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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022114445
(43)【公開日】2022-08-05
(54)【発明の名称】糸加工設備
(51)【国際特許分類】
   B65H 63/00 20060101AFI20220729BHJP
【FI】
B65H63/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022000566
(22)【出願日】2022-01-05
(31)【優先権主張番号】P 2021010281
(32)【優先日】2021-01-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】502455511
【氏名又は名称】TMTマシナリー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001841
【氏名又は名称】特許業務法人梶・須原特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】長井 規浩
(72)【発明者】
【氏名】高橋 智也
【テーマコード(参考)】
3F115
【Fターム(参考)】
3F115BA03
3F115CA46
3F115CA52
3F115CA53
3F115CB18
3F115CC06
3F115CD05
3F115CF39
3F115CF41
(57)【要約】
【課題】生産管理を飛躍的に高度化しうる新たな糸加工設備を提供する。
【解決手段】糸加工設備100の情報管理部110は、糸Yの解舒が開始される前の給糸パッケージPsに含まれる糸Yの初期量に関する初期量情報と、給糸パッケージPsから単位時間あたり解舒される糸Yの量に関する解舒単位量情報と、給糸パッケージPsから糸Yの解舒が開始された解舒開始時刻に関する解舒開始時刻情報と、を取得可能である。これらの情報を用いた演算によって、例えば給糸パッケージPsからの糸Yの解舒が終了するタイミングを正確に予測したり、糸Yの解舒の進行度を常時推定したりすることが可能になる。
【選択図】図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
糸をそれぞれ供給可能に構成された1以上の給糸パッケージ保持部、を含む給糸部と、前記給糸部から供給された1以上の糸を加工するように構成された加工部と、前記加工部によって加工された1以上の糸をそれぞれ巻取ボビンに巻き取って巻取パッケージを形成する巻取部と、を有する糸加工機と、
前記糸加工機に関する情報を管理するように構成された情報管理部と、を備える糸加工設備であって、
前記1以上の給糸パッケージ保持部の各々は、
複数の給糸パッケージが着脱されることが可能に構成され、且つ、ある給糸パッケージに含まれる糸の終端部と当該ある給糸パッケージの次に糸が解舒される別の給糸パッケージに含まれる糸の始端部とが接続されている場合に糸を途切れずに供給可能に構成され、
前記情報管理部は、
糸の解舒が開始される前の給糸パッケージに含まれる糸の初期量に関する初期量情報と、
給糸パッケージから単位時間あたり解舒される糸の量に関する解舒単位量情報と、
給糸パッケージから糸の解舒が開始された解舒開始時刻に関する解舒開始時刻情報と、を取得可能であることを特徴とする糸加工設備。
【請求項2】
前記情報管理部は、
前記初期量情報として、給糸パッケージに含まれる糸の初期重量及び繊度の情報を取得し、且つ、
前記解舒単位量情報として、給糸パッケージから単位時間あたり解舒される糸の長さである解舒速度の情報を取得することを特徴とする請求項1に記載の糸加工設備。
【請求項3】
前記情報管理部は、
少なくとも前記初期量情報と前記解舒単位量情報と前記解舒開始時刻情報とを用いた演算により、
給糸パッケージからの糸の解舒が終了する予測解舒終了時刻に関する予測解舒終了時刻情報と、
任意の基準時刻において給糸パッケージから糸を解舒可能な残時間に関する残時間情報と、
前記基準時刻において給糸パッケージに含まれる糸の残量に関する残量情報と、のうち少なくとも1つを取得することを特徴とする請求項1又は2に記載の糸加工設備。
【請求項4】
前記情報管理部は、
前記1以上の給糸パッケージ保持部に含まれる所定の給糸パッケージ保持部に装着されている全ての給糸パッケージに係る前記残時間情報に基づき、前記所定の給糸パッケージ保持部に装着されている前記全ての給糸パッケージが空になる予測原糸消失時刻の情報を取得することを特徴とする請求項3に記載の糸加工設備。
【請求項5】
前記給糸部に新たな給糸パッケージを搬送し、糸が解舒され終わった空の給糸パッケージと前記新たな給糸パッケージとを交換する給糸パッケージ交換作業を行うように構成された給糸パッケージ搬送装置を備え、
前記情報管理部は、前記所定の給糸パッケージ保持部に係る前記予測原糸消失時刻までに、前記所定の給糸パッケージ保持部における前記給糸パッケージ交換作業が完了するように、前記給糸パッケージ搬送装置の動作を管理することを特徴とする請求項4に記載の糸加工設備。
【請求項6】
前記給糸部は、前記1以上の給糸パッケージ保持部として複数の給糸パッケージ保持部を有し、
前記給糸パッケージ搬送装置は、前記複数の給糸パッケージ保持部に対して前記給糸パッケージ交換作業を行うことが可能に構成され、
前記情報管理部は、
前記複数の給糸パッケージ保持部のそれぞれに係る前記予測原糸消失時刻までに、前記複数の給糸パッケージ保持部のそれぞれにおける前記給糸パッケージ交換作業が完了するように、前記給糸パッケージ搬送装置の動作を管理することを特徴とする請求項5に記載の糸加工設備。
【請求項7】
情報を出力可能に構成された第1出力部と、
前記第1出力部を制御するように構成された第1出力制御部と、を備え、
前記第1出力制御部は、前記予測原糸消失時刻よりも所定時間前の交換報知時刻に、前記所定の給糸パッケージ保持部における給糸パッケージの交換をオペレータに促すための情報を前記第1出力部に出力させることを特徴とする請求項4に記載の糸加工設備。
【請求項8】
所定給糸パッケージに含まれる糸の終端部と、前記所定給糸パッケージの次に糸が解舒される予備給糸パッケージに含まれる糸の始端部とが接続されているか否かに関する情報を取得可能に構成された接続情報取得部と、
情報を出力可能に構成された第2出力部と、
前記第2出力部を制御するように構成された第2出力制御部と、を備え、
前記第2出力制御部は、前記接続情報取得部によって取得された情報に基づき、前記始端部と前記終端部とが接続されていない状態で前記所定給糸パッケージに係る前記残時間が所定時間以下に減少したとき、前記始端部と前記終端部との接続作業を促すための情報を前記第2出力部に出力させることを特徴とする請求項3~7のいずれかに記載の糸加工設備。
【請求項9】
前記情報管理部は、
所定の巻取ボビンへの糸の巻き取りが開始される巻取開始時刻の情報と、
前記所定の巻取ボビンへの糸の巻き取りが終了する予定巻取終了時刻、前記所定の巻取ボビンに巻き取られる予定巻取量、及び前記所定の巻取ボビンへの糸の巻き取りが行われる予定巻取時間のうち少なくとも1つに関する情報と、を取得可能であり、
前記巻取開始時刻と前記予定巻取終了時刻との間に前記予測解舒終了時刻が存在する場合、前記巻取開始時刻において糸が解舒されている給糸パッケージに係る前記残量が前記予定巻取量よりも少ない場合、又は、前記巻取開始時刻において糸が解舒されている給糸パッケージに係る前記残時間が前記予定巻取時間よりも短い場合に、前記所定の巻取ボビンに糸が巻き取られて形成される所定の巻取パッケージに、前記始端部と前記終端部とが接続されて形成された糸接続部分が混入すると予測することを特徴とする請求項3~8のいずれかに記載の糸加工設備。
【請求項10】
前記情報管理部は、前記所定の巻取パッケージに前記糸接続部分が混入すると予測されるタイミングに応じて、前記所定の巻取ボビンに対する糸の巻取処理の終了のタイミングを管理することを特徴とする請求項9に記載の糸加工設備。
【請求項11】
前記情報管理部は、前記残量情報に基づいて、前記基準時刻において所定の巻取ボビンに巻き取られる糸が、前記所定の巻取ボビンに糸を供給する給糸パッケージ上に形成されていた糸層のうちどの部分を構成していたかに関する糸層情報を取得可能であることを特徴とする請求項3~10のいずれかに記載の糸加工設備。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、糸加工設備に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、給糸ボビンに糸が巻かれて形成された給糸パッケージ(特許文献1では供給ボビンと記載されている)から解舒された糸を加工して巻取ボビンに巻き取り、巻成体(巻取パッケージ)を形成する装置(糸加工設備)が開示されている。糸加工設備は、1つの巻取ボビンに対応して2つの給糸パッケージを支持可能に構成されている。このような糸加工設備においては、2つの給糸パッケージのうち一方に含まれる糸の終端部と他方に含まれる糸の始端部とが結節されている(接続されている)場合に、上記一方が空になった後に上記他方から糸を途切れずに供給することが可能である。具体的には、上記一方の給糸パッケージからの糸の供給が終了した直後、2本の糸の結節部分(糸接続部分)が引っ張られることにより、上記他方の給糸パッケージから糸が解舒され始める。これにより、糸が途切れることなく供給される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特表2003-526584号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
糸加工分野では、従来から、生産性の向上及び製品の品質向上等のために様々な改良が図られてきた。本願発明者は、従来にない新たな付加価値を備えた糸加工設備を開発すべく、鋭意研究を重ねている。
【0005】
本発明の目的は、生産管理を飛躍的に高度化しうる新たな糸加工設備を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1の発明の糸加工設備は、糸をそれぞれ供給可能に構成された1以上の給糸パッケージ保持部、を含む給糸部と、前記給糸部から供給された1以上の糸を加工するように構成された加工部と、前記加工部によって加工された1以上の糸をそれぞれ巻取ボビンに巻き取って巻取パッケージを形成する巻取部と、を有する糸加工機と、前記糸加工機に関する情報を管理するように構成された情報管理部と、を備える糸加工設備であって、前記1以上の給糸パッケージ保持部の各々は、複数の給糸パッケージが着脱されることが可能に構成され、且つ、ある給糸パッケージに含まれる糸の終端部と当該ある給糸パッケージの次に糸が解舒される別の給糸パッケージに含まれる糸の始端部とが接続されている場合に糸を途切れずに供給可能に構成され、前記情報管理部は、糸の解舒が開始される前の給糸パッケージに含まれる糸の初期量に関する初期量情報と、給糸パッケージから単位時間あたり解舒される糸の量に関する解舒単位量情報と、給糸パッケージから糸の解舒が開始された解舒開始時刻に関する解舒開始時刻情報と、を取得可能であることを特徴とする。
【0007】
初期量情報、解舒単位量情報及び解舒開始時刻情報が取得されると、これらの情報を用いた演算によって、例えば給糸パッケージからの糸の解舒が終了するタイミングを正確に予測したり、糸の解舒の進行度を常時推定したりすることが可能になる。ここで、初期量情報は、例えば給糸パッケージが給糸部に装着されるときに知ることができる。解舒単位量情報は、糸加工設備の動作設定時に知ることができる。解舒開始時刻情報は、例えば、糸が解舒されている給糸パッケージの切り替わりをセンサ等で検知することにより知ることができる。或いは、ある給糸パッケージに関する解舒開始時刻情報が分かっている場合、当該ある給糸パッケージに関する初期量情報と解舒単位量情報と解舒開始時刻情報とを利用して、次に糸が解舒される給糸パッケージに関する解舒開始時刻情報を演算により推定することもできる。したがって、生産管理を飛躍的に高度化しうる新たな糸加工設備を提供できる。なお、初期量情報を取得するために、例えば、給糸パッケージの重量を測定する重量センサを給糸部毎に設けることも考えられるが、その場合は設備のコストが増大する問題がある。本発明では、そのようなコスト増大を回避することもできる。
【0008】
第2の発明の糸加工設備は、前記第1の発明において、前記情報管理部は、前記初期量情報として、給糸パッケージに含まれる糸の初期重量及び繊度の情報を取得し、且つ、前記解舒単位量情報として、給糸パッケージから単位時間あたり解舒される糸の長さである解舒速度の情報を取得することを特徴とする。
【0009】
一般的に、給糸パッケージの初期重量の情報は、設定或いは測定により予め容易に取得可能であるため、初期量情報として扱いやすい。同様に、解舒速度の情報も、予め容易に取得可能であるため、解舒単位量情報として扱いやすい。但し、初期重量は質量の次元を有するのに対し、解舒速度は長さの次元を有する。この場合、初期重量、解舒速度及び解舒開始時刻のみに基づいて時間及び/又は残量に関する演算を行おうとしても、単位を整合させることができない。この点、本発明では、初期量情報として、予め取得可能な繊度(単位長あたりの重量)の情報が取得される。これにより、時間及び/又は残量に関する演算の際に、単位を容易に整合させることができる。このように、取得しやすく且つ単位を整合可能な情報を種々の演算に利用できる。
【0010】
第3の発明の糸加工設備は、前記第1又は第2の発明において、前記情報管理部は、少なくとも前記初期量情報と前記解舒単位量情報と前記解舒開始時刻情報とを用いた演算により、給糸パッケージからの糸の解舒が終了する予測解舒終了時刻に関する予測解舒終了時刻情報と、任意の基準時刻において給糸パッケージから糸を解舒可能な残時間に関する残時間情報と、前記基準時刻において給糸パッケージに含まれる糸の残量に関する残量情報と、のうち少なくとも1つを取得することを特徴とする。
【0011】
本発明では、給糸パッケージからの糸の解舒が終了する時刻(解舒終了時刻)の予測、残時間の常時推定及び/又は残量の常時推定を行うことができる。このように予測及び/又は推定された情報を、給糸パッケージからの糸の解舒終了までに行われる様々な作業の管理(例えば、給糸パッケージの交換スケジュールの作成等)に役立てることができる。
【0012】
第4の発明の糸加工設備は、前記第3の発明において、前記情報管理部は、前記1以上の給糸パッケージ保持部に含まれる所定の給糸パッケージ保持部に装着されている全ての給糸パッケージに係る前記残時間情報に基づき、前記所定の給糸パッケージ保持部に装着されている前記全ての給糸パッケージが空になる予測原糸消失時刻の情報を取得することを特徴とする。
【0013】
本発明によって取得される予測原糸消失時刻の情報を利用することにより、給糸パッケージの交換等の作業に関する高度な制御又は高度な設備稼働管理を実現できる。
【0014】
第5の発明の糸加工設備は、前記第4の発明において、前記給糸部に新たな給糸パッケージを搬送し、糸が解舒され終わった空の給糸パッケージと前記新たな給糸パッケージとを交換する給糸パッケージ交換作業を行うように構成された給糸パッケージ搬送装置を備え、前記情報管理部は、前記所定の給糸パッケージ保持部に係る前記予測原糸消失時刻までに、前記所定の給糸パッケージ保持部における前記給糸パッケージ交換作業が完了するように、前記給糸パッケージ搬送装置の動作を管理することを特徴とする。
【0015】
本発明では、所定の給糸パッケージ保持部における給糸パッケージの枯渇を防止できる。
【0016】
第6の発明の糸加工設備は、前記第5の発明において、前記給糸部は、前記1以上の給糸パッケージ保持部として複数の給糸パッケージ保持部を有し、前記給糸パッケージ搬送装置は、前記複数の給糸パッケージ保持部に対して前記給糸パッケージ交換作業を行うことが可能に構成され、前記情報管理部は、前記複数の給糸パッケージ保持部のそれぞれに係る前記予測原糸消失時刻までに、前記複数の給糸パッケージ保持部のそれぞれにおける前記給糸パッケージ交換作業が完了するように、前記給糸パッケージ搬送装置の動作を管理することを特徴とする。
【0017】
本発明では、複数の給糸パッケージ保持部が設けられた構成において、各給糸パッケージ保持部における給糸パッケージの枯渇を防止できる。
【0018】
第7の発明の糸加工設備は、前記第4の発明において、情報を出力可能に構成された第1出力部と、前記第1出力部を制御するように構成された第1出力制御部と、を備え、前記第1出力制御部は、前記予測原糸消失時刻よりも所定時間前の交換報知時刻に、前記所定の給糸パッケージ保持部における給糸パッケージの交換をオペレータに促すための情報を前記出力部に出力させることを特徴とする。
【0019】
本発明では、適切なタイミングで、給糸パッケージの交換作業をオペレータに促すことができる。したがって、給糸パッケージ保持部に装着された給糸パッケージが枯渇することを防止できる。第1出力制御部は、情報管理部に含まれていても良く、情報管理部とは別に設けられていても良い。
【0020】
第8の発明の糸加工設備は、前記第3~第7のいずれかの発明において、所定給糸パッケージに含まれる糸の終端部と、前記所定給糸パッケージの次に糸が解舒される予備給糸パッケージに含まれる糸の始端部とが接続されているか否かに関する情報を取得可能に構成された接続情報取得部と、情報を出力可能に構成された第2出力部と、前記第2出力部を制御するように構成された第2出力制御部と、を備え、前記第2出力制御部は、前記接続情報取得部によって取得された情報に基づき、前記始端部と前記終端部とが接続されていない状態で前記所定給糸パッケージに係る前記残時間が所定時間以下に減少したとき、前記始端部と前記終端部との接続作業を促すための情報を前記第2出力部に出力させることを特徴とする。
【0021】
本発明では、オペレータ等による糸の接続忘れを防止できる。第1出力部と第2出力部は、同じものであっても良く、別のものであっても良い。第1出力制御部と第2出力制御部は、同じものであっても良く、別のものであっても良い。また、第2出力制御部は、情報管理部に含まれていても良く、或いは情報管理部とは別に設けられていても良い。
【0022】
第9の発明の糸加工設備は、前記第3~第8のいずれかの発明において、前記情報管理部は、所定の巻取ボビンへの糸の巻き取りが開始される巻取開始時刻の情報と、前記所定の巻取ボビンへの糸の巻き取りが終了する予定巻取終了時刻、前記所定の巻取ボビンに巻き取られる予定巻取量、及び前記所定の巻取ボビンへの糸の巻き取りが行われる予定巻取時間のうち少なくとも1つに関する情報と、を取得可能であり、前記巻取開始時刻と前記予定巻取終了時刻との間に前記予測解舒終了時刻が存在する場合、前記巻取開始時刻において糸が解舒されている給糸パッケージに係る前記残量が前記予定巻取量よりも少ない場合、又は、前記巻取開始時刻において糸が解舒されている給糸パッケージに係る前記残時間が前記予定巻取時間よりも短い場合に、前記所定の巻取ボビンに糸が巻き取られて形成される所定の巻取パッケージに、前記始端部と前記終端部とが接続されて形成された糸接続部分が混入すると予測することを特徴とする。
【0023】
本発明によって取得可能な予測結果を、巻取パッケージの形成に関する設備動作の管理に利用できる。例えば、巻取パッケージに糸接続部分が混入することを回避するように巻取部の動作を制御することができる。或いは、巻取パッケージにおける糸接続部分の混入位置を推定することもできる。
【0024】
第10の発明の糸加工設備は、前記第9の発明において、前記情報管理部は、前記所定の巻取パッケージに前記糸接続部分が混入すると予測されるタイミングに応じて、前記所定の巻取ボビンに対する糸の巻取処理の終了のタイミングを管理することを特徴とする。
【0025】
本発明では、巻取パッケージに糸接続部分が混入することを回避できる。或いは、巻取パッケージの径方向外側部分に糸接続部分を意図的に混入させることで、巻取パッケージから糸接続部分を容易に除去できる。したがって、巻取パッケージの品質を安定化できる。
【0026】
第11の発明の糸加工設備は、前記第3~第10のいずれかの発明において、前記情報管理部は、前記残量情報に基づいて、前記基準時刻において所定の巻取ボビンに巻き取られる糸が、前記所定の巻取ボビンに糸を供給する給糸パッケージに含まれる糸層のうちどの部分を構成していたかに関する糸層情報を取得可能であることを特徴とする。
【0027】
本発明では、残量情報を利用して、巻取パッケージに含まれる糸の情報と、給糸パッケージに含まれていた糸の糸層情報とを関連付けることができる。このような情報を、巻取パッケージの品質管理等に役立てることができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1】本実施形態に係る糸加工設備の概略的な平面図である。
図2】糸加工設備の電気的構成を示すブロック図である。
図3】仮撚加工機の側面図である。
図4】糸の経路に沿って仮撚加工機を展開した模式図である。
図5】(a)、(b)は、給糸パッケージに含まれる糸の残量と時刻との関係を示すグラフであり、(c)は、巻取ボビンへの糸の巻取量と時刻との関係を示すグラフである。
図6図5(c)の一部の拡大図である。
図7】(a)は、給糸パッケージ個体情報とパッケージ装着部の個体情報等との関連付けを示す表であり、(b)は、パッケージ装着部の個体情報と各種時刻の情報との関連付けを示す表である。
図8】(a)は、給糸ボビン個体情報と各種情報との関連付けを示す表であり、(b)は、巻取パッケージ個体情報と各種時刻の情報との関連付けを示す表である。
図9】結節部分の混入回避処理が行われた場合の、巻取ボビンへの糸の巻取量と時刻との関係を示す参考例のグラフである。
図10】変形例に係る仮撚加工機の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
(糸加工設備の概略)
次に、本発明の実施の形態について説明する。本実施形態に係る糸加工設備100の概略について、図1の概略的平面図及び図2のブロック図を参照しつつ説明する。図1及び図2に示すように、糸加工設備100は、複数の仮撚加工機1(本発明の糸加工機)と、管理装置101と、クリールロボット102(本発明の給糸パッケージ搬送装置)と、巻取パッケージ搬送装置103とを有する。複数の仮撚加工機1は、例えば、所定の機台長手方向に沿って配列されている。各仮撚加工機1は、例えばポリエステル、ナイロン(ポリアミド系繊維)等の合成繊維からなる糸Y(図3等参照)を仮撚加工可能に構成されている。各仮撚加工機1は、後述するように、給糸部2から供給された糸Yを加工部3によって加工し、巻取部4に装着された巻取ボビンBwに巻き取って巻取パッケージPwを形成するように構成されている。各仮撚加工機1は、各仮撚加工機1に設けられたコンピュータ装置である機台制御装置5によって制御される。
【0030】
管理装置101は、複数の機台制御装置5によって取得された情報(詳細は後述)を統括的に管理するためのホストコンピュータである。管理装置101は、管理入力部101a(例えばキーボード)と、管理出力部101b(例えばディスプレイ)と、管理記憶部101c(例えばハードディスク)とを有する。管理出力部101bは、不図示のプリンタを有していても良い。管理装置101と複数の機台制御装置5とを合わせたものが、本実施形態の情報管理部110である。情報管理部110は、クリールロボット102に設けられたクリール制御装置102aと電気的に接続されている。また、情報管理部110は、巻取パッケージ搬送装置103の不図示の制御装置と電気的に接続されている。情報管理部110が取り扱う情報の詳細については後述する。
【0031】
クリールロボット102は、給糸部2に装着される給糸パッケージPs(給糸ボビンBsに糸Yが巻かれて形成されたパッケージ)を搬送可能に構成されている。クリールロボット102は、複数の給糸パッケージPsを一度に搬送するように構成されていても良い。クリールロボット102は、複数の仮撚加工機1が設置された工場内を移動可能に構成されている。クリールロボット102は、例えば、給糸パッケージPsが貯留されている不図示の給糸パッケージストッカーと各仮撚加工機1との間で往復移動可能に構成されている。クリールロボット102は、例えばオペレータによって、給糸パッケージストッカーに貯留されている給糸パッケージPsが搭載されることが可能に構成されている。或いは、クリールロボット102は、給糸パッケージストッカーに貯留されている給糸パッケージPsを人手によらず引き取ることが可能に構成されていても良い。クリールロボット102は、各仮撚加工機1の給糸部2に給糸パッケージPsを着脱可能に構成されている。言い換えれば、クリールロボット102は、給糸部2において給糸パッケージPsを交換可能に構成されている。クリールロボット102を制御するクリール制御装置102aは、管理装置101と電気的に接続されている(図2参照)。クリール制御装置102aは、情報管理部110から送信される指令信号を受信し、当該指令信号に従ってクリールロボット102を制御する。
【0032】
巻取パッケージ搬送装置103は、各仮撚加工機1の巻取部4において形成された巻取パッケージPwを回収するように構成されている。巻取パッケージ搬送装置103は、複数の巻取パッケージPwを一度に搬送するように構成されていても良い。巻取パッケージ搬送装置103は、形成された巻取パッケージPwを、例えば不図示の払出しポートへ搬送する。巻取パッケージ搬送装置103を制御する制御装置(不図示)は、管理装置101と電気的に接続されている。巻取パッケージ搬送装置103は、情報管理部110から送信される指令信号を受信し、当該指令信号に従って、形成された巻取パッケージPwを回収する。
【0033】
(仮撚加工機の全体構成)
次に、仮撚加工機1の全体構成について、図3及び図4を参照しつつ説明する。図3は、仮撚加工機1の側面図である。図4は、糸Yの経路(糸道)に沿って仮撚加工機1を展開した模式図である。図3の紙面垂直方向を上述した機台長手方向とし、紙面左右方向を機台幅方向とする。機台長手方向及び機台幅方向の両方と直交する方向を、重力の作用する上下方向(鉛直方向)とする。糸Yが走行する方向を糸走行方向とする。仮撚加工機1は、複数の糸Yを供給するための給糸部2と、給糸部2から供給された複数の糸Yを加工(仮撚加工)する加工部3と、加工部3によって加工された複数の糸Yを巻取ボビンBwに巻き取る巻取部4と、機台制御装置5と、を備える。
【0034】
給糸部2は、複数の給糸パッケージPsを保持するクリールスタンド6を有し、加工部3に複数の糸Yを供給する。加工部3は、給糸部2から複数の糸Yを解舒して加工するように構成されている。加工部3は、糸走行方向における上流側から順に、第1フィードローラ11、撚止ガイド12、第1加熱装置13、冷却装置14、仮撚装置15、第2フィードローラ16、第2加熱装置17、第3フィードローラ18が配置された構成となっている。加工部3におけるこれらの構成要素は、例えば、後述する複数の錘9(図4参照)のそれぞれに設けられている。巻取部4は、複数の巻取装置19を有する。各巻取装置19は、加工部3で仮撚加工された糸Yを巻取ボビンBwに巻き取って巻取パッケージPwを形成する。また、巻取部4には、複数の巻取装置19にそれぞれに対応して、形成された巻取パッケージPwと新たな空の巻取ボビンBwとの交換作業を行う複数のオートドッファ10が設けられている。
【0035】
機台制御装置5は、給糸部2、加工部3及び巻取部4の各構成要素を制御するためのものである。機台制御装置5は、例えば一般的なコンピュータ装置である。機台制御装置5は、機台入力部5aと、機台出力部5bと、機台記憶部5cとを有する。機台入力部5aは、例えば、不図示のタッチパネル及び/又はキーボード等であり、オペレータによって操作されることが可能に構成されている。機台出力部5bは、例えば不図示のディスプレイを有し、情報を出力可能に構成されている。機台出力部5bは、不図示のプリンタを有していても良い。機台記憶部5cは、給糸部2、加工部3及び巻取部4の構成要素を制御するための各種情報を記憶するように構成されている。機台制御装置5は、各種情報に基づき、給糸部2、加工部3及び巻取部4の構成要素を制御する。或いは、機台制御装置5は、給糸部2、加工部3及び巻取部4の各構成要素を制御するための各種制御装置(不図示)を介して、これらの構成要素を間接的に制御しても良い。機台制御装置5には、ホストコンピュータである管理装置101が電気的に接続されている。管理装置101は、機台制御装置5が取得した情報を利用し、後述する種々の判断及び/又は演算を行うことが可能である。
【0036】
仮撚加工機1は、機台幅方向に間隔を置いて配置された主機台7及び巻取台8を有する。主機台7及び巻取台8は、機台長手方向に略同じ長さに延びるように設けられている。主機台7及び巻取台8は、機台幅方向において互いに対向するように配置されている。仮撚加工機1は、1組の主機台7及び巻取台8を含む、スパンと呼ばれる単位ユニットを有する。1つのスパンにおいては、機台長手方向に並んだ状態で走行する複数の糸Yに対して、同時に仮撚加工を施すことができるように各装置が配置されている。仮撚加工機1は、このスパンが、主機台7の機台幅方向の中心線Cを対称軸として、紙面左右対称に配置されている(主機台7は、左右のスパンで共通のものとなっている)。また、複数のスパンが、機台長手方向に配列されている。
【0037】
また、1本の糸Yが給糸部2から供給されて巻取部4に到達するまでに通る構成要素のグループは、「錘」と呼ばれる。言い換えると、仮撚加工機1は、同時に形成可能な巻取パッケージPwの数と同じ数の錘9(図4参照)を有する。複数の錘9は、大まかに言えば、機台長手方向に沿って並べて配置されている。包含関係として、仮撚加工機1は複数のスパンを有し、各スパンは複数の錘9を有する。
【0038】
(給糸部)
給糸部2の構成について、引き続き図3及び図4を参照しつつ説明する。給糸部2のクリールスタンド6は、複数の錘9にそれぞれ対応して設けられた複数の給糸パッケージ保持部20(図4参照)を有する。複数の給糸パッケージ保持部20の各々は、2つの給糸パッケージPsが着脱されるように構成されている。すなわち、給糸パッケージ保持部20は、2つのパッケージ装着部21を有する。説明の便宜上、2つのパッケージ装着部21の一方を第1装着部22と呼び、他方を第2装着部23と呼ぶ。第1装着部22及び第2装着部23は、それぞれ、1つの給糸パッケージPsが着脱されることが可能に構成されている。パッケージ装着部21への給糸パッケージPsの着脱は、上述したクリールロボット102によって行われる。
【0039】
給糸部2の各給糸パッケージ保持部20は、以下のようにして、糸Yを途切れずに供給することが可能に構成されている。例えば、図4に示すように、複数の給糸パッケージPsの1つである第1給糸パッケージPsA(本発明の、ある給糸パッケージ)が、第1装着部22に装着されている。また、第1給糸パッケージPsAとは別の第2給糸パッケージPsB(本発明の、別の給糸パッケージ)が、第2装着部23に装着されている。第1給糸パッケージPsAから糸Yが解舒されている。また、第1給糸パッケージPsAに含まれる糸Yの終端部と、第2給糸パッケージPsBに含まれる糸Yの始端部とが結節されている(接続されている)。これにより、2本の糸Yの間に結節部分K(糸接続部分)が形成されている。このような場合、第1給糸パッケージPsAが空になった後に、第2給糸パッケージPsBから糸Yを途切れずに供給することが可能である。具体的には、第1給糸パッケージPsAからの糸Yの供給が終了して第1給糸パッケージPsAが空になった直後、結節部分Kが糸走行方向下流側(巻取装置19側)へ引っ張られることにより、第2給糸パッケージPsBから糸Yが解舒される。このようにして、糸Yを供給する給糸パッケージPsが切り替わる給糸パッケージ切替が起こる。これにより、糸Yが途切れることなく供給される。その後、空になった給糸パッケージPs(給糸ボビンBs)は、クリールロボット102によって新しい給糸パッケージPsと交換される。
【0040】
給糸パッケージ保持部20の糸走行方向下流側には、糸検知センサ24が配置されている。糸検知センサ24は、第1装着部22及び第2装着部23のうちどちらから糸Yが供給されているか検知可能に構成されている。図4に示すように、糸検知センサ24は、第1検知部25と、第2検知部26とを有する。第1検知部25は、第1装着部22から糸Yが供給されているか否か検知可能に構成されている。第2検知部26は、第2装着部23から糸Yが供給されているか否か検知可能に構成されている。第1検知部25及び第2検知部26は、例えば、それぞれが糸Yを光学的に検知する光学センサである。糸検知センサ24のより詳細については、例えば特許第5873105号公報を参照されたい。或いは、第1検知部25及び第2検知部26は、例えば、接触式のセンサであっても良い。
【0041】
(加工部)
加工部3の構成について、引き続き図3及び図4を参照しつつ説明する。以下では、加工部3のうち、1つの錘9に対応する部分のみ説明する。
【0042】
第1フィードローラ11は、給糸部2に装着された給糸パッケージPsから糸Yを解舒して第1加熱装置13へ送るように構成されている。第1フィードローラ11は、撚止ガイド12の糸走行方向上流側に配置されている。第1フィードローラ11による糸Yの搬送速度は、給糸パッケージPsから糸Yが解舒される解舒速度V(図4参照)と略等しい。
【0043】
撚止ガイド12は、仮撚装置15で糸Yに付与された撚りが、撚止ガイド12よりも糸走行方向上流側に伝播しないように構成されている。撚止ガイド12は、第1フィードローラ11の糸走行方向下流側、且つ、第1加熱装置13の糸走行方向上流側に配置されている。
【0044】
第1加熱装置13は、第1フィードローラ11から送られてきた糸Yを加熱するように構成されている。第1加熱装置13は、撚止ガイド12の糸走行方向下流側、且つ、冷却装置14の糸走行方向上流側に配置されている。本実施形態においては、説明の簡略化のため、第1加熱装置13は1本の糸Yを加熱するように構成されているものとするが、これには限られない。第1加熱装置13は、複数の糸Yを同時に加熱可能に構成されていても良い。
【0045】
冷却装置14は、第1加熱装置13で加熱された糸Yを冷却するように構成されている。冷却装置14は、第1加熱装置13の糸走行方向下流側、且つ、仮撚装置15の糸走行方向上流側に配置されている。本実施形態においては、説明の簡略化のため、冷却装置14は1本の糸Yを冷却するように構成されているものとするが、これに限られない。冷却装置14は、複数の糸Yを同時に冷却可能に構成されていても良い。
【0046】
仮撚装置15は、糸Yに撚りを付与するように構成されている。仮撚装置15は、例えば、いわゆるディスクフリクション方式の仮撚装置であるが、これには限られない。仮撚装置15は、冷却装置14の糸走行方向下流側、且つ、第2フィードローラ16の糸走行方向上流側に配置されている。
【0047】
第2フィードローラ16は、仮撚装置15で処理された糸Yを第2加熱装置17へ送るように構成されている。第2フィードローラ16による糸Yの搬送速度は、第1フィードローラ11による糸Yの搬送速度よりも速い。これにより、糸Yは、第1フィードローラ11と第2フィードローラ16との間で延伸される。
【0048】
第2加熱装置17は、第2フィードローラ16から送られてきた糸Yを加熱するように構成されている。第2加熱装置17は、鉛直方向に沿って延びている。説明の簡略化のため、第2加熱装置17は1本の糸Yを加熱するように構成されているものとするが、これには限られない。第2加熱装置17は、複数の糸Yを同時に加熱可能に構成されていても良い。
【0049】
第3フィードローラ18は、第2加熱装置17によって加熱された糸Yを巻取装置19へ送るように構成されている。第3フィードローラ18による糸Yの搬送速度は、第2フィードローラ16による糸Yの搬送速度よりも遅い。糸Yは、第2フィードローラ16と第3フィードローラ18との間で弛緩される。
【0050】
以上のように構成された加工部3では、第1フィードローラ11と第2フィードローラ16との間で延伸された糸Yが、仮撚装置15によって撚られる。仮撚装置15により形成される撚りは、撚止ガイド12までは伝播するが、撚止ガイド12よりも糸走行方向上流側には伝播しない。延伸されつつ撚りが付与された糸Yは、第1加熱装置13で加熱されて熱固定された後、冷却装置14で冷却される。仮撚装置15から下流では糸Yは解撚されるが、上記の熱固定によって各フィラメントが波状に仮撚りされた状態が維持される。さらに、仮撚装置15によって仮撚りが施された糸Yは、第2フィードローラ16と第3フィードローラ18との間で弛緩されながら、第2加熱装置17で熱固定された後、糸走行方向における下流側へ案内される。最後に、第3フィードローラ18から送られた糸Yは、巻取装置19によって巻取ボビンBwに巻き取られる。これにより、巻取パッケージPwが形成される。
【0051】
(巻取部)
巻取部4の構成について、図3及び図4を参照しつつ説明する。巻取部4は、糸Yを巻取ボビンBwに巻き取る複数の巻取装置19と、各巻取装置19に対応して設けられた複数のオートドッファ10(図3参照)とを有する。複数の巻取装置19は、複数の錘9に1つずつ属している(図4参照)。各巻取装置19は、例えば、支点ガイド31と、トラバース装置32と、クレードル33と、巻取ローラ34とを有する。支点ガイド31は、糸Yがトラバースされる際の支点となるガイドである。トラバース装置32は、例えば、モータにより往復駆動される無端ベルトに取り付けられたトラバースガイド35によって、糸Yをトラバース可能に構成されている。クレードル33は、巻取ボビンBw(巻取パッケージPw)を回転自在に支持可能に構成されている。巻取ローラ34は、巻取パッケージPwを回転させ、且つ、巻取パッケージPwの表面に接圧を付与するように構成されている。巻取ローラ34は、例えば、巻取パッケージPwの表面に接触した状態で、不図示のモータによって回転駆動される。これにより、巻取パッケージPwが摩擦力により従動回転するとともに、巻取パッケージPwの表面に接圧が付与されて巻取パッケージPwの形状が整えられる。なお、巻取ローラ34が回転駆動される代わりに、巻取パッケージPwが不図示のモータによって直接回転駆動されても良い。
【0052】
オートドッファ10は、巻取パッケージPwを巻取装置19から取り外し、空の巻取ボビンBwを巻取装置19に装着するように構成されている。言い換えれば、オートドッファ10は、巻取部4において、形成終了後の巻取パッケージPwと空の巻取ボビンBwとを交換可能に構成されている。また、オートドッファ10は、巻取パッケージPwの近傍において糸Yを切断可能な不図示のカッタを有する。走行中の糸Yがカッタによって切断されることにより、巻取パッケージPwの形成が終了する。ここで、カッタによる糸切断後にも、糸Yは巻取装置19側へ供給され続ける。オートドッファ10は、巻取パッケージPwの形成終了後、次の巻取ボビンBwへの糸Yの巻取開始までの間、巻取装置19に供給されてくる走行中の糸Yを吸引捕捉して保持可能な不図示のサクションを有する。次に糸Yが巻き取られる巻取ボビンBwに糸Yが掛けられるまでの間、糸Yのうちサクションによって吸引された部分は吸引除去される。また、オートドッファ10は、対応する巻取装置19から取り外された巻取パッケージPwを一時的に保管可能に構成されたストッカー10aを有する。ストッカー10aは、例えば、クリールスタンド6と巻取台8との間に形成された空間に面している。ストッカー10aに保管された巻取パッケージPwは、上述した巻取パッケージ搬送装置103によって回収される。オートドッファ10の構造等のより詳細については、例えば特開平6-212521号公報を参照されたい。
【0053】
以上のように構成された巻取部4では、上述した第3フィードローラ18から送られた糸Yが各巻取装置19によって巻取ボビンBwに巻き取られ、巻取パッケージPwが形成される(巻取処理)。オートドッファ10のカッタによって糸Yが切断されることにより、巻取ボビンBwへの糸Yの巻取処理が終了する。それとほぼ同時に、巻取装置19へ供給されてくる糸Yがサクションによって吸引保持され、オートドッファ10によって巻取パッケージPwがクレードル33から取り外される。その直後、オートドッファ10によって新しい空の巻取ボビンBwがクレードル33に装着される。すなわち、ある巻取パッケージPwが形成された後に、当該巻取パッケージPw(巻取ボビンBw)と新しい巻取ボビンBwとがオートドッファ10によって交換される(巻取ボビン交換作業)。これにより、新しい巻取ボビンBwに糸Yを巻き取り始めることが可能である。
【0054】
ところで、本願発明者は、従来に比べて飛躍的に高度な生産管理を実現すべく、以下のような着想を得た。すなわち、本願発明者は、給糸パッケージPsから糸Yを供給可能な時間(残時間)及び/又は給糸パッケージPsから一部の糸Yが解舒された後の糸Yの残量(糸残量)を任意のタイミングで知る手段を設けることに思い至った。このような情報を知ることにより、糸加工設備100の稼働に関するさらなる高度な管理及び/又は巻取パッケージPwの品質のさらなる高度な管理等が可能になる。なお、上記残時間及び/又は残量を任意のタイミングで正確且つ安価に知る手段は、従来確立されていなかった。例えば、作業者が目視によって糸Yの残量を推定する方法では、推定量にばらつきが生じてしまう。このため、残時間を正確に推定することが難しい。かといって、例えば給糸パッケージPsの重量を直接的に常時測定可能な重量センサを設けるのでは、パッケージ装着部21の数が増えるほど重量センサの数を増やす必要がある。このため、製造コストが増大するという問題が生じる。
【0055】
そこで、本実施形態では、上記残時間及び/又は残量に関する情報を任意のタイミングで正確に取得可能にするため、情報管理部110は、後述の情報を取得する。情報管理部110は、具体例として、図5(a)~(c)のグラフに示す事象に関する各種情報を取得し、管理する。なお、以下では、特に断らない限り、所定の錘9に限定して説明を進める。
【0056】
(事象の具体例)
情報管理部110が取得する情報について具体的に説明する前に、後の説明を理解するための助けとなるように、前提として、図5(a)~(c)のグラフに例示される事象と、各事象が起こった時刻について説明する。情報管理部110は、図5(a)~(c)のグラフに示される事象の少なくとも一部に関する情報を取得する(詳細は後述する)。
【0057】
図5(a)は、第1装着部22に装着された給糸パッケージPs(具体的には給糸パッケージPs1、Ps3)に含まれる糸Yの残量(縦軸)と時刻(横軸)との関係を示すグラフである。図5(b)は、第2装着部23に装着された給糸パッケージPs(具体的には給糸パッケージPs2、Ps4)に含まれる糸Yの残量(縦軸)と時刻(横軸)との関係を示すグラフである。図5(c)は、巻取ボビンBw(具体的には巻取ボビンBw1、Bw2、Bw3、Bw4、Bw5、Bw6)への糸Yの巻取量(縦軸)と時刻(横軸)との関係を示すグラフである。図5(a)~(c)のいずれのグラフにおいても、巻取ボビンBw1に糸Yが巻き取られ始める時刻t0が原点である。また、本実施形態においては、各給糸パッケージPsから糸Yが一度も解舒されていない状態における各給糸パッケージPsの重量(初期重量)は、説明の便宜上、いずれもWFである。なお、実際には、複数の給糸パッケージPsが形成される前工程において、糸切れ等の事情により途中で給糸パッケージPsの形成が終了される場合がある。このため、実際には、複数の給糸パッケージPsの初期重量は必ずしも同じでないことに留意されたい。
【0058】
まず、時刻t0において、第1装着部22には給糸パッケージPs1が装着されている。第2装着部23には給糸パッケージPs2が装着されている。給糸パッケージPs1に含まれる糸Yの残重量はW0である(初期重量WFよりも少ない)。給糸パッケージPs2に含まれる糸Yの残重量は初期重量WFである。なお、給糸パッケージPs1に含まれる糸Yの終端部と、給糸パッケージPs2に含まれる糸Yの始端部とが結節されており、結節部分Kが形成されている。
【0059】
時刻t0(時刻ts1)において、オートドッファ10による巻取ボビンBw1のクレードル33への装着が完了し、巻取ボビンBw1に糸が巻き取られ始める。つまり、時刻ts1は、巻取ボビンBw1に糸Yが巻き取られ始めた巻取開始時刻である。このとき、給糸パッケージPs1から糸Yが解舒される。時間が経つにつれて、給糸パッケージPs1に含まれる糸Yの残量(残重量)が減り、巻取ボビンBw1に巻き取られた糸Yの巻取量(巻取重量)が増える。時刻te1において、オートドッファ10のカッタによって糸Yが切断されることにより、巻取ボビンBw1への糸Yの巻取処理が終了する。つまり、時刻te1は、巻取ボビンBw1に糸Yが巻き取られ終わった(巻取パッケージPw1の形成が終了した)巻取終了時刻である。この時の給糸パッケージPs1の残重量はW1である。巻取ボビンBw1には、給糸パッケージPs1から供給された糸Yのみが巻き取られている。カッタによる糸Yの切断、サクションによる糸Yの吸引捕捉(すなわち、糸Yの吸引除去の開始)及び巻取ボビンBw1(巻取パッケージPw1)のクレードル33からの取外しが、ほぼ同時に行われる。次に、時刻te1の直後の時刻ts2において、オートドッファ10による巻取ボビンBw2のクレードル33への装着が完了し、巻取ボビンBw2への糸Yの巻取りが開始される(巻取ボビン交換作業が完了する)。巻取ボビンBw1に係る巻取終了時刻(時刻te1)と、巻取ボビンBw1の次に糸Yが巻き取られる巻取ボビンBw2に係る巻取開始時刻(時刻ts2)との間には、わずかなタイムラグtL(図6参照)がある。
【0060】
時刻ts2よりも後の時刻ta1において、第1装着部22に装着された給糸パッケージPs1が空になる。つまり、時刻ta1は、給糸パッケージPs1から糸Yが解舒され終わった解舒終了時刻である。給糸パッケージPs1が空になるのと同時に、時刻tb1(=時刻ta1)において、給糸パッケージPs1に含まれる糸Yと給糸パッケージPs2に含まれる糸Yとが結節されて形成された結節部分Kが巻取装置19側へ引っ張られる。これにより、第2装着部23に装着された給糸パッケージPs2から糸Yが最初に解舒される。つまり、時刻tb1は、給糸パッケージPs2から最初に糸Yが解舒された(糸Yが解舒され始めた)解舒開始時刻である。その後、時刻te2において巻取ボビンBw2への糸Yの巻取処理(巻取パッケージPw2の形成)が終了する。この時の給糸パッケージPs2の残重量はW2である。巻取ボビンBw2には、給糸パッケージPs1から解舒された糸Y及び給糸パッケージPs2から解舒された糸Yの両方が巻き取られている。また、巻取パッケージPw2には、結節部分Kが含まれている。その後、時刻ts3において、巻取ボビンBw3への糸Yの巻取処理が開始される。時刻te3において巻取ボビンBw3への糸Yの巻取処理(巻取パッケージPw3の形成)が終了したとき、給糸パッケージPs2の残重量はW3である。巻取ボビンBw3には、給糸パッケージPs2から解舒された糸Yのみが巻き取られている。
【0061】
また、時刻ta1よりも後、且つ、給糸パッケージPs2が空になる前の時刻ta2において、クリールロボット102によって、第1装着部22からの給糸パッケージPs1の取外しと、第1装着部22への給糸パッケージPs3の装着とが行われる(給糸パッケージ交換作業)。この時の給糸パッケージPs3の残重量はWFである。その後、適切なタイミングで、給糸パッケージPs2に含まれる糸Yの終端部と給糸パッケージPs3に含まれる糸Yの始端部とが結節され、結節部分Kが形成される。ここでは、説明の便宜上、クリールロボット102による給糸パッケージ交換作業の直後に、オペレータによって結節の作業(接続作業)が行われるものとする。オペレータは、手で結節の作業を行っても良い。或いは、オペレータは、例えば持ち運び可能な不図示の結節装置を操作することによって結節の作業を行っても良い。或いは、クリールロボット102が、結節の作業を実行可能な自動結節装置(不図示)を有していても良い。これにより、人手によらず、クリールロボット102によって結節の作業が行われても良い。
【0062】
その後の事象について簡単に説明する。巻取部4に関する事象は以下のとおりである。時刻ts4から時刻te4まで巻取ボビンBw4に糸Yが巻き取られる(巻取パッケージPw4が形成される)。時刻ts5から時刻te5まで巻取ボビンBw5に糸Yが巻き取られる(巻取パッケージPw5が形成される)。時刻ts6から時刻te6まで巻取ボビンBw6に糸Yが巻き取られる(巻取パッケージPw6が形成される)。また、給糸部2に関する事象は以下のとおりである。時刻ts4と時刻te4との間の時刻tb2(=時刻ta3)において、給糸パッケージPs2が空になり、給糸パッケージPs3から糸Yが解舒され始める。その後、時刻tb3において、給糸パッケージPs2が給糸パッケージPs4と交換される。時刻ts6と時刻te6との間の時刻ta4(=時刻tb4)において、給糸パッケージPs3が空になり、給糸パッケージPs4から糸Yが解舒され始める。
【0063】
(情報管理部が取得する基本情報の概要)
上記の事象を考慮した上で、まず、種々の判断及び/又は演算を行うために情報管理部110が取得する基本情報の概要について説明する。情報管理部110は、基本情報として、各給糸パッケージPsの初期量情報と、解舒単位量情報と、解舒開始時刻情報とを取得する(具体的な取得方法については後述する)。初期量情報は、糸Yが解舒され始める前の給糸パッケージPsに含まれる糸Yの初期量(初期重量又は初期長)に関する情報である。解舒単位量情報は、給糸パッケージPsから単位時間あたり解舒される糸Yの量に関する情報である。解舒開始時刻情報は、糸Yが解舒されている給糸パッケージPsから糸Yが解舒され始めた時刻(解舒開始時刻)の情報である。これらの情報は、糸加工設備100に関する種々の管理を行うための予測解舒終了時刻、残時間、残量及び予測原糸消失時刻の情報(詳細については後述)の取得を可能とするために用いられる。
【0064】
(必要な情報)
次に、情報管理部110が実際に基本情報(初期量情報、解舒単位量情報及び解舒開始時刻情報)を取得するために必要な情報について説明する。より具体的には、パッケージ装着部21に着脱される給糸パッケージPsに関する情報、機台制御装置5に予め入力される情報、及び、巻取処理中に機台制御装置5が取得する情報について説明する。また、以下では、巻取装置19によって形成される巻取パッケージPwに関する情報についても説明する。巻取パッケージPwに関する情報は、予測解舒終了時刻、残時間、残量及び予測原糸消失時刻の情報と併せて、糸加工設備100に関する種々の管理を行うために利用される。
【0065】
(クリールロボットが搬送する給糸パッケージに関する情報)
情報管理部110は、以下のようにして、クリールロボット102が搬送する給糸パッケージPsの個体情報及びこれに関連付けられた情報を管理する。まず、給糸パッケージストッカーに貯留されている満巻の給糸パッケージPsがオペレータによってクリールロボット102に搭載される前又は搭載されるとき、当該給糸パッケージPsに対応する給糸パッケージ個体情報が、オペレータによってクリール制御装置102aに入力される。例えば、オペレータが、クリール制御装置102aと電気的に接続されたIDリーダ(不図示)を用いて、各給糸パッケージPsに付されたIDタグを読み取ることによって給糸パッケージ個体情報の入力が行われても良い。或いは、各給糸パッケージPsに表示された視認可能な情報に基づいて、オペレータがクリール制御装置102aを操作することによって給糸パッケージ個体情報の入力が行われても良い。或いは、クリールロボット102に不図示のIDリーダが設けられており、クリールロボット102が当該IDリーダを用いて上記IDタグを読み取っても良い。
【0066】
ここで、IDタグに記録された情報又は給糸パッケージPsに表示された情報には、給糸パッケージPsに含まれる糸Yの初期重量(当該給糸パッケージPsから糸Yが解舒される前の重量)の情報と、糸Yの繊度(単位長さあたりの重量)の情報とが含まれる。本実施形態では、繊度の情報も初期量情報に含まれる。以下、給糸パッケージPsに含まれる糸Yの重量を、単に給糸パッケージPsの重量と呼ぶ。クリール制御装置102aは、給糸パッケージ個体情報と、各給糸パッケージPsの初期重量の情報と、各給糸パッケージPsの糸Yの繊度の情報とを給糸パッケージPs毎に関連付けて記憶する(図7(a)参照)。上述したように、各給糸パッケージPsの初期重量は、説明の便宜上、いずれもWFである。給糸パッケージPsの重量の単位は、例えばkgである。また、各給糸パッケージPsの糸Yの繊度はいずれもFである。繊度の単位は、例えばdtexである。デシテックスは、10000メートルあたりの糸Yの重量(g)である。
【0067】
情報管理部110は、クリールロボット102が給糸パッケージPsをパッケージ装着部21に装着する際に、当該給糸パッケージPsの個体情報等(図7(a)参照)をクリール制御装置102aから受け取る。そして、情報管理部110は、当該給糸パッケージPsの個体情報等を、当該給糸パッケージPsが装着されるパッケージ装着部21の個体情報に関連付ける。パッケージ装着部21の個体情報とは、給糸パッケージPsが装着されたパッケージ装着部21が、複数の錘9のうちいずれに属しているか、並びに、当該パッケージ装着部21が第1装着部22及び第2装着部23のうちどちらであるかに関する情報である。このように、情報管理部110は、クリールロボット102によって搬送される給糸パッケージPsの個体情報をクリールロボット102の動作に関連付けて管理する。
【0068】
機台制御装置5は、新しい給糸パッケージPsがパッケージ装着部21に装着されたとき、当該給糸パッケージPsがパッケージ装着部21に装着された給糸パッケージ装着時刻に関する給糸パッケージ装着時刻情報を取得する。給糸パッケージ装着時刻は、例えば、上述した時刻ta2、tb3である。機台制御装置5は、給糸パッケージ個体情報と、パッケージ装着部21の個体情報と、給糸パッケージ装着時刻情報とを給糸パッケージPs毎に関連付けて記憶する(図7(a)参照)。
【0069】
オペレータは、新しい給糸パッケージPsが一方のパッケージ装着部21に装着された後、当該給糸パッケージPsに含まれる糸Yの始端部を、他方のパッケージ装着部21に装着された給糸パッケージPsに含まれる糸Yの終端部と結び、結節部分Kを形成する。その後、オペレータは、結節部分Kを所定位置に配置する。さらに、オペレータは、結節部分Kが所定位置に配置されたことを示す情報を機台制御装置5に入力する。入力された情報に基づき、機台制御装置5は、結節部分Kが所定位置に配置されていることを示す情報を記憶する。
【0070】
(巻取パッケージに関する情報)
また、情報管理部110は、例えば以下のようにして、巻取パッケージPwの個体情報を管理する。まず、機台制御装置5は、ある巻取ボビンBwが巻取装置19に装着された時刻を、当該巻取ボビンBwに糸Yが巻き取られ始めた巻取開始時刻として記憶する。また、機台制御装置5は、当該ある巻取ボビンBwへの糸Yの巻取処理が終了するとき(巻取パッケージPwの形成が終了するとき)に、当該巻取パッケージPwに個体情報(巻取パッケージ個体情報)を付与する。具体的には、機台制御装置5は、当該巻取パッケージPwの個体情報として、例えば機台番号(仮撚加工機1の識別番号)の情報及び錘9の識別番号の情報を取得する。そして、機台制御装置5は、これらの個体情報と、上記巻取開始時刻と、巻取処理を終了させた時刻(巻取終了時刻)とを関連付けて記憶する。機台制御装置5は、これらの情報に関連付けて、所定の管理番号を巻取パッケージ個体情報として取得し、各巻取パッケージPwに付与しても良い。例えば図8(b)に示すように、上述した「Pw1」~「Pw6」を管理番号(巻取パッケージ個体情報)とした場合、管理番号と巻取開始時刻及び巻取終了時刻とが関連付けられる(なお、機台番号及び錘9の識別番号については図示を省略している)。さらに、機台制御装置5は、これらの情報を不図示のラベルに印刷する。当該ラベルは、オペレータによって巻取ボビンBwに貼付されることが可能である。
【0071】
なお、巻取パッケージ個体情報を取得する別の手段として、例えば不図示のIDタグが空の巻取ボビンBwに予め付されていても良い。これにより、巻取処理前の巻取ボビンBwに巻取パッケージ個体情報が予め付与されていても良い。さらに、オートドッファ10が不図示のIDリーダを有していても良い。例えば、オートドッファ10がある巻取ボビンBwを巻取装置19に装着するとき、又は、巻取装置19から巻取パッケージPwを取り外すとき、上記IDリーダが当該ある巻取ボビンBwに付されたIDタグを読み取ることにより、当該ある巻取ボビンBwの個体情報が機台制御装置5に送信されても良い。或いは、オートドッファ10の代わりに、オペレータが不図示のIDリーダでIDタグを読み取っても良い。或いは、IDリーダによってIDタグを読み取る代わりに、オペレータが巻取ボビンBwの個体情報を機台制御装置5に手で入力しても良い。
【0072】
(機台制御装置に予め入力される情報)
次に、巻取処理が行われる前に機台制御装置5に予め入力される情報について説明する。加工部3に関する情報として、オペレータは、各種加工条件を機台制御装置5に予め入力する。一例として、オペレータは、第1フィードローラ11、第2フィードローラ16、及び第3フィードローラ18の回転数の情報を機台制御装置5に入力する(図示省略)。これらのローラの回転数は、糸Yが糸走行方向下流側へ送られる糸送り速度に比例する。特に、第1フィードローラ11の回転数は、糸Yが給糸パッケージPsから解舒される解舒速度V(図4参照)に比例する。本実施形態では、説明の便宜上、解舒速度Vが略一定であるものとする。解舒速度の単位は、例えばm/minである。機台制御装置5は、例えば、第1フィードローラ11の回転数の情報に基づいて解舒速度Vの情報を取得する。
【0073】
巻取部4に関する情報として、オペレータは、巻取ボビンBwに巻き取るべき糸Yの目標重量(予定巻取量)等に関する情報を機台制御装置5に予め入力する。オペレータによって入力された情報は、例えば、巻取処理開始から巻取処理終了までの所要時間(予定巻取時間)を含んでいても良い。或いは、予定巻取時間は、入力された予定巻取量等の情報に基づいて機台制御装置5が算出しても良い。そして、機台制御装置5は、ある巻取ボビンBwに関する巻取開始時刻から予定巻取時間後の予定巻取終了時刻に当該巻取ボビンBwへの糸Yの巻取処理が終了すると予測する。或いは、例えば、巻取部4は、巻取ボビンBwに巻き取られた糸Yの量に関するパラメータ(巻取パッケージの直径等)を検知可能な不図示のセンサを有していても良い。この場合、機台制御装置5は、センサによる検知結果に基づいて巻取終了のタイミングを導出しても良い。
【0074】
(巻取処理中に機台制御装置が取得する情報)
次に、巻取ボビンBwへの糸Yの巻取処理中に機台制御装置5が取得する情報について説明する。これらの情報は、機台制御装置5に入力された上記情報と組み合わせることにより、後述の解舒開始時刻情報及び解舒終了時刻情報を取得するための情報である。
【0075】
機台制御装置5は、糸検知センサ24による検知結果に基づき、糸Yを供給している給糸パッケージPsが切り替わる給糸パッケージ切替が起こったかどうか判断する。例えば、図5(a)、(b)を参照したとき、給糸パッケージPs1が空になり、且つ、給糸パッケージPs2から糸Yが最初に解舒される事象が、給糸パッケージ切替である。糸検知センサ24の状態が、第1検知部25及び第2検知部26の一方によって糸Yを検知している状態から、第1検知部25及び第2検知部26の他方によって糸Yを検知している状態に切り替わったとき、機台制御装置5は、給糸パッケージ切替が起こったと判断する。機台制御装置5は、給糸パッケージ切替が起こったと判断したとき、図7(b)の表に示された以下の情報を取得して記憶する。機台制御装置5は、給糸パッケージ切替が起こったときに糸Yを供給し始めたパッケージ装着部21の個体情報(第1装着部22及び第2装着部23のいずれか)と、給糸パッケージ切替が起こった時刻とを関連付けて記憶する。糸Yを供給し始めたパッケージ装着部21に関し、給糸パッケージ切替が起こった時刻は解舒開始時刻として取り扱われる。また、機台制御装置5は、給糸パッケージ切替が起こったときに糸Yの供給が終わったパッケージ装着部21の個体情報と、給糸パッケージ切替が起こった時刻とを関連付けて記憶する。糸Yの供給が終わったパッケージ装着部21に関し、給糸パッケージ切替が起こった時刻は解舒終了時刻として取り扱われる。また、機台制御装置5は、給糸パッケージ切替が起こったと判断したとき、結節部分Kが所定位置から移動したことを示す情報を記憶する。
【0076】
機台制御装置5は、給糸パッケージ装着時刻の情報と、給糸パッケージ切替が起こった時刻の情報とを用いて、以下の手順で解舒開始時刻情報を取得する。具体例として、機台制御装置5は、給糸パッケージPs3の解舒開始時刻情報を取得する際、給糸パッケージPs3が装着されたパッケージ装着部21の個体情報(第1装着部22)及び給糸パッケージ装着時刻(時刻ta2)の情報を取得する。次に、機台制御装置5は、第1装着部22に装着された給糸パッケージPsの解舒開始時刻のうち、時刻ta2よりも後であり且つ最も早い時刻(時刻ta3。図5(a)、(b)参照)の情報を、給糸パッケージPs3の解舒開始時刻として取得する。また、機台制御装置5は、当該解舒開始時刻と関連付けられた解舒終了時刻(時刻ta4)の情報を、給糸パッケージPs3の解舒終了時刻として取得する。このようにして、給糸パッケージPs3の個体情報と解舒開始時刻情報と解舒終了時刻情報とが関連付けて取得される(図8(a)参照)。以上の情報は、給糸パッケージPs3に限られず、各々の給糸パッケージPsに関して取得されることが可能である。
【0077】
以上のようにして、情報管理部110によって、初期量情報、解舒単位量情報及び解舒開始時刻情報等が基本情報として給糸パッケージPs毎に取得される(図8(a)参照)。
【0078】
(残量情報、残時間情報及び予測解舒終了時刻情報)
上述した基本情報(初期量情報、解舒単位量情報及び解舒開始時刻情報)に基づいて得られる情報の取得方法について説明する。情報管理部110は、初期量情報、解舒単位量情報及び解舒開始時刻情報を用いた演算により、残量情報、残時間情報及び予測解舒終了時刻情報のうち少なくとも1つを取得する。これらの情報は、情報管理部110による糸加工設備100の動作の管理に使用される(管理の詳細については後述する)。
【0079】
残量は、任意の基準時刻において、各パッケージ装着部21に装着された各給糸パッケージPsに含まれる糸Yの残量である。残時間は、任意の基準時刻において、各パッケージ装着部21に装着されている各給糸パッケージPsから糸Yを解舒可能な時間の長さである。予測解舒終了時刻は、糸Yが解舒されている給糸パッケージPsから糸Yが解舒され終わると予測される時刻である。つまり、情報管理部110は、各給糸パッケージPsに関する実際の解舒終了時刻の情報を取得するよりも前に、各給糸パッケージPsから糸Yが解舒され終わる時刻を予測可能である。
【0080】
(残量情報)
まず、基準時刻における各給糸パッケージPsの残量情報の取得方法の例について説明する。例えば、残量情報の取得が行われる現在時刻が基準時刻として取り扱われる。現在時刻が時刻t1(図5(b)参照)であるとき、情報管理部110は、糸検知センサ24による検知結果に基づき、第2装着部23に装着された給糸パッケージPs(具体的には給糸パッケージPs2)から糸Yが解舒されていると判断する。ここでは、給糸パッケージPs2が本発明の所定給糸パッケージに相当する。
【0081】
さらに、情報管理部110は、図8(a)に示すように、給糸パッケージPs2に関して、初期重量WFの情報と、繊度Fの情報と、糸Yが解舒される解舒速度Vの情報と、解舒開始時刻(時刻tb1)の情報とを関連付けて取得する。給糸パッケージPs2に関する解舒速度Vの情報が、本発明の解舒単位量情報に相当する。解舒単位量情報は、例えば、糸加工設備100の動作設定として機台制御装置5に記憶されている。
【0082】
時刻t1における給糸パッケージPs2の残量(残重量)をWr1(図5(b)参照)としたとき、残重量Wr1の値は以下の式に基づいて算出される。なお、Aは、波括弧内の式に基づく計算結果の単位をkgにするための係数である。また、ここでは、説明の簡単化のため、時刻tb1(解舒開始時刻)から時刻t1(基準時刻)まで糸Yが連続的に解舒されている(つまり、巻取処理が中断されていない)ものとする。
【0083】
Wr1=WF-{A×V×F×(t1-tb1)}
【0084】
上記の式において、WFは、本発明の初期量情報に含まれる。V×Fは、給糸パッケージPs2から糸Yが単位時間あたり解舒される重量である。t1-tb1は、時刻t1までに給糸パッケージPs2から糸Yが解舒された時間の積算値(積算時間)の情報(積算時間情報)である。このように、情報管理部110は、初期量情報と解舒単位量情報と解舒開始時刻情報と基準時刻情報とを用いて、時刻t1(基準時刻)における給糸パッケージPs2(所定給糸パッケージ)の残重量の情報(残量情報)を取得する。また、情報管理部110は、もう一方のパッケージ装着部21(第1装着部22)に装着された給糸パッケージPs(給糸パッケージPs1)についても残量を算出する。時刻t1において、第1装着部22には空の給糸パッケージPs1が残っている。給糸パッケージPs1の解舒開始時刻(図示省略)は、給糸パッケージPs2の解舒開始時刻よりも大分早い。時刻t1における給糸パッケージPs1に係る残量は、給糸パッケージPs2に係る残量と同様に計算されると、ゼロよりも小さくなる。このように残量の計算結果がゼロ以下になる場合、情報管理部110は、時刻t1における給糸パッケージPs1に係る残量をゼロとする。
【0085】
また、例えば、現在時刻が時刻t2(図5(b)参照)であるとき、時刻t2における残重量Wr2の値も同様に算出できる。時刻t2においては、第1装着部22には新しい給糸パッケージPs3が装着されている。また、時刻t2においては、給糸パッケージPs3から糸Yはまだ解舒されていない。このため、時刻t2における給糸パッケージPs3に係る残量は、WFである。
【0086】
なお、残量の単位は、必ずしも重量でなくても良い。残量情報として、例えば、給糸パッケージPsに含まれる糸Yの残長の情報が取得されても良い。或いは、給糸パッケージPsに含まれる糸Yの残重量のパーセンテージの情報(つまり、初期重量に対する残重量の割合の情報)が取得されても良い。
【0087】
(残時間情報)
残時間情報の取得方法について説明する。時刻t1において給糸パッケージPs2から糸Yを供給可能な残時間をtr1としたとき、残時間tr1の値は、Wr1を用いて、以下の式に基づいて算出される(残時間情報)。
【0088】
tr1=Wr1/(A×V×F)
【0089】
或いは、tr1は、以下の式に基づき、Wr1を用いずに算出されても良い。
【0090】
tr1=[WF-{A×V×F×(t1-tb1)}]/(A×V×F)
【0091】
また、時刻t1において給糸パッケージPs1から糸Yを供給可能な残時間はゼロとなる。これは、上述したように、時刻t1において給糸パッケージPs1に係る残量がゼロであるためである。情報管理部110は、残時間情報を用いて、後述する予測原糸消失時刻情報を取得することが可能である。
【0092】
また、例えば、時刻t2における給糸パッケージPs2に係る残時間をtr2としたとき(図5(b)参照)、残重量Wr2に基づいて残時間tr2の値を同様の方法で算出できる。また、時刻t2においては、給糸パッケージPs3から糸Yはまだ解舒されていない。このため、時刻t2における給糸パッケージPs3に係る残時間をtFとしたとき、残時間tFは、初期重量WF(図5(b)参照)を用いて算出可能である。
【0093】
(予測解舒終了時刻情報)
情報管理部110は、基準時刻において糸Yが解舒されている給糸パッケージPsから糸Yが解舒され終わる時刻を予測可能である。例えば時刻t1において、給糸パッケージPs2から糸Yが解舒されている。情報管理部110は、時刻t1に残時間tr1を加算した時刻の情報を予測解舒終了時刻情報として取得する。或いは、情報管理部110は、残時間情報を用いて予測解舒終了時刻を算出する代わりに、基本情報を用いて所定の数式に基づき予測解舒終了時刻を算出しても良い。予測解舒終了時刻は、給糸パッケージPs2に関する実際の解舒終了時刻(上述した時刻tb2)と略等しい。なお、当該予測解舒終了時刻は、給糸パッケージPs2の次に糸Yが解舒される予定の給糸パッケージPs3の実際の解舒開始時刻(上述したta3)と略等しい。したがって、情報管理部110は、ある給糸パッケージPsの解舒開始時刻が分かっている場合、当該あるパッケージPsの次に糸Yが解舒される給糸パッケージPsの解舒開始時刻を推定する(予測する)こともできる。例えば、情報管理部110は、給糸パッケージPs2に関する初期量情報と解舒単位量情報と解舒開始時刻情報とを利用して、給糸パッケージPs3に関する解舒開始時刻情報を演算により取得しても良い。
【0094】
(情報管理部による糸加工設備の動作管理)
次に、情報管理部110による糸加工設備100の具体的な動作管理について説明する。例として、ある巻取ボビンBwへの糸Yの巻取開始から巻取終了までに行われる処理について説明する。まず、概要について説明する。例として、巻取ボビンBw2(図5(c)参照)に関する説明を進める。巻取ボビンBw2に関する巻取開始時刻(時刻ts2)において、第1装着部22に装着された給糸パッケージPs1から糸Yが供給される。また、第2装着部23に給糸パッケージPs2が装着されている。給糸パッケージPs1に含まれる糸Yの終端部と、給糸パッケージPs2に含まれる糸Yの始端部とが結節されており、これによって結節部分Kが形成されている。結節部分Kは、所定位置に配置されている。また、結節部分Kが所定位置に配置されたことを示す情報が、オペレータによって機台制御装置5に予め入力されている。
【0095】
時刻ts2において、巻取ボビンBw2への糸Yの巻取処理が開始される。巻取処理開始と概ね同時に、情報管理部110は、時刻ts2(巻取開始時刻)において給糸パッケージPs1に含まれている糸Yの残量(残重量W1。図5(a)参照)の情報を取得して、例えば機台記憶部5cに記録する。
【0096】
巻取処理中、情報管理部110は、上述した残量情報、残時間情報及び予測解舒終了時刻情報を随時更新する。さらに、情報管理部110は、後述する予測原糸消失時刻情報を随時更新する。さらに、情報管理部110は、結節部分Kの混入に関する判断、糸残量の減少の判断及び結節忘れの判断を行う。各情報の更新の具体的な方法、及び各判断の詳細については後述する。
【0097】
なお、この例では、巻取処理中に給糸パッケージ切替が起こる。すなわち、巻取処理中に、給糸パッケージPs1から糸Yが解舒されている状態から、給糸パッケージPs2から糸Yが解舒されている状態に切り替わる(図5(a)~(c)参照)。情報管理部110は、上述したように、糸検知センサ24による検知結果に基づいて、給糸パッケージ切替の有無を判断する。この例においては、給糸パッケージPs1が本発明の所定給糸パッケージに相当する。また、給糸パッケージPs2が本発明の予備給糸パッケージに相当する。
【0098】
巻取処理が終了したとき(時刻ts2)、情報管理部110は、巻取終了時刻まで糸Yを供給した給糸パッケージPs2の、巻取終了時刻における残量情報を取得する。最後に、情報管理部110は、給糸パッケージPs1、Ps2から巻取ボビンBw2に供給された糸層の情報(糸層情報)を例えば機台記憶部5cに記録する。糸層情報は、具体的には重量の情報であっても良い。すなわち、この例においては、巻取ボビンBw2に対して、給糸パッケージPs1に含まれる糸Yのうち、残重量が0~W1の部分が供給された(図5(a)~(c)参照))。また、巻取ボビンBw2に対して、給糸パッケージPs2に含まれる糸Yのうち、残重量がW2~WFの部分が供給された(図5(a)~(c)参照))。このように、情報管理部110は、残量情報に基づいて、所定の巻取ボビンBwに巻き取られる糸Yが、所定の巻取ボビンBwに糸Yを供給する給糸パッケージPsに含まれていた糸層のうちどの部分を構成していたかに関する糸層情報を取得可能である。この場合、巻取開始時刻及び巻取終了時刻が本発明の基準時刻に相当する。
【0099】
(各種情報の更新)
次に、上述した各種情報の更新について説明する。情報管理部110は、巻取処理中に、糸Yを供給している給糸パッケージPsから糸Yが解舒された時間の積算値(積算時間)を随時更新する。この場合、当該更新が行われる時刻が、本発明の基準時刻に相当する。基準時刻においてどの給糸パッケージPsから糸Yが解舒されているか(すなわち、どの給糸パッケージPsが所定給糸パッケージであるか)については、基準時刻と各給糸パッケージPsに関する解舒開始時刻情報とに基づいて、随時判断される。なお、積算時間は、オートドッファ10によって巻取ボビン交換作業が行われている間にも更新される。これは、上述したように、巻取ボビン交換作業が行われている間にも糸Yが巻取装置19側へ供給されている(すなわち、給糸パッケージPsから糸Yが解舒されている)ためである。
【0100】
上記積算時間の更新が行われた後、情報管理部110は、基本情報及び更新された積算時間に基づいて、残量、残時間、予測解舒終了時刻及び予測原糸消失時刻を算出(更新)する。より具体的には、情報管理部110は、2つのパッケージ装着部21に装着されている両方の給糸パッケージPsに係る残量情報及び残時間情報を算出する。情報管理部110は、糸Yが解舒されている給糸パッケージPsに係る予測解舒終了時刻を算出する。
【0101】
また、情報管理部110は、予測原糸消失時刻を算出する。予測原糸消失時刻は、ある給糸パッケージ保持部20(所定の給糸パッケージ保持部20)に装着された複数の給糸パッケージPsの全てが空になると予測される時刻である。予測原糸消失時刻は、給糸パッケージ保持部20に装着されている2つの給糸パッケージPsに含まれる糸Y同士が結節されているか否かにかかわらず、両方の給糸パッケージPsに係る残時間を基準時刻に加算することにより取得される。すなわち、所定の給糸パッケージ保持部20に係る予測原糸消失時刻は、所定の給糸パッケージ保持部20に装着されている全ての給糸パッケージPsに係る残時間情報に基づいて取得される。例えば、時刻t1において、第1装着部22に装着された給糸パッケージPs1から糸Yが解舒されることが可能な残時間はゼロである。時刻t1において、第2装着部23に装着された給糸パッケージPs2から糸Yが解舒されることが可能な残時間は、上述したtr1である。情報管理部110は、時刻t1に残時間tr1を加算して得られる時刻の情報を、時刻t1において予測される予測原糸消失時刻情報として取得可能である。
【0102】
なお、例えば時刻t2において、第1装着部22に装着された給糸パッケージPs3に係る残時間はtFである。時刻t2において、第2装着部23に装着された給糸パッケージPs2にかかる残時間は、上述したtr2である。情報管理部110は、時刻t2に残時間tF及び残時間tr2を加算して得られる時刻の情報を、時刻t2における予測原糸消失時刻情報として取得可能である。
【0103】
(結節部分の混入に関する判断)
次に、糸Yが巻き取られている巻取ボビンBwへの結節部分Kの混入に関する判断、及び当該判断後の処理について説明する。情報管理部110は、巻取処理が行われている巻取ボビンBwに形成される巻取パッケージPwに結節部分Kが混入すると予測されるか否か判断する。より具体的には、以下の3種類の処理のいずれかが実行される。例えば、巻取開始時刻と予定巻取終了時刻との間に予測解舒終了時刻が存在する場合、巻取パッケージPwに結節部分Kが混入すると予測される。或いは、当該巻取ボビンBwに係る巻取開始時刻において糸Yが解舒されている給糸パッケージPsに係る残量が予定巻取量よりも少ない場合、巻取パッケージPwに結節部分Kが混入すると予測される。或いは、当該巻取開始時刻において糸Yが解舒されている給糸パッケージPsに係る残時間が予定巻取時間よりも短い場合、巻取パッケージPwに結節部分Kが混入すると予測される。巻取パッケージPwに結節部分Kが混入すると予測された場合、情報管理部110は、現在時刻が予測解舒終了時刻に到達するか否か判断する。「到達する」は、「現在時刻から所定時間後に予測解舒終了時刻が訪れる予定である」ことを意味していても良い。或いは、「到達する」は、「現に予測解舒終了時刻が訪れた」ことを意味していても良い。或いは、情報管理部110は、上述した糸検知センサ24による検知結果に基づき、給糸パッケージ切替が起こったかどうかの判断を行うことによって、現在時刻が予測解舒終了時刻に到達するか否か判断しても良い。
【0104】
情報管理部110(機台制御装置5)は、現在時刻が予測解舒終了時刻に到達すると判断したとき、例えば以下のような処理(結節部分Kの混入回避処理。以下、単に混入回避処理)を実行することにより、結節部分Kが巻取パッケージPwに混入することを回避できる。機台制御装置5は、まず、結節部分Kが巻取装置19に到達すると予測される時刻の直前(当該時刻の所定時間前)に、オートドッファ10のカッタに糸Yを切断させる。これにより、巻取装置19に装着されている巻取ボビンBwへの巻取処理が終了する。糸Yの切断とほぼ同時に、走行中の(巻取装置19側へ供給されている)糸Yは、上述したように、オートドッファ10のサクションによって吸引保持される。これにより、オートドッファ10による巻取ボビン交換作業が行われている間(上述したタイムラグが生じる時間帯)に、糸Yのうち結節部分Kを含む部分をサクションによって吸引除去することが可能となる。すなわち、当該結節部分Kを巻取ボビンBwに巻き取らずに除去することができる。このように、結節部分Kが混入すると予測されるタイミングに応じて巻取処理の終了のタイミングを管理することができる。これにより、巻取パッケージPwに結節部分Kが混入することを回避できる。参考例として、仮に、巻取ボビンBw4に関して混入回避処理が行われる場合、図9のグラフに示すように、巻取ボビンBw4への糸Yの巻取処理は、通常よりも短い時間で終了する。より具体的には、巻取ボビンBw4に関して混入回避処理が行われる場合、巻取ボビンBw4に係る巻取終了時刻(図9の時刻te4aを参照)は、上述した時刻te4(図5(c)参照)よりも早くなる。また、次の巻取ボビンBw5にかかる巻取開始時刻(図9の時刻ts5aを参照)も、上述したts5(図5(c)参照)よりも早くなる。或いは、仮に巻取パッケージPwに意図せず結節部分Kが混入しても、混入回避処理が行われる場合、結節部分Kは、巻取パッケージPwの径方向において最も外側又はその近傍の糸層(すなわち、外層部)に含まれる。このため、巻取パッケージPwに混入した結節部分Kを容易に除去できる。なお、混入回避処理が行われる場合、吸引除去したい結節部分Kがオートドッファ10によって吸引除去されるよりも前に巻取ボビン交換作業が完了してしまうと、以下の問題が発生する懸念がある。すなわち、次の巻取ボビンBwに糸Yが巻き取られて形成される巻取パッケージPwの径方向において、最も内側又はその近傍の糸層(すなわち、内層部)に結節部分Kが混入するおそれがある。このような場合、結節部分Kを当該巻取パッケージPwから除去することが困難になる。そこで、情報管理部110は、結節部分Kが巻取装置19に到達すると予測される時刻と同時又は当該時刻の直後(当該時刻の所定時間後)に、オートドッファ10のカッタに糸Yを切断させても良い。すなわち、形成中の巻取パッケージPwの外層部に結節部分Kを意図的に混入させるようなタイミングで、当該巻取パッケージPwの形成が終了させられても良い。
【0105】
(残量の減少の判断)
次に、給糸パッケージPsにおける糸Yの残量の減少の判断、及び当該判断後の処理について説明する。当該判断は、給糸パッケージPsの交換作業をクリールロボット102に行わせるためのものである。情報管理部110は、ある錘9の給糸パッケージ保持部20に係る予測原糸消失時刻よりも所定時間(例えば第1時間)前のパッケージ交換指示時刻が訪れたかどうか判断する。情報管理部110は、パッケージ交換指示時刻が訪れたと判断した場合、給糸パッケージ交換作業をクリールロボット102に行わせるための指令信号を出力する。
【0106】
このような判断及び処理によって、給糸パッケージ交換作業が必要なタイミングで、給糸パッケージ交換作業をクリールロボット102に行わせることができる。このような処理は、給糸部2が複数の給糸パッケージ保持部20を有する構成、及び/又は糸加工設備100が複数の仮撚加工機1を備える(つまり、複数の給糸部2を備える)構成において特に有効である。すなわち、情報管理部110は、複数の給糸パッケージ保持部20に係る予測原糸消失時刻の情報に基づいて、クリールロボット102の動作を管理する。より具体的には、情報管理部110は、複数の給糸パッケージ保持部20のそれぞれに係る予測原糸消失時刻までに、複数の給糸パッケージ保持部20のそれぞれにおける給糸パッケージ交換作業が完了するように、クリールロボット102の動作を管理する。情報管理部110は、給糸パッケージPsを補充するためのスケジュールを作成し、当該スケジュールに従ってクリールロボット102の動作を制御する。スケジュールの作成時に、情報管理部110は、補充が必要な給糸パッケージPsの種類、個数、補充場所及びクリールロボット102の動線等、種々の条件を考慮に入れてパッケージ交換指示時刻を決定する。これにより、各給糸パッケージ保持部20に対して適切なタイミングで給糸パッケージ交換作業を行うことができる。
【0107】
或いは、情報管理部110は、給糸パッケージ交換作業が行われることが好ましいタイミングまで待った後に、給糸パッケージ交換作業を行うこともできる。例えば、設備のコンパクト化のため、2つのパッケージ装着部21同士の間隔が意図的に狭くなるようにパッケージ装着部21が配置されている場合、新しい2つの給糸パッケージPsを同時にパッケージ装着部21に装着すると、給糸パッケージPsが互いに干渉しうる。このような構成では、ある給糸パッケージPsが2つのパッケージ装着部21の一方に装着され、当該給糸パッケージPsからある程度の量の糸Yが解舒された後にのみ、別の給糸パッケージPsを2つのパッケージ装着部21の他方に装着することが可能になる。このような構成において、上記制御を行うことによって、新しい給糸パッケージPsが装着可能になるときまで給糸パッケージ交換作業の指示を待つことができる。
【0108】
(結節忘れの判断)
次に、結節忘れの判断、及び当該判断後の処理について説明する。結節忘れ(接続忘れ)とは、オペレータによって給糸パッケージPsが給糸パッケージ保持部20に新たに装着された後、結節作業が行われないまま、新しい給糸パッケージPsが放置されている状況をいう。当該判断は、オペレータに結節作業を促すためのものである。情報管理部110は、ある錘9における巻取処理中に、当該錘9において結節部分Kが形成されていないと判断した場合、情報管理部110は、さらに、当該錘9において糸Yが解舒されている給糸パッケージPs(所定給糸パッケージ)に係る残時間が所定時間(例えば第2時間)以下かどうか判断する。情報管理部110によって、上記残時間が所定時間以下であると判断されたとき、機台制御装置5は、機台出力部5bを制御して、結節部分Kを形成する作業が必要であることを示す情報を機台出力部5bに出力させる。当該錘9において結節部分Kが形成されていると判断された場合、或いは、上記残時間が所定時間以下でないと判断された場合、機台出力部5bに対する上記制御は行われない。情報管理部110が、本発明の接続情報取得部に相当する。機台制御装置5が、本発明の第2出力制御部に相当する。機台出力部5bが、本発明の第2出力部に相当する。或いは、上記情報の出力は、管理装置101の管理出力部101bによって行われても良い。この場合、管理装置101が本発明の第2出力制御部に相当し、管理出力部101bが本発明の第2出力部に相当する。
【0109】
以上のように、情報管理部110によって、初期量情報と、解舒単位量情報と、解舒開始時刻情報とが正確且つ簡易に取得される。これらの情報を用いた演算によって、例えば給糸パッケージPsからの糸Yの解舒が終了するタイミングを正確に予測したり、糸Yの解舒の進行度を常時推定したりすることが可能になる。したがって、生産管理を飛躍的に高度化しうる新たな糸加工設備100を提供できる、また、給糸パッケージPsから一部の糸Yが解舒された後の糸Yの残量が直接測定されない場合でも、糸加工設備の管理に関する情報を任意のタイミングで正確に取得可能とすることができる。
【0110】
また、情報管理部110は、初期量情報として、各給糸パッケージPsに含まれる糸Yの初期重量及び繊度の情報を取得し、且つ、解舒単位量情報として、解舒速度の情報を取得する。これにより、時間及び/又は残量に関する演算の際に、単位を容易に整合させることができる。このように、取得しやすく且つ単位を整合可能な情報を種々の演算に利用できる。
【0111】
また、情報管理部110によって、解舒終了時刻の予測、残時間の常時推定及び/又は残量の常時推定を行うことができる。このように予測及び/又は推定された情報を、給糸パッケージPsからの糸Yの解舒終了までに行われる様々な作業の管理(例えば、給糸パッケージPsの交換スケジュールの作成等)に役立てることができる。
【0112】
また、情報管理部110は、所定の給糸パッケージ保持部20に装着された全ての給糸パッケージPsに係る残時間情報に基づき、所定の給糸パッケージ保持部20に装着された全ての給糸パッケージPsが空になる予測原糸消失時刻の情報を取得する。予測原糸消失時刻の情報を利用することにより、給糸パッケージPsの交換等の作業に関する高度な制御又は高度な設備稼働管理を実現できる。
【0113】
また、情報管理部110は、複数の給糸パッケージ保持部20のそれぞれに係る予測原糸消失時刻までに、複数の給糸パッケージ保持部20のそれぞれにおける給糸パッケージ交換作業が完了するように、クリールロボット102の動作を管理する。したがって、複数の給糸パッケージ保持部20が設けられた構成において、各給糸パッケージ保持部20における給糸パッケージPsの枯渇を防止できる。
【0114】
また、機台制御装置5は、情報管理部110によって取得された情報に基づき、結節作業が行われていない状態で所定の給糸パッケージPsに係る残時間が所定時間以下に減少したとき、結節作業を促すための情報を機台出力部5bに出力させる。これにより、オペレータ等による結節忘れを防止できる。
【0115】
また、情報管理部110は、所定の巻取パッケージPwに結節部分Kが混入すると予測する。このような予測結果を、巻取パッケージPwの形成に関する設備動作の管理に利用できる。例えば、巻取パッケージPwに結節部分Kが混入することを回避するように巻取部4の動作を制御することができる。
【0116】
また、情報管理部110は、所定の巻取パッケージPwに結節部分Kが混入すると予測されるタイミングに応じて、所定の巻取ボビンBwに対する巻取処理の終了のタイミングを管理する。これにより、巻取パッケージPwに結節部分Kが混入することを回避できる。或いは、巻取パッケージの径方向外側部分に糸接続部分を意図的に混入させることで、巻取パッケージから糸接続部分を容易に除去できる。したがって、巻取パッケージPwの品質を安定化できる。
【0117】
また、情報管理部110は、残量情報に基づいて、所定の巻取ボビンBwに巻き取られる糸Yが、所定の巻取ボビンBwに糸Yを供給する給糸パッケージPsに含まれていた糸層のうちどの部分を構成していたかに関する糸層情報を取得可能である。これにより、巻取パッケージPwに含まれる糸Yの情報と、給糸パッケージPsに含まれていた糸Yの糸層情報とを関連付けることができる。このような情報を、巻取パッケージPwの品質管理等に役立てることができる。
【0118】
次に、前記実施形態に変更を加えた変形例について説明する。但し、前記実施形態と同様の構成を有するものについては、同じ符号を付して適宜その説明を省略する。
【0119】
(1)前記実施形態においては、第1検知部25と、第2検知部26とを有する糸検知センサ24による検知結果に基づいて給糸パッケージ切替の発生の有無が判断されるものとしたが、これには限られない。例えば図10に示すように、仮撚加工機1aの給糸部2aは、各錘9aにおいて、糸検知センサ24とは異なる構成を有する切替検知部41を有していても良い。切替検知部41は、例えば、供給センサ42(本発明の供給検知部)と、結節部分センサ43(本発明の接続部分検知部)とを有していても良い。供給センサ42は、第1装着部22(本発明の一方)から糸Yが供給されているか否か検知可能に構成されている。結節部分センサ43は、所定位置に静止するように配置された結節部分Kを検知可能に構成されている。このような構成においては、結節部分Kが所定位置から移動して、結節部分Kが結節部分センサ43によって検知されなくなったとき、給糸パッケージ切替が起こったと判断することができる。また、給糸パッケージ切替時に第1装着部22及び第2装着部23のいずれから糸Yが供給されているかについては、供給センサ42による検知結果に基づいて知ることができる。このように、結節部分Kの検知結果を用いた場合でも、第1装着部22及び第2装着部23のうちどちらから糸Yが供給されているか確実に知ることができる。なお、結節部分センサ43は、移動している結節部分Kを検知可能に構成されていても良い。この変形例において、結節部分センサ43が本発明の接続情報取得部に相当する。
【0120】
(2)前記までの実施形態において、情報管理部110は、糸検知センサ24或いは切替検知部41による検知結果に基づいて給糸パッケージ切替の発生の有無を判断するものとしたが、これには限られない。情報管理部110は、例えば予測解舒終了時刻を利用して給糸パッケージ切替の発生の有無を判断しても良い。
【0121】
(3)前記までの実施形態において、情報管理部110は、給糸パッケージ装着時刻の情報と、給糸パッケージ切替が起こった時刻の情報とに基づいて、解舒開始時刻情報及び解舒終了時刻情報を取得するものとした。つまり、情報管理部110は、給糸ボビン装着時刻と解舒開始時刻とを関連付けるものとした。しかしながら、これには限られない。情報管理部110は、給糸パッケージ切替が起こったときに、糸Yを供給し始めたパッケージ装着部21の個体情報と、当該パッケージ装着部21に装着されている給糸パッケージPsの個体情報と、給糸パッケージ切替が起こった時刻とを関連付けても良い。これにより、解舒開始時刻情報が取得されても良い。この場合、情報管理部110は、必ずしも給糸パッケージ装着時刻の情報を取得しなくても良い。つまり、情報管理部110は、給糸パッケージPsが給糸パッケージ保持部20に装着されたとき、単に給糸パッケージPsの個体情報とパッケージ装着部21の個体情報とを関連付けて取得しても良い。
【0122】
(4)前記までの実施形態において、給糸パッケージ交換作業がクリールロボット102によって行われるものとした。また、巻取ボビン交換作業がオートドッファ10によって行われるものとした。しかしながら、これには限られない。給糸パッケージ交換作業は、オペレータによって行われても良い。給糸パッケージPsの個体情報や給糸パッケージPsの初期重量等の必要な情報は、オペレータによって例えば機台制御装置5に入力されても良い。また、給糸パッケージ交換作業がオペレータによって行われる場合、情報管理部110は、給糸パッケージ交換作業をクリールロボット102に行わせるための指令信号の出力に代えて、給糸パッケージ交換作業をオペレータに促すための出力を行っても良い。この場合、上述したパッケージ交換指示時刻が、本発明の交換報知時刻に相当する。これにより、適切なタイミングで、給糸パッケージ交換作業をオペレータに促すことができる。したがって、給糸パッケージ保持部20に装着された給糸パッケージPsが枯渇することを防止できる。なお、上記出力は、給糸パッケージ交換作業が行われるべき給糸パッケージ保持部20を有する仮撚加工機1に設けられた機台制御装置5が機台出力部5bを制御することによって行われても良い。この場合、機台制御装置5が本発明の第1出力制御部に相当し、機台出力部5bが本発明の第1出力部に相当する。或いは、上記出力は、管理装置101の管理出力部101bによって行われても良い。この場合、管理装置101が本発明の第1出力制御部に相当し、管理出力部101bが本発明の第1出力部に相当する。本発明の第1出力部と第2出力部は、同じものであっても良く、別のものであっても良い。本発明の第1出力制御部と第2出力制御部は、同じものであっても良く、別のものであっても良い。また、本発明の第1出力制御部及び第2出力制御部は、上述したように情報管理部110に含まれていても良く、或いは情報管理部110とは別に設けられていても良い。また、巻取ボビンBwの着脱作業は、巻取パッケージ搬送装置103又はオペレータによって行われても良い。巻取パッケージ個体情報等の必要な情報は、オペレータによって例えば機台制御装置5に入力されても良い。また、巻取ボビン交換作業が巻取パッケージ搬送装置103によって行われる場合、情報管理部110は、巻取パッケージ搬送装置103に巻取ボビン交換作業を行わせるための指令信号を出力する。また、巻取ボビン交換作業がオペレータによって行われる場合、情報管理部110は、巻取ボビン交換作業をオペレータに促すための出力を行っても良い。当該出力も、機台制御装置5の機台出力部5bによって行われても良い。巻取ボビン交換作業を促すための出力制御部は、上述した第1出力制御部又は第2出力制御部と同じものであっても良く、これらと別のものであっても良い。
【0123】
(5)前記までの実施形態において、情報管理部110は、ある巻取パッケージPwに結節部分Kが混入すると予測される場合、現在時刻が予測解舒終了時刻に到達したときに巻取処理を終了させるものとした。しかしながら、これには限られない。以下、別の例について説明する。情報管理部110は、結節部分Kの混入に関する判断の際、以下の処理を行う。情報管理部110は、糸検知センサ24或いは切替検知部41による検知結果に基づいて、給糸パッケージ切替が起こったか否か判断する。情報管理部110は、給糸パッケージ切替が起こったと判断したとき、単に給糸パッケージ切替が起こった時刻を記録しても良い。なお、この場合、巻取処理が継続されるため、巻取パッケージPw内に結節部分Kが混入する。情報管理部110は、給糸パッケージ切替が起こった時刻における巻取量を算出することにより、結節部分Kの混入位置を特定しても良い。
【0124】
(6)前記までの実施形態において、情報管理部110は、初期量情報として、給糸パッケージPsに含まれる糸Yの初期重量の情報を取得するものとしたが、これには限られない。例えば、情報管理部110は、初期量情報として、給糸パッケージPsに含まれる糸Yの初期長の情報を取得しても良い。この場合、情報管理部110は、残量情報として、給糸パッケージPsに含まれる糸Yの残長の情報を算出しても良い。また、この場合、情報管理部110は、必ずしも糸Yの繊度の情報を取得しなくても良い。つまり、この場合には、糸Yの繊度の情報が用いられなくても、最低限、初期量情報(初期長)と、解舒単位量情報(解舒速度)と、解舒開始時刻情報と、基準時刻情報とを用いることによって、残量情報及び残時間情報を取得することができる。
【0125】
(7)前記までの実施形態において、情報管理部110は、残量情報及び残時間情報の両方を取得するものとしたが、これには限られない。情報管理部110は、残量情報及び残時間情報のうち一方のみを取得しても良い。つまり、情報管理部110は、残量情報及び残時間情報のうち少なくとも一方を取得すれば良い。また、情報管理部110は、残量情報及び/又は残時間情報を用いて種々の判断及び/又は演算を行うものとしたが、これには限られない。情報管理部110は、単に残量情報及び/又は残時間情報の取得のみを行っても良い。
【0126】
(8)前記までの実施形態において、情報管理部110は、第1フィードローラ11の回転数の情報に基づいて解舒速度Vの情報を取得するものとしたが、これには限られない。他の例として、機台制御装置5には、第2フィードローラ16の回転数の情報と、第1フィードローラ11の回転数と第2フィードローラ16の回転数との比率の情報と、が記憶されていても良い。情報管理部110は、これらの情報に基づいて解舒速度の情報を取得しても良い。或いは、情報管理部110は、解舒単位量情報として、解舒速度の情報の代わりに、給糸パッケージPsから単位時間あたり糸Yが解舒される重量の情報を取得しても良い。このような情報は、例えばオペレータによって予め機台制御装置5に入力されていても良い。
【0127】
(9)前記までの実施形態において、情報管理部110は、複数の機台制御装置5及び管理装置101を有するものとしたが、これには限られない。すなわち、情報管理部110は、機台制御装置5及び管理装置101以外のコンピュータ装置(不図示)を含んでいても良い。或いは、情報管理部110は、機台制御装置5又は管理装置101のみを有していても良い。つまり、機台制御装置5又は管理装置101のうちいずれか一方のみが、必要な情報を取得しても良い。
【0128】
(10)前記までの実施形態において、情報管理部110は、給糸パッケージPsの初期量情報と当該給糸パッケージPsの個体情報とを関連付けて取得するものとした。しかしながら、これには限られない。例えば、情報管理部110の各機台制御装置5は、対応する仮撚加工機1の全ての錘9の、全ての給糸パッケージPsに共通の初期量情報を予め記憶可能に構成されていても良い。これにより、全ての給糸パッケージPsの初期重量が略同一であることを前提として、シンプルなプログラムにより残量情報等を管理できる。或いは、例えば、複数の錘9が複数のグループに分けられていても良い。機台制御装置5は、当該複数のグループの各々に関する初期量情報が設定されることが可能に構成されていても良い。
【0129】
(11)前記までの実施形態において、糸加工設備100は、複数の仮撚加工機1を備えるものとしたが、これには限られない。糸加工設備100は、1つの仮撚加工機1のみを備えていても良い。また、管理装置101が設けられていなくても良い。この場合、仮撚加工機1が、本発明の糸加工設備にも相当する。また、仮撚加工機1は複数の錘9を有するものとしたが、これには限られない。すなわち、仮撚加工機1が有する錘9の数は1つでも良い。言い換えると、給糸部2が有する給糸パッケージ保持部20の数は1つでも良い。この場合でも、情報管理部110は、当該1つの給糸パッケージ保持部20(本発明の所定の給糸パッケージ保持部)に係る予測原糸消失時刻までに、給糸パッケージ保持部20における給糸パッケージ交換作業が完了するように、クリールロボット102の動作を管理しても良い。これにより、当該給糸パッケージ保持部20における給糸パッケージPsの枯渇を防止できる。
【0130】
(12)本発明は、仮撚加工機1を備える糸加工設備100の代わりに、糸加工機を備える別の糸加工設備に適用されても良い。例えば、特開2002-088605号公報に記載されたエア加工機(糸加工機)を備える糸加工設備に対して本発明が適用されても良い。
【符号の説明】
【0131】
1 仮撚加工機(糸加工機)
2 給糸部
3 加工部
4 巻取部
5 機台制御装置(第1出力制御部、第2出力制御部)
5b 機台出力部(第1出力部、第2出力部)
20 給糸パッケージ保持部
43 結節部分センサ(接続情報取得部)
100 糸加工設備
102 クリールロボット(給糸パッケージ搬送装置)
110 情報管理部(接続情報取得部)
Bw 巻取ボビン
F 繊度
K 結節部分(糸接続部分)
Ps 給糸パッケージ
Pw 巻取パッケージ
tF 残時間
tr1 残時間
tr2 残時間
V 解舒速度
WF 初期重量
Wr1 残重量
Wr2 残重量
Y 糸
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10