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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022114411
(43)【公開日】2022-08-05
(54)【発明の名称】半導体受光素子
(51)【国際特許分類】
   H01L 31/10 20060101AFI20220729BHJP
【FI】
H01L31/10 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021078578
(22)【出願日】2021-05-06
(31)【優先権主張番号】P 2021010676
(32)【優先日】2021-01-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】301005371
【氏名又は名称】日本ルメンタム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000154
【氏名又は名称】特許業務法人はるか国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】豊中 隆司
(72)【発明者】
【氏名】濱田 博
(72)【発明者】
【氏名】田中 滋久
【テーマコード(参考)】
5F849
【Fターム(参考)】
5F849AA02
5F849AA03
5F849AB07
5F849BA03
5F849BA15
5F849BB01
5F849CB08
5F849DA02
5F849GA06
5F849HA09
5F849LA01
5F849XB18
5F849XB36
5F849XB40
(57)【要約】      (修正有)
【課題】空乏化できる領域が大きく、低容量で高速応答性に優れた半導体受光素子を提供する。
【解決手段】半導体基板と、半導体基板上に形成された第1導電型高濃度層と、第1導電型高濃度層の上に接して形成された第1導電型低濃度層と、第1導電型低濃度層とPN接合界面を形成する第2導電型低濃度層と、第2導電型低濃度層の上に接して形成された第2導電型高濃度層と、を備え、第1導電型低濃度層および第2導電型低濃度層のキャリア濃度は1×10^16cm-3未満であり、第1導電型高濃度層は第1導電型低濃度層よりキャリア濃度が高く、第2導電型高濃度層は第2導電型低濃度層よりキャリア濃度が高く、第1導電型高濃度層と第2導電型高濃度層のキャリア濃度は1×10^17/cm^3以上であり、第1導電型低濃度層もしくは第2導電型低濃度層のいずれか一方は入射する光を吸収するバンドギャップを備えた吸収層を含む、半導体受光素子。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体基板と、
前記半導体基板上に形成された第1導電型高濃度層と、
前記第1導電型高濃度層の上に接して形成された第1導電型低濃度層と、
前記第1導電型低濃度層とPN接合界面を形成する第2導電型低濃度層と、
前記第2導電型低濃度層の上に接して形成された第2導電型高濃度層と、を備え、
前記第1導電型低濃度層および前記第2導電型低濃度層のキャリア濃度は1×10^16/cm^3未満であり、
前記第1導電型高濃度層は前記第1導電型低濃度層よりキャリア濃度が高く、
前記第2導電型高濃度層は前記第2導電型低濃度層よりキャリア濃度が高く、
前記第1導電型高濃度層と前記第2導電型高濃度層のキャリア濃度は1×10^17/cm^3以上であり、
前記第1導電型低濃度層もしくは前記第2導電型低濃度層の少なくとも一方は、入射する光を吸収するバンドギャップを備えた吸収層を含む、
半導体受光素子。
【請求項2】
請求項1に記載の半導体受光素子であって、
前記第1導電型低濃度層の厚みは、数式1、数式2及び数式3により定義される厚みDn0の1.1倍以下であり、
前記第2導電型低濃度層の厚みは、数式1、数式2及び数式3により定義される厚みDp0の1.1倍以下である、
半導体受光素子。
【数1】
【数2】
【数3】
Vr:外部より印可されるバイアス電圧
Vb:ビルトインポテンシャル
q :素電荷
εp:第2導電型低濃度層の誘電率
εn:第1導電型低濃度層の誘電率
【請求項3】
請求項2に記載の半導体受光素子であって、
前記第1導電型低濃度層の厚みは、前記Dn0以下であり、
前記第2導電型低濃度層の厚みは、前記Dp0以下である、
半導体受光素子。
【請求項4】
請求項1乃至3に記載の半導体受光素子であって、
前記第1導電型高濃度層は第1導電型コンタクト層であり、
前記第1導電型低濃度層は、入射する光を吸収するバンドギャップを有する第1導電型低濃度InGaAs吸収層であり、
前記第2導電型低濃度層は、入射する光を吸収するバンドギャップを有する第2導電型低濃度InGaAs吸収層であり、
前記第2導電型高濃度層は第2導電型コンタクト層である、半導体受光素子。
【請求項5】
請求項1乃至3に記載の半導体受光素子であって、
前記第1導電型高濃度層は第1導電型コンタクト層であり、
前記第1導電型低濃度層は、入射する光を吸収しないバンドギャップを有する第1導電型低濃度ワイドバンドギャップ層であり、
前記第2導電型低濃度層は、入射する光を吸収するバンドギャップを有する第2導電型低濃度InGaAs吸収層であり、
前記第2導電型高濃度層は第2導電型コンタクト層である、半導体受光素子。
【請求項6】
請求項5に記載の半導体受光素子であって、
前記第1導電型低濃度ワイドバンドギャップ層は、InP、InAlAs、InAlGaAsのいずれかである、半導体受光素子。
【請求項7】
請求項1乃至6に記載の半導体受光素子であって、
前記第1導電型はn型であり、前記第2導電型はp型である、半導体受光素子。
【請求項8】
請求項7に記載の半導体受光素子であって、
前記第1導電型低濃度層は、前記第2導電型低濃度層よりも薄く形成される。
【請求項9】
請求項1乃至7に記載の半導体受光素子であって、
前記第1導電型低濃度層と前記第2導電型低濃度層のうち、光が入射する面に近い方が他方よりも薄く形成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体受光素子に関する。
【背景技術】
【0002】
高速光通信に適用される半導体受光素子として、使用状態のバイアス電圧印加時に空乏化し、光ファイバからの光信号に対して吸収層として作用するアンドープの半導体層を、p型とn型の半導体層で挟んだPIN型のフォトダイオードが使われている。特許文献1には、受光感度と高速応答性の両立のために、吸収層がp型ドーピングされた半導体層とアンドープ半導体層からなる構成が報告されている。また、特許文献2には、高光入力に対して低電圧でも高速応答が可能な構造として、N層とP層の間にある吸収層が、N層との接合面から内側に向かって徐々に濃度を減ずるn型不純物を含む層と、P層の接合面から内側に向かって徐々に濃度を減ずるp型不純物を含む層からなる半導体受光素子が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2019-160900
【特許文献2】特開平3-38887号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
半導体受光素子の高速化には素子容量の低減が有効である。素子容量はPN接合部の容量と寄生容量からなるが、PN接合部の容量は空乏層を厚くすることにより低減可能である。例えば特許文献1の構成において、アンドープ吸収層を厚くすることが有効である。しかしアンドープ吸収層を厚くしても、使用条件において印加されるバイアス電圧にてアンドープ吸収層全てが空乏化できなければ、実質的な空乏層は狭くなり、期待された容量低減効果が得られない。一定のバイアス電圧では、キャリア濃度が低いほど空乏化領域が広くなる。従って、アンドープ吸収層が完全にキャリアが含まれていない真性半導体層であるならば、低い電圧であっても全てを空乏化することは容易である。
【0005】
しかし、アンドープ吸収層には実際には低濃度のキャリアが含まれる。アンドープ吸収層は、例えばMOCVD法やMBE法を用いて結晶成長することで形成される。この結晶成長の際に、吸収層には意図的にp型もしくはn型のキャリアをドーピングしないことでアンドープ吸収層は形成される。しかし、実際は有限のバックグランドレベルのキャリアが吸収層に含まれ、完全な意味での真性半導体層にはならない。この意図せずに含まれるキャリア(バックグラウンドレベルで含まれるキャリア)の濃度は、成長装置と成長条件に依存するが、例えばn型で2×10^15/cm^3程度である。従って、実際のアンドープ吸収層を用いた場合は、一定電圧下において、含まれるキャリア濃度に応じて空乏化が可能な領域は制限されることになる。つまり、単にアンドープ吸収層を厚くしただけでは実使用条件において空乏層の厚さを十分に確保することができない場合がある。
【0006】
上述したようにアンドープ吸収層を用いても、実際には低濃度のキャリアが含まれるために、空乏化できる領域は制限される。ここで印可するバイアス電圧を大きくすれば、同じキャリア濃度であっても空乏化できる領域は広がり、容量を低減することが可能となる。しかし、半導体受光素子に印可可能なバイアス電圧は、消費電力の観点から有限となり、十分なバイアス電圧を得ることができない場合がある。従って、より低電圧で空乏化できる領域の大きい半導体受光素子が実使用においては望ましい。
【0007】
本発明は、空乏化できる領域が大きく、低容量で高速応答性に優れた半導体受光素子を提供することが目的である。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る半導体受光素子は、半導体基板と、前記半導体基板上に形成された第1導電型高濃度層と、前記第1導電型高濃度層の上に接して形成された第1導電型低濃度層と、前記第1導電型低濃度層とPN接合界面を形成する第2導電型低濃度層と、前記第2導電型低濃度層の上に接して形成された第2導電型高濃度層と、を備え、前記第1導電型低濃度層および前記第2導電型低濃度層のキャリア濃度は1×10^16/cm^3未満であり、前記第1導電型高濃度層は前記第1導電型低濃度層よりキャリア濃度が高く、前記第2導電型高濃度層は前記第2導電型低濃度層よりキャリア濃度が高く、前記第1導電型高濃度層と前記第2導電型高濃度層のキャリア濃度は1×10^17/cm^3以上であり、前記第1導電型低濃度層もしくは前記第2導電型低濃度層の少なくとも一方は、入射する光を吸収するバンドギャップを備えた吸収層を含む、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明により、低容量で高速応答性に優れた半導体受光素子を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1A】本発明の第1の実施形態に係る半導体受光素子の断面図である。
図1B】本発明の第1の実施形態に係る半導体受光素子のバンドダイヤグラムである。
図2】本発明の第1の実施形態に係る半導体受光素子の電界強度を示すグラフである。
図3A】比較例に係る半導体受光素子の断面図である。
図3B】比較例に係る半導体受光素子のバンドダイヤグラムである。
図4】比較例に係る半導体受光素子の電界強度を示すグラフである。
図5A】本発明の第2の実施形態に係る半導体受光素子の断面図である。
図5B】本発明の第2の実施形態に係る半導体受光素子のバンドダイヤグラムである。
図6】本発明の第2の実施形態に係る半導体受光素子の電界強度を示すグラフである。
図7A】本発明の第3の実施形態に係る半導体受光素子の断面図である。
図7B】本発明の第3の実施形態に係る半導体受光素子のバンドダイヤグラムである。
図8】本発明の第3の実施形態に係る半導体受光素子の電界強度を示すグラフである。
図9A】本発明の第4の実施形態に係る半導体受光素子の断面図である。
図9B】本発明の第4の実施形態に係る半導体受光素子のバンドダイヤグラムである。
図10】本発明の第4の実施形態に係る半導体受光素子の電界強度を示すグラフである。
図11A】本発明の第4の実施形態の変形例に係る半導体受光素子の断面図である。
図11B】本発明の第4の実施形態の変形例に係る半導体受光素子のバンドダイヤグラムである。
図12】本発明の第4の実施形態の変形例に係る半導体受光素子の電界強度を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に、図面に基づき、本発明の実施形態を具体的かつ詳細に説明する。なお、実施形態を説明するための全図において、同一の機能を有する部材には同一の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する。なお、以下に示す図は、あくまで、実施形態の実施例を説明するものであって、図の大きさと本実施例記載の縮尺は必ずしも一致するものではない。
【0012】
[第1の実施形態]
図1(A)は本発明の第1の実施形態にかかる半導体受光素子10の断面図である。本半導体受光素子10は、例えばマルチモードファイバにて伝送される波長840nm~950nmの光信号を受信可能な表面入射型半導体受光素子である。半導体受光素子10は、Feドーピングされた半絶縁性InP基板11上に、Siを5×10^18/cm^3の濃度でドーピングした厚さ1μmのn型InPコンタクト層12、厚さWnのn型低濃度InGaAs吸収層13、厚さWpでBeを2×10^15/cm^3の濃度でドーピングしたp型低濃度InGaAs吸収層14、Beを5×10^19/cm^3の濃度でドーピングした厚さ0.1μmのp型InGaAsコンタクト層16が順次積層された半導体多層を有する。ここでn型低濃度InGaAs吸収層13は、多層成長においてはアンドープとして形成したが、結果としてキャリア密度が2×10^15/cm^3であるn型半導体層となっている。なお、多層成長において意図的にSi等をドーピングして所望のキャリア濃度となるように作成しても構わない。またn型低濃度InGaAs吸収層13、p型低濃度InGaAs吸収層14、およびp型InGaAsコンタクト層16は、入射される光を吸収できるバンドギャップを備えている層である。本実施形態ではWn=0.9μm、Wp=0.9μmとした。ここでn型InPコンタクト層12はInPに限定されない。同様にp型InGaAsコンタクト層16も他の材料で形成された半導体層であっても構わない。
【0013】
n型低濃度InGaAs吸収層13、p型低濃度InGaAs吸収層14、およびp型InGaAsコンタクト層16は円柱形状にエッチング加工されており、受光メサ部を構成している。また受光メサ部の上部に、リング形状のp型電極17がp型InGaAsコンタクト層16に電気的に接続されている。さらに、n型電極18がn型InPコンタクト層12に電気的に接続されている。p型電極17、n型電極18の部分を除く表面は、窒化シリコン膜19で被膜されている。n型InPコンタクト層12、n型低濃度InGaAs吸収層13、p型低濃度InGaAs吸収層14、p型InGaAsコンタクト層16はInP基板11と格子整合している。窒化シリコン膜19は、リング形状のp型電極17の内部において、入射する光の波長に対して反射率が1%以下となる反射膜として機能している。
【0014】
半導体受光素子10は、p型電極17とn型電極18の間に逆バイアス電圧を印加した状態において、n型低濃度InGaAs吸収層13とp型低濃度InGaAs吸収層14が空乏化し、p型電極17のリング形状内部に入射された波長840nm~950nmの信号光に対して吸収層として作用する。なお、p型InGaAsコンタクト層16も入射光を吸収することが可能なバンドギャップを有しているが、高濃度のドーピングがされているために、実使用レベルの電圧では空乏化せずに、実質的には吸収層として機能しない。キャリア濃度と空乏化の関係は後述する。
【0015】
図1(B)は、p型電極17とn型電極18の間に逆バイアス電圧を印加した状態における半導体受光素子10のバンドダイヤグラムを示す図である。
【0016】
図2は、p型電極17とn型電極18の間に2Vの逆バイアス電圧を印加した状態における電界強度を示すグラフである。図2の横軸は、PN接合界面を0とした時の各層の厚さを示している。図2において+(プラス)方向はPN接合界面よりn型電極18側を示し、-(マイナス)方向はp型電極17側を示す。また縦軸は電界強度を示す。n型低濃度InGaAs吸収層13、p型低濃度InGaAs吸収層14の界面がPN接合であり、電界強度が最大となり、PN接合界面から離れるほど電界強度は低下する。PN接合界面の電界強度をE0(V/m)とすると、n型低濃度InGaAs吸収層13内の電界強度En(V/m)は、数式4で表される。
【数4】
【0017】
ここでqは素電荷(=1.6×10^19(C))、εnはn型低濃度InGaAs吸収層13の誘電率である。ここでは、InGaAsの誘電率(=1.23×10^-10(F/m))となる。Nnはn型低濃度InGaAs吸収層13のキャリア密度で2×10^15/cm^3である。DnはPN接合界面からの距離である。電界強度EnがゼロとなるPN接合界面からの距離をDn0とすると、E0は数式5で表される。
【数5】
【0018】
同様に、p型低濃度InGaAs吸収層14内の電界強度Ep(V/m)は、数式6で表される。
【数6】
【0019】
εpはp型低濃度InGaAs吸収層14の誘電率である。ここではInGaAsの誘電率(=1.23×10^-10(F/m))となる。またNpはp型低濃度InGaAs吸収層14のキャリア密度で2×10^15/cm^3、DpはPN接合界面からの距離である。電界強度EpがゼロとなるPN接合界面からの距離をDp0とすると、E0は数式7で表される。
【数7】
【0020】
逆バイアス電圧をVr、n型低濃度InGaAs吸収層13とp型低濃度InGaAs吸収層14の界面におけるビルトインポテンシャルをVbとすると、電界強度EnをPN接合界面からDn0まで積分した値と電界強度EpをPN接合界面からDp0まで積分した値の合計が(Vr+Vb)(V)となるため、以下の数式8が成立する。
【数8】
【0021】
数式5、数式7及び式数8より、数式1、数式2及び数式3が導き出される。
【数1】
【数2】
【数3】
【0022】
光通信に用いられる光モジュール(光トランシーバ)は、3.3V単一電源で駆動されることが多い。この時、光モジュールに内蔵される半導体受光素子10に印可される電圧は、光モジュールの内部回路(例えばトランスインピーダンス増幅回路)内の電圧降下の影響から、最小で2V程度となる。またビルトインポテンシャルは半導体材料により決定され、ここではInGaAs層同士のPN接合であるため0.54Vとなる。ここで数式1にVr=2V、Vb=0.54Vを代入すると、Dp0=0.988μmとなる。また数式2及び数式3よりDn0=0.988μmとなる。すなわちn型低濃度InGaAs吸収層13とp型低濃度InGaAs吸収層14のキャリア濃度が2×10^15/cm^3である場合、2Vの電圧を印可した場合は、0.988μmの幅まで空乏化することが可能であることが分かる。本実施形態においては、Wn=0.9μm、Wp=0.9μmであるため、n型低濃度InGaAs吸収層13およびp型低濃度InGaAs吸収層14の全領域が空乏化する。つまり、半導体受光素子10は空乏化する幅(厚み)は1.8μmとなる。
【0023】
本発明は吸収層が低濃度のp型半導体層と低濃度のn型半導体層で構成されていることに特徴がある。ここで低濃度とは、実際に使用される数Vの電圧印可時において十分に空乏化することが可能な程度の濃度を示す。具体的にはキャリア濃度が1×10^16/cm^3未満であることが好ましい。p型InGaAsコンタクト層16のBeは5×10^19/cm^3であり、数Vでは空乏化せず実質的には吸収層としては機能しない。低濃度のp型半導体層とn型半導体層により吸収層を構成することで、あるバイアス電圧印可時において空乏層領域を大きくできる。これにより、低容量化を実現し、高速応答性に優れた半導体受光素子を提供することができる。
【0024】
ここで本発明の効果を比較例を用いて説明する。図3(A)は、比較例に係る半導体受光素子30の断面図である。本実施形態にかかる半導体受光素子10との違いは、吸収層の構成であり、その他の構成は同じである。半導体受光素子30の吸収層は、厚さWncのn型低濃度InGaAs吸収層33で構成されている。本実施形態のn型低濃度InGaAs吸収層13と同様に、バックグラウンドレベルで含まれるn型キャリア濃度が2×10^15/cm^3であるn型半導体層となっている。またWncは1.8μmとした。つまり吸収層は、半導体受光素子10と同じ濃度で、同じ厚みである。異なる点は、すべての半導体層がn型となっている点のみである。図3(B)は、半導体受光素子30の逆バイアス印可時のバンドダイヤグラムである。
【0025】
図4は、比較例において、半導体受光素子30のp型電極17とn型電極18の間に2Vの逆バイアス電圧を印加した状態における電界強度を示す。図2同様に横軸はPN接合界面を0としている。n型低濃度InGaAs吸収層33とp型InGaAsコンタクト層16の界面がPN接合である。n型低濃度InGaAs吸収層33内の電界強度はPN接合界面が最大となり、PN接合界面から離れるほど低下する。PN接合界面の電界強度をE0(V/m)とすると、n型低濃度InGaAs吸収層33内の電界強度En(V/m)は、数式4で表される。同様に電界強度EnがゼロとなるPN接合界面からの距離をDn0とすると、E0は数式5で表される。
【0026】
逆バイアス電圧をVr、n型InGaAs吸収層33とp型InGaAsコンタクト層16の界面におけるビルトインポテンシャルをVbとすると、電界強度EをPN接合界面からDn0まで積分したものが(Vr+Vb)(V)となるため、Dn0は、数式9で表される。
【数9】
【0027】
数式9にVr=2V、Vb=0.54(V)を代入すると、Dn0=1.397μmとなる。つまり、n型低濃度InGaAs吸収層33は1.8μmの厚みがあるが、実際に2Vを印可した際は1.397μmしか空乏化しない。
【0028】
本実施形態に係る半導体受光素子10はn型低濃度InGaAs吸収層13およびp型低濃度InGaAs吸収層14で吸収層を構成し、その厚みは1.8μmである。そして2V印可時においてすべて空乏化する。一方、比較例に係る半導体受光素子30はn型低濃度InGaAsのみで構成された吸収層であり、その厚みは1.8μmである。しかし2V印可時においては1.397μmしか空乏化しない。そのため、本実施形態に係る半導体受光素子10は半導体受光素子30と比較して容量が小さく、高速応答性に優れた半導体受光素子である。また、本実施形態の半導体受光素子10は、比較例の半導体受光素子30と比較して、同じ空乏化する領域を得るための電圧を小さくすることができると言える。そのため、同じ容量、つまり同程度の高速応答性を得るために必要な電圧が絶対値で小さくてよく、低消費電力に優れた半導体受光素子と言える。本特性は、吸収層を空乏化できるキャリア濃度がそれぞれ1×10^16/cm^3未満であるp型低濃度吸収層とn型低濃度吸収層とを組み合わせたことにより得られる。
【0029】
特許文献2に、N層との接合面から内側に向かって徐々に濃度を減ずるn型不純物を含む層と、P層の接合面から内側に向かって徐々に濃度を減ずるp型不純物を含む層からなる半導体受光素子が示されている。n型不純物層とp型不純物層の界面においては、両者の濃度は0となっている。この構造では、p型InGaAs吸収層とn型InGaAs吸収層は双方とも、これらに接するP型層又はN型層との接合面が1×10^16/cm^3以上の高濃度であり、接合面から内部に向かって徐々に濃度を減ずる構造である。そのためn型不純物層およびp型不純物層のすべては空乏化せずに、キャリア濃度が1×10^16/cm^3未満の領域のみが空乏化する。特許文献2は、不純物層各々における濃度勾配で内部電界を発生させ、低電圧時でもキャリアの移動速度を低下させないことが目的である。そのため、不純物層全体のキャリア濃度を1×10^16/cm^3未満にすることは想定されていない。また、n型不純物層の中で、キャリア濃度は1×10^16/cm^3付近においても徐々に濃度が変わる。そのため、実際に空乏化する領域にきっちりと電界がかからず、空乏化領域と空乏化しない領域との界面がぼやける。その結果、キャリアの移動速度が十分に得られず高速応答性の観点ではデメリットとなる。本実施形態に係る半導体受光素子10では、n型低濃度InGaAs吸収層13は5×10^18/cm^3という自身の濃度と比較して10倍以上の高濃度にドーピングされたn型InPコンタクト層12と接している。そのため、n型低濃度InGaAs吸収層13には電界がきっちりとかかり、キャリアの吐き出し性に優れた高速応答が可能な半導体受光素子となっている。空乏層領域に電界を十分に印可するためには、低濃度層に接する層のキャリア濃度は1×10^17/cm^3以上が好ましい。
【0030】
[第2の実施形態]
図5(A)は本発明の第2の実施形態にかかる半導体受光素子50の断面図である。図5(B)は半導体受光素子50に逆バイアス電圧を印加した状態におけるバンドダイヤグラムを示す。第1の実施形態に示した半導体受光素子10との違いは、n型低濃度InGaAs吸収層13,53とp型低濃度InGaAs吸収層14,54の濃度と厚みの違いである。本実施形態では、n型低濃度InGaAs吸収層53は3×10^15/cm^3の濃度で厚みは0.6μmである。一方、p型低濃度InGaAs吸収層54は、2×10^15/cm^3の濃度で厚みは0.9μmである。すなわち、n型低濃度InGaAs吸収層53はp型低濃度InGaAs吸収層54よりも薄く形成され、吸収層全体の厚みは1.5μmである。その他の構成は半導体受光素子10と同じである。
【0031】
図6は、半導体受光素子50のp型電極17とn型電極18の間に2Vの逆バイアス電圧を印加した状態における電界強度を示すグラフである。図2同様に横軸はPN接合界面を0としている。空乏化できる領域、すなわち電界強度が0となるPN接合界面からの距離Dn0およびDp0は、数式1、数式2及び数式3より求めることができる。Vr=2V、Vb=0.54(V)をそれぞれ数式1、数式2及び数式3に代入すると、Dp0=1.082μm、Dn0=0.721μmとなる。つまり、厚みが0.9μmであるp型低濃度InGaAs吸収層54も、厚みが0.6μmであるn型低濃度InGaAs吸収層53もすべて空乏化できることを示している。またn型低濃度InGaAs吸収層53およびp型低濃度InGaAs吸収層54のキャリア濃度が上記の値の場合、最大空乏層厚はDp0+Dn0=1.803μmとなる。これは本実施形態では吸収層の厚みは1.5μmとしたが、1.803μmとしてもすべて空乏化させることが可能であることを示している。
【0032】
一方、例えば比較例において、n型低濃度InGaAs吸収層33の濃度を、本実施形態のn型低濃度InGaAs吸収層53と同じ3×10^15/cm^3とした場合、最大空乏化領域の幅は1.14μmとなる。従って、同じキャリア濃度であっても本実施形態で示したようにp型低濃度吸収層とn型低濃度吸収層を組み合わせることで、最大空乏化領域の幅を広くすることが可能となる。また数式1、数式2及び数式3より明らかなように、あるバイアス電圧において最大の空乏化領域を得るためにはp型低濃度吸収層とn型低濃度吸収層のキャリア濃度が同じ濃度の場合である。
【0033】
光吸収により、電子と正孔(ホール)対が生成される。そしてホールはp型InGaAsコンタクト層16側に移動し、電子はn型InPコンタクト層12側に移動する。光吸収は吸収層全体で行われ、n型InPコンタクト層12に近い側で発生したホールはp型InGaAsコンタクト層16に近い側で発生したホールと比較して長い距離を移動する必要がある。ホールは電子と比較して重いために移動するのに時間がかかる。高周波駆動においては、ホールを早く空乏層領域から移動させることで高速応答性を向上させることが可能となる。本実施形態では電界強度が最大となるPN接合界面は、吸収層全体でみるとn側に寄っている。従って、より長い距離を移動しなければならないn型低濃度吸収層InGaAs53で生成されたホールには強い電界がかかる。そのため、これらのホールは強い電界により加速され、p型InGaAsコンタクト層16側に早く移動することが可能となる。その結果、より高速応答性に優れた半導体受光素子を提供することが可能となる。
【0034】
[第3の実施形態]
図7(A)は本発明の第3の実施形態にかかる半導体受光素子60の断面図である。図7(B)は半導体受光素子60に逆バイアス電圧を印加した状態におけるバンドダイヤグラムを示す。第1の実施形態に示した半導体受光素子10との違いは、n型低濃度InGaAs吸収層13,63とp型低濃度InGaAs吸収層14,64の濃度と厚みである。本実施形態では、n型低濃度InGaAs吸収層63は2×10^15/cm^3の濃度で厚みは0.9μmである。一方、p型低濃度InGaAs吸収層64は、3×10^15/cm^3の濃度で厚みは0.6μmである。すなわち、n型低濃度InGaAs吸収層63とp型低濃度InGaAs吸収層64のうち、光が入射する面に近い方(p型低濃度InGaAs吸収層64)が他方(n型低濃度InGaAs吸収層63)よりも薄く形成され、吸収層全体の厚みは1.5μmである。その他の構成は半導体受光素子10と同じである。
【0035】
図8は、半導体受光素子60のp型電極17とn型電極18の間に2Vの逆バイアス電圧を印加した状態における電界強度を示すグラフである。図2同様に横軸はPN接合界面を0としている。空乏化できる領域、すなわち電界強度が0となるPN接合界面からの距離Dn0およびDp0は、数式1、数式2、数式3より求めることができる。Vr=2V、Vb=0.54(V)をそれぞれ数式1、数式2、数式3に代入すると、Dp0=0.721μm、Dn0=1.082μmとなる。つまり、厚みが0.6μmであるp型低濃度InGaAs吸収層64も、厚みが0.9μmであるn型低濃度InGaAs吸収層63もすべて空乏化できることを示している。またn型低濃度InGaAs吸収層63およびp型低濃度InGaAs吸収層64のキャリア濃度が上記の値の場合、最大空乏層厚はDp0+Dn0=1.803μmとなる。これは本実施形態では吸収層の厚みは1.5μmとしたが、1.803μmとしてもすべて空乏化させることが可能であることを示している。
【0036】
一方、例えば比較例において、n型低濃度InGaAs吸収層33の濃度を、本実施形態のn型低濃度InGaAs吸収層53と同じ3×10^15/cm^3とした場合、最大空乏化領域の幅は1.14μmとなる。従って、同じキャリア濃度であっても本実施形態で示したようにp型低濃度吸収層とn型低濃度吸収層を組み合わせることで、最大空乏化領域の幅を広くすることが可能となる。
【0037】
半導体受光素子60は表面入射型光半導体受光素子であり、受信した光信号はp型InGaAsコンタクト層16を通過してp型低濃度InGaAs吸収層64に入光する。入光した光信号は、p型低濃度InGaAs吸収層64で吸収されながらn型低濃度InGaAs吸収層63に到達し、そこでも吸収される。そのため、p型低濃度InGaAs吸収層64で吸収される光の量はn型低濃度InGaAs吸収層63で吸収される光の量より多い。従って、光吸収によって生成されるホールと電子の対もp型低濃度InGaAs吸収層64の領域の方が多い。多く発生したキャリアを高速に移動させるためには強い電界がかかることが好ましい。本実施形態においては、光吸収が多いp型低濃度InGaAs吸収層64の方により高い電界強度を印加することが可能となり、効率的にキャリアを移動させることが可能である。
【0038】
第2の実施形態で説明したように、n型低濃度InGaAs吸収層63の電界強度を強めたほうがいい場合もある。例えば表面入射型の場合は、p側で多く生成されるキャリアを速く移動させるために第3の実施形態の半導体受光素子60が好ましい。一方、裏面入射型半導体受光素子の場合は光吸収量が多いのはn型低濃度InGaAs吸収層63であり、第2の実施形態の半導体受光素子50の方が高速応答性に優れる。また表面入射型半導体受光素子であっても、p側で多く生成されるキャリアの引き出し性とn側のホールの引き出し性のどちらが全体としての高速応答性に影響するかは、入射する光強度、印可する電圧、さらに吸収層の厚さや濃度等によって変わる。そのため全体の設計として、p型低濃度吸収層とn型低濃度吸収層の厚さや濃度を決定することが好ましい。
【0039】
[第4の実施形態]
図9(A)は本発明の第4の実施形態にかかる半導体受光素子70の断面図である。図7(B)は半導体受光素子70に逆バイアス電圧を印加した状態におけるバンドダイヤグラムを示す。第1の実施形態に示した半導体受光素子10との違いは、n型低濃度InGaAs吸収層13が、キャリア濃度が1×10^15/cm^3のn型低濃度InPワイドバンドギャップ層73となっている点と、p型低濃度InGaAs吸収層74の厚みが0.8μmとなっている点である。p型低濃度InGaAs吸収層74のキャリア濃度は、第1の実施形態と同じ2×10^15/cm^3である。なお、n型低濃度InPワイドバンドギャップ層73のキャリアは意図的にドーピングした場合もバックグラウンドで含まれる場合のいずれであっても構わない。n型低濃度InPワイドバンドギャップ層73の厚みは、1.5μmとした。つまり吸収層はp型低濃度InGaAs吸収層14のみであり、その厚みは0.9μmである。その他の構成は半導体受光素子10と同じである。
【0040】
n型低濃度InPワイドバンドギャップ層73は、InPのバンドギャップ波長が入射光の波長840nm~950nmより短いため、吸収層として作用しない。しかしキャリア濃度は1×10^16/cm^3未満であるため、空乏化する層である。p型低濃度InGaAs吸収層14で発生したキャリアのうち電子のみが内部電界により高速でドリフトすることが可能である。このようにキャリア移動時間の増大を抑制しつつ素子容量を低減する構造となっている。半導体受光素子の高速応答性を向上させるためには、容量低減と共にキャリアがどれだけ早く吸収層から抜けるかも重要である。本構造は後者の観点において優れた構造である。なお、入射する光の波長に対してワイドバンドギャップとなる層であればInPに限定はされず、例えばInAlAs層やInAlGaAs層であっても構わない。
【0041】
図10は、半導体受光素子70のp型電極17とn型電極18の間に2Vの逆バイアス電圧を印加した状態における電界強度を示すグラフである。図2同様に横軸はPN接合界面を0としている。空乏化できる領域、すなわち電界強度が0となるPN接合界面からの距離Dn0およびDp0は、数式1、数式2及び数式3より求めることができる。本実施形態に置いてはPN接合界面はInGaAs層とInP層との界面となるため、Vbは0.59Vとなる。またInPの誘電率は、1.11×10^-10(F/m)である。数式1、数式2及び数式3にVr=2V、Vb=0.59(V)をそれぞれ代入すると、Dp0=0.844μm、Dn0=1.517μmとなる。つまり、厚みが0.8μmであるp型低濃度InGaAs吸収層74も、厚みが1.5μmであるn型低濃度InPワイドバンドギャップ層73もすべて空乏化できることを示している。つまり半導体受光素子70は2V印可時において空乏層厚は2.3μmと大きいため容量が小さく、さらにn型低濃度InPワイドバンドギャップ層73によりキャリアの吐き出し性に優れ、高速応答が可能な素子である。なお、本実施形態ではn型低濃度層をワイドバンドギャップ層としたが、逆にp型低濃度層をInPワイドバンドギャップ層とし、n型低濃度層をn型InGaAs吸収層としても、本実施形態同様に広い空乏層を得ることができる。
【0042】
第4の実施形態に示したように、低濃度層は必ずしも入射する光を吸収できるバンドギャップを備える材料のみで構成する必要はなく、キャリア濃度が1×10^16/cm^3未満のp型低濃度層とn型低濃度層によりPN界面を形成する構成とすることで空乏層を大きくすることが可能となる。
【0043】
[変形例]
本発明の第4の実施形態にかかる半導体受光素子70の変形例について説明する。図11(A)は変形例にかかる半導体受光素子90の断面図である。図11(B)は半導体受光素子90に逆バイアス電圧を印加した状態におけるバンドダイヤグラムを示す。図12は、半導体受光素子90のp型電極17とn型電極18の間に2Vの逆バイアス電圧を印加した状態における電界強度を示すグラフである。第3の実施形態に示した半導体受光素子70との違いは、p型低濃度InGaAs吸収層74とp型InGaAsコンタクト層16との間にp型高濃度InGaAs吸収層99が挟まれている点である。p型高濃度InGaAs吸収層99はBeを1×10^18/cm^3の濃度でドーピングした厚さ0.6μmの層である。p型高濃度InGaAs吸収層99はキャリア濃度が1×10^16/cm^3以上のため数V程度の電圧では空乏化しない。そのため、本層があることによる容量低減の効果は得られない。しかし、入射する光を吸収するバンドギャップを有しているため受光感度を向上させることに有効である。半導体受光素子70の空乏化領域は第4の実施形態で示した半導体受光素子70と同じである。なおp型高濃度InGaAs吸収層99は濃度勾配があってもよい。但し最も濃度が低い領域でも使用条件において印加されるバイアス電圧印加時に空乏化しない濃度である。具体的には1×10^17/cm^3以上の濃度が好ましい。さらにp型低濃度InGaAs吸収層74とn型低濃度InPワイドバンドギャップ層73との間に、第1の実施形態同様にn型低濃度InGaAs吸収層を挟んでも構わない。
【0044】
なお、空乏化させたい層を数式1、数式2及び式数3より導き出される厚みとして作成することが最も低容量、高速応答性に優れるが、数式1、数式2及び数式3より導き出される空乏化可能な層厚より10%程度まで厚い層として低濃度層を構成しても良い。この場合、p型低濃度層の内、p型高濃度層との界面付近や、n型低濃度層の内、n型高濃度層との界面付近においては空乏化しない層が存在する。しかしその層は厚くないために、キャリアの吐き出し性の劣化への影響は大きくなく、実用できるレベルである。
【0045】
上記実施形態で説明した構造をそれぞれの実施形態と組み合わせても本願発明の効果が得られることは言うまでもない。すなわち、n型低濃度層とp型低濃度層のうち少なくとも一方が入射する光を吸収する吸収層を含んでいれば、n型低濃度層とp型低濃度層は吸収層とワイドバンドギャップ層の2層で構成されてもよいし一方のみで構成されてもよい。さらに、n型低濃度層とp型低濃度層は同じ厚みであってもよいし、n型低濃度層がp型低濃度層よりも厚くてもよいし、n型低濃度層がp型低濃度層よりも薄くてもよい。また波長840nm~950nmの光信号を受信可能な表面入射型半導体受光素子について説明したが、その他の波長帯、例えば1.3μm帯や1.55μm帯の光信号を受信可能な表面入射型半導体受光素子であってもよいし、裏面入射型半導体受光素子であっても構わない。さらに光信号が入力されるファイバはシングルモードファイバであってもよい。また上記実施形態ではInP基板側に近いほうがn型とした構造で説明したが、これに限らず極性が反対、つまりInP基板側に近いほうをp型とした構成であっても同様の効果が得られることは言うまでもない。さらに半絶縁性のInP基板ではなく導電型の半導体基板であっても構わない。
【符号の説明】
【0046】
10 半導体受光素子、11 InP基板、12 n型InPコンタクト層、13 n型低濃度InGaAs吸収層、14 p型低濃度InGaAs吸収層、16 p型InGaAsコンタクト層、17 p型電極、18 n型電極、19 窒化シリコン膜、30 半導体受光素子、33 n型低濃度InGaAs吸収層、50 半導体受光素子、53 n型低濃度InGaAs吸収層、54 p型低濃度InGaAs吸収層、60 半導体受光素子、63 n型低濃度InGaAs吸収層、64 p型低濃度InGaAs吸収層、70 半導体受光素子、73 n型低濃度InPワイドバンドギャップ層、74 p型低濃度InGaAs吸収層、90 半導体受光素子、99 p型高濃度InGaAs吸収層。

図1A
図1B
図2
図3A
図3B
図4
図5A
図5B
図6
図7A
図7B
図8
図9A
図9B
図10
図11A
図11B
図12