IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ヒロセ電機株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-回転検出装置 図1
  • 特開-回転検出装置 図2
  • 特開-回転検出装置 図3
  • 特開-回転検出装置 図4
  • 特開-回転検出装置 図5
  • 特開-回転検出装置 図6
  • 特開-回転検出装置 図7
  • 特開-回転検出装置 図8
  • 特開-回転検出装置 図9
  • 特開-回転検出装置 図10
  • 特開-回転検出装置 図11
  • 特開-回転検出装置 図12
  • 特開-回転検出装置 図13
  • 特開-回転検出装置 図14
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022114341
(43)【公開日】2022-08-05
(54)【発明の名称】回転検出装置
(51)【国際特許分類】
   G01D 5/245 20060101AFI20220729BHJP
【FI】
G01D5/245 L
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021010607
(22)【出願日】2021-01-26
(71)【出願人】
【識別番号】390005049
【氏名又は名称】ヒロセ電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100111202
【弁理士】
【氏名又は名称】北村 周彦
(74)【代理人】
【識別番号】100139365
【弁理士】
【氏名又は名称】中嶋 武雄
(72)【発明者】
【氏名】江川 広祐
【テーマコード(参考)】
2F077
【Fターム(参考)】
2F077AA21
2F077NN02
2F077NN03
2F077NN04
2F077NN19
2F077NN26
2F077PP06
2F077PP09
2F077QQ07
2F077TT06
2F077VV11
(57)【要約】
【課題】ヨークを備えた回転検出装置の小型化を図り、かつ回転の検出精度を向上させる。
【解決手段】回転検出装置1は、回転シャフト83と共に回転する磁石3と、基板2に固定され、磁石3の外周側に配置された磁気センサ11と、基板2に固定され、磁石3により形成された磁界の磁束を制御するヨーク30とを備え、各磁気センサ11は磁性線材12、コイル13およびボビン14を備え、各ヨーク30は、磁気センサ11の左部および右部を部分的に覆う左ヨーク片31および右ヨーク片41を備え、左ヨーク片31は左前板部32を有し、左前板部32は、ボビン14の左部であってコイル13が設けられている部分よりも左側の部分の前方からコイル13の前方に至るまで直線状に伸長し、その左端よりも右端の方が後方に位置するように磁性線材12の伸長方向に対して傾斜し、右ヨーク片41は左前板部32と左右対称に形成された右前板部42を有している。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持部と、相対的に見て前記支持部に対して回転する回転部とを有する構造体に設けられ、前記支持部に対する前記回転部の回転を検出する回転検出装置であって、
前記支持部に固定され、前記回転部の回転軸と直交する平面と平行な一の面を有する基板と、
前記回転部に固定され、前記回転軸を中心として前記回転部と共に回転し、前記回転軸の周囲に磁界を形成する磁界形成部と、
前記基板の前記一の面上に固定され、前記磁界形成部の回転軌跡の外周側に周方向に互いに等しい角度間隔をもって配置され、前記磁界形成部により形成された磁界を検出する複数の磁界検出部と、
前記基板の前記一の面上に固定され、前記複数の磁界検出部に一対一に対応するように前記回転軌跡の外周側に配置され、前記磁界形成部により形成された磁界の磁束を制御する複数のヨークとを備え、
前記磁界検出部は、
前記回転軌跡の接線と平行な方向に伸長した磁性線材と、
前記磁性線材の外周側に設けられたコイルと、
前記磁性線材および前記コイルを保持するボビンとを備え、
前記各磁界検出部につき、前記回転軸の伸長方向を上下方向とし、前記磁性線材の伸長方向を左右方向とし、前記回転軸および前記磁性線材の双方と直交する直線の伸長方向を前後方向とし、前記基板の前記一の面が向いている方向を上とし、前記前後方向において前記回転軸に近づく方向を前とし、前記各磁界検出部の左および右を前記各磁界検出部をその前方から見たときを基準に定めることとすると、
前記ボビンは左右方向に伸長した柱状に形成され、前記ボビンの内側には前記磁性線材が収容された線材収容部が形成され、前記ボビンの左右方向中央部であって前記線材収容部の外周側には前記コイルの導線が巻回された導線巻回部が形成され、
前記各ヨークは、前記磁界検出部の左部を部分的に覆う左ヨーク片、および前記磁界検出部の右部を部分的に覆う右ヨーク片を備え、
前記左ヨーク片は、前記ボビンの左部であって前記導線巻回部よりも左側の部分の前方から前記コイルの前方に至るまで直線状に伸長した左前板部を有し、前記左前板部は、当該左前板部の左端よりも当該左前板部の右端の方が後方に位置するように前記磁性線材の伸長方向に対して傾斜し、
前記右ヨーク片は、前記ボビンの右部であって前記導線巻回部よりも右側の部分の前方から前記コイルの前方に至るまで直線状に伸長した右前板部を有し、前記右前板部は、当該右前板部の右端よりも当該右前板部の左端の方が後方に位置するように前記磁性線材の伸長方向に対して傾斜し、
前記左前板部の右端と前記右前板部の左端とは前記コイルの左右方向中央部の前方において間隙を介して互いに対向していることを特徴とする回転検出装置。
【請求項2】
前記左ヨーク片は前記ボビンを当該ボビンの左方から覆う左板部を有し、前記左板部は、当該左板部の後端が当該左板部の前端よりも左方に位置するように、前記回転軸および前記磁性線材の双方と直交する直線に対して傾斜し、
前記右ヨーク片は前記ボビンを当該ボビンの右方から覆う右板部を有し、前記右板部は、当該右板部の後端が当該右板部の前端よりも右方に位置するように、前記回転軸および前記磁性線材の双方と直交する直線に対して傾斜していることを特徴とする請求項1に記載の回転検出装置。
【請求項3】
前記左板部は、当該左板部の後端が当該左板部の前端よりも左方に位置するように、前記回転軸および前記磁性線材の双方と直交する直線に対して前記角度間隔の2分の1の角度傾斜し、
前記右板部は、当該右板部の後端が当該右板部の前端よりも右方に位置するように、前記回転軸および前記磁性線材の双方と直交する直線に対して前記角度間隔の2分の1の角度傾斜していることを特徴とする請求項2に記載の回転検出装置。
【請求項4】
前記左板部は、前記ボビンにおいて前記前後方向中央よりも前側の部分のみを当該ボビンの左方から覆い、
前記右板部は、前記ボビンにおいて前記前後方向中央よりも前側の部分のみを当該ボビンの右方から覆っていることを特徴とする請求項2または3に記載の回転検出装置。
【請求項5】
前記複数の磁界検出部および前記複数のヨークはそれぞれ一対一に対応するように前記基板の前記一の面上において前記回転軸を中心とした円弧上に配置され、前記複数の磁界検出部の上方から前記一の面を見たとき、前記複数の磁界検出部のうち最も時計回り方向側に配置された磁界検出部の時計回り方向側には前記左ヨーク片と同一の構成を有する第1のダミーヨーク片が配置され、前記複数の磁界検出部のうち最も反時計回り方向側に配置された磁界検出部の反時計回り方向側には前記右ヨーク片と同一の構成を有する第2のダミーヨーク片が配置され、前記一の面には、前記第1のダミーヨーク片に対応する磁界検出部も前記第2のダミーヨーク片に対応する磁界検出部も存在しないことを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載の回転検出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁気を用いて物体の回転を検出する回転検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
磁気を用いて物体の回転を検出する回転検出装置として、大バルクハウゼン効果を利用した回転検出装置が下記の特許文献1に記載されている。大バルクハウゼン効果を利用した回転検出装置により、モータの回転シャフトの回転を検出する場合を例にあげ、大バルクハウゼン効果を利用した回転検出装置の基本的な構造を説明する。
【0003】
大バルクハウゼン効果を利用した回転検出装置は磁石および複数の磁気センサを備えている。磁石は例えば回転シャフトに固定され、回転シャフトと共に回転する。これにより、磁石のN極とS極が回転シャフトと共に回転するので、回転シャフトの周囲には回転する磁界(回転磁界)を形成される。複数の磁気センサは例えばモータの筐体等に固定される。複数の磁気センサは、磁石の回転軌跡の外周側に周方向に一定の間隔をもって配置され、磁石により形成された回転磁界を検出する。各磁気センサは、大バルクハウゼン効果を生じる磁性線材、および磁性線材の外周側に配置されたコイルを備えている。回転シャフトと共に磁石が回転し、回転シャフトの周囲に回転磁界が形成されたとき、各磁気センサは回転磁界の中に置かれた状態となる。その結果、回転シャフトの回転に伴って、各磁気センサの周囲の磁界の方向が変化し、この磁界の方向の変化に応じて各磁気センサの磁性線材の磁化方向が反転する。磁性線材の磁化方向が反転すると、コイルからパルスが出力される。このパルスに基づいて回転シャフトの回転を検出することができる。
【0004】
また、大バルクハウゼン効果を利用した回転検出装置であって、磁石の回転軌跡の外周側にヨークを設けたものが下記の特許文献2に記載されている。ヨークは、複数の磁気センサと共にモータの筐体等に固定され、各磁気センサにおいて磁石の回転軌跡に対向する部分を部分的に覆うように配置されている。ヨークは、回転磁界の磁束が、各磁気センサの磁性線材をその伸長方向に通るように磁束の方向を制御する機能を有している。ヨークを設けることにより、回転磁界の磁束を各磁気センサの磁性線材に集中させることができ、回転シャフトの回転の検出精度を高めることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】国際公開第2016/002437号
【特許文献2】国際公開第2016/021074号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
例えばモータ等、大バルクハウゼン効果を利用した回転検出装置を適用する装置の小型化に伴い、大バルクハウゼン効果を利用した回転検出装置の小型化が要請されている。磁気センサ同士の間隔、および磁石と各磁気センサとの間隔をそれぞれ縮めることにより、大バルクハウゼン効果を利用した回転検出装置を小型化することができる。しかしながら、特許文献2に記載された回転検出装置のように、大バルクハウゼン効果を利用した回転検出装置がヨークを備えている場合、磁気センサ同士の間、および磁石と磁気センサとの間にヨークが配置されるため、磁気センサ同士の間隔、および磁石と各磁気センサとの間隔をそれぞれ縮めることが困難である。
【0007】
また、磁石を小さくし、または各磁気センサの磁性線材の長さを短くすることによっても、大バルクハウゼン効果を利用した回転検出装置を小型化することができる。しかしながら、磁石を小さくし、または各磁気センサの磁性線材の長さを短くすると、コイルから出力されるパルスの電圧が減少し、回転の検出精度を向上させることが困難になる。そこで、コイルから出力されるパルスの電圧の減少を抑制するために、回転磁界の磁束を磁性線材に集中させる度合いをヨークによって高めることが要請される。このような要請に応じるために、磁束を磁性線材に集中させる度合いを高めることができるヨークの形状を検討することが求められる。
【0008】
本発明は例えば上述したような問題に鑑みなされたものであり、本発明の課題は、ヨークを備えながらも回転検出装置の小型化を図ることができ、かつ回転の検出精度を向上させることができる回転検出装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明の回転検出装置は、支持部と、相対的に見て前記支持部に対して回転する回転部とを有する構造体に設けられ、前記支持部に対する前記回転部の回転を検出する回転検出装置であって、前記支持部に固定され、前記回転部の回転軸と直交する平面と平行な一の面を有する基板と、前記回転部に固定され、前記回転軸を中心として前記回転部と共に回転し、前記回転軸の周囲に磁界を形成する磁界形成部と、前記基板の前記一の面上に固定され、前記磁界形成部の回転軌跡の外周側に周方向に互いに等しい角度間隔をもって配置され、前記磁界形成部により形成された磁界を検出する複数の磁界検出部と、前記基板の前記一の面上に固定され、前記複数の磁界検出部に一対一に対応するように前記回転軌跡の外周側に配置され、前記磁界形成部により形成された磁界の磁束を制御する複数のヨークとを備え、前記磁界検出部は、前記回転軌跡の接線と平行な方向に伸長した磁性線材と、前記磁性線材の外周側に設けられたコイルと、前記磁性線材および前記コイルを保持するボビンとを備え、前記各磁界検出部につき、前記回転軸の伸長方向を上下方向とし、前記磁性線材の伸長方向を左右方向とし、前記回転軸および前記磁性線材の双方と直交する直線の伸長方向を前後方向とし、前記基板の前記一の面が向いている方向を上とし、前記前後方向において前記回転軸に近づく方向を前とし、前記各磁界検出部の左および右を前記各磁界検出部をその前方から見たときを基準に定めることとすると、前記ボビンは左右方向に伸長した柱状に形成され、前記ボビンの内側には前記磁性線材が収容された線材収容部が形成され、前記ボビンの左右方向中央部であって前記線材収容部の外周側には前記コイルの導線が巻回された導線巻回部が形成され、前記各ヨークは、前記磁界検出部の左部を部分的に覆う左ヨーク片、および前記磁界検出部の右部を部分的に覆う右ヨーク片を備え、前記左ヨーク片は、前記ボビンの左部であって前記導線巻回部よりも左側の部分の前方から前記コイルの前方に至るまで直線状に伸長した左前板部を有し、前記左前板部は、当該左前板部の左端よりも当該左前板部の右端の方が後方に位置するように前記磁性線材の伸長方向に対して傾斜し、前記右ヨーク片は、前記ボビンの右部であって前記導線巻回部よりも右側の部分の前方から前記コイルの前方に至るまで直線状に伸長した右前板部を有し、前記右前板部は、当該右前板部の右端よりも当該右前板部の左端の方が後方に位置するように前記磁性線材の伸長方向に対して傾斜し、前記左前板部の右端と前記右前板部の左端とは前記コイルの左右方向中央部の前方において間隙を介して互いに対向している。
【0010】
また、本発明の回転検出装置において、前記左ヨーク片は前記ボビンを当該ボビンの左方から覆う左板部を有し、前記左板部は、当該左板部の後端が当該左板部の前端よりも左方に位置するように、前記回転軸および前記磁性線材の双方と直交する直線に対して傾斜し、前記右ヨーク片は前記ボビンを当該ボビンの右方から覆う右板部を有し、前記右板部は、当該右板部の後端が当該右板部の前端よりも右方に位置するように、前記回転軸および前記磁性線材の双方と直交する直線に対して傾斜していることとしてもよい。この場合、前記左板部は、当該左板部の後端が当該左板部の前端よりも左方に位置するように、前記回転軸および前記磁性線材の双方と直交する直線に対して前記角度間隔の2分の1の角度傾斜し、前記右板部は、当該右板部の後端が当該右板部の前端よりも右方に位置するように、前記回転軸および前記磁性線材の双方と直交する直線に対して前記角度間隔の2分の1の角度傾斜していることしてもよい。さらに、前記左板部は、前記ボビンにおいて前記前後方向中央よりも前側の部分のみを当該ボビンの左方から覆い、前記右板部は、前記ボビンにおいて前記前後方向中央よりも前側の部分のみを当該ボビンの右方から覆っていることとしてもよい。
【0011】
また、本発明の回転検出装置において、前記複数の磁界検出部および前記複数のヨークはそれぞれ一対一に対応するように前記基板の前記一の面上において前記回転軸を中心とした円弧上に配置され、前記複数の磁界検出部の上方から前記一の面を見たとき、前記複数の磁界検出部のうち最も時計回り方向側に配置された磁界検出部の時計回り方向側には前記左ヨーク片と同一の構成を有する第1のダミーヨーク片が配置され、前記複数の磁界検出部のうち最も反時計回り方向側に配置された磁界検出部の反時計回り方向側には前記右ヨーク片と同一の構成を有する第2のダミーヨーク片が配置され、前記一の面には、前記第1のダミーヨーク片に対応する磁界検出部も前記第2のダミーヨーク片に対応する磁界検出部も存在しない構成としてもよい。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、ヨークを備えながらも回転検出装置の小型化を図ることができ、かつ回転の検出精度を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の実施形態の回転検出装置等を示す斜視図である。
図2】本発明の実施形態の回転検出装置を図1中の上方から見た状態を示す説明図である。
図3】本発明の実施形態の回転検出装置を図2中の切断線III-IIIに沿って切断し、その断面を図2中の下方から見た状態を示す断面図である。
図4】本発明の実施形態の回転検出装置における磁気センサを示す説明図である。
図5図4中の磁気センサからコイルを取り除いた状態を示す説明図である。
図6】本発明の実施形態の回転検出装置におけるヨークを示す斜視図である。
図7】本発明の実施形態の回転検出装置における磁気センサおよびヨークを上方から見た状態を示す説明図である。
図8】本発明の実施形態の回転検出装置における磁気センサおよびヨークを前方から見た状態を示す説明図である。
図9】本発明の実施形態の回転検出装置における磁気センサの左部および左ヨーク片を上方から見た状態を示す説明図である。
図10】本発明の実施形態の回転検出装置におけるヨークの形状の詳細を説明するために、磁石、磁気センサおよびヨークを上方から見た状態を示す説明図である。
図11】本発明の実施形態の回転検出装置における磁気センサの左部および左ヨーク片を前方から見た状態を示す説明図である。
図12】本発明の実施形態の回転検出装置における磁気センサの左部および左ヨーク片を上方から見た状態を示す説明図である。
図13】本発明の実施形態の回転検出装置におけるヨークにより制御された磁束の流れを示す説明図である。
図14】本発明の実施形態の回転検出装置における左ヨーク片の左上板部および左板部並びに右ヨーク片の右上板部および右板部により制御された磁束の流れを示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
(回転検出装置)
図1は本発明の実施形態の回転検出装置1を回転シャフト83と共に示している。図2は回転検出装置1を図1中の上方から見た状態を示している。図3は回転検出装置1を図2中の切断線III-IIIに沿って切断し、その断面を図2中の下方から見た状態を示している。
【0015】
回転検出装置1は、大バルクハウゼン効果を利用して物体の回転を検出する装置である。本実施形態では、回転検出装置1をモータ81に適用した場合を例にあげる。図3に示すように、モータ81はモータ本体82および回転シャフト83を備えている。回転シャフト83はモータ本体82に対して回転する。モータ本体82は、回転シャフト83を回転させるための機構、およびその機構を収容する筐体等を有し、回転シャフト83を回転可能に支持している。回転検出装置1はモータ81に設けられ、回転シャフト83の回転を検出する。なお、モータ81は構造体の具体例であり、モータ本体82は支持部の具体例であり、回転シャフト83は回転部の具体例である。
【0016】
回転検出装置1は、図1に示すように、基板2、磁界形成部としての磁石3、複数の磁界検出部としての3つの磁気センサ11、3つのヨーク30、および2つのダミーヨーク片51、52を備えている。
【0017】
基板2は、円板状に形成され、図3に示すように、固定ブラケット84を介してモータ本体82の筐体に固定されている。基板2の中央には挿通穴2Aが形成され、挿通穴2Aには回転シャフト83が挿入されている。挿通穴2Aの直径は回転シャフト83の直径よりも大きく、基板2は回転シャフト83から離れている。また、基板2は各磁気センサ11、各ヨーク30および各ダミーヨーク片51、52が載置される載置面2Bを有している。基板2は、載置面2Bが回転シャフト83の回転軸Aと直交する平面と平行となるように配置されている。なお、載置面2Bは一の面の具体例である。
【0018】
磁石3は、例えばフェライト等の磁性材料により、リング状に形成されている。磁石3は、その内周側に回転シャフト83が挿入されることにより、回転シャフト83の外周側に配置されている。磁石3は、回転シャフト83に固定され、回転シャフト83と共に回転する。リング状に形成された磁石3の中心は回転軸A上に位置している。また、磁石3は基板2の載置面2Bの上方に位置している。すなわち、磁石3は、回転シャフト83において、基板2の挿通穴2Aを通過して基板2の載置面2Bの上方に突出した部分に固定されている。
【0019】
また、磁石3は、図2に示すように、N極、S極、N極、S極の4つの磁極が磁石3の外周側部分に周方向に等しい角度間隔、具体的には90度の間隔を置いて配置されるように着磁されている。また、磁石3において、これら4つの磁極は、周方向に互いに隣り合う磁極が互いに異なるように配置されている。回転シャフト83と共に磁石3が回転したとき、磁石3の4つの磁極が回転することにより、回転軸Aの周囲に回転磁界が形成される。
【0020】
3つの磁気センサ11は、それぞれ互いに同一の構成および形状を有しており、磁石3の回転軌跡Kの外周側に、周方向に互いに等しい角度間隔、例えば60度の間隔をもって配置されている。各磁気センサ11は、後述するように磁性線材12を有しており、各磁気センサ11は、磁性線材12の伸長方向が回転軸Aと直交する方向(載置面2Bと平行な方向)となるように配置されている。また、各磁気センサ11は、図2に示すように、磁性線材12の伸長方向の中央部が、回転軸Aを中心とする、磁石3の回転軌跡Kの半径よりも大きい半径を有する円弧C1に接するように配置されている。また、3つの磁気センサ11は、円弧C1上において180度の角度範囲内に配置されており、これにより、3つの磁気センサ11は基板2の載置面2Bの半分の領域内に配置されている。各磁気センサ11は基板2の載置面2B上に固定されている。3つの磁気センサ11は磁石3により形成された回転磁界を検出する。各磁気センサ11については、後にさらに説明する。
【0021】
3つのヨーク30は、それぞれ互いに同一の構成および形状を有しており、3つの磁気センサ11に一対一に対応するように、磁石3の回転軌跡Kの外周側に配置されている。各ヨーク30は基板2の載置面2B上に固定されている。また、各ヨーク30は左ヨーク片31および右ヨーク片41を備えている。各ヨーク30は、磁石3により形成された回転磁界の磁束を制御する。各ヨーク30については、後にさらに説明する。また、各ダミーヨーク片51についても、後に説明する。
【0022】
また、基板2の外周側には外壁55が設けられている。磁石3、各磁気センサ11、各ヨーク30および各ダミーヨーク片51、52は外壁55の内側に配置されている。外壁55は、例えば金属材料により形成されている。外壁55は、外部の物体が磁石3、各磁気センサ11、各ヨーク30または各ダミーヨーク片51、52に接触することを防止する機能、および磁石3により形成された磁界が外部に漏洩することを抑制する機能を有している。
【0023】
(磁気センサ)
図4は磁気センサ11を上方から見た状態を示している。図5図4中の磁気センサ11からコイル13を取り除いた状態を示している。ここで、各磁気センサ11および各ヨーク30について説明するに当たり、説明の便宜上、方向を次のように定めることとする。すなわち、回転軸Aの伸長方向を上下方向とし、基板2の載置面2Bが向いている方向を上とする。また、磁性線材12の伸長方向を左右方向とする。また、回転軸Aおよび磁性線材12の双方と直交する直線の伸長方向を前後方向とし、前後方向において回転軸Aに近づく方向を前とする。また、磁気センサ11の左および右は、磁気センサ11をその前方から見たときを基準に定めることとする。また、ヨーク30の左および右についても、ヨーク30をその前方から見たときを基準に定めることとする。図4図14中の右下の矢印は、以上のように定めた上(Ud)、下(Dd)、前(Fd)、後(Bd)、左(Ld)および右(Rd)を示している。
【0024】
各磁気センサ11は、図4に示すように、磁性線材12、コイル13およびボビン14を備えている。
【0025】
磁性線材12は大バルクハウゼン効果を生ずる磁性線材であり、複合磁気ワイヤと呼ばれるものである。磁性線材12は、例えば、鉄およびコバルトを含む半硬質磁性材料により形成され、直径が例えばおよそ0.1mm~1mmで、長さが例えばおよそ10mm~30mmの線材である。磁性線材12は、例えば、上記半硬質磁性材料を線引きし、方向を変えながら複数回捻ることにより形成されている。磁性線材12は、磁化が容易な方向が当該磁性線材12の中心軸Bの方向である一軸異方性を有している。また、磁性線材12において、その外周側部分よりも中心側部分の方が保磁力が大きい。磁性線材12は外部磁界の方向の変化に応じて磁性線材12(その外周側部分)の磁化方向が急反転する性質を有している。磁性線材12は、その伸長方向、すなわち中心軸Bの方向が、磁石3の回転軌跡Kの接線と平行な方向となるように配置されている。具体的には、磁性線材12は、その伸長方向の中央部が上記円弧C1に接するように配置されている。
【0026】
コイル13は磁性線材12の外周側に設けられている。コイル13は、ボビン14の導線巻回部18に、例えばエナメル線等の導線を巻回することにより形成されている。
【0027】
ボビン14は磁性線材12およびコイル13を保持する部材であり、例えば樹脂等の非磁性材料により形成されている。ボビン14は、図5に示すように、全体的に見て、磁性線材12の伸長方向、すなわち左右方向に伸長した柱状に形成されている。また、ボビン14の内側には、磁性線材12を収容する線材収容部15が形成されている。本実施形態において、線材収容部15は、ボビン14の前後方向中央および上下方向中央の部分を、ボビン14の左端から右端まで左右方向に伸長し、上方に開口した溝である。磁性線材12は、この線材収容部15内に配置されている。なお、線材収容部を、ボビン14の内部を左右方向に伸長する穴としてもよい。
【0028】
また、ボビン14の左端側部分および右端側部分のそれぞれには、接続部材25を保持する接続部材保持部16、17が形成されている。また、ボビン14の左右方向中央部、すなわち2つの接続部材保持部16、17の間の部分であって、線材収容部15の外周側には、コイル13の導線を巻回する導線巻回部18が形成されている。導線巻回部18は、コイル13の導線を幾重にも重ねて巻回することができるように、各接続部材保持部16、17よりも小径となっている。
【0029】
また、ボビン14の左端面、すなわち左側の接続部材保持部16の左端面における前後方向中央部には、左方に突出した突出部19が形成されている。同様に、ボビン14の右端面、すなわち右側の接続部材保持部17の右端面における前後方向中央部には、右方に突出した突出部20が形成されている。また、線材収容部15の左端側は左側の突出部19の左端まで伸長し、線材収容部15の右端側は右側の突出部20の右端まで伸長している。また、磁性線材12の左端側は左側の突出部19の左端に非常に近い位置まで伸長し、磁性線材12の右端側は右側の突出部20の右端に非常に近い位置まで伸長している。
【0030】
また、左側の接続部材保持部16の左端面における前部および後部には傾斜面21、22がそれぞれ形成されている。左側の接続部材保持部16の左端面における前部に形成された傾斜面21は、当該傾斜面21の後端が当該傾斜面21の前端よりも左方に位置するように傾斜している。また、左側の接続部材保持部16の左端面における後部に形成された傾斜面22は、当該傾斜面22の前端が当該傾斜面22の後端よりも左方に位置するように傾斜している。また、右側の接続部材保持部17の右端面には、傾斜面23、24が傾斜面21、22と左右対称となるように形成されている。
【0031】
また、各接続部材保持部16、17には接続部材25が保持されている。接続部材25は、例えば金属等の導電材料によりL字状に形成された部材であり、一端側が下方に伸長し、他端側が前方に伸長している。接続部材25は、磁気センサ11を基板2に固定する機能、コイル13を基板2に形成された回路に接続する機能、およびコイル13の導線の端部を取り付ける機能を有している。
【0032】
磁石3が回転シャフト83と共に回転し、磁石3により回転磁界が形成されると、この回転磁界により、各磁気センサ11が有する磁性線材12の磁化方向が急反転し、電磁誘導によりコイル13からパルスが出力される。具体的に説明すると、1つの磁気センサ11において、磁性線材12の磁化方向が左方向である状態で、磁石3のN極が当該磁気センサ11の左端部に接近し、かつ磁石3のS極が当該磁気センサ11の右端部に接近したとき、磁性線材12の磁化方向が左方向から右方向に急反転し、コイル13から例えば正のパルスが出力される。その後、磁石3のS極が当該磁気センサ11の左端部に接近し、かつ磁石3のN極が当該磁気センサ11の右端部に接近したとき、磁性線材12の磁化方向が右方向から左方向に急反転し、コイル13から例えば負のパルスが出力される。これらのパルスに基づいて回転シャフト83の回転を検出することができる。このようなパルスを用いた回転の検出方法として、上記特許文献1に記載された方法を用いることができる。
【0033】
(ヨーク)
図6はヨーク30を右上前方から見た状態を示している。図7は磁気センサ11およびヨーク30を上方から見た状態を示している。図8は磁気センサ11およびヨーク30を前方から見た状態を示している。
【0034】
各ヨーク30は、図6に示すように、左ヨーク片31および右ヨーク片41を備えている。左ヨーク片31および右ヨーク片41はそれぞれ、鉄等の軟磁性材料により形成されている。左ヨーク片31および右ヨーク片41はそれぞれ、互いに左右対称の形状を有している。図7および図8に示すように、左ヨーク片31は磁気センサ11の左部を部分的に覆っている。左ヨーク片31は、左前板部32、左板部33、左上板部34および連結部35、36を有している。また、右ヨーク片41は磁気センサ11の右部を部分的に覆っている。右ヨーク片41は、右前板部42、右板部43、右上板部44および連結部45、46を有している。
【0035】
(ヨークの左前板部・右前板部)
図9は磁気センサ11の左部および左ヨーク片31を上方から見た状態を示している。図10は、左ヨーク片31および右ヨーク片41の形状の詳細を説明するために、磁石3、磁気センサ11およびヨーク30を上方から見た状態を示している。なお、図9および図10では、左ヨーク片31を図8中の切断線IX-IXで切断し、その断面を図8中の上方から見た状態を示している。また、図10では、右ヨーク片41も、左ヨーク片31と同様に一部切断されている。
【0036】
図9に示すように、左ヨーク片31の左前板部32は、ボビン14の左側の接続部材保持部16およびコイル13の左部をそれらの前方から覆っている。左前板部32は、基板2の載置面2Bと平行であって磁性線材12の中心軸B(磁性線材12の伸長方向)に対して傾斜した方向、かつ基板2の載置面2Bに対して垂直な方向に拡がる平板状に形成されている。また、左前板部32は、左側の接続部材保持部16の前方からコイル13の左部の前方に至るまで直線状に伸長している。また、左前板部32の右端はコイル13の左右方向中央の前方に非常に接近した位置に達している。
【0037】
また、左前板部32は、当該左前板部32の左端よりも当該左前板部32の右端の方が後方に位置するように、磁性線材12の中心軸Bに対して傾斜している。左前板部32がこのように傾斜しているので、左前板部32の右端と磁性線材12の中心軸Bとの距離D1は、左前板部32の左端と磁性線材12の中心軸Bとの距離D2よりも小さい。すなわち、左前板部32の右端は、左前板部32の左端と比較して磁性線材12の中心軸Bに接近している。その結果、左前板部32は、右方に行くに従ってコイル13の前側の外面に接近している。
【0038】
また、右ヨーク片41の右前板部42は、ボビン14の右側の接続部材保持部17およびコイル13の右部をそれらの前方から覆っている。右前板部42は、左ヨーク片31の左前板部32と左右対称の形状を有している。すなわち、図10を見るとわかる通り、右前板部42は、基板2の載置面2Bと平行であって磁性線材12の中心軸Bに対して傾斜した方向、かつ基板2の載置面2Bに対して垂直な方向に拡がる平板状に形成されている。また、右前板部42は、右側の接続部材保持部17の前方からコイル13の右部の前方に至るまで直線状に伸長している。また、右前板部42の左端はコイル13の左右方向中央の前方に非常に接近した位置に達している。
【0039】
また、右前板部42は、当該右前板部42の右端よりも当該右前板部42の左端の方が後方に位置するように、磁性線材12の中心軸Bに対して傾斜している。右前板部42がこのように傾斜しているので、右前板部42の左端は、右前板部42の右端と比較して磁性線材12の中心軸Bに接近している。その結果、右前板部42は、左方に行くに従ってコイル13の前側の外面に接近している。
【0040】
また、図10に示すように、左ヨーク片31の左前板部32の磁性線材12の中心軸Bに対する傾斜角、および右ヨーク片41の右前板部42の磁性線材12の中心軸Bに対する傾斜角は、左前板部32および右前板部42が、回転軸Aを中心とした円弧C2に概ね沿うように設定されている。その結果、左前板部32の左端と磁石3の外周面との間の距離、左前板部32の右端と磁石3の外周面との間の距離、右前板部42の右端と磁石3の外周面との間の距離、および右前板部42の左端と磁石3の外周面との間の距離がそれぞれ互いに略等しい。
【0041】
また、図7に示すように、左前板部32の右端と右前板部42の左端とは、コイル13の左右方向中央部の前方において間隙Gを介して互いに対向している。左前板部32の右端と右前板部42の左端とは互いに接近しているが、互いに接触してはいない。
【0042】
(ヨークの左板部・右板部)
図9に示すように、左ヨーク片31の左板部33は、ボビン14の左側の接続部材保持部16の左端面における前部の傾斜面21を左方から覆っている。図10に示すように、左板部33は、回転軸Aおよび磁性線材12の中心軸Bの双方と直交する直線L1に対して傾斜した方向、かつ基板2の載置面2Bに対して垂直な方向に拡がる平板状に形成されている。また、左板部33は、当該左板部33の後端が当該左板部33の前端よりも左方に位置するように、回転軸Aおよび磁性線材12の中心軸Bの双方と直交する直線L1に対して傾斜している。また、左板部33の直線L1に対する傾斜角Qは、3つの磁気センサ11の配置の角度間隔Pの2分の1に設定されている。本実施形態において、3つの磁気センサ11の配置の角度間隔Pは60度であるので、左板部33の直線L1に対する傾斜角Qは30度に設定されている。また、ボビン14の左側の接続部材保持部16の左端面における前部の傾斜面21の直線L1に対する傾斜角も、3つの磁気センサ11の配置の角度間隔Pの2分の1(30度)に設定されている。これにより、左板部33と当該傾斜面21とは互いに平行である。なお、図10中の直線L2は、直線L1に対して反時計回り方向に30度傾斜した直線である。
【0043】
また、左板部33は、図9に示すように、ボビン14の左側の接続部材保持部16の左端面における前部の傾斜面21を覆っているが、突出部19および左側の接続部材保持部16の左端面における後部の傾斜面22は覆っていない。すなわち、左板部33の後端は突出部19の手前に位置している。
【0044】
また、右ヨーク片41の右板部43は、ボビン14の右側の接続部材保持部17の右端面における前部の傾斜面23を右方から覆っている。右板部43は、左ヨーク片31の左板部33と左右対称の形状を有している。図10に示すように、右板部43は、直線L1に対して傾斜した方向、かつ基板2の載置面2Bに対して垂直な方向に拡がる平板状に形成されている。また、右板部43は、当該右板部43の後端が当該右板部43の前端よりも右方に位置するように直線L1に対して傾斜している。また、右板部43の直線L1に対する傾斜角Rは、3つの磁気センサ11の配置の角度間隔Pの2分の1に設定されている。本実施形態において、右板部43の直線L1に対する傾斜角Rは30度に設定されている。また、ボビン14の右側の接続部材保持部17の右端面における前部の傾斜面23の直線L1に対する傾斜角も、3つの磁気センサ11の配置の角度間隔Pの2分の1(30度)に設定されている。これにより、右板部43と当該傾斜面23とは互いに平行である。なお、図10中の直線L3は、直線L1に対して時計回り方向に30度傾斜した直線である。
【0045】
また、右板部43は、ボビン14の右側の接続部材保持部17の右端面における前部の傾斜面23を覆っているが、突出部20および右側の接続部材保持部17の右端面における後部の傾斜面24は覆っていない。すなわち、右板部43の後端は突出部20の手前に位置している。
【0046】
(ヨークの左上板部・右上板部)
図11は磁気センサ11の左部および左ヨーク片31を前方から見た状態を示している。なお、図11では、左ヨーク片31を図7中の切断線XI-XIで切断し、その断面を図11中の下方から見た状態を示している。図12は磁気センサ11の左部および左ヨーク片31を上方から見た状態を示している。
【0047】
図11および図12に示すように、左ヨーク片31の左上板部34は、ボビン14の左側の接続部材保持部16をその上方から覆っている。左上板部34は、基板2の載置面2Bと平行な方向に拡がる平板状に形成されている。また、左上板部34は、磁性線材12においてコイル13から左方に出た部分を広く覆っている。具体的には、左上板部34は、磁性線材12の当該部分を前後方向に跨いで拡がっている。
【0048】
このように、左上板部34はボビン14の左側の接続部材保持部16をその上方から広く覆っているが、左上板部34が覆っている範囲は、左側の接続部材保持部16の上方にとどまり、コイル13の上方には至っていない。すなわち、左上板部34はコイル13の上方の領域には進入していない。コイル13の上方はヨーク30により覆われていない。
【0049】
また、図11に示すように、左上板部34は、当該左上板部34と磁性線材12との間の距離D3が小さくなるように、ボビン14の左側の接続部材保持部16の上面に非常に接近している。具体的には、左上板部34の下面の上下方向における位置が、コイル13の外面の最上部の上下方向における位置以下となっている。
【0050】
また、図12に示すように、左上板部34の右面34Aは、磁性線材12の中心軸Bに対して垂直であり、磁性線材12の上方を前後方向に跨ぐように伸長している。
【0051】
また、右ヨーク片41の右上板部44は、ボビン14の右側の接続部材保持部17をその上方から覆っている。右上板部44は、左ヨーク片31の左上板部34と左右対称の形状を有している。右上板部44は、基板2の載置面2Bと平行な方向に拡がる平板状に形成され、磁性線材12においてコイル13から右方に出た部分を広く覆っている。しかしながら、右上板部44が覆っている範囲は、右側の接続部材保持部17の上方にとどまり、コイル13の上方には至っていない。また、右上板部44と磁性線材12との間の距離が小さくなるように、右上板部44の上下方向の位置が設定されている。具体的には、右上板部44の下面の上下方向における位置が、コイル13の外面の最上部の上下方向における位置以下となっている。さらに、右上板部44の左面44Aは、磁性線材12の中心軸Bに対して垂直であり、磁性線材12の上方を前後方向に跨ぐように伸長している。
【0052】
(ヨークにおける他の構成)
図6に示すように、左ヨーク片31において、連結部35は左前板部32と左板部33とを連結している。また、連結部36は左板部33と左上板部34とを連結している。また、右ヨーク片41において、連結部45は右前板部42と右板部43とを連結している。また、連結部46は右板部43と右上板部44とを連結している。連結部35、36、45、46はいずれも緩やかに湾曲したR形状に形成されている。
【0053】
また、図8に示すように、左ヨーク片31において、左前板部32の右端側の下部には磁性線材12に作用する磁界の強さを調節するための切欠き37が形成されている。また、左前板部32の左端側から連結部35にかけての部分の下部には、接続部材25を通すための切欠き38が形成されている。同様に、右ヨーク片41にも切欠き47、48が形成されている。
【0054】
また、図6に示すように、左ヨーク片31において、左前板部32の下部および左板部33の下部には、左ヨーク片31を基板2に固定するための支持片39が設けられている。同様に、右ヨーク片41にも支持片49が設けられている。左ヨーク片31および右ヨーク片41は各支持片39、49を基板2に形成された孔に挿入し、例えば半田付けをすることにより、基板2に固定される。
【0055】
(ヨークの磁気的な作用)
図13は、ヨーク30により制御された磁束の流れを模式的に示している。図14は、左ヨーク片31の左上板部34および左板部33並びに右ヨーク片41の右上板部44および右板部43により制御された磁束の流れを模式的に示している。
【0056】
回転シャフト83と共に磁石3が回転し、磁石3のN極が1つの磁気センサ11の左端部に接近し、かつ磁石3のS極が当該磁気センサ11の右端部に接近したとき、当該磁気センサ11は、磁石3のN極およびS極により形成された磁界の中に置かれることとなる。このとき、磁石3のN極からS極に向かう磁束の経路は、図13および図14に示すように、当該磁気センサ11を部分的に覆っているヨーク30により制御される。これにより、磁束を当該磁気センサ11の磁性線材12に集中させることができる。
【0057】
詳細に見ると、左前板部32は、ボビン14の左側の接続部材保持部16の前方から、コイル13の左右方向中央の前方に非常に接近した位置まで伸長しており、また、右前板部42は、ボビン14の右側の接続部材保持部17の前方から、コイル13の左右方向中央の前方に非常に接近した位置まで伸長しており、左前板部32の右端と右前板部42の左端とは互いに小さな間隙Gを介して対向している。この構成により、磁束を、磁性線材12の左右方向の中央部に集中させることができる。
【0058】
また、左前板部32は、当該左前板部32の左端よりも当該左前板部32の右端の方が後方に位置するように、磁性線材12の中心軸Bに対して傾斜しており、その結果、左前板部32は、右方に行くに従って磁性線材12の左右方向中央部に接近している。同様に、右前板部42は、当該右前板部42の右端よりも当該右前板部42の左端の方が後方に位置するように、磁性線材12の中心軸Bに対して傾斜しており、その結果、右前板部42は、左方に行くに従って磁性線材12の左右方向中央部に接近している。この構成により、磁束が磁性線材12の左右方向の中央部に集中する度合いを高めることができる。
【0059】
また、左上板部34の右面34Aおよび右上板部44の左面44Aは、磁性線材12の中心軸Bに対して垂直であり、磁性線材12の上方を前後方向に跨ぐように伸長している。磁束は、ヨークの面から当該面に対して垂直な方向に出る性質、およびヨークの面に当該面に対して垂直な方向に入る性質を有している。したがって、磁石3により形成された磁界における一部の磁束は、左上板部34の右面34Aから当該右面34Aに対して垂直な方向に出て、右上板部44の左面44Aに当該左面44Aに対して垂直な方向に入る。これにより、磁性線材12の中心軸Bの方向に沿って流れる磁束を増加させることができる。さらに、左上板部34の右面34Aおよび右上板部44の左面44Aは、磁性線材12の上方を前後方向に跨ぐように伸長しているので、磁性線材12の中心軸Bの方向に沿って流れる磁束を一層増加させることができる。
【0060】
また、左板部33は磁性線材12の左端部に接近しており、右板部43は磁性線材12の右端側に接近しているので、左板部33により集められ、右板部43に向かう磁束を、磁性線材12に集中させることができ、磁性線材12の中心軸Bの方向に沿って流れる磁束を増加させることができる。
【0061】
なお、回転シャフト83と共に磁石3が回転し、磁石3のS極が当該磁気センサ11の左端部に接近し、かつ磁石3のN極が当該磁気センサ11の右端部に接近したときには、当該磁気センサ11は、磁石3のN極が当該磁気センサ11の左端部に接近し、かつ磁石3のS極が当該磁気センサ11の右端部に接近したときと逆の方向の磁界の中に置かれることとなる。この場合には、磁束は図13および図14に示した経路を逆の方向に流れることとなる。
【0062】
このように、磁石3により形成される磁界の磁束を、ヨーク30により磁性線材12に集中させ、磁束を磁性線材12の中心軸Bの方向に沿うように流すことによって、磁性線材12に作用する磁界の強度を高めることができる。その結果、磁性線材12の磁化方向の反転によりコイル13から出力されるパルスの波高(電圧)を大きくすることができ、また、そのパルスをより鋭いものとすることができる。したがって、回転シャフト83の回転の検出精度を向上させることができる。
【0063】
また、磁石3により形成される磁界の磁束を、ヨーク30の左前板部32および右前板部42により磁性線材12の左右方向中央部に集中させることによって、磁性線材12の左右方向中央部に作用する磁界の強度を高めることができる。これにより、磁性線材12の両端側部分に作用する磁界の強度と、磁性線材12の左右方向中央部分に作用する磁界の強度とを均等化することができる。その結果、磁性線材12の磁化方向の反転によりコイル13から出力されるパルスの波高を一層大きくすることができ、また、そのパルスを一層鋭いものとすることができる。したがって、回転シャフト83の回転の検出精度を一層向上させることができる。
【0064】
(ダミーヨーク片)
図2に示すように、基板2の載置面2Bを上方から見たとき、2つのダミーヨーク片51、52のうち、一方のダミーヨーク片51は、ヨーク30の左ヨーク片31と同一の構成および形状を有している。ダミーヨーク片51は、3つの磁気センサ11のうち、最も時計回り方向側に配置された磁気センサ11の時計回り方向側に配置されている。また、他方のダミーヨーク片52は、ヨーク30の右ヨーク片41と同一の構成および形状を有している。ダミーヨーク片52は、3つの磁気センサ11のうち、最も反時計回り方向側に配置された磁気センサ11の反時計回り方向側に配置されている。また、基板2の載置面2B上には、ダミーヨーク片51に対応する磁気センサも、ダミーヨーク片52に対応する磁気センサも存在しない。
【0065】
詳細に説明すると、3つの磁気センサ11は、基板2の載置面2B上において、回転軸Aを中心とした円弧C1上に60度の間隔をもって配置されている。また、3つの磁気センサ11に一対一に対応している3つのヨーク30も、図2を見るとわかる通り、基板2の載置面2B上において円弧C1上に60度の間隔をもって配置されている。また、各ヨーク30における左ヨーク片31と右ヨーク片41との配置間隔は、3つのヨーク30間においてそれぞれ互いに等しいので、基板2の載置面2B上にある3つの左ヨーク片31は、円弧C1上に60度の間隔をもって配置されており、また、基板2の載置面2B上にある3つの右ヨーク片41も、円弧C1上に60度の間隔をもって配置されている。
【0066】
左ヨーク片31と同一の構成および形状を有しているダミーヨーク片51は、基板2の載置面2B上において円弧C1上に配置され、かつ3つの左ヨーク片31のうち、最も時計回り方向側に配置された左ヨーク片31の時計回り方向側に当該左ヨーク片31と60度の間隔をもって配置されている。すなわち、3つの左ヨーク片31およびダミーヨーク片51は同一の円弧C1上に等角度間隔に配置されている。
【0067】
また、右ヨーク片41と同一の構成および形状を有しているダミーヨーク片52は、基板2の載置面2B上において円弧C1上に配置され、かつ3つの右ヨーク片41のうち、最も反時計回り方向側に配置された右ヨーク片41の反時計回り方向側に、当該右ヨーク片41と60度の間隔をもって配置されている。すなわち、3つの右ヨーク片41およびダミーヨーク片52は同一の円弧C1上に等角度間隔に配置されている。
【0068】
このようにダミーヨーク片51、52を載置面2B上に配置したことにより、3つの磁気センサ11のうち、中間の磁気センサ11の反時計回り方向側には、中間のヨーク30の左ヨーク片31と、最も反時計回り方向側のヨーク30の右ヨーク片41とが隣接して並び、この中間の磁気センサ11の時計回り方向側には、中間のヨーク30の右ヨーク片41と、最も時計回り方向側のヨーク30の左ヨーク片31とが隣接して並ぶこととなる。また、3つの磁気センサ11のうち、最も時計回り方向側の磁気センサ11の反時計回り方向側には、最も時計回り方向側のヨーク30の左ヨーク片31と、中間のヨーク30の右ヨーク片41とが隣接して並び、この最も時計回り方向側の磁気センサ11の時計回り方向側には、最も時計回り方向側のヨーク30の右ヨーク片41と、ダミーヨーク片51とが隣接して並ぶこととなる。また、3つの磁気センサ11のうち、最も反時計回り方向側の磁気センサ11の反時計回り方向側には、最も反時計回り方向側のヨーク30の左ヨーク片31と、ダミーヨーク片52とが隣接して並び、この最も反時計回り方向側の磁気センサ11の時計回り方向側には、最も反時計回り方向側のヨーク30の右ヨーク片41と、中間のヨーク30の左ヨーク片31とが隣接して並ぶこととなる。以上の結果、各磁気センサ11の周囲に配置されたヨーク片の構成が3つの磁気センサ11間において同一となる。したがって、ヨーク片によって各磁気センサ11の周囲に形成される磁気回路が、3つの磁気センサ11間において同一となる。これにより、3つの磁気センサ11が回転磁化の中に置かれたとき、各磁気センサ11の磁性線材12に作用する回転磁界の強度を、3つの磁気センサ11間において均等化することができる。よって、回転シャフト83の回転の検出精度を向上させることができる。
【0069】
以上説明した通り、本発明の実施形態の回転検出装置1において、各ヨーク30の左ヨーク片31は左前板部32を有し、左前板部32は、ボビン14の左側の接続部材保持部16の前方からコイル13の左部の前方に至るまで直線状に伸長し、かつ当該左前板部32の左端よりも当該左前板部32の右端の方が後方に位置するように磁性線材12の中心軸Bに対して傾斜している。また、各ヨーク30の右ヨーク片41は右前板部42を有し、右前板部42は、ボビン14の右側の接続部材保持部17の前方からコイル13の右部の前方に至るまで直線状に伸長し、かつ当該右前板部42の右端よりも当該右前板部42の左端の方が後方に位置するように磁性線材12の中心軸Bに対して傾斜している。この構成により、磁石3のN極およびS極が例えば図13に示すように磁気センサ11に接近したときに、上述したように、磁石3により形成された磁界の磁束を各磁気センサ11の磁性線材12の左右方向の中央部に集中させることができ、回転シャフト83の回転の検出精度を向上させることができる。
【0070】
また、この構成により、左前板部32および右前板部42を、図10に示すように、回転軸Aを中心とした円弧C2に概ね沿うように配置することができる。これにより、左前板部32の左端と磁石3の外周面との間の距離、左前板部32の右端と磁石3の外周面との間の距離、右前板部42の右端と磁石3の外周面との間の距離、および右前板部42の左端と磁石3の外周面との間の距離をそれぞれ互いに略等しくすることができる。その結果、磁石3と各磁気センサ11との間隔を縮めて回転検出装置1の小型化を図ることができると共に、回転シャフト83の回転の誤検出を抑制することができる。具体的に説明すると、仮に、左前板部32が磁性線材12の中心軸Bと平行に伸長しているとすると、左前板部32の右端と磁石3の外周面との間の距離が、左前板部32の左端と磁石3の外周面との間の距離よりも小さくなる。この場合、例えば、磁石3のN極が左前板部32の左端に接近したとき(すなわち、磁石3のN極が磁気センサ11の左端部に接近したとき)だけでなく、磁石3のN極が左前板部32の右端に接近したとき(すなわち、磁石3のN極が磁気センサ11の左右方向中央付近に接近したとき)にも、磁石3により形成された磁界における一部の磁束が左ヨーク片31の左前板部32により制御されて磁気センサ11の磁性線材12に集中してしまうことがある。この場合には、磁石3のN極が磁気センサ11の左端部に接近したときではなく、磁石3のN極が磁気センサ11の左右方向中央付近に接近したときに、当該磁気センサ11の磁性線材12の磁化方向が反転し、コイル13から誤ったタイミングでパルスが出力されることとなる。このようにパルスが誤ったタイミングで出力される現象は、磁石3と磁気センサ11との間隔が小さい場合に生じ易くなる。本実施形態においては、左前板部32が、当該左前板部32の左端よりも当該左前板部32の右端の方が後方に位置するように磁性線材12の中心軸Bに対して傾斜しているので、磁石3と磁気センサ11との間隔を縮めた場合でも、パルスが誤ったタイミングで出力される現象を抑制することができる。この点は、右前板部42についても同様である。
【0071】
また、本発明の実施形態の回転検出装置1において、各ヨーク30の左ヨーク片31は左板部33を有し、左板部33は、当該左板部33の後端が当該左板部33の前端よりも左方に位置するように、回転軸Aおよび磁性線材12の中心軸Bの双方と直交する直線L1に対して傾斜している。また、各ヨーク30の右ヨーク片41は右板部43を有し、右板部43は、当該右板部43の後端が当該右板部43の前端よりも右方に位置するように直線L1に対して傾斜している。この構成により、各磁気センサ11の磁性線材12の長さを長くすることができる。具体的に説明すると、左板部33を、当該左板部33の後端が当該左板部33の前端よりも左方に位置するように直線L1に対して傾斜させることにより、左板部33の後端側をボビン14の左端から離すことができる。その結果、左板部33の後端側とボビン14の左端との間に空間ができるので、ボビン14の左端に突出部19を設け、線材収容部15の左端側を突出部19まで延長させることができる。同様に、右板部43を、当該右板部43の後端が当該右板部43の前端よりも右方に位置するように直線L1に対して傾斜させることにより、右板部43の後端側をボビン14の右端から離すことができるので、ボビン14の右端に突出部20を設け、線材収容部15の右端側を突出部20まで延長させることができる。このように線材収容部15の両端を延長させることにより、線材収容部15の長さを長くすることができ、線材収容部15に収容することが可能な磁性線材12の最大長を長くすることができる。
【0072】
また、本発明の実施形態の回転検出装置1において、左板部33の直線L1に対する傾斜角Qは3つの磁気センサ11の配置の角度間隔Pの2分の1に設定され、また、右板部43の直線L1に対する傾斜角Rは3つの磁気センサ11の配置の角度間隔Pの2分の1に設定されている。この構成により、各磁気センサ11の磁性線材12の長さを長くしながらも、互いに隣り合う2つの磁気センサ11間の間隔を縮め、回転検出装置1を小型化することができる。具体的に説明すると、傾斜角Qおよび傾斜角Rをそれぞれ角度間隔Pの2分の1に設定することにより、図10に示すように、周方向において互いに隣り合う2つのヨーク30において、反時計回り方向側のヨーク30の右ヨーク片41の右板部43と、時計回り方向側のヨーク30の左ヨーク片31の左板部33とを互いに平行にすることができる。このように互いに隣り合う右板部43と左板部33とを互いに平行にすることで、これら右板部43と左板部33の間隔を縮めることができ、互いに隣り合う2つの磁気センサ11間の間隔を縮めることができる。すなわち、右板部43および左板部33を直線L1に対してそれぞれ傾斜させることで線材収容部15に収容可能な磁性線材12の最大長を長くしながらも、互いに隣り合う右板部43と左板部33とを互いに平行にすることで、互いに隣り合う2つの磁気センサ11間の間隔を縮めることができる。
【0073】
また、本発明の実施形態の回転検出装置1において、ボビン14の左側の接続部材保持部16の左端面における前部に傾斜面21が形成され、その傾斜面21の直線L1に対する傾斜角が3つの磁気センサ11の配置の角度間隔Pの2分の1に設定されている。これにより、左ヨーク片31の左板部33とボビン14の左側の接続部材保持部16の左端面における前部とを平行にすることができ、左板部33とボビン14の左側の接続部材保持部16の左端面における前部との間の距離を小さくすることができる。また、ボビン14の右側の接続部材保持部17の右端面における前部に傾斜面23が形成され、その傾斜面23の直線L1に対する傾斜角が3つの磁気センサ11の配置の角度間隔Pの2分の1に設定されている。これにより、右ヨーク片41の右板部43とボビン14の右側の接続部材保持部17の右端面における前部とを平行にすることができ、右板部43とボビン14の右側の接続部材保持部17の右端面における前部との間の距離を小さくすることができる。
【0074】
また、本発明の実施形態の回転検出装置1において、左板部33は、ボビン14の左側の接続部材保持部16の左端面における前部の傾斜面21のみを左方から覆い、右板部43は、ボビン14の右側の接続部材保持部17の右端面における前部の傾斜面23のみを右方から覆っている。この構成により、互いに隣り合う2つの磁気センサ11間の間隔を縮めながらも、各磁気センサ11の磁性線材12の長さを一層長くすることができる。具体的に説明すると、図9に示すように、左板部33の後端は突出部19の手前に位置している。その結果、突出部19を左方に大きく突出させることができ、突出部19の左右方向の長さを長くすることができる。そして、突出部19を左右方向に長くした分、線材収容部15の左端側を延長させることができる。同様に、右板部43の後端は突出部20の手前に位置している。その結果、突出部20を大きく右方に突出させることができ、突出部20の左右方向の長さを長くすることができ、突出部20を左右方向に長くした分、線材収容部15の右端側を延長させることができる。このように線材収容部15の両端を延長させることにより、線材収容部15に収容することが可能な磁性線材12の最大長を長くすることができる。また、左板部33の後端は突出部19の手前に位置し、右板部43の後端は突出部20の手前に位置しているので、周方向において互いに隣り合う2つの磁気センサ11において、反時計回り方向側の磁気センサ11のボビン14の突出部20の右端と、時計回り方向側の磁気センサ11のボビン14の突出部19の左端との間に、右板部43も左板部33も介在しない。それゆえ、これら2つの磁気センサ11の突出部20の右端と突出部19の左端とを互いに接近させることができ、よって、互いに隣り合う2つの磁気センサ11間の間隔を縮め、回転検出装置1を小型化することができる。
【0075】
また、本発明の実施形態の回転検出装置1において、各ヨーク30の左ヨーク片31は左上板部34を有し、左上板部34が覆っている範囲は、左側の接続部材保持部16の上方にとどまり、コイル13の上方には至っていない。また、各ヨーク30の右ヨーク片41は右上板部44を有し、右上板部44が覆っている範囲は、右側の接続部材保持部17の上方にとどまり、コイル13の上方には至っていない。すなわち、左上板部34および右上板部44はいずれもコイル13の上方の領域には進入しておらず、コイル13の上方はヨーク30により覆われていない。この構成により、コイル13の巻回量を増やすことができると共に、左上板部34および右上板部44を磁性線材12の左端部および右端部にそれぞれ接近させることができる。具体的に説明すると、コイル13の導線をボビン14の導線巻回部18に巻回する量を増やすと、コイル13の直径が大きくなる。仮に左上板部34または右上板部44がコイル13の上方を覆っているとすると、コイル13の導線の巻回量の増加により、コイル13の外面が左上板部34または右上板部44に接触するおそれがあるので、それを回避するために、コイル13の導線の巻回量が制限される。本実施形態においては、左上板部34および右上板部44はいずれもコイル13の上方には至っておらず、その結果、コイル13の上方はヨーク30により覆われていない。それゆえ、コイル13の導線の巻回量が増加しても、コイル13の外面が左上板部34または右上板部44に接触することがない。したがって、左前板部32の右端または右前板部42の左端にコイル13の外面が接触しない程度に、コイル13の巻回量を増やすことができる。コイル13の導線の巻回量を増やすことにより、磁性線材12の磁化方向の反転によりコイル13から出力されるパルスの波高(電圧)を大きくすることができる。したがって、回転シャフト83の回転の検出精度を向上させることができる。また、左上板部34および右上板部44はいずれもコイル13の上方の領域には進入していないので、コイル13の巻回量が増加した場合でも、図11に示すように、上下方向において、左上板部34および右上板部44の下面の位置を、コイル13の外面の最上部の位置以下とすることができる。したがって、左上板部34および右上板部44を磁性線材12の左端部および右端部にそれぞれ接近させることができる。これにより、磁石3のN極およびS極が例えば図13に示すように磁気センサ11に接近したときに、磁石3により形成された磁界における磁束の磁性線材12への集中度を高めることができる。
【0076】
また、本発明の実施形態の回転検出装置1において、左ヨーク片31の左上板部34の右面34A、および右ヨーク片41の右上板部44の左面44Aは、磁性線材12の中心軸Bに対して垂直であり、磁性線材12の上方を前後方向に跨ぐように伸長している。この構成により、磁石3のN極およびS極が例えば図13に示すように磁気センサ11に接近したときに、上述したように、磁性線材12の中心軸Bの方向に沿って流れる磁束を増加させることができる。したがって、回転シャフト83の回転の検出精度を高めることができる。
【0077】
また、本発明の実施形態の回転検出装置1においては、ダミーヨーク片51、52により、各磁気センサ11の磁性線材12に作用する回転磁界の強度を、3つの磁気センサ11間において均等化することができる。したがって、回転シャフト83の回転の検出精度を向上させることができる。
【0078】
なお、上記実施形態における磁石3は、N極、S極、N極およびS極からなる2対の磁極を有しているが、本発明において、磁石の磁極は1対でもよいし、3対以上でもよい。また、磁石3を4分割して、4つの磁石3により回転磁界を形成するようにしてもよい。また、上記実施形態の回転検出装置1は3つの磁気センサ11および3つのヨーク30を備えているが、本発明において、磁気センサ11の数およびヨーク30の数はそれぞれ2つでもよいし、4つ以上でもよい。また、本発明はモータの回転シャフト以外の物体の回転を検出することもできる。また、上記実施形態では、磁気センサ11およびヨーク30に対して磁石3が回転する場合を例にあげたが、磁石3に対して磁気センサ11およびヨーク30が回転する構成も可能である。
【0079】
また、本発明は、請求の範囲および明細書全体から読み取ることのできる発明の要旨または思想に反しない範囲で適宜変更可能であり、そのような変更を伴う回転検出装置もまた本発明の技術思想に含まれる。
【符号の説明】
【0080】
1 回転検出装置
2 基板
2B 載置面(一の面)
3 磁石(磁界形成部)
11 磁気センサ(磁界検出部)
12 磁性線材
13 コイル
14 ボビン
15 線材収容部
18 導線巻回部
30 ヨーク
31 左ヨーク片
32 左前板部
33 左板部
34 左上板部
34A 右面
41 右ヨーク片
42 右前板部
43 右板部
44 右上板部
44A 左面
51 ダミーヨーク片(第1のダミーヨーク片)
52 ダミーヨーク片(第2のダミーヨーク片)
81 モータ(構造体)
82 モータ本体(支持部)
83 回転シャフト(回転部)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14