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特開2022-114263ワインの抗糖化性を評価するための方法
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  • 特開-ワインの抗糖化性を評価するための方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022114263
(43)【公開日】2022-08-05
(54)【発明の名称】ワインの抗糖化性を評価するための方法
(51)【国際特許分類】
   A61B 5/16 20060101AFI20220729BHJP
   A61B 10/00 20060101ALI20220729BHJP
   G01N 33/14 20060101ALI20220729BHJP
【FI】
A61B5/16 110
A61B10/00 E
G01N33/14
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021010489
(22)【出願日】2021-01-26
(71)【出願人】
【識別番号】399063714
【氏名又は名称】株式会社モトックス
(74)【代理人】
【識別番号】110002011
【氏名又は名称】特許業務法人井澤国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100072039
【弁理士】
【氏名又は名称】井澤 洵
(74)【代理人】
【識別番号】100123722
【弁理士】
【氏名又は名称】井澤 幹
(74)【代理人】
【識別番号】100157738
【弁理士】
【氏名又は名称】茂木 康彦
(74)【代理人】
【識別番号】100158377
【弁理士】
【氏名又は名称】三谷 祥子
(72)【発明者】
【氏名】杉浦 伸一
【テーマコード(参考)】
4C038
【Fターム(参考)】
4C038PP03
4C038PS00
(57)【要約】
【課題】ワインの抗糖化評価において消費者の実感に裏付けされた結果を得る。
【解決手段】工程1)被験者がワインを摂取する工程、(工程2)上記被験者から、アンケート方式で、上記被験者の心身の情報を取得する工程、(工程3)上記被験者について、糖化ストレスマーカーおよび/またはストレスを非侵襲法で定量的に測定する工程、を含む、ワインの抗糖化性を評価する方法。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の工程を含む、ワインの抗糖化性を評価する方法。
(工程1)被験者がワインを摂取する工程。
(工程2)上記被験者から、アンケート方式で、上記被験者の心身の情報を取得する工程。
(工程3)上記被験者について、糖化ストレスマーカーおよび/またはストレスを非侵襲法で定量的に測定する工程。
【請求項2】
上記工程2における上記心身の情報が、気分、睡眠、便通、食生活から選ばれる1以上に関する情報である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
上記工程3で、皮膚中AGEs、体内AGEs、心拍変動、皮膚状態から選ばれる1以上を非侵襲法で測定する、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
上記工程2および/または上記工程3で、インターネットに接続した端末および/または測定機器が用いられる、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
(工程4)上記ワインについて自動化された装置を用いてin vitro 抗糖化作用を評価する工程
を更に有する、請求項1に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ワインの抗糖化性を評価するための方法に関する。本方法は、ワイン試飲者に対して非侵襲測定を行うステップを含む。本方法は、被験ワインに対するin vitro抗糖化作用評価ステップを含む。
【背景技術】
【0002】
糖化(glycation)は、アミノ酸・蛋白と還元糖の非酵素的な化学反応であり、メイラード(Maillard)反応とも呼ばれる。糖化は食品の加熱中に起こる着色、香りや風味の変化、保存期間中の栄養価低下に関わる反応であることから食品化学の分野で注目されてきた。また、ヒト血中の糖化反応生成物HbA1cの測定は血糖コントロール指標として糖尿病治療分野で臨床応用されている。糖化は生体内においてヘモグロビンだけでなく様々な蛋白で起こり、 種々のカルボニル化合物を中心とする中間体を経て、糖化最終生成物(advanced glycation endproducts:AGEs)の生成に至ることが知られている。
【0003】
過去20年余りの研究によって、体内で進行する糖化が様々な疾患と関係すること、その一方で、天然物に糖化を抑制する機能を持つ化合物が含まれることが明らかになった。非特許文献1には、動脈硬化、糖尿病、アルツハイマー、骨粗鬆症、腎疾患、白内障、皮膚のしわなどの老化現象と糖化との関係、さらに、食品に含まれる抗糖化物質について、それまでの知見がまとめられている。
【0004】
最近は、抗糖化作用の高い食品素材を利用して糖化ストレスによる老化や疾病を予防する試みが盛んである。非特許文献2に記載されているような評価方法を用いて、より有用な抗糖化性物質の探索が試みられている。
【0005】
中でもワインは、嗜好品でありながらアンチエイジングが期待される食品として注目されている。これまで、非特許文献3~8,特許文献1などに記載されたような、ワイン用ブドウ品種に由来する抗糖化性物質に関する様々な研究成果が存在する。
【0006】
しかしながら、アンチエイジングを期待してワインを購入して飲む消費者にとっては、上述の先行技術文献に記載されたin vitroの抗糖化性評価結果は身近な情報ではない。消費者にとっては、ワインを飲んだことで自分の体にアンチエイジング効果があったかどうかが興味の対象である。専門誌や専門書に掲載された専門家の研究成果を読むよりも、「ワインを飲むことで***が良くなった。」「ワインを**日飲んだおかげで体の***に変化があった。」という実感や体験談で、より消費者のワイン購買意欲が高まる。ワインは健康食品であるとともに、伝統的な嗜好品である。消費者がワインを選択して購入する動機は、効能や効果の表示を見て医薬品や健康食品を選ぶ時のような単純なものではない。「体に良くて美味しい」が消費者の購入動機となる。
【0007】
これまで、ワインを市場と消費者に提供する側は、美味しさを消費者に実感してもらうための、売り場での試飲、ワイナリーツアー、ワインセミナーなどの販売促進活動を盛んに行ってきた。しかし、ワインを実際に飲んだ消費者に生じた抗糖化性効果を検出・分析し、その分析結果をワイン販売促進活動に活用する機会は乏しかった。上述の先行技術のような専門家による分析結果は数多く存在するが、これらは消費者の実感には触れていない。このため、消費者が好むワインを提案・予測するために直接的に役立つ情報が不足していた。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】「糖化による疾患と抗糖化食品・素材 普及版」シーエムシー出版,2016年発行,ISBN:978-4-7813-1127-2
【非特許文献2】「糖化ストレスと抗糖化作用の評価」オレオサイエンス 第18巻第2号(2018),Online ISSN:2087-3461
【非特許文献3】「ヤマブドウ機能性成分の新規抽出法による食品素材の開発」食品工業,第51巻第12号(2008),ISSN:0559-8990
【非特許文献4】「ワイン圧搾残渣に含まれる抗糖化作用物質の探索」日本ブドウ・ワイン学会誌,第23巻第2号96-97ページ(2012),ISSN:1342-2324
【非特許文献5】「ピノ・ノワールワイン圧搾残渣に含まれる抗糖化作用物質の探索」日本ブドウ・ワイン学会誌,第25巻第2号79-80ページ(2014),ISSN:1342-2324
【非特許文献6】「メルローワインに含まれるAGEs生成阻害物質の探索」日本ブドウ・ワイン学会誌,第27巻第2号62-63ページ(2016),ISSN:1342-2324
【非特許文献7】「カベルネ・ソーヴィニヨンワインに含まれる抗糖化物質の探索」日本ブドウ・ワイン学会誌,第29巻第2号100-101ページ(2018),ISSN:1342-2324
【非特許文献8】「ぶどう酒製造副産物からの回収された赤ブドウ外皮のフェノール類のキャラクタリゼーションとin vitro還元能力と抗糖化作用活性」Bioresource Technology,第140巻263-268ページ(2013),ISSN:0960-8524
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2016-138042号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
このように、ワインの抗糖化性を、科学的客観性と消費者の主観との両方で検討・評価した事例は、未だ見つかっていない。そこで本発明者は、消費者の実体験に基づき、消費者の共感を得られ易い、ワインの抗糖化性を評価するための、新たな手段を求めた。
【課題を解決するための手段】
【0011】
その結果、本発明者は、ワインの抗糖化性の評価方法として、アンケートと非侵襲測定を組み合わせた方法を見出した。すなわち本発明は以下のものである。
(発明1)以下の工程を含む、ワインの抗糖化性を評価する方法。(工程1)被験者がワインを摂取する工程。(工程2)上記被験者から、アンケート方式で、上記被験者の心身の情報を取得する工程。(工程3)上記被験者について、糖化ストレスマーカーおよび/またはストレスを非侵襲法で定量的に測定する工程。
(発明2)上記工程2における上記心身の情報が、気分、睡眠、便通、食生活から選ばれる1以上に関する情報である、発明1の方法。
(発明3)上記工程3で、皮膚中AGEs、体内AGEs、心拍変動、皮膚状態から選ばれる1以上を非侵襲法で測定する、発明1の方法。
(発明4)上記工程2および/または上記工程3で、インターネットに接続した端末および/または測定機器が用いられる、発明1の方法。
(発明5)(工程4)上記ワインについて自動化された装置を用いてin vitro 抗糖化作用を評価する工程 を更に有する、発明1の方法。
【発明の効果】
【0012】
本発明のワインの抗糖化性を評価する方法は、科学的客観性を担保し、かつ、被験者の感情や主観を考慮に入れた、評価方法である。本発明の方法では、客観的でありながら、ワインの購買者・消費者の共感や理解を得易い分析結果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の方法の1例を実行する様子を模式的に示す。
【発明を実施するための形態】
【0014】
[ワインの抗糖化性を評価する方法]
本発明:「ワインの抗糖化性を評価する方法」は、(工程1)被験者がワインを摂取する工程、(工程2)上記被験者から、アンケート方式で、上記被験者の心身の情報を取得する工程、(工程3)上記被験者について、糖化ストレスマーカーおよび/またはストレスを非侵襲法で定量的に測定する工程、を含む。
【0015】
本発明の方法で評価の対象とするワインは限定されない。上記ワインとしては、好ましくは、抗糖化性が高いとされるポリフェノール類の含有率が高いワイン、すなわち各種の赤ワインが用いられる。
【0016】
本発明の方法の被験者は健康な成人であれば制限されない。上記被験者としては、20歳以上65歳未満で糖尿病などのいわゆる生活習慣病に罹患していない男女が好ましい。
【0017】
[工程1]
本発明の方法の工程1は、被験者がワインを摂取する工程である。上記摂取は一般的には、いわゆるクール制で行う。1クールは、例えば、3日/週の摂取(1週間のいずれか1日は非摂取日とする)を6週間、6日/週の摂取(1週間のいずれか1日は非摂取日とする)を4週間と定める。1日のワイン摂取量は、市販のワインであれば一般的には50ml~250mlの範囲で設定する。
【0018】
[工程2]
本発明の工程2は、上記被験者から、アンケート方式で、上記被験者の心身の情報を取得する工程である。上記アンケートは本発明の方法の開始から終了までの期間、定期的に、例えば毎週、行うことが好ましい。
【0019】
上記心身の情報は、被験者の疲労やストレスに関連する要素であれば制限されない。このような心身の情報は、一般的には、気分、睡眠、便通、食生活に関する情報である。最初のアンケートでは例えば以下の質問と選択肢を設けることができる。
【0020】
Q01:現在の気分は?/A01:いつもより良い・いつもと同じ・いつもより悪い
Q02:昨夜の睡眠の質は?/A02:いつもより良い・いつもと同じ・いつもより悪い
Q03:今日の便通は?/A03:正常・不調
Q40:今日の食欲は?/A04:いつもより高い・いつもと同じ・いつもより低い
本発明では上記アンケートを、インターネットを介して行うことができる。上記被験者は、インターネットに接続されたスマートフォン、タブレット、PCなどの端末機器で上記アンケートのサイトにログインし、回答を入力する。入力された回答はインターネット上のサーバに格納され、集計プログラムによって集計され、統計される。
【0021】
[工程3]
本発明の工程3は、上記被験者について、糖化ストレスマーカーおよび/またはストレスを非侵襲法で定量的に測定する工程である。上記糖化ストレスマーカーおよび/またはストレスの指標は、生化学や臨床医学で一般的なものであれば、制限されない。そのような指標としては例えば、皮膚中AGEs、体内AGEs、心拍変動、皮膚状態などを用いることができる。
【0022】
皮膚中AGEsおよび体内AGEsは、蛍光式センサーで非侵襲式に測定される。を用いてこの方法は、皮膚に紫外線を照射したときに、組織内に蓄積した蛍光性AGEsが励起されて特有の自己蛍光を発する性質を利用している。このような蛍光式センサーとしては例えばAGE Reader(登録商標)、シャープライフサイエンス社製AGEセンサ「RQ-AG01J」などが市販されている。
【0023】
心拍変動は、心電波と脈波の変化から検出される。心拍変動を測定する簡易機器として、株式会社疲労科学研究所製「バイタルモニターVM500」を利用可能である。このモニターは、指先から心電波と脈波を採取し、心拍変動データを生成する。生成した心拍変動データはスマートフォン、タブレット、PCなどの端末機器に送信され、評価マトリックス上に評価結果が表示される。
【0024】
皮膚状態は、例えば、経皮水分蒸散量、角質水分量、真皮水分量、角質形態、角層CML量として検出される。経皮水分蒸散量、角質水分量、真皮水分量を測定する機器として種々のものが利用可能である。角層形態は、テープストリッピング法により測定することができる。この方法では、角層細胞を粘着テープで剥離採取する。この方法で、脱落角質細胞数、角質細胞面積、細胞携帯、核の残存率などを測定することができる。また、剥離採取した角層を生化学分析することもできる。剥離採取した角層の抽出液とALISA法による測定キットを用いて、角層抽出液に含まれるCML(AGEの1種であるカルボキシメチルリジン)の量を測定する。別途、角層抽出液に含まれるタンパク量を測定し、角層タンパクあたりのCML量(角質CML)を算出する。
【0025】
上記工程3は、本発明の方法の開始から終了までの期間、適当な頻度で、例えば4週間に1回、2週間に1回などの頻度で、行う。
【0026】
[工程4]
本発明の方法では、さらに工程4:上記ワインについて自動化された装置を用いてin vitro 抗糖化作用を測定する工程を有することができる。上記工程4で得られた結果を、上記工程2と工程3とで得られた被験者のデータと比較・対照して、様々なワインの消費者に対するアンチエイジング機能を予想することができる。
【0027】
上記in vitro抗糖化作用を測定するためには、ヒト血清アルブミン(human serum albumin:HSA)などのモデル蛋白と、グルコース、フルクトースなどの還元糖、試験対象のワインをリン酸緩衝液(pH7.4)中で60°C、40時間反応させる。その後、反応液中AGEs量を被験物質の有無で比較し、AGEs生成阻害率(%)を算出する。HSAとグルコースを60°Cで40時間インキュベートした時のAGEsの生成レベルは、37°Cで約60日に相当する。本発明では、インキュベート終了までの操作を自動化した装置で行うことができる。
【0028】
次に、生成したAGEsの検出と定量には、AGEs由来の蛍光強度測定(励起波長 370nm、蛍光波長 440nm)を用いることができる。蛍光性AGEsにはペントシジン(励起波長(ex)335nm/蛍光波長(em)385nm)、クロスリン(ex:379nm/em:463nm)、ピロピリジン(ex:370nm/em:455nm)などがある。反応液中には CML、ペントシジン、3-メチルデオキシグルコース(3DC)、グリオキサール(GO)、メチルグリオキサール(MGO)も生成するので、これらの生成量を各方法で測定することもできる。上記蛍光強度測定でも、測定値の出力や表示を自動的に行う装置を用いることができる。このような装置として、TECAM社製インフィニット/サインライズシリーズを用いることができる。
【0029】
上記in vitro抗糖化作用を測定する際には、試験対象のワインの濃度を3段階以上に設定して反応させた後、各反応液中のAGEsや糖化反応中間体の測定値をもとに上記ワインの50%生成阻害濃度を算出する。
【0030】
[評価]
本発明の方法を様々なワインと被験者に対して行うことができる。上記工程2と上記工程3、更に好ましくは上記工程4とで得られた回答・測定結果を蓄積・参照・比較することによって、ワインの購入者・消費者にアンチエイジング効果やストレス解消効果などをもたらす抗糖化性ワイン銘柄をより正確に、詳しく、選ぶことができる、また、ワインの購入者・消費者に最適化したワイン銘柄を提案することができる。
【実施例0031】
以下の条件で赤ワインの抗糖化性を評価した。
【0032】
[ワイン,ミネラルウォーター]株式会社モトックスが輸入した2016年フランス・ボルドー産赤ワイン(アルコール濃度:13.5%)を用いた。対照実験のために市販のミネラルウォーターを準備した。
【0033】
[被験者]糖尿病を発症しておらず糖尿病予備軍でもない20歳以上65 歳未満の男性30人と女性30人を選んだ。
【0034】
[開始]被験者を集めて説明会を行った。被験者60人をランダムに2つのグループ(グループAとグループB)に分けた。被験者に摂取するワインとミネラルウォーター、グラスを配布した。
【0035】
[工程1(グループAの被験者)]
・2~5週目の4週間、説明会で配布されたワインを摂取した。各週6回(6日/週)上記ワインを摂取した。1日の上記ワイン摂取量は125mlであった。この期間中は他のアルコール類を摂取しなかった。
・6~7週目の2週間は、説明会で配布されたワインもミネラルウォーターも摂取せず、通常の生活を送った。ただし、この期間中はアルコール類を摂取しなかった。
・8~11週目の4週間、ワインの代わりに説明会で配布されたミネラルウォーターを摂取した。各週6回(6日/週)上記ミネラルウォーターを摂取した。1日の上記ミネラルウォーター摂取量は125mlであった。この期間中はアルコール類を摂取しなかった。
【0036】
[工程1(グループBの被験者)]
・2~5週目の4週間、説明会で配布されたミネラルウォーターを摂取した。各週6回(6日/週)上記ミネラルウォーターを摂取した。1日の上記ミネラルウォーター摂取量は125mlであった。この期間中はアルコール類を摂取しなかった。
・6~7週目の2週間は、説明会で配布されたワインもミネラルウォーターも摂取せず、通常の生活を送った。ただし、この期間中はアルコール類を摂取しなかった。
・8~11週目の4週間、説明会で配布されたワインを摂取した。各週6回(6日/週)上記ワインを摂取した。1日のワイン摂取量は125mlであった。この期間中は他のアルコール類を摂取しなかった。
【0037】
[工程2]全被験者に対して、開始時(説明会の日)、5週目の最終日、8週目の初日、11週目の最終日に、以下の非侵襲測定を行った。
・体内AGEs量:指先をAGEsセンサー(シャープライフサイエンス社製AGEセンサ「RQ-AG01J」)にタッチして測定した。
・心拍変動:株式会社疲労科学研究所製「バイタルモニターVM500」を用いてストレス度を測定した。被験者の親指をセンサに差し入れて測定し、評価結果が測定会場の端末に出力される。
・皮膚状態:Delfin社製「VAPO METER SWL-5001」を用いて経皮水分蒸散量を測定した。被験者の左腕の内側の皮膚に計測器の先端のセンサーを10秒間接触させて測定した。
【0038】
[工程3]全被験者が、1週目(説明会から1週間)から毎週、E-mailで、気分、睡眠の質、便通などの体調全般を尋ねるアンケートに回答した。
【0039】
[工程4]別途、説明会で配布されたワインについて、in vitro 抗糖化作用を測定した。リン酸緩衝液中で上記ワインとヒト血清アルブミン、還元糖を反応させる前処理は、半自動化して行った。生成したAGEsの検出と定量にはTECAN社製蛍光プレートリーダー「Infinite(登録商標)200PRO」を使用した。
【0040】
[評価]上記工程2で得られたアンケート結果と工程3で得られた測定結果を比較対照したところ、説明会で配布したワインの摂取によって被験者体内のAGEs量の減少とストレス軽減がもたらされたことが明らかになった。工程4で得られた結果は、この効果を裏付けていた。
【産業上の利用可能性】
【0041】
本発明によって、消費者の実感に裏付けされたワインの抗糖化作用を確認することができる。本発明の方法によってワインを評価し選定することによって、消費者にとってより満足度が高いと期待されるワインを市場に提供することができる。本発明は、ワインの生産者と販売者にとって、新たな市場開拓の手段となり得る。
【符号の説明】
【0042】
101 グループAのワイン摂取期間(工程1)
102 グループBのワイン摂取期間(工程1)
2 アンケート回答(工程2)
3 非侵襲測定
4 in vitro 抗糖化作用の測定
図1