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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022114325
(43)【公開日】2022-08-05
(54)【発明の名称】飛行体及び検査方法
(51)【国際特許分類】
   B64C 25/34 20060101AFI20220729BHJP
   B64C 27/08 20060101ALI20220729BHJP
   B64D 47/08 20060101ALI20220729BHJP
   B64D 47/00 20060101ALI20220729BHJP
【FI】
B64C25/34
B64C27/08
B64D47/08
B64D47/00
【審査請求】有
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021010582
(22)【出願日】2021-01-26
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2022-05-17
(71)【出願人】
【識別番号】000217686
【氏名又は名称】電源開発株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001634
【氏名又は名称】弁理士法人志賀国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 直登
(57)【要約】      (修正有)
【課題】高所へのアクセスを容易にできる飛行体及び検査方法を提供する。
【解決手段】本体10にプロペラ20を備えた飛行体100は、検査対象物Bへの接地面31を有する走行装置30と、少なくともプロペラ20を制御する制御装置と、を備えている。プロペラ20は、第1プロペラ21と、第2プロペラ22と、を有している。制御装置は、第1プロペラ21のスラスト力の向きと、第2プロペラ22のスラスト力の向きとが逆向きになるように制御する。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
本体にプロペラを備えた飛行体であって、
検査対象物への接地面を有する走行装置と、少なくとも前記プロペラを制御する制御装置と、を備え、
前記プロペラは、第1プロペラと、第2プロペラと、を有し、
前記制御装置は、前記第1プロペラのスラスト力の向きと、前記第2プロペラのスラスト力の向きとが逆向きになるように制御する
飛行体。
【請求項2】
前記制御装置は、前記プロペラのスラスト力の向きを反転させるように制御する
請求項1に記載の飛行体。
【請求項3】
前記制御装置は、前記第1プロペラのスラスト軸と、前記第2プロペラのスラスト軸とが平行になるように制御する
請求項1又は請求項2に記載の飛行体。
【請求項4】
前記検査対象物に対して係脱自在な把持アームを備える
請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の飛行体。
【請求項5】
アタッチメントを着脱自在なアタッチメント装着部を備える
請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の飛行体。
【請求項6】
前記第2プロペラの回転面は、前記第1プロペラの回転面よりも前記接地面に近い
請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の飛行体。
【請求項7】
前記制御装置は、前記第1プロペラのスラスト軸の前記本体に対する傾斜角度を変更するように制御する
請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の飛行体。
【請求項8】
カメラを備え、
前記制御装置は、前記カメラで撮像した画像に基づいて、前記プロペラ又は前記走行装置を制御する
請求項1から請求項7のいずれか1項に記載の飛行体。
【請求項9】
前記走行装置が前記検査対象物に接地していることを検出する検出装置を備え、
前記制御装置は、前記検出装置の検出結果に基づいて、前記プロペラを制御する
請求項1から請求項8のいずれか1項に記載の飛行体。
【請求項10】
前記本体に対して回動自在なスラスト軸を有する第3プロペラを備える
請求項1から請求項9のいずれか1項に記載の飛行体。
【請求項11】
前記接地面に沿うスラスト軸を有する第4プロペラと、
前記本体に対して回動自在に設けられる接地部材と、を備える、
請求項1から請求項10のいずれか1項に記載の飛行体。
【請求項12】
本体に、第1プロペラ及び第2プロペラを有するプロペラと、検査対象物の表面に接地可能な接地面を有する走行装置と、を備えた飛行体を飛行させる飛行工程と、
前記飛行体を検査対象物の表面に着陸させる着陸工程と、
前記走行装置を前記検査対象物の表面に接地させた状態で、前記飛行体を前記検査対象物における検査位置まで前記検査対象物の表面に沿って走行させる走行工程と、
前記検査位置にて、前記検査対象物を検査する検査工程と、を含む
検査方法。
【請求項13】
前記飛行工程において、前記飛行体を、前記第1プロペラのスラスト力の向きと前記第2プロペラのスラスト力の向きとを、同じ向きにして飛行させる
請求項12に記載の検査方法。
【請求項14】
前記着陸工程において、前記第1プロペラのスラスト力の向きと前記第2プロペラのスラスト力の向きとを、逆向きにする
請求項12又は請求項13に記載の検査方法。
【請求項15】
前記着陸工程において、前記第1プロペラのスラスト軸を、前記検査対象物の表面の水平面に対する傾斜に応じて、前記本体に対して傾斜させる
請求項12から請求項14のいずれか1項に記載の検査方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、飛行体及び検査方法に関する。
【背景技術】
【0002】
再生可能エネルギーの主力電源化に向けて風力発電機(風車発電機)の開発が促進されている。風力発電機の開発エリアは、陸上から洋上へとシフトしており、洋上での風力発電機の開発が加速されることが予想される。洋上での風力発電機は、過酷な自然環境のなかで運用されるので、アクセスが困難である。そこで、効率的に風力発電機を運用及び保守することが求められる。風力発電機の運用及び保守において、風力発電機を構成するブレードの検査が要求されている。
【0003】
特許文献1には、ブレードに設けられたレセプタの検査方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2017-151018号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来の検査方法では、検査対象となるレセプタが洋上における高所にあり、変化しやすい気象的な環境に晒されていることから、アクセスが困難であり、検査が困難となる場合がある。
【0006】
本発明は、高所へのアクセスを容易にできる飛行体及び検査方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、以下の態様を有する。
(1)本発明に係る一態様の飛行体は、本体にプロペラを備えた飛行体であって、検査対象物への接地面を有する走行装置と、少なくとも前記プロペラを制御する制御装置と、を備え、前記プロペラは、第1プロペラと、第2プロペラと、を有し、前記制御装置は、前記第1プロペラのスラスト力の向きと、前記第2プロペラのスラスト力の向きとが逆向きになるように制御する。
(2)上記(1)において、前記制御装置は、前記プロペラのスラスト力の向きを反転させるように制御してよい。
(3)上記(1)又は(2)において、前記制御装置は、前記第1プロペラのスラスト軸と、前記第2プロペラのスラスト軸とが平行になるように制御してよい。
(4)上記(1)から(3)のいずれかにおいて、前記検査対象物に対して係脱自在な把持アームを備えてよい。
(5)上記(1)から(4)のいずれかにおいて、アタッチメントを着脱自在なアタッチメント装着部を備えてよい。
(6)上記(1)から(5)のいずれかにおいて、前記第2プロペラの回転面は、前記第1プロペラの回転面よりも前記接地面に近くてよい。
(7)上記(1)から(6)のいずれかにおいて、前記制御装置は、前記第1プロペラのスラスト軸の前記本体に対する傾斜角度を変更するように制御してよい。
(8)上記(1)から(7)のいずれかにおいて、カメラを備え、前記制御装置は、前記カメラで撮像した画像に基づいて、前記プロペラ又は前記走行装置を制御してよい。
(9)上記(1)から(8)のいずれかにおいて、前記走行装置が前記検査対象物に接地していることを検出する検出装置を備え、前記制御装置は、前記検出装置の検出結果に基づいて、前記プロペラを制御してよい。
(10)上記(1)から(9)のいずれかにおいて、前記本体に対して回動自在なスラスト軸を有する第3プロペラを備えてよい。
(11)上記(1)から(10)のいずれかにおいて、前記接地面に沿うスラスト軸を有する第4プロペラと、前記本体に対して回動自在に設けられる接地部材と、を備えてよい。
(12)本発明に係る一態様の検査方法は、本体に、第1プロペラ及び第2プロペラを有するプロペラと、検査対象物の表面に接地可能な接地面を有する走行装置と、を備えた飛行体を飛行させる飛行工程と、前記飛行体を検査対象物の表面に着陸させる着陸工程と、前記走行装置を前記検査対象物の表面に接地させた状態で、前記飛行体を前記検査対象物における検査位置まで前記検査対象物の表面に沿って走行させる走行工程と、前記検査位置にて、前記ブレードを検査する検査工程と、を含む。
(13)上記(12)において、前記飛行工程において、前記飛行体を、前記第1プロペラのスラスト力の向きと前記第2プロペラのスラスト力の向きとを、同じ向きにして飛行させてよい。
(14)上記(12)又は(13)において、前記着陸工程において、前記第1プロペラのスラスト力の向きと前記第2プロペラのスラスト力の向きとを、逆向きにしてよい。
(15)上記(12)から(14)のいずれかにおいて、前記着陸工程において、前記第1プロペラのスラスト軸を、前記検査対象物の表面の水平面に対する傾斜に応じて、前記本体に対して傾斜させてよい。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、高所へのアクセスを容易にできる飛行体及び検査方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】第1実施形態に係る飛行体を示す平面図である。
図2】第1実施形態に係る飛行体を示す正面図である。
図3】飛行工程の飛行体の状態を示す正面図である。
図4】着陸工程の飛行体の状態を示す正面図である。
図5】走行工程の飛行体の状態を示す正面図である。
図6】第1実施形態に係る飛行体を用いた検査方法を平面視で示す説明図である。(A)は飛行工程における飛行体を示す図である。(B)は着陸工程における飛行体を示す図である。(C)は走行工程における飛行体を示す図である。(D)は検査工程における飛行体を示す図である。
図7】第2実施形態に係る飛行体の正面視を示す説明図である。(A)は飛行工程を示す説明図である。(B)は着陸工程を示す説明図である。
図8】第3実施形態に係る飛行体の正面視を示す説明図である。(A)は飛行工程を示す説明図である。(B)は着陸工程を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、実施形態に係る飛行体100及び検査方法を説明する。図1は、第1実施形態に係る飛行体100を示す平面図である。図2は、第1実施形態に係る飛行体100を示す正面図である。図3は、飛行工程(飛行中)の飛行体100の状態を示す正面図である。図4は、着陸工程(着陸中)の飛行体100の状態を示す正面図である。図5は、走行工程(走行中)の飛行体100の状態を示す正面図である。なお、以下、特に説明のない限り、重力方向を鉛直方向といい、重力方向に垂直な方向を水平方向という。なお、各図において、太い矢印は、飛行体100における各部に作用する力の方向を表し、その長さは力の大きさを概ね示している。また、細い矢印は、飛行体100における各部の移動方向を表している。なお、以下、特段の説明のない限り、方向(direction)とは、「直線の状態」、向き(orientation)とは、ある始点から一方へ向かう状態」の意味で用いる。
【0011】
[第1実施形態]
(飛行体)
図1及び図2に示すように、本実施形態の飛行体100は、本体10にプロペラ20を備えている。
本体10は、プロペラ20等による自重、反作用等を支持するための十分な剛性を有する。本体10は、例えば、格子状の構造である。本体10は、不図示の、電源(電池等)と、モータと、ギヤ等の動力伝達機構とを有している。本体10は、検査対象物Bへの接地面31を有する走行装置30と、少なくともプロペラ20を制御する制御装置40と、を備えている。本体10は、検査対象物Bに対して係脱自在な把持アーム50を備えていてよい。本体10は、レセプタ導通検査用、研磨用、塗装用、打音検査用等のアタッチメントを着脱自在なアタッチメント装着部60を備えていてよい。本体10は、飛行体100の周囲の画像を撮像可能なカメラ70を備えていてよい。なお、本体10は、カメラ70で撮像された画像等のデータを飛行体100から送信可能な送信部を有する通信装置(不図示)を備えてよい。なお、飛行体100に備わる通信装置は、例えば、地表にいるユーザが所持するリモートコントローラのような、飛行体100の通信装置とは異なる通信装置から送信された制御信号を受信可能な受信部を有していてよい。
【0012】
プロペラ20は、電源から供給された電力により、モータ及び動力伝達機構を介してスラスト軸を中心に回転することで、回転方向に応じた向きのスラスト力を発生する。プロペラ20は、第1プロペラ21と、第2プロペラ22と、を有している。なお、飛行体100に備わる第1プロペラ21は、4つに限らず、飛行体100の飛行姿勢の安定性及び制御性を考慮して、3つ以上であればよい。
【0013】
第1プロペラ21は、少なくとも、飛行体100を重力に逆らって上昇させるための上向きのスラスト力を発揮できる仕様となっている。そして、第1プロペラ21により、飛行体100は、地表から、例えば、風車発電機(不図示)を構成するブレードのような検査対象物Bの表面BSまで、飛行する。
【0014】
第1プロペラ21は、スラスト力の方向と平行に延びる回転中心となるスラスト軸と、スラスト軸からスラスト軸に対して略垂直な方向に延びる複数の羽根を有している。第1プロペラ21は、電源から供給された電力により、動力伝達機構を介して回転する。第1プロペラ21の回転数又はスラスト力は、制御装置40により制御される。すなわち、第1プロペラ21は、スラスト力の向きを反転させることができる。
【0015】
また、第1プロペラ21は、本体10に対する第1プロペラ21のスラスト軸の傾斜角度を自在に変更できる傾斜機構(不図示)を有していてよい。そして、第1プロペラ21のスラスト軸の本体10(接地面31)に対する傾斜角度は、制御装置40により制御される。これにより、飛行中の飛行体100における第1プロペラ21のスラスト軸を鉛直方向に向けた状態で、第2プロペラ22のスラスト軸を鉛直方向に対して斜めにできる。また、水平面に対して傾斜した検査対象物Bの表面BSに沿って走行中の飛行体100における第2プロペラ22のスラスト軸を表面BSに対して垂直にした状態で、第1プロペラ21のスラスト軸を鉛直方向にできる。したがって、水平面に対して傾斜した検査対象物Bの表面BSに沿って走行中の飛行体100に、表面BSに吸着させる力を作用させながら、飛行体100が落下しないように重力を相殺する鉛直上向きのスラスト力を作用させることができる。また、鉛直上向きのスラスト力を作用させ、落下するおそれがある際、又は落下した際に、瞬時に飛行することができる。よって、水平面に対して傾斜した検査対象物Bの表面BSであっても、飛行体100を安定して走行させることができ、落下に対する安全を保つことができる。
なお、本体10を、第1プロペラ21が設けられた第1本体部11と、第2プロペラ22が設けられた第2本体部12とに分け、第1本体部11と第2本体部12とが成す角度を可変させることで、第1プロペラ21のスラスト軸の第2本体部12に対する傾斜角度を自在に変更できるようにしてもよい。そして、第1本体部11と第2本体部12とが成す角度、すなわち、第1プロペラ21のスラスト軸の第2本体部12に対する傾斜角度は、制御装置40により制御されてもよい。
【0016】
制御装置40は、第1プロペラ21のスラスト軸の傾斜角度を、0度以上90度以下の範囲で変更するように制御できる。なお、ここで、第1プロペラ21のスラスト軸の傾斜角度は、本体10の接地面31(複数の接地面31がある場合、それらが共有する仮想平面)の法線に対する傾斜角度と定義する。すなわち、第1プロペラ21のスラスト軸の傾斜角度がゼロである場合、第1プロペラ21のスラスト軸は、本体10の接地面31の法線と平行であり、第1プロペラ21のスラスト軸の傾斜角度が90度である場合、第1プロペラ21のスラスト軸は、本体10の接地面31と平行である。これにより、飛行中における飛行体100の本体10を、第1プロペラ21のスラスト方向(スラスト軸、鉛直方向)に対して傾けることができる。したがって、検査対象物Bの表面BSが水平面に対して傾斜していたとしても、飛行中の飛行体100の本体10に設けられた走行装置30の接地面31を、検査対象物Bの表面BSに対して略平行にできる。よって、飛行体100を検査対象物Bの表面BSに円滑に着陸させることができる。
【0017】
第2プロペラ22は、スラスト力の方向と平行に延びる回転中心となるスラスト軸と、スラスト軸からスラスト軸に対して略垂直な方向に延びる複数の羽根を有している。第2プロペラ22は、電源から供給された電力により、動力伝達機構を介して回転する。第2プロペラ22の回転数又はスラスト力は、制御装置40により制御される。すなわち、第2プロペラ22は、スラスト力の向きを反転させることができる。第2プロペラ22のスラスト力の向きは、走行装置30の接地面31に垂直になっている。これにより、検査対象物Bの表面BSへの第2プロペラ22による吸着力及び走行装置30による摩擦力を効率的に高めることができる。よって、飛行体100を検査対象物Bの表面BSに円滑に着陸でき、表面BSの上を安定して走行させることができる。
【0018】
第2プロペラ22は、少なくとも、飛行体100を検査対象物Bの表面BSに向けて近接させる向きのスラスト力を発揮できる仕様となっている。すなわち、第2プロペラ22によって空気を検査対象物Bの表面BSから離れる向きに送り出すことで、検査対象物Bの表面BSと第2プロペラ22のブレードとの間の空気を負圧にできる。このようにして、飛行体100を検査対象物Bの表面BSに吸着できるようになっている。そして、第2プロペラ22により、飛行体100は、飛行中の姿勢から、例えば、風車発電機(不図示)を構成するブレードのような検査対象物Bの表面BSに吸着する。
【0019】
第1プロペラ21のスラスト軸と、第2プロペラ22のスラスト軸とは、平行であることが好ましい。そして、制御装置40は、第1プロペラ21のスラスト軸と、第2プロペラ22のスラスト軸とが平行になるように制御してよい。また、制御装置40は、第1プロペラ21のスラスト軸と、第2プロペラ22のスラスト軸とが、平行である状態で、第1プロペラ21のスラスト力の向きと、第2プロペラ22のスラスト力の向きとを同じ向き又は反対向きとなるように制御してよい。これにより、第1プロペラ21のスラスト力の向きと、第2プロペラ22のスラスト力の向きとが、同じ向きであっても、互いに逆向きであっても、いずれかのスラスト力の向きが切り変わっても、飛行体100をスラスト力の向きから逸れる向きへ動かそうと作用する力の成分がないので、飛行体100の姿勢を安定させることができる。
【0020】
第2プロペラ22の回転面は、第1プロペラ21の回転面よりも走行装置30の接地面31に近いことが好ましい。すなわち、走行装置30の接地面31から第2プロペラ22のブレードまでの距離は、接地面31から第1プロペラ21のブレードまでの距離より短いことが好ましい。これにより、第2プロペラ22による吸着力(接地面31に向かうスラスト力)を高められるとともに、第1プロペラ21による接地面31から離れる向きの反力を抑制できる。
【0021】
走行装置30は、電源から供給された電力により駆動することにより、飛行体100を検査対象物Bの表面BSに沿って走行させる。走行装置30は、飛行体100を、前進又は後進させることができる。すなわち、走行装置30は、飛行体100を、検査対象物Bの表面BSに沿って前進又は後進させることができる。走行装置30は、不図示の車軸を中心に回転する円環状のタイヤを備えている。タイヤは、例えば、クロロプレンゴム等の比較的高い摩擦係数を有する材料で形成されている。タイヤは、検査対象物Bの表面BSに対して接地する接地面31を有している。なお、接地面31は、複数あるタイヤにおけるそれぞれの接地面31が接する共通する仮想平面のことをいう。走行装置30の接地面31と検査対象物Bの表面BSとの間には、飛行体100に作用する検査対象物Bの表面BSに向かうプロペラ20によるスラスト力(吸着力)に対応する垂直抗力が作用し、接地面31に沿う摩擦力を高めることができる。これにより、飛行体100を表面BSの上で安定して走行させることができる。なお、走行装置30は、適宜、制御装置40からの指令によって舵角を変えることができる操舵機構を備えていてよい。
走行装置30は、タイヤの車軸に取り付けられた、ばね、ダンパ等で構成されるサスペンションを介して本体10に支持される構造としてもよい。これにより、表面BSが湾曲していても、その湾曲に応じて各タイヤの軸を傾けることができるので、接地面31をその湾曲した表面BSに沿わせて接地させることができる。よって、飛行体100は、表面BSが湾曲したブレードの上であっても、安定して走行できる。
【0022】
走行装置30は、飛行体100の走行時における安定性を確保するため、検査対象物Bの表面BSに対して接地する接地面を有する3つ以上のタイヤを有することが好ましく、4つのタイヤを有することがより好ましい。タイヤが複数ある場合、全てのタイヤの回転軸は互いに平行であってよい。タイヤは、タイヤの回転軸に沿う方向に互いに離れて複数あってよい。タイヤの回転軸に沿う方向に互いに離れたタイヤの組がある場合、一方のタイヤの最外端から他方のタイヤの最外端までの最大幅W30(図1参照)は、検査対象物Bの幅WBより小さいことが好ましい。このように、回転軸に沿う方向に離れたタイヤ同士の最大幅W30を設定することで、飛行体100を検査対象物Bの上で安定して走行させることができる。
【0023】
走行装置30は、検査対象物Bに接地していることを検出する検出装置(不図示)を備えてよい。これにより、例えば、走行装置30が検査対象物Bに接地していることを検出したタイミングで、飛行体100を飛行状態から着陸態勢に制御する等、検出装置による検出結果に基づいて、飛行体100を制御できる。よって、検出結果に基づいて、ユーザの視界の外にある高所等であっても、飛行体100を自律的に制御できる。
【0024】
制御装置40は、プロペラ20を制御する。制御装置40は、プロペラ20の回転数、スラスト力、傾斜角度等を制御する。制御装置40は、CPU、メモリ、を含んでいてよい。制御装置40は、PLD(Programmable Logic Device)等のカスタムLSI(Large Scale Integrated Circuit)を備えてもよい。PLDの例としては、PAL(Programmable Array Logic)、GAL(Generic Array Logic)、CPLD(Complex Programmable Logic Device)、FPGA(Field Programmable Gate Array)が挙げられる。制御装置40は、例えば、Arduinoであってよい。制御装置40は、複数のプロペラ20をそれぞれ独立して制御することで、飛行体100の飛行中の姿勢を制御する。
【0025】
ここで、制御装置40は、第1プロペラ21のスラスト力の向きと、第2プロペラ22のスラスト力の向きとが逆向きになるように制御する。具体的には、制御装置40は、例えば、第1プロペラ21のスラスト力の向きを上向きにし、第2プロペラ22のスラスト力の向きを下向きに制御する。これにより、例えば、第1プロペラ21によって上向きのスラスト力を飛行体100に作用させつつ、第2プロペラ22によって下向きのスラスト力を作用させることができる。そして、第1プロペラ21のスラスト力と第2プロペラ22のスラスト力との合力の、向き又は大きさの調整によって、飛行体100を、検査対象物Bに接近させたり、検査対象物Bから離したりすることができる。よって、飛行体100を高所の検査対象物Bの表面に対して円滑に離着陸できる。したがって、高所へのアクセスを容易にできる飛行体100を提供できる。
【0026】
制御装置40は、プロペラ20のスラスト力の向きを反転させるように制御してよい。具体的には、制御装置40は、例えば、飛行中において、飛行体100の第2プロペラ22のスラスト力を上向きにして、同様にスラスト力が上向きとなっている第1プロペラ21と共に飛行体100の揚力を分担し、その状態で検査対象物Bに近接させてから、第2プロペラ22のスラスト力の向きを反転させて下向きにする制御をする。このように、制御装置40は、プロペラ20のスラスト力の向きを反転させるように制御する。そして、第1プロペラ21のスラスト力と第2プロペラ22のスラスト力との合力の、向き又は大きさの調整によって、飛行体100を、検査対象物Bに接近させたり、検査対象物Bから離したりすることができる。よって、飛行体100を高所の検査対象物Bの表面に対して円滑に離着陸できる。また、プロペラ20の個数、ブレードの構造、規格出力(スラスト力)等の仕様及び性能を抑えることができ、飛行体100をコンパクトにできる。
【0027】
制御装置40は、第1プロペラ21のスラスト軸の本体10に対する傾斜角度を変更するように制御してよい。これにより、飛行中における飛行体100の本体10の姿勢を、検査対象物Bの姿勢(例えば、飛行体100が着陸を予定している検査対象物Bの表面の水平面に対する傾斜角度)に応じて変更できる。よって、飛行体100を検査対象物Bに円滑に離着陸しやすくできる。
【0028】
制御装置40は、カメラ70で撮像した画像に基づいて、プロペラ20又は走行装置30を制御してよい。これにより、飛行体100を、ユーザによる操作なしで、自律的に飛行又は走行させることができる。
制御装置40は、飛行体100と検査対象物Bとの接近の度合いを検出できる仕様の不図示の近接センサからの情報に基づいて、飛行体100を自律的に飛行又は走行させてもよい。また、制御装置40は、飛行体100と検査対象物Bとの相対的な位置関係を検出できる仕様の位置センサからの情報に基づいて、飛行体100を自律的に飛行又は走行させてもよい。また、制御装置40は、飛行体100に搭載されたGPS発信機からの飛行体100の絶対的な位置情報に基づいて、飛行体100を自律的に飛行又は走行させてもよい。
【0029】
制御装置40は、走行装置30が有する、検査対象物Bに接地していることを検出する検出装置(不図示)の検出結果に基づいて、プロペラ20を制御してよい。これにより、検出装置が、例えば、走行装置30が検査対象物Bに接地していることを検出したタイミングで、飛行体100を飛行状態から着陸態勢に制御したり、すなわち、第2プロペラ22のスラスト力の向きを上向きから下向きに切り替えたり、走行装置30が検査対象物Bに接地している状態から接地していない状態に変わったことを検出したタイミングで、飛行体100を飛行状態に切り替えたりする等、検出装置による検出結果に基づいて、プロペラ20を制御でき、飛行体100の姿勢を制御できる。よって、検出結果に基づいて、ユーザの視界の外にある高所等であっても、飛行体100を自律的に制御して検査対象物Bに着陸しやすくでき、走行中の飛行体100が検査対象物Bから落下しても自律的に飛行させて墜落を抑制することができる。
【0030】
把持アーム50は、本体10に設けられている。把持アーム50は、検査対象物Bに対して係脱自在な構造となっている。具体的には、把持アーム50は、例えば、飛行体100(本体10)の進行方向、(すなわち、走行装置30の接地面31と平行な方向であって走行装置30におけるタイヤの回転軸と垂直な方向)における一方の端部に設けられている。把持アーム50は、例えば、走行装置30の接地面31と平行な方向であって進行方向に垂直な方向の両側部に設けられた、第1アーム50A及び第2アーム50Bを有している。第1アーム50A及び第2アーム50Bは、それぞれ、例えば、一端を本体10に対して回動自在に連結された基端部51と、基端部51の他端の回動部52に回動自在に連結され他端を自由端にした先端部53と、を備えている。
【0031】
把持アーム50は、第1アーム50A及び第2アーム50Bのそれぞれの回動部52の間隔Woutと、第1アーム50A及び第2アーム50Bのそれぞれの先端部53の自由端の間隔Winとを、検査対象物B(ブレード)の幅WBより大きくなるように、開いた状態になるように可動できる。そして、図1に示すように、把持アーム50は、第1アーム50A及び第2アーム50Bのそれぞれの回動部52の間隔Woutを、検査対象物B(ブレード)の幅WBより大きくなるようにし、第1アーム50A及び第2アーム50Bのそれぞれの先端部53の自由端の間隔Winを、検査対象物B(ブレード)の幅WBより小さくなるようにして、検査対象物Bを抱えて係止した状態になるように可動できる。このように、把持アーム50は、検査対象物B(ブレード)に対して係脱自在な構造となっている。よって、ブレードの先端部のような検査対象物B(ブレード)の幅WBが小さい場所に検査位置BB(レセプタ)があっても、特に、検査等の際に飛行体100を検査対象物Bに係止させることができる。
【0032】
アタッチメント装着部60は、本体10に設けられている。アタッチメント装着部60は、レセプタ導通検査用、研磨用、塗装用、打音検査用等のアタッチメントを着脱自在な構造となっている。これにより、飛行体100を運用する目的又は用途に応じて、機能を追加したり変更したりできる。例えば、検査対象物Bとなる、風車発電機のブレードに設けられたレセプタの導通検査を行う際には、レセプタに直接電流を流す導通検査用の端子、計器等を含むレセプタ導通検査用のアタッチメントを、本体10に対してアタッチメント装着部60を介して取り付けることができる。そして、その後、ブレードの表面を研磨する際には、レセプタ導通検査用のアタッチメントをアタッチメント装着部60から取り外して、代わりに、ブラシ等の研磨用のアタッチメントをアタッチメント装着部60に取り付けることができる。このように、人がロープワークによって、直接、検査対象物Bまでアクセスして検査等する方法に代えることができる。
【0033】
カメラ70は、本体10に設けられている。カメラ70は、飛行体100の周囲を撮像できる。カメラ70で撮像した画像データは、飛行体100の制御装置40に含まれるメモリに保存される。また、カメラ70で撮像した画像は、飛行体100に設けられた通信装置(不図示)を介してリアルタイムでユーザが所持する受信装置に送信されてよい。これにより、ユーザは、受信した画像に基づいて飛行体100を操作することで、飛行体100を飛行させ、着陸させ、走行させ、検査させることができる。よって、ユーザは、高所にある検査対象物Bの検査位置BBを遠隔で簡単に検査できる。
【0034】
また、飛行体100は、カメラ70で撮像した画像に基づいて、制御装置40によって、プロペラ20、走行装置30、把持アーム50又はアタッチメント装着部60に装着されたアタッチメントの動作を制御してよい。これにより、ユーザが操作しなくても、飛行体100によって自律的に検査対象物Bを検査できる。
【0035】
(検査方法)
次に、本実施形態の検査方法の手順を、主に図6を用いて時系列的に説明する。ここでは、検査対象物Bが風車発電機のブレードである例を示す。なお、検査対象物Bは、風車発電機のブレードに限らず、例えば、高層ビル、ダム、橋梁等の構造物であってもよい。その構造物の壁面を検査対象物Bの表面BSとしてよい。また、ここでは、ユーザが飛行体100を操作する場合を例に示す。なお、ユーザによる操作に換えて、飛行体100がカメラ70で撮像した画像に基づいて自律的に動作して検査対象物Bの検査をしてもよい。図6は飛行体100を用いた検査方法を平面視で示す説明図である。図6(A)は飛行工程における飛行体100を示す図である。図6(B)は着陸工程における飛行体100を示す図である。図6(C)は走行工程における飛行体100を示す図である。図6(D)は検査工程における飛行体100を示す図である。
【0036】
図6に示すように、本実施形態の検査方法は、飛行体100を用いて実施できる。本実施形態の検査方法は、本体10に、第1プロペラ21及び第2プロペラ22を有するプロペラ20と、検査対象物Bの表面BSに接地可能な接地面31を有する走行装置30と、を備えた飛行体100(図1及び図2等参照)を飛行させる飛行工程と、飛行体100を検査対象物Bの表面BSに着陸させる着陸工程と、走行装置30を検査対象物Bの表面BSに接地させた状態で、飛行体100を検査対象物Bにおける検査位置BBまで検査対象物Bの表面BSに沿って走行させる走行工程と、検査位置BBにて、検査対象物Bを検査する検査工程と、を含んでいる。これにより、検査対象物Bの検査位置BBが高所であっても、アクセス及び保守作業を容易にできる。よって、高所へのアクセス及び高所での保守作業を容易にできる検査方法を提供できる。
【0037】
以下、第1実施形態の検査方法をさらに詳細に説明する。なお、ここでは、検査対象物Bとなる風車発電機のブレードは、高所にあり、表面BSが略水平になっている状態を想定する。なお、第1実施形態の検査方法は、表面BSが水平面に対して傾斜していても適用できる。
【0038】
(1)図6(A)に示すように、まず、ユーザが遠隔で制御信号を飛行体100に送り、プロペラ20を回転させ、飛行体100を飛行させ、地表からブレードの近傍まで上昇させる。
詳細には、図3に示すように、本体10に、第1プロペラ21と、第2プロペラ22と、検査対象物Bの表面BSに接地可能な接地面31を有する走行装置30と、を有するプロペラ20を備えた飛行体100を飛行させる(飛行工程)。この際、第1プロペラ21のスラスト力の向き及び第2プロペラ22のスラスト力の向きは、いずれも、図3に示すように、上向きであってよい。すなわち、飛行工程において、飛行体100を、第1プロペラ21のスラスト力の向きと第2プロペラ22のスラスト力の向きとを、同じ向きにして飛行させる。
【0039】
ユーザは、所持するコントローラに付随する通信装置の送信部から、飛行体100の制御装置40の受信部に向けて飛行体100を飛行させるための制御信号を送信する。そして、ブレードの近辺まで飛行体100を上昇させる。なお、この際、ユーザが飛行体100に備えられたカメラ70で撮像された画像を見ながら飛行体100を操作することで、飛行体100をブレードの近傍まで到達させてよい。また、この際、飛行体100がカメラ70で撮像された画像に基づいて計算された飛行経路に基づいてプロペラ20を制御することで、飛行体100をブレードの近傍まで自律的に到達させてもよい。
【0040】
(2)次に、図6(B)に示すように、ブレードの表面BSに着陸させる(着陸工程)。
詳細には、図4に示すように、飛行体100の第2プロペラ22のスラスト力の向きを、上向きから下向きに反転させる。すなわち、着陸工程において、第1プロペラ21のスラスト力の向きと第2プロペラ22のスラスト力の向きとを、逆向きにする。なお、この際、第1プロペラ21による上向きのスラスト力より、飛行体100の自重による下向きの力と第2プロペラ22による下向きのスラスト力との合計が大きくなればよい。したがって、例えば、第1プロペラ21の上向きのスラスト力を弱めてもよい。すると、飛行体100は、表面BSに向けて移動する。そして、走行装置30の接地面31が表面BSに接する。
【0041】
なお、ブレードの表面BSが水平面に対して傾斜している場合、着陸工程において、第1プロペラ21のスラスト軸を、ブレード(検査対象物B)の表面BSの水平面に対する傾斜に応じて、本体10に対して傾斜させてよい。なお、ここで、第1プロペラ21のスラスト軸を、本体10に対して傾斜させるということは、本体10の接地面31の法線と第1プロペラ21のスラスト軸とを、互いに平行にならないように所定角度ずらすことを意味している。これにより、飛行体100を、ブレード(検査対象物B)の表面BSに円滑に安定して着陸させることができる。
【0042】
ユーザは、所持するコントローラに付随する通信装置の送信部から、飛行体100の制御装置40の受信部に向けて飛行体100を着陸させるための制御信号を送信する。そして、ブレードの表面BSに飛行体100を着陸させる。なお、この際、ユーザが飛行体100に備えられたカメラ70で撮像された画像を見ながら飛行体100を操作することで、飛行体100をブレードの表面BSに着陸させてよい。また、この際、飛行体100がカメラ70で撮像された画像に基づいて計算された飛行経路に基づいてプロペラ20を制御することで、飛行体100をブレードの表面BSに自律的に着陸させてもよい。
【0043】
(3)次に、図6(B)の状態から、図6(C)の状態を経て、図6(D)の状態までに示すように、走行装置30をブレード(検査対象物B)の表面BSに接地させた状態で、飛行体100を検査対象物Bにおける検査位置BBまで検査対象物Bの表面BSに沿って走行させる(走行工程)。
詳細には、図5に示すように、例えば、第1プロペラ21を停止し、第2プロペラ22により下向きのスラスト力を発生させることで、飛行体100に吸着力を作用させる。なお、第1プロペラ21により下向きのスラスト力を発生させることで、第1プロペラ21及び第2プロペラ22の両方による吸着力を得てもよい。なお、この状態で、把持アーム50を駆動して、ブレードを抱えて係止した状態にしてもよい。そして、この状態で、飛行体100の走行装置30を駆動する。走行装置30を駆動すると、飛行体100は、着陸地点からブレードの表面BSに沿って移動する。この際、走行装置30と表面BSとの摩擦力を維持するため、プロペラ20によりブレードの表面BSに向けたスラスト力(吸着力)を維持しておく。なお、この際、第1プロペラ21及び第2プロペラ22の両方のスラスト力(吸着力)の合力をブレードの表面BSに向けていれば、第1プロペラ21及び第2プロペラ22の両方のスラスト力の向きは互いに反対向きであってもよいが、第1プロペラ21及び第2プロペラ22の両方のスラスト力の向きをブレードの表面BSに向けていてもよい。
【0044】
ユーザは、所持するコントローラに付随する通信装置の送信部から、飛行体100の制御装置40の受信部に向けて飛行体100を走行させるための制御信号を送信する。そして、ブレードの表面BSの上で飛行体100を走行させる。なお、この際、ユーザが飛行体100に備えられたカメラ70で撮像された画像を見ながら飛行体100を操作することで、飛行体100をブレードの表面BSの上で走行させてよい。また、この際、飛行体100がカメラ70で撮像された画像に基づいて走行装置30を制御することで、飛行体100をブレードの表面BSの上で自律的に走行させてもよい。
【0045】
(4)次に、図6(C)及び図6(D)に示すように、飛行体100をブレードの検査位置BBにて検査させる(検査工程)。具体的には、例えば、検査位置BBとなるブレードの中間部(図6(C)参照)又は先端部(図6(D)参照)に設けられたレセプタに対して、本体10に設けられたアタッチメント装着部60に装着された導通試験用のアタッチメントにより、導通試験を行う。なお、アタッチメント装着部60にブレードの表面BSに作用する研磨用又は塗装用等のアタッチメントを装着しておいて、ブレードにおける任意の位置の表面BSを研磨又は塗装等をしてもよい。
【0046】
ユーザは、所持するコントローラに付随する通信装置の送信部から、飛行体100の制御装置40の受信部に向けて飛行体100で検査させるための制御信号を送信する。そして、ブレードの表面BSの上で飛行体100に検査位置BBを検査させる。なお、この際、ユーザが飛行体100に備えられたカメラ70で撮像された画像を見ながら飛行体100のアタッチメントを操作することで、飛行体100にブレードの検査位置BBを検査させてよい。また、この際、飛行体100がカメラ70で撮像された画像に基づいてアタッチメントを制御することで、飛行体100に、自律的にブレードの検査位置BBを検査させてもよい。
【0047】
[第2実施形態]
次に、第2実施形態について、図7を用いて説明する。図7は、第2実施形態に係る飛行体100の正面視を示す説明図である。図7(A)は飛行工程を示す説明図である。図7(B)は着陸工程を示す説明図である。以下、第1実施形態と共通する部分の説明は、省略される場合がある。以下、第1実施形態における部分と同様の機能を有する第2実施形態における部分には、第1実施形態における部分に付された符号又は記号と同じ符号又は記号を付して説明する。
なお、第2実施形態において、検査対象物Bは、風車発電機のブレードである例を示す。なお、検査対象物Bは、風車発電機のブレードに限らず、例えば、高層ビル、ダム、橋梁等の構造物であってもよい。その構造物の壁面を検査対象物Bの表面BSとしてよい。
【0048】
図7に示すように、第2実施形態に係る飛行体100は、第1実施形態と比べて、第1プロペラ21及び第2プロペラ22に加えて、主に、第3プロペラ80を備える点で異なっている。
詳細には、第2実施形態に係る飛行体100は、本体10に対してヒンジ81を介して回動自在なスラスト軸を有する第3プロペラ80を備えている。これにより、図7(A)に示すように、飛行体100は、第1プロペラ21及び第2プロペラ22によって発生させた上向きのスラスト力で飛行する。そして、飛行体100は、検査対象物Bの表面BSに近づくと、第3プロペラ80による表面BSに向かうスラスト力で、検査対象物Bの表面BSに向けて移動する。第3プロペラ80は、表面BSに向けた吸着力を発生し、表面BSに近接した状態を維持する。なお、第3プロペラ80は、直接的に表面BSに触れることなく表面BSに近接した状態を維持できるように、第3プロペラ80のブレードを覆って物理的な接触からそのブレードを保護するブレード保護具(不図示)を備えていてもよい。そして、第3プロペラ80が表面BSに近接した状態、例えば、第3プロペラ80のブレード保護具が接した状態で、第1プロペラ21及び第2プロペラ22のスラスト力の向きを反転させる。すると、飛行体100は、ヒンジ81を基点として約90度時計回りに回転し、図7(B)に示すように、走行装置30の接地面31が表面BSに接地する。そして、第3プロペラ80による吸着力に、第1プロペラ21及び第2プロペラ22による吸着力を加えることができる。反対に、図7(B)に示すような、飛行体100が表面BSに吸着している状態から、図7(A)に示すような飛行状態に移行する際は、これとは逆の順序でプロペラ20(第1プロペラ21、第2プロペラ22及び第3プロペラ80)の制御をすればよい。このように、第2実施形態に係る飛行体100は、第3プロペラ80を備えるので、表面BSが鉛直方向に平行であっても、飛行中の飛行体100を安定して表面BSに着陸させ、表面BSから離陸させることができる。
【0049】
[第3実施形態]
次に、第3実施形態について、図8を用いて説明する。図8は、第3実施形態に係る飛行体100の正面視を示す説明図である。図8(A)は飛行工程を示す説明図である。図8(B)は着陸工程を示す説明図である。以下、第1実施形態又は第2実施形態と共通する部分の説明は、省略される場合がある。以下、第1実施形態における部分と同様の機能を有する第3実施形態における部分には、第1実施形態における部分に付された符号又は記号と同じ符号又は記号を付して説明する。
なお、第3実施形態において、検査対象物Bは、風車発電機のブレードである例を示す。なお、検査対象物Bは、風車発電機のブレードに限らず、例えば、高層ビル、ダム、橋梁等の構造物であってもよい。その構造物の壁面を検査対象物Bの表面BSとしてよい。
【0050】
図8に示すように、第3実施形態に係る飛行体100は、第1実施形態又は第2実施形態と比べて、第1プロペラ21、第2プロペラ22に加えて、主に、第4プロペラ84及び接地部材90を備える点で異なっている。
詳細には、第3実施形態に係る飛行体100は、接地面31に沿うスラスト軸を有する第4プロペラ84と、本体10に対して回動自在に設けられる接地部材90と、を備えている。ここでは、第4プロペラ84が、本体10を基準として接地部材90とは反対側に設けられている飛行体100の例を説明する。なお、第4プロペラ84は、接地部材90を表面BSに近づける向きのスラスト力を発生させることができれば、例えば、本体10の側部(図8における本体10の正面側及び背面側)のそれぞれに一つずつ設けられていてもよい。接地部材90は、ヒンジ91を介して、回動自在に本体10に設けられている。接地部材90における検査対象物Bの表面BSと接する面は、高い摩擦係数を有している。これにより、図8(A)に示すように、飛行体100は、第1プロペラ21及び第2プロペラ22によって発生させた上向きのスラスト力で飛行する。飛行体100は、検査対象物Bの表面BSに近づくと、第4プロペラ84による表面BSに向かうスラスト力で、検査対象物Bの表面BSに向けて移動する。すると、接地部材90が検査対象物Bの表面BSに接する。そして、第4プロペラ84による表面BSに向かうスラスト力を維持したまま、接地部材90が表面BSに接している状態で、第1プロペラ21及び第2プロペラ22のスラスト力の向きを反転させる。すると、飛行体100は、ヒンジ91を基点として約90度時計回りに回転し、図8(B)に示すように、走行装置30の接地面31が表面BSに接地する。そして、第1プロペラ21及び第2プロペラ22による吸着力を飛行体100に加えながら、第4プロペラ84によるスラスト力で、飛行体100を上下方向に移動させることができる。反対に、図8(B)に示すような、飛行体100が表面BSに吸着している状態から、図8(A)に示すような飛行状態に移行する際は、これとは逆の順序でプロペラ20(第1プロペラ21、第2プロペラ22及び第4プロペラ84)の制御をすればよい。このように、第2実施形態に係る飛行体100は、第4プロペラ84を備えるので、飛行中の飛行体100を安定して鉛直方向に平行な表面BSに着陸させ、表面BSから離陸させることができる。
【0051】
以上説明したように、本実施形態に係る飛行体100は、本体10にプロペラ20を備えている。飛行体100は、検査対象物Bへの接地面31を有する走行装置30と、少なくともプロペラ20を制御する制御装置40と、を備えている。飛行体100のプロペラ20は、第1プロペラ21と、第2プロペラ22と、を有している。飛行体100の制御装置40は、第1プロペラ21のスラスト力の向きと、第2プロペラ22のスラスト力の向きとが逆向きになるように制御する。これにより、飛行体100を飛行させながら、検査対象物Bへの吸着力を作用させることができ、検査対象物Bへの飛行体100の検査対象物Bへの離着陸を円滑にさせることができ、検査対象物Bの上での走行を安定させることができる。よって、高所へのアクセスを容易にできる飛行体を提供できる。
【0052】
本実施形態に係る検査方法は、本体10に、第1プロペラ21及び第2プロペラ22を有するプロペラ20と、検査対象物Bの表面BSに接地可能な接地面31を有する走行装置30と、を備えた飛行体100を飛行させる飛行工程と、飛行体100を検査対象物Bの表面BSに着陸させる着陸工程と、走行装置30を検査対象物Bの表面BSに接地させた状態で、飛行体100を検査対象物Bにおける検査位置BBまで検査対象物Bの表面BSに沿って走行させる走行工程と、検査位置BBにて、検査対象物Bを検査する検査工程と、を含んでいる、これにより、高所へのアクセスを容易にできる飛行体を提供できる。
【0053】
なお、本発明の技術的範囲は前記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。その他、本発明の趣旨に逸脱しない範囲で、前述の実施形態における構成要素を周知の構成要素に置き換えることは適宜可能であり、また、前記した実施形態又は変形例を適宜組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0054】
10 本体
11 第1本体部
12 第2本体部
20 プロペラ
21 第1プロペラ
22 第2プロペラ
30 走行装置
31 接地面
40 制御装置
50 把持アーム
50A 第1アーム
50B 第2アーム
51 基端部
52 回動部
53 先端部
60 アタッチメント装着部
70 カメラ
80 第3プロペラ
81 ヒンジ
84 第4プロペラ
90 接地部材
91 ヒンジ
100 飛行体
B 検査対象物
BB 検査位置
BS 表面
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
【手続補正書】
【提出日】2022-01-25
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
本体にプロペラを備えた飛行体であって、
前記本体に設けられ、検査対象物への接地面を有する走行装置と、少なくとも前記プロペラを制御する制御装置と、を備え、
前記プロペラは、第1プロペラと、第2プロペラと、を有し、
前記制御装置は、前記第1プロペラのスラスト力の向きと、前記第2プロペラのスラスト力の向きとが逆向きになるように制御し、前記第1プロペラのスラスト力と前記第2プロペラのスラスト力との合力を調整する
飛行体。
【請求項2】
前記制御装置は、前記プロペラのスラスト力の向きを反転させるように制御する
請求項1に記載の飛行体。
【請求項3】
前記制御装置は、前記第1プロペラのスラスト軸と、前記第2プロペラのスラスト軸とが平行になるように制御する
請求項1又は請求項2に記載の飛行体。
【請求項4】
前記検査対象物に対して係脱自在な把持アームを備える
請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の飛行体。
【請求項5】
アタッチメントを着脱自在なアタッチメント装着部を備える
請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の飛行体。
【請求項6】
前記第2プロペラの回転面は、前記第1プロペラの回転面よりも前記接地面に近い
請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の飛行体。
【請求項7】
前記制御装置は、前記第1プロペラのスラスト軸の前記本体に対する傾斜角度を変更するように制御し、前記本体の接地面が前記検査対象物の表面に対して略平行になるように、前記本体を鉛直方向に対して傾ける
請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の飛行体。
【請求項8】
カメラを備え、
前記制御装置は、前記カメラで撮像した画像に基づいて、前記プロペラ又は前記走行装置を制御する
請求項1から請求項7のいずれか1項に記載の飛行体。
【請求項9】
前記走行装置が前記検査対象物に接地していることを検出する検出装置を備え、
前記制御装置は、前記検出装置の検出結果に基づいて、前記プロペラを制御する
請求項1から請求項8のいずれか1項に記載の飛行体。
【請求項10】
前記本体に対して回動自在なスラスト軸を有する第3プロペラを備え、前記第3プロペラは、前記検査対象物の表面に近接した状態で、前記接地面が前記表面に接地するまで、前記本体に対して回動自在であ
請求項1から請求項9のいずれか1項に記載の飛行体。
【請求項11】
前記接地面に沿うスラスト軸を有する第4プロペラと、
前記本体に対して回動自在に設けられる接地部材と、を備え
前記第4プロペラは、前記本体を基準として前記接地部材とは反対側に設けられてい
請求項1から請求項10のいずれか1項に記載の飛行体。
【請求項12】
本体に、第1プロペラ及び第2プロペラを有するプロペラと、検査対象物の表面に接地可能な接地面を有する走行装置と、を備えた飛行体を飛行させる飛行工程と、
前記飛行体を検査対象物の表面に着陸させる着陸工程と、
前記走行装置を前記検査対象物の表面に接地させた状態で、前記飛行体を前記検査対象物における検査位置まで前記検査対象物の表面に沿って走行させる走行工程と、
前記検査位置にて、前記検査対象物を検査する検査工程と、を含み、
前記着陸工程において、前記第1プロペラのスラスト力と前記第2プロペラのスラスト力との合力を調整する
検査方法。
【請求項13】
前記飛行工程において、前記飛行体を、前記第1プロペラのスラスト力の向きと前記第2プロペラのスラスト力の向きとを、同じ向きにして飛行させる
請求項12に記載の検査方法。
【請求項14】
前記着陸工程において、前記第1プロペラのスラスト力の向きと前記第2プロペラのスラスト力の向きとを、逆向きにする
請求項12又は請求項13に記載の検査方法。
【請求項15】
前記着陸工程において、前記第1プロペラのスラスト軸を、前記検査対象物の表面の水平面に対する傾斜に応じて、前記本体に対して傾斜させる
請求項12から請求項14のいずれか1項に記載の検査方法。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0007
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0007】
本発明は、以下の態様を有する。
(1)本発明に係る一態様の飛行体は、本体にプロペラを備えた飛行体であって、前記本体に設けられ、検査対象物への接地面を有する走行装置と、少なくとも前記プロペラを制御する制御装置と、を備え、前記プロペラは、第1プロペラと、第2プロペラと、を有し、前記制御装置は、前記第1プロペラのスラスト力の向きと、前記第2プロペラのスラスト力の向きとが逆向きになるように制御し、前記第1プロペラのスラスト力と前記第2プロペラのスラスト力との合力を調整する。
(2)上記(1)において、前記制御装置は、前記プロペラのスラスト力の向きを反転させるように制御してよい。
(3)上記(1)又は(2)において、前記制御装置は、前記第1プロペラのスラスト軸と、前記第2プロペラのスラスト軸とが平行になるように制御してよい。
(4)上記(1)から(3)のいずれかにおいて、前記検査対象物に対して係脱自在な把持アームを備えてよい。
(5)上記(1)から(4)のいずれかにおいて、アタッチメントを着脱自在なアタッチメント装着部を備えてよい。
(6)上記(1)から(5)のいずれかにおいて、前記第2プロペラの回転面は、前記第1プロペラの回転面よりも前記接地面に近くてよい。
(7)上記(1)から(6)のいずれかにおいて、前記制御装置は、前記第1プロペラのスラスト軸の前記本体に対する傾斜角度を変更するように制御し、前記本体の接地面が前記検査対象物の表面に対して略平行になるように、前記本体を鉛直方向に対して傾けてよい。
(8)上記(1)から(7)のいずれかにおいて、カメラを備え、前記制御装置は、前記カメラで撮像した画像に基づいて、前記プロペラ又は前記走行装置を制御してよい。
(9)上記(1)から(8)のいずれかにおいて、前記走行装置が前記検査対象物に接地していることを検出する検出装置を備え、前記制御装置は、前記検出装置の検出結果に基づいて、前記プロペラを制御してよい。
(10)上記(1)から(9)のいずれかにおいて、前記本体に対して回動自在なスラスト軸を有する第3プロペラを備え、前記第3プロペラは、前記検査対象物の表面に近接した状態で、前記接地面が前記表面に接地するまで、前記本体に対して回動自在であってよい。
(11)上記(1)から(10)のいずれかにおいて、前記接地面に沿うスラスト軸を有する第4プロペラと、前記本体に対して回動自在に設けられる接地部材と、を備え、前記第4プロペラは、前記本体を基準として前記接地部材とは反対側に設けられていてよい。
(12)本発明に係る一態様の検査方法は、本体に、第1プロペラ及び第2プロペラを有するプロペラと、検査対象物の表面に接地可能な接地面を有する走行装置と、を備えた飛行体を飛行させる飛行工程と、前記飛行体を検査対象物の表面に着陸させる着陸工程と、前記走行装置を前記検査対象物の表面に接地させた状態で、前記飛行体を前記検査対象物における検査位置まで前記検査対象物の表面に沿って走行させる走行工程と、前記検査位置にて、前記検査対象物を検査する検査工程と、を含み、前記着陸工程において、前記第1プロペラのスラスト力と前記第2プロペラのスラスト力との合力を調整する
(13)上記(12)において、前記飛行工程において、前記飛行体を、前記第1プロペラのスラスト力の向きと前記第2プロペラのスラスト力の向きとを、同じ向きにして飛行させてよい。
(14)上記(12)又は(13)において、前記着陸工程において、前記第1プロペラのスラスト力の向きと前記第2プロペラのスラスト力の向きとを、逆向きにしてよい。
(15)上記(12)から(14)のいずれかにおいて、前記着陸工程において、前記第1プロペラのスラスト軸を、前記検査対象物の表面の水平面に対する傾斜に応じて、前記本体に対して傾斜させてよい。