであり、前記スパンレース不織布の目付けが30~80g/mであることが剛性とソフト性を両立する点から好ましい。また、前記シートに難燃加工が施されていることが好ましい。また、前記シートが取り外し可能であることが好ましい。また、火事の際にスプリンクラーでの天井から水噴霧時に水が効果的に散布されるように、カーテンの上部がネット状布帛であることが好ましい。
【0008】
また、前記シートを取り外したのちの交換用シートが、透明シートのような人工血液バリア性がASTM F 1670-97規格を満足するシートであってもよい。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、上部のネット状布帛と下部のシートとで構成され、コストが低く、剛性とソフト性とを兼備した病院用カーテンが得られる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に本発明を実施するための形態を詳述するが、本発明はこれらによって限定されるものではない。
まず、カーテンの上部はネット状布帛からなる。かかるネット状布帛の最上部はカーテンレールに係合してカーテンの開閉が自在であることが好ましい。
【0011】
また、ネット状布帛は、特開平10-234564号公報や特開平11-276340号公報に記載されているような、編目の大きさ1~10cmのネット編み組織の編物が好ましく、ラッセル編機により鎖編と挿入糸との組合せでネット状組織を編成して得ることができる。
【0012】
一方、前記シートは、2種以上の不織布を複合してなる複合不織布である。特に、前記シートが、スパンボンド不織布とスパンレース不織布とを複合したものであることが好ましい。その際、スパンボンド不織布のみでは、剛性が高くなりすぎソフト性が低下するおそれがある。逆に、スパンレース不織布のみでは、ソフト性が高くなりすぎ剛性が低下するおそれがある。製法としては、スパンボンド不織布にウエブを積層した後、水流交絡することが好ましい。
【0013】
また、前記スパンボンド不織布の目付けが5~80g/mであることが好ましく、また、5~30g/mであることが特に好ましい。また、前記スパンレース不織布の目付けが30~80g/mであることが好ましい。
【0014】
また、前記シートの目付けとしては、35~160g/mであることが好ましく、特に35~110g/mであることが特に好ましい。目付けが該範囲より小さいと剛性が低下して取り扱い性が損なわれるおそれがある。逆に、目付けが該範囲より大きいと軽量性が損なわれるおそれがある。
【0015】
前記ネット状布帛および/またはシートを構成する繊維としては特に限定されず、ポリエステル繊維、ポリプロピレン繊維、ナイロン繊維などいずれでもよい。
また、前記ネット状布帛および/またはシートは染色加工、プリント加工、難燃加工(例えば、リン系難燃剤を付与)、撥水加工などが施されていてもよい。
【0016】
本発明において、上部のネット状布帛と下部のシートとを、面ファスナーやスライドファスナーにより係合して、前記シートが取り外し可能としてもよい。使い捨てするのは、シート部分だけでもよく、また、コストに応じて、ネット状布帛とシートの両方を使い捨てにしてもよい。
【0017】
前記シートは、取り外して、必要な場合のみシートに交換しても構わない。交換用シートは、特に限定されないが、内部で血液が飛散する可能性がある手術を行うために、人工血液バリア性がASTM F 1670-97規格を満足するシートが好ましい。そのシートは特に限定されず、フィルム、不織布、樹脂をラミネートした不織布などが好ましく用いられるが、シート越しに内部が観察できるように、透明フィルムが特に好ましく用いられる。
【0018】
また、前記透明フィルムの目付けは特に限定されないが、150~1000g/mであることが好ましく、400~700g/mであることがより好ましい。前記透明フィルムの厚さは特に限定されないが、0.2~2mmであることが好ましく、0.3~1.0mm厚であることがより好ましい。
【0019】
また、本発明において、カーテンの巾は特に限定されないが、50~500cmの範囲内であることが好ましい。
また、本発明において、カーテンの高さは特に限定されないが、50~300cmの範囲内であることが好ましい。
【0020】
本発明は前記の構成を有するので、剛性とソフト性とを兼備する。なお、本発明の病院用カーテンは、手術用カーテン、間仕切り用などとして好適に使用される。
【実施例0021】
次に本発明の実施例を詳述するが、本発明はこれらによって限定されるものではない。なお、実施例中の各測定項目は下記の方法で測定した。
(1)シートの目付け
JIS L1096に従って測定した。
【0022】
[実施例1]
難燃性ポリエステルフィラメント仮撚加工糸165dtex双糸を挿入糸とし、難燃性ポリエステルフィラメント仮撚加工糸165dtex単糸を鎖編用糸として用い、8ゲージのラッセル編機で4cm四方のネット組織の編地を得て上部のネット状布帛とした。一方、ポリエステル繊維からなるスパンボンド不織布にポリエステル繊維からなるウエブを積層した後、水流交絡法で目付け55g/mの複合不織布(スパンボンド不織布とスパンレース不織布とを複合した)を得た後、難燃加工を施し下部のシートを得た。
【0023】
次いで、上部のネット状布帛と下部のシートにそれぞれとを面ファスナーの雄部と雌部とをそれぞれ取り付け病院用カーテン(巾200cm、高さ200cm)を得た。
かかる病院用カーテンにおいて、剛性とソフト性とを兼備するものであった。
【0024】
[実施例2]
実施例1の下部のシートを取り外し、透明フィルムからなるシートに取り換えた。この透明なシートは人工血液バリア性がASTM F 1670-97規格を満足するシートであった。
【0025】
[比較例1]
実施例1において、下部のシートを目付け55g/mのスパンボンド不織布で構成すること以外は実施例1と同様にした。かかる病院用カーテンはソフト性に劣るものであった。
【0026】
[比較例2]
実施例1において、下部のシートを目付け55g/mのスパンレース不織布で構成すること以外は実施例1と同様にした。かかる病院用カーテンは剛性に劣るものであった。
【産業上の利用可能性】
【0027】
本発明によれば、上部のネット状布帛と下部のシートとで構成され、使い捨てするために十分コストが低く、剛性とソフト性とを兼備した病院用カーテンが提供され、その工業的価値は極めて大である。