(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022114381
(43)【公開日】2022-08-05
(54)【発明の名称】外反母趾サポータ及び外反母趾予防・矯正具
(51)【国際特許分類】
A61F 5/10 20060101AFI20220729BHJP
【FI】
A61F5/10
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021010684
(22)【出願日】2021-01-26
(71)【出願人】
【識別番号】521404222
【氏名又は名称】松浦 妙子
(74)【代理人】
【識別番号】100128277
【弁理士】
【氏名又は名称】專徳院 博
(72)【発明者】
【氏名】石田 真一
【テーマコード(参考)】
4C098
【Fターム(参考)】
4C098AA02
4C098BB12
4C098BC03
4C098BC15
4C098BC46
4C098BD01
(57)【要約】
【課題】日常生活において無理なく長時間着用できる外反母趾予防・矯正のための外反母趾サポータ及び外反母趾予防・矯正具を提供する。
【解決手段】足の親指を収容する親指収容袋10と、前記親指収容袋10の内側に位置する部分にその一端が結合され、足の内側(ないそく)に沿って踵に向けて延びる、弾性を有する引張ベルト20と、前記引張ベルト20を伸長させた状態で足の内側(ないそく)に沿う位置に保持する、前記引張ベルト20の他端20bに結合された保持手段30と、前記引張ベルト20の引張荷重を前記親指収容袋10に伝達する、周囲より高い軸剛性を有する引張荷重伝達手段である線状補強部40と、を有する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
足の親指を収容する親指収容袋と、
前記親指収容袋の足の内側(ないそく)側に位置する部分にその一端が結合され、足の内側(ないそく)に沿って踵に向けて延びる、弾性を有する引張ベルトと、
前記引張ベルトを伸長させた状態で足の内側(ないそく)に沿う位置に保持する、前記引張ベルトの他端に結合された保持手段と、
前記引張ベルトの引張荷重を前記親指収容袋に伝達する、周囲より高い軸剛性を有する引張荷重伝達手段と、
を有することを特徴とする外反母趾サポータ。
【請求項2】
前記引張荷重伝達手段は、下記(A)群の1種又は2種以上の組み合わせで構成され、少なくとも前記親指収容袋の親指の爪先が位置する部分から前記引張ベルトの前記他端まで足の内側(ないそく)に沿って直線状に設けられていることを特徴とする請求項1に記載の外反母趾サポータ。
(A)連続する縫合糸のステッチで形成された線状補強部,前記親指収容袋及び/又は前記引張ベルトに取付けられた帯状体,前記親指収容袋を縫製する際の縫合糸による接合部
【請求項3】
少なくとも前記親指収容袋の親指の爪先が位置する部分に取付けられ当該部分を補強し、親指が前記親指収容袋により局部的に圧迫され又は前記親指収容袋が親指に食い込むことを抑止する局部圧迫抑止手段を備えることを特徴とする請求項1又は2に記載の外反母趾サポータ。
【請求項4】
前記局部圧迫抑止手段が、前記親指収容袋の内面であって、少なくとも親指の爪先が位置する部分に取付けられた帯状体及び/又は袋状体であることを特徴とする請求項3に記載の外反母趾サポータ。
【請求項5】
前記保持手段が、前記引張ベルトの他端に結合された、足首に巻き回される環状の第1ベルトと、踵から足裏を通り前記引張ベルトの前記他端に固定される第2ベルトと、を有することを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の外反母趾サポータ。
【請求項6】
前記第2ベルト及び前記第1ベルトの少なくともいずれか一方が、長さを調整可能に構成されていることを特徴とする請求項5に記載の外反母趾サポータ。
【請求項7】
前記親指収容袋と前記引張ベルトとが一体に形成されていることを特徴とする請求項1から6のいずれか1項に記載の外反母趾サポータ。
【請求項8】
請求項1から7のいずれか1項に記載の外反母趾サポータと、
弾性を有する帯から成り、左右の足の親指をその内部に収容する環状部を有する矯正ベルトと、
を備え、
前記矯正ベルトが、互いに連結された周長の異なる二つの前記環状部を有することを特徴とする外反母趾予防・矯正具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、外反母趾を予防又は矯正する外反母趾サポータ及び外反母趾予防・矯正具に関する。
【背景技術】
【0002】
外反母趾を予防又は矯正すべく足先に装着して使用する外反母趾サポータが、これまで種々提案されている。例えば足の親指(母趾,第1趾)を挿入する親指挿入部と、足先に装着するための足先装着部とを備え、足先に装着すると、親指挿入部の付根付近の側面が、足先装着部側に引っ張られる外反母趾サポータがある。これにより親指の先端が小指(第5趾)側を向くことを防止し、外反母趾を予防又は矯正することができる(例えば特許文献1参照)。
【0003】
また他の代表的な外反母趾サポータとして、足の親指と第2趾との間に弾性部材を嵌め入れ、足の親指の先端が小指側を向くことを防止し、外反母趾を予防又は矯正するものがある。特許文献2には、足先に装着するバンドに足の親指と第2趾との間に嵌め入る弾性部材を取付けてなる外反母趾矯正用サポータが示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2018-118012号公報
【特許文献2】実用新案登録第3158858号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
外反母趾サポータによる外反母趾の矯正には長期間を要するため、外反母趾サポータは、日常生活において無理なく長時間着用できるものが好ましい。このためには外反母趾サポータを長時間着用しても母趾、あるいは足先に痛みが出ないことが重要である。また外反母趾サポータを長時間着用する点からは、外反母趾サポータを装着した状態で靴を履くことができる、または外反母趾サポータを装着した状態でその上からストッキング、靴下を履き、さらに靴を履くことができることが好ましい。
【0006】
外反母趾の予防又は矯正には外反母趾サポータの着用の他に、母趾又はその周りのマッサージも重要である。母趾あるいは足先のマッサージは、外反母趾に起因する痛みを取ることにも役立つ。簡単に使用することができ使い勝手のよい外反母趾の予防又は矯正に役立つマッサージ具も求められている。
【0007】
本発明の目的は、日常生活において無理なく長時間着用できる外反母趾予防・矯正のための外反母趾サポータ及び外反母趾予防・矯正具を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、足の親指を収容する親指収容袋と、前記親指収容袋の足の内側(ないそく)側に位置する部分にその一端が結合され、足の内側(ないそく)に沿って踵に向けて延びる、弾性を有する引張ベルトと、前記引張ベルトを伸長させた状態で足の内側(ないそく)に沿う位置に保持する、前記引張ベルトの他端に結合された保持手段と、前記引張ベルトの引張荷重を前記親指収容袋に伝達する、周囲より高い軸剛性を有する引張荷重伝達手段と、を有することを特徴とする外反母趾サポータである。
【0009】
本発明に係る外反母趾サポータにおいて、前記引張荷重伝達手段は、下記(A)群の1種又は2種以上の組み合わせで構成され、少なくとも前記親指収容袋の親指の爪先が位置する部分から前記引張ベルトの前記他端まで足の内側(ないそく)に沿って直線状に設けられていることを特徴とする。
(A)連続する縫合糸のステッチで形成された線状補強部,前記親指収容袋及び/又は前記引張ベルトに取付けられた帯状体,前記親指収容袋を縫製する際の縫合糸による接合部
【0010】
本発明に係る外反母趾サポータは、少なくとも前記親指収容袋の親指の爪先が位置する部分に取付けられ当該部分を補強し、親指が前記親指収容袋により局部的に圧迫され又は前記親指収容袋が親指に食い込むことを抑止する局部圧迫抑止手段を備えることを特徴とする。
【0011】
本発明に係る外反母趾サポータにおいて、前記局部圧迫抑止手段が、前記親指収容袋の内面であって、少なくとも親指の爪先が位置する部分に取付けられた帯状体及び/又は袋状体であることを特徴とする。
【0012】
本発明に係る外反母趾サポータにおいて、前記保持手段が、前記引張ベルトの他端に結合された、足首に巻き回される環状の第1ベルトと、踵から足裏を通り前記引張ベルトの前記他端に固定される第2ベルトと、を有することを特徴とする。
【0013】
本発明に係る外反母趾サポータは、前記第2ベルト及び前記第1ベルトの少なくともいずれか一方が、長さを調整可能に構成されていることを特徴とする。
【0014】
本発明に係る外反母趾サポータは、前記親指収容袋と前記引張ベルトとが一体に形成されていることを特徴とする。
【0015】
本発明は、前記外反母趾サポータと、弾性を有する帯から成り、左右の足の親指をその内部に収容する環状部を有する矯正ベルトと、を備え、前記矯正ベルトが、互いに連結された周長の異なる二つの前記環状部を有することを特徴とする外反母趾予防・矯正具である。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、日常生活において無理なく長時間着用できる外反母趾予防・矯正のための外反母趾サポータ及び外反母趾予防・矯正具を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明の第1実施形態に係る外反母趾サポータを右足に装着した状態を示す図であって、(a)は足の甲を見る正面図であり、(b)は足の内側(ないそく)を見る左側面図である。
【
図2】本発明の第1実施形態に係る外反母趾サポータを右足に装着した状態を示す図であって、(a)は足の裏を見る背面図であり、(b)は足の外側(がいそく)を見る右側面図であり、(c)は足の踵を見る底面図である。
【
図3】本発明の第1実施形態に係る外反母趾サポータを示す図であって、(a)は
図1(b)に示された外反母趾サポータのみの一部を拡大して示す拡大図であり、(b)は(a)におけるB-B断面を示す断面図である。
【
図4】本発明の第1実施形態に係る外反母趾サポータを示す図であって、(a)は
図1(a)のA部分を拡大して示す拡大図であり、(b)は(a)のC-C断面を拡大して示す拡大断面図である。
【
図5】本発明の第2実施形態に係る外反母趾サポータの要部を説明するための図であって、(a)は左側面図であり、(b)は正面図であり、(c)は右側面図であり、(d)は(c)のD-D断面を拡大して示す拡大断面図である。
【
図6】本発明の第3実施形態に係る外反母趾予防・矯正具を示す図であって、(a)は本実施形態に係る外反母趾予防・矯正具の矯正ベルトの斜視図であり、(b)は矯正ベルトの使用状態を説明する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
次に、本発明に係る外反母趾サポータ及び外反母趾予防・矯正具の実施形態について図面を参照しながら説明する。なお、以下に述べる実施形態は、本発明の好適な実施形態であるから、技術的に好ましい種々の限定が付されているが、本発明の範囲は、以下の説明において特に本発明を限定する旨の記載がない限り、これらの態様に限られるものではない。
【0019】
[外反母趾サポータの実施形態]
本発明の第1実施形態に係る外反母趾サポータ1の構成について、
図1~4に基づき説明する。なお、ここで図示する外反母趾サポータ1は右足用のものであり、左足用のものは図示のものと対称の構成となる。
【0020】
外反母趾サポータ1は、図示するように足に装着可能なように構成されており、足の親指を収容する親指収容袋10、親指収容袋10に結合され親指収容袋10を後方に引っ張る引張ベルト20、及び引張ベルト20の位置を保持する保持手段30を主たる構成要素として備える。外反母趾サポータ1は、主として、面内のいずれの方向にも伸縮性を有するパワーネット生地のような弾性経編地が縫製されて構成されている。
【0021】
外反母趾サポータ1の生地は、裁断したままの状態でも縁が解れ難く、縁始末を行うことを必要としない弾性経編地が好ましい。解れを防止するために縁部分を折り返し、あるいは別の生地を縫い付けるなどの縁始末を行うと縁部分の厚さが増し、着用感を損なう。特に本外反母趾サポータ1を装着し、その上からストッキング又は靴下、さらに靴を履くような場合には、縁部分の厚さが増すことは好ましくない。
【0022】
外反母趾サポータ1の生地の厚さは特に限定されるものではないが、薄いものが好ましく、一例を示せば厚さが0.5mm程度の弾性経編地である。0.5mmの弾性経編地を用い製作した外反母趾サポータ1は、本外反母趾サポータ1を装着し、その上からストッキング、さらに靴を履き、日常生活において無理なく長時間着用できることが確認できた。
【0023】
親指収容袋10は、
図1(a),(b)に示すように、足の親指を、爪先から付け根まですっぽりと収容する袋状に形成されており、足の内側(ないそく)において、引張ベルト20の一端20aに結合されている。
【0024】
引張ベルト20は弾性を有し、伸長した状態で足の内側(ないそく)に沿って配置され、その位置が保持手段30により保持される。なお本実施形態において、親指収容袋10と引張ベルト20とは縫製により一体に形成されている。
【0025】
保持手段30は、具体的には、第1ベルト31及び第2ベルト32から構成されている。外反母趾サポータ1が足に装着される際には、第1ベルト31は足首に、第2ベルト32は踵から足裏に巻き回され固定される。外反母趾サポータ1が足に装着されると、引張ベルト20の他端20bの位置が決まり、これにより、引張ベルト20は伸長した状態で足の内側(ないそく)に沿って配置される。外反母趾サポータ1が足に装着されると、引張ベルト20は伸長した状態となるため、親指収容袋10は足の内側(ないそく)に沿って後方に引っ張られる。
【0026】
第1ベルト31は環状であり、
図1(b)に示すように、引張ベルト20の他端20bから後方に延び踵のやや上方を通り、
図1(a)に示すように、足の甲の上を通り、引張ベルト20の他端20bに結合される。第1ベルト31は伸縮性を有し、足首にフィットする。なお、
図1(b)に示すように、親指収容袋10から引張ベルト20を通り第1ベルト31の踵のやや上方に至るまでの区間は、足の内側(ないそく)に沿って、ほぼ直線状に延びている。
【0027】
第2ベルト32は、
図2(b)に示すように足の外側(がいそく)に位置する分岐部32aにおいて、第1ベルト31から分岐し、
図2(a)に示すように足の裏を通り、
図1(b)に示すように、第2ベルト32の端部32bが、引張ベルト20の他端20bに固定される。第2ベルト32は伸縮性を有し、踵にフィットする。
【0028】
引張ベルト20の他端20bの表面には、面ファスナのループ側である雌側面ファスナ21が設けられており、第2ベルト32の端部32bの、引張ベルト20の他端20bの表面と対向する面には、面ファスナのフック側である雄側面ファスナ33が設けられている。雌側面ファスナ21と雄側面ファスナ33とを結合することで、第2ベルト32の端部32bが引張ベルト20の他端20bに固定される。このように第2ベルト32の端部32bは着脱可能であり、第2ベルト32の全長を調整することができる。
【0029】
次に親指収容袋10から引張ベルト20にわたって形成されている線状補強部40について、
図1及び
図3に基づき説明する。
図1(b)に示すように、親指収容袋10において親指の爪先が位置する部分から、引張ベルト20の他端20bに至るまで、足の内側(ないそく)に沿って直線状に連なる線状補強部40が形成されている。線状補強部40は、その周囲より軸剛性が高く構成されている。ここで軸剛性とは、線状補強部40の延びる方向における線膨張係数(ヤング率)を意味する。
【0030】
本実施形態における線状補強部40は、
図3に示すように、親指収容袋10における親指の第2趾側の付け根部から爪先部分を通り引張ベルト20の他端20bまで連続する縫合糸のステッチ41を設けることによって形成されている。縫合糸の伸縮性やステッチ41の種類・密度によって、軸剛性は変化し、例えばステッチ41を密にすれば軸剛性は高くなる。縫合糸及びステッチ41の種類は任意に選択することができる。
【0031】
外反母趾サポータ1を装着した際に足の内側(ないそく)に沿う線状補強部40が存在することによって、伸長している引張ベルト20の弾性に起因する引張荷重は、線状補強部40を伝って、親指収容袋10の爪先部分まで確実に到達する。そのため、足の親指には、
図1(a)に示す矢印の方向に曲げモーメントが作用する。この曲げモーメントは親指を内側(足の内側(ないそく)側)に反らせる方向に働くため、外反母趾が矯正される。以上のように線状補強部40は、引張ベルト20の引張荷重を親指収容袋10に伝達する引張荷重伝達手段として機能する。
【0032】
本実施形態に係る外反母趾サポータ1の線状補強部40は、連続する縫合糸のステッチ41で構成されており、これにより、生地の厚さを増すことなく軸剛性を高くすることができ、快適に装着することができる。また、外反母趾サポータ1を装着したまま靴などを履いた場合でも圧迫感を抑制することができる。
【0033】
また本実施形態に係る外反母趾サポータ1は、
図3に示すように、親指収容袋10の内面に帯状体42が取付けられている。帯状体42は、引張ベルト20と同様の弾性体から成り、親指の外周に沿うように親指収容袋10の内面に、線状補強部40を形成するステッチ41により縫合されている。帯状体42は、親指収容袋の親指の爪先が位置する部分を補強する部材である。帯状体42が親指の爪先部に存在することによって、引張ベルト20の引張荷重が親指に均等に作用することになり、親指が局部的に圧迫されるのを抑制でき、快適に装着することができる。
【0034】
以上のように帯状体42は、引張ベルト20の引張荷重を分散させる引張荷重分散手段であり、また親指が親指収容袋10により局部的に圧迫され、又は親指収容袋10が親指に食い込むことを抑止する局部圧迫抑止手段ということもできる。
【0035】
また帯状体42は、親指の外周に沿うように親指収容袋10の内面に縫合されているので、当該部分の軸剛性がその周囲よりも高くなっている。このため帯状体42は、線状補強部40と同様に、引張ベルト20の引張荷重を親指収容袋10に伝達する引張荷重伝達手段としても作用する。なお帯状体42は、弾性の有無を問わず、補強の機能を果たす任意の材料(素材)を採用することができる。
【0036】
次に、外反母趾サポータ1の親指収容袋10の縫製について、
図4に基づき説明する。親指収容袋10は、生地を袋状に縫製して構成されている。親指収容袋10は、
図4(a)に示すように、生地1cと生地1dとが接合される接合部1bを有しており、複数の接合部を備えることで袋状に構成される。接合部1bでは、
図4(b)に示すように、生地1cと生地1dとが上下に重ねられて、縫合糸Sを用いて重ね接ぎで縫合されている。これにより接合部1bにおける厚さを薄くすることができ、外反母趾サポータ1を装着したまま靴などを履いた場合でも圧迫感を抑制することができる。なお、縫合は任意の縫い方ですることができる。
【0037】
本発明の第1実施形態に係る外反母趾サポータ1は、構成上の特性、さらには線状補強部40、帯状体42により親指を無理なく第2趾とは反対方向に引っ張ることができ、外反母趾を矯正することができる。さらに外反母趾サポータ1は、全体的に生地が薄く、接合、縫合部分も厚くならないように工夫されているので外反母趾サポータを装着し、その上からストッキング、さらに靴を履き、日常生活において無理なく長時間着用できる。
【0038】
本発明の第2実施形態に係る外反母趾サポータ2の構成について、
図5に基づき説明する。
図1から
図4に示す本発明の第1実施形態に係る外反母趾サポータ1と同一の構成には同一の符号を付して説明を省略する。なお、
図5に図示する外反母趾サポータ2は右足用のものであり、左足用のものは図示のものと対称の構成となる。
【0039】
本発明の第2実施形態に係る外反母趾サポータ2は、本発明の第1実施形態に係る外反母趾サポータ1と基本構成を同じくするが、親指収容袋10、引張ベルト20廻りの構成が異なる。
【0040】
第2実施形態に係る外反母趾サポータ2の親指収容袋10は、内面に補強袋体11が取付けられ2重となっている。補強袋体11は、親指収容袋10と同じ素材の生地11cと生地11dとが、親指収容袋10の内面に縫合糸Sで袋状に縫合されている。この補強袋体11は、親指収容袋10を補強し、親指が親指収容袋10により局部的に圧迫され、又は親指収容袋10が親指に食い込むことを抑止する局部圧迫抑止手段として機能する。
【0041】
また第2実施形態に係る外反母趾サポータ2は、引張ベルト20に帯状体43が縫合されている。第1実施形態に係る外反母趾サポータ1では、引張ベルト20に縫合糸のステッチ41による線状補強部40が設けられているが、外反母趾サポータ2では線状補強部40に代えて帯状体43が縫合されている。帯状体43は、機能的には外反母趾サポータ1の線状補強部40と同じであり、当該部分の軸剛性をその周囲よりも高くする。
【0042】
帯状体43は、親指収容袋10と同じ素材の生地からなり、一端部が補強袋体11につながり、他端部が引張ベルト20の他端20bに至るように配置されている。帯状体43は、後述の親指収容袋10の接合部2bと協働し、引張ベルト20の引張荷重を親指収容袋10に伝達する引張荷重伝達手段として機能する。帯状体43は、素材、縫合糸の伸縮性や縫合具合によって、軸剛性は変化し、例えば伸縮性の低い生地を使用すれば軸剛性は高くなる。
【0043】
第2実施形態の外反母趾サポータ2の親指収容袋10も、第1実施形態の外反母趾サポータ1の親指収容袋10と同様に、生地を袋状に縫製して構成されている。親指収容袋10は、
図5(a)、(c)に示すように、生地2cと生地2dとが接合部2bで接合される。このとき補強袋体11も一緒に縫合される。本実施形態における接合部2bは、親指の第2趾側の付け根部から爪先部分を通り親指の内側の途中までである。親指収容袋10の接合部2bは、親指収容袋10の縫製具合により、親指の第2趾側の付け根部から爪先部分を通り帯状体43につながるように設けられていてもよい。
【0044】
外反母趾サポータ2の親指収容袋10の接合部2bは、親指収容袋10を袋状に接合する他に、補強袋体11を親指収容袋10に縫合し固定する(
図5(d)参照)。さらに接合部2bは、親指の第2趾側の付け根部から爪先部分を通り親指の内側の途中まで縫合糸Sで縫合されており、その延長線上には帯状体43が位置する。この接合部2bを接合する縫合糸Sのステッチは、第1実施形態の線状補強部40と同様に軸剛性を高めるように作用する。
【0045】
第2実施形態に係る外反母趾サポータ2の作用効果は、基本的に第1実施形態に係る外反母趾サポータ1と同じであるが、局部圧迫抑止手段として機能する補強袋体11は、第1実施形態に係る外反母趾サポータ1において局部圧迫抑止手段として機能する帯状体42に比べて面積が広いので、親指が親指収容袋10により局部的に圧迫され、又は親指収容袋10が親指に食い込むことをより効果的に抑止することができる。さらに親指収容袋10を袋状に接合する接合部2bが線状補強部として作用するので効率的である。
【0046】
[外反母趾予防・矯正具の実施形態]
次に本発明の第3実施形態に係る外反母趾予防・矯正具の構成について説明する。本発明の第3実施形態に係る外反母趾予防・矯正具は、上記の外反母趾サポータ1、2と、足の親指をマッサージするための矯正ベルトとのセットで構成される。以下は、矯正ベルト50について
図6に基づき説明する。
【0047】
矯正ベルト50は、
図6(a)に示すように、環状に形成された帯50aについて、縫合部50bで対向する帯50a同士を縫合することで、二つの環状部51、52を形成したものである。帯50aは弾性を有する生地から成り、また環状部51の周長は環状部52の周長より大きく設定されている。環状部51及び環状部52のいずれも、左右の足の親指を収容できる大きさとなっている。環状部51及び環状部52の大きさは、それぞれ対向する帯50aを合わせた状態で長手方向の長さを200mm及び100mmとすることができる。
【0048】
次に矯正ベルト50を使用した親指のマッサージ方法について、
図6(b)に基づき説明する。左右の足の親指を環状部51又は環状部52に挿入し、左右の踵同士を合わせる。そして踵を支点にして足先を広げる。足先を広げると、矯正ベルト50の帯50aの弾性によって、左右の親指が内に反る。この姿勢をしばらく維持した後、足先をもとに戻す。このサイクルを繰り返すことによって、外反母趾を矯正することができる。
【0049】
なお、図示の矯正ベルト50では、三段階の強度でマッサージを行うことができる。左右の足の親指を両方とも環状部52に収容した場合が最も強度が高く、左右の足の親指を両方とも環状部51に収容した場合がその次に強度が高く、左右の足の親指を環状部51及び環状部52それぞれに収容した場合が最も強度が低い。矯正ベルト50を用いると、外反母趾の程度や体力に応じて、強度を選択することができる。
【0050】
矯正ベルト50を構成する帯50aの素材として、前述の外反母趾サポータ1、2と同様に弾性経編地を使用することができるが、素材はこれに限られることなく任意に選択することができ、長手方向の一方向にのみ伸縮性を有するゴム紐のような弾性材を使用しても十分に機能する。
【0051】
この矯正ベルト50を用いたマッサージを定期的に行いつつ、日常的に外反母趾サポータを装着することで、外反母趾を予防し、あるいは外反母趾となった場合にはそれを効果的に矯正することが可能となる。
【0052】
[外反母趾サポータの変形例]
以上のように第1及び第2実施形態に係る外反母趾サポータ1、2を用い、本発明に係る外反母趾サポータを説明したが、本発明に係る外反母趾サポータは、上記形態は限定されるものではなく、要旨を変更しない範囲で変更して使用することができる。
【0053】
第1実施形態に係る外反母趾サポータ1は、親指収容袋10の親指の第2趾側の付け根部から爪先部分を通り引張ベルト20の他端20bまで連続する縫合糸のステッチ41により線状補強部40が形成されるが、線状補強部40は、少なくとも親指収容袋10の親指の爪先が位置する部分から引張ベルト20の他端20bまで設けられていればよい。
【0054】
第1実施形態に係る外反母趾サポータ1では、線状補強部40のうち多くの部分を連続する縫合糸のステッチ41で構成していたが、線状補強部全体を紐状・帯状の部材で構成することも可能である。また線状補強部について、生地を重ねて構成することも可能である。
【0055】
引張ベルト20の引張荷重を親指収容袋10に伝達する引張荷重伝達手段は、線状補強部40、帯状体42、帯状体43、さらには親指収容袋10を縫製する際の接合部2bを適宜組み合わせ形成することができる。このとき使用する生地、縫合糸の伸縮性、ステッチの種類・密度についても適宜選択し使用することができる。引張荷重伝達手段は、少なくとも親指収容袋10の親指の爪先が位置する部分から引張ベルト20の他端20bまで連続して設けられていることが好ましいが、断続的に設けられていてもよい。
【0056】
親指が親指収容袋10により局部的に圧迫され、又は親指収容袋10が親指に食い込むこと抑止する局部圧迫抑止手段も、適宜変更して使用することができる。第2実施形態に係る外反母趾サポータ2では、補強袋体11の大きさが親指収容袋10とほぼ同じであるが、補強袋体11の大きさを親指の足先、爪先を覆う大きさとしてもよい。
【0057】
上記の実施形態に係る外反母趾サポータ1は全体的に、伸縮性を有する弾性経編地で構成されていたが、素材はこれに限られず任意の生地を使用することができ、例えば伸縮性を有さない生地で親指収容袋10を構成することも可能である。また上記の実施形態では親指収容袋10と引張ベルト20とが一体で構成されていたが、これらを別体とし、伸縮性を有さない生地からなる親指収容袋と、伸縮性を有する生地からなる引張ベルトとを結合して構成することも可能である。
【0058】
また上記の外反母趾サポータ1、2では、第2ベルト32が面ファスナにより着脱可能に構成されていたが、この構成に代えて、第1ベルト31を面ファスナにより着脱可能とし、第2ベルト32の両端は固定とすることも可能である。また第1ベルト31及び第2ベルト32いずれも面ファスナにより着脱可能に構成することも可能である。換言すれば第1ベルト31及び/又は第2ベルト32の長さを調整可能に構成することができる。また着脱方法についても、面ファスナに代えてホックやボタンなど、任意の方法を採用することが可能である。
【0059】
また保持手段30を構成する第1ベルト31及び第2ベルト32は、いずれも両端を固定とすることも可能である。また保持手段30は、引張ベルト20の他端20bの位置が定まる任意の構成を採用することが可能であり、例えば、踵を覆うソックス状のものに引張ベルト20の他端20bを結合すれば、引張ベルト20の位置を保持する保持手段として機能する。
【0060】
以上のとおり、図面を参照しながら好適な実施形態を説明したが、当業者であれば、本明細書を見て、自明な範囲内で種々の変更及び修正を容易に想定するであろう。従って、そのような変更及び修正は、請求の範囲から定まる発明の範囲内のものと解釈される。
【符号の説明】
【0061】
1、2 外反母趾サポータ
1b、2b 接合部
1c、1d 生地
2c、2d 生地
10 親指収容袋
11 補強袋体
11c、11d 生地
20 引張ベルト
20a 一端
20b 他端
21 雌側面ファスナ
30 保持手段
31 第1ベルト
32 第2ベルト
32a 分岐部
32b 端部
33 雄側面ファスナ
40 線状補強部
41 ステッチ
42、43 帯状体
50 矯正ベルト
50a 帯
50b 縫合部
51、52 環状部