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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022114379
(43)【公開日】2022-08-05
(54)【発明の名称】乗客コンベア
(51)【国際特許分類】
   B66B 31/02 20060101AFI20220729BHJP
   B66B 29/04 20060101ALI20220729BHJP
   A61L 2/10 20060101ALI20220729BHJP
【FI】
B66B31/02 A
B66B29/04 H
A61L2/10
【審査請求】有
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021010682
(22)【出願日】2021-01-26
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2022-03-16
(71)【出願人】
【識別番号】000112705
【氏名又は名称】フジテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114421
【弁理士】
【氏名又は名称】薬丸 誠一
(72)【発明者】
【氏名】大恵 淳
(72)【発明者】
【氏名】富永 保介
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 剛
【テーマコード(参考)】
3F321
4C058
【Fターム(参考)】
3F321EA01
3F321EB01
3F321EC01
3F321GA10
3F321HA31
4C058AA30
4C058BB06
4C058CC04
4C058DD16
4C058EE02
4C058KK02
4C058KK22
4C058KK28
4C058KK33
4C058KK44
(57)【要約】
【課題】ハンドレール除菌装置が乗客コンベアの装置外部に設置される場合及びハンドレール除菌装置が乗客コンベアの装置内部に設置される場合のそれぞれの問題を一挙に解決することができる乗客コンベアを提供する。
【解決手段】乗客コンベアは、ハンドレール22の復路部分の出入り口であるインレット37を有するインレット部35と、少なくとも一部がインレット37から外部に突出するようにハンドレール22に遊嵌され、ハンドレール22の移動方向に沿って内部に押し込まれると、安全スイッチ44を直接又は間接的に作動させる作動体41と、作動体41の内面に設けられる紫外線源50とを備える。
【選択図】図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハンドレールの復路部分の出入り口であるインレットを有するインレット部と、
少なくとも一部がインレットから外部に突出するようにハンドレールに遊嵌され、ハンドレールの移動方向に沿って内部に押し込まれると、安全スイッチを直接又は間接的に作動させる作動体と、
作動体の内面に設けられる紫外線源とを備える
乗客コンベア。
【請求項2】
作動体は、ハンドレール挿通孔を有し、
紫外線源は、ハンドレール挿通孔の周方向に所定間隔で複数設けられる
請求項1に記載の乗客コンベア。
【請求項3】
作動体は、筒状部と、筒状部の基端部から外側に突出するフランジ部とを備え、
ハンドレール挿通孔は、筒状部及びフランジ部の一部が切り欠かれることにより、開放され、
紫外線源は、ハンドレール挿通孔のうち、筒状部における部分に設けられる
請求項2に記載の乗客コンベア。
【請求項4】
ハンドレール挿通孔は、ハンドレールの表面との隙間が広くなるハンドレール挿通孔の周方向に沿った凹部を備え、
紫外線源は、凹部に設けられる
請求項2又は請求項3に記載の乗客コンベア。
【請求項5】
インレット部は、左右に分割可能なカバーの正面部に区画され、
インレットは、カバーの分割ラインに跨って形成される
請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載の乗客コンベア。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハンドレール除菌装置を備える乗客コンベアに関する。なお、除菌とは、細菌の除菌ないし殺菌、ウイルスの不活性化を含む概念である。
【背景技術】
【0002】
エスカレータや動く歩道といった乗客コンベアのハンドレールは、移動手摺とも呼ばれ、利用者が手で掴む部分である。利用者は不特定多数であり、ハンドレールの表面には種々の細菌やウイルスが付着する。特に、昨今は、いかにして新型コロナウイルスの感染を予防できるかが関心事となっている。対策の一つとして、紫外線を用いるハンドレール除菌装置が提案されている(特許文献1ないし3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2011-073874号公報
【特許文献2】特開2006-193319号公報
【特許文献3】特開2019-052021号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載されたハンドレール除菌装置は、ハンドレールの折返し端部に対して設置される。すなわち、このハンドレール除菌装置は、乗客コンベアの乗降口において乗客コンベアの装置外部に露出した形で設置される。このため、i)乗客がハンドレール除菌装置に接触したことに起因する事故を防止するための安全装置(乗客コンベアの緊急停止装置等)が必要となり、ii)乗客の目に紫外線が触れることに対する安全対策(カバー等)が必要となる。
【0005】
特許文献2及び3に記載されたハンドレール除菌装置は、遮蔽されたハンドレールの下辺部(復路部分)に対して設置される。すなわち、これらのハンドレール除菌装置は、ハンドレールの下辺部(復路部分)において乗客コンベアの装置内部に収容された形で設置される。このため、iii)ハンドレール除菌装置をフレーム等に取り付けるための部材及びこの部材の取付作業が必要となり、iv)設置箇所が狭い内部空間の奥まった箇所となりやすく、点検や交換等のメンテナンス作業がしにくい。
【0006】
そこで、本発明は、かかる事情に鑑みてなされたもので、上記問題を一挙に解決することができる乗客コンベアを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る乗客コンベアは、
ハンドレールの復路部分の出入り口であるインレットを有するインレット部と、
少なくとも一部がインレットから外部に突出するようにハンドレールに遊嵌され、ハンドレールの移動方向に沿って内部に押し込まれると、安全スイッチを直接又は間接的に作動させる作動体と、
作動体の内面に設けられる紫外線源とを備える
乗客コンベアである。
【0008】
ここで、本発明に係る乗客コンベアの一態様として、
作動体は、ハンドレール挿通孔を有し、
紫外線源は、ハンドレール挿通孔の周方向に所定間隔で複数設けられる
との構成を採用することができる。
【0009】
また、この場合、
作動体は、筒状部と、筒状部の基端部から外側に突出するフランジ部とを備え、
ハンドレール挿通孔は、筒状部及びフランジ部の一部が切り欠かれることにより、開放され、
紫外線源は、ハンドレール挿通孔のうち、筒状部における部分に設けられる
との構成を採用することができる。
【0010】
また、本発明に係る乗客コンベアの他態様として、
ハンドレール挿通孔は、ハンドレールの表面との隙間が広くなるハンドレール挿通孔の周方向に沿った凹部を備え、
紫外線源は、凹部に設けられる
との構成を採用することができる。
【0011】
また、本発明に係る乗客コンベアの別の態様として、
インレット部は、左右に分割可能なカバーの正面部に区画され、
インレットは、カバーの分割ラインに跨って形成される
との構成を採用することができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、ハンドレール除菌装置は、乗客コンベアの装置外部に設置されるものではなく、乗客コンベアの装置内部の奥まった箇所に設置されるものでもなく、乗客コンベアの装置表面部に配置される既存の構成の作動体に構成される。このため、本発明によれば、乗客がハンドレール除菌装置に接触したことに起因する事故を防止するための安全装置や、乗客の目に紫外線が触れることに対する安全対策や、ハンドレール除菌装置をフレーム等に取り付けるための部材及びこの部材の取付作業は、特段不要であり、かつ、点検や交換等のメンテナンス作業を簡単かつ迅速に行うことができ、上記従来のハンドレール除菌装置による問題を一挙に解決することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1図1は、本発明の一実施形態に係るハンドレール除菌装置をインレット部に備えるエスカレータの外観図である。
図2図2は、インレット部の正面図である。
図3図3(a)は、インレット安全装置の正面図である。図3(b)は、作動体を取り外した状態のインレット安全装置の正面図である。
図4図4(a)は、インレット安全装置の平面図である。図4(b)は、作動体が後退して安全スイッチが作動した状態のインレット安全装置の平面図である。
図5図5(a)は、インレット安全装置の側面図である。図5(b)は、作動体が後退して安全スイッチが作動した状態のインレット安全装置の側面図である。
図6図6(a)は、作動体の正面図である。図6(b)は、図6(a)のA-A線における作動体の側面断面図である。図6(c)は、図6(b)のB-B線における作動体の正面断面図である。
図7図7(a)は、ハンドレールが挿通された状態の作動体の正面断面図である。図7(b)は、ハンドレール除菌装置が作動した状態の作動体の正面断面図である。
図8図8(a)は、ハンドレールが挿通された状態の他の実施形態に係る作動体の正面断面図である。図8(b)は、ハンドレールが挿通された状態のさらに他の実施形態に係る作動体の正面断面図である。
図9図9(a)は、別の実施形態に係る作動体の正面図である。図9(b)は、図9(a)のC-C線における作動体の側面断面図である。図9(c)は、ハンドレール除菌装置のフレキシブル基板の平面図である。
図10図10(a)は、さらに別の実施形態に係る作動体の正面図である。図10(b)は、図10(a)のD-D線における作動体の側面断面図である。図10(c)は、図10(b)のE-E線における作動体の正面断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明に係る一実施形態として、乗客コンベアの一つであり、ハンドレール除菌装置を備えるエスカレータについて、図1ないし図7を参酌して説明する。
【0015】
図1に示すように、エスカレータ1は、搬送部2を備える。搬送部2は、踏面が通路に沿って移動することにより、乗客をその位置に立たせたまま歩かせることなく搬送する。搬送部2は、無端搬送体20と、ハンドレール22と、欄干パネル23とを備える。無端搬送体20は、複数の踏段(ステップ)21,…が無端状に連結されたもので、循環駆動される。ハンドレール22は、移動手摺とも呼ばれ、可撓性を有する無端状で、無端搬送体20と連動して循環駆動される。欄干パネル23は、下辺部がトラス(図示しない)に支持され、ハンドレール22を循環移動可能に支持する。ハンドレール22及び欄干パネル23は、通路の左右に通路に沿って一対設けられる。
【0016】
ハンドレール22の下辺部(復路部分)及び欄干パネル23の下辺部は、遮蔽部3により遮蔽される。遮蔽部3は、デッキカバー30と、スカートガード31と、外装板32と、インレットガード33とで構成される。デッキカバー30は、上面側に配置され、内デッキカバー30Aと、外デッキカバー30Bとを備える。スカートガード31は、通路に接する側に配置される。外装板32は、スカートガード31と反対側に配置される。インレットガード33は、長手方向の両端部(ハンドレール22の下辺部(復路部分)が出入りする部分)を覆うように配置される。遮蔽部3は、通路の左右に通路に沿って一対設けられる。
【0017】
図1及び図2に示すように、インレットガード33は、中央から左右に分割可能なカバー34で構成される。カバー34は、内カバー34Aと、外カバー34Bとを備える。内カバー34Aは、中間部で湾曲ないし屈曲され、一端が外カバー34Bの一端と突き合わせられ、他端がスカートガード31の終端と突き合わせられる形状を有する。外カバー34Bは、中間部で湾曲ないし屈曲され、一端が内カバー34Aの一端と突き合わせられ、他端が外装板32の終端と突き合わせられる形状を有する。カバー34の正面部がインレット部35となる。なお、カバー34は、ニューエルカバーともいい、カバー34が配置される領域をニューエル部ともいう。本実施形態においては、カバー34は、樹脂成型品である。
【0018】
内カバー34A及び外カバー34Bは、それぞれ突き合わせ端にて開放される切欠き36を備える。内カバー34A及び外カバー34Bが組み合わせられると、2つの切欠き36,36が合わさって一つの横長の孔となり、インレット部35におけるハンドレール22のインレット(出入り口)37となる。すなわち、インレット37は、左右に分割可能なカバー34の分割ラインに跨って形成される。本実施形態においては、切欠き36は、矩形状であり、インレット37は、横長の矩形状である。
【0019】
図3ないし図5に示すように、インレット部35は、巻き込み防止や挟まれ防止を目的としたインレット安全装置40を備える。インレット安全装置40は、作動体41と、安全スイッチ44とを備える。作動体41は、先端側がインレット37から外部に突出するようにハンドレール22に遊嵌され、乗客の身体や持ち物との接触を受けてインレット部35の内部に押し込まれる(後退する)と、安全スイッチ44を押圧する。安全スイッチ44は、エスカレータ1における安全回路の構成要素である。安全スイッチ44が押圧されて作動すると、インレット部35付近に設けられたスピーカ(図示しない)から警告音が発せられたり、エスカレータ1が自動停止する。
【0020】
インレット安全装置40は、作動体41、安全スイッチ44のほか、可動ベース42と、固定ベース43とを備える。可動ベース42は、作動体41が着脱可能に取り付けられるとともに、固定ベース43に対し、ハンドレール22の移動方向に移動可能に取り付けられる。固定ベース43は、取付部43aを備え、取付部43aを介してトラス(図示しない)の一部であるフレーム10又はトラスに取り付けられるフレーム10に取り付けられる。
【0021】
可動ベース42は、取付部42aと、接触部42dとを備える。取付部42aは、作動体41を取り付ける部分である。接触部42dは、可動ベース42の移動方向において、安全スイッチ44のアクチュエータ44aと対向する部分である。作動体41が押し込まれて可動ベース42が内部に向かう方向に移動すると、接触部42dは、アクチュエータ44aと接触し、押圧して、安全スイッチ44を作動させる。すなわち、作動体41は、可動ベース42を介して安全スイッチ44を間接的に作動させる。
【0022】
取付部42aは、可動ベース42の移動方向から見て、インレット37よりもわずかに大きな外形状を有する。取付部42aの外部に向く面は、可動ベース42の移動方向と直交し、作動体41の取付面となる。ただし、取付部42aは、ハンドレール22を挿通させる関係上、ハンドレール挿通孔42bを有する。ハンドレール挿通孔42bは、取付部42aの一辺、より詳しくは、ハンドレール22の両端部間の開放部がある側の辺が切り欠かれることにより、開放されている。これは、欄干パネル23との干渉を避けるため及び可動ベース42をハンドレール22から簡単に外せるようにするためである。本実施形態においては、取付部42aは、インレット37の各辺が外側にオフセットしたオフセット形状と等しい横長の矩形状の外形状を有する。また、本実施形態においては、ハンドレール挿通孔42bは、ハンドレール22の横断面外形状が外側にオフセットしたオフセット形状と等しい横長の長円形状の断面形状を有する。
【0023】
取付部42aの取付面は、適宜の箇所(本実施形態においては、4つの角部)に、ビス孔42cを備える。ビス孔42cは、作動体41を取付部42aに固定するためのビス45用の孔である。
【0024】
可動ベース42と固定ベース43との間には、付勢部材としての圧縮バネ46が設けられる。圧縮バネ46は、可動ベース42を固定ベース43から離れる方向、すなわち、可動ベース42を外部に向かう方向に付勢する。これにより、常時は、作動体41の先端側がインレット37から外部に突出した状態が維持される。
【0025】
安全スイッチ44は、インレットスイッチともいい、固定ベース43に取り付けられる。安全スイッチ44は、アクチュエータの種類として、ローラレバー形、ロッドレバー形等のレバー形、ローラプランジャ形、プッシュプランジャ形等のプランジャ形等、各種の公知のものを採用することができる。本実施形態においては、安全スイッチ44は、ローラプランジャ形のアクチュエータ44aを備えるリミットスイッチが用いられる。
【0026】
図6に示すように、作動体41は、筒状部41aと、フランジ部41bとを備える。筒状部41aは、インレット37から外部に突出する部分である。フランジ部41bは、可動ベース42の取付部42aに取り付けられる部分である。作動体41は、ある程度の変形が可能なゴム又は硬質樹脂等の素材からなる部材である。なお、ゴム製の作動体41は、インレットガードゴムともいう。
【0027】
筒状部41aは、ハンドレール22の横断面形状に対応して、高さが左右の幅よりも小さい偏平状の筒形状を有する。フランジ部41bは、筒状部41aの基端部から外側に突出する。フランジ部41bの内部に向く面(フランジ部41bの端面)は、可動ベース42の移動方向と直交し、可動ベース42への取付面となる。作動体41は、ハンドレール22を挿通させる関係上、ハンドレール挿通孔41cを有する。ハンドレール挿通孔41cは、筒状部41a及びフランジ部41bの一辺、より詳しくは、ハンドレール22の両端部間の開放部がある側の辺が幅Wで切り欠かれることにより、開放されている。幅Wは、ハンドレール22の左右の幅よりも小さい。しかし、作動体41は、弾性を有し、幅Wが広がるように変形させることができる。これにより、作動体41をハンドレール22から簡単に外すことができる。本実施形態においては、フランジ部41bは、可動ベース42の取付部42aの取付面と等しい横長の矩形状の外形状を有する。また、本実施形態においては、筒状部41a及びハンドレール挿通孔41cは、ハンドレール22の横断面外形状が外側にオフセットしたオフセット形状と等しい横長の長円形状の断面形状を有する。
【0028】
ハンドレール挿通孔41cは、段差凹部41dを備える。段差凹部41dは、ハンドレール挿通孔41cのうち、筒状部41aの先端部を除く部分が凹むことにより形成される。これにより、ハンドレール挿通孔41cの内面(ハンドレール22の表面との対向面)とハンドレール22の表面との隙間は、段差凹部41dにて広げられる。
【0029】
インレット安全装置40は、ハンドレール除菌装置5を備える。ハンドレール除菌装置5は、紫外線源50と、作動体41とで構成される。本実施形態においては、紫外線源50は、ピーク波長が100nm以上280nm以下の範囲内の深紫外光を照射する紫外線LED(UV-LED)である。
【0030】
紫外線源50は、ハンドレール挿通孔41cに設けられる。紫外線源50は、ハンドレール挿通孔41cの周方向に所定間隔で複数設けられる。紫外線源50は、ハンドレール挿通孔41cの段差凹部41dに設けられる。より詳しくは、紫外線源50は、出射面が段差凹部41dの内面に露出するように、段差凹部41dに埋設される。本実施形態においては、紫外線源50の出射面は、段差凹部41dの内面と面一である。
【0031】
図7に示すように、紫外線源50は、ハンドレール挿通孔41cのうち、ハンドレール22の中央部22a、左右の側部22b,22b及び左右の折返し端部22c,22cに対応する部分に設けられる。なお、ハンドレール22の中央部22aは、平坦面であり、左右の側部22b,22bは、曲面である。
【0032】
ところで、ハンドレール22の復路部分は、ハンドレール22の内部に挿入されるハンドレールガイド24により支持される。他方、作動体41は、可動ベース42及び固定ベース43を介してフレーム10に支持される。ハンドレールガイド24もフレーム10も不動に固定される。このため、ハンドレール22及びハンドレール除菌装置5は、ハンドレール22の移動方向と直交する方向(幅方向や上下方向)において、相対的に位置決めされる。これにより、ハンドレール22の表面と紫外線源50との距離は、安定的に維持される。この点で、ハンドレール除菌装置5は、紫外線源50及びハンドレール22の表面の相対位置関係を定める位置決め手段として、ハンドレールガイド24を備える。
【0033】
以上のとおり、本実施形態に係るハンドレール除菌装置5によれば、ハンドレール22の側部22bのような曲面部分や折返し端部22cであっても、紫外線源50が一定の距離以内に配置されることとなる。したがって、本実施形態に係るハンドレール除菌装置5によれば、ハンドレール22の表面の紫外線照射対象領域全域(本実施形態においては、ハンドレール22の折返し端部22cの表面を含むハンドレール22の表面全体)に十分な照射強度で紫外線を照射することができ、ひいては、当該領域全域において十分な除菌効果を得ることができる。
【0034】
また、本実施形態に係るハンドレール除菌装置5によれば、紫外線源50は、作動体41という、エスカレータ1の乗降口の床面に近い低位置に設けられ、しかも、ハンドレール22の表面との隙間が狭く、指を入れたり、のぞき込むことが不可能な作動体41のハンドレール挿通孔41cに設けられる。このため、エスカレータ1の乗客が紫外線を直視するリスクはない。したがって、本実施形態に係るハンドレール除菌装置5によれば、高い安全性を提供することができる。
【0035】
また、本実施形態に係るハンドレール除菌装置5によれば、紫外線源50は、ハンドレール挿通孔41cのうち、ハンドレール22の表面との隙間が広くなる段差凹部41dに設けられる。したがって、本実施形態に係るハンドレール除菌装置5によれば、紫外線の拡散、ハンドレール22の表面及びハンドレール挿通孔41cの内面での反射及び散乱が有効に作用し、これによっても、ハンドレール22の表面の紫外線照射対象領域全域に十分な照射強度で紫外線を照射することができる。
【0036】
また、本実施形態に係るハンドレール除菌装置5は、i)インレットガード33のカバー34を左右に分割して外し、ii)ビス45を緩めて作動体41を可動ベース42から取り外し、iii)作動体41の開放部の幅を広げてハンドレール22から外す、という手順又はii)→i)→iii)の手順により、簡単に取り外すことができ、また、逆の手順で簡単に取り付けることができる。しかも、これらの作業は、エスカレータ1の乗降口という平らで広い作業環境で行うことができる。仮にハンドレール除菌装置が遮蔽部3の途中部(エスカレータ1の傾斜部)の内部に設置されるとした場合、i)デッキカバー30を外し、ii)スカートガード31を外し、iii)フレームへの固定を解除し、iv)装置を取り外す、という作業を行うことになるが、スカートガード31は、踏段21があるために外しにくく、また、ハンドレール除菌装置が遮蔽部3の内部空間の奥まった箇所に設置されるため、作業性は良くない。したがって、本実施形態に係るハンドレール除菌装置5によれば、ハンドレール除菌装置5の着脱性を向上させることができ、点検や交換等のメンテナンス作業を簡単かつ迅速に行うことができる。
【0037】
なお、図4及び図5に示すように、複数の紫外線源50,…のリード線は、1つのコード51に集線され、コード51は、作動体41から引き出され、固定ベース43を介して安全スイッチ44のコード44bとともに制御部に向けて配線される。コード51は、作動体41のフランジ部41bの端面のうち、可動ベース42の取付部42aと重ならない部分から引き出され、固定ベース43に到達する。したがって、コード51は、ハンドレール22及び可動ベース42と接触することはなく、これらによって損傷を受けることはない。しかも、コード51の固定ベース43上の途中部には、コネクタ52が設けられ、コード51は、コネクタ52によって分離可能である。したがって、本実施形態に係るハンドレール除菌装置5によれば、コネクタ52によってコード51を分離することにより、ハンドレール除菌装置5を完全に切り離すことができ、点検や交換等のメンテナンス作業を簡単かつ迅速に行うことができる。
【0038】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【0039】
上記実施形態においては、紫外線源50は、作動体41のハンドレール挿通孔41cの周方向に等間隔で設けられる。しかし、本発明は、これに限定されるものではない。紫外線源は、不等間隔で設けられるものであってもよい。たとえば、図8(a)に示すように、紫外線源50は、ハンドレール挿通孔41cのうち、ハンドレール22の中央部22aに対応する部分は密、ハンドレール22の左右の側部22b,22b及び左右の折返し端部22c,22cに対応する部分は疎、となるように配置することができる。これにより、照射光量分布を均一にすることができる。
【0040】
また、上記実施形態においては、紫外線源50は、作動体41のハンドレール挿通孔41cのうち、ハンドレール22の中央部22a、側部22b及び折返し端部22cに対応する部分に設けられる。しかし、乗客がハンドレール22の折り返し端部22cまで触れる頻度は高くはないと考えられる。このような場合は、図8(b)に示すように、紫外線源50は、折返し端部22cを除き、ハンドレール22の中央部22a及び側部22bに対応する部分に設けられるようにしてもよい。あるいは、紫外線源50は、ハンドレール22の中央部22aに対応する部分にのみ設けられるようにしてもよい。
【0041】
また、上記実施形態においては、紫外線源50は、作動体41のハンドレール挿通孔41cに埋設される。しかし、本発明は、これに限定されるものではない。紫外線源は、以下に説明するものを一例として、各種の形態で設けることができる。
【0042】
図9に示す例は、フレキシブル基板53を用いる例である。フレキシブル基板53は、長尺な帯状であり、湾曲可能な可撓性を有し、紫外線源50の回路基板を構成する。紫外線源50は、フレキシブル基板53の一方の面に、フレキシブル基板53の長手方向に所定間隔で複数実装される。
【0043】
作動体41のハンドレール挿通孔41cは、ハンドレール22の表面との隙間が広くなるハンドレール挿通孔41cの周方向に沿った凹部として、段差凹部41dではなく、溝部41eを備える。溝部41eは、フレキシブル基板53が一方の面を内側にしてハンドレール22を取り囲むように、かつ、フレキシブル基板53がハンドレール22の横断面外形状が外側にオフセットしたオフセット形状と一致するように、フレキシブル基板53を湾曲させて支持する。なお、溝部41eの各端部には、フレキシブル基板53の端部を係止する係止部として、溝部41eの端部を閉止する閉止部41fが設けられる。
【0044】
フレキシブル基板53は、他方の面が溝部41eの底面と対向するように、溝部41eの底面に沿って配置される。フレキシブル基板53は、ビス、粘着剤、接着剤等の公知の固定手段により、溝部41eの底面に固定される。しかし、フレキシブル基板53は、固定手段の固定を解除することにより、溝部41eに対し、着脱自在である。
【0045】
この例によれば、作動体41は、溝部41eを備えるだけでよく、紫外線源50を埋設する必要はない。紫外線源50の配置や数量は、フレキシブル基板53に対して適宜設定することができる。
【0046】
なお、図示しないが、作動体41のハンドレール挿通孔41cのうち、溝部41eの側壁面とフランジ部41bの端面との間の部分の一部には、フレキシブル基板53から延びるコード51を通す小溝部が形成される。これにより、コード51がハンドレール22と接触するリスクを無くすことができる。
【0047】
図10に示す例は、紫外線源50が実装されたフレキシブル基板53を作動体41の筒状部41aにインサート成型した例である。もちろん、インサート成型は、紫外線源50の出射面が作動体41のハンドレール挿通孔41cの内面に露出するように行われる。
【0048】
この例によれば、紫外線源50及びフレキシブル基板53は、作動体41の筒状部41a内に水密状態で埋設される。したがって、耐水性が向上し、屋外に設置されるエスカレータに好適である。
【0049】
また、上記実施形態においては、インレット安全装置40は、可動ベース42を介して安全スイッチ44が操作されるものである。しかし、本発明は、これに限定されるものではない。たとえば、作動体が安全スイッチのアクチュエータに直接接触することにより安全スイッチを直接的に作動させる形態のインレット安全装置であってもよい。
【0050】
また、上記実施形態においては、作動体41は、筒状部41a及びフランジ部41bで構成される。しかし、本発明において、フランジ部は必須ではない。
【0051】
また、上記実施形態においては、インレット(出入り口)37は、作動体41のフランジ部41の外形状よりもわずかに小さい形状である。しかし、本発明は、これに限定されるものではない。インレットは、作動体のフランジ部、すなわち、作動体の寸法最大部よりも大きな形状であってもよい。この場合、上記「i)インレットガード33のカバー34を左右に分割して外し」の工程を不要とし、点検や交換等のメンテナンス作業をさらに簡単かつ迅速に行うことができる。
【0052】
また、「矩形状」、「長円形状」、「端部」、「中央」、「中間」、「側部」、「直交」、「等しい」、「面一」、「等間隔」、「均一」といった形状、部位又は状態を特定する用語は、本発明において、そのもののほか、それに近いないし類するという意味の「略」の概念も含むものである。
【0053】
また、上記実施形態においては、乗客コンベアは、エスカレータである。しかし、本発明は、動く歩道にも適用できることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0054】
1…エスカレータ、10…フレーム、2…搬送部、20…無端搬送体、21…踏段(ステップ)、22…ハンドレール、22a……中央部、22b…側部、22c…折返し端部、23…欄干パネル、24…ハンドレールガイド、3…遮蔽部、30…デッキカバー、30A…内デッキカバー、30B…外デッキカバー、31…スカートガード、32…外装板、33…インレットガード、34…カバー、34A…内カバー、34B…外カバー、35…インレット部、36…切欠き、37…インレット、40…インレット安全装置、41…作動体、41a…筒状部、41b…フランジ部、41c…ハンドレール挿通孔、41d…段差凹部、41e…溝部、41f…閉止部(係止部)、42…可動ベース、42a…取付部、42b…ハンドレール挿通孔、42c…ビス孔、42d…接触部、43…固定ベース、43a…取付部、44…安全スイッチ、44a…アクチュエータ、44b…コード、45…ビス、46…圧縮バネ、5…ハンドレール除菌装置、50…紫外線LED(紫外線源)、51…コード、52…コネクタ、53…フレキシブル基板
図1
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図7
図8
図9
図10