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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022114455
(43)【公開日】2022-08-05
(54)【発明の名称】原油輸送
(51)【国際特許分類】
   C10G 75/04 20060101AFI20220729BHJP
   C09K 23/14 20220101ALI20220729BHJP
【FI】
C10G75/04
C09K23/14
【審査請求】未請求
【請求項の数】24
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022009326
(22)【出願日】2022-01-25
(31)【優先権主張番号】21153482.1
(32)【優先日】2021-01-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(71)【出願人】
【識別番号】500010875
【氏名又は名称】インフィニューム インターナショナル リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100119013
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100123777
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 さつき
(74)【代理人】
【識別番号】100111796
【弁理士】
【氏名又は名称】服部 博信
(72)【発明者】
【氏名】ニコラ カイル
(72)【発明者】
【氏名】ポール カービー
(72)【発明者】
【氏名】コリン モートン
(72)【発明者】
【氏名】マイケル ペリマン
【テーマコード(参考)】
4H129
【Fターム(参考)】
4H129AA02
4H129CA01
4H129HA15
4H129HB06
4H129HB08
4H129LA13
4H129LA16
4H129NA40
4H129NA45
(57)【要約】
【課題】原油井戸から回収された原油の、前記原油中にアスファルテンが存在することによる、取り扱い、貯蔵、輸送及び/又は処理に関連した技術的問題のいくつかを解決すること。
【解決手段】原油井戸から回収された原油の輸送を改善する方法であって、その原油の輸送の前及び/又はその間に1種類又は複数のグリセロリン脂質を原油に添加する工程を含む方法。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
原油井戸から回収された原油の輸送を改善する方法であって、
(i)原油に、前記原油の輸送の前及び/又はその間に1種類又は複数のグリセロリン脂質を添加する工程と、
(ii)前記原油を、原油フローライン、道路車両、鉄道車両又は船舶、又はそれらの組合せによって輸送する工程と
を含む、方法。
【請求項2】
前記原油中にアスファルテンを溶媒和又は分散させる原油の能力を増強するのに十分な量で、前記1種類又は複数のグリセロリン脂質が前記原油に添加される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記原油中へのアスファルテンの溶解性及び/又は分散性を増強するのに十分な量で、前記1種類又は複数のグリセロリン脂質が前記原油に添加される、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記原油からのアスファルテンの析出を低減するのに十分な量で、前記1種類又は複数のグリセロリン脂質が前記原油に添加される、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
原油中への添加剤としての1種類又は複数のグリセロリン脂質の使用であって、前記原油中にアスファルテンを溶媒和及び/又は分散させる前記原油の能力を増強するのに有効な少量の使用。
【請求項6】
原油中への添加剤としての1種類又は複数のグリセロリン脂質の使用であって、前記原油中へのアスファルテンの溶解性及び/又は分散性を増強するのに有効な少量の使用。
【請求項7】
原油中への添加剤としての1種類又は複数のグリセロリン脂質の使用であって、前記原油からのアスファルテンの析出を低減するのに有効な少量の使用。
【請求項8】
前記原油が、原油フローライン、道路車両、鉄道車両又は船舶、又はそれらの組合せによって輸送され、前記1種類又は複数のグリセロリン脂質が、前記原油の輸送の前及び/又はその間に前記原油に添加される、請求項5~7のいずれか一項に記載の使用。
【請求項9】
前記1種類又は複数のグリセロリン脂質が、前記原油の輸送中に前記原油に添加され、前記原油が、原油フローラインによって輸送される原油ストリームを含む、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法又は使用。
【請求項10】
前記1種類又は複数のグリセロリン脂質が、前記原油の貯蔵中に又は前記原油に対して行われる原油処理操作中に前記原油に添加される、請求項1~9のいずれか一項に記載の方法又は使用。
【請求項11】
前記原油が、原油フローライン、例えば、パイプ、管状構造又はパイプラインによって輸送される、請求項1~10のいずれか一項に記載の方法又は使用。
【請求項12】
前記原油が、1又は複数の輸送段階で、請求項1~11のいずれか一項に定義される前記輸送手段によって石油精製所に輸送されており、前記1種類又は複数のグリセロリン脂質が、前記1又は複数の輸送段階のいずれかの前及び/又はその間に前記原油に添加される、請求項1~11のいずれか一項に記載の方法又は使用。
【請求項13】
前記原油が、単一等級の原油、改質原油、又は2種類以上の原油を含む原油ブレンドを含む、請求項1~12のいずれか一項に記載の方法又は使用。
【請求項14】
前記原油に対して行われる石油精製操作における方法又は使用であって、前記原油が、前記石油精製操作の間高温下で加熱される、請求項1~13のいずれか一項に記載の方法又は使用。
【請求項15】
精製可能な石油原料の石油精製操作中に精製容器のファウリング、特にアスファルテンファウリングを低減又は防止するための方法であって、石油精製操作中に精製容器と流体連通する精製可能な石油原料を提供することを含み、前記精製可能な石油原料は前記精製操作の間高温下にあり、前記精製可能な石油原料は1種類又は複数のグリセロリン脂質を含む、方法。
【請求項16】
精製可能な石油原料を精製するためのシステムであって、(a)精製可能な石油原料を高温下で精製するための精製容器と、(b)前記精製容器と流体連通する精製可能な石油原料とを含み、前記精製可能な石油原料は1種類又は複数のグリセロリン脂質を含む、システム。
【請求項17】
前記1種類又は複数のグリセロリン脂質が以下から選択される、請求項1~16のいずれか一項に記載の方法、使用又はシステム:(i)1種類若しくは複数のビス-(C10~C30ヒドロカルビル)グリセロホスホコリン;(ii)1種類若しくは複数のビス-(C10~C30ヒドロカルビル)グリセロホスホエタノールアミン;又は、(iii)前記ビス-(C10~C30ヒドロカルビル)グリセロホスホコリン及びビス-(C10~C30ヒドロカルビル)グリセロホスホエタノールアミンの組合せを含む、方法、使用又はシステム。
【請求項18】
前記1種類又は複数のビス-(C10~C30ヒドロカルビル)グリセロホスホエタノールアミン及び前記1種類又は複数のビス-(C10~C30ヒドロカルビル)グリセロホスホエタノールアミンの各ヒドロカルビル基が、各存在において、独立に、脂肪族C10~C30アルキルアシル基又は脂肪族C10~C30アルケニルアシル基を表す、請求項17に記載の方法、使用又はシステム。
【請求項19】
請求項1~18のいずれか一項に定義される前記1種類又は複数のグリセロリン脂質が、前記原油又は前記精製可能な石油原料に、前記原油又は精製可能な石油原料の総質量に基づいて、有効成分ベースで5質量ppm以上の量で添加される、請求項1~18のいずれか一項に記載の方法、使用又はシステム。
【請求項20】
原油又は精製可能な石油原料に添加される前記1種類若しくは複数のビス-(C10~C30ヒドロカルビル)グリセロホスホコリン及び/又は前記1種類若しくは複数のビス-(C10~C30ヒドロカルビル)グリセロホスホエタノールアミンの総質量の、原油又は精製可能な石油原料に添加される前記1種類若しくは複数のビス-(C10~C30ヒドロカルビル)グリセロホスホコリンのリゾ誘導体及び/又は前記1種類若しくは複数のビス-(C10~C30ヒドロカルビル)グリセロホスホエタノールアミンのリゾ誘導体の総質量に対する有効成分ベースでの質量対質量比が3以上対1である、請求項17~19のいずれか一項に記載の方法、使用又はシステム。
【請求項21】
請求項1~20のいずれか一項に定義される前記1種類又は複数のグリセロリン脂質が、液体形態であり、芳香族有機溶媒を含む、請求項1~20のいずれか一項に記載の方法、使用又はシステム。
【請求項22】
請求項1~21のいずれか一項に定義される前記1種類又は複数のグリセロリン脂質が、前記原油又は前記精製可能な石油原料に、前記原油又は前記精製可能な石油原料に1種類又は複数のレシチンを添加することにより添加される、請求項1~21のいずれか一項に記載の方法、使用又はシステム。
【請求項23】
請求項1~22のいずれか一項に定義される前記1種類又は複数のグリセロリン脂質が、前記原油及び精製可能な石油原料それぞれに、原油及び精製可能な石油原料それぞれの質量に基づいて、有効成分ベースで、10質量ppm以上、好ましくは20質量ppm以上、より好ましくは50質量ppm以上の量で添加される、請求項1~22のいずれか一項に記載の方法、使用又はシステム。
【請求項24】
請求項1~23のいずれか一項に定義される前記1種類又は複数のグリセロリン脂質が、乳化破壊剤(解乳化用)、腐食防止剤、水和物抑制剤、スケール抑制剤、流動性向上剤、ワックス析出抑制剤(又はパラフィン抑制剤)、流動点降下剤、増粘剤及び/又は他の添加剤とともに又はそれとして使用される、請求項1~23のいずれか一項に記載の方法、使用又はシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、原油井戸から回収された原油を輸送する改善された方法に関する。好適には、この原油は、フローライン(例えばチュービング、パイピング又はパイプライン)、道路車両、鉄道車両又は船舶によって、特にフローラインによって輸送され得る。特に、限定されることではないが、本発明は、原油井戸から回収された原油を1又は複数の輸送段階で石油精製所に輸送する改善された方法に関する。
更に、本発明は、1種類又は複数のグリセロリン脂質を原油に添加することにより、原油、特にアスファルテンを含有する当該原油中にアスファルテンを溶媒和及び/又は分散させる原油の能力を高めるための方法に関する。本発明は又、1種類又は複数のグリセロリン脂質を原油に添加することにより、原油、特にアスファルテンを含有する当該原油中へのアスファルテンの溶解性及び/又は分散性を増強するための方法に関する。本発明は又、1種類又は複数のグリセロリン脂質を原油に添加することにより、原油中に溶媒和及び/又は分散されたアスファルテンの析出を低減するための方法に関する。更に、本発明は、原油中への添加剤としての1種類又は複数のグリセロリン脂質の、原油中へのアスファルテンの溶解性及び/又は分散性を増強するための使用に関する。更に、本発明は、原油中への添加剤としての1種類又は複数のグリセロリン脂質の、原油中にアスファルテンを溶媒和及び/又は分散させる原油の能力を増強するための使用に関する。一層更に、本発明は、原油中への添加剤としての1種類又は複数のグリセロリン脂質の、原油からのアスファルテンの析出を低減するための使用に関する。
【0002】
好適には、本発明は、原油井戸から回収された原油の流動特性の改善に関する。更に、本発明は、原油井戸から回収された原油によるファウリング、特にアスファルテンファウリングの低減又は防止に関する。従って、本発明は、貯蔵タンクに貯蔵され、処理装置を通過し、輸送手段(例えば、パイピング及びパイプラインなどのフローライン)によって輸送される場合に、原油の輸送を容易にし且つ/又は原油によるファウリングを低減する。一般には、これにより、処理装置、貯蔵タンク及び関連する輸送手段(例えば、パイプラインなどのフローライン)の清浄及びメンテナンスを行う必要性及び関連するダウンタイムは低減する。
好適には、本発明は、地下資源から回収された原油に対して行われる1回又は複数回の原油輸送及び/又は処理操作において、前記原油がその後石油精製操作で精製される前に、例えば:(i)前記原油からガスと水を分離するための原油の処理の前及び/又はその間に;(ii)貯蔵タンクでの前記原油の貯蔵中に;(iii)パイプライン、船舶、道路車両及び/又は鉄道車両による原油井戸から石油精製所までの前記原油の輸送の前及び/又はその間に、並びに前記石油精製所に向かう途上のその任意の中間段階で;(iv)前記原油を含むブレンド操作(例えば、前記原油を異なるタイプ/等級の原油とブレンドする)の前及び/又はその間に;並びに、(v)重質原油をより軽質な原油に改質して、使用することができる。
本発明は又、石油精製操作の間高温下で加熱される石油原料(例えば、原油井戸から回収された原油)の石油精製操作中の防汚性能の改善を提供する。
【背景技術】
【0003】
原油には、一般に、アスファルテンが含まれる。アスファルテンは、多数の異なる複雑な構造を有する分子を含む。一般に、アスファルテンは、主に炭素及び水素からなる不飽和高分子などの多環芳香族分子を含むが、硫黄、酸素、窒素及び/又は様々な金属、特に重金属などの微量成分も含有する。アスファルテンは、芳香族溶媒中へのそれらの溶解度の観点から特徴づけられ、アスファルテンは、より一般的には原油の部分として定義され、キシレン及びトルエンには可溶性であるが、ヘプタン又はペンタンなどのパラフィン系溶媒中へは不溶性である。
アスファルテンは、一般に、原油中に存在する樹脂との相互作用を通じて、可溶性種として及び/又はコロイド分散液の形で、原油中に存在する(例えば、アスファルテンは、原油中の樹脂との相互作用によって溶媒和される)。好適には、アスファルテンの原油中への溶解性及び/又は分散性、並びに原油のその中にアスファルテンを溶媒和又は分散させる力量は、微妙にバランスが保たれており、このバランスは、例えば、圧力変化及び/又は温度変化及び/又は組成変化(例えば、地下資源からの原油回収中の、原油井戸から回収された原油からのガスと水の分離、原油に対して行われる精製操作中の、重質原油のより軽質な原油への改質及び、2種類以上の異なる原油の混合、又は原油と炭化水素流体のブレンド)によって、又は原油に対して行われる他の機械的若しくは物理的処理操作によって、乱れ且つ/又は壊れる可能性がある。
【0004】
一般に、原油は、地下資源(すなわち、地下の原油貯留層)から、掘削リグを使用して地下資源にボアホールを掘削して原油回収井戸を形成することによって、回収される。好適には、この回収井戸は、原油が地下資源から地表に流れることを可能にする流路(すなわち、この流路は、原油が地下の貯留層から地上の回収井戸の開口部に流れることを可能にする)を含む坑井を含む。原油の貯留層からの回収は、一次回収法(例えば、自然法の使用)、原油回収井戸からの油生産率及び全体の産出量を増加させるための二次回収法(例えば、原油貯留層の水攻法)、重質原油を抽出するために一般に使用される増進回収法(例えば、原油貯留層の蒸気攻法などの熱回収)、又はこのような方法の組合せによって達成され得る。
【0005】
従って、原油が、地下資源から回収され、地表に運ばれると、原油は、一般に冷却され、減圧を受け、原油の組成は変化する可能性がある。これらの物理的及び/又は化学的修飾は、一般に、地下貯留層から回収された原油の、その中にアスファルテンを溶媒和及び/若しくは分散させる能力を低下させ、且つ/又は前記原油中へのアスファルテンの溶解性及び/若しくは分散性を低下させる。アスファルテンを溶媒和する原油の能力の低下及び原油中へのアスファルテンの溶解性/分散性の低下は、一般に、原油が地下の貯留層から地上の井戸開口部に向かう方向に流れるにつれてより顕著になる。
好適には、原油井戸から回収された原油は、一般に、その中にアスファルテンを溶媒和及び分散させるための能力が低下している。更に、原油井戸から回収された原油中へのアスファルテンの溶解性及び分散性が低下する可能性がある。従って、この原油からのアスファルテンの析出が増加する可能性がある。これは、原油井戸から回収された原油の取り扱い、貯蔵、処理及び/又は輸送に様々な問題を提起する。例えば、それは、チョークオフパイプ、安全遮断弁、分離装置(例えば、原油からガスと水を除去するためのもの)、フローライン(例えば、生産ライン、パイプライン)、貯蔵容器、ブレンド装置及び関連する工程輸送機構における油の流れを塞ぐ及び/又は制限する可能性があるアスファルテン析出物の形成を促進し得る。これらのあまり望ましくない流動特性から、装置は通常オフラインにされ、機械的に又は化学的に清浄され、生産時間の損失及び運転コストの増加をもたらすため、一般に、原油井戸の全体的な生産率及び全体の産出量は低減する。
【0006】
更に、地理的に異なる場所から回収された原油は、一般に、独自の物理的性質(例えば、粘度及び揮発性)及び化学組成(例えば、アスファルテン含量、硫黄含量)を有する。原油は、比較的薄い軽量の流体油から非常に濃い半固体の重量油まで、密度及び稠度に幅がある。より低い品質の重質原油は、一般に、より高い品質のより軽質な原油と比較して、より多くの量のアスファルテン、及び/又は硫黄及びその他の不純物を含む。重質等級の原油は、一般に、粘稠すぎて関連する工程フローライン(例えば、パイプ又はパイプライン)を流れることができない。更に、特定の石油精製所は、より軽質な原油のみ精製可能であり、より低い等級の重質原油は精製できない場合がある。
従って、より低い等級の重質原油は、異なるより軽質な等級の原油(又は別の炭化水素流体)と希釈/ブレンドして、取り扱い、貯蔵、坑井貯留層地域と、重質原油原料を精製する能力を有する石油精製所との間の輸送(例えば、パイプライン、タンカー又は船による)を容易にするための所望の粘度、揮発性及び化学組成特性を有する原油ブレンドを提供し得る。例えば、高粘度及び高アスファルテン含量を有するより低い品質の重質原油を、より低い粘度とより低いアスファルテン含量を有するより高い品質の軽質原油と、及び/又は炭化水素油とブレンドすることが望ましい場合がある。しかしながら、2つの異なるタイプの原油を一緒に混合すると、アスファルテンを溶媒和及び/又は分散させるための能力が著しく低い原油ブレンドを形成する可能性があることが認識されている。アスファルテンを溶媒和及び/又は分散させるためのこの能力の低下は、アスファルテンの不溶解性が、原油ブレンドを構成する異なるタイプの原油単独のいずれにも存在しない場合でも、そのような原油ブレンドで生じることが見出されている。
【0007】
あるいは、より低い等級の重質原油を、粘稠度が著しく低く、不純物の含有量が著しく少ない、より軽質な合成原油に改質することができる。より軽質な合成原油は、より重質な原油よりも容易に(例えば、パイプなどのフローラインを通じて)輸送することができ、より軽質な原油原料のみを処理する能力を有する石油精製所で精製し得る。
好適には、そのような原油処理操作は、原油のその中にアスファルテンを溶媒和及び/若しくは分散させる能力を更に低下させ、且つ/又は原油中へのアスファルテンの溶解性及び/若しくは分散性を低下させ得る。
【0008】
石油精製所は、ファウリング及びそれに伴って生じるファウリングに起因する非効率性のためにかなりの追加のエネルギーコストを負担する。より詳しくは、精製容器、例えば、熱交換器及び燃焼式ヒーターなどの伝熱装置における原油、原油ブレンド及びそれらから得られた留分の熱処理は、原油、原油ブレンド及びそれらから得られた留分に見られ得る不溶性アスファルテン及びその他の混在物(例えば、粒子状物質及び塩)の析出によって妨げられ、これらは石油精製所において更に精製される。更に、アスファルテン及びその他の有機物は、石油精製操作で見られる高い表面温度、例えば、高いヒーターチューブ表面温度に曝されると、熱分解してコークスになる可能性がある。
石油原料を受け入れる、伝熱装置などの精製容器における、その原料の熱不安定性及びその原料と精製容器の壁(例えば、熱交換器の壁)との温度差(ΔT)によって不溶性になった材料の析出によるファウリングは、特にその原料が一般に、例えば、300℃を超える温度での一部の精製操作で、高温に加熱されるため、石油精製操作における主要な問題となる。
【0009】
精製可能な石油原料を、特に石油精製操作中にそのような高温で加熱すると、その原料中でのアスファルテンの凝集並びにその原料中での及び/又はその原料からのアスファルテンの沈澱、アスファルテンのコークスへの熱分解並びに精製容器の高温表面へのアスファルテン及び/又はコークスの付着を促進する場合がある。更に、伝熱精製操作で見られる高いΔTは、石油原料が精製容器に導入されるときに高い表面又は表皮温度をもたらす。この高いΔTは、石油原料からのアスファルテン及びその他の不溶性粒子状物質の沈澱に更に寄与する可能性がある。石油原料の精製操作中にアスファルテン高分子が取り除かれて、最終精製製品において著しく異なる化学構造を有する分子を形成する。最終精製製品中のそのような分子はアスファルテンと呼ばれることもあるが、これらの分子は、精製可能な石油原料中に存在する(例えば、原油に見られるような)前駆体アスファルテン分子とは著しく異なる化学的及び物理的特性を有する。
伝熱装置などの精製容器に不溶性析出物が蓄積すると、望ましくない断熱効果が生じ、その容器の熱伝達効率が低下する。ファウリングは又、工程装置の断面積も減少させ、これにより、流量及び所望の圧力差が減少し、得られる操作は最善とは言えなくなる。これらの欠点を克服するために、精製容器は、通常オフラインにされ、機械的に又は化学的に清浄され、その結果、生産時間が損失し、特定の状況では、石油精製操作の一部又は全てが完全に停止する。
好適には、原油のその中にアスファルテンを溶媒和及び/若しくは分散させる能力の低下、並びに/又は原油中へのアスファルテンの溶解性及び/若しくは分散性の低下、並びに/又は原油からのアスファルテンの析出の増加は、原油産業で活動している人々に問題を提起する。
【0010】
従って、原油又は原油ブレンド(特に原油井戸から回収された原油)のその中にアスファルテンを溶媒和及び/又は分散させる能力を維持する、好ましくは、増強する必要がある。
従って、原油又は原油ブレンド、特に原油井戸から回収された原油中へのアスファルテンの溶解性及び/又は分散性を維持する、好ましくは増強する必要がある。
従って、原油又は原油ブレンド、特に原油井戸から回収された原油からのアスファルテンの析出を低減する必要がある。
従って、関連する輸送機構による原油の取り扱い及び/又は輸送を容易にするために、原油井戸から回収された原油の流動特性(原油ストリームなど)を改善する必要がある。好適には、原油ストリームは、原油井戸から流れているか坑井地域で処理されているか、又は1若しくは複数の輸送段階によって坑井地域から石油精製所へ輸送されている可能性がある。
従って、石油精製操作において精製可能な石油原料(例えば、原油)を精製するために使用される精製容器のファウリングを低減する必要があり、ここで、前記精製可能な石油原料は、石油精製操作の間高温下にある。
【0011】
更に、精製可能な石油原料(例えば、原油)中での及び/又はそれからの粒子状物質の析出及び/又は沈澱、特に、アスファルテンの沈澱を低減し、その原料が石油精製操作の間高温下で加熱される場合、精製可能な石油原料中でのアスファルテンの凝集を低減する必要がある。
更に、精製可能な石油原料の精製操作中(それによって、精製容器のファウリングが防止及び/又は軽減される)及びアスファルテンが熱分解又はコークス化される前に、加熱された精製容器表面への粒子状物質の付着、特にアスファルテンの付着を低減する必要がある。これにより、精製操作の全体的な効率が向上し、伝熱装置の性能が高まり、ファウリング軽減の取り組みのために予定されている停止が低減又は廃止され、精製操作に関連するエネルギーコストが削減される。
好適には、上記の所望の改善の1つ又は複数によって、全体的な効率が増大し、生産率が増大し、産出量が増大し、ファウリング軽減の取り組みのために予定されている停止が低減又は廃止され、原油井戸から回収された原油の取り扱い、貯蔵、輸送、処理(例えば、2種類以上の原油のブレンド)及び/又は精製に関連する運転及びエネルギーコストが削減される可能性がある。
【発明の概要】
【0012】
本発明は、原油井戸から回収された原油の、前記原油中にアスファルテンが存在することによる、取り扱い、貯蔵、輸送及び/又は処理に関連した技術的問題のいくつかを解決することを目的とする。
好適には、本発明は、前記原油中にアスファルテンを溶媒和及び/又は分散させる原油の能力を増強するための改善を提供することを目的とする。更に、本発明は、原油中へのアスファルテンの溶解性及び/又は分散性を高めるための改善を提供することを目的とする。更に、本発明は、原油からのアスファルテンの析出を低減するための改善を提供することを目的とする。
特に、本発明は、原油井戸から回収された原油を輸送するための改善された方法を提供する。好適には、この原油は、パイプ、チューブ若しくはパイプラインなどの原油フローライン、道路車両、鉄道車両、又は船舶によって、好ましくは原油フローラインによって輸送され得る。好適には、この原油の流動特性は、前記原油のその中にアスファルテンを溶媒和及び/若しくは分散させる能力を増強し、且つ/又は前記原油中へのアスファルテンの溶解性及び/若しくは分散性を高め、且つ/又は前記原油からのアスファルテンの析出(例えば、沈澱)を低減するように原油が処理されるために改善される。
更に、本発明は、地下原油源から回収された原油、又は2つ以上の異なるタイプの原油のブレンドが石油精製操作で処理される前に、前記原油又は原油ブレンドのその中にアスファルテンを溶媒和及び分散させる能力を増強するための方法を提供する。
更に、本発明は、地下原油源から回収された原油、又は2つ以上の異なるタイプの原油のブレンドが石油精製操作で処理される前に、前記原油又は原油ブレンド中へのアスファルテンの分散性及び/又は溶解性を増強するための方法を提供する。
更に、本発明は、地下原油源から回収された原油、又は2つ以上の異なるタイプの原油のブレンドが石油精製操作で処理される前に、前記原油又は原油ブレンドからのアスファルテンの析出(例えば沈澱)を低減するための方法を提供する。
一層更に、本発明は、石油精製操作の間高温下で加熱される、アスファルテンを含有する石油原料(例えば、原油又は原油ブレンド)の石油精製操作中の防汚性能の改善を提供する。
【0013】
従って、第1の態様において、本発明は、原油井戸から回収された原油の輸送を改善する方法であって、(i)原油に、前記原油の輸送の前及び/又はその間に、本明細書に定義されるような1種類又は複数のグリセロリン脂質を添加する工程と、(ii)この原油を、原油フローライン(例えば、パイプ、管状構造、パイプライン)、道路車両、鉄道車両又は船舶、又はそれらの組合せによって輸送する工程含む方法を提供する。
好ましくは、この原油は、パイプ、管状構造又はパイプラインなどの原油フローラインによって輸送される。
好ましくは、この原油は、原油ストリームを含む。好ましくは、この原油ストリームは、原油フローライン、例えば、パイプ、管状構造又はパイプラインによって輸送される。好ましくは、1種類又は複数のグリセロリン脂質が原油ストリームに添加される。
好適には、原油ストリームは、原油回収井戸から流出入し得る。好適には、原油ストリームは、地下の原油貯留層から坑井流路によって(例えば、生産ライザーを通じて)地上に位置する原油回収井戸の開口部に流れ得る。好適には、原油ストリームは、原油処理操作(例えば、原油からガスと水を除去する操作又は原油を含むブレンド操作)へ及び/又は原油処理操作から輸送され得る。好適には、原油ストリームは、1又は複数の輸送段階で石油精製所へ輸送され得る。好ましくは、前記原油ストリーム(複数可)は、原油フローライン、例えば、パイピング、管状構造又はパイプラインによって輸送される。
好適には、原油が原油井戸から回収された後、1種類又は複数のグリセロリン脂質が原油、特に原油ストリームに添加される。しかしながら、坑井流路(例えば、生産ライザー)中に存在する原油、特に原油ストリームに1種類又は複数のグリセロリン脂質が添加され得ることが理解されよう。
【0014】
その代わりに又はそれに加えて、原油の輸送前に、1種類又は複数のグリセロリン脂質が原油に添加される。好適には、原油の貯蔵中(例えば、貯蔵タンクでの原油の貯蔵中)に及び/又は原油に対して行われる原油処理操作(例えば、回収された原油からガスと水を除去する処理操作又は原油を含むブレンド操作)中に、1種類又は複数のグリセロリン脂質が原油に添加される。
原油の輸送中、原油は、垂直方向、水平方向、及び/又は水平方向と垂直方向の組合せで輸送され得ることが理解されよう。
好適には、原油は、石油精製所で精製されていない任意の等級(複数可)の事前精製された原油を含む。好適には、原油は、単一等級の原油、2種類以上の異なる等級の原油のブレンド、及び改質原油(すなわち、重質な等級の原油から形成され、その後に石油精製所で精製されるより軽質な等級の原油)を含み得る。
好適には、前記1種類又は複数のグリセロリン脂質は、固体形態(例えば、粒子状物質、粉末)又は、例えば、溶液、分散液、懸濁液若しくはエマルジョンなどの液体形態であり得る。
好ましくは、1種類又は複数のグリセロリン脂質は、液体形態である。より好ましくは、前記1種類又は複数のグリセロリン脂質は、液体形態であり、有機溶媒、特に芳香族溶媒を含む。好ましい芳香族溶媒には、キシレン、ベンゼン及び/又はトルエンが含まれる。好適には、1種類又は複数のグリセロリン脂質が液体形態である場合、配合物は界面活性剤も含み得る。
好適には、1種類又は複数のグリセロリン脂質は、送達手段によって前記原油に添加される。
好適には、送達手段のタイプは、原油に添加される前記グリセロリン脂質(複数可)の形態によって及び/又は原油の輸送中若しくはその前にそのグリセロリン脂質(複数可)が添加されるかどうかによってある程度まで決められる。原油に添加剤を送達するために好適な送達手段は、当業者に周知である。好ましい送達手段は、原油への前記グリセロリン脂質(複数可)の制御可能な添加を可能にするための、インジェクター手段などのドージングシステムを含む。代替の及び又は追加の、送達手段としては、送達フローライン(例えば、パイプ、チューブ及び/又は管状構造)が挙げられる。送達手段がドージングシステムと送達フローライン(複数可)の組合せを含み得ることが理解されよう。
好ましくは、送達手段は、原油へのグリセロリン脂質(複数可)の制御可能な添加を可能にするための、ドージングシステム、好ましくはインジェクター手段を含む。好適には、このドージングシステムは、グリセロリン脂質(複数可)の供給源と流体連通している(例えば、ドージングシステムとグリセロリン脂質(複数可)の供給源は統合システムとなっていてよいし、ドージングシステムは1つ又は複数の送達フローラインによってグリセロリン脂質(複数可)の独立した供給源に接続されていてもよい)。好ましくは、送達手段は、原油への前記グリセロリン脂質(複数可)の制御可能な添加を可能にするための、ドージングシステム、特にインジェクター手段を含み、前記ドージングシステムは、関連する送達フローライン(複数可)によってグリセロリン脂質(複数可)の独立した供給源と流体連通している。
【0015】
あるいは、送達手段は、1つ又は複数の送達フローラインだけを含んでいてよく、ここで、送達フローライン(複数可)は、原油と前記1種類又は複数のグリセロリン脂質との流体連通を可能にする。好適な送達フローラインは、チュービング、パイピング又は管状構造(複数可)を含む。
好ましくは、1種類又は複数のグリセロリン脂質は、液体形態であり、前記送達手段は、前記原油への前記1種類又は複数のグリセロリン脂質の制御可能な添加を可能にするためのドージングシステムを含む。更により好ましくは、前記1種類又は複数のグリセロリン脂質は、液体形態であり、ドージングシステムは、原油への前記1種類又は複数のグリセロリン脂質の制御可能な添加を可能にするためのインジェクター手段を含む。
【0016】
1種類又は複数のグリセロリン脂質が、原油フローラインで輸送される原油ストリームに添加される、本発明の好ましい実施形態では、前記1種類又は複数のグリセロリン脂質は、液体形態であり、原油フローラインに存在する原油への前記グリセロリン脂質(複数可)の添加を可能にするための前記送達手段は、ドージングシステム、特にインジェクションシステムを含み、ここで、ドージングシステムは、原油への前記グリセロリン脂質(複数可)の制御可能な添加を可能にするように構成される。好ましくは、前記グリセロリン脂質(複数可)は、液体形態であり、有機溶媒、特に芳香族溶媒を含む。
【0017】
1種類又は複数のグリセロリン脂質が、原油フローラインで輸送される原油ストリームに添加される、本発明の代替の好ましい実施形態によれば、前記1種類又は複数のグリセロリン脂質は、液体形態であり、原油フローラインに存在する原油への前記グリセロリン脂質(複数可)の添加を可能にするための前記送達手段は、前記グリセロリン脂質(複数可)と前記原油との流体連通を可能にするための1つ又は複数の送達フローラインを含む。より好ましくは、送達手段は、ドージングシステム、特にインジェクションシステムを更に含み、ここで、ドージングシステムは、原油への前記グリセロリン脂質(複数可)の制御可能な添加を可能にするように構成される。好ましくは、前記グリセロリン脂質(複数可)は、液体形態であり、有機溶媒、特に芳香族溶媒を含む。
好適には、前記原油にグリセロリン脂質(複数可)を送達するための送達フローライン(複数可)は、チュービング、パイピング、管状構造、又はそれらの組合せを含む。
【0018】
予想外にも、有効量の前記1種類又は複数のグリセロリン脂質を原油に添加することによって、原油のその中にアスファルテンを溶媒和及び/又は分散させる能力を増強することが可能であることを見出した。
更に、有効量の前記1種類又は複数のグリセロリン脂質を原油に添加することによって、原油中へのアスファルテンの溶解性及び/又は分散性を高めることが可能であることを見出した。
更に、有効量の前記1種類又は複数のグリセロリン脂質を原油に添加することによって、原油からのアスファルテンの析出(例えば、沈澱)を低減することが可能であることを見出した。
一層更に、これらの技術的効果は、一般に、比較的少量の前記グリセロリン脂質(複数可)を原油へ添加することによって達成可能である。好適には、1種類又は複数のグリセロリン脂質は、原油に、その原油の総質量に基づいて、有効成分ベースで10質量ppm以上、好ましくは20質量ppm以上、好ましくは30質量ppm以上、好ましくは50質量ppm以上のグリセロリン脂質(複数可)の総量を有する原油を提供するような量で添加される。好適には、1種類又は複数のグリセロリン脂質は、原油に、その原油の総質量に基づいて、有効成分ベースで10000質量ppm以下、好ましくは5000質量ppm以下、好ましくは2000質量ppm以下、好ましくは1000質量ppm以下のグリセロリン脂質(複数可)の総量を有する原油を提供するような量で添加される。
アスファルテンを溶媒和及び/若しくは分散させる原油の能力を高めことにより、且つ/又は原油中へのアスファルテンの溶解性及び/若しくは分散性を高めると、一般に、チョークオフパイプ、安全遮断弁(safety shut valves)、分離装置、原油フローライン、貯蔵容器、ブレンド装置及び関連する輸送機構における油の流れを塞ぐ及び/又は制限する可能性があるアスファルテン及びタール様析出物の形成が抑制される。有利には、これは、原油の流動特性及び流量を改善する可能性があるが、装置をオフラインにしてそれを機械的又は化学的に清浄することに関して、その必要性を軽減し、頻度を減らし、それによって、生産時間の損失を減らし、運転コストを減らす可能性もある。更に、回収された/回収されている原油は、一般に、より望ましい流動特性を有し、これは、原油回収井戸の生産率及び全体の産出量の増加につながる可能性がある。
【0019】
従って、第2の態様において、本発明は、原油中への添加剤(複数可)としての、本明細書に定義されるような1種類又は複数のグリセロリン脂質の、前記原油中にアスファルテンを溶媒和及び/又は分散させる原油の能力を増強するための有効な少量の使用を提供する。
従って、第3の態様において、本発明は、原油中への添加剤(複数可)としての、本明細書に定義されるような1種類又は複数のグリセロリン脂質の、前記原油中へのアスファルテンの溶解性及び/又は分散性を増強するための有効な少量の使用を提供する。
従って、第4の態様において、本発明は、原油中への添加剤(複数可)としての、本明細書に定義されるような1種類又は複数のグリセロリン脂質の、原油からのアスファルテンの析出(例えば、沈澱)を低減するための有効な少量の使用を提供する。
好ましくは、第2、第3及び/又は第4の態様の使用において、使用は、本発明の第1の態様により定義されるような原油輸送工程における使用である。好適には、本明細書に定義されるような1種類又は複数のグリセロリン脂質は、前記原油に、その原油の輸送の前及び/又はその間に添加される。好適には、原油は、原油フローライン(例えばパイプ、管状構造、パイプライン)、道路車両、鉄道車両又は船舶、又はそれらの組合せによって輸送される。好ましくは、原油は、原油フローラインによって輸送される原油ストリームを含む。より好ましくは、原油は、原油フローラインによって輸送される原油ストリームを含み、前記1種類又は複数のグリセロリン脂質が原油ストリームに添加される。好適には、原油ストリームは、原油井戸から回収された原油を含み得る。その代わりに又はそれに加えて、原油ストリームは、坑井流路(例えば、生産ライザーチュービング)中に存在する原油を含み得る。
【0020】
その代わりに又はそれに加えて、本発明の第2、第3及び/又は第4の態様の使用において、使用は、原油井戸から回収された原油に対して行われる1回又は複数回の原油生産又は処理操作における、(i)例えば、前記原油からガスと水を分離するための原油の処理の前及び/又はその間;(ii)貯蔵タンクでの前記原油の貯蔵中;(iii)原油フローライン(例えば、パイプライン)、船舶、道路車両及び/又は鉄道車両による原油井戸から石油精製所までの前記原油の輸送の前及び/又はその間、並びに前記石油精製所に向かう途上のその任意の中間段階;(iv)前記原油を含むブレンド操作(例えば、前記原油を異なるタイプ/等級の原油とブレンドする)の前及び/又はその間;並びに、(v)重質原油をより軽質な原油に改質後、又は(i)~(v)の任意の組合せから選択される、前記原油がその後石油精製操作で精製される前の、使用である。
更に、本発明の第2、第3及び/又は第4の態様の使用において、使用は、原油又は原油ブレンドなどの精製可能な石油原料に対して行われる石油精製操作における使用であり、精製可能な石油原料は、精製操作の間高温下で加熱される。より好ましくは、そのような使用は、精製可能な石油原料に対して行われる石油精製操作における使用であり、前記原料は、高温下で加熱され、前記原料は、精製操作中に精製容器と流体連通し、それによって、精製操作中の精製容器中でのアスファルテン凝集及び/又はアスファルテン沈澱及び/又はコークス形成を軽減又は防止する。
【0021】
従って、第5の態様において、本発明は、本発明の第1の態様により定義されるような原油輸送工程中に前記原油中にアスファルテンを溶媒和及び/又は分散させる原油の能力を増強するための方法であって、(i)原油に、前記原油の輸送の前及び/又はその間に、本明細書に定義されるような1種類又は複数のグリセロリン脂質を添加する工程と、(ii)原油を、原油フローライン(例えば、パイプ、管状構造、パイプライン)、道路車両、鉄道車両又は船舶、又はそれらの組合せによって輸送する工程を含む方法を提供する。
従って、第6の態様において、本発明は、本発明の第1の態様により定義されるような原油輸送工程中に原油中へのアスファルテンの溶解性及び/又は分散性を増強するための方法であって、(i)原油に、前記原油の輸送の前及び/又はその間に、本明細書に定義されるような1種類又は複数のグリセロリン脂質を添加する工程と、(ii)原油を、原油フローライン(例えば、パイプ、管状構造、パイプライン)、道路車両、鉄道車両又は船舶、又はそれらの組合せによって輸送する工程を含む方法を提供する。
【0022】
従って、第7の態様において、本発明は、本発明の第1の態様により定義されるような原油輸送工程中に原油からのアスファルテンの析出(例えば、沈澱)を低減するための方法であって、(i)原油に、前記原油の輸送の前及び/又はその間に、本明細書に定義されるような1種類又は複数のグリセロリン脂質を添加する工程と、(ii)原油を、原油フローライン(例えば、パイプ、管状構造、パイプライン)、道路車両、鉄道車両又は船舶、又はそれらの組合せによって輸送する工程を含む方法を提供する。
第8の態様によれば、本発明は、原油のその中にアスファルテンを溶媒和及び/又は分散させる能力を増強するための方法であって、原油井戸から回収された原油を提供する工程;本明細書に定義されるような1種類又は複数のグリセロリン脂質を、原油井戸から回収された原油に対して行われる1回又は複数回の原油生産又は処理操作中に、(i)例えば、前記原油からガスと水を分離するための原油の処理の前及び/又はその間;(ii)貯蔵タンクでの前記原油の貯蔵中;(iii)原油フローライン(例えば、パイプライン)、船舶、道路車両及び/又は鉄道車両による原油井戸から石油精製所までの前記原油の輸送の前及び/又はその間、並びに前記石油精製所に向かう途上のその任意の中間段階;(iv)前記原油を含むブレンド操作(例えば、前記原油を異なるタイプ/等級の原油とブレンドする)の前及び/又はその間;並びに、(v)重質原油をより軽質な原油に改質後、又は(i)~(v)の任意の組合せから選択される、前記原油がその後石油精製操作で精製される前に、原油に添加する工程を含む方法を提供する。
【0023】
従って、第9の態様によれば、本発明は、原油中のアスファルテンの溶解性及び/又は分散性を増強するための方法であって、原油井戸から回収された原油を提供する工程;本明細書に定義されるような1種類又は複数のグリセロリン脂質を、原油井戸から回収された原油に対して行われる1回又は複数回の原油生産又は処理操作中に、(i)例えば、前記原油からガスと水を分離するための原油の処理の前及び/又はその間;(ii)貯蔵タンクでの前記原油の貯蔵中;(iii)原油フローライン(例えば、パイプライン)、船舶、道路車両及び/又は鉄道車両による原油井戸から石油精製所までの前記原油の輸送の前及び/又はその間、並びに前記石油精製所に向かう途上のその任意の中間段階;(iv)前記原油を含むブレンド操作(例えば、前記原油を異なるタイプ/等級の原油とブレンドする)の前及び/又はその間;並びに、(v)重質原油をより軽質な原油に改質後、又は(i)~(v)の任意の組合せから選択される、前記原油がその後石油精製操作で精製される前に、原油に添加する工程を含む方法を提供する。
【0024】
従って、第10の態様によれば、本発明は、原油からのアスファルテンの析出(例えば、沈澱)を低減するための方法であって、原油井戸から回収された原油を提供する工程;本明細書に定義されるような1種類又は複数のグリセロリン脂質を、原油井戸から回収された原油に対して行われる1回又は複数回の原油生産又は処理操作中に、(i)例えば、前記原油からガスと水を分離するための原油の処理の前及び/又はその間;(ii)貯蔵タンクでの前記原油の貯蔵中;(iii)原油フローライン(例えば、パイプライン)、船舶、道路車両及び/又は鉄道車両による原油井戸から石油精製所までの前記原油の輸送の前及び/又はその間、並びに前記石油精製所に向かう途上のその任意の中間段階;(iv)前記原油を含むブレンド操作(例えば、前記原油を異なるタイプ/等級の原油とブレンドする)の前及び/又はその間;並びに、(v)重質原油をより軽質な原油に改質後、又は(i)~(v)の任意の組合せから選択される、前記原油がその後石油精製操作で精製される前に、原油に添加する工程を含む方法を提供する。
第11の態様によれば、本発明は、精製可能な石油原料の石油精製操作中に精製容器のファウリング、特にアスファルテンファウリングを低減又は防止するための方法であって、石油精製操作中に精製容器と流体連通する精製可能な石油原料を提供することを含み、精製可能な石油原料は精製操作の間高温下にあり、精製可能な石油原料は本明細書に定義されるような1種類又は複数のグリセロリン脂質を含む方法を提供する。
【0025】
第12の態様によれば、本発明は、精製可能な石油原料の石油精製操作中の、前記石油原料による石油精製容器のファウリング、特にアスファルテンファウリングを低減及び/又は防止するための、精製可能な石油原料における、本明細書に定義されるような1種類又は複数のグリセロリン脂質の有効な少量の使用を提供する。
好適には、本発明の第11の態様の方法及び/又は第12の態様の使用は、それぞれ独立に、精製可能な石油原料を精製する工程を含み得る。
【0026】
第13の態様において、本発明は、精製可能な石油原料を精製するためのシステムであって、(a)精製可能な石油原料を高温下で精製するための精製容器と、(b)前記精製容器と流体連通する精製可能な石油原料とを含み、前記精製可能な石油原料は、本明細書に定義されるような1種類又は複数のグリセロリン脂質を含むシステムを提供する。
好適には、本発明の第11~第13の態様の精製可能な石油原料は、高温下にある。
好適には、第11~第13の態様に定義される精製可能な石油原料は、アスファルテンを含有する。
【0027】
予想外にも、精製操作中に精製可能な石油原料を精製するために使用される精製容器のファウリング、特にアスファルテンファウリングの著しい低減が、精製可能な石油原料のための添加剤として、本明細書に定義されるような前記1種類又は複数のグリセロリン脂質の有効な少量を使用することによって達成され得ることを見出した。更に、この技術的効果は、比較的少量(例えば、10~1000質量ppm)の前記グリセロリン脂質(複数可)を精製可能な石油原料に添加することによって達成可能であり得る。
好適には、精製可能な石油原料における比較的少量の前記グリセロリン脂質(複数可)の使用は、一般に、前記グリセロリン脂質(複数可)を含まない精製可能な石油原料と比較して、特に、石油精製操作中に使用される高温下で前記原料が加熱される場合に、精製操作中の前記原料によるファウリングを著しく低減し、前記原料中での及び/又は前記原料からのアスファルテン凝集(又はフロキュレーション)及び/又はアスファルテン沈澱を低減する。
有利には、精製可能な石油原料の精製操作中の、前記1種類又は複数のグリセロリン脂質の精製可能な石油原料における添加剤としての使用は、一般に、精製操作の全体的な効率を改善し、精製操作中に使用される精製容器(例えば、伝熱装置)の性能を高め、ファウリング軽減の取り組みのために予定されている停止を低減若しくは廃止し、且つ/又は精製操作に関連するエネルギーコストを削減する。
好適には、精製可能な石油原料は、精製操作の間、高温下にあり、好ましくは、高温に加熱される。精製可能な石油原料は、精製操作の間、複数の異なる地点、例えば、脱塩ユニットの上流に位置する予熱器及び/又は熱交換器内、蒸留ユニットの上流に位置する加熱器/炉内、蒸留ユニット内、分解ユニット内、コーキングユニット内で加熱され得る。更に、精製可能な石油原料は、一般に、そのようなユニット内で種々の温度で加熱される。好適には、精製可能な石油原料の温度は、一般に、精製操作の開始から終了まで徐々に上昇させる。好適には、精製可能な石油原料は、精製操作の間、例えば、脱塩ユニットの上流に位置する予熱器及び/又は熱交換器内で、40℃より高い、好ましくは60℃より高い、より好ましくは80℃より高い、更により好ましくは100℃より高い高温に加熱される。好適には、精製可能な石油原料は、精製操作の間、例えば、蒸留ユニットの上流に位置する加熱器/炉内で200℃より高い、好ましくは300℃より高い、より好ましくは325℃より高い高温に加熱され、特にそのような炉/加熱器内は、脱塩ユニットの下流及び蒸留ユニット、特に常圧蒸留ユニットの上流に位置する。
【0028】
好適には、本発明の第11~第13の態様のいずれかにおいて、精製可能な石油原料は、40℃より高い、好ましくは60℃より高い、より好ましくは80℃より高い、更により好ましくは100℃より高い、更により好ましくは120℃より高い高温下にあり得る。好適には、本発明の第8~第10の態様のいずれかにおいて、精製可能な石油原料は、200℃より高い、好ましくは300℃以上、より好ましくは325℃以上の高温下にあり得る。
好ましくは、本明細書及び本発明の第11~第13の態様のいずれかにおいて定義されるような精製可能な石油原料は、原油、2つ以上の異なるタイプの原油を含む原油ブレンド並びに原油及び原油ブレンドの精製から得られた留分を含み、これらの留分は、石油精製操作で更に精製される。好適には、原油、原油ブレンド及びそれらから得られた留分は、アスファルテンを含有する。
好適には、本明細書及び本発明の第11~第13の態様のいずれかにおいて定義されるような精製容器は、伝熱構成要素(例えば、熱交換器、炉/加熱器、及び/又は予熱器)、蒸留ユニット、接触分解ユニット、水素化分解装置、ビスブレーカー、コーカーユニット、水素化処理装置、接触改質装置、アルキル化ユニット、及び前記関連工程輸送機構(このような構成要素の内部にあり、このような構成要素を少なくとも部分的に構成し、且つ/又はこのような構成要素と直接流体連通している)の1つ又は複数から選択される。好ましくは、精製容器は、熱交換器、炉/加熱器、及び/又は予熱器並びに関連工程輸送機構(このような構成要素の内部にあり、このような構成要素を少なくとも部分的に構成し、且つ/又はこのような構成要素と直接流体連通している)の1つ又は複数から選択される、
好適には、本発明の第11~第13の態様のいずれかにおいて、前記1種類又は複数のグリセロリン脂質は、原料が精製所に到達する前(例えば、精製所への原料の輸送中及び/又は精製までの原料の貯蔵中)に及び/又は原料が精製所にある時に、精製可能な石油原料に添加され得る。
好適には、前記1種類又は複数のグリセロリン脂質は、原料が精製される前の任意の段階で、精製所にある精製可能な石油原料に添加され得る(例えば、貯蔵されている原料に添加され且つ/又は精製所でブレンドされ、精製工程に供給するフローラインで輸送されている原料に添加される)。
好ましくは、前記1種類又は複数のグリセロリン脂質は、石油精製所にある石油原料に、特に石油精製操作の間に、その精製操作中に石油原料を加熱するための伝熱構成要素(例えば、熱交換器、炉/加熱器、及び/又は予熱器)に石油原料が入る前の段階で添加される。より好ましくは、前記1種類又は複数のグリセロリン脂質は、石油精製所にある精製可能な石油原料(例えば、原油又は原油ブレンド)に、特に石油精製操作の間に、以下を含む1つ又は複数の段階で添加される:(i)原料が脱塩ユニットの上流に位置する予熱器に入る前;(ii)原料(例えば、原油又は原油ブレンド)が脱塩ユニットの上流に位置する熱交換器に入る前;(iii)原料(例えば、原油又は原油ブレンド)が脱塩ユニットの下流及び蒸留ユニット、例えば、常圧蒸留ユニットの上流に位置する加熱器/炉に入る前。
好適には、前記1種類又は複数のグリセロリン脂質は、精製可能な石油原料中に、その原料の総質量に基づいて、1~5000質量ppm、好ましくは10~2500質量ppm、より好ましくは20~2000質量ppm、最も好ましくは1~100質量ppm未満の量で存在し得る。
【0029】
本発明の第1の態様の好ましい特徴のそれぞれは、それぞれ独立に、本発明の第2~第13の態様のそれぞれの好ましい特徴を表し得ることが認識され、理解されよう。更に、本発明の第1の態様の好ましい特徴のそれぞれは、本発明の第1の態様の1つ又は複数の好ましい特徴と組み合わせてよく、そのような特徴組合せは、独立に、本発明の第2~第13の態様のそれぞれの好ましい特徴の組合せ(複数可)を表し得る。更に、本発明の各態様の好ましい特徴のそれぞれは、本発明の他の全ての態様の好ましい特徴を表す。
【0030】
定義
本明細書では、次の単語及び表現は、使用した場合は、以下の意味を有するものとする:
「有効成分」又は「(a.i.)」とは、希釈剤でも溶媒でもない添加物質を指す;
「を含む(comprising)」又は任意の同源語は、表明された特徴、工程、又は整数又は構成要素の存在を明記するが、1つ又は複数の他の特徴、工程、整数、構成要素又はそれらの群の存在又は追加を排除するものではない。「からなる(consists of)」又は「から本質的になる(consists essentially of)」又は同語源の表現は、「を含む(comprises)」又は任意の同源語に含まれ得る。「から本質的になる(consists essentially of)」という表現は、それが適用される組成物の特徴に実質的に影響を及ぼさない物質の包含を可能にする。「からなる(consists of)」又は同語源の表現は、この表現が指す表明された特徴、工程、整数 構成要素又はそれらの群のみが存在することを意味する。
【0031】
「ファウリング」とは、一般的に、精製容器内、特に精製容器の表面(複数可)での望ましくない物質の蓄積を指す。「ファウリング」は主に可変量の有機粒子状物質(特に「アスファルテンファウリング」)又は無機粒子状物質の存在によって引き起こされるファウリングを包含する。有機粒子状物質には、限定されるものではないが、石油原料が精製操作の間、高温下にあり、好適には、高温に加熱されるときに石油原料から沈澱する不溶性物質(例えば、アスファルテン)が含まれる。無機粒子状物質には、限定されるものではないが、シリカ、酸化鉄、硫化鉄、アルカリ土類金属酸化物、塩化ナトリウム、塩化カルシウム及び他の無機塩が含まれる。これらの粒子状物質の主な発生源の1つは、脱塩工程及び/又は他の粒子状物質除去工程中の不完全な固形物除去に起因する。固形物は、伝熱装置の表面積を変更することによる物理的影響によって、原油、ブレンド及びそれらから得られた留分のファウリングを促進し、壁温度でのホールドアップ時間を長くし、アスファルテン及び/又は原油(複数可)からコークスを形成させる。ファウリング、特にアスファルテンファウリングは、5ロッド熱析出試験(5 Rod Thermal Deposition Test)(5-RTDT)を使用して測定される。
「アスファルテンファウリング」とは、精製容器内、特に精製容器の表面(複数可)でのアスファルテンの蓄積及び/又はそれらからのコークス粒子の形成、特にアスファルテン蓄積を指す。アスファルテンファウリングは、一般的に、石油原料が高温下、特に石油精製操作中に使用される高温下にあるときの、精製可能な石油原料中でのアスファルテン凝集並びに/又は精製可能な石油原料中での及び/若しくは精製可能な石油原料からのアスファルテン沈澱の結果として生じる。アスファルテンのコークスへの熱分解は、一般に、精製作業温度が比較的高いことによって起こる。アスファルテンファウリングは又、原油、ブレンド及びそれらから得られた留分からの無機粒子状物質の不完全な除去が起こることによっても促進され得る。
【0032】
「石油精製操作」とは、油精製操作において使用される任意の工程など、石油原料の精製において使用される又は使用することができる任意の工程を意味する。石油精製操作は、原油、2種類以上の異なる原油を含む原油ブレンドの精製並びに原油及び原油ブレンドの精製から得られた留分の更なる精製において使用される又は使用することができる任意の工程を包含する。石油精製操作には、一般に、限定されるものではないが、以下の処理ユニット、構成要素及び/又は機器が含まれる:石油原料(すなわち、原油)から無機塩を除去するための脱塩ユニット;石油原料を加熱するための、熱交換器、炉、原油予熱器、コーカー予熱器などの伝熱構成要素;石油原料(すなわち、原油)を蒸留して様々な留分にするための常圧蒸留ユニット;常圧蒸留ユニットからの底部重質留分を更に蒸留するための真空蒸留ユニット;より大きな分子をより小さくより軽質な炭化水素留分に分解するための接触分解ユニット(例えば、流動接触分解ユニット);蒸留ユニットからのより重質な芳香族留分及び不飽和留分をガソリン、ジェット燃料及び軽油に改質するための接触水素化分解ユニット;真空蒸留ユニットからの底部重質留分を、それらをより軽質な炭化水素留分に熱分解することにより改質するためのビスブレーカーユニット;蒸留ユニット、特に真空蒸留ユニットからの非常に重質な残油留分を、石油コークス、ナフサ及びディーゼル油副産物などの最終製品に熱分解するためのコーキングユニット(例えば、ディレードコーキング(delayed coking)、フルードコーキング(fluid coking)、フレキシ・コーキング(flexi-coking)ユニット);蒸留ユニットからの留分を脱硫するための水素化処理装置;脱硫留分をオクタン価のより高い分子に変換するための接触改質ユニット;線状分子留分をオクタン価のより高い分岐状分子留分に変換するための異性化ユニット;
【0033】
「精製容器」とは、精製可能な石油原料と流体連通しており、且つ、ファウリングの影響を受けやすい、又は影響を受けやすい可能性がある、油精製工程などの石油精製操作の任意の構成部分及び/又は機器を意味する。精製容器には、限定されるものではないが、「石油精製操作」の前述の処理ユニット、構成要素及び/又は機器、特に伝熱構成要素(例えば、熱交換器、炉、原油予熱器、コーカー予熱器、又は任意の他の加熱器)、FCCスラリーボトム、デブタナイザー交換器/タワー、その他の供給/排水交換器、精製施設での炉内空気予熱器、フレアコンプレッサー構成要素、石油化学施設での蒸気分解装置/改質装置チューブ、分別又は蒸留塔、スクラバー、反応器、液体ジャケット付きタンク、パイプスチル、コーカー、水素化分解装置、水素化処理装置、接触改質装置、異性化プラント、及びビスブレーカーが含まれる。「精製容器」は、本明細書で使用される場合、チューブ、パイピング、バッフル及びその他の工程輸送機構(前述の精製構成要素のいずれか1つの内部にあり、前述の精製構成要素のいずれか1つを少なくとも部分的に構成し、且つ/又は前述の精製構成要素のいずれか1つと直接流体連通している)を包含すると理解される。
【0034】
「精製可能な石油原料」は、原油、2種類以上の異なる原油を含む原油ブレンド、並びに原油及びそのブレンドの精製から得られた留分を包含し、これらの留分は石油精製操作において更に精製され、市販用の最終製品が形成される。例えば、更に精製される、原油の精製から得られる留分には、限定されるものではないが、常圧原油蒸留ユニットから得られる蒸留留分(例えば、水素化処理装置、接触改質装置、及び/又は異性化ユニットで更に処理され得る);常圧原油蒸留ユニットから得られる常圧軽油(例えば、水素化処理装置及び触媒コンバーターで更に処理され得る);常圧原油蒸留ユニットからの常圧残液(重質残油)(真空蒸留ユニットの原料として使用される);真空蒸留ユニットから得られる真空軽油(接触分解及び/又は水素化分解を受け得る);真空蒸留ユニットからの底部生成物(ビスブレーカー及びコーキングユニットの原料として使用される)が含まれる。用語「精製可能な石油原料」は、ガソリン及びディーゼル燃料、軽質及び重質ナフサ、ケロシン、重油、並びに潤滑油などの更なる精製操作を受けない石油精製操作の最終的な精製された市販用最終製品を含まない。
【0035】
「アスファルテンを含有する精製可能な石油原料」とは、アスファルテンを含む、本明細書に定義されるような精製可能な石油原料を意味する。
「原油」とは、地下にある炭化水素化石燃料油を意味し、これは、石油精製所での石油精製操作において抽出及び精製され、ガソリン及びディーゼル燃料、軽質及び重質ナフサ、ケロシン、重油、並びに潤滑油などの最終的な精製された市販用最終製品を生産する。用語「原油」には、そのような市販用最終製品を生産するために精製されていないあらゆる原油が含まれる。例えば、用語「原油」は、単一タイプの原油、2つ以上の異なるタイプの原油を含む原油ブレンド、又は改質原油(例えば、この場合、重質等級の原油はより軽質な等級の原油に変換され、より軽質な等級の原油は市販用最終製品を生産するためにその後精製される)を包含する。原油は、中間(軽質)原油、中質原油、重質原油及びシェールオイルを包含する。
「アスファルテンを含有する原油」とは、アスファルテンを含む、本明細書に定義されるような原油を意味する。
【0036】
「アスファルテンを溶媒和及び/又は分散させる原油の能力」とは、アスファルテンを溶媒和及び/又は分散させる原油の力量を意味する。アスファルテンを溶媒和及び/又は分散させる原油の能力及び能力の増強は、本明細書に記載されるような原油アスファルテン安定性試験によって評価される。
「アスファルテンを溶媒和及び/又は分散させる原油の能力の増強」とは、原油が圧力変化、温度変化、組成の又はその他の機械的若しくは物理的処理操作を受けてアスファルテンを溶媒和及び/又は分散させる原油の力量が低下した場合に、そのような力量を高める(例えば、2つ以上の異なるタイプの原油から原油ブレンドを形成する)ことを意味する。能力の増強によって、原油中に溶媒和及び/又は分散されるアスファルテン量の増加が可能になり得る。その代わりに又はそれに加えて、能力の増強によって、アスファルテンがより安定して溶媒和及び/又は分散される定義されたアスファルテン含量を有する原油の形成又は原油ブレンドの形成が可能になり得る(すなわち、原油からのアスファルテン沈澱及び/又は原油中でのアスファルテン凝集は低減する)。
「アスファルテンを溶媒和及び/又は分散させる精製可能な石油原料の能力」及び「アスファルテンを溶媒和及び/又は分散させる精製可能な石油原料の能力の増強」とは、本明細書に定義されるような精製可能な石油原料に関する能力又は能力の増強を意味し、そうでない場合は「アスファルテンを溶媒和及び/又は分散させる原油の能力又は能力の増強」として定義される。
「原油中へのアスファルテンの溶解性及び/又は分散性の増加」とは、原油が圧力変化、温度変化、組成の又はその他の機械的若しくは物理的処理操作を受けて原油中へのアスファルテンの溶解性及び/又は分散性が低下した場合に、そのような溶解性及び/又は分散性を高める(例えば、2つ以上の異なるタイプの原油から原油ブレンドを形成する)ことを意味する。溶解性及び/又は分散性の増加は、本明細書に記載されるような原油アスファルテン分散性試験によって評価される。
「精製可能な石油原料中へのアスファルテンの溶解性及び/又は分散性の増加」とは、本明細書に定義されるような精製可能な石油原料に関するアスファルテンの溶解性及び/又は分散性の増加を意味し、そうでない場合は「原油中へのアスファルテンの溶解性及び/又は分散性の増加」として定義される。
「原油からのアスファルテンの析出(例えば、沈澱)の低減」とは、原油が圧力変化、温度変化、組成の又はその他の機械的若しくは物理的処理操作を受けて原油からのアスファルテンの析出が増加した場合に、そのような析出を低減する(例えば、2つ以上の異なるタイプの原油から原油ブレンドを形成する)ことを意味する。原油からのアスファルテンの析出の低減は、5ロッド熱析出試験(5-RTDT)を使用して測定し得る。
「精製可能な石油原料からのアスファルテンの析出の低減」とは、本明細書に定義されるような精製可能な石油原料に関するアスファルテンの析出の低減を意味し、そうでない場合は「原油からのアスファルテンの析出の低減」として定義される。
「炭化水素流体」とは、原油ではない炭化水素の液体又は油を意味する。
【0037】
「ヒドロカルビル基」とは、水素原子と炭素原子だけを含有する一価のラジカルを意味し、ヒドロカルビル基を化合物の残部に結合する炭素原子に結合された炭素又は水素以外の原子を除く。ヒドロカルビル基は、単一の炭素原子又は単一のアシル基を介して化合物の残部に直接結合される。従って、用語「ヒドロカルビル基」には、本明細書に定義されるような「アルキル」、「アルキルアシル」、「アルケニル」、「アルケニルアシル」基が含まれる。好ましくは、存在し得る任意のアシル基の炭素原子を含むヒドロカルビル基は、C10~C30、好ましくはC12~C28、より好ましくはC12~C26、より好ましくはC12~C24、より好ましくはC14~C22、より好ましくはC16~C22、より好ましくはC16~C20、最も好ましくはC16~C18ヒドロカルビル基である。ヒドロカルビル基は、分岐鎖又は直鎖であってよく、それは1つ又は複数の炭素-炭素二重結合を含み得る。好ましくは、ヒドロカルビル基は、非環式脂肪族ヒドロカルビル基である。最も好ましいヒドロカルビル基は、アルキルアシル及びアルケニルアシル基、好ましくは、非環式脂肪族アルキルアシル及び非環式脂肪族アルケニルアシル基であり、この場合、ヒドロカルビル基は、単一のアシル基を介して化合物の残部に結合され、前記アルキルアシル及びアルケニルアシル基は、アシル基の炭素原子を含め、「ヒドロカルビル基」に関して定義された炭素原子の総数を有する。
【0038】
「アルキル基」とは、単一の炭素原子を介して化合物の残部に直接結合される一価のアルキルラジカル(すなわち、二重結合も三重結合も含まない一価炭化水素基)を意味する。好ましくは、アルキル基は、非環式アルキル基、より好ましくは非環式脂肪族アルキル基である。好ましくは、アルキル基は、C10~C30、好ましくはC12~C28、より好ましくはC12~C26、より好ましくはC12~C24、より好ましくはC14~C22、より好ましくはC16~C22、より好ましくはC16~C20、最も好ましくはC16~C18アルキル基である。
「アルケニル基」とは、1つ又は複数の炭素-炭素二重結合、好ましくは、1~3つの炭素-炭素二重結合を含む一価炭化水素ラジカルを意味し、単一の炭素原子を介して化合物の残部に直接結合される。好ましくは、アルケニル基は、非環式アルケニル基、より好ましくは非環式脂肪族アルケニル基である。好ましくは、アルケニル基は、C10~C30、好ましくはC12~C28、より好ましくはC12~C26、より好ましくはC12~C24、より好ましくはC14~C22、より好ましくはC16~C22、より好ましくはC16~C20、最も好ましくはC16~C18アルケニル基である。
「アシル基」とは、アシル基(すなわち、C=O基)によって化合物の残部に直接結合される一価炭化水素ラジカルを意味する。
【0039】
「アルキルアシル基」とは、本明細書に定義されるようなアシル基によって化合物の残部に直接結合される、本明細書に定義されるようなアルキル基を意味する。好ましくは、アルキルアシル基は、アシル基の炭素原子を含め、C10~C30、好ましくはC12~C28、より好ましくはC12~C26、より好ましくはC12~C24、より好ましくはC14~C22、より好ましくはC16~C22、より好ましくはC16~C20、最も好ましくはC16~C18アルキルアシル基である。
「アルケニルアシル基」とは、本明細書に定義されるようなアシル基によって化合物の残部に直接結合される、本明細書に定義されるようなアルケニル基を意味する。好ましくは、アルケニルアシル基は、アシル基の炭素原子を含め、C10~C30、好ましくはC12~C28、より好ましくはC12~C26、より好ましくはC12~C24、より好ましくはC14~C22、より好ましくはC16~C22、より好ましくはC16~C20、最も好ましくはC16~C18アルケニルアシル基である。
【0040】
「レシチン」は、総称であり、グリセロリン脂質(グリセロホスホコリン、グリセロホスホエタノールアミン、グリセロホスホイノシトールなど)、他のリン脂質(スフィンゴシルリン脂質など)、脂肪酸、トリグリセリド、ステロール、炭水化物及び/又は糖脂質を含む脂肪物質の混合物を意味する。レシチンは、動物、植物又は微生物源から得ることができる。
「グリセロリン脂質」は、グリセロール単位に結合した少なくとも1つのO-アシル、O-アルキル、又はO-アルケニル(例えば、O-1-アルケニル)基も含むいずれのグリセロリン酸誘導体も意味する。グリセロリン脂質(複数可)の例としては、グリセロホスホコリン、グリセロホスホエタノールアミン、グリセロホスホイノシトール、グリセロホスホセリンが含まれ、このグリセロール単位は、少なくとも1つ、好ましくは2つのO-アシル、O-アルキル、又はO-アルケニル基を含む。好ましいグリセロリン脂質には、グリセロホスホコリン、グリセロホスホエタノールアミン、及びそれらの双性イオン塩が含まれる。
本明細書で使用される「油溶性」又は「油分散性」、又は同語源の用語は、化合物又は添加剤が、あらゆる割合で原油に、可溶であり、溶解可能であり、混和し、又は懸濁可能であることを必ずしも示すものではない。しかしながら、これらは、前記1種類又は複数のグリセロリン脂質が、例えば、それらの意図された効果を発揮するのに十分な程度まで、原油、又は精製可能な石油原料に可溶であり又は安定して分散可能であることを意味する。更に、その他の添加剤を追加導入することによって、必要に応じて、特定の添加剤をより高レベルで導入することも可能になり得る。
【0041】
「多量」とは、表明された成分(複数可)について有効成分(複数可)としてみなされるのが、組成物の総質量に関して、50質量%超、好ましくは60質量%以上、より好ましくは70質量%以上、更により好ましくは80質量%以上の成分であることを意味する。
「少量」とは、表明された成分(複数可)について有効成分(複数可)としてみなされるのが、組成物の総質量に関して、50質量%未満、好ましくは40質量%以下、より好ましくは30質量%以下、更により好ましくは20質量%以下の成分であることを意味する。
一添加剤、又は添加剤組合せに関して「有効量」とは、所望の技術的効果を提供するために有効であり且つその効果を提供する組成物中のそのような添加剤(複数可)の量を意味する。
「ppm」とは、組成物の総質量に対する質量百万分率を意味する。
報告する全てのパーセンテージは、特に明記しない限り、有効成分ベースでの(つまり、担体又は希釈油には関係ない)質量%である。
【0042】
又、必須であるだけでなく最適且つ慣例的である、様々な使用成分は、配合、貯蔵又は使用の条件下で反応し得ること、及び本発明は又そのような反応の結果として得ることが可能な又は得られる生成物を提供することも理解される。
更に、本明細書に記載されている量、範囲、並びに比率の上限及び下限は、独立に組み合わせることができることが理解される。従って、本発明の特定の技術的特徴に関連して本明細書に記載されている量、範囲、並びに比率の上限及び下限は、本発明の他の1つ又は複数の特定の技術的特徴(複数可)に関連して本明細書に記載されている量、範囲、並びに比率の上限及び下限と独立に組み合わせることができる。更に、本発明の特定の技術的特徴、及びその全ての好ましい変形は、そのような特徴が好ましいものとして示されているかどうかに関係なく、他の特定の技術的特徴(複数可)、及びその全ての好ましい変形と独立に組み合わせることができる。
又、本発明の各態様の好ましい特徴は本発明のありとあらゆる他の態様の好ましい特徴とみなされることは理解されよう。
【0043】
グリセロリン脂質
本発明のありとあらゆる態様で使用することができる1種類又は複数のグリセロリン脂質は、本明細書に詳述されている通りである。
本発明の各態様で使用される1種類又は複数のグリセロリン脂質は、レシチン(複数可)に存在し、レシチン(複数可)から得ることが可能である。レシチン(複数可)は、グリセロリン脂質(グリセロホスホコリン、グリセロホスホエタノールアミン、グリセロホスホイノシトールなど)、その他のリン脂質(スフィンゴシルリン脂質など)、脂肪酸、トリグリセリド、ステロール、炭水化物及び糖脂質の混合物を含む。レシチン(複数可)は、動物、植物又は微生物源から得ることができる。レシチン(複数可)は、植物(大豆、綿実、トウモロコシ、ヒマワリ、菜種など(それらの遺伝子組換え型を含む))及び動物源(卵黄、海洋生物及びウシの脳など)から得ることができる。レシチン(複数可)は、これらの供給源から、当業者に周知の技術、例えば、抽出された油糧種子の水による脱ガムによって、又はヘキサン、エタノール、アセトンなどの溶媒を使用することによって得ることができる。様々な供給源からのレシチン(複数可)は、未精製形態又は精製形態(すなわち、脱油形態)のいずれかで市販されている。又、通常の実験技術によって、例えば、リンNMR分光法(31P NMR)を使用して、レシチンのタイプを特定し、構成部分の相対量を決定することも可能である。更に、通常の実験技術によってレシチンに存在する異なるタイプのグリセロリン脂質を単離することも可能であり、グリセロリン脂質を合成することも可能である。
好適には、前記1種類又は複数のグリセロリン脂質は、固体形態(例えば、粒子状物質、粉末)又は、例えば、溶液、分散液、懸濁液若しくはエマルジョンなどの液体形態であり得る。好ましくは、前記レシチン(複数可)は、液体形態、より好ましくは、有機溶媒、特に芳香族有機溶媒を含む液体形態である。
【0044】
予想外にも、前記1種類又は複数のグリセロリン脂質が、本明細書に定義されるような1種類若しくは複数のビス-(C10~C30ヒドロカルビル)グリセロホスホコリン、本明細書に定義されるような1種類若しくは複数のビス-(C10~C30ヒドロカルビル)グリセロホスホエタノールアミン、又は前記ビス-(C10~C30ヒドロカルビル)グリセロホスホコリン及びビス-(C10~C30ヒドロカルビル)グリセロホスホエタノールアミンの組合せから選択される場合に、これは、一般に、原油若しくは精製可能な石油原料のその中にアスファルテンを溶媒和及び/若しくは分散させる能力を著しく増強し、且つ/又は原油中若しくは精製可能な石油原料中へのアスファルテンの溶解性及び/若しくは分散性を更に高め、且つ/又は原油若しくは精製可能な石油原料からのアスファルテンの沈澱を更に低減することを見出した。
好適には、前記1種類若しくは複数のビス-(ヒドロカルビル)グリセロホスホコリン及び/又は前記1種類若しくは複数のビス-(ヒドロカルビル)グリセロホスホエタノールアミンの使用による、原油若しくは精製可能な石油原料のその中にアスファルテンを溶媒和及び/若しくは分散させる能力の増強、並びに/又は原油/精製可能な石油原料中へのアスファルテンの溶解性及び/若しくは分散性の増加、並びに/又は原油/精製可能な石油原料からのアスファルテンの沈澱の低減は、他の異なるタイプのグリセロリン脂質の使用、特に、対応する一置換(C10~C30ヒドロカルビル)グリセロホスホコリン及び/又は一置換(C10~C30ヒドロカルビル)グリセロホスホエタノールアミンの使用と比較して(すなわち、前記ビス-(C10~C30ヒドロカルビル)グリセロホスホコリン及びビス-(C10~C30ヒドロカルビル)グリセロホスホエタノールアミンの対応するリゾ誘導体と比較して)識別可能である。
好適には、前記ビス-(ヒドロカルビル)グリセロホスホコリン及び/又は前記ビス-(ヒドロカルビル)グリセロホスホエタノールアミンの使用による、原油若しくは精製可能な石油原料のその中にアスファルテンを溶媒和及び/若しくは分散させる能力の増強、並びに/又は原油/精製可能な石油原料中へのアスファルテンの溶解性及び/若しくは分散性の増加、並びに/又は原油/精製可能な石油原料からのアスファルテンの沈澱の低減は、他のビス-(ヒドロカルビル)グリセロリン脂質、例えば、ビス-(C10~C30ヒドロカルビル)グリセロホスホイノシトールの使用と比較して顕著である。
【0045】
従って、本発明の第1~第13の態様のそれぞれの好ましい態様によれば、前記1種類又は複数のグリセロリン脂質は、本明細書に定義されるような1種類若しくは複数のビス-(C10~C30ヒドロカルビル)グリセロホスホコリン;本明細書に定義されるような1種類若しくは複数のビス-(C10~C30ヒドロカルビル)グリセロホスホエタノールアミン;又は前記ビス-(C10~C30ヒドロカルビル)グリセロホスホコリン及びビス-(C10~C30ヒドロカルビル)グリセロホスホエタノールアミンの組合せから選択される。
より好ましくは、前記1種類又は複数のグリセロリン脂質は、本明細書に定義されるような1種類又は複数のビス-(C10~C30ヒドロカルビル)グリセロホスホコリンを含む。
好適には、前記1種類又は複数のビス-(C10~C30ヒドロカルビル)グリセロホスホコリンは、1種類又は複数のビス-(C12~C26ヒドロカルビル)グリセロホスホコリン、好ましくは1種類又は複数のビス-(C12~C24ヒドロカルビル)グリセロホスホコリン、好ましくは1種類又は複数のビス-(C14~C22ヒドロカルビル)グリセロホスホコリン、より好ましくは1種類又は複数のビス-(C16~C22ヒドロカルビル)グリセロホスホコリン、より好ましくは1種類又は複数のビス-(C16~C20ヒドロカルビル)グリセロホスホコリン、最も好ましくは1種類又は複数のビス-(C16~C18ヒドロカルビル)グリセロホスホコリンを含む。
好適には、本明細書に定義されるような前記1種類又は複数のビス-(C10~C30ヒドロカルビル)グリセロホスホコリンは、それぞれ独立に、炭素原子数が同じ2つのヒドロカルビル基を含み得、又はそれぞれ独立に、炭素原子数が異なる2つのヒドロカルビル基を含み得る。
好適には、本明細書に定義されるような前記1種類又は複数のビス-(C10~C30ヒドロカルビル)グリセロホスホコリンの各ヒドロカルビル基は、独立に、各存在において、飽和又は不飽和であり得る(例えば、1つ又は複数の炭素-炭素二重結合を含み得る)。好ましくは、本明細書に定義されるような前記1種類又は複数のビス-(C10~C30ヒドロカルビル)グリセロホスホコリンのヒドロカルビル基の少なくとも1つは、不飽和であり、少なくとも1つの炭素-炭素二重結合を含む。より好ましくは、本明細書に定義されるような前記1種類又は複数のビス-(C10~C30ヒドロカルビル)グリセロホスホコリンの前記ヒドロカルビル基のそれぞれは、不飽和であり、少なくとも1つの炭素-炭素二重結合を含む。
【0046】
好適には、本明細書に定義されるような前記1種類又は複数のビス-(C10~C30ヒドロカルビル)グリセロホスホコリンの各ヒドロカルビル基は、独立に、各存在において、脂肪族C10~C30アルキルアシル基、脂肪族C10~C30アルケニルアシル基、C10~C30アルキル基又はC10~C30アルケニル基を表し、ここで、前記アルキル又はアルケニル基のそれぞれは、独立に、線状又は分岐状であり得る。好ましくは、前記1種類又は複数のビス-(C10~C30ヒドロカルビル)グリセロホスホコリンの各ヒドロカルビル基は、独立に、各存在において、本明細書に定義されるような、脂肪族C10~C30アルキルアシル基又は脂肪族C10~C30アルケニルアシル基を表す。
好適には、前記1種類又は複数のビス-(C10~C30ヒドロカルビル)グリセロホスホコリンの前記脂肪族C10~C30アルキルアシル基(複数可)、脂肪族C10~C30アルケニルアシル基(複数可)、C10~C30アルキル基(複数可)又はC10~C30アルケニル基(複数可)のそれぞれは、非環式、好ましくは、脂肪族且つ非環式である。
好ましくは、前記1種類又は複数のビス-(C10~C30ヒドロカルビル)グリセロホスホコリンの少なくとも1つのヒドロカルビル基は、独立に、本明細書に定義されるような、脂肪族C10~C30アルキルアシル基又は脂肪族C10~C30アルケニルアシル基、特に脂肪族C10~C30アルケニルアシル基を表す。より好ましくは、前記1種類又は複数のビス-(C10~C30ヒドロカルビル)グリセロホスホコリンの各ヒドロカルビル基は、独立に、本明細書に定義されるような、脂肪族C10~C30アルキルアシル基又は脂肪族C10~C30アルケニルアシル基を表す。更により好ましくは、前記1種類又は複数のビス-(C10~C30ヒドロカルビル)グリセロホスホコリンの各ヒドロカルビル基は、独立に、本明細書に定義されるような脂肪族C10~C30アルケニルアシル基を表す。
好適には、前記脂肪族C10~C30アルキルアシル基(複数可)のそれぞれは、独立に、C10~C30、好ましくはC12~C28、より好ましくはC12~C24、より好ましくはC14~C22、より好ましくはC16~C22、より好ましくはC16~C20、最も好ましくはC16~C18アルキルアシル基を含み得、この場合、炭素原子の総数は、前記基(複数可)を化合物の残部に結合するアシル基の炭素原子を含む。好適には、アルキルアシル基は、脂肪族且つ非環式である。
好適には、前記脂肪族C10~C30アルケニルアシル基のそれぞれは、独立に、C10~C30、好ましくはC12~C28、より好ましくはC12~C24、より好ましくはC14~C22、より好ましくはC16~C22、より好ましくはC16~C20、最も好ましくはC16~C18アルケニルアシル基を含み得、この場合、炭素原子の総数は、前記基を化合物の残部に結合するアシル基の炭素原子を含む。好適には、アルケニルアシル基は、脂肪族且つ非環式である。
【0047】
従って、本発明の第1~第13の態様のそれぞれの好ましい態様によれば、前記1種類又は複数のビス-(C10~C30ヒドロカルビル)グリセロホスホコリンは、本明細書に定義されるような1種類又は複数のビス-(脂肪族C10~C30アルキルアシル)グリセロホスホコリン、本明細書に定義されるような1種類又は複数のビス-(脂肪族C10~C30アルケニルアシル)グリセロホスホコリン、又は本明細書に定義されるような、1種類又は複数の(脂肪族C10~C30アルケニルアシル)、(脂肪族C10~C30アルキルアシル)グリセロホスホコリン、好ましくは1種類又は複数のビス-(脂肪族C10~C30アルケニルアシル)グリセロホスホコリンを表す。
好適には、本明細書に定義されるような前記1種類又は複数のビス-(脂肪族C10~C30アルケニルアシル)グリセロホスホコリンは、1種類又は複数のビス-(脂肪族C12~C26アルケニルアシル)グリセロホスホコリン、より好ましくは1種類又は複数のビス-(脂肪族C12~C24アルケニルアシル)グリセロホスホコリン、より好ましくは1種類又は複数のビス-(脂肪族C14~C22アルケニルアシル)グリセロホスホコリン、より好ましくは1種類又は複数のビス-(脂肪族C16~C22アルケニルアシル)グリセロホスホコリン、より好ましくは1種類又は複数のビス-(脂肪族C16~C20アルケニルアシル)グリセロホスホコリン、より好ましくは1種類又は複数のビス-(脂肪族C16~C18アルケニルアシル)グリセロホスホコリンを含む。
好適には、前記1種類又は複数のビス-(C10~C30ヒドロカルビル)グリセロホスホエタノールアミンは、1種類又は複数のビス-(C12~C26ヒドロカルビル)グリセロホスホエタノールアミン、好ましくは1種類又は複数のビス-(C12~C24ヒドロカルビル)グリセロホスホエタノールアミン、好ましくは1種類又は複数のビス-(C14~C22ヒドロカルビル)グリセロホスホエタノールアミン、より好ましくは1種類又は複数のビス-(C16~C22ヒドロカルビル)グリセロホスホエタノールアミン、より好ましくは1種類又は複数のビス-(C16~C20ヒドロカルビル)グリセロホスホエタノールアミン、最も好ましくは1種類又は複数のビス-(C16~C18ヒドロカルビル)グリセロホスホエタノールアミンを含む。
好適には、本明細書に定義されるような前記1種類又は複数のビス-(C10~C30ヒドロカルビル)グリセロホスホエタノールアミンは、それぞれ独立に、炭素原子数が同じ2つのヒドロカルビル基を含み得、又はそれぞれ独立に、炭素原子数が異なる2つのヒドロカルビル基を含み得る。
好適には、本明細書に定義されるような前記1種類又は複数のビス-(C10~C30ヒドロカルビル)グリセロホスホエタノールアミンの各ヒドロカルビル基は、独立に、各存在において、飽和又は不飽和であり得る(例えば、1つ又は複数の炭素-炭素二重結合を含み得る)。好ましくは、本明細書に定義されるような前記1種類又は複数のビス-(C10~C30ヒドロカルビル)グリセロホスホエタノールアミンのヒドロカルビル基の少なくとも1つは、不飽和であり、少なくとも1つの炭素-炭素二重結合を含む。より好ましくは、本明細書に定義されるような前記1種類又は複数のビス-(C10~C30ヒドロカルビル)グリセロホスホエタノールアミンの前記ヒドロカルビル基のそれぞれは、不飽和であり、少なくとも1つの炭素-炭素二重結合を含む。
【0048】
好適には、本明細書に定義されるような前記1種類又は複数のビス-(C10~C30ヒドロカルビル)グリセロホスホエタノールアミンの各ヒドロカルビル基は、独立に、各存在において、脂肪族C10~C30アルキルアシル基、脂肪族C10~C30アルケニルアシル基、C10~C30アルキル基又はC10~C30アルケニル基を表し、ここで、前記アルキル又はアルケニル基のそれぞれは、独立に、線状又は分岐状であり得る。好ましくは、前記1種類又は複数のビス-(C10~C30ヒドロカルビル)グリセロホスホエタノールアミンの各ヒドロカルビル基は、独立に、各存在において、本明細書に定義されるような、脂肪族C10~C30アルキルアシル基又は脂肪族C10~C30アルケニルアシル基を表す。
好適には、前記1種類又は複数のビス-(C10~C30ヒドロカルビル)グリセロホスホエタノールアミンの前記脂肪族C10~C30アルキルアシル基(複数可)、脂肪族C10~C30アルケニルアシル基(複数可)、C10~C30アルキル基(複数可)又はC10~C30アルケニル基(複数可)のそれぞれは、非環式、好ましくは、脂肪族且つ非環式である。
好ましくは、前記1種類又は複数のビス-(C10~C30ヒドロカルビル)グリセロホスホエタノールアミンの少なくとも1つのヒドロカルビル基は、独立に、本明細書に定義されるような、脂肪族C10~C30アルキルアシル基又は脂肪族C10~C30アルケニルアシル基、特に脂肪族C10~C30アルケニルアシル基を表す。より好ましくは、前記1種類又は複数のビス-(C10~C30ヒドロカルビル)グリセロホスホエタノールアミンの各ヒドロカルビル基は、独立に、本明細書に定義されるような、脂肪族C10~C30アルキルアシル基又は脂肪族C10~C30アルケニルアシル基を表す。更により好ましくは、前記1種類又は複数のビス-(C10~C30ヒドロカルビル)グリセロホスホエタノールアミンの各ヒドロカルビル基は、独立に、本明細書に定義されるような脂肪族C10~C30アルケニルアシル基を表す。
好適には、前記脂肪族C10~C30アルキルアシル基(複数可)のそれぞれは、独立に、C10~C30、好ましくはC12~C28、より好ましくはC12~C24、より好ましくはC14~C22、より好ましくはC16~C22、より好ましくはC16~C20、最も好ましくはC16~C18アルキルアシル基を含み得、この場合、炭素原子の総数は、前記基(複数可)を化合物の残部に結合するアシル基の炭素原子を含む。好適には、アルキルアシル基は、脂肪族且つ非環式である。
好適には、前記脂肪族C10~C30アルケニルアシル基(複数可)のそれぞれは、独立に、C10~C30、好ましくはC12~C28、より好ましくはC12~C24、より好ましくはC14~C22、より好ましくはC16~C22、より好ましくはC16~C20、最も好ましくはC16~C18アルケニルアシル基を含み得、この場合、炭素原子の総数は、前記基(複数可)を化合物の残部に結合するアシル基の炭素原子を含む。好適には、アルケニルアシル基は、脂肪族且つ非環式である。
【0049】
従って、本発明の第1~第13の態様のそれぞれの好ましい態様によれば、前記1種類又は複数のビス-(C10~C30ヒドロカルビル)グリセロホスホエタノールアミンは、本明細書に定義されるような1種類又は複数のビス-(脂肪族C10~C30アルキルアシル)グリセロホスホエタノールアミン、本明細書に定義されるような1種類又は複数のビス-(脂肪族C10~C30アルケニルアシル)グリセロホスホエタノールアミン、又は本明細書に定義されるような、1種類又は複数の(脂肪族C10~C30アルケニルアシル)、(脂肪族C10~C30アルキルアシル)グリセロホスホエタノールアミン、好ましくは1種類又は複数のビス-(脂肪族C10~C30アルケニルアシル)グリセロホスホエタノールアミンを表す。
好適には、本明細書に定義されるような前記1種類又は複数のビス-(脂肪族C10~C30アルケニルアシル)グリセロホスホエタノールアミンは、1種類又は複数のビス-(脂肪族C12~C26アルケニルアシル)グリセロホスホエタノールアミン、より好ましくは1種類又は複数のビス-(脂肪族C12~C24アルケニルアシル)グリセロホスホエタノールアミン、より好ましくは1種類又は複数のビス-(脂肪族C14~C22アルケニルアシル)グリセロホスホエタノールアミン、より好ましくは1種類又は複数のビス-(脂肪族C16~C22アルケニルアシル)グリセロホスホエタノールアミン、より好ましくは1種類又は複数のビス-(脂肪族C16~C20アルケニルアシル)グリセロホスホエタノールアミン、より好ましくは1種類又は複数のビス-(脂肪族C16~C18アルケニルアシル)グリセロホスホエタノールアミンを含む。
好ましくは、本発明の第1~第13の態様のそれぞれにおいて、1種類又は複数のグリセロリン脂質は、本明細書に定義されるような1種類又は複数のビス-(C10~C30ヒドロカルビル)グリセロホスホコリンを含む。
【0050】
好適には、前記1種類又は複数のグリセロリン脂質は、1種類又は複数の式Iの化合物又はその双性イオン塩によって表され得る:
【化1】
[式中、
1及びR2は、それぞれ独立に、水素又は本明細書に定義されるようなC10~C30ヒドロカルビル基を表し;
3は、-CH2CH2NH2、-CH2CH2+(CH33、-CH2CH(NH2)CO2H、又はイノシトールから選択される(ただし、R1及びR2はどちらも水素を表していない)]。
好ましくは、R3は、式Iの化合物又はその双性イオン塩において、-CH2CH2NH2(エタノールアミン)又は-CH2CH2+(CH33(コリン)、特に-CH2CH2+(CH33(コリン)を表す。
好ましくは、R1及びR2は、式Iの化合物又はその双性イオン塩において、それぞれ独立に、本明細書に定義されるようなC10~C30ヒドロカルビル基を表す。
より好ましくは、R1及びR2は、式Iの化合物又はその双性イオン塩において、それぞれ独立に、本明細書に定義されるような脂肪族C10~C30アルケニルアシル基、本明細書に定義されるような脂肪族C10~C30アルキルアシル基、本明細書に定義されるようなC10~C30アルキル基、又は本明細書に定義されるようなC10~C30アルケニル基、特に、本明細書に定義されるような脂肪族C10~C30アルケニルアシル基又は脂肪族C10~C30アルキルアシル基を表す。
【0051】
好適には、本発明の第1~第13の態様のそれぞれにおいて、本明細書に定義されるような前記1種類又は複数のグリセロリン脂質、特に前記1種類又は複数のビス-(C10~C30ヒドロカルビル)グリセロホスホリピド(bis-(C10 to C30 hydrocarbyl)glycerophosphopholipid)は、原油又は精製可能な石油原料それぞれに、その原油及び精製可能な石油原料それぞれの総質量に基づいて、有効成分ベースで、10質量ppm以上、好ましくは20質量ppm以上、好ましくは30質量ppm以上、好ましくは50質量ppm以上の量で添加される。
好適には、本発明の第1~第13の態様のそれぞれにおいて、本明細書に定義されるような前記1種類又は複数のグリセロリン脂質、特に前記1種類又は複数のビス-(C10~C30ヒドロカルビル)グリセロホスホリピド(bis-(C10 to C30 hydrocarbyl)glycerophosphopholipid)は、原油又は精製可能な石油原料それぞれに、その原油及び精製可能な石油原料それぞれの総質量に基づいて、有効成分ベースで、10000質量ppm以下、好ましくは5000質量ppm以下、好ましくは2000質量ppm以下、好ましくは1000質量ppmの量で添加される。
好適には、本発明の第1~第13の態様のそれぞれにおいて、本明細書に定義されるような前記1種類又は複数のビス-(ヒドロカルビル)グリセロホスホコリンは、原油又は精製可能な石油原料それぞれに、その原油及び精製可能な石油原料それぞれの総質量に基づいて、有効成分ベースで、10質量ppm以上、好ましくは20質量ppm以上、好ましくは30質量ppm以上、好ましくは40質量ppm以上、好ましくは50質量ppm以上の量で添加される。
好適には、本発明の第1~第13の態様のそれぞれにおいて、本明細書に定義されるような前記1種類又は複数のビス-(ヒドロカルビル)グリセロホスホコリンは、原油又は精製可能な石油原料それぞれに添加され、原油又は精製可能な石油原料それぞれに、その原油及び精製可能な石油原料それぞれの総質量に基づいて、有効成分ベースで、10000質量ppm以下、好ましくは5000質量ppm以下、好ましくは2000質量ppm以下、好ましくは1500質量ppm以下の量で添加される。
好適には、本発明の第1~第13の態様のそれぞれにおいて、本明細書に定義されるような前記1種類又は複数のビス-(ヒドロカルビル)グリセロホスホエタノールアミンは、原油又は精製可能な石油原料それぞれに、その原油及び精製可能な石油原料それぞれの総質量に基づいて、有効成分ベースで、10質量ppm以上、好ましくは20質量ppm以上、好ましくは25質量ppm以上、好ましくは30質量ppm以上の量で添加される。
好適には、本発明の第1~第13の態様のそれぞれにおいて、前記1種類又は複数のビス-(ヒドロカルビル)グリセロホスホエタノールアミンは、原油又は精製可能な石油原料それぞれに添加され、原油又は精製可能な石油原料それぞれに添加され、原油又は精製可能な石油原料それぞれに、その原油及び精製可能な石油原料それぞれの総質量に基づいて、有効成分ベースで、10000質量ppm以下、好ましくは5000質量ppm以下、好ましくは2000質量ppm以下、好ましくは1500質量ppm以下の量で添加される。
好適には、本発明の第1~第13の態様のそれぞれにおいて、本明細書に定義されるような前記1種類又は複数のビス-(ヒドロカルビル)グリセロホスホコリン及び本明細書に定義されるような前記1種類又は複数のビス-(ヒドロカルビル)グリセロホスホエタノールアミンの組合せが、原油又は精製可能な石油原料に添加される場合、前記ビス-(ヒドロカルビル)グリセロホスホコリン(複数可)及びビス-(ヒドロカルビル)グリセロホスホエタノールアミン(複数可)の合わせた処理率は、その原油又は精製可能な石油原料それぞれの総質量に基づいて、有効成分ベースで、2~10000質量ppm、好ましくは2~5500質量ppm、好ましくは10~5000質量ppm、好ましくは10~3000質量ppm、好ましくは15~3000質量ppm、好ましくは20~3000質量ppm、好ましくは40~2000質量ppmである。
【0052】
予想外にも、本明細書に定義されるような前記1種類若しくは複数のグリセロリン脂質のリゾ誘導体、特に、前記1種類若しくは複数のビス-(C10~C30ヒドロカルビル)グリセロホスホコリンのリゾ誘導体及び/又は前記1種類若しくは複数のビス-(C10~C30ヒドロカルビル)グリセロホスホエタノールアミンのリゾ誘導体(すなわち、前記ビス-(ヒドロカルビル)グリセロホスホコリン(複数可)から及び/又は前記ビス-(ヒドロカルビル)グリセロホスホエタノールアミン(複数可)から一方又は両方のヒドロカルビル基が除去されている場合)が比較的高濃度な場合、これは、原油若しくは精製可能な石油原料の、その原油若しくは精製可能な石油原料中にアスファルテンを溶媒和及び/若しくは分散させる能力を低下させ、且つ/又は原油若しくは精製可能な石油原料中へのアスファルテンの溶解性及び/若しくは分散性を低下させ、且つ/又は原油若しくは精製可能な石油原料からのアスファルテンの析出を増加させる可能性があることを見出した。
好適には、本発明の第1~第13の態様のそれぞれにおいて、原油又は精製可能な石油原料に添加される、本明細書に定義されるような前記1種類又は複数のグリセロリン脂質のリゾ誘導体、特に、本明細書に定義されるような、前記1種類若しくは複数のビス-(C10~C30ヒドロカルビル)グリセロホスホコリンのリゾ誘導体及び/又は前記1種類若しくは複数のビス-(C10~C30ヒドロカルビル)グリセロホスホエタノールアミンのリゾ誘導体の総量は、原油又は精製可能な石油原料それぞれの総質量に基づいて、有効成分ベースで、500質量ppm未満、好ましくは300質量ppm未満、好ましくは250質量ppm未満、好ましくは200質量ppm未満、好ましくは150質量ppm未満、好ましくは100質量ppm未満、好ましくは75質量ppm未満、好ましくは50質量ppm未満である。
【0053】
好適には、原油又は精製可能な石油原料に添加される前記1種類若しくは複数のビス-(C10~C30ヒドロカルビル)グリセロホスホコリン及び/又は前記1種類若しくは複数のビス-(C10~C30ヒドロカルビル)グリセロホスホエタノールアミンの総質量の、原油又は精製可能な石油原料に添加される前記1種類若しくは複数のビス-(C10~C30ヒドロカルビル)グリセロホスホコリンの前記リゾ誘導体及び/又は前記1種類若しくは複数のビス-(C10~C30ヒドロカルビル)グリセロホスホエタノールアミンのリゾ誘導体の総質量に対する有効成分ベースでの質量対質量比は、3以上対1、好ましくは5以上対1、好ましくは7以上対1である。
【0054】
従って、本発明の第1~第13の態様の各態様において添加剤として使用される、本明細書に定義されるような1種類又は複数のグリセロリン脂質は、1種類又は複数のレシチンを原油に添加することにより原油又は精製可能な石油原料に添加し得る。レシチン(複数可)は取り扱いが容易で、貯蔵安定性があり、商業的に容易に入手できるため、これは、好ましい添加方法を表す。
好適には、前記1種類又は複数のレシチンは、固体形態(例えば、粒子状物質、粉末)又は、例えば、溶液、分散液、懸濁液若しくはエマルジョンなどの液体形態であり得る。好ましくは、前記レシチン(複数可)は、液体形態、より好ましくは、有機溶媒、特に芳香族有機溶媒を含む液体形態である。好適な芳香族溶媒には、キシレン及びトルエンが含まれる。
好適には、本明細書に定義されるような1種類又は複数のグリセロリン脂質が、1種類又は複数のレシチンの添加により、原油/精製可能な石油原料に添加される場合、前記レシチンは、原油又は精製可能な石油原料に、本明細書に定義されるような前記グリセロリン脂質(複数可)の有効量を送達するための量で、特に、前記原油又は精製可能な石油原料それぞれに、本明細書に定義されるような、前記の好ましいビス-(C10~C30ヒドロカルビル)グリセロホスホコリン(複数可)及び/又はビス-(C10~C30ヒドロカルビル)グリセロホスホエタノールアミン(複数可)の好ましい量(複数可)を送達するための量で添加される。
好適には、本発明の各態様において、前記1種類又は複数のレシチンは、原油又は精製可能な石油原料それぞれに、原油又は精製可能な石油原料それぞれの総質量に基づいて、10000質量ppm以下、好ましくは7500質量ppm以下、好ましくは5000質量ppm以下、好ましくは3000質量ppm以下、好ましくは2000質量ppm以下のレシチンの量(複数可)で添加し得る。
好適には、本発明の各態様において、前記1種類又は複数のレシチンは、原油又は精製可能な石油原料それぞれに、原油又は精製可能な石油原料それぞれの総質量に基づいて、50質量ppm以上、好ましくは100質量ppm以上、好ましくは150質量ppm以上、好ましくは200質量ppm以上、好ましくは250質量ppm以上、好ましくは300質量ppm以上のレシチン(複数可)の量で添加し得る。
【0055】
好適には、前記レシチン(複数可)は、動物、植物又は微生物源から得ることができる。好ましくは、1種類又は複数のレシチンを、前記1種類又は複数のグリセロリン脂質の供給源として使用する場合、レシチンは、植物、より好ましくは植物油、更により好ましくは、大豆、綿実、トウモロコシ、ヒマワリ、菜種、特に大豆から得られる。植物油は、遺伝子組換えではない植物に由来するものでも遺伝子組換え植物に由来するものでもよい。好適には、レシチンは未精製形態又は精製形態(脱油レシチンなど)であってよい。非常に好ましいレシチン源は大豆由来のものである。
好ましくは、レシチン(複数可)は、レシチン材料の総質量に基づいて、有効成分ベースで、比較的高濃度の、本明細書に定義されるような前記の好ましい1種類若しくは複数のビス-(C10~C30ヒドロカルビル)グリセロホスホコリン及び/又は本明細書に定義されるような前記の好ましい1種類若しくは複数のビス-(C10~C30ヒドロカルビル)グリセロホスホエタノールアミンを含む。
【0056】
好適には、本明細書に定義されるような前記1種類又は複数のビス-(C10~C30ヒドロカルビル)グリセロホスホコリンは、前記1種類又は複数のレシチン中に、レシチン材料の総質量に基づいて(すなわち、レシチンを構成するが溶媒を含まない全ての成分の総質量に基づいて)、有効成分ベースで、少なくとも8.5質量%、好ましくは少なくとも9質量%、より好ましくは少なくとも10質量%、より好ましくは少なくとも11質量%、より好ましくは少なくとも12質量%の量で存在する。
好適には、本明細書に定義されるような前記1種類又は複数のビス-(C10~C30ヒドロカルビル)グリセロホスホコリンは、前記1種類又は複数のレシチン中に、レシチン材料の総質量に基づいて(すなわち、レシチン(複数可)を構成するが溶媒(複数可)を含まない全ての成分の総質量に基づいて)、有効成分ベースで、50質量%未満、好ましくは45質量%未満、より好ましくは40質量%未満、好ましくは35質量%未満の量で存在する。
好適には、本明細書に定義されるような前記1種類又は複数のビス-(C10~C30ヒドロカルビル)グリセロホスホコリンは、前記1種類又は複数のレシチン中に、レシチン(複数可)材料中のリン脂質(複数可)の総質量に基づいて、有効成分ベースで、少なくとも15質量%、好ましくは少なくとも20質量%、より好ましくは少なくとも25質量%、より好ましくは少なくとも30質量%の量で存在する。
好適には、本明細書に定義されるような前記1種類又は複数のビス-(C10~C30ヒドロカルビル)グリセロホスホエタノールアミンは、前記1種類又は複数のレシチン中に、レシチン(複数可)材料の総質量に基づいて(すなわち、レシチンを構成するが溶媒を含まない全ての成分の総質量に基づいて)、有効成分ベースで、少なくとも5.0質量%、好ましくは少なくとも5.5質量%、より好ましくは少なくとも6質量%、より好ましくは少なくとも7質量%、より好ましくは少なくとも8質量%の量で存在する。
好適には、本明細書に定義されるような前記1種類又は複数のビス-(C10~C30ヒドロカルビル)グリセロホスホエタノールアミンは、前記1種類又は複数のレシチン中に、レシチン材料の総質量に基づいて(すなわち、レシチン(複数可)を構成するが溶媒を含まない全ての成分の総質量に基づいて)、有効成分ベースで、30質量%未満、好ましくは25質量%未満、より好ましくは20質量%未満の量で存在する。
好適には、本明細書に定義されるような前記1種類又は複数のビス-(C10~C30ヒドロカルビル)グリセロホスホエタノールアミンは、前記1種類又は複数のレシチン中に、レシチン(複数可)材料中のリン脂質(複数可)の総質量に基づいて、有効成分ベースで、少なくとも8質量%、好ましくは少なくとも9質量%、好ましくは少なくとも10質量%、より好ましくは少なくとも12質量%、より好ましくは少なくとも15質量%の量で存在する。
【0057】
好適には、本明細書に定義されるような1種類又は複数のグリセロリン脂質が、1種類又は複数のレシチンの形態で添加される場合、前記レシチンは、比較的少量の、本明細書に定義されるような前記1種類又は複数のグリセロリン脂質のリゾ誘導体、特に、前記1種類若しくは複数のビス-(C10~C30ヒドロカルビル)グリセロホスホコリンのリゾ誘導体及び/又は前記1種類若しくは複数のビス-(C10~C30ヒドロカルビル)グリセロホスホエタノールアミンのリゾ誘導体(すなわち、前記ビス-(ヒドロカルビル)グリセロホスホコリン(複数可)から及び/又は前記ビス-(ヒドロカルビル)グリセロホスホエタノールアミン(複数可)から一方又は両方のヒドロカルビル基が除去されている場合)を含む。
好適には、前記レシチン中に存在する、本明細書に定義されるような前記1種類若しくは複数のビス-(ヒドロカルビル)グリセロホスホコリンのリゾ誘導体、及び/又は本明細書に定義されるような前記1種類若しくは複数のビス-(ヒドロカルビル)グリセロホスホエタノールアミンのリゾ誘導体(すなわち、前記ビス-(ヒドロカルビル)グリセロホスホコリン(複数可)から及び/又は前記ビス-(ヒドロカルビル)グリセロホスホエタノールアミン(複数可)から一方又は両方のヒドロカルビル基が除去されている場合)の総量、特に、前記1種類若しくは複数のモノ-(C10~C30ヒドロカルビル)グリセロホスホコリンのリゾ誘導体及び/又は前記1種類若しくは複数のモノ-(C10~C30ヒドロカルビル)グリセロホスホエタノールアミンのリゾ誘導体の総量は、レシチン材料の総質量に基づいて(すなわち、レシチン(複数可)を構成するが溶媒(複数可)を含まない全ての成分の総質量に基づいて)、有効成分ベースで、4.0質量%未満、好ましくは3.75質量%未満、より好ましくは3.5質量%未満である。
【0058】
好ましくは、前記レシチン(複数可)中に存在する、前記1種類若しくは複数のビス-(C10~C30ヒドロカルビル)グリセロホスホコリン及び/又は前記1種類若しくは複数のビス-(C10~C30ヒドロカルビル)グリセロホスホエタノールアミンの総質量の、前記1種類若しくは複数のビス-(C10~C30ヒドロカルビル)グリセロホスホコリンの前記リゾ誘導体及び/又は前記1種類若しくは複数のビス-(C10~C30ヒドロカルビル)グリセロホスホエタノールアミンのリゾ誘導体の総質量に対する有効成分ベースでの質量対質量比は、3以上対1、好ましくは5以上対1、好ましくは7以上対1である。
【0059】
予想外にも、本明細書に定義されるような前記1種類又は複数のグリセロリン脂質、特に、本明細書に定義されるような、前記の好ましい1種類若しくは複数のビス-(C10~C30ヒドロカルビル)グリセロホスホコリン及び/又はビス-(C10~C30ヒドロカルビル)グリセロホスホエタノールアミンが、原油又は精製可能な石油原料に液体形態(例えば溶液、懸濁液、分散液)で添加される場合、これは、アスファルテンを溶媒和及び/若しくは分散させる原油/精製可能な石油原料の能力を更に増強し、且つ/又は原油/精製可能な石油原料中へのアスファルテン(複数可)の溶解性及び/若しくは分散性を増大させる可能性があることを見出した。前記1種類又は複数のグリセロリン脂質の液体形態での添加は、便宜な添加様式を表す。更に、前記1種類又は複数のグリセロリン脂質が液体形態であり、前記液体が有機溶媒、特に芳香族有機溶媒(例えば、キシレン、トルエン、ナフサ)を含む場合、これは、原油/精製可能な石油原料のその中にアスファルテン(複数可)を溶媒和及び/若しくは分散させる能力を更に増強し、且つ/又は原油/精製可能な石油原料中へのアスファルテンの溶解性及び/若しくは分散性を高め、且つ/又は原油/精製可能な石油原料からのアスファルテン(asphalatenes)の析出を低減する可能性がある。
【0060】
従って、本発明の第1~第13の態様のそれぞれの好ましい実施形態によれば、本明細書に定義されるような、前記1種類又は複数のグリセロリン脂質、特に、前記の好ましい1種類若しくは複数のビス-(C10~C30ヒドロカルビル)グリセロホスホコリン及び/又は1種類若しくは複数のビス-(C10~C30ヒドロカルビル)グリセロホスホエタノールアミンは、液体形態であり、有機溶媒、特に芳香族溶媒を含む。好適には、これは、有機溶媒、好ましくは芳香族溶媒でレシチン(複数可)の溶液、分散液及び/又は懸濁液を形成することにより達成することができる。
好適には、本発明の第1~第13の態様のそれぞれにおいて、原油又は精製可能な石油原料はそれぞれ、アスファルテンを含有する。
好適には、本発明の第1~第13の態様のそれぞれにおいて、アスファルテンを溶媒和及び/又は分散させる原油又は精製可能な石油原料の能力は、前記グリセロリン脂質を含まない原油又は精製可能な石油原料(petroleum feedtstock)それぞれと比較して増強される。
好適には、本発明の第1~第13の態様のそれぞれにおいて、原油又は精製可能な石油原料中へのアスファルテンの溶解性及び/又は分散性は、前記グリセロリン脂質を含まない原油又は精製可能な石油原料それぞれと比較して増強される。
好適には、本発明の第1~第13の態様のそれぞれにおいて、原油又は精製可能な石油原料からのアスファルテンの析出は、前記グリセロリン脂質を含まない原油又は精製可能な石油原料それぞれと比較して低減される。
原油若しくは精製可能な石油原料のその中にアスファルテンを溶媒和及び/若しくは分散させる能力の増加、並びに/又は原油若しくは精製可能な石油原料中へのアスファルテンの溶解性及び/若しくは分散性の増大、並びに/又は原油若しくは精製可能な石油原料からのアスファルテン(aspahltenes)の析出の低減によって、(i)原油/精製可能な石油原料中に溶媒和及び/若しくは分散されるアスファルテンの量の増加が可能になり得;且つ/又は、(ii)アスファルテンがより安定して溶媒和及び/若しくは分散される定義されたアスファルテン含量を有する原油の形成若しくは原油ブレンドの形成が可能になり得る(すなわち、原油からのアスファルテン沈澱及び/又は原油中でのアスファルテン凝集は低減する)。
【0061】
好適には、本発明の第1~第13の態様のそれぞれにおいて、原油は、単一タイプの原油又は2つ以上の異なるタイプの原油を含む原油ブレンドを含む。単一タイプの原油又は原油ブレンドは、炭化水素油(すなわち、原油ではない)を更に含み得る。
好適には、本発明の第1~第13の態様のそれぞれにおいて、原油は、アスファルテンを含有する単一タイプの原油又は2つ以上の異なるタイプの原油を含む原油ブレンドを含み、ここで、少なくとも1つの、好ましくは、前記異なるタイプの原油のそれぞれは、アスファルテンを含有する。
好適には、本発明の第1~第13の態様のそれぞれにおいて、原油は、石油精製所での石油精製操作において精製され得る精製可能な石油原料を表すか又は精製可能な石油原料の一部を形成する。言い換えれば、原油は、精製可能な原油である(すなわち、それは石油精製所での精製に好適な形態にある)。
好適には、原油は、中間(軽質)原油、中質原油、重質原油及びシェールオイル、並びにそれらの組合せを含む。
好適には、原油は、最終市販製品を生産するために石油精製所でその後精製される改質原油を含む。
【0062】
疑念を避けるため、本明細書に定義されるような1種類若しくは複数のビス-(C10~C30ヒドロカルビル)グリセロホスホコリン、又は本明細書に定義されるような1種類若しくは複数のビス-(C10~C30ヒドロカルビル)グリセロホスホエタノールアミン、又は前記ビス-(C10~C30ヒドロカルビル)グリセロホスホコリン(複数可)及びビス-(C10~C30ヒドロカルビル)グリセロホスホエタノールアミン(複数可)の組合せが、それぞれ独立に、原油に添加される場合、各添加剤若しくは添加剤組合せは、独立に、本明細書に定義されるような原油に直接添加され得、各添加剤若しくは添加剤組合せは、独立に、本明細書に定義されるような原油ブレンドに添加され得、且つ/又は各添加剤若しくは添加剤組合せは、独立に、本明細書に定義されるような原油若しくは原油ブレンドを含む精製可能な石油原料に添加され得ることを意味する。
好適には、本明細書に定義されるような前記1種類若しくは複数のビス-(C10~C30ヒドロカルビル)グリセロホスホコリン、又は本明細書に定義されるような前記1種類若しくは複数のビス-(C10~C30ヒドロカルビル)グリセロホスホエタノールアミン、又は前記ビス-(C10~C30ヒドロカルビル)グリセロホスホコリン(複数可)及びビス-(C10~C30ヒドロカルビル)グリセロホスホエタノールアミン(複数可)の組合せは、それぞれ独立に、原油が石油精製所に到着する前に1回又は複数回の原油生産及び/又は処理段階で原油に添加される。
好適には、前記グリセロリン脂質(複数可)は、原油が石油精製所に到着する前に、(i)容器内(例えば、原油貯蔵タンク内(これらのタンクは、坑井地域に、又は坑井地域と石油精製所の間の中間の場所に配置されていてよい))での原油の貯蔵の間若しくはその前;(ii)前記回収された原油の輸送の間若しくはその前、特に、1又は複数の輸送段階での(例えば、パイプライン、道路(例えば、オイルタンカー)、鉄道又は船舶(例えば船)による)、原油回収井戸から石油精製所への前記回収された原油の輸送の間若しくはその前(ここで、前記グリセロリン脂質は、前記1又は複数の輸送段階のいずれかの前又はその間に原油に添加される);(iii)回収された原油を含むブレンド操作(例えば、回収された原油と、異なるタイプの原油、及び/又は炭化水素流体とをブレンドして、原油ブレンドを形成すること)の間若しくはその前;(iv)原油処理操作(例えば、原油からガスと水を除去すること)の間若しくはその前;又は、生産及び/若しくは処理操作(i)、(ii)、(iii)及び(iv)の任意の組合せから選択される、1回又は複数回の原油生産及び/又は処理段階中に原油に添加し得る。
好適には、グリセロリン脂質の組合せ、例えば、前記ビス-(ヒドロカルビル)グリセロホスホコリン(複数可)及びビス-(ヒドロカルビル)グリセロホスホエタノールアミン(複数可)の組合せが原油に添加される場合、それぞれの異なるタイプのグリセロリン脂質は、同じ1回若しくは複数回の原油生産及び/若しくは処理段階で原油に添加し得、又はそれぞれの異なるタイプのグリセロリン脂質は、異なる1回若しくは複数回の原油生産及び/若しくは処理段階で原油に添加し得る。好ましくは、それぞれ異なるタイプのグリセロリン脂質は、同じ1回又は複数回の原油生産及び/又は処理段階で原油に添加される。
【0063】
好適には、前記グリセロリン脂質(複数可)は、当業者に周知の技術によって原油又は精製可能な石油原料に添加することができ、例えば、この添加剤(複数可)は、原油又は精製可能な石油原料にブレンドすることができ、原油又は精製可能な石油原料を輸送するフローラインに導入することができ、原油又は精製可能な石油原料に注入することができ、例えば、原油回収井戸の生産流路中に存在する原油に注入することができる。
好適には、第1~第13の態様のそれぞれにおいて、原油は周囲温度にある(すなわち、その周囲の温度にあり、追加の外部熱源から熱は加えられない)。原油貯留層内の原油は、最大150℃の温度にあり得る。石油精製所で原油が精製される前の原油の輸送、貯蔵及び処理は、地理的な場所によって異なる。
好適には、本明細書に定義されるような前記1種類又は複数のグリセロリン脂質は、それぞれ独立に、原油に可溶であり又は分散可能である。
【0064】
組成物
前記1種類又は複数のグリセロリン脂質は、組成物に使用し得る;組成物は、添加剤(複数可)のための疎水性油可溶化剤及び/又は分散剤を更に含み得る。このような可溶化剤には、例えば、界面活性剤及び/又はカルボン酸可溶化剤が含まれ得る。
組成物は、例えば、粘度指数向上剤、消泡剤、耐摩耗剤、解乳化剤、酸化防止剤、及び他の腐食防止剤を更に含み得る。
【0065】
実施例
本発明を以下の実施例によって説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
成分
以下のレシチン成分及び原油を使用した。
レシチン
以下に詳述する下記レシチンを実施例で使用した:
レシチン1-Thew Arnott(Unit 9 Tenth Avenue、Zone 3、ディーサイド・インダストリアル・パーク、フリントシャー、CH52UA)から市販されている、遺伝子組換え大豆から得られた、レシチン5260。
レシチン2-同様にThew Arnottから入手可能な、遺伝子組換え大豆から得られた、レシチン6170。
レシチン3-同様にThew Arnottから入手可能な、遺伝子組換えではない大豆から得られた、レシチン4980。
レシチン4-同様にThew Arnottから入手可能な、遺伝子組換えではない大豆から得られた、レシチン4980。
レシチン5-同様にThew Arnottから入手可能な、遺伝子組換えではない大豆から得られた、脱油処理済の、レシチン5348。
レシチン6-同様にThew Arnottから入手可能な、遺伝子組換えではないヒマワリから得られた、脱油処理済の、レシチン5636。
レシチン7-同様にThew Arnottから入手可能な、遺伝子組換えではないヒマワリから得られた、脱油処理済の、レシチン5435。
レシチン8-Sigma Aldrichから入手可能な、遺伝子組換えではない大豆から得られた、脱油処理済の、アゾレクチン(Asolecthin)。
レシチンA-同様にThew Arnottから入手可能な、遺伝子組換えではない大豆から得られた加水分解レシチンである、レシチン4705。
レシチンB-同様にThew Arnottから入手可能な、遺伝子組換えではない大豆から得られた加水分解レシチンである、レシチン4687。
レシチンC-同様にThew Arnottから入手可能な、遺伝子組換え大豆から得られた加水分解レシチンである、レシチン6194。
【0066】
レシチン1~8のそれぞれは、比較的高いビス-(脂肪族(C16~C20)ヒドロカルビルアシル)グリセロホスホコリン(複数可)(PC)及びビス-(脂肪族(C16~C20)ヒドロカルビルアシル)グリセロホスホエタノールアミン(複数可)(PE)含量、特にビス-(脂肪族(C18)ヒドロカルビルアシル)グリセロホスホコリン(複数可)及びビス-(脂肪族(C18)ヒドロカルビルアシル)グリセロホスホエタノールアミン(複数可)含量を有する。レシチン1~8のヒドロカルビルアシル基は、主に、ヘキサデカン酸、オクタデカン酸、オクタデカジエン酸及びオクタデカトリエン酸に、特に、オクタデカジエン酸及びオクタデカトリエン酸に由来する。レシチン1~8のそれぞれは、比較的少量の、前記ビス-(脂肪族(C16~C20)ヒドロカルビルアシル)グリセロホスホコリン(複数可)のリゾ誘導体(L-PC)及び前記ビス-(脂肪族(C16~C20)ヒドロカルビルアシル)グリセロホスホエタノールアミン(複数可)のリゾ誘導体(L-PE)を含む。レシチン1~8は、本発明を説明するために使用する。
レシチンA~Cのそれぞれは、レシチン1~8のそれぞれと比較して、著しく低い含量のビス-(脂肪族(C16~C20)ヒドロカルビルアシル)グリセロホスホコリン(複数可)(PC)及びビス-(脂肪族(C16~C20)ヒドロカルビルアシル)グリセロホスホエタノールアミン(複数可)(PE)含量、特に、ビス-(脂肪族(C18)ヒドロカルビルアシル)グリセロホスホコリン(複数可)及びビス-(脂肪族(C18)ヒドロカルビルアシル)グリセロホスホエタノールアミン(複数可)を含む。レシチンA~Cのそれぞれのヒドロカルビルアシル基は、主に、ヘキサデカン酸、オクタデカン酸、オクタデカジエン酸及びオクタデカトリエン酸に、特に、オクタデカジエン酸及びオクタデカトリエン酸に由来する。レシチンA~Cのそれぞれは、レシチン1~8と比較して、著しく多い量の前記ビス-(脂肪族(C16~C20)ヒドロカルビルアシル)グリセロホスホコリン(複数可)のリゾ誘導体(L-PC)及び前記ビス-(脂肪族(C16~C20)ヒドロカルビルアシル)グリセロホスホエタノールアミン(複数可)のリゾ誘導体(L-PE)を含む。レシチンA~Cは、比較のために使用する。
【0067】
レシチン1~8及びレシチンA~Cの関連する構成要素を表1に詳述する。
【表1】
【0068】
原油ブレンド
コロンビアの重質原油(アスファルテン含量 10質量%)及びシェールオイルの質量対質量比1:1でのブレンド。
原油のアスファルテン安定性/溶媒和試験
この試験は、ASTM D7157に準拠し、ROFA France社製 Automated Stability Analyserを使用して実施する。この試験により、ヘプタン添加による不安定化に抵抗する原油の力量を実証する。結果は、原油からのアスファルテンの沈澱に関する原油の固有の安定性を「S」値として記録する。「S」値が高いほど、アスファルテンを溶媒和及び/又は分散させる原油の能力が高く、原油がアスファルテンのフロキュレーション及び/又は沈澱に関してより安定していることを示している。結果は、表2に、グリセロリン脂質添加剤を含まない原油ブレンドに対する「相対的「S」値」として報告する。
表2の結果から、レシチン1~5、6及び8のそれぞれを原油に添加すると、比較レシチンA~Cのそれぞれと比較して、原油のその中にアスファルテンを溶媒和及び/又は分散させる能力が著しく増強することは明らかである。比較レシチン(複数可)A~Cのそれぞれは、過剰の総PC及びPE含量とリゾ誘導体含量の限界質量対質量比を含むだけのものであり、これらの比較レシチンは、本質的に、原油のその中にアスファルテンを溶媒和及び/又は分散させる能力を増強するものではない。これに対して、レシチン1~5、6及び8のそれぞれは、総PC及びPE含量とリゾ誘導体含量の質量対質量比が7以上である場合、原油のその中にアスファルテンを溶媒和及び/又は分散させる能力を著しく増強する。更に、原油中でのPCの処理率を高めると、一般に、原油のその中にアスファルテンを溶媒和及び/又は分散させる能力が高まる(レシチン3とレシチン6、並びにレシチン5とレシチン1及び2の結果を比較されたい)。
【表2】
【0069】
アスファルテン分散性試験
この試験により、原油中にフロキュレートしたアスファルテンを分散及び/又は溶媒和させる添加剤の力量を実証する。イラクの重質原油(アスファルテン含量 6質量%)及びトルエンの質量比1:1でのブレンドをこの試験に使用する。原油ブレンド(1g)のサンプルを100ml安定性試験用チューブに入れ、それぞれのグリセロリン脂質添加剤を添加し、それと混合し、次に、ヘプタンを、100mlの混合物を形成する量で添加し、混合物を手で十分に振盪する。試験は、室温及び大気圧で実施し;チューブを18時間モニタリングし、アスファルテン凝集体の沈降速度を、National Instruments社製GoPro & LabVIEWソフトウエアを使用してカメラで記録する。結果は、アスファルテンの経時的(時間)沈降量(ml)、すなわち、沈降速度(ml/時間)として記録する。結果は、表3に、「対数率」として報告しており、ここでは、負の値が低いほど、それぞれの添加剤による原油中へのアスファルテンの分散性が優れていることを示している。
表3の結果から、レシチン1~8のそれぞれを原油に添加すると、比較レシチンA~Cのそれぞれと比較して、原油中へのアスファルテンの分散性/溶媒和が著しく高まることは明らかである。
【表3】

【0070】
溶媒効果
レシチン1(1質量部)及び有機芳香族溶媒であるソルベッソ150(9質量部)の組合せを、本明細書に記載の分散性試験で評価した。結果を表5に示す。
【表4】


結果は、芳香族溶媒単独では本質的に中立であり、溶媒が原油中でのフロキュレートしたアスファルテンの分散及び/又は溶媒和に影響を及ぼさなかったことを実証している。しかしながら、芳香族有機溶媒をレシチンと組み合わせて使用した場合、フロキュレートしたアスファルテンを原油中へ分散及び/又は溶媒和させるためのレシチン1の著しい後押しが観察された。
【0071】
5ロッド熱析出試験(5-RTDT)
5-RTDTは、精製可能な石油原料に対する石油精製操作におけるファウリング、特にアスファルテンファウリングの程度を与える。
原油ブレンド
アスファルテンを含有するバスラの重質原油、Enbridge社の原油にシェールオイルを加えた、それぞれ40%、10%及び30%でのブレンドで、デカン20%で希釈したもの(容量パーセンテージ)。
試験
試験は、添加剤を含まない原油ブレンドの150mlのサンプル(対照として)と、カットバックとして原油ブレンドに添加されたレシチン1(1000質量ppmの有効成分)を含有する原油(the crude oi)ブレンドを使用して実施した。
試験では、精製所の防汚性能をシミュレートすることを目的とした5ロッド熱析出試験(5-RTDT)を使用した。5-RTDTは、直列に接続された5つの独立に加熱される試験セクションを備えた機器を使用する。各試験セクションは、外側スチールジャケットに入れられた電気抵抗加熱スチールロッドを備え、ロッドから電気的に絶縁されている。試験原油サンプルは、ロッドとジャケットの間の空洞を流れる。ロッドの温度は、ロッドの中心点で制御され、試験を通じて一定に維持される。原油は、各試験セクションの熱いロッド上を流れるため、ロッドから熱を吸収し;各試験セクションに出入りする原油の温度が記録される。ロッド表面に析出物が堆積すると、それらの析出物によってロッドから原油への熱伝達効率が低下し、その結果、それぞれの試験セクションに出入りする原油の温度の低下が起こる。
試験の開始から終了までの原油出口温度の差(ΔT℃)を、5本のロッドのそれぞれ(すなわち、各試験セクション)について計算し、合計する。ΔT ℃の数値が大きいほど、温度差が大きく、従って、ファウリングが悪化していることを示す。試験は、120℃、160℃、200℃、240℃及び280℃のそれぞれのロッド温度を用いて5時間実施した。試験の結果を表6に示す。
【表5】

【0072】
結果は、レシチン1(1000質量ppmのレシチン、a.i.ベースで152.7質量ppmのPC、a.i.ベースで122.4質量ppmのPE)を原油ブレンドに添加すると、添加剤を含まない原油ブレンドと比較して、ファウリングが433%減少したことを実証している。
【外国語明細書】