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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022114296
(43)【公開日】2022-08-05
(54)【発明の名称】支持構造
(51)【国際特許分類】
   E02D 27/34 20060101AFI20220729BHJP
【FI】
E02D27/34 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021010540
(22)【出願日】2021-01-26
(71)【出願人】
【識別番号】000000549
【氏名又は名称】株式会社大林組
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】山本 彰
(72)【発明者】
【氏名】吉田 治
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 智大
【テーマコード(参考)】
2D046
【Fターム(参考)】
2D046DA11
(57)【要約】
【課題】揺れ等により下部構造物及び上部構造物に生じた相対変位に起因する損傷を抑制しながら、上部構造物を安定して支持することができる支持構造を提供する。
【解決手段】支持構造10は、基礎部B1の上方で上部構造物の下方に配置されたユニット20を備える。ユニット20は、上部部材21と、下部部材22と、引張部材25とを備える。上部部材21は、上部構造物に剛接合された上部接合部21aと、上部接合部21aから側方に延在した第1連結部21bとを備える。下部部材22は、基礎部B1に剛接合された下部接合部22aと、下部接合部22aから側方に延在し、第1連結部21bよりも上方に配置される第2連結部22bとを備える。引張部材25は、第1連結部21bと第2連結部22bとに連結される。支持構造10は、少なくとも3個の引張部材25を、面状に配置している。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下部構造物と上部構造物との間に配置された支持構造であって、
前記上部構造物に剛接合された上部接合部と、前記上部接合部から側方に延在した第1連結部とを備えた上部部材と、
前記下部構造物に剛接合された下部接合部と、前記下部接合部から側方に延在し前記第1連結部よりも上方に配置される第2連結部とを備えた下部部材と、
前記第1連結部と前記第2連結部とに連結された引張部材とを備え、
少なくとも3個の引張部材を、面を構成するように配置したことを特徴とする支持構造。
【請求項2】
前記上部部材、前記下部部材及び前記引張部材で1個のユニットを構成し、
3個以上の前記ユニットにより、面を構成するように配置したことを特徴とする請求項1に記載の支持構造。
【請求項3】
前記下部部材は、弾性変形可能な状態で、前記引張部材に連結していることを特徴とする請求項1又は2に記載の支持構造。
【請求項4】
前記引張部材の揺れを減衰する減衰機構を更に設けたことを特徴とする請求項1~3の何れか1項に記載の支持構造。
【請求項5】
前記第1連結部と前記第2連結部との間隔を変更する昇降部材を備えていることを特徴とする請求項1~4の何れか1項に記載の支持構造。
【請求項6】
前記上部部材は、複数の上部接合部を備え、
前記下部部材は、前記上部接合部と同じ個数の前記下部接合部を備え、
前記上部接合部と前記下部接合部が交互に配置されていることを特徴とする請求項1~5の何れか1項に記載の支持構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、下部構造物と上部構造物との間に配置され、上部構造物を支持する支持構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、建築物等の構造物は、下方に配置される基礎部に、直接基礎や杭基礎等の圧縮部材を介して支持されている。この場合、地震によって地盤が大きく揺らされると、基礎と圧縮部材を通じて構造物に大きな振動が伝わり、構造物や基礎部に大きな損傷が生じることがある。そこで、損傷を抑制するために、従来では、構造物と基礎部との間に、免震ゴムアイソレータ等の免震機構を設け、構造物に伝わる振動を低減することが行なわれていた(例えば、特許文献1参照。)。この文献に記載の技術では、免震機構を備えた建造物の変位を計測する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2014-16286号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、免震ゴムアイソレータ等の免震機構では、水平方向に対しては効果があったが、鉛直方向に対しては、効果が薄かった。更に、免震ゴムアイソレータを用いた場合、面積に起因して変形量が制限されるとともに、鉛直荷重を受け持つ面積が変形時のズレによって減少する。そのため、免震ゴムアイソレータの寸法は、これが支持する荷重によって必要とする面積が自ずと決まってしまうため、より免震効果の高い長周期化が難しい。また、免震ゴムアイソレータ等の免震機構を用いた支持構造では、縦方向の振動の伝達を抑制することが困難であった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決する支持構造は、下部構造物と上部構造物との間に配置された支持構造であって、前記上部構造物に剛接合された上部接合部と、前記上部接合部から側方に延在した第1連結部とを備えた上部部材と、前記下部構造物に剛接合された下部接合部と、前記下部接合部から側方に延在し前記第1連結部よりも上方に配置される第2連結部とを備えた下部部材と、前記第1連結部と前記第2連結部とに連結された引張部材とを備え、少なくとも3個の引張部材を、面を構成するように配置する。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、揺れ等により下部構造物及び上部構造物に生じた相対変位に起因する損傷を抑制しながら、上部構造物を安定して支持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】第1実施形態の支持構造を構成するユニットの概念図。
図2】第1実施形態の支持構造の斜視図。
図3】第1実施形態の支持構造の平面図。
図4】第1実施形態の支持構造の横斜めから見た正面図。
図5】第1実施形態の支持構造の揺動を示す説明図。
図6】第1実施形態の支持構造の揺動を示す説明図。
図7】第2実施形態の支持構造の横斜めから見た正面図。
図8】第2実施形態の支持構造の揺動を示す説明図。
図9】第2実施形態の支持構造の揺動を示す説明図。
図10】第3実施形態の支持構造の平面図。
図11】第3実施形態の支持構造の正面断面図。
図12】変更例において3個の接合部を有する支持構造の平面図。
図13】変更例において3個の接合部を有する支持構造の横斜めから見た正面図。
図14】変更例において4個の接合部を有する支持構造の平面図。
図15】変更例において4個の接合部を有する支持構造の横斜めから見た正面図。
図16】変更例において水平方向用ダンパを設けたユニットの横斜めから見た正面図。
図17】変更例において鉛直方向用ダンパを設けたユニットの横斜めから見た正面図。
図18】変更例において引張部材にダンパを設けたユニットの横斜めから見た正面図。
図19】変更例において鉛直方向用ダンパ及び水平方向用ダンパを設けたユニットの横斜めから見た正面図。
図20】変更例において鉛直方向用ダンパ及び水平方向用ダンパを設けた支持構造の横斜めから見た正面図。
図21】変更例においてジャッキを設けた支持構造を横斜めから見た正面図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
(第1実施形態)
以下、図1図6を用いて、支持構造を具体化した第1実施形態を説明する。本実施形態の支持構造は、上部構造物と下部構造物との間に配置され、上部構造物及び下部構造物に固定される。上部構造物としては、構造物、フーチング等である。下部構造物としては、基礎梁、基礎版、フーチング等があるが、ここでは基礎部として説明する。
【0009】
(支持構造の概念的構成)
まず、図1を用いて、本実施形態の支持構造を構成するユニットUA1の概念図を説明する。
【0010】
図1に示すように、ユニットUA1は、上部部材U1と下部部材U2と引張部材U3とを有する。
上部部材U1は、上部接合部U1aと第1連結部U1bとを有する。上部接合部U1aの上端部は、上部構造物SU1の下面に剛接合で固定される。第1連結部U1bは、上部接合部U1aの下端部から側方に延在するように設けられる。
【0011】
下部部材U2は、下部接合部U2aと第2連結部U2bとを有する。下部接合部U2aの下端部は、基礎部BU1の上面に剛接合で固定される。第2連結部U2bは、下部接合部U2aの上端部から側方に延在するように設けられるとともに、上部部材U1の第1連結部U1bの上方に配置される。
【0012】
引張部材U3の上端部は、下部部材U2の第2連結部U2bの下面にピン接合される。更に、引張部材U3の下端部は、上部部材U1の第1連結部U1bの上面にピン接合される。
【0013】
このようなユニットUA1においては、上部部材U1及び下部部材U2が、上部構造物SU1及び基礎部BU1にそれぞれ剛接合される。更に、引張部材U3が上部部材U1及び下部部材U2に回動可能に固定される。このような構成では、1個のユニットUA1では不安定であるため、3個以上の引張部材U3(ユニットUA1)を面状(直線上に位置しない状態)に配置する必要がある。
【0014】
(支持構造の具体的構成)
次に、本実施形態における支持構造を、上部構造物を支持する支持構造物に用いた具体的な構成について説明する。
図2は、支持構造物としての支持構造10の斜視図であり、図3は、上部構造物S1側(上から)見た支持構造10の上面図であって、上部構造物S1を除いた図である。図4は、支持構造の正面図に対して水平斜めから見た図である。
【0015】
図2に示すように、支持構造10は、複数のユニット20を備える。
図3に示すように、複数のユニット20は、斜めに並んでいると共に、1個飛ばして格子状に整列されて、平面状に配置される。
【0016】
図4に示すように、ユニット20は、上部構造物S1と基礎部B1との間に配置される。ユニット20は、上部構造物S1に剛接合された上部部材21と、基礎部B1に剛接合された下部部材22と、引張部材25とを備える。
【0017】
上部部材21は、2個の上部接合部21aと第1連結部21bとを備える。2本の上部接合部21aは、同一の鉛直面内(静止時)で、下端側で接近し、上端側で離れるように配置される。各上部接合部21aは、例えば、円筒部材で構成される。各上部接合部21aの上面は、上部構造物S1の下面に剛接合され、各上部接合部21aの下面は、第1連結部21bの上面に剛接合される。第1連結部21bは、平面が略正方形状の直方体形状を有する。更に、第1連結部21bの上面には、上部接合部21aより側方に第1連結部21bが延在するように、上部接合部21aが固定される。
【0018】
下部部材22は、2個の下部接合部22aと第2連結部22bとを備える。2本の下部接合部22aは、同一の鉛直面内(静止時)で、上端側で接近し、下端側で離れるように配置される。各下部接合部22aは、例えば、円筒部材で構成される。各下部接合部22aの下面及び上面は、基礎部B1の上面及び第2連結部22bの下面にそれぞれ剛接合される。本実施形態では、例えば、基礎部B1に剛接合されている箇所における下部接合部22a間の間隔は、上部構造物S1に剛接合されている上部接合部21a間の間隔と同じである。また、上部接合部21aと、これらに隣接する下部接合部22aとは、同じ間隔となるように配置される。第2連結部22bは、第1連結部21bと同じ形状を有し、第1連結部21bの上方に配置されている。第2連結部22bの下面には、下部接合部22aより側方に第2連結部22bが延在するように、下部接合部22aが固定される。
【0019】
引張部材25は、上部部材21と下部部材22とに回動可能に連結される。具体的には、引張部材25の下端部が、第1連結部21bの中央にピン接合され、引張部材25の上端部が、第2連結部22bの中央にピン接合される。そして、すべてのユニット20の引張部材25は、上部接合部21aの下面から下部接合部22aの上面までの距離(第1連結部21bの上面から第2連結部22bの下面までの距離)と同じ長さを有する。なお、引張部材25の上部部材21及び下部部材22への取付方法は、ねじ式、くさび式等、引張荷重を伝達でき、かつゆるみを生じない構造であって、引張部材25の回転に対して自由に動ける構造であればよい。
【0020】
(支持構造の組み立て方法)
次に、支持構造10の組み立て方法について説明する。
まず、上部接合部21aを第1連結部21bに固定することにより、上部部材21を組み立てる。
【0021】
次に、図3に示す配置となるように、組み立てた複数の上部部材21を配置する。そして、上部部材21の上部接合部21aを、上部構造物S1に固定する。
次に、図4に示すように、上部部材21の第1連結部21bの上方に、第2連結部22bを配置する。そして、この第2連結部22bに下部接合部22aを固定することにより、下部部材22を組み立てる。その後、第1連結部21bの上面と第2連結部22bの下面に引張部材25を回転可能に取り付ける。
【0022】
次に、下部部材22の下部接合部22aを基礎部B1に固定する。
そして、上部構造物S1を持ち上げることにより、第1連結部21bと第2連結部22bとの間隔を引張部材25の長さとほぼ同じにする。
なお、支持構造10の組み立て方法は、上述した方法に限られない。
【0023】
(支持構造の動き)
次に、図5及び図6を用いて、上述した支持構造10の動きについて説明する。
図5に示す矢印方向に、上部構造物S1に力が作用した場合、上部構造物S1の動きに従って、ユニット20の上部部材21が動く。そして、この上部部材21にピン接合している引張部材25が、上部部材21の動きに引っ張られるように、下部部材22の第2連結部22bとの接合箇所を中心として動く。
【0024】
そして、図6に示す矢印方向に、上部構造物S1に力が作用した場合、上部構造物S1の動きに従ってユニット20の上部部材21及び引張部材25が動く。
従って、上部構造物S1が基礎部B1に対して相対変位すると、下部部材22の第2連結部22bに支持されながら引張部材25が揺動するので、この揺動により相対変位を吸収することができる。
【0025】
(作用)
支持構造10は、面状に配置された3個以上のユニット20を備える。これにより、支持構造10は、安定して上部構造物S1を支持することができる。更に、ユニット20は、上部部材21と下部部材22とにピン接合された引張部材25とを備える。これにより、地震の揺れ等により、上部構造物S1が基礎部B1に対して水平方向に相対変位した場合には、相対変位に応じて上部部材21が動き、この動きに応じて、面状に配置された引張部材25が揺動するので、相対変位を吸収することができる。
【0026】
本実施形態によれば、以下のような効果を得ることができる。
(1-1)本実施形態では、支持構造10を構成する3個以上のユニット20は、面状に配置される。各ユニット20は、上部構造物S1に剛接合された上部部材21と、基礎部B1に剛接合された下部部材22と、上部部材21と下部部材22とにピン接合された引張部材25とを備える。これにより、上部構造物S1に、水平方向に相対変位が生じた場合には、安定して引張部材25を揺動させることができる。この揺動により、相対変位を吸収し、上部構造物S1や基礎部B1の損傷を抑制することができる。更に、このユニット20は、振り子の原理を応用した免震構造であるため、固有周期は、幾何学的寸法によって決定できる。従って、複数のユニット20を有する支持構造10は、引張部材25の長さを変更することにより、上部構造物S1や基礎部B1の固有周波数に応じた支持構造を実現できるため、免震効果を効率的に実現することができる。
【0027】
(1-2)本実施形態では、ユニット20の上部部材21及び下部部材22は、それぞれ2個の上部接合部21a及び下部接合部22aから構成される。これにより、少ない部材で、引張部材25を安定して揺らすことができる。
【0028】
(第2実施形態)
次に、図7図9を用いて、鉛直方向の相対変位をも可能にした第2実施形態を説明する。上記第1実施形態においては、ユニット20の引張部材25の揺れを用いて相対変位を吸収する。本実施形態においては、ユニットの引張部材の揺れとともに、鉛直方向の免震機構を用いて相対変位を吸収する。なお、以下の実施形態において、上記実施形態と同様の部分については、同一の符号を付し、その詳細な説明を省略する。
【0029】
本実施形態では、図7に示すように、上記第1実施形態のユニット20に代えて、ユニット30を配置する。ユニット30は、上部構造物S1と、基礎部B1との間に配置される。ユニット30は、上部構造物S1に剛接合された上部部材21と、基礎部B1に剛接合された下部部材32と、引張部材35と、鉛直方向の免震機構としての反発部材36とを備える。
【0030】
本実施形態の下部部材32は、上記第1実施形態の下部部材22と同様に、2本の下部接合部32aと第2連結部32bとを備える。2本の下部接合部32aは、下部接合部22aと同様に、同一の鉛直面内(静止時)で、上端側で接近し、下端側で離れるように配置され、基礎部B1の上面及び第2連結部32bの下面にそれぞれ剛接合される。本実施形態においても、基礎部B1に剛接合されている箇所における下部接合部32a間の間隔は、上部構造物S1に剛接合されている上部接合部21a間の間隔と同じである。第2連結部32bは、第1連結部21bと同じ形状を有し、第1連結部21bの上方に配置されている。更に、本実施形態では、第2連結部32bの中心部には、孔が形成されている。
【0031】
反発部材36は、2個の皿ばね36a,36bと、引張部材35を固定する固定部材36sとを備える。各皿ばね36a,36bは、リング形状の1枚の略円板で構成される。そして、皿ばね36aの中心部が下方、皿ばね36bの中心部が上方に突出するように重ねて配置されている。下側の皿ばね36aは、下部部材32の第2連結部32bの上面に配置されている。上側の皿ばね36bの上面には、固定部材36sが配置されている。ここで、皿ばね36a,36bとしては、上部構造物S1の荷重、荷重変化及び相対変化の特性に応じた荷重-変位特性の皿ばねを用いる。
【0032】
引張部材35の下端部は、上部部材21の第1連結部21bの上面にピン接合される。引張部材35の上端部は、下部部材32の第2連結部32bの中心部の孔及び皿ばね36a,36bを貫通して、固定部材36sにピン接合される。なお、引張部材35の上端部をピン接合する部分は、固定部材36sに限られず、皿ばね36a,36bの何れであってもよい。これにより、引張部材35は、弾性的に変形する反発部材36を介して第2連結部32bに回動可能に連結される。なお、この場合、引張部材35は、皿ばね36a,36bが容易に取り付けることができるように、側面から容易に着脱可能な構成とすることが好ましい。
【0033】
(支持構造の動き)
次に、図8及び図9を用いて、上述したユニット30を用いた支持構造の動きについて説明する。ここでは、皿ばね36a,36bの動きを判り易くするために、図8及び図9においては、皿ばね36a,36bを断面にして表示している。
【0034】
図8に示す矢印方向に、上部構造物S1に力が作用した場合、上記第1実施形態と同様に、上部構造物S1の動きに従って、ユニット20の上部部材21が動く。このため、この上部部材21の第1連結部21bの動きに応じて、第1連結部21bと第2連結部32bとの間隔が長くなるので、引張部材35が回転しながら引張部材35の引張力が増加する。従って、反発部材36の皿ばね36a,36bが圧縮される。
【0035】
次に、図9に示す矢印方向に、上部構造物S1に力が作用した場合、上部構造物S1の動きに従ってユニット20の上部部材21が動き、第1連結部21bと第2連結部32bとの間隔が短くなる。これにより、引張部材35が回転しながら引張部材35の引張力が減少し、反発部材36の皿ばね36a,36bは、元に戻るように伸長される。
【0036】
従って、上部構造物S1が相対変位すると、下部部材32の第2連結部32bに支持されながら引張部材35が揺動するとともに、皿ばね36a,36bが伸縮して下部部材32を押圧することにより、相対変位を効率的に吸収することができる。
【0037】
本実施形態によれば、上記(1-1)~(1-2)の効果に加えて、以下の効果を得ることができる。
(2-1)本実施形態では、下部部材32の第2連結部32bの上に、皿ばね36a,36bを備える反発部材36を配置し、この反発部材36に引張部材35の上端部を固定した。これにより、引張部材35の回動に応じて、反発部材36の皿ばね36a,36bが伸縮するので、上部構造物S1に生じた力を、鉛直方向を含めて吸収して、迅速に低減することができる。
【0038】
(第3実施形態)
次に、図10及び図11を用いて、支持構造を具体化した第3実施形態を説明する。上記各実施形態においては、複数のユニット20,30を、それぞれ独立して、面状に配置した。これに対して、本実施形態においては、引張部材が連結する複数の上部部材を一体化し、複数の下部部材を一体化した構成の支持構造物として説明する。
【0039】
図10は平面図、図11は、図10において「11」-「11」線断面方向から見た正面図である。
図10に示すように、上部構造物S2は、板部材であって、中央に略円形状の孔S2hが形成されている。更に、基礎部B2は、孔S2hの中心軸A1上に配置された円筒部材である。そして、上部構造物S2と基礎部B2との間に、支持構造40が配置される。
【0040】
図11に示すように、支持構造物としての支持構造40は、1個の上部部材41、1個の下部部材42及び3個の引張部材45を備える。
上部部材41は、上部接合部41aと第1連結部41bとを備える。上部接合部41aは、上部構造物S2の孔S2hの外周縁を囲むように下方に突出している。第1連結部41bは、上部接合部41aから孔S2hの径内方向(側方)に延在する。更に、第1連結部41bの中心には、孔41bhが形成されている。
【0041】
下部部材42は、段付きの円筒形状であって、基礎部B2に一体化された小径の下部接合部42aと、下部接合部42aから径外方向(側方)に延在する第2連結部42bとを有する。
【0042】
そして、図10に示すように、3個の引張部材45は、例えば、120度ずつ同じ間隔で面状に配置されている。各引張部材45は、上部部材41の第1連結部41bの上面と、下部部材42の第2連結部42bの下面とに、ピン接合されている。
【0043】
本実施形態においても、上部構造物S2が相対変位した場合には、上部構造物S2に剛接合されている上部部材41が動き、この上部部材41の動きに応じて引張部材45が揺動する。これにより、安定して相対変位を吸収する損傷が抑制される。
【0044】
本実施形態によれば、以下の効果を得ることができる。
(3-1)本実施形態では、1個の上部部材21と1個の下部部材22との間に、3個の引張部材45を面状に配置した。これにより、上部構造物S2が相対変位した場合には、引張部材45を安定して揺動させることができるので、相対変位を吸収して、上部構造物等の損傷を抑制することができる。
【0045】
本実施形態は、以下のように変更して実施することができる。本実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
・上記第1及び第2実施形態では、上部部材21は、上部構造物S1に剛接合した2個の上部接合部21aを備え、下部部材22,32は、基礎部B1に剛接合した2個の下部接合部22a,32aを備える。上部接合部及び下部接合部の数は、2個に限定されない。例えば、上部接合部及び下部接合部をそれぞれ1個ずつ備えた支持構造でもよい。
【0046】
また、図12及び図13に示すように、上部接合部51a及び下部接合部52aを3個ずつ備えた支持構造50であってもよいし、図14及び図15に示すように、上部接合部61a及び下部接合部62aを4個ずつ備えた支持構造60であってもよい。これらの場合、上部部材51,61の上部接合部51a,61a同士及び下部部材52,62の下部接合部52a,62a同士を同じ間隔で配置し、上部接合部51a,61aと下部接合部52a,62aを交互に配置する。そして、上部接合部51a,61aは、第1連結部51b,61bの上面に剛接合され、下部接合部52a,62aは、第2連結部52b,62bの下面に剛接合される。そして、引張部材55,65は、第1連結部51b,61b及び第2連結部52b,62bにピン接合される。
【0047】
更に、上部部材の上部接合部の数と、下部部材の下部接合部の数は同じでなくてもよい。この場合、上部部材の複数の上部接合部と下部部材の下部接合部とが、相互に干渉しないように配置できればよい。具体的には、上部部材の複数の上部接合部が等間隔で配置され、かつ下部部材の下部接合部が、等間隔で配置され、上部接合部及び下部接合部の一方の個数を、他方の個数の倍としてもよい。例えば、2個の上部接合部を備える上部部材と、4個の下部接合部を備える下部部材とを備えるユニットとしてもよい。
更に、上記実施形態では、基礎部B1に剛接合されている箇所における下部接合部22a,32a,52a,62a間の間隔と、上部構造物S1に剛接合されている上部接合部21a,51a,61a間の間隔とを同じにした。これらの間隔は異なっていてもよい。
【0048】
・上記各実施形態では、引張部材25,35,45を揺動させることにより、上部構造物S1の損傷を抑制する。
これに加えて、図16図20に示すように、減衰機構としての水平方向用ダンパや鉛直方向用ダンパを更に設けてもよい。
【0049】
例えば、図16に示すように、第1連結部21bの水平方向に当接可能な水平方向用ダンパ71を設けたユニット70としてもよい。
また、図17に示すように、第1連結部21bの下方に当接可能な鉛直方向用ダンパ73を設けたユニット72としてもよい。
【0050】
更に、図18に示すように、引張部材35の周囲を覆う鉛直方向用ダンパ75を設けたユニット74としてもよい。
また、図16図19の何れかを組み合わせた構成としてもよい。例えば、図19に示すように、水平方向用ダンパ71及び鉛直方向用ダンパ73を設けたユニット77としてもよい。
【0051】
更に、各ユニットに対して、水平方向用ダンパ71及び鉛直方向用ダンパ73を設ける場合に限られず、面状に配置された複数のユニットから構成される支持構造に対して、水平方向用ダンパや鉛直方向用ダンパを設けてもよい。
【0052】
例えば、図20に示す支持構造80は、上部構造物S3と基礎部B3の間に、複数のユニット30を面状に配置する。この支持構造80では、領域80Aにおいて格子状にユニット30を配置する。そして、領域80Aの外周において、複数の水平方向用ダンパ81及び複数の鉛直方向用ダンパ83を設ける。ここで、水平方向用ダンパ81を、ユニット30の並び方向となる位置に設け、鉛直方向用ダンパ83を水平方向用ダンパ81の近傍に設ける。この場合には、ユニット30毎ではなく、支持構造80全体に対して、効率的に水平方向用ダンパ及び鉛直方向用ダンパを設けることができる。
【0053】
・上記第2実施形態では、反発部材36は、2個の皿ばね36a,36bで構成した。反発部材36は、1枚の皿ばねで構成してもよいし、3個以上の皿ばねで構成してもよい。更に、上記第2実施形態では、反発部材36を構成する各皿ばね36a,36bは、リング形状の1枚の略円板で構成した。反発部材を構成する皿ばねは、1枚の略円板で形成する場合に限られず、複数枚の略円板形状の部材を重ねて構成してもよい。
・上記第2実施形態では、第2連結部32bの上方で、引張部材35の上端部に反発部材36を設けた。これに代えて、引張部材の上端部を昇降させる昇降部材を配置してもよい。
【0054】
例えば、図21に示すように、支持構造を構成する面状に複数配置されたユニット85は、下部部材32の第2連結部32bの上面に昇降部材86を載置する。この昇降部材86は、油圧シリンダ等を備えたジャッキ87であって、ラム87rが上方に伸長する。
【0055】
図21の左側の図では、ラム87rがシリンダ内に位置する状態を示し、図21の右側の図では、ラム87rがシリンダから上方に伸長した状態を示す。ラム87rの先端は、引張部材35の上端部に固定された板形状の固定部材86sに固定される。そして、図21の左側の状態から、ラム87rを上方に伸長させる。これにより、図21の右側に示すように、固定部材86sが上昇し、引張部材35を介して、第1連結部21bを含む上部部材21が上方に移動する。これにより、上部構造物S1全体を上方に引き上げることができる。例えば、地盤沈下等により、基礎部B1が下がった場合に、上部構造物S1の高さを調整することができる。また、支持構造を構成する複数のユニット30の引張部材35の誤差を吸収して、上部構造物S1の下面の高さを面一に調整することができる。
【0056】
・上記第3実施形態では、1個の上部部材41及び1個の下部部材42との間に3個の引張部材45を設けた。1個の上部部材41及び1個の下部部材42に設けられる引張部材の数は、直線上でない面状に配置できればよく、3個以上、配置すればよい。また、3個以上の引張部材が回動可能に取り付けられる上部部材及び下部部材は、上述した円形状に限定されない。更に、上記第3実施形態において、上部部材41及び下部部材42を連結する引張部材を2つ有するユニットを、引張部材が面状に配置される(直線上に並ばない)ように、1個以上、備えた支持構造としてもよい。
【符号の説明】
【0057】
A1…中心軸、B1,B2,B3,BU1…基礎部、S1,S2,S3,SU1…上部構造物、U1,21,41,51,61…上部部材、U2,22,32,42,52,62…下部部材、U3,25,35,45,55,65…引張部材、S2h,41bh…孔、U1a,21a,41a,51a,61a…上部接合部、U1b,21b,41b,51b,61b…第1連結部、U2a,22a,32a,42a,52a,62a…下部接合部、U2b,22b,32b,42b,52b,62b…第2連結部、UA1,20,30,70,72,74,77,85…ユニット、10,40,50,60,80…支持構造、36…反発部材、36a,36b…皿ばね、36s…固定部材、71,81…水平方向用ダンパ、73,75,83…鉛直方向用ダンパ、80A…領域、86…昇降部材、86s…固定部材、87…ジャッキ、87r…ラム。
図1
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