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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022114344
(43)【公開日】2022-08-05
(54)【発明の名称】アンテナ装置
(51)【国際特許分類】
   H01Q 1/22 20060101AFI20220729BHJP
   H01Q 1/32 20060101ALI20220729BHJP
【FI】
H01Q1/22
H01Q1/32 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021010611
(22)【出願日】2021-01-26
(71)【出願人】
【識別番号】000006758
【氏名又は名称】株式会社ヨコオ
(74)【代理人】
【識別番号】110001243
【氏名又は名称】弁理士法人谷・阿部特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中村 大輔
(72)【発明者】
【氏名】郷 清二
【テーマコード(参考)】
5J046
5J047
【Fターム(参考)】
5J046AA02
5J046AA05
5J046AA10
5J046AB13
5J047AA02
5J047AA05
5J047AA10
5J047AB13
5J047EB01
(57)【要約】      (修正有)
【課題】ノイズによるアンテナ特性などへの悪影響を抑制することが可能なアンテナ装置を提供する。
【解決手段】アンテナユニットは、アンテナエレメントとしてのパッチアンテナ5と、回路部を有する回路基板3と、回路部の少なくとも一部を覆い、シールドケースとして機能する凹部8が設けられたベース4と、凹部8と回路基板3と、を接触させるための接触手段と、を備える。接触手段は、凹部に設けられた螺子穴82と、螺子穴に螺合する螺子7とを有する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アンテナエレメントと、
回路部を有する回路基板と、
前記回路部の少なくとも一部を覆い、シールドケースとして機能する凹部が設けられたベースと、
前記凹部と前記回路基板と、を接触させるための接触手段と、
を備えたことを特徴とするアンテナ装置。
【請求項2】
前記接触手段は、前記凹部に設けられた螺子穴と前記螺子穴に螺合する螺子を有することを特徴とする、請求項1に記載のアンテナ装置。
【請求項3】
前記凹部は、前記回路基板と接触する箇所が前記ベースの底面に略平行な平面であることを特徴とする、請求項1または2のいずれか一項に記載のアンテナ装置。
【請求項4】
前記凹部は、前記ベースに一体成型されることを特徴とする、請求項1から3のいずれか一項に記載のアンテナ装置。
【請求項5】
前記接触手段は、前記凹部に設けられた板バネを有することを特徴とする、請求項1、3、または4のいずれか一項に記載のアンテナ装置。
【請求項6】
前記接触手段は、前記凹部に設けられた導電性クッションを有することを特徴とする、請求項1、または3から5のいずれか一項に記載のアンテナ装置。
【請求項7】
前記ベースが、ダイキャストまたはめっきを施された樹脂よりなることを特徴とする、請求項1から6のいずれか一項に記載のアンテナ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アンテナ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
アンテナ装置として、特許文献1には、外部から飛来するノイズまたは回路基板から発生するノイズによってアンテナ特性に悪影響を及ぼさないための金属製のシールドケースを用いたものが記載されている。この金属製のシールドケースは、外周部の複数箇所に弾性係止片が突設されたものであり、これら弾性係止片が回路基板の対応する切欠きにスナップ嵌合された後、回路基板の上面側の接地パターンにはんだ付けされる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第4323440号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、例えば、このようにはんだ付けで固定する方法では、金属製のシールドケースによる熱伝導ではんだごての熱が逃げてしまい、はんだ不良が発生したり、はんだ量にバラツキが発生したりする可能性がある。そして、このようなはんだ不良やはんだ量のバラツキにより、シールドケースと回路基板との接触が不十分となると導通が低下する。その結果、シールドケースの機能が十分に果たせず、ノイズによるアンテナ特性への悪影響を十分に抑制できなくなるということがある。
【0005】
本発明の目的の一例は、ノイズによるアンテナ特性などへの悪影響の抑制することにある。本発明の他の目的は、本明細書の記載から明らかになるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様のアンテナ装置は、アンテナエレメントと、回路部を有する回路基板と、前記回路部の少なくとも一部を覆い、シールドケースとして機能する凹部が設けられたベースと、前記凹部と前記回路基板と、を接触させるための接触手段と、を備える。
【0007】
本発明の一態様によれば、シールドケースとして機能する凹部と回路基板と、を接触手段によって接触させることにより、導通が低下せず、シールドケースの機能を十分発揮でき、ノイズによるアンテナ特性などへの悪影響を抑制することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の第1実施形態に係る、アンテナ装置の全体構成を示す分解斜視図である。
図2】本発明の第1の実施形態に係るアンテナ装置の第1実施例のベースを示す外観斜視図であり、(a)は、シールドケースとして機能する凹部が一体化されたベースを示すものであり、(b)は、(a)のベースの凹部と回路基板を固定させた際のIIb―IIb線断面を示す側面断面図である。
図3】本発明の第1の実施形態に係る、アンテナ装置の第2実施例のベースを示す外観斜視図であり、(a)は、シールドケースとして機能する凹部が一体化されたベースを示すものであり、(b)は、(a)のベースの凹部と回路基板を固定させた際のIIIb―IIIb線断面を示す側面断面図である。なお、(c)は、板バネの構成を示す概略斜視図である。
図4】本発明の第1の実施形態に係る、アンテナ装置の第3実施例のベースを示す外観斜視図であり、(a)は、シールドケースとして機能する凹部が一体化されたベースを示し、(b)は、(a)のベースと回路基板を固定させた際のIVb―IVb線断面を示す側面断面図である。
図5】本発明の第1の実施形態に係る、アンテナ装置の第4実施例のベースを示す外観斜視図であり、(a)は、シールドケースとして機能する凹部が一体化されたベースを示し、(b)は、(a)のベースと回路基板を固定させた際のVb―Vb線断面を示す側面断面図である。
図6】(a)は、本発明の第2の実施形態に係る、アンテナ装置の全体構成を示す分解斜視図である。(b)は、(a)のベースと回路基板を固定させた際のVIb―VIb線断面を示す側面断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、添付の図面を参照して本発明の実施形態を詳細に説明する。以下で説明される実施形態は、本開示に係る実施形態の全てではなく、いくつかの例示に過ぎない。
【0010】
(第1実施形態)
図1図5を用いて本発明の第1実施形態におけるアンテナ装置について説明する。
【0011】
(アンテナ装置の全体構成)
本発明の第1実施形態に係るアンテナ装置は、例えば、車両内のダッシュボードやインパネに搭載され、GNSS(Global Navigation Satellite System)などに用いられる形態に関する。なお、本発明の適用はこの形態に限られない。例えば、アンテナの用途がGNSSに限定されないことは以下の説明からも明らかである。
【0012】
図1は、本発明の第1実施形態に係るアンテナ装置を構成するアンテナユニット101の構成を示す分解斜視図である。
【0013】
アンテナユニット101は、ケース2、回路基板3、および、後述するシールドケースとして機能する凹部8を備えたベース4、パッチアンテナ5を備えて構成されている。
【0014】
ケース2は、電波透過性の合成樹脂などで形成された樹脂合成品である。
【0015】
回路基板3は、略平面形状であって、その下面に導体パタ-ン(不図示)や半導体部品(不図示)が実装されている。なお、導体パターンや半導体部品が本発明の回路部に相当する(以下、導体パターンや半導体部品を単に回路部と称して説明する)。導体パターンは回路基板3の上面に実装されていてもよい。また、回路基板3の上面には、アンテナエレメントとしてパッチアンテナ5が設けられており、パッチアンテナ5で受信した信号に対して導体パターンや半導体部品を通して位相シフトや合成等の処理を行い、同軸ケーブル(不図示)を介してナビゲーション装置などの外部装置に伝送する。
【0016】
ベース4は、シールドケースとして機能する凹部8を有する金属製の部品である。パッチアンテナ5は、例えば、GNSSの周波数帯の信号を受信可能な衛星測位システムのアンテナであり、両面シール6により回路基板3に取り付けられる。
【0017】
ベース4に設けられた凹部8は、金属板金に絞り加工等をして凸部を形成することにより成形される。例えば、ベース4の底面からの凸部の高さを回路基板3の半導体部品と接触しない高さとし、さらに、回路基板3の回路部が存在する領域を囲むように凸部をその周囲に亘って形成することで凹み形状を有する凹部8が成形される。すなわち、凹部8はベース4と一体に成形される。また、金属製の凹み形状を有する凹部8は、凸部の壁の上部81全体に回路基板3が接触することで、回路基板3の回路部を覆い、ベース4と電気的に接続されるシールドケースとして機能することとなる。なお、この構成では、シールドケースとして機能する凹部8がベース4に一体成形されるが、この凹部8をベース4と別体としてもよい。
【0018】
回路基板3は、図1に示す8つの螺子7Aがベース4に設けられた各々の螺子7Aに対応する8つの螺子穴7Bに螺合することでベース4に固定される。ケース2は、4つの螺子7Cがベース4に設けられた各々の螺子7Cに対応する4つの螺子穴7Dに螺合することでベース4に固定される。このようにして、ケース2をベース4に固定することにより形成される内部空間に回路基板3が収容される。なお、回路基板3を固定するときに螺子7Aが螺合されるベース4の8つの螺子穴7Bは、図1に示すように、ベース4の底面から立ち上がって当該底面と略平行な方向に折れ曲がる部分に設けられている。そして、このベース4の底面から立ち上がる部分の当該底面からの高さは、凹部8における凸部の高さと略同一となる。なお、螺子7Aや螺子穴7Bの数はこれに限られるものではない。
【0019】
以降では、ベース4に設けられたシールドケースとして機能する凹部8と回路基板3とを接触させる構成の第1実施形態における各実施例について説明する。
【0020】
(第1実施例)
図2を用いて、ベース4と一体に成形されたシールドケースとして機能する凹部8と回路基板3とを接触させる構成の第1実施例について説明する。
【0021】
図2(a)は、本発明の第1実施形態に係るアンテナユニット101の第1実施例としてのベース4の概略斜視図を示し、図2(b)は、回路基板3とベース4が固定されたときの図2(a)におけるIIb-IIb線断面を表す断面図を示す。なお、図2(b)における斜線は、回路基板3(斜線の間隔が広い)とベース4(斜線の間隔が狭い)とを区別するために模式的に示したものである。
【0022】
図2(a)に示すように、ベース4の略中央付近であって、回路基板3をベース4に固定したときに、回路基板3における回路部を覆う部分に、凹部8が設けられている。凹部8は、平面視で四角形であり、四角形の各辺はベース4の底面からせり上がった凸部の壁により構成される。さらに、凹部8は、四角形の四辺の凸部の壁とベース4の底面によって囲まれた内部領域を有する。そして、この凹部8の内部領域に回路基板3の下面側の回路部を収容することで、例えば、回路部から発生するノイズによるアンテナ特性などへの悪影響を抑制する。
【0023】
具体的には、凹部8の四角形の各辺を成す凸部の壁の上部81が平面として形成される。特に、この平面は、ベース4の底面と平行である。また、凹部8における凸部の壁の上部81のうち、四角形の頂点部分に螺子穴82を設ける。そして、凹部8を有するベース4を、回路基板3に螺子7によって固定する。なお、頂点部分だけではなく、例えば、各凸部の壁の上部81の平面の略中央部分に螺子穴82を設け、その螺子穴82に螺子7を螺合することにより固定してもよい。
【0024】
図2(b)に示すように、凹部8の周囲を形成する凸部の壁は、ベース4の底面から傾斜するように立ち上がっている。そして、凸部の壁の上部81の全体がベース4の底面と略平行な平面形状となる。回路基板3をベース4に固定するとき、凸部の壁の上部81の平面全体と回路基板3の下面の一部とが密着する。さらに、上部81の平面に設けられた螺子穴82に螺子7を螺合することにより密着度が増した接触状態となる。なお、図2(b)に示すように、凹部8における凸部には上部81の下側に空洞が形成される。そして、螺子穴82に螺子7を螺合すると、螺子7の先端が空洞内に収まるため装置自体が大型化されない。
【0025】
これにより、凹部8における凸部の壁の上部81と回路基板3とを隙間のない良好な接触状態で接触させることができる。すなわち、所要の接触面積、つまりノイズを抑制できる十分な導通性を確保した接触面積で接触状態を良好にすることができる。なお、凸部を形成するだけでは、加工時や経年劣化により凸部に反りやばらつきが生じ、凹部8における凸部の壁の上部81と回路基板3の下面との間に隙間が生じ、導通が低下して凹部8のシールド機能の劣化が生じるおそれがある。これに対し、第1実施例では、平面視四角形の各辺を構成する凸部の壁の上部81を平面としてそこに螺子穴82を設けて回路基板3との接触状態を強固なものとしているため、加工時や経年劣化による反りやばらつきの発生を抑え、凹部8と回路基板3との間を隙間がないなど所要の接触面積が確保された状態を維持することができる。
【0026】
また、ベース4と回路基板3の締結が螺子7でなされることから、組み立てが容易であり、製品のばらつきや組み立てミスを抑えることができる。さらに、シールドケースとして機能する凹部8とベース4が一体成型されることから、部品点数を抑えることができ、コストを低減させることができる。なお、本実施形態では凹部8は、平面視で四角形であるが、これに限定されるものではなく、例えば平面視で円形や楕円形等であっても良い。
【0027】
そして、凹部8は、ノイズを発生させる回路部を覆うことで、外部からのノイズによる回路部への影響や回路部から発生するノイズによるアンテナ特性などへの悪影響を抑制することができる。
【0028】
(第2実施例)
図3を用いて、ベース4と一体に成形されたシールドケースとして機能する凹部8と回路基板3とを接触させる構成の第2実施例について説明する。
【0029】
第2実施例は、第1実施例の凹部8における凸部の壁の上部81に回路基板3と接触する板バネ9を設けた形態に関する。以下では、主に、上述した第1実施例と異なる点について説明する。
【0030】
図3(a)は、第2実施例のベース4の斜視図を示し、図3(b)は、回路基板3がベース4に固定されたときの図3(a)におけるIIIb-IIIb線断面を表す断面図を示し、図3(c)は、図3(a)および(b)における、導電性の板バネ9の斜視図を示す。なお、図3(b)における斜線は、回路基板3(斜線の間隔が広い)とベース4(斜線の間隔が狭い)とを区別するために模式的に示したものである。
【0031】
図3(a)および(b)に示すように、第2実施例では、凹部8の平面視四角形の四辺を形成する各凸部の壁の上部81の平面のほぼ全体に導電性の板バネ9が取り付けられる。
【0032】
図3(c)に示すように、導電性の板バネ9は、凸部の壁の上部81の平面上に固定される固定部91と、固定部91の端部から斜め上方に延在する延在部92と、延在部92の固定部91側と反対側端部が屈曲した屈曲部93とで構成される。このように構成された板バネ9は、固定部91に対して上方への弾性力を有し、屈曲部93の頂部を上方から下方に向けて押圧するとその弾性に抗した力が働く。なお、この板バネ9の固定部91は、導電性の両面テープなどにより凹部8における凸部の壁の上部81の平面に固定される。また、屈曲部93の頂部は、その全体が上部81の平面と略平行になるように構成される。なお、その頂部の回路基板3と接触する箇所が平面であってもよく(面接触)、または、曲面状の上部のみが接触(線接触)するようにしてもよい。
【0033】
回路基板3をベース4に固定すると、板バネ9の屈曲部93の頂部が回路基板3の下面の一部と密着する。そして、回路基板3が螺子7を用いてベース4に螺合されると、回路基板3が板バネ9を下方向に押圧する。そして、板バネ9にその押圧力に抗した力が働き、屈曲部93の頂部と回路基板3の下面の一部とが密着度が増した接触状態となる。
【0034】
なお、第2実施例では、導電性の板バネ9の固定部91を凸部における上部81の平面上に固定させ、屈曲部93の頂部を回路基板3に接触させることについて説明したが、この板バネ9の固定部91を回路基板3に固定して、屈曲部93の頂部を凸部の壁の上部81の平面に接触させるようにしてもよい。その場合、板バネ9は、固定部91と回路基板3とを導電性の両面テープで固定してもよく、リフローにより回路基板3に実装してもよい。
【0035】
これにより、板バネ9の反力によって互いの接触面積を大きくすることができ、回路基板3と凹部8とのより高い導通性を得てノイズによるアンテナ特性などへの悪影響を抑制することが可能となる。なお、上述のように、板バネ9を設けることにより、所要の接触面積を得ることが可能となることから、回路基板3とベース4とを固定させるための螺子の数を減らすことも可能である。すなわち、減少させた数の螺子と、板バネ9を用いて所要の接触面積を得ることができる範囲で螺子の数を定めることができる。その結果、部品点数を減らすことでコストの低減と、組付け時の、製品のばらつきや組み立てミスを抑えることができる。
【0036】
(第3実施例)
図4を用いて、ベース4と一体に成形されたシールドケースとして機能する凹部8と回路基板3とを接触させる構成の第3実施例について説明する。
【0037】
第3実施例は、第1実施例の凹部8における凸部の壁の上部81の平面に回路基板3と接触する導電性クッション10を設けた形態に関する。以下では、主に、上述した第1実施例と異なる点について説明する。
【0038】
図4(a)は、第3実施例のベース4の概略斜視図を示し、図4(b)は、回路基板3がベース4に固定されたときの図4(a)におけるIVb-IVb線断面を表す断面図を示す。なお、図4(b)における斜線は、導電性クッション10(斜線の間隔が一番広い)、回路基板3(斜線の間隔が導電性クッション10より狭く、ベース4より広い)とベース4(斜線の間隔が狭い一番狭い)とを区別するために模式的に示したものである。
【0039】
図4(a)および(b)に示すように、第3実施例では、凹部8における各凸部の壁の上部81の平面のほぼ全体に弾力性を有する導電性クッション10が取り付けられる。
【0040】
図4(b)に示すように、導電性クッション10は、凸部の壁の上部81の平面上に固定される固定部111と、回路基板3に接触する上面112と、前記各固定部111の間に延在する側部113で構成される。このように構成された導電性クッション10は、上面112に対して上方へ、固定部111に対して下方への弾性力を有し、全体を上方から下方に向けて押圧するとその弾性に抗した力が働く。なお、この導電性クッション10の固定部111は、両面テープなどにより凹部8における凸部の壁の上部81の平面に固定される。また、上面112は、上部81の平面と略平行になるように構成される。
【0041】
回路基板3をベース4に固定すると、導電性クッション10の上面112が回路基板3の下面の一部と密着する。そして、回路基板3が螺子7を用いてベース4に螺合されると、回路基板3が導電性クッション10を下方向に押圧する。そして、導電性クッション10にその押圧力に抗した力が働き、上面112と回路基板3の下面の一部とが密着度が増した接触状態となる。これにより、導電性クッション10の反力によって互いの接触面積を大きくすることができ、回路基板3と凹部8とのより高い導通性を得てノイズによるアンテナ特性などへの悪影響を抑制することが可能となる。なお、上述のように、導電性クッション10を設けることにより、所要の接触面積を得ることが可能となることから、回路基板3とベース4とを固定するための螺子の数を減らすことも可能である。すなわち、減少させた数の螺子と、導電性クッション10を用いて所要の接触面積を得ることができる範囲で螺子の数を定めることができる。その結果、部品点数を減らすことでコストの低減と、組付け時の、製品のばらつきや組み立てミスを抑えることができる。
【0042】
(第4実施例)
図5を用いて、ベース4と別体に成形されたシールドケースとして機能する凹部18と回路基板3とを接触させる構成の第4実施例について説明する。なお、この第4実施例は、上述した第1実施例~第3実施例の凹部8とは相違し、ベース4とは別体で構成された凹部18を有するベース4に関する。
【0043】
図5(a)は、第4実施例の凹部18を有するベース4の概略斜視図を示し、図5(b)は、回路基板3をベース4に固定したときの図5(a)におけるVb-Vb線断面を表す断面図を示す。なお、図5(b)における斜線は、回路基板3(斜線の間隔が広い)とベース4(斜線の間隔が狭い)とその間にある板金の凹部18と、を区別するために模式的に示したものである。
【0044】
図5(a)に示すように、第4実施例の凹部18は、ベース4と一体成形されたものではなく、独立した部品として製造された凹部18をベース4に溶接して接合したものである。
【0045】
図5(b)に示すように、凹部18は、ベース4と接触する底部181と、底部より略直角に立ち上がり、溶接によりベース4に固定される側部182と、側部182に対して略直角方向に延在し回路基板3と接触する平面部183とで構成される。凹部18は、板金加工により製造される箱型であり、平面部183を側部182に対して直角に折り曲げて、回路基板3と導通するための平面部分である平面部183を形成している。このように製造することで、絞り加工をする必要がなく、金属板金加工のみで容易に所望の形状を得ることができる。
【0046】
そして、このように構成された凹部18をベース4に溶接により固定すると、底部181はベース4と大きな接触面積を有し、また、平面部183はベース4の平面と略平行な平面であることから、回路基板3の下面と十分な接触面積を取ることができ、回路基板3と凹部18とのより高い導通性を得てノイズによるアンテナ特性への悪影響を抑制することが可能となる。
【0047】
なお、平面部183に第2実施例で説明した板バネ9や第3実施例で説明した導電性クッションを取付けるようにしてもよい。そうすることで第2実施例や第3実施例と同様の効果を得ることができる。
【0048】
また、第4実施例では、凹部18をベース4に溶接して接合しているが、これに限定されるわけではなく、例えば、ベース4に凹部18を収納するための凹状の収納部または貫通穴を設け、回路基板3、凹部18とベース4を螺子で一体になるように締結することもできる。
【0049】
(第2実施形態)
図6を用いて、本発明の第2実施形態におけるアンテナ装置について説明する。
【0050】
(アンテナ装置の全体構成)
本発明の第2実施形態におけるアンテナ装置は、車両のルーフ上に装着されるシャークフィン型アンテナ装置の形態に関する。このアンテナ装置は、複数のアンテナを搭載した複合アンテナ装置である。
【0051】
図6(a)は、本発明の第2実施形態に係るアンテナ装置を構成するアンテナユニット101Aの構成を示す分解斜視図である。
【0052】
アンテナユニット101Aは、ケース102、回路基板11、および、後述するシールドケースとして機能する凹部28を備えたベース12、2つのパッチアンテナ50、51、TELアンテナ52を備えて構成されている。
【0053】
ケース102は、電波透過性の合成樹脂などで形成された、シャークフィン形状の樹脂合成品である。
【0054】
回路基板11は、略平面形状であって、その下面に導体パタ-ン(不図示)や半導体部品(不図示)が実装されている。なお、導体パターンや半導体部品が本発明の回路部に相当する(以下、導体パターンや半導体部品を単に回路部と称して説明する)。導体パターンは回路基板11の上面に実装されていてもよい。また、回路基板11の上面には、アンテナエレメントとして2つのパッチアンテナ50、51とTELアンテナ52が設けられており、これらパッチアンテナ50、51ならびにTELアンテナ52で受信した、それら個々の信号に対して導体パターンや半導体部品を通して位相シフトや合成等の処理を行い、同軸ケーブル(不図示)を介してナビゲーション装置などの外部装置に伝送する。
【0055】
ベース12は、シールドケースとして機能する2つの凹部28を有する金属製の部品である。パッチアンテナ50は、SDARS(Satellite Digital Audio Radio Service)用アンテナであり、SDARSの周波数帯の信号を受信可能な衛星デジタル音声ラジオサービスである。パッチアンテナ51は、GNSS用アンテナであり、GNSSの周波数帯の信号を受信可能な衛星測位システムである。これらパッチアンテナ50、51は、シール等により回路基板11に取り付けられる。また、TELアンテナは、例えば、TELアンテナの端子をかしめてはんだ付けを行うことにより回路基板11に取り付けられる。
【0056】
ベース12に設けられた2つの凹部28の各々は、切削加工等をしてベース12の底面から立設するリブにより構成される。例えば、ベース12の底面からのリブの高さを回路基板11の半導体部品と接触しない高さとし、さらに、回路基板11の回路部が存在する領域を囲むようにリブをその周囲に亘って形成することで凹み形状を有する凹部28が成形される。
【0057】
すなわち、凹部28はベース12と一体に成形される。また、金属製を有する凹部28は、リブの上部81A全体に回路基板11が接触することで、回路基板11の回路部を覆い、ベース12と電気的に接続されるシールドケースとして機能することとなる。なお、この構成では、シールドケースとして機能する凹部28がベース12に一体成形されるが、これら2つの凹部28をベース12と別体としてもよく、また、いずれか一つを別体としてもよい。
【0058】
また、回路基板11は、図6(a)に示す7つの螺子7Aがベース12に設けられた各々の螺子7Aに対応する7つの螺子穴7Bに螺合することでベース12に固定される。ケース102は、ベース12に設けられた係合部(不図示)に係止爪(不図示)が係合することでベース12に固定される。このようにして、ケース102をベース12に固定することにより形成される内部空間に回路基板11やパッチアンテナ50、51、TELアンテナ52が収容される。なお、回路基板11をベース12に固定するときに7つの螺子7Aのうち5つの螺子7Aが螺合されるベース12の5つの螺子穴7Bは、図6に示すように、パッチアンテナ50、51の近傍に設けられている。なお、螺子7Aや螺子穴7Bの数はこれらに限られることはない。
【0059】
(凹部28と回路基板11とを接触させる構成)
図6(a)に示すように、ベース12の略中央付近と略前方付近には、回路基板11をベース12に固定したときに、回路基板11における回路部を覆う部分に、2つの凹部28が設けられている。図6(b)は、2つの凹部28のうち、パッチアンテナ51の下側に位置する凹部28の断面図を示している。なお、図6(b)における斜線は、回路基板11(斜線の間隔が広い)とベース12(斜線の間隔が狭い)とを区別するために模式的に示したものである。凹部28は、平面視で四角形であり、この四角形の四辺のリブとベース12の底面によって囲まれた内部領域を有する。そして、この凹部28の内部領域に回路基板11の下面側の回路部を収容することで、例えば、回路部から発生するノイズによるアンテナ特性などへの悪影響を抑制している。
【0060】
具体的には、凹部28の矩形の各辺を成すリブの上部81Aが平面として形成される。この平面は、ベース12の底面と略平行である。また、上述した5つの螺子穴7Bは、回路基板11をベース12に固定するときにリブの端部近傍に位置付けられ、リブの上部平面全体と回路基板11の下面の一部とが密着する。そして、凹部28を有するベース12に回路基板11を螺子7Aによって螺合することにより密着度が増した接触状態となる。なお、第1実施形態における第1実施例と同様に、リブの上部81Aの平面に螺子穴を設けて、そこに螺子を螺合するようにしてもよい。
【0061】
これにより、凹部28におけるリブの上部と回路基板11とを隙間のない良好な接触状態で接触させることができる。すなわち、所要の接触面積、つまりノイズによるアンテナ特性への悪影響を抑制できる十分な導通性を確保した接触面積で接触状態を良好にすることができる。
【0062】
また、第2実施形態のベース12は、ダイキャストまたはめっきを施された樹脂製であってもよい。例えば、ベース12がダイキャスト製であれば、前述の実施例においてベースは金属切削部品であったものが、鋳造により製造でき、より製造が容易となり、コストも低減することができる。また、ベース12が、めっきを施された樹脂製である場合には、樹脂を射出成型等により成形することで、メッキを施す前の樹脂の形状を一度で所望の形状とすることができ、やはり製造が容易となる。
【0063】
図6(b)に示すように、平面視で四角形を形成する四辺の凸部は、ベース12がダイキャストやメッキを施された樹脂製であれば、より容易に形成することができる。
【0064】
〔概括〕
上述した実施形態による本明細書の開示は、次のように概括することができる。
【0065】
本開示態様は、アンテナエレメントと、回路部を有する回路基板と、前記回路部の少なくとも一部を覆い、シールドケースとして機能する凹部が設けられたベースと、前記凹部と前記回路基板と、を接触させるための接触手段と、を備えた、アンテナ装置である。
【0066】
この態様によれば、外部からのノイズによる回路部への影響や回路部から発生するノイズによるアンテナ特性などへの悪影響を抑制することができる。
【0067】
前記接触手段は、前記凹部に設けられた螺子穴と前記螺子穴に螺合する螺子を有する、としてもよい。
【0068】
この態様によれば、凹部に設けられた螺子穴に螺子を螺合することにより密着度が増した接触状態とすることができる。
【0069】
前記凹部は、前記回路基板と接触する箇所が前記ベースの底面に略平行な平面である、としてもよい。
【0070】
この態様によれば、加工時や経年劣化による反りやばらつきの発生を抑え、凹部と回路基板との間を隙間がないなど所要の接触面積が確保された状態を維持することができる。
【0071】
前記凹部は、前記ベースに一体成型される、としてもよい。
【0072】
この態様によれば、部品点数を抑えることができ、コストを低減させることができる。
【0073】
前記接触手段は、前記凹部に設けられた板バネを有する、としてもよい。
【0074】
前記接触手段は、前記凹部に設けられた導電性クッションを有する、としてもよい。
【0075】
この態様によれば、板バネの反力や導電性クッションの反力によって回路基板との互いの接触面積を大きくすることができ、回路基板と凹部とのより高い導通性を得てノイズによる悪影響を抑制することが可能となる。
【0076】
前記ベースが、ダイキャストまたはめっきを施された樹脂よりなる、としてもよい。
【0077】
この態様によれば、より製造が容易となり、コストも低減することができる。
【符号の説明】
【0078】
2、102 ケース
3、11 回路基板
4、12 ベース
5 パッチアンテナ
6 両面シール
7、7A、7C 螺子
7B、7D 螺子穴
8、18、28 凹部
9 板バネ
10 導電性クッション
50 SDARS用アンテナ
51 GNSS用アンテナ
52 TELアンテナ
81、81A 凸部の壁の上部
82 螺子穴
91 固定部
92 延在部
93 屈曲部
100 アンテナ装置
101、101A アンテナユニット
111 固定部
112 上面
113、182 側部
181 底部
183 平面部
図1
図2
図3
図4
図5
図6