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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022114340
(43)【公開日】2022-08-05
(54)【発明の名称】燃料電池システム
(51)【国際特許分類】
   H01M 8/04537 20160101AFI20220729BHJP
   H01M 8/04664 20160101ALI20220729BHJP
   H01M 8/04302 20160101ALI20220729BHJP
   H01M 8/04225 20160101ALI20220729BHJP
   H01M 8/04746 20160101ALI20220729BHJP
【FI】
H01M8/04537
H01M8/04664
H01M8/04302
H01M8/04225
H01M8/04746
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021010605
(22)【出願日】2021-01-26
(71)【出願人】
【識別番号】000003218
【氏名又は名称】株式会社豊田自動織機
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121083
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 宏義
(74)【代理人】
【識別番号】100138391
【弁理士】
【氏名又は名称】天田 昌行
(74)【代理人】
【識別番号】100074099
【弁理士】
【氏名又は名称】大菅 義之
(72)【発明者】
【氏名】小野 大輔
【テーマコード(参考)】
5H127
【Fターム(参考)】
5H127AB04
5H127AB29
5H127AC07
5H127AC17
5H127BA02
5H127BA22
5H127BA39
5H127BA58
5H127BA60
5H127BB02
5H127BB12
5H127BB37
5H127BB39
5H127BB40
5H127DA01
5H127DB71
5H127DB90
5H127DC02
5H127DC22
5H127FF10
(57)【要約】
【課題】燃料電池システムにおいて、製造コストの増大を抑制しつつ、燃料電池に供給される酸化剤ガスなどの圧力や流量を制御する電動弁が異常であるか否かを判断する。
【解決手段】モータに流れる電流に応じて開度が変化するエア調圧弁ARVと、モータに所定電圧Vを所定デューティ比rで印加することでモータに流れる電流をエア調圧弁ARVの目標開度に対応する目標電流に制御する制御部3とを備えて燃料電池システム1を構成し、制御部3は、電圧印加時間において、モータに所定電圧Vを所定デューティ比r´で印加するとともに、電圧印加時間に印加した電圧により生じる電流を検出可能な監視時間において、モータに流れる電流Iが閾値I以下である場合、エア調圧弁ARVが異常状態であると判断する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
モータに流れる電流に応じて開度が変化する電動弁と、
前記モータに所定電圧を第1の所定デューティ比で印加することで前記モータに流れる電流を前記電動弁の目標開度に対応する目標電流に制御する制御部と、
を備え、
前記制御部は、電圧印加時間において、前記モータに前記所定電圧を第2の所定デューティ比で印加するとともに、前記電圧印加時間に印加した電圧により生じる電流を検出可能な監視時間において、前記モータに流れる電流または前記モータに流れる電流の単位時間あたりの変動幅が閾値以下である場合、前記電動弁が異常状態であると判断する
ことを特徴とする燃料電池システム。
【請求項2】
請求項1に記載の燃料電池システムであって、
前記電動弁は、バタフライ弁である
ことを特徴とする燃料電池システム。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の燃料電池システムであって、
前記電動弁は、燃料電池に酸化剤ガスを供給するために用いられ、
前記制御部は、前記燃料電池が起動指示され、前記燃料電池に燃料ガスを供給した後に、前記電動弁が異常状態でないと判断すると、前記燃料電池に酸化剤ガスを供給する
ことを特徴とする燃料電池システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料電池システムに関する。
【背景技術】
【0002】
燃料電池システムとして、ステッピングモータが駆動することにより開度が変化する電動弁を用いて、燃料電池に供給される酸化剤ガスなどの圧力や流量を制御するとともに、ステッピングモータに流れる電流が閾値以下である場合、電動弁が異常状態であると判断するものがある。関連する技術として、特許文献1がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2018-054585号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記燃料電池システムでは、ステッピングモータが比較的高価であるため、製造コストが増大する懸念がある。
【0005】
そこで、本発明の一側面に係る目的は、燃料電池システムにおいて、製造コストの増大を抑制しつつ、電動弁が異常であるか否かを判断することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る一つの形態である燃料電池システムは、モータに流れる電流に応じて開度が変化する電動弁と、前記モータに所定電圧を第1の所定デューティ比で印加することで前記モータに流れる電流を前記電動弁の目標開度に対応する目標電流に制御する制御部とを備え、前記制御部は、電圧印加時間において、前記モータに前記所定電圧を第2の所定デューティ比で印加するとともに、前記電圧印加時間に印加した電圧により生じる電流を検出可能な監視時間において、前記モータに流れる電流または前記モータに流れる電流の単位時間あたりの変動幅が閾値以下である場合、前記電動弁が異常状態であると判断する。
【0007】
これにより、モータに流れる電流に応じて開度が変化する電動弁が異常状態であるか否かを判断することができるため、電動弁のモータとして直流モータなどの比較的安価なモータを採用することができ、燃料電池システムの製造コストの増大を抑制することができる。
また、前記電動弁は、バタフライ弁としてもよい。
【0008】
一般に、バタフライ弁はモータに流れる電流に応じて開度を変化させることができるため、バタフライ弁を電動弁として容易に適用することができる。
【0009】
また、前記電動弁は、燃料電池に酸化剤ガスを供給するために用いられ、前記制御部は、前記燃料電池が起動指示され、前記燃料電池に燃料ガスを供給した後に、前記電動弁が異常状態でないと判断すると、前記燃料電池に酸化剤ガスを供給するように構成してもよい。
【0010】
これにより、燃料電池が起動指示された後、電動弁が異常状態でないと判断し燃料電池に酸化剤ガスを供給した後に燃料ガスを供給する場合に比べて、燃料電池内の燃料ガスが足りない状態で燃料電池に酸化剤ガスが供給されることを抑制することができるため、燃料電池が劣化することを抑制することができる。また、電動弁が異常状態でないと判断してから燃料電池の発電を開始するまでの処理をスムーズに行うことができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、燃料電池システムにおいて、製造コストの増大を抑制しつつ、燃料電池に供給される酸化剤ガスなどの圧力や流量を制御する電動弁が異常であるか否かを判断することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】実施形態の燃料電池システムの一例を示す図である。
図2】モータに印加される電圧とモータに流れる電流の一例を示す図である。
図3】モータに印加される電圧とモータに流れる電流の一例を示す図である。
図4】制御部の動作の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下図面に基づいて実施形態について詳細を説明する。
図1は、実施形態の燃料電池システムの一例を示す図である。
【0014】
図1に示す燃料電池システム1は、フォークリフトなどの産業車両や自動車などの車両Veに搭載され、負荷Loなどに電力を供給する。なお、負荷Loは、車両Veに搭載される走行用モータを駆動するインバータや電装部品などである。
【0015】
また、燃料電池システム1は、燃料電池FCと、水素タンクHTと、インジェクタINJと、エアコンプレッサACPと、エア調圧弁ARV(電動弁)と、エアシャット弁ASV(電動弁)と、排気排水弁EDV(電動弁)と、DCDCコンバータCNVと、蓄電装置Bと、記憶部2と、制御部3とを備える。
【0016】
燃料電池FCは、互いに直列接続される複数の燃料電池セルにより構成される燃料電池スタックであり、燃料ガス(水素ガスなど)に含まれる水素と酸化剤ガス(空気など)に含まれる酸素との電気化学反応により電気を発生させる。
【0017】
水素タンクHTは、燃料ガスの貯蔵容器である。水素タンクHTに貯蔵された燃料ガスはインジェクタINJを介して燃料電池FCに供給される。
【0018】
インジェクタINJは、燃料電池FCに供給される燃料ガスの流量を調整する。
エアコンプレッサACPは、燃料電池FCに酸化剤ガスを供給する。
【0019】
エア調圧弁ARVは、モータのトルクにより開度が変化するバタフライ弁であって、エアコンプレッサACPからエアシャット弁ASVを介して燃料電池FCに供給される酸化剤ガスの圧力や流量を調整する。なお、エア調圧弁ARVに備えられるモータは、直流モータなどにより構成され、モータに流れる電流が大きいほど、モータのトルクが大きくなるものとする。例えば、モータに電流が流れていないとき、すなわち、モータのトルクがゼロであるとき、エア調圧弁ARVに備えられる不図示のばねによりエア調圧弁ARVの開度がゼロに保持されるものとする。また、モータに目標電流が流れているとき、すなわち、モータのトルクが目標トルクであるとき、ばねの付勢力とモータのトルクとがつり合いエア調圧弁ARVの開度が目標開度に保持されるものとする。すなわち、モータに流れる電流に応じてエア調圧弁ARVの開度が変化するものとする。
【0020】
エアシャット弁ASVは、モータのトルクにより開度が変化するバタフライ弁であって、エアコンプレッサACPから燃料電池FCに供給される酸化剤ガスを遮断する。なお、エアシャット弁ASVに備えられるモータは、エア調圧弁ARVに備えられるモータと同様に、直流モータなどにより構成され、モータに流れる電流に応じてエアシャット弁ASVの開度が変化するものとする。
【0021】
排気排水弁EDVは、モータのトルクにより開度が変化するバタフライ弁であって、燃料電池FCから外部に排出される水素ガスや水の流量を調整する。なお、排気排水弁EDVに備えられるモータは、エア調圧弁ARVに備えられるモータと同様に、直流モータなどにより構成され、モータに流れる電流に応じて排気排水弁EDVの開度が変化するものとする。
【0022】
DCDCコンバータCNVは、燃料電池FCと蓄電装置Bとの間に設けられ、燃料電池FCから出力される電力を蓄電装置Bに供給する。
【0023】
蓄電装置Bは、リチウムイオンキャパシタなどにより構成され、負荷Loに電力を供給する。
【0024】
記憶部2は、RAM(Random Access Memory)などのメモリにより構成され、後述する、所定デューティ比r、所定デューティ比r´、電圧印加時間、監視時間、及び閾値Ithなどを記憶する。
【0025】
制御部3は、マイクロコンピュータなどにより構成され、燃料電池FCが起動指示されると、蓄電装置Bの電圧などに応じた電力が燃料電池FCからDCDCコンバータCNVを介して蓄電装置Bに供給されるように、インジェクタINJ、エアコンプレッサACP、エア調圧弁ARV、エアシャット弁ASV、排気排水弁EDV、及びDCDCコンバータCNVのそれぞれの動作を制御する。なお、起動指示とは、車両Veのオペレータにより車両Veが起動指示される場合のほか、オペレータにより燃料電池システム1が直接起動指示された場合や、制御部3に内蔵されたタイマ等により燃料電池システム1が制御部3によって自発的に起動する場合を含む。
【0026】
例えば、制御部3は、エア調圧弁ARVに備えられるモータに所定電圧Vを所定デューティ比r(第1の所定デューティ比)で印加することでモータに流れる電流をエア調圧弁ARVの目標開度に対応する目標電流に制御する。なお、所定デューティ比rは、エア調圧弁ARVのモータに所定電圧Vが一定時間T1印加された後、モータに電圧が一定時間T2印加されないことが繰り返される場合における一定時間T1に対する一定時間T2の割合とする。
【0027】
ここで、図2(a)は、モータに流れる電流を目標電流に制御する場合にモータに印加される電圧の一例を示す図である。図2(a)に示す2次元座標の横軸は時間を示し、縦軸は電圧を示している。また、図2(a)に示す実線はモータに印加される電圧を示している。また、図2(b)は、モータに流れる電流を目標電流に制御する場合にモータに流れる電流の一例を示す図である。図2(b)に示す2次元座標の横軸は時間を示し、縦軸は電流を示している。また、図2(b)に示す実線はモータに流れる電流を示している。また、図2(b)に示す破線はモータに流れる電流の移動平均を示している。
【0028】
図2(a)及び図2(b)では、エア調圧弁ARVのモータに所定電圧Vが所定デューティ比rで印加されることで、モータに流れる電流の移動平均がゼロから目標電流まで徐々に上昇している。すなわち、エア調圧弁ARVのモータに所定電圧Vが所定デューティ比rで印加されることで、モータに流れる電流が目標電流に制御されるものとする。
【0029】
また、制御部3は、電圧印加時間において、エア調圧弁ARVのモータに所定電圧を所定デューティ比r´(第2の所定デューティ比)で印加するとともに、電圧印加時間と同じ開始時刻で電圧印加時間より長い監視時間において、エア調圧弁ARVのモータに流れる電流が閾値Ithより大きくなる場合、エア調圧弁ARVが正常状態(エア調圧弁ARVのモータの電力線が断線していない状態)であると判断する。なお、所定デューティ比r´は、一定時間T1に対する一定時間T2の割合とする。また、電圧印加時間は、モータに印加される電圧とモータに流れる電流との関係を示す特性やモータに流れる電流に含まれるノイズなどに基づいて予め求められているものとする。また、監視時間は、エア調圧弁ARVのモータが正常状態である場合においてモータに所定電圧Vが所定デューティ比r´で電圧印加時間印加された後に遅れてモータに流れる電流が最大値になるタイミングが含まれるように予め設定されているものとする。また、閾値Ithは、エア調圧弁ARVのモータが正常状態である場合においてモータに所定電圧Vが所定デューティ比r´で電圧印加時間印加された後に遅れてモータに流れる電流の最大値に基づいて予め設定されているものとする。
【0030】
また、制御部3は、電圧印加時間において、エア調圧弁ARVのモータに所定電圧Vを所定デューティ比r´で印加するとともに、監視時間において、エア調圧弁ARVのモータに流れる電流が閾値Ith以下である場合、エア調圧弁ARVが異常状態(エア調圧弁ARVのモータの電力線が断線している状態)であると判断する。
【0031】
ここで、図3(a)は、モータに印加される所定電圧Vの所定デューティ比r´及びエア調圧弁ARVが正常状態である場合においてモータに流れる電流の一例を示す図である。図3(a)に示す2次元座標の横軸は時間を示し、縦軸は所定デューティ比r´または電流を示している。また、図3(a)に示す破線は所定デューティ比r´を示し、実線はモータに流れる電流を示している。
【0032】
図3(a)では、電圧印加時間の所定デューティ比r´は100[%]になっている。また、監視時間の一部の時間において、モータに流れる電流が閾値Ithより大きくなっている。なお、所定デューティ比r´は、エア調圧弁ARVが正常状態である場合においてモータに流れる電流を監視時間内で閾値Ithより大きくすることができる値であれば、100[%]に限定されない。
【0033】
図3(b)は、モータに印加される所定電圧Vの所定デューティ比r´及びエア調圧弁ARVが異常状態である場合においてモータに流れる電流の一例を示す図である。図3(b)に示す2次元座標の横軸は時間を示し、縦軸は所定デューティ比r´または電流を示している。また、図3(b)に示す破線は所定デューティ比r´を示し、実線はモータに流れる電流を示している。
【0034】
図3(b)では、電圧印加時間の所定デューティ比r´は100[%]になっている。また、監視時間のすべての時間において、モータに流れる電流がほぼゼロになっている。
【0035】
図4は、燃料電池FCの発電開始処理を行う際の制御部3の動作の一例を示すフローチャートである。
【0036】
まず、制御部3は、燃料電池FCが起動指示されると(ステップS1:Yes)、燃料電池システム1に備えられる不図示の各種センサ(エア調圧弁ARVのモータに印加される電圧を計測するセンサやエア調圧弁ARVのモータに流れる電流を計測するセンサなど)や各種スイッチ(DCDCコンバータCNVと蓄電装置Bとの間に接続されるスイッチなど)が正常状態であるか否かを判断する(ステップS2)。
【0037】
次に、制御部3は、各種センサや各種スイッチが異常状態であると判断すると(ステップS2:No)、エラーが発生している旨をユーザに報知し(ステップS3)、燃料電池FCの発電開始処理を終了する。
【0038】
一方、制御部3は、各種センサや各種スイッチが正常状態であると判断すると(ステップS2:Yes)、燃料電池FCへの燃料ガスの供給を開始し(ステップS4)、燃料ガスの供給が終了すると(ステップS5:Yes)、電圧印加時間において、エア調圧弁ARVのモータに所定電圧Vを所定デューティ比r´で印加させるとともに、監視時間において、エア調圧弁ARVのモータに流れる電流を取得する(ステップS6)。
【0039】
次に、制御部3は、ステップS6で取得した電流が閾値Ithより大きい場合(ステップS7:Yes)、燃料電池FCへの酸化剤ガスの供給を開始させることにより燃料電池FCの発電を開始させる(ステップS8)。
【0040】
一方、制御部3は、ステップS6で取得した電流が閾値Ith以下であった場合(ステップS7:No)、エア調圧弁ARVが異常状態であると判断し(ステップS9)、エラーが発生している旨をユーザに報知し(ステップS10)、燃料電池FCの発電開始処理を終了する。
【0041】
なお、制御部3は、監視時間において、エア調圧弁ARVのモータに流れる電流の単位時間当たりの変動幅を取得し、その変動幅が閾値ΔIth以下であった場合、エア調圧弁ARVが異常状態であると判断するように構成してもよい。なお、閾値ΔIthは、エア調圧弁ARVのモータが正常状態である場合においてモータに所定電圧Vが所定デューティ比r´で電圧印加時間印加された後に遅れてモータに流れる電流の単位時間あたりの変動幅の最大値に基づいて予め設定されているものとする。
【0042】
このように、実施形態の燃料電池システム1では、電圧印加時間において、エア調圧弁ARVのモータに所定電圧Vを所定デューティ比r´で印加するとともに、監視時間において、モータに流れる電流が閾値Ith以下である場合、または、モータに流れる電流の単位時間あたりの変動幅が閾値ΔIth以下である場合、エア調圧弁ARVが異常状態であると判断する構成である。これにより、モータに流れる電流に応じて開度が変化するエア調圧弁ARVが異常状態であるか否かを判断することができるため、エア調圧弁ARVのモータとして直流モータなどの比較的安価なモータを採用することができ、燃料電池システム1の製造コストの増大を抑制することができる。
【0043】
また、実施形態の燃料電池システム1では、エア調圧弁ARVをバタフライ弁とする構成である。一般に、バタフライ弁はモータに流れる電流に応じて開度を変化させることができるため、バタフライ弁をエア調圧弁ARVとして容易に適用することができる。また、バタフライ弁は、弁を閉じる方向にばね等の復元力が働いているため、エア調圧弁ARVのモータに第2の所定デューティ比で電流を印加したとしても、バタフライ弁の開度に影響を与えにくい。
【0044】
また、実施形態の燃料電池システム1では、燃料電池FCが起動指示され、燃料電池FCに燃料ガスを供給した後に、エア調圧弁ARVが異常状態でないと判断すると、燃料電池FCに酸化剤ガスを供給する構成である。これにより、エア調圧弁ARVが異常状態でないと判断されて燃料電池FCに酸化剤ガスが供給された後に燃料ガスが供給される場合に比べて、燃料電池FC内の燃料ガスが足りない状態で燃料電池FCに酸化剤ガスが供給されることを抑制することができるため、燃料電池FCが劣化することを抑制することができる。また、エア調圧弁ARVが異常状態でないと判断してから燃料電池FCの発電を開始するまでの処理をスムーズに行うことができる。
【0045】
なお、本発明は、以上の実施の形態に限定されるものでなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内で種々の改良、変更が可能である。
【0046】
例えば、制御部3は、電圧印加時間において、エアシャット弁ASVのモータに所定電圧Vを所定デューティ比r´で印加するとともに、監視時間において、エアシャット弁ASVのモータに流れる電流が閾値Ith以下である場合、または、エアシャット弁ASVのモータに流れる電流の単位時間あたりの変動幅が閾値ΔIth以下である場合、エアシャット弁ASVが異常状態であると判断するように構成してもよい。
【0047】
また、制御部3は、電圧印加時間において、排気排水弁ECVのモータに所定電圧Vを所定デューティ比r´で印加するとともに、監視時間において、排気排水弁EDVのモータに流れる電流が閾値Ith以下である場合、または、排気排水弁EDVのモータに流れる電流の単位時間あたりの変動幅が閾値ΔIth以下である場合、排気排水弁EDVが異常状態であると判断するように構成してもよい。
【0048】
また、監視時間の開始時刻は、電圧印加時間と同じ開始時刻でなくてもよい。すなわち、監視時間は、エア調圧弁ARVのモータが正常状態である場合においてモータに所定電圧Vが所定デューティ比r´で電圧印加時間印加された後に、遅れてモータに流れる電流を検出できる時間を満たすように、開始時刻が設定されればよい。
【符号の説明】
【0049】
1 燃料電池システム
2 記憶部
3 制御部
Ve 車両
Lo 負荷
FC 燃料電池
HT 水素タンク
INJ インジェクタ
ACP エアコンプレッサ
ARV エア調圧弁
ASV エアシャット弁
EDV 排気排水弁
CNV DCDCコンバータ
B 蓄電装置
図1
図2
図3
図4