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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022114273
(43)【公開日】2022-08-05
(54)【発明の名称】流体制御装置
(51)【国際特許分類】
   F02M 26/54 20160101AFI20220729BHJP
   F02M 26/66 20160101ALI20220729BHJP
   F16K 31/04 20060101ALI20220729BHJP
【FI】
F02M26/54
F02M26/66
F16K31/04 K
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021010505
(22)【出願日】2021-01-26
(71)【出願人】
【識別番号】000116574
【氏名又は名称】愛三工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000291
【氏名又は名称】弁理士法人コスモス国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】吉岡 衛
(72)【発明者】
【氏名】梶間 弘和
(72)【発明者】
【氏名】河井 伸二
(72)【発明者】
【氏名】中島 一真
【テーマコード(参考)】
3G062
3H062
【Fターム(参考)】
3G062BA06
3G062EA11
3G062FA09
3G062FA16
3H062AA02
3H062AA15
3H062BB04
3H062BB33
3H062CC02
3H062DD01
3H062EE06
3H062HH02
3H062HH10
(57)【要約】
【課題】流体制御弁の全閉位置を規定するストッパと当接部の有無にかかわらず、全閉位置を規定するための開弁開始位置を吸気圧力の変化に基き精度よく規定すること。
【解決手段】流体制御装置は、エンジン1に対応して設けられ、吸気通路2に連通するEGR通路12を流れるEGRガス流量を制御するEGR弁14と、吸気通路2における吸気圧力を検出する吸気圧センサ84と、EGR弁14を制御する電子制御装置(ECU)90とを備える。ECU90は、雌ねじ山の第1雌ねじ山面と雄ねじ山の第2雄ねじ山面とが係合し、かつ、スプリングにより弁体が弁軸と共にステップモータから遠ざかる方向へ最大限に付勢された完全係合付勢状態から、ステップモータを段階的に制御することで弁体を弁軸と共にステップモータに近付く方向へ段階的に移動させ、検出される吸気圧力が上昇したときのステップモータの制御値を開弁開始位置として判定する。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
吸気通路を介して吸気を吸入し、排気通路を介して排気を排出するように構成したエンジンに対応して設けられ、
前記吸気通路に連通する所定の通路又は前記吸気通路を流れる所定の流体の流量を制御するための流体制御弁と、
前記吸気通路における前記吸気の圧力を検出するための吸気圧力検出手段と、
前記流体制御弁を制御するための制御手段と
を備えた流体制御装置において、
前記流体制御弁は、
ハウジングと、
前記ハウジングに設けられ、一端部と他端部を含む弁軸と、
前記弁軸の前記一端部に設けられる弁体と、
前記弁軸の前記他端部の側に設けられる雄ねじと、
前記弁軸の前記他端部に対応して前記ハウジングに設けられ、前記弁軸を前記弁体と共に軸線方向へ往復動させるためのアクチュエータと、
前記アクチュエータは、前記雄ねじに螺合される雌ねじを有するロータを含むことと、
前記雄ねじは、前記弁軸の前記軸線方向において螺旋状に連なる雄ねじ山を有することと、
前記雄ねじ山は、前記アクチュエータから遠ざかる方へ向いた第1雄ねじ山面と、その第1雄ねじ山面の反対側に位置する第2雄ねじ山面を含むことと、
前記雌ねじは、前記弁軸の前記軸線方向において螺旋状に連なる雌ねじ山を有することと、
前記雌ねじ山は、前記アクチュエータから遠ざかる方へ向いた第1雌ねじ山面と、その第1雌ねじ山面の反対側に位置する第2雌ねじ山面を含むことと、
前記雄ねじと前記雌ねじとの間には、前記弁軸の前記軸線方向において所定のバックラッシが設けられることと、
前記弁体を前記弁軸と共に前記アクチュエータから遠ざかる方向又は前記アクチュエータに近付く方向へ付勢するためのスプリングと
を備え、
前記制御手段は、前記雌ねじ山の前記第1雌ねじ山面と前記雄ねじ山の前記第2雄ねじ山面とが係合し、かつ、前記スプリングにより前記弁体が前記弁軸と共に前記アクチュエータから遠ざかる方向へ最大限に付勢された完全係合付勢状態から、前記アクチュエータを段階的に制御することで前記弁体を前記弁軸と共に前記アクチュエータに近付く方向へ段階的に移動させ、又は、前記雌ねじ山の前記第2雌ねじ山面と前記雄ねじ山の前記第1雄ねじ山面とが係合し、かつ、前記スプリングにより前記弁体が前記弁軸と共に前記アクチュエータに近付く方向へ最大限に付勢された完全係合付勢状態から、前記アクチュエータを段階的に制御することで前記弁体を前記弁軸と共に前記アクチュエータから遠ざかる方向へ段階的に移動させ、検出される前記吸気圧力が上昇したときの前記アクチュエータの制御値を開弁開始位置として判定する
ことを特徴とする流体制御装置。
【請求項2】
請求項1に記載の流体制御装置において、
前記制御手段は、判定された前記開弁開始位置から1段階前の制御値を基準となる全閉位置として学習する
ことを特徴とする流体制御装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の流体制御装置において、
前記流体制御弁の前記弁体は、対応する弁座に着座した全閉状態から、前記アクチュエータを1段階だけ制御することで開弁を開始したときに、前記吸気圧力検出手段により所要の圧力変化を検出できる開口面積が前記弁座との間で得られる外周形状を有する
ことを特徴とする流体制御装置。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれかに記載の流体制御装置において、
前記所定の通路は、前記吸気通路と前記排気通路との間を接続するEGR通路であり、
前記所定の流体は、前記エンジンから前記排気通路へ排出される排気の一部であって前記EGR通路を介して前記吸気通路へ流して前記エンジンへ還流させるEGRガスであり、
前記流体制御弁は、前記EGRガスの流量を調節するために前記EGR通路に設けられるEGR弁である
ことを特徴とする流体制御装置。
【請求項5】
請求項1乃至3のいずれかに記載の流体制御装置において、
前記所定の通路は、前記吸気通路であり、
前記所定の流体は、前記吸気通路を介して前記エンジンへ吸入される吸気であり、
前記流体制御弁は、前記吸気の流量を調節するために前記吸気通路に設けられるスロットル弁である
ことを特徴とする流体制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この明細書に開示される技術は、通路における流体の流量を制御するように構成した流体制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の技術として、例えば、下記の特許文献1に記載される技術(エンジンの排気還流装置)が知られている。この従来技術は、エンジンから排気通路へ排出される排気の一部をEGRガスとして吸気通路へ流してエンジンへ還流させるEGR通路と、EGR通路におけるEGRガス流量を調節するEGR弁と、EGR通路から吸気通路へEGRガスが流れ込む位置より下流の吸気通路における吸気圧力を検出する吸気圧センサと、EGR弁を制御する電子制御装置(ECU)とを備える。EGR弁は、弁座と、弁座に着座可能な弁体と、弁軸を支持する出力軸(弁軸)と、弁軸と共に弁体を駆動するステップモータとを含む。ステップモータを構成するロータと弁軸との間には、雄ねじと雌ねじからなる変換機構(ねじ機構)が設けられる。また、弁軸にはストッパが設けられ、ロータにはストッパに当接する当接部が設けられる。EGR弁の全閉時には、ストッパが当接部に接触することで、弁体の基準となる初期位置(全閉位置)が規定されるようになっている。ECUは、弁体の開度を全閉から段階的に微少に増加させ、それに応じて検出される吸気圧力が変化したときの開度を異物噛み込み位置として判定し、その異物噛み込み位置までの開度を微少開度として設定する。ECUは、この異物噛み込み位置や微少開度をステップモータのステップ数により規定している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2013-249774号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、特許文献1に記載の技術では、ECUは、吸気圧力が変化したときの開度を異物噛み込み位置として判定し、微少開度として設定している。そして、この異物噛み込み位置の基準となる全閉位置の規定は、弁座と弁体の相対位置を規定するストッパと当接部との接触に依存している。これらストッパや当接部には、機械的バラツキや経年変化があることから、全閉位置にバラツキや経年変化が生じるおそれがあり、EGR弁を精度よく目標開度に制御できなくなるおそれがある。また、ストッパと当接部を持たないEGR弁を想定した場合、基準となる全閉位置を正確に規定することができず、ロータと弁軸との間のねじ機構には、バックラッシ、ハウジングの線膨張差、組み付けガタ及び脱調によるバラツキがあることから、更に、EGR弁を精度よく目標開度に制御することができない。そのため、EGRガス流量を精度よく制御することができなくなるおそれがある。
【0005】
この開示技術は、上記事情に鑑みてなされたものであって、その目的は、流体制御弁の基準となる全閉位置を規定するためのストッパと当接部の有無にかかわらず、その全閉位置を規定するための開弁開始位置を吸気圧力の変化に基いて精度よく規定することを可能とした流体制御装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、請求項1に記載の技術は、吸気通路を介して吸気を吸入し、排気通路を介して排気を排出するように構成したエンジンに対応して設けられ、吸気通路に連通する所定の通路又は吸気通路を流れる所定の流体の流量を制御するための流体制御弁と、吸気通路における吸気の圧力を検出するための吸気圧力検出手段と、流体制御弁を制御するための制御手段とを備えた流体制御装置において、流体制御弁は、ハウジングと、ハウジングに設けられ、一端部と他端部を含む弁軸と、弁軸の一端部に設けられる弁体と、弁軸の他端部の側に設けられる雄ねじと、弁軸の他端部に対応してハウジングに設けられ、弁軸を弁体と共に軸線方向へ往復動させるためのアクチュエータと、アクチュエータは、雄ねじに螺合される雌ねじを有するロータを含むことと、雄ねじは、弁軸の軸線方向において螺旋状に連なる雄ねじ山を有することと、雄ねじ山は、アクチュエータから遠ざかる方へ向いた第1雄ねじ山面と、その第1雄ねじ山面の反対側に位置する第2雄ねじ山面を含むことと、雌ねじは、弁軸の軸線方向において螺旋状に連なる雌ねじ山を有することと、雌ねじ山は、アクチュエータから遠ざかる方へ向いた第1雌ねじ山面と、その第1雌ねじ山面の反対側に位置する第2雌ねじ山面を含むことと、雄ねじと雌ねじとの間には、弁軸の軸線方向において所定のバックラッシが設けられることと、弁体を弁軸と共にアクチュエータから遠ざかる方向又はアクチュエータに近付く方向へ付勢するためのスプリングとを備え、制御手段は、雌ねじ山の第1雌ねじ山面と雄ねじ山の第2雄ねじ山面とが係合し、かつ、スプリングにより弁体が弁軸と共にアクチュエータから遠ざかる方向へ最大限に付勢された完全係合付勢状態から、アクチュエータを段階的に制御することで弁体を弁軸と共にアクチュエータに近付く方向へ段階的に移動させ、又は、雌ねじ山の第2雌ねじ山面と雄ねじ山の第1雄ねじ山面とが係合し、かつ、スプリングにより弁体が弁軸と共にアクチュエータに近付く方向へ最大限に付勢された完全係合付勢状態から、アクチュエータを段階的に制御することで弁体を弁軸と共にアクチュエータから遠ざかる方向へ段階的に移動させ、検出される吸気圧力が上昇したときのアクチュエータの制御値を開弁開始位置として判定することを趣旨とする。
【0007】
上記技術の構成によれば、制御手段は、雌ねじ山の第1雌ねじ山面と雄ねじ山の第2雄ねじ山面とが係合し、かつ、スプリングにより弁体が弁軸と共にアクチュエータから遠ざかる方向へ最大限に付勢された完全係合付勢状態から、アクチュエータを段階的に制御することで弁体を弁軸と共にアクチュエータに近付く方向へ段階的に移動させる。又は、制御手段は、雌ねじ山の第2雌ねじ山面と雄ねじ山の第1雄ねじ山面とが係合し、かつ、スプリングにより弁体が弁軸と共にアクチュエータに近付く方向へ最大限に付勢された完全係合付勢状態から、アクチュエータを段階的に制御することで弁体を弁軸と共にアクチュエータから遠ざかる方向へ段階的に移動させる。そして、制御手段は、吸気圧力検出手段により検出される吸気圧力が上昇したときのアクチュエータの制御値を開弁開始位置として判定する。従って、全閉位置を規定するためのストッパと当接部の有無にかかわらず、機械的バラツキや経年変化にかかわらず、吸気圧力の上昇変化に基いて開弁開始位置が一様に判定される。
【0008】
上記目的を達成するために、請求項2に記載の技術は、請求項1に記載の技術において、制御手段は、判定された開弁開始位置から1段階前の制御値を基準となる全閉位置として学習することを趣旨とする。
【0009】
上記技術の構成によれば、請求項1に記載の技術の作用に加え、判定された開弁開始位置に基づき、ストッパと当接部の有無にかかわらず、機械的バラツキや経年変化にかかわらず、全閉位置が一様に学習される。
【0010】
上記目的を達成するために、請求項3に記載の技術は、請求項1又は2に記載の技術において、流体制御弁の弁体は、対応する弁座に着座した全閉状態から、アクチュエータを1段階だけ制御することで開弁を開始したときに、吸気圧力検出手段により所要の圧力変化を検出できる開口面積が弁座との間で得られる外周形状を有することを趣旨とする。
【0011】
上記技術の構成によれば、請求項1又は2に記載の技術の作用に加え、弁体の外周形状によれば、弁体が弁座に着座した全閉状態から、アクチュエータを1段階だけ制御して開弁を開始したときに弁座との間で所定の開口面積が得られる。そして、この開口面積により、開弁開始位置の判定に必要な圧力変化が吸気圧力検出手段により確実に検出される。
【0012】
上記目的を達成するために、請求項4に記載の技術は、請求項1乃至3のいずれかに記載の技術において、所定の通路は、吸気通路と排気通路との間を接続するEGR通路であり、所定の流体は、エンジンから排気通路へ排出される排気の一部であってEGR通路を介して吸気通路へ流してエンジンへ還流させるEGRガスであり、流体制御弁は、EGRガスの流量を調節するためにEGR通路に設けられるEGR弁であることを趣旨とする。
【0013】
上記技術の構成によれば、EGRガスの流量を調節するためにEGR通路に設けられるEGR弁につき、請求項1乃至3のいずれかに記載の技術と同等の作用が得られる。
【0014】
上記目的を達成するために、請求項5に記載の技術は、請求項1乃至3のいずれかに記載の技術において、所定の通路は、吸気通路であり、所定の流体は、吸気通路を介してエンジンへ吸入される吸気であり、流体制御弁は、吸気の流量を調節するために吸気通路に設けられるスロットル弁であることを趣旨とする。
【0015】
上記技術の構成によれば、吸気の流量を調節するために吸気通路に設けられるスロットル弁につき、請求項1乃至3のいずれかに記載の技術と同等の作用が得られる。
【発明の効果】
【0016】
請求項1に記載の技術によれば、流体制御弁の基準となる全閉位置を規定するためのストッパと当接部の有無にかかわらず、その全閉位置を規定するための開弁開始位置を吸気圧力の変化に基いて精度よく規定することができる。
【0017】
請求項2に記載の技術によれば、請求項1に記載の技術の効果に加え、基準となる全閉位置を開弁開始位置に基づいて適正に規定することができる。この結果、流体制御弁を目標開度に精度よく制御することができ、延いては流体流量を精度よく制御することができる。
【0018】
請求項3に記載の技術によれば、請求項1又は2に記載の技術の効果に加え、開弁開始位置を精度よく判定することができる。
【0019】
請求項4に記載の技術によれば、EGRガスの流量を調節するためにEGR通路に設けられるEGR弁につき、請求項1乃至3のいずれかに記載の技術と同等の効果を得ることができる。
【0020】
請求項5に記載の技術によれば、吸気の流量を調節するために吸気通路に設けられるスロットル弁につき、請求項1乃至3のいずれかに記載の技術と同等の効果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】第1実施形態に係り、エンジンシステムを示す概略構成図。
図2】第1実施形態に係り、EGRユニットの具体例を示す断面図。
図3】第1実施形態に係り、図2の一点鎖線四角で囲った部分であって全閉に動作したEGR弁を示す断面図。
図4】第1実施形態に係り、図2の一点鎖線四角で囲った部分であって全開に動作したEGR弁を示す断面図。
図5】第1実施形態に係り、全開状態における雄ねじと雌ねじとの螺合状態の一部を示す拡大断面図。
図6】第1実施形態に係り、突き当て全閉状態における雄ねじと雌ねじとの螺合状態の一部を示す拡大断面図。
図7】第1実施形態に係り、初期開弁位置判定制御の内容を示すフローチャート。
図8】第1実施形態に係り、初期開弁位置判定制御の内容を示すフローチャート。
図9】第1実施形態に係り、EGR弁を構成するステップモータのステップ数とEGR弁を流れるEGRガス流量との関係を示すグラフ。
図10】第1実施形態に係り、エンジン回転数とエンジン負荷に応じた目標開度を求めるために参照される目標開度マップ。
図11】第1実施形態に係り、開弁位置判定制御の内容を示すフローチャート。
図12】第1実施形態に係り、開弁位置判定制御の内容を示すフローチャート。
図13】第1実施形態に係り、開弁位置判定制御の内容を示すフローチャート。
図14】第2実施形態に係り、エンジンシステムを示す概略構成図。
図15】第2実施形態に係り、エンジンのクランク角に対する吸気圧力の変化を示すグラフ。
図16】第2実施形態に係り、初期開弁位置判定制御の内容を示すフローチャート。
図17】第2実施形態に係り、初期開弁位置判定制御の内容を示すフローチャート。
図18】第2実施形態に係り、初期開弁位置判定制御の内容を示すフローチャート。
図19】第2実施形態に係り、エンジン温度に対する始動時開度とアイドル開度を求めるために参照される開度マップ。
図20】第3実施形態に係り、全閉に動作したEGR弁を示す断面図。
図21】第4実施形態に係り、流体制御弁を構成する弁体の一部と弁座の全閉状態を弁座のみを切断して示す正面図。
図22】第4実施形態に係り、流体制御弁を構成する弁体の一部と弁座の開弁状態を弁座のみ切断して示す正面図。
図23】第4実施形態に係り、弁体と弁座の開弁状態につき、図22の1点鎖線で囲った部分を拡大して示す正面図。
図24】第4実施形態に係り、対比例として従前の弁体の全閉状態を示す図21に準ずる正面図。
図25】第4実施形態に係り、対比例として従前の弁体の開弁状態を示す図22に準ずる正面図。
図26】第4実施形態に係り、弁体の開弁状態を示す図23に準ずる拡大した正面図。
【発明を実施するための形態】
【0022】
<第1実施形態>
先ず、流体制御装置をガソリンエンジンシステムに具体化した第1実施形態について図面を参照して説明する。
【0023】
[エンジンシステムについて]
図1に、この実施形態のガソリンエンジンシステム(以下、単に「エンジンシステム」と言う。)を概略構成図により示す。自動車に搭載されたエンジンシステムは、複数の気筒を有するエンジン1を備える。このエンジン1は、4気筒、4サイクルのレシプロエンジンであり、ピストン及びクランクシャフト等の周知の構成を含む。エンジン1には、各気筒へ吸気を導入するための吸気通路2と、エンジン1の各気筒から排気を導出するための排気通路3が設けられる。吸気通路2には、その上流側からエアクリーナ9、スロットル弁4及び吸気マニホールド5が設けられる。排気通路3には、その上流側から順に排気マニホールド6及び触媒7が設けられる。触媒7には、排気を浄化するために、例えば、三元触媒が内蔵される。加えて、このエンジンシステムは、高圧ループタイプの排気還流装置(EGR装置)11を備える。
【0024】
スロットル弁4は、吸気マニホールド5より上流の吸気通路2に配置され、運転者のアクセル操作に応じてバタフライ式の弁体4aを開度可変に開閉駆動させることで、吸気通路2を流れる吸気量を調節するようになっている。吸気マニホールド5は、主として樹脂材より構成され、エンジン1の直上流にて吸気通路2に配置され、吸気が導入される一つのサージタンク5aと、サージタンク5aに導入された吸気をエンジン1の各気筒へ分配するためにサージタンク5aから分岐した複数(4つ)の分岐管5bとを含む。
【0025】
エンジン1には、各気筒に対応して燃料を噴射するための燃料噴射装置(図示略)が設けられる。燃料噴射装置は、燃料供給装置(図示略)から供給される燃料をエンジン1の各気筒へ噴射するように構成される。各気筒では、燃料噴射装置から噴射される燃料と吸気マニホールド5から導入される吸気とにより可燃混合気が形成される。
【0026】
エンジン1には、各気筒に対応して点火装置(図示略)が設けられる。点火装置は、各気筒で可燃混合気に点火するように構成される。各気筒内の可燃混合気は、点火装置の点火動作により爆発・燃焼し、燃焼後の排気は、各気筒から排気マニホールド6及び触媒7を経て外部へ排出される。このとき、各気筒でピストン(図示略)が上下運動し、クランクシャフト(図示略)が回転することにより、エンジン1に動力が得られる。
【0027】
[EGR装置について]
この実施形態のEGR装置11は、エンジン1の各気筒から排気通路3へ排出される排気の一部を排気還流ガス(EGRガス)として吸気通路2へ流してエンジン1の各気筒へ還流させるように構成される。EGRガスは、この開示技術における所定の流体の一例に相当する。EGR装置11は、排気通路3から吸気通路2へEGRガスを流すために吸気通路2と排気通路3との間を接続する排気還流通路(EGR通路)12と、EGR通路12を流れるEGRガスを冷却するための排気還流クーラ(EGRクーラ)13と、EGR通路12を流れるEGRガスの流量を調節するためにEGRクーラ13より下流に設けられた排気還流弁(EGR弁)14と、EGR通路12を流れるEGRガスをエンジン1の各気筒へ分配するために、吸気マニホールド5の各分岐管5bへEGRガスを分配する排気還流ガス分配器(EGRガス分配器)15とを備える。EGRガス分配器15は、樹脂材により構成され、EGRクーラ13及びEGR弁14より下流のEGR通路12に設けられる。EGR通路12は、入口12aと出口12bを含み、その入口12aは、触媒7より下流の排気通路3に接続され、その出口12bは、EGRガス分配器15に接続される。EGR通路12は、この開示技術における所定の通路の一例に相当する。EGR通路12において、EGR弁14はEGRクーラ13に隣接して設けられる。この実施形態で、EGR弁14は、EGRクーラ13の出口24に対応してEGRクーラ13と一体に設けられる。EGRクーラ13とEGR弁14とによりEGRユニット17が構成される。EGRクーラ13は、EGR通路12を流れるEGRガスを冷却するために、EGRガスとエンジンの冷却水との間で熱交換を行うように構成される。EGR弁14は、この開示技術における流体制御弁の一例に相当する。
【0028】
このEGR装置11では、EGR弁14が開弁することにより、排気通路3を流れる排気の一部がEGRガスとしてEGR通路12を流れ、EGRクーラ13、EGR弁14及びEGRガス分配器15を介して吸気マニホールド5の各分岐管5bへ分配され、更にエンジン1の各気筒へ分配されて還流される。
【0029】
EGRガス分配器15は、主として樹脂材により構成され、全体として横長な形状を有し、その長手方向(図1の左右方向)において、図1に示すように、吸気マニホールド5の複数の分岐管5bを横切るように配置される。この実施形態で、EGRガス分配器15は、EGR通路12の出口12bから導入されるEGRガスが集まる一つのガスチャンバ15aと、ガスチャンバ15aから分岐され、ガスチャンバ15aから各分岐管5bへEGRガスを分配する複数(4つ)のガス分配通路15bとを含む。
【0030】
[EGRユニットについて]
図2に、EGRユニット17の具体例を断面図により示す。図2において、EGRクーラ13は、ケーシング21と、ケーシング21の中に設けられる熱交換器22と、ケーシング21にEGRガスを導入するための入口23と、ケーシング21からEGRガスを導出するための出口24とを含む。この実施形態において、EGRクーラ13は、EGR通路12において、出口24が入口23よりも垂直方向において高い位置に配置されるように斜めに配置される。従って、このEGRクーラ13では、EGRガスが入口23から出口24へ向けて斜め上方へ向けて流れる。
【0031】
ケーシング21は、熱交換器22が設けられる本体部21aと、本体部21aから入口23までの間の導入部21bと、本体部21aから出口24までの間の導出部21cと、導出部21cより下流にてEGR弁14が組み付けられる組付部21dとを含む。導入部21bは、その内部に導入空間25を有する。導出部21cは、その内部に導出空間26を有する。熱交換器22は、冷却水が流れる水通路31と、水通路31の中に配置され、EGRガスが流れるガス通路32とを含む。水通路31は、扁平形状をなし互いに平行に配置された複数の小水通路31aを含む。ガス通路32は、小水通路31aの間にて扁平形状をなし互いに平行に配置された複数の小ガス通路32aを含む。各小水通路31aの外壁には、多数のフィン33が設けられる。各小水通路31aの軸方向両端は封鎖される。本体部21aには、水通路31に冷却水を取り入れるための取入口34と、水通路31から冷却水を取り出すための取出口35が設けられる。取入口34から取り入れられた冷却水は、水通路31を流れて取出口35から取り出される。従って、この入口23から導入空間25に導入されたEGRガスは、ガス通路32を通過して導出空間26へ流れる。ガス通路32を通過するEGRガスは、水通路31との間で熱交換が行われ、冷却される。
【0032】
ケーシング21の組付部21dには、EGRクーラ13の出口24に連通する組付孔28と流路29が設けられる。流路29の一端には出口29aが設けられる。組付孔28には、EGR弁14が組み付けられ、出口24には、組み付けられたEGR弁14の弁体43が着座(閉弁)又は離間(開弁)する弁座30が設けられる。この実施形態では、組付部21dにEGR弁14が組み付けられた状態で、ポペット式であって内開式のEGR弁が構成される。そして、EGR弁14の弁体43が弁座30から離間することで、EGRガスがEGRクーラ13の出口24から流路29へ流れ、出口29aから導出される。
【0033】
[EGR弁の構成について]
次に、EGR弁14の構成について説明する。図3に、図2の一点鎖線四角S1で囲った部分であって全閉に動作したEGR弁14を断面図により示す。図4に、図2の一点鎖線四角S1で囲った部分であって全開に動作したEGR弁14を断面図により示す。図3図4に示すように、EGR弁14は、ハウジング41と、ハウジング41に設けられ、下端部(一端部)と上端部(他端部)を含む弁軸42と、弁軸42の下端部に設けられる弁体43と、弁軸42の上端部に対応してハウジング41に設けられ、弁軸42を弁体43と共に軸線方向へ往復動させるためのステップモータ44と、弁体43を弁軸42と共にステップモータ44から遠ざかる方向へ付勢するためのスプリング45とを含む。弁軸42は、ハウジング41の中心を貫通して配置され、上端部に雄ねじ46が設けられる。ステップモータ44は、この開示技術におけるアクチュエータの一例に相当する。
【0034】
ハウジング41は、EGR弁14の外側を覆う外ハウジング61と、外ハウジング61の内側に配置される内ハウジング62と、内ハウジング62の下部内側に配置される軸受ハウジング63とを含む。内ハウジング62の上部は、ステップモータ44のステータ71を構成し、その外周にはコイル72が設けられる。軸受ハウジング63は、その中心部に弁軸42をスラスト方向へ往復動可能に支持するスラスト軸受部63aを含み、スラスト軸受部63aの周囲は中空となっている。ステータ71の内側には、ステップモータ44を構成するロータ73が配置される。外ハウジング61には、上方へ突出するコネクタ61aが形成される。コネクタ61aには、コイル72に接続される端子74が設けられる。外ハウジング61の下部には、フランジ61bが形成される。EGRクーラ13の組付部21dには、フランジ21daが形成される。EGR弁14は、これらフランジ61b,21daを介してボルト等(図示略)によりEGRクーラ13に固定される。
【0035】
ロータ73は、ロータ本体73aと、ロータ本体73aの外周に設けられるマグネット73bとを含む。ロータ本体73aの下端には、下方へ伸びるスリーブ75が設けられ、スリーブ75の外周と内ハウジング62との間には、ラジアル軸受76が設けられる。ロータ73は、ラジアル軸受76によりステータ71の内側にて回転可能に支持される。ロータ本体73aの中心には、弁軸42の雄ねじ46に螺合される雌ねじ47が設けられる。雄ねじ46と雌ねじ47との間には、弁軸42の軸線方向において所定のバックラッシ49(図5図6参照)が設けられる。
【0036】
図3図4は、EGR弁14の内ハウジング62の下部がEGRクーラ13の組付部21dの組付孔28に組み付けられた状態を示す。この組み付け状態において、EGRクーラ13の出口24と組付部21dの流路29とは、EGRクーラ13からEGRガスが流れる一連の流路48(二点鎖線で概形を示す。)を構成する。この一連の流路48は、出口24に設けられた弁座30を境として、弁座30より下側のステップモータ44から遠い上流側流路48aと、弁座30より上側のステップモータ44に近い下流側流路48bに分かれる。弁体43は、下流側流路48bにて弁座30に着座可能に配置される。
【0037】
図3図4に示すように、弁体43は、その軸線方向において下側の先部43aと上側の基部43bを含む。弁体43は、その先部43aが弁座30を貫通すると共に着座するようになっている。そして、弁軸42は、弁体43の基部43bからステップモータ44へ向けて伸びている。弁体43は、先端である下方へ収束する略円錐台形状をなしている。この実施形態において、弁体43の基部43bには、弁体43を弁軸42と共に弁座30から離間する方向(ステップモータ44に近づける方向)へ付勢するように弁体43の基部43bの側に作用する圧力を低減させるための作用圧低減手段50が設けられる。軸受ハウジング63の内側には、作用圧低減手段50が弁体43及び弁軸42と共に往復動するときに作用圧低減手段50と軸受ハウジング63との間をシールするためのリップシール51が設けられる。この実施形態で、作用圧低減手段50は、一例として、弁軸42の周囲に設けられ、リップシール51に接触可能な外周部52cを含み、弁体43の基部43bから弁軸42に沿って伸びる円筒状の外軸52により構成される。この実施形態で、外軸52の外周部52cの外径は、弁体43の最大外径と同じに設定される。また、外軸52の外周部52cの外径は、弁座30の内径よりも大きく設定される。
【0038】
EGR弁14には、外軸52と軸受ハウジング63との間をリップシール51によりシールすることでハウジング41の内側に区分される内側空間53が設けられる。外軸52の上端部52a(一端部)は、この内側空間53に面して配置される。そして、この内側空間53を大気に連通させるために、ハウジング41(外ハウジング61、内ハウジング62及び軸受ハウジング63)には、大気通路54(二点鎖線で概形を示す。)が設けられる。なお、この実施形態のEGR弁14には、従来技術のEGR弁と異なり、基準となる全閉位置を規定するためのストッパや当接部は設けられていない。
【0039】
上記のように構成したEGR弁14は、ステップモータ44を駆動させてロータ73を回転させることにより、その回転運動を雄ねじ46と雌ねじ47を介して弁軸42と弁体43のストローク運動に変換し、弁座30に対する弁体43の開度を調節するようになっている。すなわち、EGR弁14は、図3に示すように、弁体43が弁座30に着座した全閉状態から、ロータ73を一方向へ回転させることにより、雄ねじ46と雌ねじ47の螺合関係により、スプリング45の付勢力に抗して、弁軸42が弁体43と共にスラスト方向である図3の上方向へストローク運動する。これにより、弁体43が弁座30から流路29の側へ離間(開弁)し、更に、図4に示す全開状態となる。
【0040】
一方、EGR弁14は、図4に示すように、弁体43が弁座30から最も離間した全開状態から、ロータ73を反対方向へ回転させることにより、雄ねじ46と雌ねじ47の螺合関係により、スプリング45の付勢力との協働により、弁軸42が弁体43と共にスラスト方向である図4の下方向へストローク運動する。これにより、弁体43が弁座30に着座し、図3に示す全閉状態となる。
【0041】
図5に、全開状態における雄ねじ46と雌ねじ47との螺合状態の一部を拡大断面図により示す。図6に、後述する「突き当て全閉状態」における雄ねじ46と雌ねじ47との螺合状態の一部を拡大断面図により示す。図5図6に示すように、雄ねじ46は、弁軸42の軸線方向において螺旋状に連なる雄ねじ山46aを有する。この雄ねじ山46aは、ステップモータ44から遠ざかる方(下方)、すなわち弁座30の方へ向いた第1雄ねじ山面46aaと、その第1雄ねじ山面46aaの反対側(上側)に位置する第2雄ねじ山面46abを含む。また、雌ねじ47は、弁軸42の軸線方向において螺旋状に連なる雌ねじ山47aを有する。この雌ねじ山47aは、ステップモータ44から遠ざかる方(下方)、すなわち弁座30の方へ向いた第1雌ねじ山面47aaと、その第1雌ねじ山面47aaの反対側(上側)に位置する第2雌ねじ山面47abを含む。そして、図5図6に示すように、この雄ねじ46と雌ねじ47との間には、弁軸42の軸線方向において所定のバックラッシ49(あそび)がある。
【0042】
弁体43が開弁される状態又は閉弁される状態では、弁体43がスプリング45により弁座30に着座する閉弁方向へ付勢されることから、図5に示すように、弁軸42に設けられた雄ねじ46の第1雄ねじ山面46aaが、ロータ本体73aに設けられた雌ねじ47の第2雌ねじ山面47abに当接した状態となる。一方、弁体43が弁座30に着座した全閉状態から、ロータ本体73aによる締め込みにより弁体43が弁座30へ突き当てられる「突き当て制御」を実行する。これにより、図6に示すように、雌ねじ山47aの第1雌ねじ山面47aaと雄ねじ山46aの第2雄ねじ山面46abとが係合し、かつ、スプリング45により弁体43が弁軸42と共にステップモータ44から遠ざかる方向(閉弁方向)へ最大限に付勢された状態(完全係合付勢状態)となる。この完全係合付勢状態では、弁体43に開弁方向の力が作用しても全閉状態が維持されることになる。ただし、完全係合付勢状態からロータ本体73aを更に締め込むと、ステップモータ44に「脱調」が発生し、最大「2step」だけ開弁側へ脱調することになる。この場合も、弁体43は、スプリング45の付勢力により全閉状態に保たれる。
【0043】
[エンジンシステムの電気的構成について]
次に、エンジンシステムの電気的構成の一例について説明する。図1において、このエンジンシステムに設けられる各種センサ等81~88は、エンジン1の運転状態を検出するための運転状態検出手段を構成する。エンジン1に設けられる水温センサ81は、エンジン1の内部を流れる冷却水の温度(冷却水温度)THWを検出し、その検出値に応じた電気信号を出力する。エンジン1に設けられる回転数センサ82は、エンジン1のクランクシャフトの回転角(クランク角)を検出すると共に、そのクランク角の変化(クランク角速度)をエンジン1の回転数(エンジン回転数)NEとして検出し、その検出値に応じた電気信号を出力する。エアクリーナ9の近傍に設けられるエアフローメータ83は、エアクリーナ9を流れる吸気量Gaを検出し、その検出値に応じた電気信号を出力する。サージタンク5aに設けられる吸気圧センサ84は、スロットル弁4より下流の吸気通路2(サージタンク5a)における吸気圧力PMを検出し、その検出値に応じた電気信号を出力する。この吸気圧センサ84は、この開示技術における吸気圧力検出手段の一例に相当する。スロットル弁4に設けられるスロットルセンサ85は、スロットル弁4の開度(スロットル開度)TAを検出し、その検出値に応じた電気信号を出力する。触媒7より上流の排気通路3に設けられる酸素センサ86は、排気中の酸素濃度Oxを検出し、その検出値に応じた電気信号を出力する。エアクリーナ9の入口に設けられる吸気温センサ87は、エアクリーナ9に吸入される外気の温度(吸気温度)THAを検出し、その検出値に応じた電気信号を出力する。運転席に設けられるイグニションスイッチ(IGスイッチ)88は、エンジン1を起動又は停止するために運転者によりオン・オフ操作され、その操作に応じた電気信号を出力するようになっている。
【0044】
このエンジンシステムは、同システムの制御を司る電子制御装置(ECU)90を更に備える。ECU80には、各種センサ等81~88がそれぞれ接続される。また、ECU90には、EGR弁14の他、インジェクタ(図示略)及びイグニションコイル(図示略)が接続される。ECU90は、この開示技術における制御手段の一例に相当する。周知のようにECU90は、中央処理装置(CPU)、各種メモリ、外部入力回路及び外部出力回路等を備える。メモリには、各種制御に関する所定の制御プログラムが格納される。CPUは、入力回路を介して入力される各種センサ等81~88の検出信号に基づき、所定の制御プログラムに基づいて燃料噴射制御、点火時期制御及びEGR制御等を実行するようになっている。
【0045】
この実施形態で、ECU90は、EGR制御において、エンジン1の運転状態に応じてEGR弁14を制御するようになっている。具体的には、ECU80は、エンジン1の停止時、アイドル運転時及び減速運転時には、EGR弁14を全閉に制御し、それ以外の運転時には、その運転状態に応じて目標開度を求め、EGR弁14をその目標開度に制御するようになっている。このときEGR弁14が開弁されることにより、エンジン1から排気通路3へ排出される排気の一部が、EGRガスとしてEGR通路12、EGRクーラ13、EGR弁14及びEGRガス分配器15等を介して吸気通路2(吸気マニホールド5)へ流れ、エンジン1の各気筒へ分配され還流される。
【0046】
ここで、この実施形態では、EGR弁14の実際の開度(実開度)を専用のセンサで検出することなくEGR制御を実行するようになっている。また、EGR弁14には、基準となる全閉位置を規定するために、弁座30と弁体43の相対位置を規定するストッパと当接部は設けられていない。この実施形態では、EGR弁14を精度よく目標開度に制御し、EGRガス流量を精度よく制御するために、次のように弁体43の開弁開始位置N(s)を判定するために「初期開弁位置判定制御」を実行するようになっている。
【0047】
[初期開弁位置判定制御について]
先ず、初期開弁位置判定制御について説明する。図7図8に、この制御の内容をフローチャートにより示す。ECU90は、EGR弁14の開弁開始位置の判定がない場合に、この制御を実行する。
【0048】
処理がこのルーチンへ移行すると、ECU90は、ステップ100で、IGオンか否か、すなわちIGスイッチ88がオンされたか否かを判断する。ECU90は、この判断結果が肯定となる場合はステップ110へ移行し、この判断結果が否定となる場合は処理をステップ230へ移行する。
【0049】
ステップ110では、ECU90は、EGR弁14の突き当て制御を実行する。すなわち、ECU90は、弁体43が弁座30に着座した全閉状態から、ロータ本体73aによる締め込みにより弁体43を弁座30へ突き当てる制御を実行する。このとき、弁軸42の雄ねじ46とロータ本体73aの雌ねじ47との螺合状態は、図6に示す通りである。この突き当て制御により、EGR弁14は、上記した完全係合付勢状態となる。このときの開弁位置N(i)は「0」(N(i)=0)となる。
【0050】
ここで、図9に、EGR弁14を構成するステップモータ44の制御値としてのステップ数とEGR弁14を流れるEGRガス流量との関係をグラフにより示す。このグラフの横軸最上段は、突き当て制御からのステップ数を示し、横軸中段は、ガタ下限RAminのときの実開弁ステップ数(実際に開弁したときのステップ数)を示し、横軸下段は、ガタ上限RAmaxのときの実開弁ステップ数を示す。縦軸は、EGRガス流量を示す。ガタ上限RAmaxは、ガタ下限RAminに、機械的公差及び摩耗等による開弁位置ズレMGを加えた値に相当する。図9に示すように、ガタ下限RAminのみを許容した場合には、そのEGRガス流量は、突き当て制御からのステップ数で「3」を「0」としてEGRガス流量が増加することになる。ガタ上限RAmaxを許容した場合には、そのEGRガス流量は、突き当て制御からのステップ数で「10」を「0」としてEGRガス流量が増加することになる。このように機械的なガタを許容した場合には、ステップモータ44のステップ数に対するEGRガス流量の特性に大きなズレが発生してしまう。上記したステップ110では、この流量特性ズレの発生を抑えるために、EGR弁14の突き当て制御が実行される。
【0051】
次に、ステップ120で、ECU90は、エンジン1が始動したか否かを判断する。ECU90は、例えば、回転数センサ82の検出値に基づきエンジン始動の有無を判断することができる。ECU90は、この判断結果が肯定となる場合は処理をステップ130へ移行し、この判断結果が否定となる場合は処理をステップ120へ戻す。
【0052】
ステップ130では、ECU90は、各種センサ等82~85の検出値に基づき、エンジン回転数NE、エンジン負荷KL及び吸気圧力PMをそれぞれ取り込む。
【0053】
次に、ステップ140では、ECU90は、初期開弁位置に関する学習完了フラグXSOPが「0」か否かを判断する。この学習完了フラグXSOPは、学習未完了の場合は「0」に設定され、学習完了の場合は「1」に設定される。ECU90は、この判断結果が肯定となる場合は、学習未完了であることから処理をステップ150へ移行し、この判断結果が否定となる場合は、学習完了であることから処理をステップ240へ移行する。
【0054】
ステップ150では、ECU90は、エンジン1の運転状態が低NE及び低KLであるか否か、すなわち、エンジン1の運転状態が低回転及び低負荷であるかを判断する。ECU90は、例えば、エンジン回転数NEが「2000rpm」未満、かつ、エンジン負荷KLが「30%」未満であるか否かを判断する。ECU90は、この判断結果が肯定となる場合は処理をステップ160へ移行し、この判断結果が否定となる場合は処理をステップ120へ戻す。
【0055】
ステップ160では、ECU90は、ステップ130で取り込まれた吸気圧力PMを初期吸気圧力PM0として設定する。
【0056】
次に、ステップ170で、ECU90は、EGR弁14を「1step」分だけ開弁する。すなわち、ステップモータ44を「1step」だけ動作させて弁体43を開弁する。そして、前回の開弁開始位置N(i-1)に「1」を加算することで、今回の開弁位置N(i)を求める。この開弁位置N(i)は、ステップモータ44を制御するためのステップ数(制御値)として規定される。
【0057】
次に、ステップ180で、ECU90は、吸気圧センサ84の検出値に基づき吸気圧力PMを再び取り込む。
【0058】
次に、ステップ190で、ECU90は、再び取り込まれた吸気圧力PMから初期吸気圧力PM0を減算した結果が、所定の吸気圧力差ΔPMより大きいか否か、すなわち圧力上昇があったか否かを判断する。ECU90は、この判断結果が肯定となる場合は、圧力上昇があったとして処理をステップ200へ移行し、この判断結果が否定となる場合は、圧力上昇がなかったとして処理をステップ130へ戻す。
【0059】
ステップ200では、ECU90は、圧力上昇があったときの開弁位置N(i)を開弁開始位置N(s)として判定し記憶する。
【0060】
次に、ステップ210で、ECU90は、全閉位置CLstepを算出し、記憶する。すなわち、ECU90は、開弁開始位置N(s)から「1」を減算することで全閉位置CLstepを算出し、その全閉位置CLstepをメモリに記憶(学習)する。この全閉位置CLstepは、ステップモータ44を制御するための制御値であるステップ数として規定される。
【0061】
その後、ステップ220で、ECU90は、学習完了フラグXSOPを「1」に設定し、処理をステップ120へ戻す。
【0062】
一方、ステップ100から移行してステップ230では、ECU90は、学習完了フラグXSOPを「0」に設定した後、処理をステップ120へ戻す。
【0063】
また、ステップ140から移行してステップ240では、ECU90は、EGR弁14を作動させるEGR作動条件が成立したか否かを判断する。ECU90は、この判断を、エンジン1の運転状態に基づいて判断することができる。ECU90は、この判断結果が肯定となる場合は処理をステップ250へ移行し、この判断結果が否定となる場合は処理をステップ270へジャンプする。
【0064】
ステップ250では、ECU90は、エンジン回転数NEとエンジン負荷KLに基づき目標開度TEGRstepを算出する。この目標開度TEGRstepは、ステップモータ44を制御するための制御値であるステップ数として規定される。ECU90は、例えば、図10に示す目標開度マップを参照することにより、エンジン回転数NEとエンジン負荷KLに応じた目標開度TEGRstepを求めることができる。このマップでは、目標開度TEGRstepは、エンジン負荷KLが「40~60%」前後の中負荷域では相対的に大きくなり、それ以外の低負荷域又は高負荷域で相対的に小さくなるように設定される。また、このマップでは、目標開度TEGRstepは、エンジン回転数NEが「4800rpm」程度の中高回転域では相対的に大きくなり、それ以外の低回転域又は高回転域で相対的に小さくなるように設定される。
【0065】
次に、ステップ260で、ECU90は、目標開度TEGRstepが「0」か否かを判断する。ECU90は、この判断結果が肯定となる場合は処理をステップ270へ移行し、この判断結果が否定となる場合は処理をステップ290へ移行する。
【0066】
ステップ240又はステップ260から移行してステップ270では、ECU90は、全閉位置CLstepから「2」だけ減算することにより最終目標開度FTEGRstepを算出する。
【0067】
次に、ステップ280で、ECU90は、EGR弁14を最終目標開度FTEGRstepに制御し、処理をステップ120へ戻す。
【0068】
一方、ステップ260から移行してステップ290では、ECU90は、目標開度TEGRstepに全閉位置CLstepを加算することにより、最終目標開度FTEGRstepを算出する。この最終目標開度FTEGRstepも、ステップモータ44を制御するための制御値であるステップ数として規定される。その後、ECU90は、処理をステップ280へ移行する。
【0069】
上記した初期開弁位置判定制御によれば、ECU90は、ロータ本体73a(ロータ73)に設けられる雌ねじ47の雌ねじ山47aの第1雌ねじ山面47aaと弁軸42に設けられる雄ねじ46の雄ねじ山46aの第2雄ねじ山面46abとが係合し、かつ、スプリング45により弁体43が弁軸42と共にステップモータ44(アクチュエータ)から遠ざかる方向(閉弁方向)へ最大限に付勢された完全係合付勢状態から、ステップモータ44を段階的に制御することで弁体43を弁軸42と共にステップモータ44に近付く方向(開弁方向)へ段階的に移動させ、吸気圧センサ84(吸気圧力検出手段)で検出される吸気圧力PMが上昇したときのステップモータ44のステップ数(制御値)を開弁開始位置N(s)として判定するようになっている。
【0070】
また、上記した初期開弁位置判定制御によれば、ECU90は、判定された開弁開始位置N(s)から1ステップ(1段階)前のステップ数(制御値)を基準となる全閉位置CLstepとして学習するようになっている。
【0071】
[開弁位置判定制御について]
次に、初期開弁位置判定制御により開弁開始位置N(s)を判定した後に実行する開弁位置判定制御について説明する。図11図13に、この制御の内容をフローチャートにより示す。ECU90は、EGR弁14の開弁開始位置N(s)の判定がある場合に、この判定制御を実行するようになっている。
【0072】
処理がこのルーチンへ移行すると、ECU90は、ステップ300で、IGオンか否かを判断する。ECU90は、この判断結果が肯定となる場合は処理をステップ310へ移行し、この判断結果が否定となる場合は処理をステップ370へ移行する。
【0073】
ステップ310では、ECU90は、前述した突き当て制御が未実行か否かを判断する。ECU90は、この判断結果が肯定となる場合はステップ320へ移行し、ステップ320~ステップ360の処理を実行する。ECU90は、この判断結果が否定となる場合は処理をステップ330へジャンプする。
【0074】
ステップ320~ステップ350では、ECU90は、それぞれ「初期開弁位置判定制御」におけるステップ110~ステップ140と同様の処理を実行する。そして、ECU90は、ステップ350の判断結果が肯定となる場合は処理をステップ360へ移行し、同判断結果が否定となる場合は処理をステップ380へ移行する。
【0075】
ステップ360では、ECU90は、前述した「初期開弁位置判定制御」(図7図8を参照)を実行する。
【0076】
一方、ステップ300から移行してステップ370では、ECU90は、学習完了フラグXSOPを「0」に設定した後、処理をステップ300へ戻す。
【0077】
一方、ステップ350から移行してステップ380では、ECU90は、トリップ毎の開弁位置に関する判定完了フラグXOPが「0」か否かを判断する。この判定完了フラグXOPは、判定未完了の場合は「0」に設定され、判定完了の場合は「1」に設定される。ECU90は、この判断結果が肯定となる場合は、判定未完了であることから処理をステップ390へ移行し、この判断結果が否定となる場合は、判定完了であることから処理をステップ480へ移行する。
【0078】
ステップ390では、ECU90は、EGR弁14を「全閉位置CLstep-4step」まで開弁方向へ制御する。すなわち、ECU90は、ステップモータ44を「全閉位置CLstep-4step」まで開弁方向へ動作させる。この場合、ステップモータ44が、「全閉位置CLstep-4step」よりも閉弁方向のステップの状態にあるものとして、その状態から「全閉位置CLstep-4step」まで開弁方向へステップを進めるのである。このようにステップモータ44を開弁方向へ制御するが、実際のEGR弁14は開弁していない閉弁状態を維持することになる。そして、ECU90は、全閉位置CLstepから「4」を減算することで、今回の開弁位置N(i)を求める。
【0079】
その後、ステップ400~ステップ460では、ECU90は、それぞれ「初期開弁位置判定制御」におけるステップ150~ステップ210と同様の処理を実行する。ただし、ステップ440の判断結果が否定となる場合は、ECU90は、処理を340へ戻す。また、ステップ460では、ECU90は、開弁開始位置N(s)から「1」を減算することで全閉位置CLstepを更新する。
【0080】
そして、ステップ470で、ECU90は、判定完了フラグXOPを「1」に設定し、処理をステップ300へ戻す。
【0081】
一方、ステップ380からステップ480へ移行すると、ECU90は、ステップ480~ステップ530の処理を実行する。ステップ480~ステップ530では、ECU90は、それぞれ「初期開弁位置判定制御」におけるステップ240~ステップ290と同様の処理を実行する。ただし、ステップ520の処理を実行した後、ECU90は、処理をステップ300へ戻す。
【0082】
[流体制御装置の作用及び効果について]
以上説明したこの実施形態の流体制御装置によれば、初期開弁位置判定制御及び開弁位置判定制御において、ECU90(制御手段)は、ロータ本体73a(ロータ73)に設けられる雌ねじ47の雌ねじ山47aの第1雌ねじ山面47aaと弁軸42に設けられる雄ねじ46の雄ねじ山46aの第2雄ねじ山面46abとが係合し、かつ、スプリング45により弁体43が弁軸42と共にステップモータ44(アクチュエータ)から遠ざかる方向(閉弁方向)へ最大限に付勢された完全係合付勢状態から、ステップモータ44を段階的に制御することで弁体43を弁軸42と共にステップモータ44に近付く方向(開弁方向)へ段階的に移動させる。そして、ECU90は、吸気圧センサ84(吸気圧力検出手段)により検出される吸気圧力PMが上昇したときのステップモータ44のステップ数(制御値)を開弁開始位置N(s)として判定する。従って、全閉位置CLstepを規定するためのストッパと当接部の有無にかかわらず、機械的バラツキや経年変化にかかわらず、吸気圧力PMの上昇変化に基いて開弁開始位置N(s)が一様に判定される。このため、EGR弁14(流体制御弁)の基準となる全閉位置CLstepを規定するためのストッパと当接部の有無にかかわらず、その全閉位置CLstepを規定するための開弁開始位置N(s)を吸気圧力PMの変化に基いて精度よく規定することができる。
【0083】
また、この実施形態の初期開弁位置判定制御及び開弁位置判定制御において、ECU90は、判定された開弁開始位置N(s)から1ステップ(1段階)前のステップ数(制御値)を基準となる全閉位置CLstepとして学習する。従って、判定された開弁開始位置N(s)に基づき、ストッパと当接部の有無にかかわらず、機械的バラツキや経年変化にかかわらず、全閉位置CLstepが一様に学習される。このため、基準となる全閉位置CLstepを開弁開始位置N(s)に基づいて適正に規定することができる。この結果、EGR14(流体制御弁)を最終目標開度FTEGRstep(目標開度)に精度よく制御することができ、延いてはEGRガス流量(流体流量)を精度よく制御することができ、EGRガス流量の制御性を向上させることができる。
【0084】
この実施形態のEGR弁14によれば、従来例のEGR弁と異なり、開弁開始位置の精度向上に加え、基準となる全閉位置CLstepを規定するためのストッパや当接部を設けていないので、その分だけEGR弁14を低コストで製造することができる。
【0085】
<第2実施形態>
次に、流体制御装置をガソリンエンジンシステムに具体化した第2実施形態について図面を参照して説明する。なお、以下の説明において第1実施形態と同等の構成要素については、同一の符号を付して説明を省略し、異なった点を中心に説明する。
【0086】
[エンジンシステムについて]
図14に、この実施形態におけるエンジンシステムを概略構成図により示す。この実施形態では、シリーズ方式のハイブリッド小型モビリティ(HV小型モビリティ:例えば、ドローンや無人台車等)に搭載される発電用のエンジンシステムについて説明する。周知のように、シリーズ方式のHV小型モビリティは、基本的にはバッテリの電力でモータを駆動して移動し、バッテリの電力が少なくなるとエンジンで発電機を駆動して発電し、その電力でモータを駆動して移動する仕組みを有する。このHV小型モビリティに搭載されるエンジンシステムは、図14に示すように、単気筒のエンジン10を備える。エンジン10は、4サイクルのレシプロエンジンであり、燃焼室を含む一つの気筒10a及びクランクシャフト10bの他、周知の構成要素を含む。エンジン10には、気筒10aに吸気を導入するための吸気通路2と、気筒10aから排気を導出するための排気通路3とが設けられる。この実施形態で、吸気は、この開示技術における所定の流体の一例に相当する。吸気通路2の入口には、エアクリーナ9が設けられる。この実施形態で、吸気通路2は、この開示技術における所定の通路の一例に相当する。吸気通路2の途中には、サージタンク5aが設けられ、そのサージタンク5aの上流側にはスロットル弁4が設けられる。スロットル弁4は、エンジン10に吸入される吸気を調節するためにポペット式弁より構成され、弁座に対し往復駆動する弁体と、その弁体を開度可変に駆動するためのステップモータ44とを含む。この実施形態では、このポペット式弁として、第1実施形態で説明したEGR弁14と同等の構成を採用する。この実施形態で、スロットル弁4は、この開示技術における流体制御弁の一例に相当する。この実施形態のエンジンシステムには、弁体の開度(スロットル開度)を検出するためのスロットルセンサは設けられていない。スロットル弁4は、弁体により流路を開閉させることにより、吸気通路2を流れる吸気量Gaを調節するようになっている。一方、排気通路3には、排気を浄化するための触媒7が設けられる。
【0087】
吸気通路2には、エンジン10の気筒10aに燃料を噴射するためのインジェクタ91が設けられる。インジェクタ91は、燃料供給装置(図示略)から供給される燃料(ガソリン)を噴射するように構成される。気筒10aでは、インジェクタ91から噴射される燃料と吸気行程で吸気通路2から導入される吸気とにより可燃混合気が形成される。
【0088】
エンジン10の気筒10aには、点火プラグ92が設けられる。点火プラグ92は、イグニションコイル93から出力される点火信号を受けてスパーク動作する。両部品92,93は、気筒10aにて可燃混合気に点火するための点火装置を構成する。気筒10aにおいて、可燃混合気は、圧縮行程で点火プラグ92のスパーク動作により爆発・燃焼し、爆発行程が経過する。燃焼後の排気は、排気行程で気筒10aから排気通路3へ排出され、触媒7を流れて浄化され、外部へ排出される。これら一連の行程を繰り返すことで、エンジン10のクランクシャフト10bが回転し、エンジン10に出力が得られる。
【0089】
[エンジンシステムの電気的構成について]
エンジン10に対応して設けられた回転数センサ82、エアフローメータ83、吸気圧センサ84、酸素センサ86及びエンジン温センサ89は、エンジン10の運転状態を検出するための手段を構成する。エンジン10に設けられるエンジン温センサ89は、エンジン10の温度(エンジン温度)THEを検出し、その検出値に応じた電気信号を出力する。ECU90には、各種センサ等82~84,86,89がそれぞれ接続される。また、ECU90には、スロットル弁4のステップモータ44、インジェクタ91及びイグニションコイル93がそれぞれ接続される。この実施形態でも、ECU90は、この開示技術における制御手段の一例に相当する。
【0090】
ところで、このエンジンシステムのエンジン10は、単気筒であることから、吸気圧センサ84による吸気圧力PMの検出は、エンジン10の爆発行程、排気行程、吸気行程及び圧縮行程のうちの吸気行程で行われることになる。図15に、エンジン10のクランク角に対する吸気圧力PMの変化をグラフにより示す。図15に示すように、エンジン10の吸気行程では、吸気圧力PMは、クランク角が「0」から所定角度αへ向かうにつれて低減し、所定角度αで最低となり、所定角度αから圧縮行程へ向かうに連れて増加するようになっている。図15において、実線は、後述する初期吸気圧力PM0(特定吸気圧力PMα)の変化を示し、破線は、後述する2回目の特定吸気圧力PMα2の変化を示す。クランク角が所定角度αのときの特定吸気圧力PMα2と初期吸気圧力PM0(特定吸気圧力PMα)との差は、後述する吸気圧力差ΔPMを示す。
【0091】
この実施形態で、ECU90は、エンジン10を運転するために、各種センサ等81~84,86からの電気信号に基づいてスロットル弁4(ステップモータ44)、インジェクタ91及びイグニションコイル93をそれぞれ制御するようになっている。また、ECU90は、スロットルセンサを用いずにスロットル弁4を制御するために、所定のスロットル制御を実行するようになっている。
【0092】
また、この実施形態のHV小型モビリティでは、図14に示すように、エンジン10により発電機95を駆動させて発電し、その電力をインバータ96を介してバッテリ97に充電すると共に、その電力を駆動用モータ98に供給し、駆動体(図示略)を駆動させて小型モビリティを移動させるようになっている。
【0093】
[スロットル制御について]
次に、この実施形態のスロットル制御について以下に説明する。シリーズ方式のHV小型モビリティでは、エンジン10が駆動軸に直結していないことから、FMVSS要求緩和(戻り性の緩和)とOR要求緩和(スロットル開度監視不要)が可能となる。また、エンジン10をバッテリ97の充電に特化して使用することから、エンジン10の応答性に対する要求を緩和することが可能となる。そのため、この実施形態では、スロットルセンサを設けることなくスロットル制御を実行することが可能となり、エンジンシステムのコストダウンが可能となる。
【0094】
この実施形態でも、スロットル弁4には、基準となる全閉位置CLstepを規定するために、弁座30と弁体43の相対位置を規定するストッパと当接部は設けられていない。そこで、この実施形態でも、スロットル弁4を精度よく目標開度に制御し、吸気量Gaを精度よく制御するために、次のように弁体43の初期開弁位置を判定するための初期開弁位置判定制御を実行するようになっている。
【0095】
[初期開弁位置判定制御について]
初期開弁位置判定制御について説明する。図16図18に、この制御の内容をフローチャートにより示す。処理がこのルーチンへ移行すると、ECU90は、ステップ600で、IGオンか否かを判断する。ECU90は、この判断結果が肯定となる場合はステップ610へ移行し、この判断結果が否定となる場合は処理をステップ730へ移行する。
【0096】
ステップ610では、ECU90は、前述した突き当て制御が未実行か否かを判断する。ECU90は、この判断結果が肯定となる場合は処理をステップ620へ移行し、この判断結果が否定となる場合は処理をステップ630へジャンプする。
【0097】
ステップ620では、ECU90は、スロットル弁4の突き当て制御を実行する。すなわち、ECU90は、前述したように弁体43が弁座30に着座した全閉状態から、ロータ本体73aによる締め込みにより弁体43を弁座30へ突き当てる制御を実行する。この突き当て制御により、スロットル弁4は、上記した完全係合付勢状態となる。このときの開弁位置N(i)は「0」(N(i)=0)となる。
【0098】
そして、ステップ610又はステップ620から移行してステップ630では、ECU90は、初期開弁位置に関する学習完了フラグXSOPが「0」か否かを判断する。ECU90は、この判断結果が肯定となる場合は、学習未完了であることから処理をステップ640へ移行し、この判断結果が否定となる場合は、学習完了であることから処理をステップ740へ移行する。
【0099】
ステップ640では、ECU90は、燃料カット状態でクランキングを実行する。すなわち、ECU90は、インジェクタ91からの燃料噴射を停止した状態で、発電機95を動作させてクランクシャフト10bを回転させる。
【0100】
次に、ステップ650で、ECU90は、図15に示すように、突き当て制御実行直後の吸気行程においてクランク角がα℃Aとなるときの特定吸気圧力PMαを取り込む。
【0101】
次に、ステップ660で、ECU90は、ステップ660で取り込まれた特定吸気圧力PMαを初期吸気圧力PM0として設定する。
【0102】
次に、ステップ670で、ECU90は、スロットル弁4を「1step」分だけ開弁する。すなわち、ステップモータ44を「1step」だけ動作させて弁体43を開弁する。そして、前回の開弁位置N(i-1)に「1」を加算することで、今回の開弁位置N(i)を求める。
【0103】
次に、ステップ680で、ECU90は、開弁開始時の吸気行程においてクランク角がα℃Aとなるときの2回目の特定吸気圧力PMα2を取り込む。
【0104】
次に、ステップ690で、ECU90は、2回目の特定吸気圧力PMα2から初期吸気圧力PM0を減算した結果が、所定の吸気圧力差ΔPMより大きいか否か、すなわち圧力上昇があったか否かを判断する。ECU90は、この判断結果が肯定となる場合は、圧力上昇があったとして処理をステップ700へ移行し、この判断結果が否定となる場合は、圧力上昇がなかったとして処理をステップ660へ戻す。
【0105】
ステップ700では、ECU90は、圧力上昇があったときの開弁位置N(i)を開弁開始位置N(s)として判定し記憶する。
【0106】
次に、ステップ710で、ECU90は、全閉位置CLstepを算出し、記憶する。すなわち、ECU90は、開弁開始位置N(s)から「1」を減算することで全閉位置CLstepを算出し、その全閉位置CLstepをメモリに記憶(学習)する。
【0107】
その後、ステップ720で、ECU90は、学習完了フラグXSOPを「1」に設定し、処理をステップ600へ戻す。
【0108】
そして、ステップ600から移行してステップ730では、ECU90は、学習完了フラグXSOPを「0」に設定した後、処理をステップ600へ戻す。
【0109】
一方、ステップ630から移行してステップ740では、ECU90は、トリップ毎の開弁位置に関する判定完了フラグXOPが「0」か否かを判断する。ECU90は、この判断結果が肯定となる場合は、判定未完了であることから処理をステップ750へ移行し、この判断結果が否定となる場合は、判定完了であることから処理をステップ850へ移行する。
【0110】
ステップ750では、ECU90は、ステップ640と同様、燃料カット状態でクランキングを実行する。
【0111】
次に、ステップ760では、ECU90は、ステップ390と同様、スロットル弁4を「全閉位置CLstep-4step」まで開弁方向へ制御する。そして、全閉位置CLstepから「4」を減算することで、今回の開弁位置N(i)を求める。
【0112】
次に、ステップ770で、ECU90は、図15に示すように、吸気行程においてクランク角がα℃Aとなるときの特定吸気圧力PMαを取り込む。
【0113】
次に、ステップ780で、ECU90は、ステップ770で取り込まれた特定吸気圧力PMαを初期吸気圧力PM0として設定する。
【0114】
次に、ステップ790で、ECU90は、スロットル弁4を「1step」分だけ開弁する。すなわち、ステップモータ44を「1step」だけ動作させて弁体43を開弁する。そして、前回の開弁位置N(i-1)に「1」を加算することで、今回の開弁位置N(i)を求める。
【0115】
次に、ステップ800で、ECU90は、図15に示すように、吸気行程においてクランク角がα℃Aとなるときの特定吸気圧力PMα2を再び取り込む。
【0116】
次に、ステップ810で、ECU90は、再び取り込まれた特定吸気圧力PMα2から初期吸気圧力PM0を減算した結果が、所定の吸気圧力差ΔPMより大きいか否か、すなわち圧力上昇があったか否かを判断する。ECU90は、この判断結果が肯定となる場合は、圧力上昇があったとして処理をステップ820へ移行し、この判断結果が否定となる場合は、圧力上昇がなかったとして処理をステップ780へ戻す。
【0117】
ステップ820では、ECU90は、圧力上昇があったときの開弁位置N(i)を開弁開始位置N(s)として判定し記憶する。
【0118】
次に、ステップ830で、ECU90は、全閉位置CLstepを更新する。すなわち、ECU90は、開弁開始位置N(s)から「1」を減算することで全閉位置CLstepを算出し、その全閉位置CLstepをメモリに記憶(学習)する。
【0119】
その後、ステップ840で、ECU90は、判定完了フラグXOPを「1」に設定し、処理をステップ600へ戻す。
【0120】
一方、ステップ740から移行してステップ850では、ECU90は、エンジン始動が未完了であるか否かを判断する。ECU90は、この判断を、例えば、検出されるエンジン回転数NEに基づき行うことができる。ECU90は、この判断結果が肯定となる場合は処理をステップ860へ移行し、この判断結果が否定となる場合は処理をステップ920へ移行する。
【0121】
ステップ860では、ECU90は、エンジン温センサ89の検出値に基づきエンジン温度THEを取り込む。
【0122】
次に、ステップ870で、ECU90は、エンジン温度THEに応じた始動時開度STAstepとアイドル開度IDLstepを求める。ECU90は、例えば、図19に示すように、エンジン温度THEに対する始動時開度STAstepとアイドル開度IDLstepの関係が定められた開度マップを参照することにより各開度STAstep,IDLstepを求めることができる。
【0123】
次に、ステップ880では、ECU90は、始動開度STAstepに全閉位置CLstepを加算することで、最終始動開度FSTAstepを算出する。
【0124】
次に、ステップ890では、ECU90は、アイドル開度IDLstepに全閉位置CLstepを加算することで、最終アイドル開度FIDLstepを算出する。
【0125】
そして、ステップ900で、ECU90は、最終始動開度FSTAstepと最終アイドル開度FIDLstepでエンジン10を始動させる。
【0126】
次に、ステップ910で、ECU90は、エンジン始動が完了であると判定し、そのことをメモリに記憶する。その後、ECU90は、処理をステップ600へ戻す。
【0127】
一方、ステップ850から移行してステップ920では、ECU90は、エンジン1を発電要求に応じたエンジン回転数NEとエンジン負荷KL(スロットル開度TA)に制御する。その後、ECU90は、処理をステップ600へ戻す。
【0128】
[流体制御装置の作用及び効果について]
以上説明したこの実施形態の流体制御装置によれば、エンジン1とエンジン10の構成が異なるものの、初期開弁位置判定制御において、全閉位置CLstepを規定するためのストッパと当接部の有無にかかわらず、機械的バラツキや経年変化にかかわらず、吸気圧力PMの上昇変化に基いて開弁開始位置N(s)が一様に判定される。このため、スロットル弁4(流体制御弁)の基準となる全閉位置CLstepを規定するためのストッパと当接部の有無にかかわらず、その全閉位置CLstepを規定するための開弁開始位置N(s)を吸気圧力PMの変化に基いて精度よく規定することができる。
【0129】
また、この実施形態の初期開弁位置判定制御において、判定された開弁開始位置N(s)に基づき、ストッパと当接部の有無にかかわらず、機械的バラツキや経年変化にかかわらず、全閉位置CLstepが一様に学習される。このため、基準となる全閉位置CLstepを開弁開始位置N(s)に基づいて適正に規定することができる。この結果、スロットル弁4(流体制御弁)を最終始動開度FSTAstep(目標開度)に精度よく制御することができ、延いては吸気流量(流体流量)を精度よく制御することができ、吸気流量の制御性を向上させることができる。
【0130】
この実施形態のスロットル弁4によれば、開弁開始位置の精度向上に加え、基準となる全閉位置CLstepを規定するためのストッパや当接部を設けていないので、その分だけスロットル弁4を低コストで製造することができる。
【0131】
<第3実施形態>
次に、流体制御装置をガソリンエンジンシステムに具体化した第3実施形態について図面を参照して説明する。
【0132】
[EGR弁の構成について]
この実施形態は、EGR弁の構成の点で前記第1実施形態と異なる。図20に、全閉に動作したEGR弁19を断面図により示す。この実施形態のEGR弁19は、ハウジング41が、外ハウジング61、内ハウジング62及び軸受ハウジング63の他に、EGRガスが流れる流路66を有する流路ハウジング67を更に備える。流路ハウジング67は、流路66の入口68と出口69を有する。流路66には、弁体43の先部43aが着座又は離間する弁座30が設けられる。流路66は、弁座30を境としてステップモータ44から遠い下側の上流側流路66aとステップモータ44に近い上側の下流側流路66bに分かれる。弁体43は、下流側流路66bにて弁座30に着座可能に配置される。流路ハウジング67の入口68の外周には、EGR通路の上流側(図示略)に接続される入口フランジ67aが形成され、出口69の外周には、EGR通路の下流側(図示略)に接続される出口フランジ67bが形成される。その他の構成は、第1実施形態で説明したEGR弁14のそれと同じである。
【0133】
従って、この実施形態のEGR弁19の構成によれば、第1実施形態の作用及び効果に加え、次のような作用及び効果を有する。すなわち、ハウジング41を構成する流路ハウジング67に流路66と弁座30が一体に設けられるので、EGR弁19を流路と弁座を有する別の相手部材に組み付ける必要がない。このため、EGR弁19それのみをEGRガスが流れるEGR通路の任意の位置に接続するだけで、EGRガスの流量制御に使用できるようになる。
【0134】
また、この実施形態では、ECU90は、第1実施形態と同等の初期開弁位置判定制御及び開弁位置判定制御を実行するようになっている。従って、この実施形態の構成によれば、第1実施形態のEGR弁14とEGR弁19の構成が多少異なるものの、第1実施形態と同等の作用及び効果を得ることができる。
【0135】
<第4実施形態>
次に、流体制御装置をガソリンエンジンシステムに具体化した第4実施形態について図面を参照して説明する。
【0136】
この実施形態では、前記各実施形態で説明した流体制御弁、すなわちEGR弁14,19及びスロットル弁4を構成する弁体43の形状の点で構成が異なる。
【0137】
[流体制御弁の弁体の外形状について]
図21に、この実施形態の流体制御弁を構成する弁体43と弁座30の全閉状態を弁座30のみを切断した正面図により示す。図22に、この実施形態の流体制御弁を構成する弁体43と弁座30の開弁状態を弁座30のみ切断した正面図により示す。図23には、弁体43と弁座30の開弁状態につき、図22の1点鎖線で囲った部分を拡大した正面図により示す。図21図22に示すように、この実施形態における流体制御弁の弁体43は、対応する弁座30に着座した全閉状態から、ステップモータ44(アクチュエータ)を1ステップ(1段階)だけ制御することで開弁を開始したときに、吸気圧センサ84により所要の圧力変化を検出できる開口面積が弁座30との間で得られる外周形状を有する。この開口面積は、エンジン1,10のアイドル運転時に必要な最少の吸気量Gaより僅かに少ない吸気量が得られる弁体43の開口面積が望ましい。
【0138】
すなわち、図21図22に示すように、この実施形態の弁体43は、略傘形の外形状を有し、下側の先部43aと、その上のスカート部43cと、その上の拡径部43dとを含む。先部43aは、円錐形状をなし、頂点(最下点)から緩やかに傾斜するテーパ形状を有する。スカート部43cは、先部43aから急激に傾斜するテーパ形状を有する。拡径部43dは、スカート部43cから緩やかに傾斜するテーパ形状を有し、外径が拡大する。そして、図21に示す全閉状態では、拡径部43dの外周面の一部がシール部となって弁座30の内周縁に当接する。また、スカート部43cの外周面と弁座30の内周面との間に隙間が形成される。
【0139】
ここで、図24に、対比例としての従前の弁体56の全閉状態を、図21に準ずる正面図により示す。また、図25に、対比例としての従前の弁体56の開弁状態を、図22に準ずる正面図により示す。また、図26に、対比例としての従前の弁体56の開弁状態を、図23に準ずる拡大した正面図により示す。図24図25に示すように、従前の弁体56は、略傘形の外形状を有し、下側の先部56aと、その上のスカート部56bとを含み、その上の拡径部を持たない。これら先部56aとスカート部56bは、本実施形態の先部43aとスカート部43cとほぼ同じ外形状を有する。そして、図24に示すように、弁体56が弁座57に着座した全閉状態では、スカート部56bの外周面の一部がシール部となって弁座57の内周縁に当接すると共に、シール部より下側のスカート部56bの外周面と弁座57の内周面との間に隙間が形成される。
【0140】
[流体制御弁の作用及び効果について]
従って、この実施形態の流体制御弁の弁体43の構成によれば、前記各実施形態それぞれの作用及び効果に加え、次のような作用及び効果が得られる。すなわち、この実施形態における弁体43の外周形状によれば、弁体43が弁座30に着座した全閉状態から、ステップモータ44(アクチュエータ)を1ステップ(1段階)だけ制御して開弁を開始したときに、弁座30との間で所定の開口面積D11,D21が得られる。そして、この開口面積D11,D21により、開弁開始位置N(s)の判定に必要な圧力変化が吸気圧センサ84(吸気圧力検出手段)により確実に検出される。このため、開弁開始位置N(s)を精度よく判定することができる。
【0141】
より詳しくは、図23に拡大して示すように、全閉状態からステップモータ44を1ステップ分だけ開弁方向へ動作させたときには、弁座30の上端内縁、すなわちシート部30aと拡径部43dの外周面との間に第1の開口面積D11が形成され、シート部30aとスカート部43cの外周面との間に第2の開口面積D21が形成される。このため、弁座30と弁体43との間を流れるガス量は、これら開口面積D11,D21のうち小さい方の開口面積により規定される。1ステップ分だけの開弁で吸気圧力変化をより大きくするためには、このときの第1の開口面積D11と第2の開口面積D21は等しいことが望ましい。その後、ステップモータ44を開弁方向へ動作させたときの第2の開口面積D2nは第1の開口面積D1nより小さくなることから、弁体43のスカート部43cがシート部30aを通過するまでの間で、弁座30と弁体43との間を流れるガス流量は、第2の開口面積D2nにより規定される。この間の第2の開口面積D2nの1ステップ毎の変化は、最初の第2の開口面積D21の全閉状態からの変化よりも小さいことから、この間の弁体43の開弁によるガス流量の調節に関する分解能は高くなる。
【0142】
これに対し、対比例では、図26に拡大して示すように、全閉状態からステップモータを1ステップ分だけ開弁方向へ動作させたときには、弁座57の上端内縁、すなわちシート部57aとスカート部56bの外周面との間に第3の開口面積D31が形成される。このときの第3の開口面積D31は、本実施形態における第2の開口面積D21よりも小さい。このため、対比例における弁座57と弁体56との間を流れるガス流量は、本実施形態におけるガス流量よりも少なくなる。その後、ステップモータを開弁方向へ動作させたときの第3の開口面積D3nは、弁体56のスカート部56bがシート部57aを通過するまでの間では、第3の開口面積D3nにより規定される。この間の第3の開口面積D3nの1ステップ毎の変化は、最初の第3の開口面積D31の全閉からの変化とほぼ同じとなる。
【0143】
ここで、仮に対比例の弁体56につき、全閉状態からステップモータを1ステップ分だけ開弁方向へ動作させたときの開口面積D31を、本実施形態の弁体43の開口面積D21と同等にするためにスカート部56bのテーパ形状を緩やかな傾斜にすることが考えられる。しかし、この場合は、背反として弁座57と弁体56との間を流れるガス流量の調節に関する分解能が低くなってしまうので好ましくない。
【0144】
従って、この実施形態では、全閉状態からステップモータ44を1ステップ分だけ開弁方向へ動作させたときの第1の開口面積D11が、対比例において全閉状態からステップモータを1ステップ分だけ開弁方向へ動作させたときの第3の開口面積D31より大きくなり、このときの全閉状態からの吸気圧力PMの変化は、本実施形態が対比例よりも大きくなる。このため、この実施形態では、全閉状態からステップモータ44を1ステップ分だけ開弁方向へ動作させたときの開弁開始位置N(s)を、対比例に比べ、吸気圧力PMの上昇変化に基づきより確実に判定することができる。
【0145】
なお、この開示技術は前記実施形態に限定されるものではなく、開示技術の趣旨を逸脱することのない範囲で構成の一部を適宜変更して実施することもできる。
【0146】
(1)前記各実施形態では、ポペット式であって内開式のEGR弁14,19及びスロットル弁4について説明したが、ポペット式であって外開式のEGR弁又はスロットル弁についても、本開示技術における流体制御弁の構成を具体化することができ、前記各実施形態と同等の作用及び効果を得ることができる。ポペット式であって外開式のEGR弁又はスロットル弁の場合は、制御手段は、開弁開始位置を判定するときに、ロータの雌ねじ山の第2雌ねじ山面と弁軸の雄ねじ山の第1雄ねじ山面とが係合し、かつ、スプリングにより弁体が弁軸と共にアクチュエータに近付く方向へ最大限に付勢された完全係合付勢状態から、アクチュエータを段階的に制御することで弁体を弁軸と共にアクチュエータから遠ざかる方向へ段階的に移動させることになる。
【0147】
(2)前記各実施形態では、全閉位置を規定するためストッパと当接部を持たないEGR弁14,19及びスロットル弁4について説明したが、全閉位置を規定するためストッパと当接部を設けたEGR弁又はスロットル弁についても本開示技術における流体制御弁の構成を具体化することができ、前記各実施形態と同等の作用及び効果を得ることができる。
【0148】
(3)前記第3実施形態のEGR弁19では、ハウジング41を、外ハウジング61、内ハウジング62及び軸受ハウジング63と、EGRガスが流れる流路66を有する流路ハウジング67とにより構成した。これに対し、EGR弁のハウジングを、外ハウジング、内ハウジング及び軸受ハウジングにより構成し、内ハウジングにEGRガスが流れる流路を設けることもできる。
【産業上の利用可能性】
【0149】
この開示技術は、自動車に搭載されるエンジンシステムやシリーズ方式のハイブリッド小型モビリティに搭載される発電用エンジンシステムに利用することができる。
【符号の説明】
【0150】
1 エンジン
2 吸気通路(所定の通路)
3 排気通路
4 スロットル弁(流体制御弁)
10 エンジン
12 EGR通路(所定の通路)
14 EGR弁(流体制御弁)
19 EGR弁(流体制御弁)
30 弁座
41 ハウジング
42 弁軸
43 弁体
44 ステップモータ(アクチュエータ)
45 スプリング
46 雄ねじ
46a 雄ねじ山
46aa 第1雄ねじ山面
46ab 第2雄ねじ山面
47 雌ねじ
47a 雌ねじ山
47aa 第1雌ねじ山面
47ab 第2雌ねじ山面
49 バックラッシ
73 ロータ
84 吸気圧センサ(吸気圧力検出手段)
90 ECU(制御手段)
N(s) 開弁開始位置
CLstep 全閉位置
D11 第1の開口面積
D21 第2の開口面積
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