(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022114289
(43)【公開日】2022-08-05
(54)【発明の名称】自動二輪車用タイヤ
(51)【国際特許分類】
B60C 9/06 20060101AFI20220729BHJP
B60C 9/07 20060101ALI20220729BHJP
B60C 9/22 20060101ALI20220729BHJP
【FI】
B60C9/06 B
B60C9/07
B60C9/22 C
B60C9/22 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021010530
(22)【出願日】2021-01-26
(71)【出願人】
【識別番号】000183233
【氏名又は名称】住友ゴム工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104134
【弁理士】
【氏名又は名称】住友 慎太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100156225
【弁理士】
【氏名又は名称】浦 重剛
(74)【代理人】
【識別番号】100168549
【弁理士】
【氏名又は名称】苗村 潤
(74)【代理人】
【識別番号】100200403
【弁理士】
【氏名又は名称】石原 幸信
(74)【代理人】
【識別番号】100206586
【弁理士】
【氏名又は名称】市田 哲
(72)【発明者】
【氏名】小堀 千尋
【テーマコード(参考)】
3D131
【Fターム(参考)】
3D131AA32
3D131BB06
3D131BC12
3D131BC13
3D131BC15
3D131BC33
3D131CA03
3D131DA03
3D131DA09
3D131DA55
3D131DA57
(57)【要約】
【課題】バイアス構造のカーカスを備えた自動二輪車用タイヤにおいて、優れた旋回性能を発揮させる。
【解決手段】自動二輪車用タイヤであって、トレッド部2と、一対のサイドウォール部3と、一対のビード部4と、カーカス6とを含む。トレッド部2は、クラウン領域Crと、一対のショルダー領域Shと、一対のミドル領域Miとを含む。カーカス6は、複数のカーカスコードを含む。ショルダー領域Shでのカーカスコード13のタイヤ周方向に対する角度θsは、クラウン領域Crでのカーカスコード13のタイヤ周方向に対する角度θcよりも大きい。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動二輪車用タイヤであって、
一対のトレッド端の間のトレッド部と、一対のサイドウォール部と、一対のビード部と、一方の前記ビード部から他方の前記ビード部に至るバイアス構造のカーカスとを含み、
前記トレッド部は、前記一対のトレッド端の間のトレッド展開幅をタイヤ軸方向に5等分割したときの中央の領域となるクラウン領域と、前記一対のトレッド端を含む一対のショルダー領域と、前記クラウン領域と前記一対のショルダー領域との間の一対のミドル領域とを含み、
前記カーカスは、複数のカーカスコードを含み、
前記ショルダー領域での前記カーカスコードのタイヤ周方向に対する角度θsは、前記クラウン領域での前記カーカスコードのタイヤ周方向に対する角度θcよりも大きい、
自動二輪車用タイヤ。
【請求項2】
前記クラウン領域、前記ミドル領域及び前記ショルダー領域において、前記カーカスコードのタイヤ周方向に対する角度は、20~65°の範囲である、請求項1に記載の自動二輪車用タイヤ。
【請求項3】
前記角度θcは、前記角度θsの0.35~0.90倍である、請求項1又は2に記載の自動二輪車用タイヤ。
【請求項4】
前記トレッド部は、前記クラウン領域、前記ミドル領域及び前記ショルダー領域に亘って配されたバンド層を含み、
前記バンド層は、バンドコードがタイヤ周方向に対して5°以下の角度で配列されたバンドプライを含み、
前記ミドル領域での前記バンドコードのエンズEmは、前記クラウン領域での前記バンドコードのエンズEcよりも大きい、請求項1ないし3のいずれか1項に記載の自動二輪車用タイヤ。
【請求項5】
前記エンズEcは、前記エンズEmの0.50~0.90倍である、請求項4に記載の自動二輪車用タイヤ。
【請求項6】
前記バンドプライの前記ショルダー領域での前記バンドコードのエンズEsは、前記エンズEmよりも小さい、請求項4又は5に記載の自動二輪車用タイヤ。
【請求項7】
前記エンズEsは、前記エンズEmの0.50~0.90倍である、請求項6に記載の自動二輪車用タイヤ。
【請求項8】
前記角度θcに、前記エンズEmに対する前記エンズEcの比率を乗じたθc×Ec/Emは、10~55である、請求項4ないし7のいずれか1項に記載の自動二輪車用タイヤ。
【請求項9】
前記角度θsに、前記エンズEmに対する前記バンドプライの前記ショルダー領域での前記バンドコードのエンズEsの比率を乗じたθs×Es/Emは、10~55である、請求項4ないし8のいずれか1項に記載の自動二輪車用タイヤ。
【請求項10】
前記バンドプライは、前記バンドコードが螺旋状に巻きつけられたジョイントレスバンドプライである、請求項4ないし9のいずれか1項に記載の自動二輪車用タイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動二輪車用タイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1には、自動二輪車用バイアスタイヤが提案されている。前記タイヤは、カーカスコードがタイヤ周方向に対して傾斜して配列されたバイアス構造のカーカスプライと、トレッド部の内方かつカーカスの外側に配されるバンドとを具えている。前記タイヤは、前記カーカスプライ及び前記バンドによって、タイヤの軽量化及び操縦安定性の向上を期待している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のようなバイアス構造のカーカスを含む自動二輪車用タイヤは、比較的大きなキャンバー角での旋回時において、キャンバースラストが小さい傾向があり、旋回性能について改善が求められていた。
【0005】
本発明は、以上のような実状に鑑み案出なされたもので、バイアス構造のカーカスを備えた自動二輪車用タイヤにおいて、優れた旋回性能を発揮させることを主たる目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、自動二輪車用タイヤであって、一対のトレッド端の間のトレッド部と、一対のサイドウォール部と、一対のビード部と、一方の前記ビード部から他方の前記ビード部に至るバイアス構造のカーカスとを含み、前記トレッド部は、前記一対のトレッド端の間のトレッド展開幅をタイヤ軸方向に5等分割したときの中央の領域となるクラウン領域と、前記一対のトレッド端を含む一対のショルダー領域と、前記クラウン領域と前記一対のショルダー領域との間の一対のミドル領域とを含み、前記カーカスは、複数のカーカスコードを含み、前記ショルダー領域での前記カーカスコードのタイヤ周方向に対する角度θsは、前記クラウン領域での前記カーカスコードのタイヤ周方向に対する角度θcよりも大きい。
【0007】
本発明の自動二輪車用タイヤの前記クラウン領域、前記ミドル領域及び前記ショルダー領域において、前記カーカスコードのタイヤ周方向に対する角度は、20~65°の範囲であるのが望ましい。
【0008】
本発明の自動二輪車用タイヤにおいて、前記角度θcは、前記角度θsの0.35~0.90倍であるのが望ましい。
【0009】
本発明の自動二輪車用タイヤにおいて、前記トレッド部は、前記クラウン領域、前記ミドル領域及び前記ショルダー領域に亘って配されたバンド層を含み、前記バンド層は、バンドコードがタイヤ周方向に対して5°以下の角度で配列されたバンドプライを含み、前記ミドル領域での前記バンドコードのエンズEmは、前記クラウン領域での前記バンドコードのエンズEcよりも大きいのが望ましい。
【0010】
本発明の自動二輪車用タイヤにおいて、前記エンズEcは、前記エンズEmの0.50~0.90倍であるのが望ましい。
【0011】
本発明の自動二輪車用タイヤにおいて、前記バンドプライの前記ショルダー領域での前記バンドコードのエンズEsは、前記エンズEmよりも小さいのが望ましい。
【0012】
本発明の自動二輪車用タイヤにおいて、前記エンズEsは、前記エンズEmの0.50~0.90倍であるのが望ましい。
【0013】
本発明の自動二輪車用タイヤにおいて、前記角度θcに、前記エンズEmに対する前記エンズEcの比率を乗じたθc×Ec/Emは、10~55であるのが望ましい。
【0014】
本発明の自動二輪車用タイヤにおいて、前記角度θsに、前記エンズEmに対する前記バンドプライの前記ショルダー領域での前記バンドコードのエンズEsの比率を乗じたθs×Es/Emは、10~55であるのが望ましい。
【0015】
本発明の自動二輪車用タイヤにおいて、前記バンドプライは、前記バンドコードが螺旋状に巻きつけられたジョイントレスバンドプライであるのが望ましい。
【発明の効果】
【0016】
本発明の自動二輪車用タイヤは、上記の構成を採用したことによって、優れた旋回性能を発揮することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明の自動二輪車用タイヤの一実施形態を示す断面図である。
【
図2】
図1の第1カーカスプライ及び第2カーカスプライの展開図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施の一形態が図面に基づき説明される。
図1は、本実施形態の自動二輪車用タイヤ1(以下、単に「タイヤ」ということがある。)の正規状態のタイヤ回転軸を含むタイヤ子午線断面図である。本実施形態のタイヤ1は、オンロードでのスポーツ走行に適した自動二輪車の前輪用のタイヤである。但し、本発明のタイヤは、このような態様に限定されるものではない。
【0019】
「正規状態」とは、各種の規格が定められた自動二輪車用タイヤの場合、タイヤが正規リムにリム組みされかつ正規内圧が充填され、しかも、無負荷の状態である。各種の規格が定められていないタイヤの場合、前記正規状態は、タイヤの使用目的に応じた標準的な使用状態であって車両に未装着かつ無負荷の状態を意味する。本明細書において、特に断りがない場合、タイヤ各部の寸法等は、前記正規状態で測定された値である。
【0020】
「正規リム」は、タイヤが基づいている規格を含む規格体系において、当該規格がタイヤ毎に定めているリムであり、例えばJATMAであれば "標準リム" 、TRAであれば "Design Rim" 、ETRTOであれば"Measuring Rim" である。
【0021】
「正規内圧」は、タイヤが基づいている規格を含む規格体系において、各規格がタイヤ毎に定めている空気圧であり、JATMAであれば "最高空気圧" 、TRAであれば表 "TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES" に記載の最大値、ETRTOであれば "INFLATION PRESSURE" である。
【0022】
図1に示されるように、本実施形態のタイヤ1は、一対のトレッド端Teの間のトレッド部2と、一対のサイドウォール部3と、一対のビード部4とを有している。トレッド部2は、キャンバー角が大きい旋回時においても十分な接地面積が得られるように、一方のトレッド端Teと他方のトレッド端Teとの間の外面2sが、タイヤ半径方向外側に凸で円弧状に湾曲している。なお、トレッド端Teとは、最大キャンバー角での旋回時におけるトレッド部2の接地面の端に相当する。
【0023】
トレッド部2は、クラウン領域Cr、一対のショルダー領域Sh及び一対のミドル領域Miを含む。クラウン領域Crは、一対のトレッド端Teの間のトレッド展開幅TWeをタイヤ軸方向に5等分割したときの中央の領域である。ショルダー領域Shは、トレッド端Teを含んでおり、前記5等分割したときにおける、トレッド部2のタイヤ軸方向の両側の領域である。ミドル領域Miは、クラウン領域Crと一対のショルダー領域Shとの間に区分されている。各領域の境界10は、トレッド部2を平面に展開した状態においては、トレッド展開幅TWeを5等分割するように延びており、タイヤ子午線断面において、トレッド部2の外面2sに対する法線方向に延びている。
【0024】
また、本実施形態のタイヤ1は、トロイド状のカーカス6を含んでいる。カーカス6は、一方のビード部4から、一方のサイドウォール部3、トレッド部2及び他方のサイドウォール部3を経て他方のビード部4に至る。また、カーカス6は、複数のカーカスコードがトッピングゴムで被覆されたカーカスプライを少なくとも1枚含んでいる。本発明のカーカス6は、カーカスコードがタイヤ周方向に対して傾斜して延びるバイアス構造を備えている。カーカスコードは、例えば、有機繊維コードで構成されている。
【0025】
本実施形態のカーカス6は、例えば、互いに重ねられた第1カーカスプライ11及び第2カーカスプライ12で構成されている。本実施形態では、トレッド部2において、第1カーカスプライ11が第2カーカスプライ12のタイヤ半径方向内側に配されている。また、本実施形態のカーカス6は、本体部6aと折返し部6bとを含む。本体部6aは、トレッド部2からサイドウォール部3をへてビード部4のビードコア5に至る。折返し部6bは、本体部6aに連なり、かつ、ビードコア5で折返されてタイヤ半径方向外側に延びている。
【0026】
図2には、トレッド部2における第1カーカスプライ11及び第2カーカスプライ12の展開図が示されている。また、
図3には、カーカスコード13の配列態様を示す図として、第1カーカスプライ11の展開図が示されている。
図2に示されるように、本実施形態では、第1カーカスプライ11のカーカスコード13がタイヤ軸方向に対して第1方向(本明細書の各図では、右上がりである。)に傾斜しており、第2カーカスプライ12のカーカスコード13がタイヤ軸方向に対して前記第1方向とは逆向きの第2方向(本明細書の各図では右下がりである。)に傾斜している。これにより、第1カーカスプライ11と第2カーカスプライ12とは、互いに含まれるカーカスコード13が交差する向きに重ねられている。
【0027】
図3に示されるように、ショルダー領域Shでのカーカスコード13のタイヤ周方向に対する角度θsは、クラウン領域Crでのカーカスコード13のタイヤ周方向に対する角度θcよりも大きい。本発明のタイヤ1は、上記の構成を採用したことによって、優れた旋回性能を発揮することができる。その理由としては、以下のメカニズムが考えられる。
【0028】
上述のカーカスコード13の配置により、ショルダー領域Shのタイヤ軸方向の剛性が相対的に高くなる。このため、クラウン領域Crからショルダー領域Shが接地する過程において、キャンバースラストやコーナリングフォースが徐々に大きくなり、かつ、ショルダー領域Shが接地する旋回時においては、十分に大きなキャンバースラスト及びコーナリングフォースが得られる。一方、クラウン領域Crでは、カーカスコードの前記角度が小さいため、タイヤ周方向の剛性が高く、ブレーキ性能が維持される。本発明では、以上のようなメカニズムにより、優れた旋回性能が発揮されると考えられる。
【0029】
以下、本実施形態のさらに詳細な構成が説明される。なお、以下で説明される各構成は、本実施形態の具体的態様を示すものである。したがって、本発明は、以下で説明される構成を具えないものであっても、上述の効果を発揮し得るのは言うまでもない。また、上述の特徴を具えた本発明のタイヤに、以下で説明される各構成のいずれか1つが単独で適用されても、各構成に応じた性能の向上は期待できる。さらに、以下で説明される各構成のいくつかが複合して適用された場合、各構成に応じた複合的な性能の向上が期待できる。
【0030】
図3に示されるように、クラウン領域Cr、ミドル領域Mi及びショルダー領域Shにおいて、カーカスコード13のタイヤ周方向に対する角度は、20~65°の範囲であるのが望ましい。
【0031】
クラウン領域Crにおけるカーカスコード13のタイヤ周方向に対する角度θcは、例えば、20~45°であり、望ましくは25~40°である。また、ミドル領域Miにおけるカーカスコード13のタイヤ周方向に対する角度θmは、例えば、25~60°であり、望ましくは30~55°である。ショルダー領域Shにおけるカーカスコード13のタイヤ周方向に対する角度θsは、例えば、25~65°であり、望ましくは35~60°である。但し、本発明は、このような角度の範囲に限定されるものではない。
【0032】
カーカスコード13の各領域におけるタイヤ周方向に対する角度は、下記の式(1)の関係を満たすが望ましい。また、カーカスコード13の前記角度は、クラウン領域Crの側からショルダー領域Shの側に向かって連続して大きくなっているのが望ましい。これにより、車体を倒し込むときの手応えがリニアになり、ハンドリング性能が向上する。
θc<θm<θs…(1)
【0033】
クラウン領域Crにおけるカーカスコード13の前記角度θcは、ショルダー領域Shにおけるカーカスコード13の前記角度θsの望ましくは0.35倍以上、より望ましくは0.50倍以上であり、望ましくは0.90倍以下、より望ましくは0.75倍以下である。このようなカーカスコード13の配置は、倒し込みの手応えが重くなるのを防ぎつつ、旋回性能を向上させることができる。
【0034】
ミドル領域Miにおけるカーカスコード13の前記角度θmは、ショルダー領域Shにおけるカーカスコード13の前記角度θsの望ましくは0.75倍以上、より望ましくは0.80倍以上であり、望ましくは0.98倍以下、より望ましくは0.95倍以下である。このようなカーカスコード13の配置は、ミドル領域Miやショルダー領域Shが接地するような比較的大きなキャンバー角での旋回時において、優れたハンドリング性能を発揮させる。
【0035】
上述のカーカスコード13の配列態様は、
図3で示される第1カーカスプライ11のカーカスコード13のみならず、第2カーカスプライ12のカーカスコードに適用されるのは言うまでもない。なお、上述された各領域におけるカーカスコード13の角度は、各領域のタイヤ軸方向の中心位置で測定されたものに相当する。
【0036】
図1に示されるように、本実施形態のトレッド部2は、クラウン領域Cr、ミドル領域Mi及びショルダー領域Shに亘って配されたバンド層8を含む。バンド層8は、バンドコードがタイヤ周方向に対して5°以下の角度で配列されたバンドプライ15を含む。より望ましい態様として、本実施形態のバンドプライ15は、バンドコードが螺旋状に巻きつけられたジョイントレスバンドプライとして構成されている。
【0037】
図4には、バンドプライ15の展開図が示されている。本実施形態では、バンドプライ15のバンドコード16のエンズ(プライ幅5cm当たりに配されたコードの本数である。)が各領域によって相違している。これにより、各種の性能の向上が期待されている。
【0038】
具体的には、クラウン領域CrでのバンドコードのエンズEcは、例えば、10~40本であり、望ましくは20~35本である。ミドル領域MiでのバンドコードのエンズEmは、例えば、20~60本であり、望ましくは30~55本である。ショルダー領域ShでのバンドコードのエンズEsは、例えば、5~40本であり、望ましくは10~35本である。
【0039】
ミドル領域Miでのバンドコード16のエンズEmは、クラウン領域Crでのバンドコード16のエンズEcよりも大きいのが望ましい。具体的には、クラウン領域Crでの前記エンズEcは、ミドル領域Miでの前記エンズEmの望ましくは0.50倍以上、より望ましくは0.60倍以上であり、望ましくは0.90倍以下、より望ましくは0.80倍以下である。
【0040】
ショルダー領域Shでのバンドコード16のエンズEsは、ミドル領域Miでのバンドコード16のエンズEmよりも小さいのが望ましい。具体的には、ショルダー領域Shでの前記エンズEsは、ミドル領域Miでの前記エンズEmの望ましくは0.50倍以上、より望ましくは0.60倍以上であり、望ましくは0.90倍以下、より望ましくは0.80倍以下である。このようなバンドコード16の配列は、ショルダー領域Shのタイヤ周方向の剛性を相対的に緩和し、ショルダー領域Shの接地面を大きくするため、旋回時のグリップ性能を高めることができる。
【0041】
発明者らは、種々の実験の結果、カーカスコード13の角度とバンドコード16のエンズとを関連付けることにより、倒し込み時の手応えや、操縦安定性、旋回性能等、タイヤの総合的な性能を向上できることを見出した。
【0042】
具体的には、クラウン領域Crでのカーカスコード13の前記角度θc(
図3に示す)に、ミドル領域Miにおけるバンドコード16の前記エンズEmに対するクラウン領域Crにおけるバンドコード16の前記エンズEcの比率を乗じたθc×Ec/Emは、望ましくは10以上、より望ましくは15以上であり、望ましくは55以下、より望ましくは50以下である。このようなカーカスコード13及びバンドコード16の配列は、キャンバー角が比較的小さい旋回状態において、操縦安定性を維持しつつ、耐摩耗性能、グリップ性能及び旋回性能をバランス良く向上させることができる。
【0043】
同様の観点から、ショルダー領域Shでのカーカスコード13の前記角度θs(
図3に示す)に、ミドル領域Miにおけるバンドコード16の前記エンズEmに対するショルダー領域Shにおけるバンドコード16の前記エンズEsの比率を乗じたθs×Es/Emは、望ましくは10以上、より望ましくは15以上であり、望ましくは55以下、より望ましくは50以下である。このようなカーカスコード13及びバンドコード16の配列は、キャンバー角が比較的大きい旋回状態において、操縦安定性を維持しつつ、耐摩耗性能、グリップ性能及び旋回性能をバランス良く向上させることができる。
【0044】
以上、本発明の一実施形態の自動二輪車用タイヤが詳細に説明されたが、本発明は、上記の具体的な実施形態に限定されることなく、種々の態様に変更して実施され得る。
【実施例0045】
図1の基本構造を有する、呼び幅120mm、偏平率70%、リム径17インチの自動二輪車用タイヤ(前輪用タイヤである。)が、表1~4の仕様に基づき製造された。また、比較例として、カーカスコードのタイヤ周方向に対する角度が、クラウン領域、ミドル領域及びショルダー領域に亘って一定であるタイヤが試作された。なお、比較例のタイヤは、上述の事項を除き、実施例のタイヤと実施的に同じである。各テストタイヤの旋回性能、グリップ性能、操縦安定性及び耐摩耗性能がテストされた。各テストタイヤの共通仕様やテスト方法は、以下の通りである。
リムサイズ:MT3.50
タイヤ内圧:250kPa
テスト車両:排気量1000cc
【0046】
<旋回性能、グリップ性能、操縦安定性>
上記テスト車両でドライアスファルト路面のテストコースを走行し、各項目を評価した。なお、「旋回性能」は、直立からフルバンクにおける総合的な旋回性能を指す。また、「グリップ性能」は、走行全域での総合的なグリップ性能を指す。「操縦安定性」は、走行全域でのハンドリング性能を含む総合的な操縦安定性を指す。結果は、10点を満点とする評点で示されており、数値が大きい程、各評価項目が優れていることを示す。
【0047】
<耐摩耗性能>
上記テスト車両で一般道を15000km走行したあと、トレッドゴムの残存量が測定された。結果は、比較例の前記残存量を100とする指数であり、数値が大きい程、トレッドゴムの残存量が大きく、耐摩耗性能が優れていることを示す。
テストの結果が表1~4に示される。
【0048】
【0049】
【0050】
【0051】
【0052】
テストの結果、実施例のタイヤは、優れた旋回性能を発揮していることが確認できた。これに加え、実施例のタイヤは、グリップ性能、操縦安定性及び耐摩耗性能も向上していることが確認できた。