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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022114339
(43)【公開日】2022-08-05
(54)【発明の名称】吸収性物品
(51)【国際特許分類】
   A61F 13/534 20060101AFI20220729BHJP
   A61F 13/535 20060101ALI20220729BHJP
   A61F 13/53 20060101ALI20220729BHJP
   A61F 13/494 20060101ALI20220729BHJP
【FI】
A61F13/534 100
A61F13/535 100
A61F13/535 200
A61F13/53 100
A61F13/53 200
A61F13/494 115
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021010602
(22)【出願日】2021-01-26
(71)【出願人】
【識別番号】000122298
【氏名又は名称】王子ホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】特許業務法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】余吾 奏枝
【テーマコード(参考)】
3B200
【Fターム(参考)】
3B200AA01
3B200BA01
3B200BA08
3B200BA09
3B200BB03
3B200BB17
3B200CA02
3B200CA09
3B200DA13
3B200DA16
3B200DB01
3B200DB05
3B200DB11
3B200DB12
3B200DB15
3B200DB22
3B200DB23
(57)【要約】
【課題】本発明は、吸収性物品がユーザに装着された場合に吸収性物品の肌当接面に向かって突き出る部位が湿ることを抑制する技術を提供することを目的とする。
【解決手段】本発明は、ユーザの股下に装着される吸収性物品であって、液透過性のトップシートと、液不透過性のバックシートと、トップシートとバックシートとの間に配置される主吸収体とを有し、少なくともユーザの尿道口から肛門までを覆うことが可能な吸収体本体と、吸収体本体においてユーザの仙骨に対向する部位に設けられており、副吸収体及び副吸収体を主吸収体側から覆う液不透過性の透水抑制シートを有する保護部材と、を備える。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ユーザの股下に装着される吸収性物品であって、
液透過性のトップシートと、液不透過性のバックシートと、前記トップシートと前記バックシートとの間に配置される主吸収体とを有し、少なくとも前記ユーザの尿道口から肛門までを覆うことが可能な吸収体本体と、
前記吸収体本体において前記ユーザの仙骨に対向する部位に設けられており、副吸収体及び前記副吸収体を前記主吸収体側から覆う液不透過性の透水抑制シートを有する保護部材と、を備える、
吸収性物品。
【請求項2】
前記バックシート、前記主吸収体、前記副吸収体、および前記トップシートの順に重ねて配置され、
前記ユーザに装着された場合の前記保護部材における前記ユーザの腹部側の一部の下面と、前記主吸収体との間に空間を有する、
請求項1に記載の吸収性物品。
【請求項3】
前記主吸収体は、スリットを有する、
請求項2に記載の吸収性物品。
【請求項4】
前記主吸収体は、凹部を有する、
請求項2に記載の吸収性物品。
【請求項5】
前記ユーザに装着された場合の前記ユーザの腹部側の前記保護部材の端部の厚みは、前記腹部方向へ向かうにつれて漸次薄くなる、
請求項2から4のうち何れか一項に記載の吸収性物品。
【請求項6】
前記端部の下面には、前記主吸収体の方向へ突出し、前記ユーザの背側から腹部側へ延在し、幅方向に並ぶ複数の突起が設けられる、
請求項5に記載の吸収性物品。
【請求項7】
前記透水抑制シートは、前記ユーザに装着された場合の前記ユーザの仙骨に対して対向する開口を有する、
請求項1から6のうち何れか一項に記載の吸収性物品。
【請求項8】
前記保護部材が重なる前記主吸収体の部分と、該部分よりも前記腹部側領域と、において、前記主吸収体の厚みは略同一である、
請求項1から7のうち何れか一項に記載の吸収性物品。
【請求項9】
前記トップシートは、前記ユーザに装着された場合の前記ユーザの腹部側の前記保護部材の端部と重なる位置に、前記肌と当接可能な当接部を有する、
請求項1から8のうち何れか一項に記載の吸収性物品。
【請求項10】
前記ユーザに装着された場合の前記ユーザの腹部側の前記副吸収体の端部は、前記ユーザの背側の前記副吸収体の端部よりも前記肌側に近い部分を有する、
請求項1から9のうち何れか一項に記載の吸収性物品。
【請求項11】
前記ユーザに装着された場合の前記ユーザの腹部側の前記副吸収体の端部は、前記ユーザの背側の前記副吸収体の端部よりも粒状の吸収材を多く含む、
請求項10に記載の吸収性物品。
【請求項12】
前記ユーザに装着された場合の前記ユーザの腹部側の前記保護部材の端部から見て幅方向に延在するギャザーを有する、
請求項1から11のうち何れか一項に記載の吸収性物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吸収性物品に関する。
【背景技術】
【0002】
使い捨ておむつ、尿パッド、生理用品等の吸収性物品が開発されている(例えば、特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2018-175885号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
吸収性物品を装着したユーザが長期間病床にある場合、吸収性物品の肌当接面に向かって突き出る部位(例えば仙骨の出っ張り部分等を覆う皮膚等であり、以降圧迫部位という)は、該肌当接面から圧迫され続ける。よって圧迫部位に褥瘡が生ずることが考えられる。また、圧迫部位に尿が付着すると、圧迫部位は湿る。よって、圧迫部位と肌当接面との間の摩擦が大きくなり、その結果として褥瘡が悪化することが考えられる。
【0005】
また、反作用として圧迫部位により肌当接面が非肌当接面側に加圧されることが想定される。よって、肌当接面と非肌当接面との間に吸収体が配置されていると、吸収体が加圧方向において収縮する。よって、吸収体に吸収された尿が該吸収体から流出する可能性がある。よって、流出した尿が肌当接面上を流れ、圧迫部位に付着する可能性がある。このようなことからも圧迫部位が湿り、褥瘡が悪化することが考えられる。
【0006】
そこで、本発明は、吸収性物品がユーザに装着された場合に吸収性物品の肌当接面に向かって突き出る部位が湿ることを抑制する技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、本発明では、圧迫部位と主吸収体との間に非透水性シートで包まれた副吸収体を設けることにした。
【0008】
詳細には、本開示の一側面に係る吸収性物品は、ユーザの股下に装着される吸収性物品であって、液透過性のトップシートと、液不透過性のバックシートと、前記トップシートと前記バックシートとの間に配置される主吸収体とを有し、少なくとも前記ユーザの尿道口から肛門までを覆うことが可能な吸収体本体と、前記吸収体本体において前記ユーザの仙骨に対向する部位に設けられており、副吸収体及び前記副吸収体を前記主吸収体側から覆う液不透過性の透水抑制シートを有する保護部材と、を備える。
【0009】
また、上記一側面に係る吸収性物品において、前記バックシート、前記主吸収体、前記副吸収体、および前記トップシートの順に重ねて配置され、前記ユーザに装着された場合の前記保護部材における前記ユーザの腹部側の一部の下面と、前記主吸収体との間に空間を有してもよい。
【0010】
また、上記一側面に係る吸収性物品において、前記主吸収体は、スリットを有してもよい。
【0011】
また、上記一側面に係る吸収性物品において、前記主吸収体は、凹部を有してもよい。
【0012】
また、上記一側面に係る吸収性物品において、前記ユーザに装着された場合の前記ユーザの腹部側の前記保護部材の端部の厚みは、前記腹部方向へ向かうにつれて漸次薄くなってもよい。
【0013】
また、上記一側面に係る吸収性物品において、前記端部の下面には、前記主吸収体の方向へ突出し、前記ユーザの背側から腹部側へ延在し、幅方向に並ぶ複数の突起が設けられてもよい。
【0014】
また、上記一側面に係る吸収性物品において、前記透水抑制シートは、前記ユーザに装着された場合の前記ユーザの仙骨に対して対向する開口を有してもよい。
【0015】
また、上記一側面に係る吸収性物品において、前記保護部材が重なる前記主吸収体の部分と、該部分よりも前記腹部側領域と、において、前記主吸収体の厚みは略同一であってもよい。
【0016】
また、上記一側面に係る吸収性物品において、前記トップシートは、前記ユーザに装着された場合の前記ユーザの腹部側の前記保護部材の端部と重なる位置に、前記肌と当接可能な当接部を有してもよい。
【0017】
また、上記一側面に係る吸収性物品において、前記ユーザに装着された場合の前記ユーザの腹部側の前記副吸収体の端部は、前記ユーザの背側の前記副吸収体の端部よりも前記肌側に近い部分を有してもよい。
【0018】
また、上記一側面に係る吸収性物品において、前記ユーザに装着された場合の前記ユーザの腹部側の前記副吸収体の端部は、前記ユーザの背側の前記副吸収体の端部よりも粒状の吸収材を多く含んでもよい。
【0019】
また、上記一側面に係る吸収性物品において、前記ユーザに装着された場合の前記ユーザの腹部側の前記保護部材の端部から見て幅方向に延在するギャザーを有してもよい。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、吸収性物品がユーザに装着された場合に吸収性物品の肌当接面に向かって突き出る部位が湿ることを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1図1は、実施形態に係るおむつの斜視図である。
図2図2は、保護材の詳細図の一例である。
図3図3は、尿パッドを長手方向において切断した場合の断面図の一例である。
図4図4は、第2実施形態に係るおむつの断面図の一例を示している。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下に、図面を参照して本発明の実施形態に係る吸収性物品について説明する。なお、以下の実施形態の構成は例示であり、本発明はこれらの実施の形態の構成に限定されるものではない。
【0023】
<第1実施形態>
本実施形態では、テープ型使い捨ておむつについて、ユーザの腹部に対向して配置される前身頃と背部に対向して配置される後身頃とを結ぶ方向を長手方向とする。これらの前
身頃(長手方向の一側)と後身頃(長手方向の他側)との間(長手方向の中央)には、ユーザの股下に配置(股間に対向して配置)される股下部が位置する。また、紙おむつがユーザに装着された状態(以下「装着状態」と略称する)において、ユーザの肌に向かう側(装着された状態で内側)を肌面側とし、肌面側の反対側(装着された状態で外側)を非肌面側とする。さらに、肌面側と非肌面側とを結ぶ方向を厚み方向とし、長手方向と厚み方向の何れにも直交する方向を幅方向とする。そのほか、厚み方向から視ることを平面視とする。
【0024】
図1は、本実施形態に係るおむつの斜視図である。おむつ1は、装着状態においてユーザの陰部を覆う股下領域に対応する部位である股下領域1Bと、股下領域1Bの前側に位置し、ユーザの前身頃に対応する部位である前身頃領域1Fと、股下領域1Bの後ろ側に位置し、ユーザの後身頃に対応する部位である後身頃領域1Rとを有する。後身頃領域1Rの左右両側の縁には、前身頃領域1Fの非ユーザ側の面に設けられたフロントパッチ2Fへ貼着可能なテープ2L,2Rが設けられている。よって、おむつ1は、前身頃領域1Fがユーザの腹側に配置され、後身頃領域1Rがユーザの背側に配置された状態でテープ2L,2Rがフロントパッチ2Fに貼着されると、ユーザの腹囲と大腿部を取り巻く状態でユーザの身体に固定される。おむつ1がこのような形態でユーザの身体に固定されるので、ユーザはおむつ1を着用した状態で立ち歩き可能である。
【0025】
おむつ1には、液体を吸収して保持することができる吸収体が主に股下領域1B付近を中心に配置されている。また、おむつ1は、該吸収体とは別に吸収体(本開示の「吸収体本体」の一例)を内部に備える尿パッド10(本開示の「吸収性物品」の一例)を備える。尿パッド10は、おむつ1の本体に対して着脱可能であり、前身頃領域1Fから後身頃領域1Rにかけて配置される。このように尿パッド10が配置されることにより、ユーザの尿道口から肛門までが尿パッド10により覆われる。よって、ユーザが排泄した尿は尿パッド10に吸収される。また、ユーザが排泄した尿は主に尿パッド10に吸収されるため、ユーザは尿パッド10を一日のうちに数回交換し、おむつ1本体を数日に一度交換するといった使用方法を採用してもよい。
【0026】
また、おむつ1には、おむつ1とユーザの肌との間に液体の流出経路となる隙間が形成されるのを抑制するべく、ユーザの大腿部を取り巻く部位に立体ギャザー3BL,3BRが設けられ、ユーザの腹囲を取り巻く部位にウェストギャザー3Rが設けられている。立体ギャザー3BL,3BRとウェストギャザー3Rは、糸ゴムの弾性力でユーザの肌に密着する。よって、ユーザの陰部から排出される液体は、おむつ1から殆ど漏出することなくおむつ1の吸収体(おむつ1の本体の吸収体および尿パッド10)に吸収される。
【0027】
図2は、尿パッド10の内部に設けられた保護材11(本開示の「保護部材」の一例)の詳細図の一例である。図2(A)は保護材の正面図の一例である。図2(B)は、保護材11の側面図の一例である。図2(C)は保護材11の背面図の一例である。
【0028】
図2に示されるような保護材11は、直方体状の形状であり、奥行きが50mm程度、幅が50mm程度の大きさである。保護材11は、内部に吸収体12(本開示の「副吸収体」の一例)を備える。吸収体12には、SAP等の粒状の吸収性樹脂(本開示の「吸収材」の一例)が保持される。また、吸収体12の長手方向の一方の端部17には他方の端部18よりも吸収性樹脂が多く含まれている。よって、端部17の高さは端部18の高さよりも高くなっている。
【0029】
より詳細には、吸収体12は、パルプ繊維、レーヨン繊維、またはコットン繊維のようなセルロース系繊維の短繊維や、ポリエチレン、ポリプロピレン、またはポリエチレンテレフタレート等の合成繊維に親水化処理を施した短繊維の隙間に、水を吸収し保持するこ
とのできる架橋構造を持つ親水性ポリマーであるSAP(高吸収性重合体:Super Absorbent Polymer)等の粒状の吸収性樹脂を保持させた構造を有する。よって、吸収体12では、液体を吸収する前後の吸収性樹脂の体積変動は、基本的には吸収性樹脂を隙間に保持する短繊維内で行われることになる。
【0030】
本実施形態のSAP粒子とは、SAPを含む樹脂組成物を粒状としたものを指す。ここで言う「SAPを含む樹脂組成物」とは、SAPのみからなる組成物、SAPを主成分とし、これに吸水性に悪影響を及ぼさない程度に他の物質が含まれた組成物、の双方を包含する概念である。「他の物質」としては、添加剤(粒子表面を疎水化する目的で添加される表面改質剤等)、SAPの合成時に残存した未反応のモノマー等を挙げることができる。
【0031】
また、保護材11は、液体を透過可能な不織布14を備える。不織布14は、吸収体12を厚み方向において挟持するように配置される。よって、吸収体12の上面に配置された不織布14に付着した尿は、不織布14を透過して吸収体12に吸収される。
【0032】
また、保護材11は、吸収体12および不織布14を覆う防水フィルム15(本開示の「透水抑制シート」の一例)を備える。防水フィルム15は、液体の透過を抑制する性質を有する。防水フィルム15は吸収体12および不織布14を覆うが、上面は開口(開口20)している。また、図2(B)に示されるように、防水フィルム15は、側方から見ると端部17を覆う部分および端部18を覆う部分の夫々の厚みが先端方向に向かって漸次薄くなるような形状である。そして、端部17を覆う部分の下面19には、リブ16(本開示の「突起」の一例)が設けられる。リブ16は下面19から下方向に凸となっている。また、リブ16は、図2(C)に示されるように、幅方向において複数並んで設けられる。
【0033】
図3は、尿パッド10を長手方向において切断した場合の断面図の一例である。図3に示されるように、尿パッド10は、バックシート5、吸収体6(本開示の「主吸収体」の一例)、保護材11、およびトップシート7を有し、この順に積層されている。バックシート5、およびトップシート7は、何れも略長方形の外観を有するシート状の部材である。バックシート5は、排泄物の漏れを抑制するために液不透過性の熱可塑性樹脂を材料として形成されたシートである。また、トップシート7は、吸収体6および保護材11の吸水面を被覆するようにユーザの肌面側に配置される、シート状の部材である。このトップシート7は、その一部又は全部において液透過性を有する。そのため、おむつ1に尿パッド10が装着された状態において、ユーザから排泄された液体は、ユーザの肌に接触し得るトップシート7を介して吸収体6の配置方向に進入する。なお、例えば、織布、不織布、多孔質フィルムがトップシート7の材料として材用できる。また、トップシート7は親水性を有していてもよい。
【0034】
吸収体6は、ユーザに尿パッド10が装着された場合に長手方向においてユーザの尿道口から肛門までを被覆可能な長さを有する。また、吸収体6は、バックシート5の上で二層状態となっている。すなわち、バックシート5の上に吸収体6Aが配置され、さらにその上に吸収体6Bが配置される。なお、吸収体6は、吸収体12と同様の性質を有する。また、吸収体6Aおよび6Bの厚みは略均一である。また、吸収体6Bは、図3に示されるように幅方向にスリット13を有する。
【0035】
保護材11は、吸収体6Bとトップシート7との間に設けられる。また、保護材11は、尿パッド10がおむつ1に装着された場合に、端部17がユーザの腹部側にくるように配置される。また、保護材11は、吸収体6Bが有するスリット13の開口部の一部を覆うように配置される。
【0036】
バックシート5、吸収体6、トップシート7は、おむつ1に装着された場合に何れも前身頃領域1Fから後身頃領域1Rにまで延在する。よって、バックシート5と吸収体6とトップシート7の各長手方向の両端部は、ユーザの腹側と背側に位置する状態となる。すなわち、ユーザの陰部は、ユーザの腹側から背側まで吸収体6に覆われる状態となる。したがって、ユーザが腹を下へ向けた姿勢と背を下へ向けた姿勢の何れの姿勢で液体を体外へ排出しても、排出された液体はトップシート7を介して吸収体6の配置場所に侵入することになる。
【0037】
(使用例)
図3に示されるような尿パッド10は、保護材11がユーザの仙骨の出っ張り部分を覆うようにおむつ1に取り付けられる。このように尿パッド10が取り付けられて使用されると、保護材11よりもユーザの腹部方向に位置するトップシート7の先端部22(本開示の「当接部」の一例)の少なくとも一部は、ユーザの肌と当接することになる。よって、ユーザの尿道口から排泄されトップシート7上を流れる尿が仙骨の出っ張り部分と当接するトップシート7の当接部21に流入することは抑制される。よって、仙骨の出っ張り部分を覆う皮膚が湿ることは抑制され、その結果として褥瘡の発生は抑制される。
【0038】
また、先端部22よりも腹部側の下部は空洞となっているため、ユーザに尿パッド10が装着されると先端部22よりも腹部側が空洞方向に沈みこみ、当接部21との間で段差が生じる。このような段差によっても先端部22上を流れる尿が当接部21上に流入することは抑制される。
【0039】
また、図3に示されるように、たとえトップシート7上を流れる尿が先端部22から当接部21に流入した場合であっても、当接部21の下部には保護材11が位置している。また、保護材11の上面の防水フィルム15は開口しており、不織布14が露出した状態となっている。よって、当接部21上に流入した尿は、当接部21に浸透し、その後不織布14にも浸透する。そして、尿は不織布14を介して吸収体12にも浸透し、吸収体12に吸収される。なお、このように吸収体12に吸収される尿は少量と想定される。
【0040】
また、上記のようにトップシート7上を流れる尿は、当接部21上への流入が抑制されるため、先端部22よりも腹部側領域においてトップシート7への浸透が促進される。そして、トップシート7へ浸透した尿は、吸収体6の配置領域に進入する。ここで、吸収体6Bにはスリット13が設けられているため、進入してきた尿はスリット13内を拡散する。よって、吸収体6Aおよび6Bの全体にわたって尿は吸収される。よって、吸収体6Aおよび6Bに多量の尿が吸収されることになる。
【0041】
また、端部17を覆う防水フィルム15は、ユーザの腹部方向に向かって漸次薄くなっており、下面19にはリブ16が設けられている。このような防水フィルム15の形状およびリブ16によって、尿は下方のスリット13へ誘導される。よって、吸収体6Aおよび6Bの全体にわたって尿は吸収される。
【0042】
また、図3に示されるように、吸収体6Aおよび6Bの厚みは略均一である。そして、吸収体6Bの上に保護材11が載置されており、保護材11は上部の開口20以外は防水フィルム15によって覆われている。よって、長手方向において保護材11が壁となる。よって、腹部方向から進入してきた尿が再度トップシート7側に戻ろうとすることを抑制する。よって、尿の皮膚への付着や開口20を介して吸収体12に尿が吸収されることは抑制される。
【0043】
また、端部17の高さは端部18の高さよりも高い。よって、保護材11の側面方向(
腹部方向)から保護材11の方向へ進行する尿に対して、保護材11は壁として機能する。よって、尿が再度トップシート7側に戻ろうとすることは抑制される。よって、尿の皮膚への付着や開口20を介して吸収体12に尿が吸収されることは抑制される。また、前述のように吸収体12の端部17には他方の端部18よりも吸収性樹脂が多く含まれている。よって、吸収性樹脂が尿を吸収している場合には吸収性樹脂は膨張するため、端部17の高さは端部18の高さよりもさらに高くなる。このようなことから保護材11の壁としての効果は高まる。
【0044】
また、ユーザの仙骨の一部は出っ張っているため、保護材11が出っ張り方向(厚み方向)に圧迫されることが考えられる。よって、スリット13の領域が狭まることでスリット13に流入した尿がトップシート7の方向へ移動することが考えられる。しかしながら、保護材11はスリット13の一部を覆うように設けられている。また、保護材11は、開口20以外は防水フィルム15によって覆われている。よって、保護材11が壁となり、尿が防水フィルム15を透過してトップシート7の方向へ移動することは抑制される。よって、尿の皮膚への付着や開口20を介して吸収体12に尿が吸収されることは抑制される。
【0045】
また、保護材11が出っ張り方向に圧迫されることで保護材11の下部に設けられる吸収体6A又は6Bが収縮することが考えられる。よって、吸収体6A又は6Bから尿が流出することが考えられる。しかしながら、保護材11は吸収体6Aおよび6Bに重ねて設けられている。また、保護材11は、上面の開口20以外は防水フィルム15によって覆われている。よって、保護材11が壁となり、尿が防水フィルム15を透過してトップシート7の方向へ移動することは抑制される。よって、尿の皮膚への付着や開口20を介して吸収体12に尿が吸収されることは抑制される。
【0046】
(作用効果)
上記のような尿パッド10によれば、吸収体6(6Aおよび6B)に多量の尿が吸収されることになる。一方で、吸収体12に吸収される尿量を抑制することができる。よって、保護材11が仙骨の出っ張り部分により圧迫された場合であっても、吸収体12から流出する尿量を抑制できる。よって、仙骨の出っ張り部分を覆う皮膚に尿が付着することは抑制される。よって、皮膚に褥瘡が発生することは抑制される。
【0047】
また、保護材11が仙骨の出っ張り部分により圧迫され、吸収体6(6Aおよび6B)が圧迫方向に収縮すると、吸収体12には多量の尿が含まれているため吸収体12から尿が流出する。また、スリット13の容積も縮小するためスリット13に存在する尿が溢れ出る。しかしながら、保護材11はスリット13の一部を覆うように設けられている。また、保護材11は、開口20以外は防水フィルム15によって覆われている。よって、保護材11が壁となり、尿が防水フィルム15を透過してトップシート7の方向へ移動することは抑制される。よって、仙骨の出っ張り部分を覆う皮膚に尿が付着することは抑制され、その結果として褥瘡の発生は抑制される。または、保護材11の開口20を介して吸収体12に尿が吸収されることは抑制される。よって、吸収体12に多量の尿が吸収されることは抑制される。よって、保護材11が仙骨の出っ張り部分により圧迫された場合であっても、吸収体12から流出する尿量を抑制できる。このようなことからも、仙骨の出っ張り部分を覆う皮膚に尿が付着することは抑制される。よって、皮膚に褥瘡が発生することは抑制される。
【0048】
<第2実施形態>
【0049】
図4は、第2実施形態に係るおむつ1Cの断面図の一例を示している。第2実施形態に係るおむつ1Cは、尿パッド10を備えていない。また、おむつ1Cは、保護材11Cを
備えるが、保護材11Cは、おむつ1Cのトップシート7C上に載置される。なお、おむつ1Cおよび保護材11Cは、本開示の「吸収性物品」の一例である。
【0050】
より詳細には、おむつ1Cは、バックシート5C、吸収体26(26A、26B、本開示の「吸収体本体」および「主吸収体」の一例)、保護材11C、およびトップシート7Cを有し、この順に積層されている。バックシート5C、およびトップシート7Cは、何れも略長方形の外観を有するシート状の部材である。バックシート5Cは、排泄物の漏れを抑制するために液不透過性の熱可塑性樹脂を材料として形成されたシートである。また、トップシート7Cは、吸収体26(26A、26B)の吸水面を被覆するようにユーザの肌面側に配置される、シート状の部材である。このトップシート7Cは、その一部又は全部において液透過性を有する。そのため、ユーザから排泄された液体は、ユーザの肌に接触し得るトップシート7Cを介して吸収体26(26A、26B)の配置方向に進入する。なお、例えば、織布、不織布、多孔質フィルムがトップシート7Cの材料として材用できる。また、トップシート7Cは親水性を有していてもよい。
【0051】
保護材11Cは、トップシート7Cの上に端部17Cがユーザの腹部側にくるように固定される。なお、図示しないが、保護材11Cの下面には例えば両面テープなどの固定部材(本開示の「固定部」の一例)が設けられている。そして、トップシート7Cと保護材11Cとは両面テープを介して固定される。
【0052】
バックシート5C、吸収体26(26A、26B)、トップシート7Cは、おむつ1Cに装着された場合に何れも前身頃領域1Fから後身頃領域1Rにまで延在する。よって、バックシート5Cと吸収体26(26A、26B)とトップシート7Cの各長手方向の両端部は、ユーザの腹側と背側に位置する状態となる。すなわち、ユーザの陰部は、ユーザの腹側から背側まで吸収体26(26A、26B)に覆われる状態となる。したがって、ユーザが腹を下へ向けた姿勢と背を下へ向けた姿勢の何れの姿勢で液体を体外へ排出しても、排出された液体はトップシート7を介して吸収体26(26A、26B)の配置場所に侵入することになる。
【0053】
(使用例および作用効果)
図4に示されるような保護材11Cは、ユーザの仙骨の出っ張り部分を覆うようにトップシート7Cに取り付け可能である。このように保護材11Cが取り付けられて使用されると、開口20Cよりもユーザの腹部方向に位置する不織布14Cの先端部24の少なくとも一部は、ユーザの肌と当接することになる。よって、ユーザの尿道口から排泄されトップシート7C上を流れる尿が仙骨の出っ張り部分と当接する不織布14Cの当接部23に流入することは抑制される。よって、仙骨の出っ張り部分を覆う皮膚が湿ることは抑制され、その結果として褥瘡の発生は抑制される。
【0054】
また、保護材11Cはトップシート7C上に凸状となって配置される。さらに端部17Cの高さは端部18Cの高さよりも高い。よって、保護材11Cの側面方向(腹部方向)から保護材11Cの方向へ流れる尿に対して、保護材11Cは壁として機能する。よって、トップシート7Cを流れる尿が保護材11Cの側面を乗り越えて仙骨近傍に到達することは抑制される。
【0055】
よって、尿の皮膚への付着や開口20Cを介して吸収体12Cに尿が吸収されることは抑制される。また、前述のように吸収体12Cの端部17Cには他方の端部18Cよりも吸収性樹脂が多く含まれている。よって、吸収性樹脂が尿を吸収している場合には、吸収性樹脂が膨張することで、端部17Cの高さは端部18Cの高さよりもさらに高くなる。このようなことから保護材11Cの壁としての効果は高まる。よって、仙骨の出っ張り部分を覆う皮膚が湿ることは抑制され、その結果として褥瘡の発生は抑制される。
【0056】
また、端部17C近傍には立体ギャザー3BL,3BRが配置されており、立体ギャザー3BL,3BRによって幅方向に尿が流出することが抑制される。よって、トップシート7C上を流れる尿の量が多くなることが想定される。しかしながら、このようにトップシート7C上を流れる尿量が多い場合であっても、保護材11Cの壁としての効果は高まっているため、仙骨の出っ張り部分に尿が流入することは抑制される。
【0057】
また、端部17Cを覆う防水フィルム15Cは、ユーザの腹部方向に向かって漸次薄くなっており、下面19Cにはリブ16Cが設けられている。このような防水フィルム15Cの形状およびリブ16Cによって、尿はトップシート7Cに浸透するように誘導される。よって、尿は、吸収体26(26A,26B)に吸収されるように誘導される。
【0058】
また、図4に示されるように、たとえトップシート7C上を流れる尿が先端部24から当接部23に流入した場合であっても、尿は当接部23を介して吸収体12Cに浸透し、吸収体12Cに吸収される。よって、仙骨を覆う皮膚が湿ることは抑制される。よって、褥瘡の発生は抑制される。
【0059】
また、ユーザの仙骨の一部は出っ張っているため、保護材11Cの吸収体12Cが出っ張り方向(厚み方向)に圧迫されることが考えられる。しかしながら、吸収体12Cに吸収されている尿は少量と想定されるため、吸収体12Cが収縮した場合であっても吸収体12Cから尿が流出することは抑制される。よって、ユーザの仙骨を覆う皮膚が湿ることは抑制される。よって、褥瘡の発生は抑制される。
【0060】
また、吸収体12Cが収縮することで、吸収体26(26A、26B)の収縮は抑制される。よって、吸収体26(26A、26B)に吸収された尿がトップシート7C上に染み出ることは抑制される。よって、尿が仙骨の出っ張り部分に移動する可能性は低減される。なお、尿が吸収体26(26A、26B)からトップシート7C上に流出した場合であっても、保護材11Cが固定されているため、尿が防水フィルム15Cを透過して仙骨近傍へ到達することは抑制される。よって、仙骨を覆う皮膚に尿が付着することは抑制され、その結果として褥瘡の発生は抑制される。
【0061】
また、第1実施形態における効果は、矛盾のない限り第2実施形態においても同様に奏する。
【0062】
<その他変形例>
第1実施形態における保護材11は、尿パッド10の上に固定されてもよい。また、第2実施形態における保護材11Cは、トップシート7Cの下部であって吸収体26Bの上部に設けられてもよい。また、スリット13の代わりに吸収体6Bに凹部が設けられてもよい。また、スリット13は設けられていなくともよい。また、防水フィルム15の形状は、端部17を覆う部分および端部18を覆う部分の夫々の厚みが先端方向に向かって漸次薄くなっていなくもよい。また、リブ16は設けられていなくともよい。また、開口20は設けられていなくともよい。また、吸収体6Aおよび6Bの厚みは均一でなくともよい。また、端部17と端部18に含まれるSAPの量は略同一であってもよく、端部17と端部18の高さは略等しくともよい。
【0063】
また、保護材11の大きさは、奥行きが200mm以内であり、幅が150mm以内であればよい。その理由として、様々な被験者の仙骨やその他の部位を採寸した結果、当該寸法であれば成人男性の陰部のうち仙骨に対応する部分を被覆可能であることが判明したからである。このような大きさの保護材11であれば、ユーザの肛門および尿道口に対向する位置に保護材11が達することは抑制される。よって、保護材11に多量の尿や水様
便などの排泄物が付着することが抑制される。よって、おむつ1のトップシートや尿パッド10のトップシート7でユーザの尿道口および肛門の両方を覆うことで排泄物を受け止めるのに対し、保護材11は、おむつ1や尿パッド10において特定部分に配置されることで仙骨の保護機能といった当該特定の部分特有の機能を発揮することができる。
【0064】
以上で開示した実施形態や変形例はそれぞれ組み合わせる事ができる。
【符号の説明】
【0065】
1、1C :おむつ
1B :股下領域
1F :前身頃領域
1R :後身頃領域
2F :フロントパッチ
2L :テープ
2R :テープ
3BL :立体ギャザー
3BR :立体ギャザー
3R :ウェストギャザー
5、5C :バックシート
5C :バックシート
6、26 :吸収体
7、7C :トップシート
10 :尿パッド
11、11C :保護材
12、12C :吸収体
13、13C :スリット
14,14C :不織布
15、15C :防水フィルム
16、16C :リブ
17、17C:端部
18 :端部
19 :下面
20、20C :開口
21 :当接部
22 :先端部
23 :当接部
24 :先端部
図1
図2
図3
図4